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特許7180852積層セラミック電子部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021034843
(22)【出願日】2021-03-04
(62)【分割の表示】P 2016056298の分割
【原出願日】2016-03-18
(65)【公開番号】P2021093549
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2015-0111459
(32)【優先日】2015-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン セオン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドー ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、タエ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジェ ヨル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-016796(JP,A)
【文献】特開2010-050263(JP,A)
【文献】特開2012-004236(JP,A)
【文献】特開2009-016547(JP,A)
【文献】特開2006-206362(JP,A)
【文献】特開2003-048774(JP,A)
【文献】特開平09-012365(JP,A)
【文献】特開平05-120915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層及び複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体上に配置され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極と、
を含み、
前記キャパシタ本体において、前記内部電極及び前記誘電体層が積層される方向を厚さ方向、前記厚さ方向と垂直で、内部電極の一端がキャパシタ本体の表面に露出する方向を長さ方向、前記厚さ方向及び長さ方向と垂直な一方向を幅方向と定義するとき、
前記キャパシタ本体は、互いに異なる極性の内部電極が重畳されて容量を形成する活性部、及び前記活性部の幅方向の両側に配置されるマージン部を含み、
前記幅方向の両側に配置されるマージン部は、前記幅方向に沿って測定した長さの1/2を基準に、
前記活性部に隣接した幅方向の第1領域とキャパシタ本体の表面に隣接した幅方向の第2領域を含み、
前記幅方向の第2領域は前記幅方向の第1領域よりMg元素の濃度が高く、
前記幅方向の第1領域のMg元素の濃度は0.01mol%以上4.0mol%以下であり、
前記幅方向の第2領域のMg元素の濃度は0.2mol%以上8.0mol%以下である、
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記活性部の上側及び下側に配置されるマージン部をカバー部と定義するとき、
前記カバー部は、厚さ方向に沿って測定した長さの1/2を基準に、
前記活性部に隣接したカバー部の第1領域とキャパシタ本体の表面に隣接したカバー部の第2領域を含み、
前記カバー部の第1領域とカバー部の第2領域はMg元素の濃度が互いに異なる
請求項1記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記キャパシタ本体の幅方向のマージン部は前記活性部よりMg元素の濃度が高い、
請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記活性部のMg元素の濃度は2.0mol%以下である、
請求項1からのいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記幅方向のマージン部の前記幅方向の第1領域と前記幅方向の第2領域は互いに異なる緻密度を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記幅方向の第1領域は前記幅方向の第2領域より緻密度が高い、
請求項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタまたはサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるキャパシタ本体、本体の内部に形成された内部電極、及び上記内部電極と接続されるようにキャパシタ本体の表面に設置された外部電極を備える。
【0003】
高信頼性を求める分野での多くの機能が電子化され、その需要が増加することにより、これに応じて積層セラミック電子部品にも高信頼性が求められている。
【0004】
このような高信頼性で問題となる要素は、耐湿特性及び耐電圧特性などがあり、積層セラミック電子部品のキャパシタ本体のマージン部に存在するポア及びキャパシタ本体の緻密度は積層セラミック電子部品の信頼性に影響を及ぼしかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許第10-1069989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施例の目的は、積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、複数の誘電体層及び複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、上記キャパシタ本体上に配置され、上記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含み、キャパシタ本体のマージン部は、キャパシタ本体の活性部より添加剤元素の濃度が高く、キャパシタ本体の表面から活性部に向かって添加剤元素の濃度勾配を有し、信頼性及び耐湿特性に優れた積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、信頼性及び耐湿特性が高い積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の一部を切開して概略的に示す斜視図である。
図2図1のA-A'の線に沿った断面図である。
図3】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品のキャパシタ本体における活性部及びマージン部を領域として示す断面図である。
図4図3のL1-L2の線に沿った添加剤元素の濃度を説明するための仮想のグラフである。
図5】本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法を示す流れ図である。
図6a】本発明の実験例によるキャパシタ本体の断面を示す走査電子顕微鏡の写真である。
図6b】本発明の実験例によるキャパシタ本体の断面を示す走査電子顕微鏡の写真である。
図6c】本発明の実験例によるキャパシタ本体の断面を示す走査電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0011】
なお、各実施形態の図面に示された同一の思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0012】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0013】
積層セラミック電子部品
図1は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図であり、図2図1のA-A'の線に沿った断面図である。
【0014】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、キャパシタ本体110、及び外部電極131、132を含む。
【0015】
本発明の一実施形態によると、図1及び図2に示された(T)方向は厚さ方向であり、(L)方向は長さ方向であり、(W)方向は幅方向である。
【0016】
上記厚さ(T)方向は上記内部電極及び誘電体層の積層方向を意味する。
【0017】
図1及び図2を参照すると、上記キャパシタ本体110は、厚さ方向に相対する上面及び下面、幅方向に相対する第1側面及び第2側面、長さ方向に相対する第3側面及び第4側面を有することができる。また、上記キャパシタ本体110の形状は特に制限されない。例えば、上記キャパシタ本体110は完全な六面体状ではないが、ほぼ六面体状からなることができる。
【0018】
上記キャパシタ本体110は、複数の誘電体層111、及び内部電極121、122を含む。
【0019】
上記誘電体層111は、高誘電率を有するセラミック組成を含み、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系誘電体を含むことができる。
【0020】
上記チタン酸バリウム(BaTiO)系誘電体は、純粋なチタン酸バリウム、またはチタン酸バリウムのBaサイト(Aサイト)及びTiサイト(Bサイト)が他の添加剤元素でドーピングされた化合物を含む意味で理解されることができる。
【0021】
上記キャパシタ本体は、誘電体層111上に形成された内部電極121、122を含む。
【0022】
上記内部電極121、122は導電性金属を含み、上記導電性金属は、これに制限されないが、ニッケル(Ni)であることができる。
【0023】
図3は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100のキャパシタ本体における活性部150及びマージン部160を領域として示す断面図である。
【0024】
図3に示されているように、上記キャパシタ本体110は、内部電極が重畳されて容量を形成する領域である活性部150、及び上記活性部の上側、下側、幅方向の両側、及び長さ方向の両側に配置されるマージン部160を含むことができる。上記マージン部は、キャパシタ本体内で上記活性部を除いた領域であることができる。
【0025】
一方、上記マージン部160は、上記活性部の外側から上記キャパシタ本体に向かう方向に測定した長さの1/2を基準に、上記活性部に隣接した第1領域161と、キャパシタ本体の表面に隣接した第2領域162と、を含む。
【0026】
上記上側及び下側、上面及び下面は、特別な表示がない限り、キャパシタ本体において別途で区別されるものではなく、それぞれ厚さ方向の一方側及び他方側、厚さ方向に対向する一方の面及び他方の面と同一の意味で理解されることができ、上記上面及び下面はそれぞれキャパシタ本体の厚さ方向に対向する第1主面及び第2主面の意味で理解されることができる。
【0027】
上記内部電極は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。上記第1及び第2内部電極121、122は、誘電体層111を介して上記誘電体層上に交互に配置されることができる。
【0028】
上記第1内部電極121は上記キャパシタ本体の第3側面に露出し、上記第2内部電極122は上記キャパシタ本体の第4側面に露出することができる。
【0029】
上記外部電極131、132は、上記キャパシタ本体の第3側面及び第4側面に配置されて上記第1内部電極121及び第2内部電極122と連結されることができる。上記外部電極131、132は、第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができ、上記第1外部電極131は第1内部電極121と連結され、上記第2外部電極132は第2内部電極122と連結されることができる。
【0030】
上記外部電極は、伝導性ペーストを上記キャパシタ本体の第3側面及び第4側面に塗布して焼成することにより形成することができ、外部電極の形状及び形成方法は特に限定されない。
【0031】
上記キャパシタ本体110は、内部電極ペーストが印刷された第1セラミックグリーンシート、及び内部電極ペーストが印刷されない第2セラミックグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体の焼成で形成されることができる。
【0032】
このとき、上記第2セラミックグリーンシートは、焼成後に、活性部の上側及び下側に配置されたマージン部を構成することができ、活性部の上側及び下側に配置されたマージン部は上部カバー層及び下部カバー層と規定することができる。
【0033】
活性部150に配置された誘電体層は容量形成に寄与し、マージン部160は活性部を保護する機能を行うため、活性部に配置された誘電体層とマージン部には互いに異なる特性が求められることができる。
【0034】
このとき、誘電体層及びマージン部に必要な特性は、それぞれに含まれた添加剤元素の種類及び濃度を異ならせて実現することができる。
【0035】
誘電体層及び内部電極が積層される方向に配置されるマージン部の場合、誘電体層を形成するためのセラミックグリーンシートと異なる組成のセラミックグリーンシートを用いることにより添加剤の濃度を異ならせることができる。
【0036】
しかし、誘電体層及び内部電極が積層される方向に対して垂直な方向、例えば、幅方向及び長さ方向のマージン部の場合、活性部に配置された誘電体層と区分されるセラミックグリーンシートで形成されないのが一般的である。
【0037】
一般に、誘電体層及び内部電極が積層される方向に対して垂直な方向のマージン部は、活性部を構成する誘電体層と同一のセラミックグリーンシートで形成されるようになるため、活性部と添加剤の濃度を異ならせることが容易ではない。
【0038】
また、誘電体層及び内部電極が積層される方向と垂直な方向のうち、内部電極が引き出されない方向のマージン部は活性部と別途で形成して活性部と異なる添加剤の濃度を有することができる。しかし、内部電極が引き出される方向のマージン部の場合、マージン部を活性部と別途で形成することが困難であるため活性部と添加剤の濃度が同一であるのが一般的である。
【0039】
一方、本発明の一実施形態によれば、誘電体層及び内部電極が積層される方向に対して垂直な方向のマージン部に対しても、活性部と異なる添加剤の濃度を有することができるためマージン部の特性を向上させることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、上記マージン部160は、上記キャパシタ本体の形成時に表面にコーティングされた添加剤元素がキャパシタ本体の内部に拡散して活性部150より高い添加剤濃度を有することができる。
【0041】
例えば、上記内部電極121、122及び上記誘電体層111が積層される方向を厚さ方向、上記厚さ方向と垂直で、内部電極の一端がキャパシタ本体の表面に露出する方向を長さ方向、上記厚さ方向及び長さ方向と垂直な一方向を幅方向と定義するとき、上記キャパシタ本体の長さ方向のマージン部及び厚さ方向のマージン部は、上記活性部より添加剤元素の濃度が高く、キャパシタ本体の表面から活性部に向かって添加剤元素の濃度勾配(Gradient)を有することができる。
【0042】
例えば、添加剤元素の濃度はキャパシタ本体110の表面から活性部150に向かって次第に低くなることができる。
【0043】
上記添加剤元素は、Mg、Mn、Zr、Ti、Li、Mo、Nb、Cu及び希土類元素のうちから選択される一つ以上であることができ、マージン部がMg、Mn、Zr、Ti、Li、Mo、Nb、Cu及び希土類元素のうちから選択される一つ以上の元素を添加剤としてさらに含む場合、誘電体の焼結が抑制されてマージン部の緻密度を向上させることができる。
【0044】
一方、上記マージン部は、上記活性部の外側から上記キャパシタ本体に向かう方向に測定した長さの1/2を基準に、上記活性部に隣接した第1領域とキャパシタ本体の表面に隣接した第2領域を含み、上記第1領域と上記第2領域は互いに異なる緻密度を有することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、上記第1領域の緻密度を上記第2領域の緻密度より高くすることにより耐湿特性に優れた積層セラミック電子部品を提供することができる。添加剤元素の濃度に応じてマージン部の緻密度を調節することができ、高い緻密度を有するために添加剤元素の濃度が適正の範囲を満たさなければならない。
【0046】
このとき、上記第1領域の緻密度が上記第2領域の緻密度より高くなるように添加剤元素を拡散させることができる。
【0047】
図4図3のL1-L2の線に沿った添加剤元素の濃度を説明するための仮想のグラフである。
【0048】
例えば、図4に示されているように、第1領域が高い緻密度を有するようにするために第1領域に適正の濃度の添加剤元素を拡散させる場合、第2領域は第1領域より添加剤元素の濃度が高くなる。このとき、第2領域は添加剤元素の量が多すぎるため第1領域より緻密度が多少低下する可能性があるが、活性部と隣接した第1領域の緻密度を高くすることにより、積層セラミック電子部品の耐湿特性を向上させることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、活性部150の添加剤元素の濃度は2.0mol%以下であってよく、マージン部の第1領域161の添加剤元素の濃度は0.01mol%以上4.0mol%以下であってよい。上記マージン部の第1領域161において添加剤元素の濃度が0.01mol%以上4.0mol%以下である場合、第1領域の緻密度の向上で積層セラミック電子部品の耐湿特性を効果的に向上させることができる。
【0050】
一方、上記マージン部の第2領域162の添加剤元素の濃度は0.2mol%以上8.0mol%以下であってよい。
【0051】
積層セラミック電子部品の製造方法
以下では、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法について説明するが、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法が必ずしもこれに制限されるものではない。
【0052】
図5は本発明の他の一実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法を示す流れ図である。
【0053】
本実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法は、複数の第1セラミックグリーンシート及び複数の第2セラミックグリーンシートを設ける段階S1と、上記第1セラミックグリーンシートに内部電極ペーストを塗布する段階S2と、内部電極ペーストが塗布された上記第1セラミックグリーンシート及び第2セラミックグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を設ける段階S3と、上記グリーンシート積層体の表面に添加剤元素を含むコーティング層を形成する段階S4と、上記添加剤元素が内部に拡散するように上記グリーンシート積層体を焼成してキャパシタ本体を形成する段階S5と、を含むことができる。
【0054】
本実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法に関する説明のうち、上述の本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品と重複される内容を省略し、差異点を中心に叙述する。
【0055】
上記第1グリーンシートは内部電極パターンが形成されるグリーンシートであり、上記第2グリーンシートは上部カバー層及び下部カバー層を形成するためのグリーンシートである。上記第1及び第2グリーンシートはそれぞれ複数個で形成されることができる。
【0056】
上記複数のセラミックグリーンシートを設ける段階S1は、誘電体粉末を含むスラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥して形成されることができる。
【0057】
上記内部電極パターンを形成する段階S2は、内部電極を形成するためのペーストを上記セラミックグリーンシートに印刷して行われることができるが、内部電極パターンの形成方法はこれに限定されるものではない。
【0058】
上記グリーンシート積層体を設ける段階S3は、上記内部電極パターンが形成された第1グリーンシートと内部電極パターンが形成されない第2グリーンシートを積層して行われることができる。
【0059】
上記第2グリーンシートは、上記第1グリーンシートが積層された領域の上側及び下側に配置されるように積層されることができる。
【0060】
その後、グリーンシート積層体の表面に添加剤元素を含むコーティング層を形成する段階S5は、グリーンシート積層体をコーティング層の形成のための溶液にディッピング(dipping)する方法やPVD(physical vapor deposition)またはCVD(chemical vapor deposition)などのような蒸着工法を用いて行われることができるが、特に限定されない。
【0061】
次に、上記添加剤元素が内部に拡散するように上記グリーンシート積層体を焼成してキャパシタ本体を形成することができる。
【0062】
上記キャパシタ本体を設ける段階S5はグリーンシート積層体を焼成して行われることができる。
【0063】
一方、グリーンシート積層体の表面に形成される添加剤元素のコーティング層の厚さ及び濃度とグリーンシート積層体の焼成温度を調節してマージン部内に拡散する添加剤の量を制御することができる。
【0064】
一方、上記焼成工程の前に、上記グリーンシート積層体を圧着し、内部電極パターンの一端が切断面に交互に露出するように個別のチップの形態で切断する工程をさらに含むことができる。
【0065】
その後、上記キャパシタ本体の外部面に外部電極用ペーストを塗布して焼成することにより外部電極を形成することができる。上記外部電極用ペーストの塗布は、上記キャパシタ本体を外部電極用ペーストにディッピング(dipping)して行われることができるが、これに限定されない。
【0066】
実験例
図6a及び図6bは添加剤元素の拡散の有無及び拡散濃度による微細構造を示す走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)の写真である。本実験例では添加剤元素としてマグネシウム(Mg)を用いた。
【0067】
本実験例に用いられた積層セラミック電子部品は下記のように製作された。
【0068】
チタン酸バリウム(BaTiO)粉末を含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して、複数個のセラミックグリーンシートを設けた。
【0069】
その後、上記セラミックグリーンシートのうち、一部のセラミックグリーンシート上にニッケルを含む内部電極用導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成した。
【0070】
次に、内部電極が印刷されたセラミックグリーンシートと内部電極パターンが印刷されないセラミックグリーンシート(上下カバー層用)を積層し、等圧圧縮成形した。圧着が完了したセラミック積層体を内部電極パターンの一端が切断面に交互に露出するように個別のチップの形態で切断してグリーンシート積層チップを複数個設けた。
【0071】
一方、MgCO粉末、分散剤とエタノールを攪拌して添加剤溶液を製造した。
【0072】
次に、グリーンシート積層チップを製造されたマグネシウム添加剤溶液にディッピング(dipping)して、グリーンシート積層チップにマグネシウム添加剤溶液をコーティングした。
【0073】
一方、比較のために、一つのグリーンシート積層チップにはマグネシウム添加剤溶液をコーティングしなかった。
【0074】
続いて、脱バインダーを行った。
【0075】
次に、内部電極が酸化しないようにNi/NiO平衡酸素分圧より低い酸素分圧下の還元雰囲気で焼成してキャパシタ本体を形成した。
【0076】
続いて、上記内部電極が露出したキャパシタ本体の外部面に銅粉末とガラスフリットを含むペーストを塗布して焼成することで外部電極を形成した。
【0077】
図6aはコーティング層が形成されないグリーンシート積層チップの焼成後の断面を示す走査電子顕微鏡の写真であり、図6bはマグネシウム元素が約0.1mol%の濃度で拡散した領域の走査電子顕微鏡の写真であり、図6cはマグネシウム元素が約0.3mol%の濃度で拡散した領域の走査電子顕微鏡の写真である。
【0078】
図6a、図6b及び図6cを参照すると、マグネシウム元素が0.1mol%の濃度で拡散した図6bの場合は緻密度が最も高く、マグネシウム元素が過量含まれた図6cの場合はマグネシウム元素が拡散しない図6aより緻密度が低いことが確認できる。
【0079】
これにより、添加剤元素の表面コーティング後の拡散を通じて緻密度を制御することができ、活性部と隣接した領域の緻密度を高くして積層セラミック電子部品の信頼性及び耐湿特性を向上させることができることが確認できる。
ここで、本実施形態に係る発明の例を項目として記載する。
[項目1]
複数の誘電体層及び複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体上に配置され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含み、
前記キャパシタ本体において、互いに異なる極性の内部電極が重畳されて容量を形成する領域を活性部、前記活性部を除いた領域をマージン部と定義するとき、
前記マージン部は、前記活性部より添加剤元素の濃度が高く、添加剤元素の濃度がキャパシタ本体の表面から活性部に向かって徐々に減少する、積層セラミック電子部品。
[項目2]
前記内部電極及び前記誘電体層が積層される方向を厚さ方向、前記厚さ方向と垂直で、内部電極の一端がキャパシタ本体の表面に露出する方向を長さ方向、前記厚さ方向及び長さ方向と垂直な一方向を幅方向と定義するとき、
前記キャパシタ本体の長さ方向のマージン部は、前記活性部より添加剤元素の濃度が高く、キャパシタ本体の表面から活性部に向かって添加剤元素の濃度勾配を有する、項目1に記載の積層セラミック電子部品。
[項目3]
前記内部電極及び前記誘電体層が積層される方向を厚さ方向、前記厚さ方向と垂直で、内部電極の一端がキャパシタ本体の表面に露出する方向を長さ方向、前記厚さ方向及び長さ方向と垂直な一方向を幅方向と定義するとき、
前記キャパシタ本体の幅方向のマージン部は、前記活性部より添加剤元素の濃度が高く、キャパシタ本体の表面から活性部に向かって添加剤元素の濃度勾配を有する、項目1または2に記載の積層セラミック電子部品。
[項目4]
前記マージン部は、前記活性部の外側から前記キャパシタ本体に向かう方向に測定した長さの1/2を基準に、
前記活性部に隣接した第1領域とキャパシタ本体の表面に隣接した第2領域を含み、
前記第1領域と前記第2領域は互いに異なる緻密度を有する、項目1から3のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
[項目5]
前記第1領域は前記第2領域より緻密度が高い、項目4に記載の積層セラミック電子部品。
[項目6]
前記第2領域は前記第1領域より添加剤元素の濃度が高い、項目4または5に記載の積層セラミック電子部品。
[項目7]
前記添加剤元素の濃度は前記キャパシタ本体の表面から前記活性部に向かって徐々に減少する、項目1から6のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
[項目8]
前記添加剤元素は、Mg、Mn、Zr、Ti、Li、Mo、Nb、Cu及び希土類元素のうちから選択される一つ以上である、項目1から7のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
[項目9]
前記第1領域の添加剤元素の濃度は0.01mol%以上4.0mol%以下である、項目4に記載の積層セラミック電子部品。
[項目10]
前記第2領域の添加剤元素の濃度は0.2mol%以上8.0mol%以下である、項目4または9に記載の積層セラミック電子部品。
[項目11]
前記活性部の添加剤元素の濃度は2.0mol%以下である、項目1から10のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
[項目12]
複数の第1セラミックグリーンシート及び複数の第2セラミックグリーンシートを設ける段階と、
前記第1セラミックグリーンシートに内部電極ペーストを塗布する段階と、
内部電極ペーストが塗布された前記第1セラミックグリーンシート及び第2セラミックグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を設ける段階と、
前記グリーンシート積層体の表面に添加剤元素を含むコーティング層を形成する段階と、
前記添加剤元素が内部に拡散するように前記グリーンシート積層体を焼成して、互いに異なる極性の内部電極が重畳されて容量を形成する領域を活性部、及び前記活性部を除いた領域であるマージン部を含むキャパシタ本体を形成する段階と、を含み、
前記マージン部は、前記活性部より添加剤元素の濃度が高く、キャパシタ本体の表面から活性部に向かって添加剤元素の濃度勾配を有する、積層セラミック電子部品の製造方法。
[項目13]
前記マージン部は、前記活性部の外側から前記キャパシタ本体に向かう方向に測定した長さの1/2を基準に、
前記活性部に隣接した第1領域とキャパシタ本体の表面に隣接した第2領域を含み、
前記第1領域と前記第2領域は互いに異なる緻密度を有する、項目12に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
[項目14]
前記第1領域は前記第2領域より緻密度が高い、項目13に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
[項目15]
前記第2領域は前記第1領域より添加剤元素の濃度が高い、項目13または14に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
[項目16]
前記添加剤元素は、Mg、Mn、Zr、Ti、Li、Mo、Nb、Cu及び希土類元素のうちから選択される一つ以上である、項目12から15のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
[項目17]
前記マージン部は、前記キャパシタ本体の表面にコーティングされた添加剤元素の拡散で添加剤元素の濃度勾配を有する、項目16に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
[項目18]
複数の誘電体層及び複数の内部電極を含むキャパシタ本体と、
前記キャパシタ本体上に配置され、前記内部電極と電気的に連結される外部電極と、を含み、
前記キャパシタ本体は、互いに異なる極性の内部電極が重畳されて容量を形成する領域を活性部、及び前記活性部を除いた領域と定義されるマージン部を含み、
前記マージン部は、前記活性部に隣接した第1領域と前記キャパシタ本体の表面に隣接した第2領域を含み、
前記第2領域の添加剤元素の濃度は前記第1領域の添加剤元素の濃度より高く、前記第1領域の添加剤元素の濃度は前記活性部の添加剤元素の濃度より高い、積層セラミック電子部品。
[項目19]
前記第1領域の添加剤元素の濃度は0.01mol%以上4.0mol%以下である、項目18に記載の積層セラミック電子部品。
[項目20]
前記第2領域の添加剤元素の濃度は0.2mol%以上8.0mol%以下である、項目18または19に記載の積層セラミック電子部品。
[項目21]
前記活性部の添加剤元素の濃度は2.0mol%以下である、項目18から20のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【符号の説明】
【0080】
100 積層セラミック電子部品
110 キャパシタ本体
121、122 内部電極
131、132 外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c