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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】脊椎円板を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/48 20060101AFI20221122BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20221122BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20221122BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20221122BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20221122BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20221122BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20221122BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20221122BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20221122BHJP
   A61F 2/28 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
A61L27/48
A61P19/08
A61L27/50
A61L27/20
A61L27/16
A61L27/58
A61L27/44
A61L27/10
A61M5/32 540
A61F2/28
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021005260
(22)【出願日】2021-01-15
(62)【分割の表示】P 2017537395の分割
【原出願日】2016-01-15
(65)【公開番号】P2021072902
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】62/104,632
(32)【優先日】2015-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507063665
【氏名又は名称】スピネオベイションズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】アレン、ネヴィル
(72)【発明者】
【氏名】マネシス、ニコラス、ジョン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101502676(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0043973(KR,A)
【文献】特表2008-509935(JP,A)
【文献】特表2008-511420(JP,A)
【文献】特表2011-525493(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0168038(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L、A61M、A61F、A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸を含有する非ゲル化溶液に懸濁された複数の微粒子を含み、
該微粒子が、少なくとも120℃のガラス転移温度を有する架橋PMMA微粒子を含む、
椎間板の疾患および/または損傷を治療するための、インプラント用作用剤。
【請求項2】
ヒアルロン酸を含有する前記溶液が、架橋ヒアルロン酸を含む、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項3】
前記PMMAの微粒子が、15ミクロンから250ミクロンの間の平均直径を有する、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項4】
前記溶液中のヒアルロン酸の濃度が、1.0%から3.0%の間である、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項5】
前記溶液中のヒアルロン酸の濃度が、1.6%から2.4%の間である、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項6】
前記作用剤中のヒアルロン酸の分子量が、1.6MDaより大きい、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項7】
前記作用剤中のヒアルロン酸の分子量が、2.8MDaより大きい、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項8】
前記作用剤中のPMMAの濃度が、25%から50%の間である、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項9】
前記作用剤中のPMMAの濃度が、38%から48%の間である、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項10】
前記溶液が、50,000から200,000センチポイズの間の粘度を有する、請求項1に記載のインプラント用作用剤。
【請求項11】
請求項10に記載のインプラント用作用剤、および、
完全に滅菌された、該作用剤を含有するシリンジを含む、医療用キット。
【請求項12】
前記シリンジが、サイズが18ゲージから25ゲージの間の範囲の針を包含する、請求項11に記載の医療用キット。
【請求項13】
前記シリンジが、900ミクロン以下の内径、1300ミクロン以下の外径、および3インチ以上の長さの針を有する、請求項11に記載の医療用キット。
【請求項14】
前記針が、450から240ミクロンの間の内径、750から450ミクロンの間の外径、および5インチ以上の長さを有する、請求項11に記載の医療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2105年1月16日付けで出願された「Method of Treating Spinal Internal Derangement」という名称の米国仮特許出願第62/104632号に基づく優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景発明の分野
本発明は、一般的に、外科用インプラントに関し、より詳細には、脊椎円板の人工材料(alloplastic)インプラントおよび手順に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
脊椎円板は、髄核と呼ばれる中央の領域を含み、髄核は、線維輪として知られる第2の領域によって取り囲まれている。線維輪の一部はコラーゲン繊維を含んでいるが、コラーゲン繊維は、弱化したり、破裂したり、または断裂したりする可能性があるため、線維輪による髄核の閉じ込めが損なわれて、椎間板膨隆、ヘルニア形成および他の椎間板の病状を引き起こす。永続的な、しばしば障害を引き起こす背痛の主な原因は、脊椎円板の線維輪の崩壊、脊椎円板の慢性炎症(例えばヘルニア形成)、または所与の脊椎円板を取り囲む椎体の相対的な不安定状態、例えばしばしば消耗性疾患により引き起こされる不安定状態である。いくつかのケースにおいて、脊椎円板の組織が修復不能に傷害を受けると、脊椎円板の一部または全体の脊椎円板を外科的に除去して、炎症および圧力の源をなくすことが必要となる。除去後、脊椎円板は、例えば将来的な髄核のヘルニア形成などの再発性の合併症の可能性を増加させ得る線維輪の欠損または開口を含有する可能性がある。
【0004】
このような欠損を処置するいくつかの方法は、罹患した脊椎円板にコラーゲンベースの懸濁化剤を含有する組成物を注射することに重点を置いている。例えば、米国特許第8,398,638号は、コラーゲン懸濁化剤中に懸濁した微粒子を包含する組成物を開示しており、このような組成物は、傷害を受けた脊椎円板を処置するのに利用できることを教示している。同様に、米国特許第8,586,089号は、患者の組織または体液を処置するための、架橋コラーゲンおよび生体適合性のゼラチンの形態の、微粒子および生体適合性担体の媒体の組成物を説明している。これは、組成物の粘度を改善するために、生体適合性担体の媒体中の架橋コラーゲンの比率を調整することに関する。より具体的には、米国特許第8,586,089号は、「変形抵抗」、「剪断弾性率」および「動的粘度」を改善することに加えて過剰な力を用いずに注射を可能にするために、生体適合性担体の媒体に架橋コラーゲンを使用することに関する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様によれば、線維輪で断裂したかまたは割れた無脊椎動物の脊椎円板を処置および密封するための方法が提供される。
【0006】
一実施形態において、脊椎円板を処置する方法は、脊椎円板に作用剤を送達することを含み、作用剤は、複数の微粒子およびヒアルロン酸を含む。
【0007】
別の実施形態において、医療用キットは、微粒子およびヒアルロン酸を含む作用剤と、少なくとも1つの脊椎円板を修復するために設計された1つまたは複数の外科用ツールとを含む。
【0008】
別の実施形態において、インプラント用作用剤は、脊椎円板の構造的な完全性を修復および/または改善することにおいて使用するための、複数の微粒子およびヒアルロン酸を含む。
【0009】
加えて、脊椎円板を処置する方法は、脊椎円板の内側部分に、複数の粒子を設置することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験動物13Yの椎間板切片L1-L2の髄核内の試験物質を写した図である。
【0011】
図2】試験動物13Rの椎間板切片L4-L5の髄核中のクレフトを写した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載されるあらゆる特徴または特徴の組合せは、文脈、この説明および当業者の知識から明らかなように、あらゆるこのような組合せに包含される特徴が互いに矛盾しないという条件で本発明の範囲内に包含される。加えて、いずれかの特徴または特徴の組合せが、いずれかの本発明の実施形態から具体的に排除されてもよい。本発明を要約する目的で、本発明の特定の態様、利点および新規の特徴が本明細書に記載される。当然ながら、このような全ての態様、利点または特徴が、本発明のいずれかの特定の実施形態で必ずしも具体化されるとは限らないことが理解されるものとする。
【0013】
本明細書における開示を参照すれば、単に便宜上および明確さのために、上部、底部、左、右、上、下、上方、下方、~を超える、~の上に、~の下に、~の真下に、後、および前などの方向を示す用語を使用する場合がある。このような方向を示す用語は、どのような形でも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書で示される実施形態は、例示を目的としており、限定を目的としないことが理解されるものとする。以下の詳細な説明の意図は、例示的な実施形態を論じることであるが、実施形態の全ての改変、代替案および均等物を、本発明の本質および範囲内に含まれる可能性があるものとして網羅することと解釈されるべきである。
【0014】
本発明は、脊椎円板内または脊椎円板上の欠損を選択的に処置するための組成物および方法を提供する。これらの手順としては、ヘルニアを起こした脊椎円板を処置するための椎弓切除術/椎間板切除術の手順、腰仙椎および頸椎における狭窄のための減圧椎弓切除術、内側椎間関節切除術(medial facetectomy)、腰仙椎後方と頸椎との固定術、椎骨の疾患に関連する脊椎側彎症の処置、椎間孔の上壁を除去して神経根圧迫を緩和するための椎間孔拡大術、ならびに前頚および腰椎椎間板切除術が挙げられる。これらの手順は、直視下手術(例えば、椎弓切開術、椎弓切除術、片側椎弓切開術および片側椎弓切除術)によって、または最小侵襲性の技術、例えば胸腔鏡検査、関節鏡検査、腹腔鏡検査、椎間板造影(例えば、後方、後外側、横方向、前方または前外側から脊椎円板への進入を介して経皮的に実行される)などを使用することによって実行され得る。
【0015】
本発明の態様によれば、断裂もしくは他の欠損、または脊椎円板の線維輪における裂けなどの脊椎円板の状態を密封するための、生体適合性の人工材料インプラントが提供される。生体適合性の人工材料インプラントは、破裂した脊椎円板に挿入され、髄核および/または線維輪の一部を満たして、密封をもたらすことができる。ある実施において、生体適合性の人工材料インプラントは、破裂した脊椎円板の中心領域に挿入される。特定の態様によれば、生体適合性の人工材料インプラントは、外科医が作り出した医原性の裂けまたはアニュロトミーを閉じるマイクロ椎間板切除術の後に髄核に挿入され、それによって再発性のヘルニア形成のリスクが最小化され、または例えば1つまたは複数の線維輪の断裂を密封するために椎間板造影術の後、注射可能なシーラントとして脊椎円板の中心に投与される。
【0016】
このような断裂または欠損が本発明を使用して処置される限り、再発性の脊椎円板ヘルニアのリスクおよび再建術の可能性を少なくするかまたはなくすことができる。このような再建は、典型的には、わずかに大きな切開、骨のより大きな切除、瘢痕組織の除去、より困難な収縮、出血の増加、麻酔時間の増加、および脳脊髄液(CSF)漏出、瘻孔、感染などにつながる、神経根の傷みまたは硬膜もしくは神経根のスリーブへ起こり得る傷害のリスクの増加を必然的に伴う。再建術の必要性を最小化する結果として、手術結果を改善することができ、同じレベルでの繰り返しの外科手術への必要性を低減することができる。
【0017】
さらに、例えば計画された固定術の上または下の隣接椎間を組み込む必要があるかどうかを確認するために、誘発性椎間板造影の使用が増加する可能性があることから、使用者は、隣接椎間への固定術の拡張を最小化するために、生体適合性の人工材料インプラントを点滴注入することができる。従来の手順を使用して、例えば、不安定な可動椎間の固定術を計画して、手術前の誘発性椎間板造影から隣接椎間(例えば、隣接する脊椎円板)も症状を示すことが明らかになった場合、そのレベルが融合塊(fusion mass)に包含されると予想される。しかしながら、本発明の態様によれば、本発明の生体適合性の人工材料インプラントは、線維輪の断裂または断裂の密封を助けるために、外科手術の前に隣接椎間に点滴注入することができる。ある実施において、本発明の生体適合性の人工材料インプラントは、手術前の誘発性椎間板造影中に、隣接椎間に点滴注入することができる。結果として、本発明の生体適合性の人工材料インプラントの使用は、マイクロ椎間板切除術または直視下椎間板切除術に限定されず、例えばイメージング研究により再現痛を引き起こす線維輪の断裂または裂けがあることが証明されている非観血的手術にも使用することができる。本発明のある実施に従って生体適合性の人工材料インプラントを取り付けることは、無症状ではなく、いつもと異なる痛みを生じない線維輪の断裂に特に適している可能性がある。
【0018】
生体適合性の人工材料インプラントの埋め込みは、非観血的手術の状況で実行される場合、後方中線または後外側からの進入または直接の横方向からの進入により達成することができる。直視下手術の状況で実行される場合、生体適合性の人工材料インプラントの埋め込みは、後方中線からの進入、後外側からの進入、前方、前外側、または直接の横方向からの進入により達成することができる。したがって、前方からの進入が前方椎間板切除のみに利用される場合、例えば問題となっている脊椎円板の破片または複数の破片を除去した後、本発明の生体適合性の人工材料インプラントを、その髄核のスペースにシリンジおよび針を介して点滴注入することが可能である。特定の実施において、材料は、例えば当業界において公知の標準的な経皮針および標準的なカテーテル先端などの可変の長さおよび直径を有するフレキシブルなカテーテルを介して導入することができる。例えば椎弓切除術またはマイクロ椎間板切除術が実行されている例示的な直視下手術では、本発明に従って、注射シリンジ、例えば3または4インチの18ゲージの針を有するシリンジの助けによって使用される場合、生体適合性の人工材料インプラントを注射することはより簡単であり得る。代表的な実施形態において、針のサイズは、14ゲージから26ゲージ、18ゲージから25ゲージ、または20ゲージから24ゲージ、または22から26ゲージの範囲であってもよい。特定の実施において、針のサイズは、20ゲージまたはそれより細く、21ゲージまたはそれより細く、または22ゲージまたはそれより細くてもよい。これらのゲージの分類は、業界標準の内径および外径に対応しており、18ゲージの針は、1300ミクロン(名目上は1270ミクロン)未満の外径および900ミクロン(名目上は838ミクロン)未満の内径を有する。22から26ゲージ範囲の針は、750から450ミクロンの間の外径、および450から240ミクロンの間の内径に対応する。一部の実施形態において、注射シリンジは、少なくとも3インチ、少なくとも5インチ、少なくとも6インチ、または少なくとも8インチの長さを有する針を包含していてもよい。一部の実施形態において、針は、ペンシルポイント針を含む。ペンシルポイント針は、線維輪中により小さい穿孔を作り出すことができ、それにより穿孔を介した生体適合性の人工材料インプラントの押出しを制限することができる。より小さい穿孔は、患者の快適性を改善することもできる。硬膜中のより大きい穿孔、例えば18ゲージの針で作り出された穿孔は、患者において頭頸部の痛み、例えば頭痛を引き起こす可能性がある。より小さい穿孔を生じる針、例えば25ゲージの針は、このような痛みのリスクを低減することができる。
【0019】
本発明の態様によれば、本発明の生体適合性の人工材料インプラントの成熟は、長期にわたり線維輪に追加的なまたは少なくとも部分的な安定化を付与することができ、それにより関与する可動部分に追加の支持を提供することができる。この生体力学における変化は、この可動部分に関する安定性の部分的な増加と言い換えることができる。線維輪の断裂を有することは、一般的に、可動部分の支持構造の弱化を引き起こす可能性がある。本発明の生体適合性の人工材料インプラントで脊椎円板の髄核を処置することは、特定の実施において、最大量の髄核材料を中心に配置したままにすることができ、および/または取り囲む線維輪の線維の完全性を増加させることができる。
【0020】
本発明の生体適合性の人工材料インプラントは、好ましくは、複数の微粒子および懸濁化剤を含む。懸濁化剤は、好ましくは、ヒアルロン酸を含む。ヒアルロン酸は、天然に存在する生分解性ポリマーである。ヒアルロン酸は、全ての動物組織の細胞外マトリックス中に見出すことができ、数々の生物学的機能に関与する。ヒアルロン酸は、体内組織に機械的な特徴を提供する。ヒアルロン酸はまた、細胞接着および細胞の運動性を調節することにおいても役割を有する。さらに、ヒアルロン酸は、細胞分化および増殖の操作に関与する。一部の実施形態において、ヒアルロン酸は、可溶化の前は粉末形態である。他の実施形態において、ヒアルロン酸は、可溶化の前は繊維の形態またはケークの形態であり得る。懸濁化剤は、水および塩類溶液の少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。さらに、懸濁化剤は、界面活性剤、例えばTween adと混合されていてもよく、これは、このような界面活性剤は、微粒子がより均一な分布を有するように水の表面張力を変化させるためである。懸濁化剤はまた、滅菌リン酸緩衝液(PBS)を包含していてもよい。特定の実施において、PBS中のヒアルロン酸の濃度は、最大で1.8%である。PBS中のヒアルロン酸の濃度は、1.0%から3.0%の間または1.6%から2.4%の間であってもよい。特定の実施において、PBS中のヒアルロン酸の濃度は、1.2%であり得る。
【0021】
傷害を受けた脊椎円板を処置するための以前の試みは、コラーゲンベースの懸濁化剤に重点を置いてきたが、ヒアルロン酸を含む懸濁化剤を包含する生体適合性の人工材料インプラントは、コラーゲンを利用する懸濁化剤を超える多くの利点を有する。ヒアルロン酸は、高度に親水性であるため、ヒアルロン酸が質量に対して大きい体積を占めることを可能にする。ヒアルロン酸の親水性の性質はさらに、生体適合性の人工材料インプラントの粘度を増加させるために、ヒアルロン酸を含む懸濁化剤への水分子の結合を可能にする。ヒアルロン酸を含む懸濁化剤は、水分子と結合することができ、したがって脊椎円板の内部への挿入後に粘度を増加させる。一般的に、組成物の粘度が高いほど、より太い針およびより大きい力を必要とし、したがって注射後に粘度を増加させることは、注射に使用される針の範囲を広くすることができる。さらに、注射後に粘度を増加させることは、脊椎円板中の針によって作り出された穿孔を介した押出しを防ぐことができる。ヒアルロン酸はまた、低濃度でゲルを形成することも可能であり、ヒアルロン酸のマトリックスに水が吸い込まれるときの圧迫力に耐えることができる。ヒアルロン酸はまた、組織または種特異性ではないことも実証されており、それにより例えば従来のコラーゲンを含む懸濁化剤を使用する場合に起こる可能性がある免疫応答または拒絶を最小にすることが可能である。
【0022】
これまでのコラーゲンベースのインプラントでの処置を改善しようとする試みは、懸濁化剤中の架橋コラーゲンの比率を変更することによって懸濁化剤の粘度を改善することに重点を置いてきた。ヒアルロン酸を含む懸濁化剤の粘度は、コラーゲンベースの懸濁化剤と比較して、傷害を受けた脊椎円板への注射およびその処置にとってより好都合である。ヒアルロン酸を含む懸濁化剤の粘度はまた、コラーゲンを含有するものより容易に調整することもできる。このような調整は、懸濁化剤中のヒアルロン酸の分子量、濃度、または架橋の量を変化させることによって達成できる。これらの特性は、別々に調整可能であり、それにより患者の必要性に従って懸濁化剤の粘度の制御を改善することができる。高濃度では、ヒアルロン酸は、ゼラチンの品質のような硬く粘性の品質を有し得る。同時に、ヒアルロン酸の剪断弾性率もまた、細い針を使用する注射を可能にする。これらの特性は、より大きい穿孔または力の増加を必要とすることなく改善された構造的な完全性を提供するインプラントの注射を可能にする。代表的な実施形態において、ヒアルロン酸を含む懸濁化剤の粘度は、20,000から約350,000センチポイズの範囲、有利には50,000から200,000センチポイズの間であってもよい。またヒアルロン酸は、生体適合性の人工材料インプラントの粘度を増加させるために、架橋されていてもよい。ヒアルロン酸は、より高度に架橋されると、より粘度も大きくなる。ヒアルロン酸は、高い消失および転換速度を有し得るが、これらの特性は、修飾および架橋を介して克服することができる。架橋の量が多いほど、劣化を妨ぎ、ヒアルロン酸を含む生体適合性の人工材料インプラントの寿命を延ばすことができる。懸濁化剤中のヒアルロン酸の濃度もまた、生体適合性の人工材料インプラントの寿命に影響を与え、ヒアルロン酸の濃度が高いほど、寿命はより長くなる。したがって、消失および転換の時間を制御して、患者の必要性に対応させることができる。一部の実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、2℃から8℃の間または室温で貯蔵された場合、少なくとも12ヶ月の貯蔵寿命を有し得る。特定の実施において、生体適合性の人工材料インプラントは、2℃から8℃の間または室温で貯蔵された場合、少なくとも18ヶ月の貯蔵寿命を有し得る。
【0023】
ヒアルロン酸の粘性特性もまた、生体適合性の人工材料インプラントの注射中に作り出された穿孔からの押出しを防ぐように作用し得る。ヒアルロン酸の親水性の性質は、完全に飽和するまでヒアルロン酸を水分子と結合させる。完全に飽和していないヒアルロン酸を含有する生体適合性の人工材料インプラントの注射は、脊椎円板の内部に設置された後に、懸濁化剤がより多くの水分子に結合することを可能にする。円板の内部でヒアルロン酸が水分子に結合すると、円板内部の材料の粘度および体積を増加させることができ、その結果として、注射時に作り出された針の穿孔を介して押出しが起こることを防ぐ。
【0024】
線維輪は、放射状に6mmから8mmの間と測定される。線維輪は、15から40層の間の範囲の複数のコラーゲン層(薄層)を包含する。髄核に導入された針は、コラーゲン層を横断する。線維輪への針の導入により切断ではなく線維輪の線維の大部分の圧迫が起こるように、針はスタイレットを包含していてもよく、それにより注射プロセスの結果としての偶発的な組織の除去を防ぐ。注射後に針が除去されたら、穿孔の開いた組織は、少なくとも部分的に縮小する可能性がある。例えば、22ゲージの針は、およそ700ミクロンの外径を有する。22ゲージの針の除去時に、線維輪の層中の穿孔は、およそ350ミクロンまたはそれ未満の直径を有することになる。針が除去されると、少なくとも複数の層を通る穿孔が相殺され得るように、コラーゲン層は再び順応することができる。さらに、コラーゲン層は網目状になっており、接着特性を有する。押出しが起こる場合、インプラントは、各コラーゲン層を横断することになる。軸方向の負荷に応答して、低い粘性を有する材料は、各コラーゲン層を通って押し出される可能性があるが、高い粘性の材料、例えばヒアルロン酸を包含する生体適合性の人工材料インプラントは、押出しに耐え得る。一部の実施形態において、このような材料としては、約70ミクロンの平均直径を有するマイクロスフェアが挙げられる。
【0025】
懸濁化剤中のヒアルロン酸の濃度は、飽和レベルに影響を与えることができる。ヒアルロン酸の濃度が高いほど、完全に飽和した状態になるのにより多くの水分子を必要とすることになる。したがって、要求に応じて飽和の量が変化するように、懸濁化剤中のヒアルロン酸の濃度を調整することができる。代表的な実施形態において、懸濁化剤中のヒアルロン酸の濃度は、12~50mg/mlの範囲であってもよい。20mg/mlを超える濃度は、大量の水と結合することができ、その結果として、押出しが起こるのを防ぐのに好都合であり得る。
【0026】
代表的な実施形態において、ヒアルロン酸の平均分子量は、少なくとも1.6MDa、少なくとも2.8MDa、または少なくとも3MDaであり得る。一部の実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、10Nから30Nの間の押出力を使用して押し出されてもよい。ヒアルロン酸は、剪断減粘性ポリマーである。またヒアルロン酸の分子量が高いほど、より大きい剪断減粘作用を有する。またヒアルロン酸の分子量が高いほど、埋め込み後、体内でより長く存続することができる。インビボでの劣化は、酵素による場合もあるし、または適用された力による場合もある。この劣化は、ポリマー鎖から低分子量の破片を切断することによって起こる可能性がある。より高い分子量のヒアルロン酸の使用は、切断後もポリマーのより大きい切片が残ることになり、それにより、インプラントがインビボで存続できる時間が改善される。さらに、3MDaの分子量のヒアルロン酸を有する生体適合性の人工材料インプラントの劣化は、それでもなお相当の粘度を有する材料をもたらす。一部の実施形態において、ヒアルロン酸は、95%より高い純度を有していてもよい。ヒアルロン酸の水分のパーセンテージは、8%から15%の間であり得る。一部の実施形態において、ヒアルロン酸の水分のパーセンテージは、20%未満であり得る。
【0027】
本発明の生体適合性の人工材料インプラントは、好ましくは、複数の微粒子を含み、代表的な実施形態において、該微粒子は、固体微粒子を含み得る。複数の微粒子は、ポリメタクリレート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、硬化ポリマー、完全重合ポリマー、およびガラスの1つまたは複数を含んでいてもよい。PMMAマイクロスフェアは、直鎖状(非架橋)であってもよいし、または架橋されていてもよい。架橋PMMAは、非架橋PMMAほど脆性ではない場合があり、したがってより高い弾性を有し、負荷または加重下で割れる傾向が低い。改変された実施において、微粒子は、全てが固体でなくてもよく、例えば中空または多孔質の微粒子を含む実施である。生体適合性の人工材料インプラントは、ある実施において、組織適合性の固体を粉末の形態で含んでいてもよい。固体を形成する微粒子は、ヒアルロン酸を含む懸濁化剤に取り込まれていてもよい。本明細書で使用される場合、用語「微粒子」は、500ミクロンまたはそれ未満の平均直径を有する微粒子(例えば、ダストまたは粉末の形態で)を指す。平均直径は、典型的には約20ミクロンより大きく、そうであれば、微粒子は、大きすぎて単球によって「貪食される」ことがない。微粒子は、それらがリンパ路または他の組織の管を通って埋め込み部位から洗い流されるのを防ぐのに十分な直径を有していてもよい。微粒子が球状の形態を有さない場合、直径は、本明細書で使用される場合、最も小さい断面積の最大直径を指す。しかしながら、直径が4から5ミクロンまたは5から10ミクロンの範囲のより小さい微粒子を使用することも可能である。代表的な実施形態において、微粒子は、約15から約300ミクロン、約15から250ミクロン、約40から300ミクロン、約20から250ミクロン、約80から180ミクロン、約40ミクロンから110ミクロンまたは約50から約100ミクロンの平均直径を有していてもよい。懸濁化剤中のヒアルロン酸の使用は、コラーゲンを含む懸濁化剤での平均直径と比べて、微粒子のより大きい平均直径を可能にし、一部の実施において、約80から300ミクロンの範囲の平均直径が可能になる。代表的な形状において、微粒子は、細いゲージのカニューレ(例えば、18ゲージ)または注射シリンジを介して所望の脊椎円板領域に注射するのに十分な程度に小さい。本明細書で特定される直径を有する粒子は、周囲組織、すなわち、莢膜嚢の硬膜または神経根のスリーブに対して、相対的に最小の作用を有するものでもよい。
【0028】
一部の実施形態において、直鎖状または非架橋PMMAマイクロスフェアは、105℃のガラス転移温度(Tg)を有していてもよい。このガラス転移温度は、オートクレーブ処理に使用される温度(およそ120℃)と接触するときに、PMMAマイクロスフェアの球形度および機械特性が失われる温度であり得る。架橋PMMAマイクロスフェアは、熱および機械的な曝露に対して生体適合性の人工材料インプラントをより安定にすることができるより高いガラス転移温度を有する。一部の実施形態において、PMMAは、120℃またはそれより高いガラス転移温度を有するのに十分な量に架橋されていてもよい。一部の実施において、PMMAは、135℃またはそれより高いガラス転移温度を有するのに十分な量に架橋されていてもよい。一部の実施において、PMMAは、130℃またはそれより高いガラス転移温度を有するのに十分な量に架橋されていてもよい。架橋PMMAマイクロスフェアは、架橋剤を包含していてもよい。架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレートを挙げることができ、これは、生体適合性の人工材料インプラントの濃度の1%(w/w)未満であってもよい。
【0029】
使用される微粒子の形成された表面およびサイズのために、それらは内因性マクロファージによって異物として検出されず、したがって防御反応は起こらない。代表的な実施形態によれば、微粒子は、それらが埋め込まれた部位で密接に充填された配置を形成することが可能であり、さらに瘢痕組織により個々に封入され得る球状の形態または球状のような形態を有する。
【0030】
角およびエッジがない滑らかな表面を有する微粒子は、組織適合性であってもよく、動的にバランスの取れた状態であってもよく、楕円形および球状の形態の少なくとも一方を有していてもよい。例えば、複数の微粒子は、典型的には複数のマイクロスフェアを含んでいてもよく、これらは、自由な微粒子として脊椎円板に挿入されて、そこに自由な微粒子のままでいることができる。
【0031】
本発明の代表的な実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、20~60%のマイクロスフェアを含んでいてもよい。一部の実施形態において、20~60%のマイクロスフェアを含む生体適合性の人工材料インプラントはまた、20~50mg/mlの範囲の濃度でヒアルロン酸を含有する懸濁化剤を含んでいてもよい。20~50mg/mlの範囲内のヒアルロン酸の濃度を、20~60%の範囲のマイクロスフェアのパーセンテージと組み合わせることにより、22~23ゲージの針を介して注射できるが、脊椎円板内部で水分子と結合した後の体積および粘度の増加のために針によって作り出された穿孔を通って押し出されない生体適合性の人工材料インプラントをもたらすことができる。一部の実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、25~75%のマイクロスフェアを含んでいてもよい。
【0032】
一部の実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、25%から50%(w/w)の間のPMMA、30%から50%(w/w)の間のPMMA、38%から50%(w/w)の間のPMMA、38%から48%の間のPMMA、38%から44%(w/w)の間のPMMA、38%から42%(w/w)の間のPMMA、43%から44%(w/w)の間のPMMA、または40%から50%(w/w)の間のPMMAを含んでいてもよい。一部の実施形態において、PMMAは、少なくとも95%の純度を有していてもよい。
【0033】
本発明の代表的な実施形態において、複数の微粒子は、PMMAマイクロスフェアを含んでいてもよい。PMMAの使用は、シリコーンのような生体適合性インプラントで従来使用される他のポリマーより低い接着力および摩擦係数を生じさせることができる。上記で説明したように、注射後に円板の内部で水と結合するためには、より高度に架橋され、より高濃度のヒアルロン酸懸濁化剤が望ましい。しかしながら、このような懸濁化剤の粘度の増加は、注射のためにより太い針の使用を必要とする可能性がある。PMMAマイクロスフェアの使用は、生体適合性の人工材料インプラント中に存在する接着力および摩擦係数を低減することができ、より細い針を使用する注射を可能にし、したがって起こり得る押出しに対してより小さい穿孔を作り出す。
【0034】
本明細書に記載される材料および方法の一態様は、医師により比較的細い針を用いて材料を円板に注射することができるが、材料は注射後に、患者における針による穿孔から押し出されない。これは、インプラント材料中に、線維輪を通って注射された後にその場での材料の重合、ゲル化、またはそれ以外の方法での硬化を引き起こすいかなるゲル化または硬化剤も使用せずに、本発明の実施形態により達成される。それゆえに、単純な組成のインプラントを使用して、注射後の有害反応または合併症のリスクを低減することができる。
【0035】
従来の誘発性CT椎間板造影中に、開口状態での脊椎円板の圧力が測定されることが多い。椎間板造影の状況、または上述の手順のいずれかにおいて、本発明の特定の態様によれば、例えば脊椎円板の少なくとも部分的な密封が完全に達成され得るように、脊椎円板の髄核への、好ましくは髄核中央の領域への生体適合性の人工材料インプラントの導入によって、その脊椎円板の開口圧力を有意に変更することが可能である。
【0036】
脊椎円板への生体適合性の人工材料インプラントの埋め込みの結果として、例えばある実施において、髄核が線維輪の欠損の近傍に位置ずれするように、埋め込み部位(例えば、髄核の中間、またはより好ましくは一部の実施形態では髄核の中央の領域)から例えば線維輪の欠損の方向に向かって髄核を位置ずれさせることによって、密封または閉鎖を線維輪の欠損中に形成することができ、それにより脊椎円板または欠損の少なくとも1つの特性を強めるかまたはそれ以外の方法でそれらに影響を与えるのに役立つ。本発明の別の実施において、例えば、線維輪の欠損に直接的なまたはそのすぐ近傍での髄核への生体適合性の人工材料インプラントの導入を介して密封または閉鎖を線維輪の欠損中に形成することができ、それにより脊椎円板または欠損の少なくとも1つの特性を増強するかまたはそれ以外の方法でそれらに影響を与えるのに役立つ。例えば、生体適合性の人工材料インプラントが、非観血的な様式または直視下の様式のいずれかで注射されるかまたは挿入される場合、さらに、中心で十分な量の生体適合性の人工材料インプラントが設置される(および/またはそれらの凝固または成熟が起こる)場合、髄核の支持が増加することにより、結果として線維輪の完全性の増加だけでなく、例えば髄核の安定性の増加も生じさせることができる。
【0037】
髄核に一旦設置されたら、生体適合性の人工材料インプラントは、脊椎円板の生理学的構造の少なくとも1つの特徴を模擬するか、またはその代わりとなるものを提供することができる。例えば、生体適合性の人工材料インプラントは、脊椎円板を模擬して、部分的な人工円板として機能するか、または部分的な人工髄核として機能することができる。したがって、生体適合性の人工材料インプラントの埋め込み後、椎間板造影像の形態学的研究を改善することができる。例えば、髄核内における生体適合性の人工材料インプラントの微粒子の蓄積および/または微粒子周辺での瘢痕組織の蓄積は、脊椎円板の内側および/または線維輪の外側部分に特定の物理的安定性を付与することができる。シーラント(すなわち、生体適合性の人工材料インプラント)が成熟した後(例えばインプラントの微粒子周辺での永続的な瘢痕組織の形成を介して、例えば宿主組織に取り込まれた後)の後続の試験は、髄核の圧力勾配の増加を生じさせることができる。また、注入される生体適合性の人工材料インプラントの量に比例して脊椎円板腔の高さのわずかな増大も達成することができ、この増加は、脊椎円板から脊椎円板までで様々であり得るが、代表的な実施形態において約3から4立方センチメートル(cc)を超えず、典型的には約0.5から1.5ccの範囲内である。注射中、円板から針を除去する間に針の先端が円板外面から約3~5mm以内のときにシリンジプランジャーで圧力を放出することが有利である。
【0038】
微粒子の成熟に関して、代表的な実施形態において微粒子はPMMAの球状ビーズを含んでいてもよく、PMMAビーズのサイズおよび物理的安定性の結果として、それらは、貪食または溶解され得ない。異物を隔離するために、動物の体は、瘢痕組織の形態中の異物の周りに線維だけで壁を作ることができる。このようなプロセスは、動物の体で破壊できないほとんど全ての異物で起こる。生体適合性の人工材料インプラントの取り付けおよび脊椎円板の一部の何らかの除去(適切な場合)の前に、または実質的にそれと同時に、椎骨端板の上および下に付着した線維輪の線維を、例えば端板のエッジから点状出血が起こるように、最低限に切除してもよい。
【0039】
本発明の実施形態に従って使用される微粒子にとって、微粒子がそれらの表面上に鋭い変わり目を有さないように、滑らかな表面を有し、角およびエッジがないことが有利であり得る。加えてそれらは、いかなる種類の尖端または先細りの突起も有さない場合がある。1つの実施によれば、表面は、孔を有さない。別の実施において、表面は、孔を含んでいてもよい。滑らかな、特に球状の粒子が有利であり得るが、一部の実施形態では、角または尖端などを有する滑らかではない微粒子が、それでもなお本発明の脊椎円板処置の適用で使用されてもよい。
【0040】
完全重合したPMMAは、組織適合性であり、有害な毒性または発癌性の反応を起こすことなくヒトの体内に取り込むことができることから、これらは、化学的および物理的に不活性および生体適合性とみなすことができる。これらの理由のために、PMMAポリマーは、顔および頭蓋における骨欠損のプラスチック被覆のための骨セメントなどのインプラント、または股関節全置換術または膝関節全置換術などの場合におけるインプラントの製造にすでに使用されている。このポリマーはまた、人工の歯、同様に人工心臓弁の製造、ならびに眼内レンズおよび透析膜の製造にも使用されている。一部の実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、3%未満のMMA単量体を有するPMMAを包含していてもよく、MMA分子は、水に不溶性である。3%未満のMMA単量体を有するPMMAは、非毒性であり、生体適合性である。一部の実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントの内毒素レベルは、0.06EU/ml未満であってもよい。一部の実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、6.5から7.5の間のpH値を有していてもよい。特定の実施において、生体適合性の人工材料インプラントは、7.0から7.5の間のpH値を有していてもよい。
【0041】
懸濁化剤の構成要素の混合比率は、必要に応じて、特に注射に使用されるシリンジのサイズに応じて選択することができる。例えば、ヒアルロン酸を含む懸濁化剤の粘度は、溶液中のヒアルロン酸の分子量、濃度、または架橋の量を変更することによって制御することができる。本発明の実施形態に従って使用される微粒子の適用または注射のために、微粒子は、流体の不活性媒体中に懸濁されるかまたはスラリー化されてもよい。ある特定の実施において、2体積部の懸濁化剤および1体積部の微粒子またはポリマー微粒子の比率が選択される。
【0042】
生体適合性の人工材料インプラントの代表的な実施形態は、以下:(i)PBS中でヒアルロン酸を水和させる工程、(ii)PMMA粒子を添加する工程、(iii)組成物を攪拌する工程、(iv)シリンジにインプラントを充填する工程、および(v)オートクレーブを介して滅菌する工程によって加工することができる。オートクレーブ処理は、約120℃の温度で実行されてもよい。スチームオートクレーブ滅菌は、オートクレーブ処理温度より高いガラス転移温度を有するPMMAマイクロスフェアに損傷を与えない。生体適合性の人工材料インプラントは、完全に安定化されてもよく、これは、オートクレーブ滅菌は、すでにバレル中がインプラントで満たされたシリンジ全体に実行することができ、無菌材料の加工および充填の必要性をなくすことを意味する。
【0043】
加えて、組織化促進機能を有する(tissue-promoting)インプラントを用いて腱および靱帯を処置および/または修復するのに必要なエレメントを含有する医療用キットを生産してもよい。このようなキットは、所定量のインプラント、および送達デバイス、例えばシリンジまたは他のアプリケーターを包含していてもよい。また、従来の脊椎円板へのアクセスおよびその修復外科手術で使用される1つまたは複数の外科用ツールが、任意選択で有利にこのようなキットに提供されてもよい。
【0044】
好ましい一実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、滅菌PBSと、1.6MDaより大きい分子量、95%より高い純度、8%から15%の間の水分のパーセンテージおよび1.0%から3.0%の間のPBS中の濃度を有する、直鎖状でインプラントグレードの内毒素非含有の非滅菌ヒアルロン酸とを有する懸濁化剤を包含していてもよい。生体適合性の人工材料インプラントはまた、130℃より高いガラス転移温度、40から110ミクロンの間の平均直径、95%より高い純度、生体適合性の人工材料インプラントの25%から50%の範囲内のPMMAの濃度を有し、80%より大きい上述の下側および上側規格限界内に一致する、非滅菌で内毒素非含有の架橋PMMAマイクロスフェアを包含していてもよい。生体適合性の人工材料インプラントは、標準的な医療グレードの皮下注射針を有する長さ1mlのガラスのプレフィル可能なシリンジと共に使用することができ、この針は、少なくとも3インチの長さであり、20ゲージまたはそれより細い。シリンジは、針の接続のために標準的な雌ルアーコネクターを有していてもよい。生体適合性の人工材料インプラントは、0.06EU/ml未満の内毒素レベル、6.5から7.5の間のpH、および2℃から8℃の間で貯蔵された場合12ヶ月より長い貯蔵寿命を有していてもよい。満たされたシリンジは、蒸気滅菌されて、10-6の滅菌保証レベルを有していてもよい。
【0045】
別の好ましい実施形態において、生体適合性の人工材料インプラントは、滅菌PBSと、2.8MDaより大きい分子量、95%より高い純度、8%から15%の間の水分のパーセンテージおよび1.6%から2.4%の間のPBS中の濃度を有する、直鎖状でインプラントグレードの内毒素非含有の非滅菌ヒアルロン酸とを有する懸濁化剤を包含していてもよい。生体適合性の人工材料インプラントはまた、130℃より高いガラス転移温度、50から100ミクロンの間の平均直径、95%より高い純度、生体適合性の人工材料インプラントの38%から48%の範囲内のPMMAの濃度を有し、90%より大きい上述の下側および上側規格限界内に一致する、非滅菌で内毒素非含有の架橋PMMAマイクロスフェアを包含していてもよい。生体適合性の人工材料インプラントは、標準的な医療グレードの皮下注射針を有する長さ1mlのガラスのプレフィル可能なシリンジと共に使用することができ、この針は、少なくとも6インチの長さであり、21ゲージまたはそれより細い。シリンジは、針の接続のために標準的な雌ルアーコネクターを有していてもよい。生体適合性の人工材料インプラントは、0.06EU/ml未満の内毒素レベル、670から7.5の間のpH、および2℃から8℃の間または室温で貯蔵された場合18ヶ月より長い貯蔵寿命を有していてもよい。満たされたシリンジは、蒸気滅菌されて、10-6の滅菌保証レベルを有していてもよい。
【0046】
実験データ
HTL Biosciencesのヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸のナトリウム塩)およびSyringa Lab SuppliesのGanzpearl GM-5003架橋PMMAポリ(メタクリル酸メチル)マイクロスフェアを包含する生体適合性の人工材料インプラントを使用して実験を実行した。ヒアルロン酸ナトリウムは、25℃で2.92m/kgの固有粘度および3.1Mdaの平均分子量を有していた。PMMAマイクロスフェアは、53から106ミクロンの直径範囲を有し、66.15ミクロンの平均直径、63.51ミクロンの中位径、および10.02ミクロンの標準偏差を有していた。マイクロスフェアの1%未満は、50~100ミクロンの範囲外の直径を有していた。PMMAマイクロスフェアの比重は1.19であった。
【0047】
押出力の試験
2015年11月11日に、上述した仕様でヒアルロン酸とPMMAマイクロスフェアとを有する生体適合性の人工材料インプラントの様々な組成物ごとに押出力の試験を実行した。インプラントを形成するとき、ヒアルロン酸ナトリウムを水和し、滅菌PBSで再溶解した。PMMAビーズを1NのNaOHで洗浄し、滅菌注射用水(SWFI)中で濯ぎ、乾燥させたが、滅菌しなかった。実験では、1ccのBD-Hypakシリンジを使用して、22ゲージ、6インチのRELI脊髄用針を介してインプラントを押し出た。試験前に、シリンジをオートクレーブした。シリンジは、15から81psiにゆっくり増加させ空気過圧により排気しながら、120℃に15分間曝露して完全な滅菌を受けた。3種の配合物を試験した:配合Aは、2.0%のPBS中のヒアルロン酸の濃度を有し、40.5%(w/w)のPMMAを包含し;配合Bは、2.0%のPBS中のヒアルロン酸の濃度を有し、42.5%(w/w)のPMMAを包含し;配合Cは、2.2%のPBS中のヒアルロン酸の濃度を有し、42.5%(w/w)のPMMAを包含する。1.5インチ/分および2.5インチ/分のシリンジ移動速度で各配合物を試験し、各移動速度につき3つの異なるシリンジを使用した。較正済みの50lbのロードセルを有するMark-10フォーススタンドで、押出力の試験を室温で実行した。以下の表1に、試験された配合物および測定された平均押出力を要約する。
【0048】
【表1】
【0049】
ヒツジの研究
北米科学協会(NAMSA)により、1.2%(w/w)ヒアルロン酸、40.5%(w/w)架橋PMMAマイクロスフェア、および58.3%(w/w)緩衝化PBSの組成物を包含する試験物質を使用して研究を実行した。ヒアルロン酸は、3.0MDaの平均分子量を有していた。PBSは、7.1のpHおよび300mOs/Lの浸透圧モル濃度を有していた。PMMAマイクロスフェアは、53から106ミクロンの平均直径を有していた。PMMAビーズのガラス転移温度は135℃であり、比重は1.19であった。PMMAマイクロスフェアはさらに連結剤も含有していた。この配合物の回転粘度を、1つの技術を使用して、89,000センチポイズ、4秒-1の剪断速度および29.0Nの押出力で測定し、別の技術を使用して、190,000センチポイズ、1秒-1の剪断速度で測定した。
【0050】
研究の目的は、ヒツジの椎間板に埋め込まれた生体適合性の人工材料インプラントに対する局所的な組織応答を評価することであった。以下のパラメーター:髄核の損失を伴うクレフト形成、髄核マトリックスの崩壊、軟骨細胞様細胞のクローン、分葉、椎体への髄核の押出し、炎症、血管新生、および神経の内部成長を測定した。
【0051】
試験された動物の脊柱を位置マーカー記号と共にNAMSAに提出した。動物13Rは、安楽死および組織収集フォームによれば、第3腰椎の横突起に配置されたワイヤーマーカーを有していた。動物88Yは、安楽死および組織収集フォームによれば、第3腰椎の横突起に配置されたワイヤーマーカーを有していた。動物35Yは、安楽死および組織収集フォームによれば、第3腰椎の横突起に配置されたワイヤーマーカーを有していた。動物13Yは、安楽死および組織収集フォームによれば、第2腰椎の横突起に配置されたワイヤーマーカーを有していた。方向および円板の配置は、各動物につきワイヤーマーカーから決定された。
【0052】
各動物の脊柱を10%中性緩衝ホルマリン中に浸し、NAMSAに発送した。NAMSAに到着後、腰椎を横断面に沿って切断し、脊椎機能単位(すなわち、頭蓋椎部の尾部側の半分、椎間板および尾椎の頭蓋側の半分)を作り出した。腰部の脊椎機能単位(FSU)を10%中性緩衝ホルマリン中で固定して、十分な固定を確実なものとした。骨のこぎりを使用して椎間板の環状断片を収集し、脱灰し、加工して、パラフィンブロックに埋め込んだ。各椎間板の最低でも3つの組織切片(厚さ4~5μm)を調製して、髄核の領域および上にある脊髄および脊柱管の1つの組織切片を捕獲した。これらの切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0053】
3ヶ月のインターバルにわたり、髄核および線維輪を包含する損傷のないおよび損傷した椎間板の細胞構造の、試験物質に関連する所見および顕微鏡観察による外観に関して、グループ1からの4匹の動物の椎間板を評価した。試験物質の存在、分布および変化、例えば封入を評価した。損傷のないおよび損傷した椎間板の髄核マトリックスにおける以下の発見:髄核の損失を伴うクレフト形成、髄核マトリックスの崩壊、軟骨細胞様細胞のクローン、分葉、椎体への髄核の押出し、炎症、血管新生、および神経の内部成長を評価した。
【0054】
試験物質は、4匹全ての動物につきL1-L2およびL3-L4と標識された椎間板切片中に見出された非染色性マイクロスフェアであった(図1)。図1は、試験動物13Yの椎間板切片L1-L2の髄核内の試験物質を示す。8つの処置された椎間板のいずれにおいてもマイクロスフェアの存在に対する組織反応(封入など)は存在しなかった。マイクロスフェアは、全体的にクラスター状であり、AFのバンド間にわずかに存在していたが大部分が髄核中に存在していた(例えば、13YのL1-L2)。マイクロスフェアはときにはクラスター中で組織化されており、好塩基性のマトリックス材料の薄層によって取り囲まれていた。
【0055】
いくつかの損傷した椎間板(35YのL2-L3;13RのL2-L3;13YのL1-L2;13YのL3-L4および88YのL3-L4)の場合を除き、4匹全ての動物につきL2-L3およびL4-L5と標識された椎間板切片中に、顕微鏡観察により傷害の証拠(すなわち、髄核中のクレフト、通常は大きい)が見られた(図2)。図2は、傷害の結果生じる試験動物13Rの椎間板切片L4-L5の髄核中のクレフトを示す。髄核は、軟骨細胞様細胞のクローンおよびマトリックスの崩壊などの変性性の変化を有する。傷害の顕微鏡観察による証拠の欠如は、組織切片の面が原因であることが考えられた。
【0056】
損傷した椎間板(処置済みまたは処置なし)における顕微鏡観察による発見が、損傷のない椎間板(L5-L6およびL6-L7)にも存在しており、これらを椎間板における非特異的な変性性の発見とみなした。顕微鏡観察による発見には、髄核マトリックスの崩壊、クレフト、髄核マトリックスの分葉およびクローンを形成する軟骨細胞様細胞の存在が含まれていた。
【0057】
組織学的切片中に椎間板腔の明らかな狭窄は存在しなかった。髄核の隣接する椎体への局所性の頭部の押出しが、88YのL3-L4に存在し、髄核の隣接する椎体への尾部の押出しが、88YのL6-L7椎間板に存在していた。この発見を非特異的な変性性の状態とみなした。炎症、血管新生および神経の内部成長は、椎間板切片では見られなかった。
【0058】
3ヶ月のインターバルの後、線維輪の断裂によって損傷を受けたヒツジの椎間板において、試験物質に対する組織反応は存在しなかった。以下の表2に試験動物に関する情報を示す。
【0059】
【表2】
【0060】
代表的な方法および使用
本発明は様々な態様を有することが理解されよう。これらの態様のいくつかによれば、生体適合性の人工材料インプラントは、線維輪の融着または破裂した脊椎円板などの脊椎円板の欠損の密封に利用することができる。生体適合性の人工材料インプラントは、破裂した脊椎円板に挿入され、髄核または線維輪の一部を充填して、密封をもたらすことができる。ある実施において、生体適合性の人工材料インプラントは、破裂した脊椎円板の中央の領域に挿入される。生体適合性の人工材料インプラントの破裂した脊椎円板への挿入は、再発性の脊椎円板ヘルニアのリスクを少なくし、脊椎円板の構造的な完全性または衝撃吸収能の少なくとも一部を回復することができる。
【0061】
本発明の一部の態様において、ヒアルロン酸を含有する生体適合性の人工材料インプラントは、円板に挿入される。特定の実施形態において、ヒアルロン酸は、これまでに本明細書で述べられた複数の微粒子のための担体または懸濁化剤として作用する。ヒアルロン酸を含有する生体適合性の人工材料インプラントは、シリンジおよび針で、例えば当業界において公知の標準的な経皮針および標準的なカテーテル先端などの可変の長さおよび直径を有するフレキシブルなカテーテルを介して、または注射シリンジ、例えば3または4インチの18ゲージの針を有するシリンジの助けによって挿入されてもよい。代表的な実施形態において、針のサイズは、14ゲージから26ゲージの範囲であってもよい。一部の実施形態において、針のサイズは、20ゲージから24ゲージの範囲であってもよい。一部の実施形態において、針は、ペンシルポイント針を含む。
【0062】
ヒアルロン酸は、微粒子のための担体として作用し、線維輪における断裂もしくは割れまたは脊椎円板で形成される他の欠損を処置することにおいて有利であり得る。ヒアルロン酸は、将来的な合併症を防ぐためにヘルニア形成の前、および脊椎円板を修復し補強するためにヘルニア形成の後の両方で欠損を修正するように機能することができる。加えて、ヒアルロン酸は、脊椎円板の構造的な完全性を強化することができる。ヒアルロン酸の親水性の性質のために、PMMAビーズなどの微粒子と、ヒアルロン酸を包含する懸濁化剤とを包含する生体適合性の人工材料インプラントは、隣接する椎骨の端板から脊椎円板に水を引き入れることができる。このヒアルロン酸の特性は、処置された脊椎円板における円板高さの維持を助けることができる。さらに、ヒアルロン酸の親水性の性質はまた、注射中に作り出された線維輪中の一時的な針の穿孔を介した押出しを防ぐこともできる。微粒子とヒアルロン酸懸濁化剤とを包含する生体適合性の人工材料インプラントは、挿入後に水分子と結合して、円板内でのインプラントの粘度および体積を増加させることができる。粘度および体積の増加は、針の穿孔を介した押出しを防ぐことができる。したがって、水分子とヒアルロン酸懸濁化剤との結合が内部硬化プロセスとして作用して、円板からの押出しを防ぎ、加えて円板を修復し補強することができる。ヒアルロン酸懸濁化剤を包含する生体適合性の人工材料インプラントでの処置を介した修復および強化は、患者が背中の問題を修正するために繰り返しの手術を受けなくてもいいようにすることができる。処置は、背骨の安定性およびフレキシビリティー、加えて処置された脊椎円板の衝撃吸収特性を改善することができる。
【0063】
またヒアルロン酸は、崩壊しつつある、または弱化した脊椎円板を処置することにおいても有利であり得る。ヒアルロン酸は、そのような円板を強化して欠損を修正することができる。したがって、ヒアルロン酸懸濁化剤を包含する生体適合性の人工材料インプラントは、背痛を軽減し、崩壊しつつあるまたは弱化した円板によるさらなる合併症を防ぐことができる。
【0064】
またヒアルロン酸懸濁化剤を包含するインプラントの実施形態は、計画された固定術に隣接する円板を処置することにおいても有益であり得る。これらの円板は、ヘルニア形成、断裂または欠損を発生させるより高いリスク下にある可能性がある。また固定術も、隣接する脊椎円板中の前から存在する何らかの欠損を悪化させるように作用する場合がある。微粒子を含有するヒアルロン酸懸濁化剤は、さらなる合併症を防ぐために、前から存在する断裂を処置し、計画された固定術の前または後に隣接する円板の構造的な完全性強化するために使用することができる。
【0065】
本発明に係る脊椎円板を処置する方法は、脊椎円板中の欠損を確認すること、および脊椎円板に人工材料増量剤を挿入することによって、欠損を処置することを含んでいてもよく、人工材料増量剤は、複数の微粒子およびヒアルロン酸を含む懸濁化剤を含む。欠損を確認することは、例えば、スコープを介して欠損を確認することを含んでいてもよい。典型的な実施において、欠損を確認することは、脊椎円板の部分的に断裂したまたは薄くなった線維輪内の髄核の位置ずれを含む局所性の膨出を確認することを含んでいてもよいし、脊椎円板の線維輪中の裂けを介して脊椎円板の内部とつながったままの位置ずれした髄核を含む押出しを確認することを含んでいてもよいし、または脊椎円板の内部とつながったままではない位置ずれした髄核を含む隔離状態を確認することを含んでいてもよい。
【0066】
挿入することは、スコープを介して脊椎円板の少なくとも一部を見ながら脊椎円板に人工材料増量剤を挿入することを含んでいてもよい。スコープは、ビデオ透視装置を含んでいてもよく、挿入は、透視装置によりガイドすることができる。ある実施において、人工材料増量剤を脊椎円板に挿入する間の可視化を容易にするために、人工材料増量剤は、水溶性の放射線不透過性色素を含浸させることができる。放射線不透過性色素は、バリウムを含んでいてもよい。典型的な実施において、挿入は、脊椎円板の髄核に、約3または4立方センチメートル(cc)またはそれ未満の人工材料増量剤を挿入することを含んでいてもよく、特定の実施において、挿入は、脊椎円板の髄核に、約0.5から1.5立方センチメートル(cc)の人工材料増量剤を挿入することを含む。
【0067】
挿入に続いて、脊椎円板の高さを増大させることを行ってもよく、高さの増大は、脊椎円板に挿入される人工材料増量剤の量に比例する。本発明の一態様によれば、挿入に続いて、挿入前の脊椎円板の構造的な完全性と比較して、脊椎円板の構造的な完全性を改善することを行ってもよい。例えば、脊椎円板の線維輪の安定性は、挿入前の線維輪の安定性と比べて改善されてもよく、それによって挿入前の可動部分の生物力学的な特性と比較して、脊椎円板の可動部分の生物力学的な特性が改善される。
【0068】
脊椎円板が、上部椎骨および下部椎骨の少なくとも1つと近接して並列される場合、上部椎骨および下部椎骨の一方または両方の端板に、少なくとも1つの開口部が、形成されてもよい。典型的には、脊椎円板は、上部椎骨と下部椎骨との間に並列され、上部椎骨および下部椎骨の少なくとも1つの端板または複数の端板に、複数の開口部が形成される。開口部または複数の開口部は、針を使用して形成することができ、針は、例えば椎間板造影術などの進行中の手順中に脊椎円板にすでに存在するものでもよい。
【0069】
本明細書で開示された方法の代表的な実施において、欠損は、脊髄の線維輪の欠損を含む。例えば、欠損は、内部円板の障害を含んでいてもよい。脊椎円板への人工材料増量剤の挿入により、脊髄の線維輪の欠損中およびその周りに密封を形成することができる。この密封は、例えば挿入前の脊椎円板の安定性と比べて脊椎円板に安定性の増加を付与することによって、挿入前の脊椎円板の可動部分と比較してより安定した脊椎円板の可動部分を作り出すことができる。
【0070】
挿入は、椎間板造影術中に実行することができ、欠損は、少なくとも1つの線維輪の裂けを含み得る。椎間板造影術中に、確認は、少なくとも1つの裂けを最初に可視化することを含んでいてもよく、それに続いて、挿入は、同じ椎間板造影術中に実行される。本明細書で開示された発明の方法の1つの実施によれば、椎間板造影術は、誘発性椎間板造影術を含み、その場合、確認は、少なくとも1つの裂けを最初に可視化することを含み、挿入は、同じ誘発性椎間板造影術中に実行される。
【0071】
別の実施によれば、椎間板造影術は、後方、後外側、横方向、前方または前外側から脊椎円板への進入の1つを介して経皮的に実行することができる。
【0072】
他の実施において、挿入は、直視下手術中に実行することができ、椎弓切開術、椎弓切除術、片側椎弓切開術および片側椎弓切除術直視下手術の1つにおいて、シリンジおよび針を使用して、脊椎円板に人工材料増量剤を挿入することを含んでいてもよい。
【0073】
脊椎円板に実行することができる本発明の別の方法は、脊椎円板に、複数の微粒子およびヒアルロン酸を含む懸濁化剤を含む増量材を送達することを包含する。送達は、脊椎円板に注射デバイスを挿入した後に行ってもよく、増量材は、注射デバイスによって脊椎円板に送達されてもよい。脊椎円板が、上部椎骨端板および下部椎骨端板の少なくとも1つと近接して位置する場合、本方法は、上部椎骨端板および下部椎骨端板の少なくとも1つに1つまたは複数の開口部または穿孔を形成することを含んでいてもよい。
【0074】
増量材の送達は、脊椎円板の髄核、例えば脊椎円板の中央または非外周領域に増量材を送達することを含んでいてもよい。送達は、脊椎円板における状態を検出した後に行ってもよく、増量材は、状態を処置するために脊椎円板に送達されてもよい。さらに、微粒子は、例えばマイクロスフェアのような形状であってもよく、ヒアルロン酸を含む懸濁化剤中に均一に分布していてもよい。さらに、状態の検出は、脊椎円板の部分的に断裂したまたは薄くなった線維輪中の円板内部の物質の位置ずれを検出することを含んでいてもよく、送達は、脊椎円板に、およそ約3から4立方センチメートル(cc)またはそれ未満の量の増量材を送達することを含んでいてもよい。
【0075】
上述した技術の効能は、生体適合性の人工材料インプラントの埋め込み後の数週間にわたり患者を低下した活動レベルで維持することによってさらに改善することができる。活動レベルを低下させることで、生体適合性の人工材料インプラントは、およそ3~4週間で線維輪が治癒し得るまで円板中に留まることができる。注射針によって生じた穿孔は、中心から外部への線維輪の治癒のために経時的にサイズが減少する。したがって、押出しの最大のリスクは、最初の2~3週間の間に起こる。したがって、上述した技術は、生体適合性の人工材料インプラントの埋め込み後の2~3または3~4週間にわたり患者の活動を低下させるさらなる工程を包含していてもよい。
【0076】
また本明細書に記載される技術は、イヌおよびネコなどの家庭用ペットを処置するための有利な作用に使用できることにも留意されたい。これらのケースにおいて、椎骨固定術および類似の手順は、法外な費用がかかることが多く、したがって円板修復のための少しでも低い費用の技術が有益である。
【0077】
上記で説明した実施形態は、一例として提供されたものであり、本発明は、これらの実施例に限定されない。前述の説明を考察して、当業者は、互いに矛盾しない程度に、開示された実施形態の複数のバリエーションおよび改変に想到するであろう。加えて、本明細書に記載の開示を考慮すれば、他の組合せ、省略、置き換えおよび改変は、当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、開示された実施形態によって限定されることを意図しない。
図1
図2