(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】光学レンズ、光学レンズ成形金型及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20221122BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20221122BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G02B3/00
B29C33/38
B29C33/42
(21)【出願番号】P 2020161972
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520375550
【氏名又は名称】禾橙科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳俊傑
(72)【発明者】
【氏名】張家榮
(72)【発明者】
【氏名】黄智義
(72)【発明者】
【氏名】葉俊毅
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-527549(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163936(WO,A1)
【文献】特開2006-058850(JP,A)
【文献】特開2004-058183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00- 3/14
G02B 5/30
G02B 6/00- 6/54
B29C33/00-33/76
B29C39/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学レンズであって、
軸方向の周りに螺旋状に延びる螺旋面及び前記螺旋面によって周回された中間構造を含み、
前記中間構造は、前記螺旋面に対して一方の側に軸方向に延伸し、
前記螺旋面は周回して段差が形成され、
前記中間構造と前記螺旋面との間に円弧案内面を有し、前記中間構造から前記螺旋面までの前記円弧案内面の円弧半径は、0.001mm以上0.02mm以下であり、
前記中間構造は周壁を含み、前記周壁は、前記光学レンズの軸方向に対して1度以上20度以下の傾斜角を有
し、
前記中間構造は穴であり、
前記穴の穴底縁の直径は、0.001mm以上0.02mm以下である、
光学レンズ。
【請求項2】
前記段差は、5ミクロン(μm)以上20μm以下である請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記光学レンズの軸方向に垂直な参考平面を定義し、前記円弧案内面の外縁の接線方向は前記参考平面と第1夾角を画定し、前記螺旋面の外縁の接線方向は前記参考平面と第2夾角を画定し、前記第1夾角は前記第2夾角よりも大きい請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項4】
前記第1夾角は17.0度以上であり、前記第2夾角は0.70度以上である請求項
3に記載の光学レンズ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の光学レンズを製造するための成形金型であって、
軸方向の周りに螺旋状に延びる螺旋面及び前記螺旋面によって周回された中間構造を含み、
前記成形金型の中間構造は、前記成形金型の螺旋面に対して一方の側に軸方向に延伸し、
前記成形金型の螺旋面は周回して段差が形成され、
前記成形金型の螺旋面、中間構造及び段差は、それぞれ前記光学レンズの螺旋面、中間構造及び段差と相対的に相補的であり、
前記成形金型の中間構造は周壁を含み、前記成形金型の周壁は、前記成形金型の軸方向に対して1度以上20度以下の傾斜角を有
し、
前記成形金型の中間構造はボスであり、
前記ボスの端面の直径は、0.001mm以上0.02mm以下である、
成形金型。
【請求項6】
前記成形金型の中間構造と前記成形金型の螺旋面との間に円弧案内面を有し、前記成形金型の前記中間構造から前記螺旋面までの円弧案内面の円弧半径は、0.001mm以上0.02mm以下である請求項
5に記載の成形金型。
【請求項7】
前記成形金型の段差は、5μm以上20μm以下である請求項
5に記載の成形金型。
【請求項8】
前記成形金型の軸方向に垂直な基準平面を定義し、前記成形金型の円弧案内面の外縁の接線方向は前記基準平面と第1夾角を画定し、前記成形金型の螺旋面の外縁の接線方向は前記基準平面と第2夾角を画定し、前記成形金型の第1夾角は前記成形金型の第2夾角よりも大きい請求項
6に記載の成形金型。
【請求項9】
前記成形金型の第1夾角は17.0度以上であり、前記成形金型の第2夾角は0.70度以上である請求項
8に記載の成形金型。
【請求項10】
請求項
5に記載の成形金型を製造するための製造方法であって、
加工面を含む基体を提供するステップと、
前記加工面に前記成形金型の螺旋面、中間構造及び段差を加工形成するステップと、を含み、
カッターで前記加工面を切削して前記成形金型の螺旋面、中間構造及び段差を形成し、
選択された前記カッターのカッター刃の両側の円弧角は、それぞれ1μm以下の円弧角半径と1μmよりも大きく5μm以下の円弧角半径とを有し、
カッター刃の対向する両側に異なる円弧角を有するカッターを選択し、
前記カッターのカッター刃が相対的に小さい円弧角を有する一方の側を内側に向けた配置方式で前記加工面を切削する、
製造方法。
【請求項11】
前記基体における対向する切削経路が前記基体の軸方向周りに螺旋状に延びている請求項
10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記カッターの各切削経路は、前記基体の軸方向の周りに外から内へ螺旋状に前記加工面を切削する請求項
11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記カッターの各切削経路は、前記基体の相対的に高い位置から前記基体の軸方向に浅くから深くまで周回し、さらに前記基体の相対的に低い位置から前記基体の相対的に高い位置まで戻るように延びる請求項
11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ、光学レンズ成形金型及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信は、伝送効率がよく、電磁干渉に強く、かつ安定性が高い等の利点を有する。光ファイバは、伝送方式によりシングルモード光ファイバとマルチモード光ファイに分けることができる。ここで、マルチモード光ファイの直径は、光束の波長よりもはるかに大きいため、異なる波長と位相の光束を光ファイバの周壁に沿って連続的に反射して伝送することができる。長距離で伝送されると、異なるモードの間の伝送速度の差が発生し、モード分散及び光ファイバ中心の光束が高すぎるという問題を引き起こし、伝送距離が制限される。
【0003】
上記の問題を解決するために、一般的に螺旋位相板を用いて通過する光束を渦巻き光束に変換し、光強度が光ファイバの中央部分に集中することを避ける。しかしながら、螺旋位相板が製造しにくく、かつ従来の光通信モジュールが複数の光学素子を組み立てて光路の配置を完成させる必要があり、各該光学素子の設置位置のわずかなずれがいずれも光路の伝送経路に大きく影響し、正確な位置合わせが困難であり、加工しにくくかつ品質が均一ではなく、さらに伝送効果がよくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記の問題を解決するために、新規かつ進歩性を有する光学レンズ、光学レンズ成形金型及びその製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な目的は、構造が簡単で、製造プロセスが簡単で、光束が均一に分散され、加工精度が高くかつ微細化に役立つ光学レンズ、光学レンズ成形金型及びその製造方法を提供することである。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、光学レンズを提供し、軸方向の周りに螺旋状に延びる螺旋面及び前記螺旋面によって周回された中間構造を含み、前記中間構造は、前記螺旋面に対して一方の側に軸方向に延伸し、前記螺旋面は周回して段差が形成される。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、上記のような光学レンズを製造するための成形金型をさらに提供し、軸方向の周りに螺旋状に延びる螺旋面及び前記螺旋面によって周回された中間構造を含み、前記成形金型の中間構造は、前記成形金型の螺旋面に対して一方の側に軸方向に延伸し、前記成形金型の螺旋面は周回して段差が形成され、前記成形金型の螺旋面、中間構造及び段差は、それぞれ前記光学レンズの螺旋面、中間構造及び段差と相対的に相補的である。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、上記のような成形金型を製造するための製造方法をさらに提供し、加工面を含む基体を提供するステップと、前記加工面に前記成形金型の螺旋面、中間構造及び段差を加工形成するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の好ましい実施例の成形金型の斜視図である。
【
図2】本発明の好ましい実施例の成形金型の部分拡大図である。
【
図3】本発明の好ましい実施例のカッターの模式図である。
【
図4】本発明の好ましい実施例のカッターの部分拡大図である。
【
図5】本発明の好ましい実施例による該成形金型を製造する模式図である。
【
図6】本発明の好ましい実施例の光学レンズの模式図である。
【
図7】本発明の好ましい実施例の光学レンズの部分拡大図である。
【
図8】本発明の好ましい実施例の光学レンズによって生成される光束の均一分散の渦巻き効果の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の可能な実施形態を実施例を用いて説明するが、本発明の保護範囲を制限するものではないことを事前に説明する。
【0011】
図1~
図5は、本発明の好ましい実施例において以下のような光学レンズを製造するための成形金型2を示す。成形金型2は、軸方向21の周りに螺旋状に延びる螺旋面22及び該螺旋面22によって周回された中間構造23を含み、該成形金型2の中間構造23は、該成形金型2の螺旋面22対して一方の側に軸方向に延伸し、該成形金型2の螺旋面22は周回して段差24が形成される。
【0012】
本実施例では、該成形金型2の中間構造23はボスである、該ボスの端面の直径は0.001mm以上0.02mm以下である。該成形金型2の中間構造23と該成形金型2の螺旋面22との間に円弧案内面25を有し、該成形金型2の円弧案内面25の円弧半径は、0.001mm以上0.02mm以下である。該成形金型2の段差24は5μm以上20μm以下である。
該成形金型2の中間構造23は周壁231を含み、該成形金型2の周壁231は、該成形金型2の軸方向21に対して1度以上20度以下の傾斜角θ4を有する。該成形金型2の軸方向21に垂直な基準平面P2を定義し、該成形金型2の円弧案内面25の外縁の接線方向T3は該基準平面P2と第1夾角θ5を画定し、該成形金型2の螺旋面22の外縁の接線方向T4は該基準平面P2と第2夾角θ6を画定する。該成形金型2の第1夾角θ5は、該成形金型2の第2夾角θ6よりも大きく、該成形金型2の第1夾角θ5は17.0度以上であり、該成形金型2の第2夾角θ6は0.70度以上であり、好ましくは、該第1夾角θ5は約17.2度であり、該第2夾角θ6は約0.72度である。
【0013】
図6~
図7は、本発明の好ましい実施例の光学レンズ1を示す。光学レンズ1は、軸方向11の周りに螺旋状に延びる螺旋面12及び該螺旋面12によって周回された中間構造13を含み、該中間構造13は、該螺旋面12に対して一方の側に軸方向に延伸し、該螺旋面12は周回して段差14が形成される。ここで、該成形金型2の螺旋面22、中間構造23及び段差24は、それぞれ該光学レンズ1の螺旋面12、中間構造13及び段差14と相対的に相補的である。
【0014】
本実施例では、該中間構造13は穴(止まり穴又は貫通穴)であり、該穴の穴底縁の直径は、0.001mm以上0.02mm以下である。該中間構造13と該螺旋面12との間に円弧案内面15を有し、該円弧案内面15の円弧半径は、0.001mm以上0.02mm以下である。該段差14は、5ミクロン(μm)以上20μm以下である。該中間構造13は周壁131を含み、該周壁131は、該光学レンズ1の軸方向11に対して1度以上20度以下の傾斜角θ1を形成する。
該光学レンズ1の軸方向11に垂直な参考平面P1を定義し、該円弧案内面15の外縁の接線方向T1は該参考平面P1と第1夾角θ2を画定し、該螺旋面12の外縁の接線方向T2は該参考平面P1と第2夾角θ3を画定し、該第1夾角θ2は該第2夾角θ3よりも大きく、該第1夾角θ2は17.0度以上であり、該第2夾角θ3は0.70度以上であり、好ましくは、該第1夾角θ2は約17.2度であり、該第2夾角θ3は約0.72度である。
【0015】
該光学レンズ1は該成形金型2と構造的に相補的である。例えば、該光学レンズ1の中間構造13は穴であり、該成形金型2の中間構造23はボスであり、理解されるように、該光学レンズ1の中間構造13がボスである場合、該成形金型2の中間構造23は穴である。
【0016】
図1~
図5を参照する。本発明は上記のような成形金型2を製造するための製造方法をさらに提供し、加工面31を含む基体3を提供するステップと、該加工面31に該成形金型2の螺旋面22、中間構造23及び段差24を加工形成するステップと、を含む。必要に応じて、一度に複数の光学レンズを製造するために、該基体3に複数の成形キャビティを形成することができる。好ましくは、いずれかの隣接する2つの成形キャビティの間の隙間は、0.01mm以下であり、それにより、製造された各光学レンズの渦巻き光束が干渉しない。
【0017】
本実施例では、カッター4で該加工面31を切削して該成形金型2の螺旋面22、中間構造23及び段差24を形成し、該カッター4は、該基体3における対向する切削経路Sが該基体3の軸方向32の周りに螺旋状に延びている。切削時、該カッター4が固定で該基体3を回転させてもよく、又は該基体3が固定で該カッター4を回転させてもよく、又は該カッター4及び該基体3を同時に回転させてもよい。要は予め設定された切削経路Sに沿って該加工面31を切削することができればよい。詳しくは、該カッター4の各切削経路Sは、該基体3の相対的に高い位置から該基体3の軸方向に浅くから深くまで周回し、さらに該基体3の相対的に低い位置から該基体3の相対的に高い位置まで戻るように延びる。
該カッター4は、該基体3の軸方向の周りに外から内へ(又は内から外へ)螺旋状に該加工面31を切削する。ここで、カッター刃の対向する両側に異なる円弧角41、42を有するカッター4を選択し、且つ該カッター4のカッター刃が相対的に小さい円弧角41を有する一方の側を内側に向けた配置方式で該加工面31を切削する。好ましくは、選択された該カッター4のカッター刃の両側の円弧角41、42は、それぞれ1μm以下の円弧角半径と1μmよりも大きく5μm以下の円弧角半径とを有する。
【0018】
なお、上記の各構成の寸法条件は、該光束の渦巻きの均一分散に有利であり、また、該光学レンズを成形するための金型を最適な精度で加工すること(例えば、ダイヤモンドカッターを用いること)を可能にし、該金型の加工製造が容易であり、型抜きが滑らかになる(該傾斜角による)。上記した該光学レンズを成形するための金型をダイヤモンドカッターで加工する実施例では、金型の中心に近い位置まで加工すると加工限界があることを考えて、該ダイヤモンドカッターの該金型の中心に近い側は、その反対側よりも小さい半径のカッター刃の円弧角半径を有するように構成されており、加工による自然な円弧角半径を1μm以下に低減でき、加工精度及び製品の微小化に有利である。該金型の穴は、例えばレーザー加工によって形成されているが、他の加工方式で形成されていてもよい。
【0019】
図8は、本発明の光学レンズによって生成される光束の均一分散の渦巻き効果を示す。
図8から明らかなように、該光学レンズの螺旋面の作用により、光線が螺旋状に均一に分散され、且つ該光学レンズの中間構造(例えば穴又はボス)の作用により、光線が均一に分散されて該中間構造の周辺を取り囲み、光束が中央部分に集中し過ぎることを回避でき、モード分散及び光ファイバ中心の光束が高すぎて伝送距離を制限するという問題を効果的に解決する。ここで、該渦巻きレンズの直径、螺旋面の角度、中間構造の寸法、段差の寸法等の条件の異なる数値を組み合わせることにより、異なる光学的効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 光学レンズ
2 成形金型
3 基体
4 カッター
11、21 軸方向
12、22 螺旋面
13、23 中間構造
131、231 周壁
14、24 段差
15、25 円弧案内面
31 加工面
32 軸方向
41、42 円弧角
P1 参考平面
P2 基準平面
S 切削経路
T1、T2、T3、T4 接線方向
θ1、θ4 傾斜角
θ2、θ5 第1夾角
θ3、θ6 第2夾角