(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
A63F7/02 326Z
A63F7/02 334
(21)【出願番号】P 2018240671
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 努
【審査官】金子 和孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-008247(JP,A)
【文献】特開2009-072336(JP,A)
【文献】特開2012-075538(JP,A)
【文献】特開2007-229066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
A63F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一位置と第二位置との間を変位する可動役物と、
前記可動役物の一部分または当該可動役物と一緒に変位する部分である対象部までの距離を測定するセンサであって、前記可動役物が変位することに伴って前記対象部までの距離が比例的に変化する位置に設けられた距離センサと、
前記可動役物が前記第一位置に位置しているときの前記距離センサの測定値に基づく第一基準値、および前記可動役物が前記第二位置に位置しているときの前記距離センサの測定値に基づく第二基準値を取得する基準値取得手段と、
を備え、
前記可動役物を前記第一位置と前記第二位置の間の中途位置にて停止させる演出を実行するときには、前記第一基準値および前記第二基準値に基づく比例計算にて算出される特定値を利用して前記可動役物を前記中途位置にて停止させることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記特定値に基づき前記距離センサの最大検出距離を設定した上で、当該距離センサが検出状態および非検出状態の一方から他方に移行したことをもって、前記可動役物を前記中途位置にて停止させることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記可動役物を変位させる駆動源を備え、
前記可動役物を前記第一位置および前記第二位置の一方から他方に変位させるのに必要な理論変位量を超える超過変位量分、前記駆動源を前記第一位置または前記第二位置に向かって変位させた上で前記第一基準値または前記第二基準値を取得すること特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記第一基準値と前記第二基準値の差が、予め設定された所定範囲内にない場合には、異常と判断することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の遊技機。
【請求項5】
電源投入を契機として、前記第一基準値および前記第二基準値が取得されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
可動役物および当該可動役物の位置を検出するセンサを備えた遊技機が公知である。例えば下記特許文献1には、可動役物が原位置から外れたことを検出するセンサを備えた遊技機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、可動役物を精度良く制御することが可能な遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる遊技機は、第一位置と第二位置との間を変位する可動役物と、前記可動役物の一部分または当該可動役物と一緒に変位する部分である対象部までの距離を測定するセンサであって、前記可動役物が変位することに伴って前記対象部までの距離が比例的に変化する位置に設けられた距離センサと、前記可動役物が前記第一位置に位置しているときの前記距離センサの測定値に基づく第一基準値、および前記可動役物が前記第二位置に位置しているときの前記距離センサの測定値に基づく第二基準値を取得する基準値取得手段と、を備え、前記可動役物を前記第一位置と前記第二位置の間の中途位置にて停止させる演出を実行するときには、前記第一基準値および前記第二基準値に基づく比例計算にて算出される特定値を利用して前記可動役物を前記中途位置にて停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる遊技機によれば、可動役物を精度良く制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる遊技機を模式的に示した正面図である。
【
図3】基準値(第一基準値、第二基準値)および当該基準値から得られる特定値の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1)全体構成
以下、本発明にかかる遊技機1(ぱちんこ遊技機)の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して遊技機1の全体構成について簡単に説明する。
【0009】
遊技機1は遊技盤21を備える。遊技盤21は、ほぼ正方形の合板により成形されており、発射装置62(発射ハンドル)の操作によって発射された遊技球を遊技領域211に案内する通路を構成するガイドレール95が略円弧形状となるように設けられている。
【0010】
遊技領域211には、始動入賞口92、大入賞口93、アウト口94などが設けられている(なお、遊技領域211の構成は簡略化している(一部の遊技釘や入賞領域を省略している))。表示装置22の表示領域221は、遊技盤21に形成された開口212を通じて視認可能となる領域である。
【0011】
公知の遊技機と同様に、始動入賞口92に遊技球が進入することを契機として当否判定(当否抽選)が実行される。表示領域221には、当否判定結果を示す図柄(以下、識別図柄80と称する)が表示される(
図1参照)。本実施形態の識別図柄80は「数字」を含む図柄であるが、当該態様はあくまで一例である。本実施形態では、最終的に示される三つの識別図柄80の組み合わせにより当否判定結果が当たりであるかどうかが報知される。
【0012】
また、遊技領域211には、流下する遊技球が衝突することにより遊技球の流下態様に変化を与える障害物としての遊技釘が複数設けられている。遊技領域211を流下する遊技球は、遊技釘に衝突したときの条件に応じて様々な態様に変化する。
【0013】
このような遊技機1では、発射装置96を操作することにより遊技領域211に向けて遊技球を発射する。遊技領域211を流下する遊技球が、始動入賞口92や大入賞口93等の入賞口に入賞すると、所定の数の賞球が払出装置により払い出される。
【0014】
なお、遊技球を貯留する下皿や上皿、当否判定の具体的な方法等、本発明に関係のない遊技機1の構成要素や制御態様については説明を省略する。これらについては公知の遊技機と同様の構造のものが適用できる。
【0015】
2)可動役物およびそれを制御するための構成
以下、可動役物10およびそれを制御するための構成について説明する。可動役物10は、原位置と演出位置(一方が本願発明の第一位置に、他方が本願発明の第二位置に相当する)との間を往復動作させることが可能なものである(
図2参照)。本実施形態にかかる可動役物10は、原位置と当該原位置から真っすぐ下方に変位したところの位置である演出位置との間を直線的にスライド動作するものである。また、可動役物10自体の態様(形状や装飾等)はどのようなものであってもよい。可動役物10が表示装置であってもよい。
【0016】
可動役物10の駆動源は図示しないモータ(本実施形態ではステッピングモータ)である。モータから可動役物10に至るまでの動力伝達構造はどのようなものであってもよいから説明を省略する。モータの回転量(ステップ数)と可動役物10の変位量は比例する。
【0017】
前後方向において、可動役物10は、表示装置22の表示領域221(表示面)よりも前方に位置する。本実施形態では、可動役物10が原位置に位置するときと演出位置に位置するときとでは、当該可動役物10が表示領域221に重なる範囲が異なる。具体的には、可動役物10が原位置に位置するときよりも演出位置に位置するときの方が、当該可動役物10が表示領域221の前方で重なる範囲が大きくなる(
図2参照)。遊技者視点でいえば、可動役物10が原位置に位置するときよりも演出位置に位置するときの方が、表示領域221における可動役物10に覆われて見えない部分の大きさが大きくなるということである。表示領域221に識別図柄80が表示されている状態(当否判定結果を報知する演出が実行されている状態)にて可動役物10が演出位置に位置したときには、(原位置に位置しているときに比して)当該識別図柄80が見えにくくなるともいえる。本実施形態では、原位置に位置する可動役物10はその全体が表示領域221に重ならない状態となり、演出位置に位置する可動役物10はその全体が表示領域221に重なる状態となる。
【0018】
本実施形態にかかる遊技機1は、可動役物10を検出するための距離センサ30(測距センサ)を備える。距離センサ30は、可動役物10の変位に伴って変位する対象部11までの距離を測定するものである。ここで、対象部11は、可動役物10の一部分であってもよいし、可動役物10とは別の部分(別の部材)であるが、当該可動役物10と一緒になって変位する部分であってもよい。本実施形態では、可動役物10の上面の一部分が対象部11として設定されている(
図2参照)。距離センサ30自体は公知であるため、詳細な説明を省略するが、センサの発光部から出力された検出光(例えば赤外線)が対象部11に反射され、それが受光部に入光するまでの時間により、対象部11までの距離を測定するものである。
【0019】
距離センサ30は、可動役物10が変位することに伴って対象部11までの距離が比例的に変化する位置に設けられている。本実施形態では、距離センサ30は、原位置に位置する可動役物10よりも上方に位置し、検出光の光軸が可動役物10の移動方向に沿う(本実施形態では上下方向に沿う)ように配置されている(
図2参照)。したがって、可動役物10が原位置から離れるほど、対象部11(可動役物10)と距離センサ30(発光部、受光部)の距離は長くなる。すなわち、可動役物10が原位置から演出位置に向かって変位することに伴って対象部11と距離センサ30の距離が比例的に増加し、可動役物10が演出位置から原位置に向かって変位することに伴って対象部11と距離センサ30の距離が比例的に減少することになる。
【0020】
本実施形態では、距離センサ30とは別のセンサであって、可動役物10が原位置に位置していることを検出するセンサ(以下、原位置検出センサ31と称する)を備える(
図2参照)。公知のフォトセンサ等を原位置検出センサ31として適用することができる。
【0021】
本実施形態では、遊技機1への電源投入時に第一基準値D1および第二基準値D2を取得する。具体的には、まず、電源投入を契機として可動役物10が原位置に位置しているかどうかを確認する。可動役物10が動作している途中で電源をOFFにする等、特殊な事象が発生しない限り、可動役物10は原位置に位置しているはずである。つまり、原位置検出センサ31により可動役物10が原位置に位置しているかどうかを確認し、原位置に位置していないと判断された場合には、モータを駆動して可動役物10を原位置に位置させる。可動役物10が原位置に位置した状態で距離センサ30の測定値(出力)を得る。当該測定値に基づく値が第一基準値D1である。
【0022】
その後、モータを駆動して、可動役物10を演出位置に位置させる。本実施形態では、原位置から演出位置に変位させるのに必要なモータの駆動量(ステップ数)が記憶されており、当該駆動量分可動役物10を変位させる。この状態で距離センサ30の測定値(出力を得る)。当該測定値に基づく値が第二基準値D2である。なお、原位置と同様に、可動役物10が演出位置に位置しているかどうかを検出するセンサ(距離センサ30とは別のセンサ)を設け、当該センサにより可動役物10が演出位置に位置しているかどうかを判断した上で、第二基準値D2が取得されるようにしてもよい。
【0023】
つまり、第一基準値D1や第二基準値D2は、距離センサ30と可動役物10(原位置に位置する可動役物10や演出位置に位置する可動役物10)との実際の距離そのもの、または距離に相当する値(「実際の距離」に「定数」を乗じた値。距離センサ30固有の「単位」で距離を表した値とみることもできる)である。換言すれば、距離センサ30が設けられた位置を原点とし、可動役物10の原位置や演出位置を座標(一次元の座標)で表したときの値であるといえる。かかる第一基準値D1および第二基準値D2は、図示しない記憶手段に記憶される。
【0024】
可動役物10を原位置と演出位置との間の任意の位置(以下、中途位置と称する)で停止させる演出を実行するときには、記憶手段に記憶された第一基準値D1および第二基準値D2を利用する。例えば、第一基準値D1が「10」、第二基準値D2が「80」であったとする。つまり、距離センサ30から原位置の可動役物10までの距離に相当する値が「10」、距離センサ30から演出位置の可動役物10までの距離に相当する値が「80」であったとする。この場合、原位置の可動役物10と演出位置の可動役物10の距離は「70」ということになる(
図3参照)。
【0025】
原位置を「0%」、演出位置を「100%」とした場合において、可動役物10を「70%」の位置で停止させるとする(上記中途位置として「70%」の位置が設定されたとする)。つまり、可動役物10の移動範囲全体の70%分、可動役物10が原位置から演出位置に向かって変位した位置で可動役物10を停止させるとする。この場合、距離センサ30の出力値が10+(80-10)×0.70=「59」となるような位置で可動役物10を停止させればよいことになる。つまり、可動役物10の変位に伴って距離センサ30の出力値が比例的に変化するのであるから、比例計算に基づき中途位置に対応する距離センサ30の出力値(以下、特定値Tと称することもある)を算出する。上記例では当該特定値Tが「59」になるということである(
図3参照)。そして、距離センサ30の出力が算出された特定値Tとなるまでモータを駆動する(特定値Tに到達した時点でモータを停止する)。これにより、可動役物10を中途位置に位置させることができる。
【0026】
このように、本実施形態にかかる遊技機1によれば、いわば距離センサ30の「実測値」であるといえる第一基準値D1および第二基準値D2に基づき、中途位置に対応した特定値Tを算出した上で、当該特定値Tを利用して可動役物10を中途位置に停止させる。そのため、可動役物10を中途位置で精度よく停止させることができる。
【0027】
第一基準値D1および第二基準値D2は、遊技機1の電源投入時に取得されるものであるから、距離センサ30の設置位置(組み付け)の精度、距離センサ30の品質のばらつき等の遊技機1の製造誤差の影響が抑制されるだけでなく、遊技機1が設置された遊技店の環境の影響等も抑制される。
【0028】
3)以下、上記実施形態にかかる遊技機1を改良、変形、具体化等した具体例について説明する。なお、可能であれば、以下の具体例を用いて説明する技術的事項を複数組み合わせて適用した構成としてもよい。
【0029】
○第一具体例
第一基準値D1および第二基準値D2が取得され、特定値Tが算出される度に、当該特定値Tに基づき距離センサ30の最大検出距離が設定される構成とする。例えば、第一基準値D1が「11」、第二基準値D2が「82」であり、中途位置が原位置を「0%」、演出位置を「100%」とした場合において「70%」の位置であるとする。この場合、「11」+「71(82-11)」×0.70=「60.7」が特定値Tとなる。すなわち、距離センサ30の出力値が「60.7」となるような位置が中途位置に相当することになる(
図4(a)参照)。
【0030】
当該特定値Tに基づき距離センサ30の最大検出距離が設定されるものとする。つまり、距離センサ30により可動役物10が検出される範囲(検出限界)が、「60.7」に相当する位置までになるように調整する。より具体的には、「0~60.7」の範囲が検出範囲となり、「60.7超」の範囲が検出範囲外となるように調整する(
図4(b)参照)。なお、かかる調整は使用する距離センサ30に応じたものとなる。その一例としては、図示しない検出回路に可変抵抗器を設け、当該可変抵抗器を調整することにより行うことができる。このような調整を行うことで、可動役物10が「原位置~中途位置」の範囲にあるときには距離センサ30に検出されるが、「中途位置~演出位置」の範囲にあるときには距離センサ30に検出されないことになる。
【0031】
したがって、可動役物10を中途位置に停止させる際には、検出状態(ON)および非検出状態(OFF)の一方から他方に切り替わったことを契機としてモータを停止させればよいことになる。具体的には、原位置側から変位する可動役物10を中途位置に位置させるときには、距離センサ30が検出状態から非検出状態に切り替わる時点でモータを停止させる。演出位置側から変位する可動役物10を中途位置に位置させるときには、距離センサ30が非検出状態から検出状態に切り替わる時点でモータを停止させる。
【0032】
このように、距離センサ30の検出・非検出(ON・OFF)状態の切り替わり(検出限界でのON・OFF切り替わり)で制御されるようにすることで、可動役物10を中途位置にて停止させる際の制御が容易になる。ただし、本例成は、可動役物10を停止させることがある中途位置が複数個所設定されるような構成には向かない。ある一つの中途位置にて距離センサ30の検出・非検出(ON・OFF)状態が切り替わるように設定しなければならないからである。
【0033】
○第二具体例
上記実施形態では、原位置検出センサ31を利用して可動役物10が原位置に位置するかどうかを判断した上で第一基準値D1を取得し、原位置から演出位置に変位させるのに必要な分モータを駆動して可動役物10を演出位置に位置させた上で第二基準値D2を取得することを説明した。つまり、距離センサ30とは別のセンサにより、基準となる位置(動作範囲の両端の少なくとも一方)に可動役物10が位置しているかどうかを確認した上で、当該位置での基準値を取得することを説明したが、このような別のセンサを用いずに基準値を取得する手法も考えられる。
【0034】
可動役物10は、原位置および演出位置において機械的なストッパ(図示せず)により停止させられるものとする。したがって、原位置に位置する可動役物10はそこからさらに演出位置から遠ざかる方向(本実施形態では上方)に移動することはできず、演出置に位置する可動役物10はそこからさらに原位置から遠ざかる方向(本実施形態では下方)に移動することはできない。
【0035】
電源投入時には、可動役物10は原位置に位置していると考えられる(
図5(a)参照)から、モータを駆動して可動役物10を演出位置に向かって変位させる。当該変位量(モータの駆動量)は、原位置から演出位置に可動役物10を変位させるのに必要な理論変位量を超える超過変位量とされる。例えば、論理変位量の120%を超過変位量(論理変位量×1.2=超過変位量)とする。このようにすることで、距離センサ30とは別の、可動役物10が演出位置に位置していることを検出するセンサを用いなくても、可動役物10が演出位置に位置している蓋然性が極めて高い状態を作り出すことができる。当該状態で、距離センサ30により、第二基準値D2を取得する(
図5(b)参照)。
【0036】
その後、モータを駆動して可動役物10を演出位置に向かって変位させる。当該変位量も超過変位量とされる。これにより、可動役物10が原位置に位置している蓋然性が極めて高い状態を作り出すことができる。当該状態で、距離センサ30により、第一基準値D1を取得する(
図5(c)参照)。
【0037】
本例によれば、基準となる位置に可動役物10が位置しているかどうかを判断するための、距離センサ30とは別のセンサが搭載されていなくても、第一基準値D1および第二基準値D2を取得することが可能である。
【0038】
なお、最初に第一基準値D1が取得されるようにしてもよい。最初に超過変位量分原位置に向かって可動役物10を移動させれば、可動役物10が原位置に位置している蓋然性が極めて高い状態を作り出すことができるから、当該状態にて第一基準値D1を取得する。その後、可動役物10を超過変位量分演出位置に向かって移動させた上で、第二基準値D2が取得されるようにすればよい。
【0039】
○第三具体例
取得した第一基準値D1および第二基準値D2を中途位置に対応する特定値Tを算出するためだけでなく、不具合発見にも利用することが考えられる。具体的には次の通りである。
【0040】
取得された第一基準値D1および第二基準値D2の差(差の絶対値)を算出する。当該「差」が、規定範囲(所定範囲)内にあるかどうかをみて、当該規定範囲外である場合には異常であると判断する。規定範囲は、原位置と演出位置との距離に基づき予め定められる範囲である。つまり、原位置と演出位置との距離は設計値として定められているところ、当該設計値の誤差であるとして許容できる長さを含めたものが規定範囲とされる。例えば、原位置と演出位置の設計値としての距離が(距離センサ30基準で)「100」であるとする。そして、許容できる誤差が「±3」であるとする。この場合、規定範囲は「97~103」の範囲ということになる。すなわち、第一基準値D1と第二基準値D2の差(差の絶対値)が「97~103」の範囲にない場合には、原位置に位置する可動役物10と演出位置に位置する可動役物10との距離が、許容できる誤差を超えるものであるとして異常と判断する(
図6参照)。
【0041】
なお、異常と判断された場合の処理はどのようなものであってもよい。一般的には、可動役物10の故障は、遊技者に直接的な損害を与えるものではない(いわゆる出玉に影響するものではない)ため、遊技店側のみが把握できるような態様で異常を報知することが考えられる。
【0042】
○第四具体例
上記実施形態では、遊技機1に電源が投入されたことを契機として基準値(第一基準値D1および第二基準値D2)が取得されることを説明したが、その他のタイミングで基準値が取得されるようにしてもよい。例えば、遊技機1の出荷段階にて第一基準値D1および第二基準値D2が取得され、それが記憶手段に記憶されるような構成としてもよい。ただし、上記実施形態のように、電源投入を契機として基準値が取得されるようにすれば、基本的には遊技店の営業日毎に基準値が取得されることになるから、その日の環境や部材の変形等に応じた基準値が得られることになり、より精度よく可動役物10を制御することが可能となる。
【0043】
また、基準値の取得を遊技店(遊技店員)が決めることができるようにしてもよい。すなわち、予め決められたボタン等の操作(遊技者は操作できない)がなされること契機として基準値が取得されるものとする。電源のON/OFF(再起動)は、遊技機1に生じた不具合解消等のために行われることもあるから、電源投入を契機とすると基準値を取得する必要がないタイミングで行われることもある。したがって、基準値の取得の要否を遊技店自らが決めることができるようにしてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0045】
上記実施形態にかかる遊技機1はいわゆるぱちんこ遊技機であるが、可動役物10を備えた遊技機であれば、回胴式遊技機等の他の遊技機に対しても同様の技術思想が適用可能である。
【0046】
上記実施形態から得られる具体的手段(遊技機)を以下に列挙する。
【0047】
・手段1
第一位置と第二位置との間を変位する可動役物と、前記可動役物の一部分または当該可動役物と一緒に変位する部分である対象部までの距離を測定するセンサであって、前記可動役物が変位することに伴って前記対象部までの距離が比例的に変化する位置に設けられた距離センサと、前記可動役物が前記第一位置に位置しているときの前記距離センサの測定値に基づく第一基準値、および前記可動役物が前記第二位置に位置しているときの前記距離センサの測定値に基づく第二基準値を取得する基準値取得手段と、を備え、前記可動役物を前記第一位置と前記第二位置の間の中途位置にて停止させる演出を実行するときには、前記第一基準値および前記第二基準値に基づく比例計算にて算出される特定値を利用して前記可動役物を前記中途位置にて停止させることを特徴とする遊技機。
上記遊技機は、距離センサの「実測値」に相当する第一基準値および第二基準値に基づき、中途位置に対応した特定値を算出した上で、当該特定値を利用して可動役物を中途位置に停止させるため、可動役物を精度良く制御することが可能である。
【0048】
・手段2
前記特定値に基づき前記距離センサの最大検出距離を設定した上で、当該距離センサが検出状態および非検出状態の一方から他方に移行したことをもって、前記可動役物を前記中途位置にて停止させることを特徴とする手段1に記載の遊技機。
このようにすることで、距離センサの検出範囲内に可動役物が位置しているか否かの切り替わり時点を基準として可動役物を中途位置にて停止させる制御を行うことができるから、制御が容易になる。
【0049】
・手段3
前記可動役物を変位させる駆動源を備え、前記可動役物を前記第一位置および前記第二位置の一方から他方に変位させるのに必要な理論変位量を超える超過変位量分、前記駆動源を前記第一位置または前記第二位置に向かって変位させた上で前記第一基準値または前記第二基準値を取得すること特徴とする手段1または手段2に記載の遊技機。
このようにすることで、距離センサとは別のセンサ(可動役物が第一位置または第二位置に位置していることを検出するセンサ)が無くても、第一基準値および第二基準値を取得することができる。
【0050】
・手段4
前記第一基準値と前記第二基準値の差が、予め設定された所定範囲内にない場合には、異常と判断することを特徴とする手段1から手段3のいずれかに記載の遊技機。
【0051】
・手段5
電源投入を契機として、前記第一基準値および前記第二基準値が取得されることを特徴とする手段1から手段4のいずれかに記載の遊技機。
このように遊技機の電源投入時に第一基準値および第二基準値が取得されるようにすれば、距離センサの設置位置(組み付け)の精度、距離センサの品質のばらつき等の遊技機の製造誤差の影響や、遊技機が設置された遊技店の環境の影響等も抑制される。
【符号の説明】
【0052】
1 遊技機
10 可動役物
11 対象部
30 距離センサ
D1 第一基準値
D2 第二基準値
T 特定値