(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】半導体集積回路用トレー
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20221122BHJP
B65D 85/90 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L21/68 U
B65D85/90 100
(21)【出願番号】P 2021042525
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】592180476
【氏名又は名称】シノン電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133120(JP,A)
【文献】特開2005-014937(JP,A)
【文献】特開平06-298290(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0091213(KR,A)
【文献】中国実用新案第201049818(CN,Y)
【文献】米国特許第05418692(US,A)
【文献】特開2005-173356(JP,A)
【文献】特表2001-508735(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129805(WO,A1)
【文献】特開2003-081381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体集積回路を個々に収容できるように構成された複数のポケットを有する半導体集積回路用トレーにおいて、
半導体集積回路の基板の周縁部を下方から支持するための支持段部の支持面が水平面に対して
3度~10度の俯角を有しつつ、各ポケットの周縁の
ほぼ垂直な壁から該ポケットの内側へ延びているとともに、該支持段部は、該支持面の延びた先の端縁に沿って所定の曲率半径のアールつまり丸みを帯びていることを特徴とする、半導体集積回路用トレー。
【請求項2】
上記周縁のほぼ垂直な壁の上辺に繋がる斜面であって、上記ポケットの入口へ向けて上記ポケットの開口面積を大きくするように形成された斜面を有する、請求項1に記載の半導体集積回路用トレー。
【請求項3】
上記所定の曲率半径は、0.2mm~0.8mmの範囲内から選択された曲率半径であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の半導体集積回路用トレー。
【請求項4】
上記ポケットは、平面視で40mm×40mm四方以上の概ね四角形の形状の基板を有する所定の半導体集積回路を収容できるように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の半導体集積回路用トレー。
【請求項5】
各ポケットの裏側の位置に凹所が形成されており、複数の該半導体集積回路用トレーが重ね合わされたとした場合に、下段の該半導体集積回路用トレーのポケット内に収容されている半導体集積回路の基板の上面の周縁部を覆う段部の天井面が3度~10度の仰角を有しつつ、上段の該半導体集積回路用トレーの上記凹所の周縁の壁から上記凹所の内側へ延びているとともに、該段部は、該天井面の延びた先の端縁に沿って0.2mm~0.8mmの曲率半径のアールつまり丸みを帯びていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の半導体集積回路用トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路(IC等)を収容するための半導体集積回路用トレーに関し、詳しくは、比較的大きい寸法を有する半導体集積回路の基板の銅箔部分のソルダーレジストに擦り傷や剥がれが生じることを抑える半導体集積回路用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路用トレーには、半導体集積回路を収容するための複数のポケットが形成されている。従来の半導体集積回路用トレー(以下、単に「トレー」ともいう。)においては、そのポケットの周縁の壁から、半導体集積回路の基板の周縁部を下方から支持するための支持段部が水平方向に延在している。この支持段部があることにより、PGAやBGA等のグリッドアレイ系の半導体集積回路の基板を支持する場合においても、その半導体集積回路の底面の端子がポケットの内底面に接触してしまうことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-238660号公報
【文献】特許第5051797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば40mm×40mm四方以上の寸法を有する大型の半導体集積回路の基板については、トレーのポケット内に形成されている支持段部の支持面との接触面積が大きいこともあり、トレーの搬送時などにおいて、トレーのポケット内に収容されている半導体集積回路の基板の底面の周縁部の銅箔部分のソルダーレジストが、トレーの支持段部の支持面に接触して擦られると、ソルダーレジストに擦り傷や剥がれなどが生じてしまうことがある。
【0005】
或いは、半導体集積回路の製造時や搬送時に外力(応力)を受けて、半導体集積回路の基板に反りが生じている場合、支持段部の鋭い先端縁に何度も接触することにより、その基板の上面や底面に適用されているソルダーレジストが少しずつ剥がれてしまうことがある。ここで反りが生じている場合とは、半導体集積回路が外力を受けて瞬間的に反る場合を含む。
【0006】
そこで、半導体集積回路の基板の上面や底面に適用されているソルダーレジストに擦り傷や剥がれが生じることを防ぐことのできる半導体集積回路用トレーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の半導体集積回路を個々に収容できるように構成された複数のポケットを有する半導体集積回路用トレーにおいて、半導体集積回路の基板の周縁部を下方から支持するための支持段部の支持面が水平面に対して僅かに下傾しつつ、各ポケットの周縁の壁から該ポケットの内側(中央寄り)へ延びているとともに、該支持段部は、該支持面の延びた先の端縁に沿って所定の曲率半径のアールつまり丸みを帯びていることを特徴とする、半導体集積回路用トレーを提供する。
【0008】
一実施例においては、水平面に対して僅かに下傾している支持面の俯角が3度~10度の範囲内から選択された角度であることを特徴とする。
【0009】
一実施例において、上記所定の曲率半径は、0.2mm~0.8mmの範囲内から選択された曲率半径であることを特徴とする。
【0010】
さらなる実施例において、ポケットは、平面視で40mm×40mm四方以上の概ね四角形の形状の基板を有する所定の半導体集積回路を収容できるように構成されている。一例として、平面視で約40mm×60mmの基板を有する半導体集積回路を収容できるように構成されている。
【0011】
また、各ポケットの裏側の位置に凹所が形成されており、複数の該半導体集積回路用トレーが重ね合わされたとした場合に、下段の該半導体集積回路用トレーのポケット内に収容されている半導体集積回路の基板の上面の周縁部を覆う段部の天井面が3度~10度の仰角を有しつつ、上段の該半導体集積回路用トレーの凹所の周縁の壁から凹所の内側へ延びているとともに、該段部は、該天井面の延びた先の端縁に沿って0.2mm~0.8mmの曲率半径のアールつまり丸みを帯びていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施例における半導体集積回路用トレーの斜視図。
【
図2】一例における半導体集積回路の基板の(a)上面と、(b)底面を示す斜視図。
【
図3】(a)一実施例における半導体集積回路用トレーの平面図。(b)
図3(a)に示されているA-A線に沿って切り出された半導体集積回路用トレーの断面図。(c)
図3(b)において一点鎖線で囲まれている部分を拡大して示す図。
【
図4】(a)半導体集積回路の反りのない基板がトレーに収容されている状態を示す拡大図。(b)半導体集積回路の反りのある基板がトレーに収容されている状態を示す拡大図。
【
図5】(a)半導体集積回路用トレーの裏面側の平面図。(b)
図5(a)に示されているB-B線に沿って切り出された半導体集積回路用トレーの断面図。(c)
図5(b)において一点鎖線で囲まれている部分を拡大して示す図。
【
図6】(a)複数のトレーからなるスタックを示す図。(b)トレーのスタックの上下が逆さにされている状態を示す図。
【
図7】
図6(b)において一点鎖線で囲まれている部分のトレー内を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の半導体集積回路用トレーについて、添付の図面を参照しつつ以下に説明する。
【0014】
図1は、一実施例における半導体集積回路用トレー1の斜視図である。トレー1の表面側に、半導体集積回路の基板30(
図2(a)及び
図2(b)を参照)を個々に収容するための複数のポケット2が形成されている。半導体集積回路用トレー1は、例えば、硬質なプラスチック材料から形成されており、3つの半導体集積回路を収容できるように3つのポケットを有する。しかし、他の実施例において、半導体集積回路用トレー1は、3つ以外の個数のポケットを有する場合もある。また、半導体集積回路の基板の周縁部を下方から支持するための支持段部4が、ポケット2の周縁を画定している壁からポケット2の内側へ向かって少しだけ(例えば約5mm)延在している。このような支持段部4によって、トレー1のポケット2内に収容されるべき半導体集積回路の基板30が下方から支持されることとなる。
【0015】
図2(a)は、一例における半導体集積回路の基板30の上面を示す。この半導体集積回路の基板30の上面42に、銅箔部分のソルダーレジスト44が適用され得る。
【0016】
図2(b)は、一例における半導体集積回路の基板30の底面32を示す。
図2(b)に示されているように、半導体集積回路の基板30がグリッドアレイ系(PGA/BGA)の基板である場合には底面32に複数の端子34が設けられている。さらにこの底面32に、ソルダーレジスト44が適用され得る。
【0017】
図3(a)は、本発明の半導体集積回路用トレー1の表面側の平面図である。一実施例において、各ポケット2は平面視で概ね四角形の形状に形成されている。他の実施例において、各ポケット2は、該ポケット2内に収容されるべき半導体集積回路の基板の形状に応じて、四角形以外の形状に形成されている場合もある。本発明のトレー1は、比較的反りが生じ易い大型の半導体集積回路を収容するのに適しており、平面視で40mm×40mm四方以上(特には、平面視で50mm×50mm四方以上)の概ね四角形の形状の基板を有する所定の半導体集積回路用のトレーとして使用される場合において充分な効果を奏するものである。
【0018】
図3(b)は、
図3(a)に示されているA-A線に沿って切り出されたトレー1の断面図である。トレー1の使用者は、複数のトレー1を重ね合わせてスタックにする際に、トレー1の外周縁に沿って形成されている外周壁14付近を互いに係合させることにより、複数のトレー1の位置決めをすることができる。また、トレー1の搬送時に振動を受けた半導体集積回路の基板30が水平方向に動いたとしても、トレー1のポケット2内の支持段部4が基板30の底面32の端子34(
図2(b)を参照)に接触しないように設計されている。
【0019】
図3(c)は、
図3(b)において一点鎖線で囲まれている部分を拡大して示す図である。
図3(c)に示されている実施例においては、半導体集積回路の基板30の周縁部36を下方から支持するための支持段部4の支持面6が5度の俯角を有しつつ、ポケット2の周縁の壁から該ポケット2の内側へ延びているとともに、支持段部4は、該支持面6の延びた先の端縁8に沿って0.3mmの曲率半径のアール(R)つまり丸みを帯びている。このような丸みが形成されている支持段部4の先端縁8に、半導体集積回路の基板30の周縁部36が繰り返し接触したとしても、基板30の底面32のソルダーレジスト44が摩耗してしまうことはない。
【0020】
図4(a)は、半導体集積回路の反りのない基板30が、本発明のトレー1のポケット2内に収容されている状態を示す。半導体集積回路の基板30の周縁部36を下方から支持するための支持段部4の支持面6が水平面に対して僅かに下傾しつつ、ポケット2の周縁の壁からポケット2の内側へ延びていることにより、ポケット2内の支持段部4に支持されるべき半導体集積回路の基板30の底面32の周縁部36の端縁だけが支持面6に接触する。つまり、本発明の半導体集積回路用トレー1は、半導体集積回路の反りのない基板30に対しては、その底面32の周縁部36との接触面積が非常に小さいことにより、基板30の底面32の銅箔部分のソルダーレジスト44に擦り傷を生じさせにくいという利点を有する。
【0021】
図4(b)は、半導体集積回路の反りのある基板30aが、本発明のトレー1のポケット2内に収容されている状態を示す。トレー1のポケット2内の支持段部4の支持面6が、水平面に対して僅かに下傾しつつポケット2の壁から該ポケット2の内側へ延びているため、半導体集積回路の基板3
0aに反りが生じている場合に、ポケット2内の支持段部4に支持されるべき半導体集積回路の基板3
0aの反りの程度に応じて底面32の周縁部36が支持段部4の支持面6に徐々に(緩やかに)接触する。さらには、支持段部4の先端縁8に沿ってアールつまり丸みが形成されているので、半導体集積回路の基板3
0aの底面32のソルダーレジスト44が摩耗しにくい。本発明のトレー1はこうして、半導体集積回路の反りのある基板30aの底面32のソルダーレジストに擦り傷や剥がれが生じることを防ぐこともできる。
【0022】
図5(a)は、一実施例における半導体集積回路用トレー1aの裏面側を示す平面図である。この半導体集積回路用トレー1aについては、ポケット2の裏側となる位置に凹所16が形成されており、この凹所16は、複数のトレー1aが積み重ねられたときに下段のトレー1aのポケット2内に収容されるべき半導体集積回路の基板の上方を覆うように構成されている。一実施例において、凹所16の開口部は平面視で概ね四角形の形状に形成されている。さらには、該凹所16内の周縁の壁から段部18が延在している。
【0023】
図5(b)は、
図5(a)に示されているB-B線に沿って切り出されたトレー1aの断面図である。また、
図5(c)は、
図5(b)において一点鎖線で囲まれている部分を拡大して示す図である。トレー1aの凹所16の段部18の天井面20が3度~10度の仰角(
図5(c)においては5度の仰角)を有しつつ凹所16の周縁の壁から内側へ延びているとともに、段部18の端縁22と側壁26との境目に沿って、0.2mm~0.8mmの曲率半径(
図5(c)においては0.3mmの曲率半径)のアールつまり丸みが形成されている。
【0024】
図6(a)は、複数のトレー1aが積み重ねられて結束バンド28を使って束ねられた状態のスタックを示す。図示されているスタックにおいて最上段の位置にあるトレー1a-3は、半導体集積回路の基板30を収容することなく、スタックの蓋として使用されている。また
図6(b)は、スタックの上下が不意に或いは意図的に逆さにされたときの状態を示す。
【0025】
図7は、
図6(b)において一点鎖線で囲まれている部分のトレー内部を拡大して示す断面図である。凹所16の段部18の天井面20が3度~10度の仰角を有しつつ凹所16の内側へ延びているとともに、段部18の延びた先の端縁22にアールつまり丸みを帯びていることの作用効果について説明すると、トレーのスタックの上下が逆さにされたときに、それまでトレー1a-2のポケット2の支持段部4の支持面6によって支持されていた半導体集積回路の基板30bが、トレー1a-3の凹所16内へ落ち込み、凹所16の壁から僅かに下傾する段部18の天井面20によって下方から緩やかに支持されることとなる。また、半導体集積回路の基板30bの上面42が、段部18の先端縁22に接触したとしても、段部18が水平面に対して僅かに下傾しつつ先端縁22にアールつまり丸みを有するので、基板30bの上面42のソルダーレジスト44に擦り傷などが生じにくいという効果を奏する。
【0026】
以上のように、本発明の半導体集積回路用トレー1,1aは、ポケット内の支持段部の俯角及び/又は凹所内の段部の仰角と、支持段部及び/又は段部の先端縁に形成された丸みとを兼ね備えることにより、ポケット内に収容されるべき半導体集積回路の基板の上面や下面に適用されているソルダーレジストに擦り傷や剥がれが生じることを防ぐことができるように構成されている。
【符号の説明】
【0027】
1…トレー
1a…トレー
1a-1…トレー
1a-2…トレー
1a-3…トレー
2…ポケット
4…支持段部
6…支持面
8…(支持段部の)先端縁
10…(ポケットの)内底面
12…側壁
14…外周壁
16…凹所
18…段部
20…天井面
22…(段部の)先端縁
24…裏面
26…側壁
28…結束バンド
30…半導体集積回路の基板
30a…半導体集積回路の基板
30b…半導体集積回路の基板
32…底面
34…端子
36…周縁部
42…上面
44…ソルダーレジスト
46…端子
48…周縁部