(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】白金系化合物リン酸塩及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20221122BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20221122BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C07F15/00 F CSP
A61K31/282
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021511557
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 CN2019103147
(87)【国際公開番号】W WO2020043144
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】201811017816.X
(32)【優先日】2018-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519213850
【氏名又は名称】ベイジン ショウバイ ファーマシューティカル カンパニー,リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ゼジュン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0368281(US,A1)
【文献】特表2014-523905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0312534(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0269706(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0352220(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0205677(US,A1)
【文献】特表2012-515776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)構造に示される白金系化合物
であって、結晶型である白金系化合物。
(1)
【請求項2】
CuKα放射を用いて得られる粉末X線回折パターンにおいて、2θ値が4.0±0.2及び8.0±0.2である位置に回折ピークを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の白金系化合物。
【請求項3】
図6に示される粉末X線回折パターンの特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の白金系化合物。
図6
【請求項4】
請求項1に記載の白金系化合物の製造方法であって、
4-ジエチルアミノブチルマロン酸二塩溶液を製造し、溶媒を加えて結晶化させ、4-ジエチルアミノブチルマロン酸二塩を得て、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、DMSO、又はこれらの混合物から選ばれるステップ(1)と、
以下の手順、即ち、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)を製造し、
それから、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)と硝酸銀を溶媒中に反応させ
る、という手順で、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金二水和物(II)塩を得て、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)と硝酸銀とのモル比は1~3:1であり、溶媒は水、メタノール、エタノール、イソプロパノー
ルから選ばれ、反応温度の範囲は0~60℃であり、反応時間は2~10時
間であるステップ(2)と、
(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸二塩と(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金二水和物(II)塩を使用して、式(1)化合物を製造するステップ(3)と、
式(1)化合物を水に溶解し、凍結乾燥させて最終結晶生成物を得るステップ(4)とを含む、白金系化合物の製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)では、前記溶媒はエタノールである、ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)では、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)と硝酸銀とのモル比が1:1である、ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)では、前記溶媒は水である、ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)では、反応温度は40~50℃である、ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(2)では、反応時間は5~6時間である、ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1
~3のいずれか1項に記載の
白金系化合物を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野に属し、具体的には、4-(ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩、その製造方法、及びその医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がん(悪性腫瘍)は現在、人間の生命を脅かす最も主要な疾患の一つである。白金系抗腫瘍薬は最も重要なの抗腫瘍薬の1種であり、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)などの開発に相次いで成功しており、現在、すべての化学療法プランのうち、70%~80%が白金系薬を配合していることが統計データで示されている。
【0003】
白金系化学療法薬の毒性や副作用を減少させ、治療効果を向上させ、腫瘍の再発を減少させ、薬剤耐性の発生を回避し、白金系化合物の水溶性を高めるために、多くの研究が行われている。例えばシスプラチンの溶解度は2.65mg/mlであり、オキサリプラチンの溶解度は7.9mg/mlであり、カルボプラチンの溶解度は17.8mg/mlであり、またオキサリプラチンやカルボプラチンなどの毒性や副作用はシスプラチンと比較して低下しているが、以上のいわゆる水溶性白金系化合物の溶解度はまだ難溶性か微溶性の間であり、そして、抗腫瘍活性がシスプラチンよりもはるかに低い。Murray A.Planらは白金系化合物のナトリウムアルコキシドを製造し、invitroで溶解度を効果的に高めたが(US4322362A)、その化合物はpH10以上の条件で溶解しなければならず、毒性の問題も効果的に解決されていない。Giulia Cらも一連の白金系化合物を製造したが、これらの化合物の溶解度は明らかに改善されなかった(Chem Med Chem,2009,4(10),1677-1685)。WO2006091790A1にも、特定構造を有する一連の白金系化合物が開示されているが、同様に溶解度と毒性の問題を解決することには成功していない。
【0004】
WO2013007172A1、WO2013041014A1、WO2013083058A1、WO2014075391A1、WO2014114183A1などは一連の水溶性白金系化合物を開示しており、これらは、水中において50mg/ml以上の溶解度を有し、一部の好ましい化合物は100mg/ml、ひいては300mg/ml以上の溶解度を有する。
【0005】
WO2014075391A1の実施例3は、化合物4-(ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)、そのp-トルエンスルホン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、クエン酸塩等、及びそれらの製造方法を開示している。ただし、当該化合物は水などの溶媒にほとんど溶解せず、メタノールに難溶性であり、かつpH値が10より大きく、臨床使用可能な医薬製剤になるように製造するのに適しておらず、上記酸と塩を形成すると、溶解度は大きく改善され、pHは3~5であるが、空気中での吸湿性が非常に強く、潮解しやすいため、既存のGMP生産条件では水分含有量を制御して品質信頼性の高い原薬を製造することが困難である。意外なことに、リン酸塩は、水中の溶解度が500mg/mlより大きい一方、空気中の吸湿速度が他の塩類より低く、そのため、製造過程において品質が制御できることを確保し、例えば空気の低い相対湿度(RH44%)と高い相対湿度(RH69%)の条件下では、1h以内に、他の塩類の吸湿はほとんど3%、ひいては5%を超えて、品質基準による含水量の限度を超えたが、リン酸塩は、合格原料を製造するための重要な条件として吸湿後の性状が安定であり、一方、他の塩は吸湿後に性状変化を起こしやすい。また、中間体である4-(ジエチルアミノ)ブチルマロン酸二塩を製造する際に、従来の文献では生成物を分離せず、反応液をそのまま次のステップの反応に用いるため、投入量が不正確になり、不純物が発生しやすいのに対して、本発明では、溶媒を変えることによって、4-(ジエチルアミノ)ブチルマロン酸塩純品を得ることができ、次のステップの反応の品質管理に良い基礎を提供し、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金二水和物(II)を製造する際に硫酸銀が使用され、硫酸銀は、水や他の溶媒において溶解度が低いため、化学反応を行う際に、大きな反応体積を必要とし、このため、スケールアップが困難であり、この製品の製造規模が限定される。この改良された方法を用いることにより、反応体積を本来の体積の40%に減少させ、得られる2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)の純度が99.5%以上に達する。
【0006】
本発明では、また、4-(ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)及びその複数の塩類の結晶形を測定した結果、遊離塩基と各種塩類の粉末X線回折パターンに顕著な差があり、また、各種塩類の粉末回折パターンにも顕著な差がある。この化合物のリン酸塩は、異なる溶媒を用いて結晶化すると、得た結晶形が異なり(回折ピーク位置が異なる)、最後に、凍結乾燥法を用いてこの化合物は製造され、大量に製造した場合、結晶形が安定であることが示された。リン酸塩の安定な結晶形を選択して医薬製剤を製造したところ、その粉末X線回折パターンは原料と一致する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的の1つは、式(1)化合物、即ち、4-(ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩を提供することである。
(1)
【0008】
式(1)化合物は、水中の溶解度が500mg/mlよりも大きいとともに、空気中の吸湿性が低く、このため、容易に保存でき、臨床的に使用される医薬製剤に製造することに有利である。
【0009】
式(1)化合物は、異なる溶媒にて結晶化すると、得た結晶形が異なり、安定的で、再現性に優れることから、
図6に示される粉末X線回折パターンの特徴的なピークを有する結晶形が好ましい。
【0010】
本発明の別の目的は、式(1)化合物の製造方法を提供することであり、前記方法は、
国際公開番号WO2014075391A1に開示された方法によって4-ジエチルアミノブチルマロン酸二塩溶液を製造し、溶媒を加えて結晶化させ、4-ジエチルアミノブチルマロン酸二塩を得て、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)など、又はこれらの混合物から選ばれ、好ましくはエタノールであるステップ(1)と、
国際公開番号WO2014075391A1に開示された方法、即ち、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)を製造し、それから、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)と硝酸銀を溶媒中に反応させる、という方法によって、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金二水和物(II)塩を得て、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)と硝酸銀とのモル比は1~3:1、好ましくは1:1であり、溶媒は水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等から選ばれ、好ましくは水であり、反応温度の範囲は0~60℃、好ましくは40~50℃であり、反応時間は2~10時間、好ましくは5~6時間であるステップ(2)と、
国際公開番号WO2014075391A1に開示された方法によって、(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸二塩と(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金二水和物(II)塩を使用して、式(1)化合物を製造するステップ(3)と、
式(1)化合物を水に溶解し、凍結乾燥させて最終結晶生成物を得るステップ(4)とを含む。
【0011】
本発明のさらなる目的は、式(1)化合物を含有する医薬組成物を提供することである。
【0012】
本発明の医薬組成物製剤は、凍結乾燥粉末、原薬の個包装製剤及び注射液を含むが、これらに制限されず、凍結乾燥粉末、原薬の個包装製剤を使用する場合、5%グルコース又はマンニトール輸液に加えて静脈内注入する。
【0013】
本発明は、式(1)化合物の結晶性固体を含有する注射用医薬製剤をさらに提供する。該注射用医薬製剤は、0.002%~100%、好ましくは5%~100%、最も好ましくは25%~100%(重量)の式(1)化合物を含有し、残りの成分が、適切な医薬担体及び/又は賦形剤からなる。本分野に公知の方法により、適切な担体及び/又は賦形剤と式(1)化合物を用いて注射用医薬製剤を製造することができ、適切な賦形剤の例には、乳糖、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、リン酸塩緩衝液などが含まれるが、これらに制限されない。処方の研究結果から分かるように、各種の担体及び/又は賦形剤、たとえばグルコース、リン酸塩緩衝液などは、製品の外観性状や関連物質に対して顕著な影響がなく、したがって、製剤プロセスには、好ましくはいずれの担体及び/又は賦形剤も添加されない。
【0014】
単位用量の製剤中、式(1)化合物の量は、10mg~1000mgの間、好ましくは50mg~1000mgの間、最も好ましくは100mg~500mgの間で変化することができる。
【0015】
式(1)化合物を含有する注射用医薬製剤を繰り返して、たとえば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8回以上投与することができ、又は、連続輸液により該注射用医薬製剤を投与することができる。製剤は、無菌注射液及び無菌包装粉末の形態をとることができる。好ましくは、pH4.0~7.5で注射液を調製する。
【0016】
無菌注射液形態の本発明の医薬製剤は、本分野で公知の技術により、適切な希釈剤又は溶媒の無菌注射液を用いることができ、使用・許容可能な媒体及び溶媒は、水、グルコース溶液、マンニトール溶液などの脱イオン溶液を含み、また凍結乾燥形態の本発明の医薬製剤を提供することもできる。
【0017】
以上の医薬製剤は、増殖性疾患を治療又は補助的に治療する他の活性成分をさらに含むか、又は増殖性疾患を治療又は補助的に治療する他の医薬品と組み合わせて使用することができる。たとえば、本発明以外の抗増殖剤、免疫調節剤、抗癌薬、細胞毒性剤、抗腫瘍補助剤と組み合わせて使用する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)の粉末X線回折スペクトルである。
【
図2】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)p-トルエンスルホン酸塩の粉末X線回折スペクトルである。
【
図3】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)メタンスルホン酸塩の粉末X線回折スペクトルである。
【
図4】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)L(+)酒石酸塩の粉末X線回折スペクトルである。
【
図5】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(A1)の粉末X線回折スペクトルである。
【
図6】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(A2)の粉末X線回折スペクトルである。
【
図7】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(B)の粉末X線回折スペクトルである。
【
図8】(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(C)の粉末X線回折スペクトルである。
【
図9】
(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸(D)の粉末X線回折スペクトルである。
【
図10】注射用
(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸の粉末X線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例及び図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明するが、発明の実施形態は、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0020】
実施例の各化合物の結晶形態の測定には、粉末X線回折分析装置(Bruker D8 advance)を用いて分析し、該器具にはLynxEye検出器を備える。サンプルの2θ走査角度が3°~40°であり、走査ステップが0.02°であり、線管電圧及び電流がそれぞれ40kV及び40mAである。サンプルについてゼロバックグラウンドサンプルホルダーを用いて検出した。当業者が理解できるように、粉末X線回折図に一定の計測誤差があり、使用する計測条件に応じて、粉末X線回折図の各ラインの強度が条件によって波動し、相対強度も条件に応じて変わり、したがって、強度の正確な桁を考慮する必要がなく、さらに、一般的な粉末X線回折図では、典型的な回折角の計測誤差が5%未満であり、したがって、本発明の結晶形は、本発明で開示された図面と完全に一致する結晶形だけに制限されず、粉末X線回折図が図に示されるものとほぼ同じである任意の結晶形を含む。
【0021】
1
H-NMRは、完全デジタル超伝導核磁気共鳴分光計AVANCE IIIを用いて測定し、MSはフーリエ変換サイクロトロン共鳴質量分析計Bruker APEX IVを用いて測定し、C、H、NはVario MICRO CUBE元素分析装置を用いて測定する。
【0022】
実施例1
(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)
(a)4-ブロモブチルマロン酸ジエチルの製造
マロン酸ジエチル480.516g(3mol)、1,4-ジブロモブタン2290.20g(10.5mol)、及びジメチルスルホキシド720mlを5L三口フラスコに投入し、氷浴下撹拌して、内温8~12℃で水酸化ナトリウム125.004g(3mol)(約25g/次、2.5h添加終了)をバッチ式で添加し、この温度で1h反応させた。12℃以下に保持しながら、600mLの氷水を滴下した。分液漏斗に移して(少量のジクロロメタンで反応器の残留物を洗浄した)、水層を分離した。有機層を水(600mL×3回)で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。
【0023】
乾燥剤をろ過除去した。まず、水ポンプを用いて減圧蒸留し、50~55mmHg、≦115℃の成分(主にマロン酸ジエチルと1,4-ジブロモブタンとの混和物)を収集し、次にオイルポンプを用いて減圧蒸留で6~8mmHg、≦128℃の成分を除去した。残留油状物は4-ブロモブチルマロン酸ジエチルとなり、合計459.46g、収率が51.9%であった。1H-NMR(CDCl3)(ppm)4.201(m,4H),3.404(t,2H,J=6.7Hz),3.323(t,1H,J=7.45Hz),1.901(m,4H,J=7Hz),1.495(m,2H),1.272(t,6H,J=7.1Hz);MS(m/z)333.01,317.04,295.05,281.04.
【0024】
(b)(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸ジエチルの製造
無水炭酸カリウム213.02g(1.525mol)及びアセトニトリル940mlを3L三口フラスコに投入して撹拌し、次に、4-ブロモブチルマロン酸ジエチル450.00g(1.525mol)、ジエチルアミン213.02g(1.525mol)、及びアセトニトリル1Lを加えた。油浴にて55~60℃で5h反応させた。TLC検出により反応終了を示した。反応液を2Lナスフラスコに移して、水ポンプで減圧下回転蒸発して溶媒を除去した。イソプロピルエーテル915mlを加えて、外部から氷浴で冷却しながら撹拌し、10~15℃で氷水915mlを加えた。分液漏斗に移して有機層を分離し、水層をイソプロピルエーテルで抽出した(610ml×3回)。有機層を合併して三口フラスコに入れて、外部から氷塩浴で冷却しながら撹拌し、反応液の温度を5~10℃に保持して0.5mol/L HCl 3050mlを滴下した。液体を分液漏斗に移してイソプロピルエーテル層を分離し、水層をイソプロピルエーテル(915ml×4回)で洗浄した。
【0025】
水層を10L三口フラスコに入れて酢酸エチル1830mlを加え、外部から氷塩浴で冷却しながら撹拌し、反応液温度を5~10℃に保持しながら0.5mol/L NaOHを3659ml滴下した。分液漏斗に移して有機層を分離し、水層をさらに酢酸エチル(915ml×3回)で抽出し、酢酸エチル層を合併して、無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。乾燥剤を濾過除去し、水ポンプを用いて減圧し(42℃、-0.095MPa)溶媒をすべて吸引し、目標生成物として油状物309.45gを得て、収率が70.6%であった。1H-NMR(CDCl3)(ppm)4.193(m,4H),3.317(t,1H,J=7.55Hz),2.526(q,4H,J=7.15Hz),2.404(m,2H),2.040(s),1.912(m,2H),1.477(m,2H),1.326(m,2H),1.265(t,6H,J=7.15Hz),1.006(t,6H,J=7.15Hz).MS(m/z)288.22.
【0026】
(c)(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸二ナトリウム塩の製造
10Lの三口反応フラスコに、(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸ジエチル500.00g(1.7397mmol)油状物を加えて磁気撹拌し、その後、内温25±5℃で2mol/L水酸化ナトリウムの90%エタノール水溶液2175.0mLを滴下し、滴下中に白色固体を析出させ、アルカリ液体滴下が終了後、昇温して還流反応を2h行い、TLCにより反応終点を監視した。
【0027】
反応終点になると、還流状態で、無水エタノール3250mLを加え、その後、氷水浴で内温0~5℃に冷却して撹拌し結晶を1h析出させ、その後、減圧で固体を濾別し、次に、無水エタノールを用いて500mL×3回でリンスし、固体を55±5℃送風オーブンに入れて約4h乾燥させ、最後に、略白色固体449.7gを得て、収率が93.9%であった。HPLC検出により純度は99.1%である。1H-NMR(D2O)(ppm)3.15(t,1H),2.40-2.36(m,6H),1.79(m,2H),1.39(m,2H),1.29(m,2H),1.02(t,6H).
【0028】
(d)(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)の製造
テトラクロロ白金(II)酸カリウム498.096g(1.2mol)及び精製水9Lを50L反応釜に加え、N2を導入し、遮光下、20~25℃で撹拌して溶解した。ヨウ化カリウム1593.60g(9.6mol)を含有する水溶液9Lを加えて、50~55℃で20min反応させた。(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン137.04g(1.2mol)を含有する水溶液6Lを加え、この温度で30min反応させ続け、20~25℃に降温した。吸引濾過して、精製水1350mlで複数回リンスし、次に無水エタノール1350mlで複数回リンスし、最後に、イソプロピルエーテル1350mlで複数回リンスし、生成物を40℃で送風乾燥させた。淡黄色固体666.56gを得て、収率が98.6%であった。1HNMR(DMSO-d6)(ppm)6.5-5.5(m,4H),2.5-1.0(m,10H).MS(m/z)601.85,580.92.
【0029】
(e)(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金二水和物(II)硝酸塩水溶液の製造
精製水10L、及び硝酸銀180.81g(1.05mol)を50L反応釜に投入し、(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミンジヨード白金(II)及び5L精製水を加え、N2を導入して保護し、遮光下撹拌し、40~45℃で6h反応させた。室温に降温した後、10分間静置して、濾過した。精製水2917mlで複数回リンスして合併し、無色透明溶液を得て、そのまま次のステップの反応に用いた。
【0030】
(f)(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)の製造
(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸二ナトリウム塩289.01g(1.05mol)、及び(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金二水和物(II)硝酸塩水溶液(1.05mol)を、50L反応釜に投入し、N2を導入して保護し、遮光下撹拌し、40~45℃で6h反応させ、室温で一晩静置した。反応液を、40~45℃で、水ポンプにより減圧下回転蒸発して、約9279mlまで濃縮させた。内径235mmの吸引濾過漏斗にカラムクロマトグラフィーシリカゲル(100~200メッシュ)292.62gを、厚さ1.5cmで充填し、精製水で含浸した後、吸引濾過し、精製水2336mlで複数回リンスして合併し、浅青色透明濾液を得た。
【0031】
濾液を50L反応釜に移し、遮光下撹拌して冷却し、4~8℃で5%NaOH水溶液2054.27g(2.573mol)を、10minかけて滴下すると、大量の白色固体が生成された。4~8℃を保持しながら30min撹拌した。吸引濾過して、精製水1.5Lで複数回リンスし、生成物を40℃で一晩送風乾燥し、粉砕して80メッシュの篩にかけた。白色粉末443.22gを得て、収率が78.4%であった。実施例1の化合物は水に不溶であった。
【0032】
1H-NMR(DMSO-d6)(ppm)5.911(m,2H),5.225(m,2H),3.492(t,1H,J=6.7Hz),2.415(q,4H),2.315(t,2H),1.793(m,4H),1.357(m,2H),0.929(t,6H,J=7.1Hz).MS(m/z)539.21866.元素分析C55.27%、H5.08%、N3.03%。
【0033】
粉末X線回折測定には、Bruker GADDSを用い、粉末サンプルを1mm薄肉キャピラリーに投入し、データ収集の間、キャピラリーを回転させ、サンプルと検出器との距離を17cmとし、放射線をCuKα(45Kv、110mA、λ=1.54060Å)とし、データを3°<2θ<50°で収集し、サンプルの被曝時間を70秒とした。
【0034】
図1は、2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)の粉末X線回折スペクトルであり、該図には、大量の回折ピークが示されている。
XRPDの代表的ピークを表1に示す。
【0035】
【0036】
実施例1の化合物の結晶特徴は、粉末X線回折図(CuKα、λ=1.54060Å、約25℃)であり、また、下記データでキャラクタリゼーションしてもよく、以下から選ばれる2θ値を含む:4.3±0.2、8.7±0.2、12.2±0.2、13.2±0.2、17.0±0.2、17.6±0.2、20.4±0.2、21.7±0.2、22.8±0.2、25.3±0.2、26.5±0.2。
【0037】
実施例2
2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)p-トルエンスルホン酸塩
2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)遊離塩基3.50g(6.51mmol)を、メタノール100mLに懸濁し、室温で撹拌し、p-トルエンスルホン酸1.311g(7.62mmol)を含有するメタノール溶液20mLを滴下し、滴下が終了後、撹拌し続けて1時間反応させ、溶液が無色透明となった。活性炭を加えて脱色し、濾過して、溶媒メタノールの一部を減圧除去し、酢酸エチルを加えて冷却して結晶化させ、ブフナー漏斗で固体を濾取し、減圧下真空乾燥させ、白色粉末状の目標生成物4.62gを得て、収率が97.6%であった。
【0038】
図2は、2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)p-トルエンスルホン酸塩の粉末X線回折スペクトルであり、該図から示すように、該化合物には回折ピークがなかった。
【0039】
実施例3
2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)メタンスルホン酸塩
2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)遊離塩基2.50g(4.64mmol)をメタノール50mLに懸濁し、室温で撹拌し、メタンスルホン酸0.47g(4.87mmol)を含有するメタノール溶液50mLを滴下し、滴下が終了後、撹拌し続けて1時間反応させ、溶液が無色透明となった。活性炭を加えて脱色し、濾過して、溶媒メタノールの一部を減圧除去し、酢酸エチルを加えて冷却して結晶化させ、ブフナー漏斗で固体を濾取し、減圧下真空乾燥させ、白色粉末状の目標生成物2.95gを得て、収率が99.5%であった。
【0040】
図3は2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)メタンスルホン酸塩の粉末X線回折スペクトルであり、該図から示すように、該化合物には、明らかな回折ピークがなかった。
【0041】
実施例4
2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)L-(+)酒石酸塩
2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)遊離塩基1.20g(2.23mmol)をメタノール30mLに懸濁し、室温で撹拌し、L-(+)酒石酸0.35g(2.39mmol)を含有するメタノール溶液20mLを滴下し、滴下が終了後、撹拌し続けて1時間反応させ、溶液が無色透明となった。活性炭を加えて脱色し、濾過して、メタノールを減圧除去し、エタノールを加えて溶解し、冷却して結晶化させ、ブフナー漏斗で固体を濾取し、減圧下真空乾燥させ、白色粉末状の目標生成物1.15gを得て、収率が74.9%であった。
【0042】
図4は、2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)L-(+)酒石酸塩の粉末X線回折スペクトルであり、該図から示すように、該化合物には、明らかな回折ピークがなかった。
【0043】
実施例5
2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩
リン酸224.04g(644.937mmol)、及びメタノール4.5Lを10L三口フラスコに投入し、氷塩浴で-5~0℃となるまで冷却して撹拌し、2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)を加え、-10~-5℃に予冷されたメタノール1.3Lで残留物を洗浄した。-5~0℃で30min反応させた。内径235mmの吸引濾過漏斗にカラムクロマトグラフィーシリカゲル(100~200メッシュ)292.62gを厚さ1.5cmで充填し、イソプロピルエーテル23.773Lで含浸した後、吸引濾過して、-5~0℃に予冷されたメタノール1.9Lで3回洗浄し、合併して無色透明濾液を得た。
【0044】
濾液を50L反応釜に投入し、撹拌しながら0~5℃に予冷されたイソプロピルエーテル15.39Lを、5~10minかけて添加すると、大量の白色固体が生成され、40min撹拌後、吸引濾過して、-5~0℃に予冷されたイソプロピルエーテル1.5Lで繰り返して洗浄した。
【0045】
イソプロピルエーテル6Lを反応釜50Lに投入し、-5~0℃に冷却して、撹拌しながら濾過ケーキを加え、-5~0℃に予冷されたイソプロピルエーテル2.4Lで残留物を複数回洗浄した。-5~0℃で10min撹拌した。吸引濾過してイソプロピルエーテルで洗浄し、固体を40℃で一晩送風乾燥させ、粉砕して80メッシュの篩にかけ、6h真空乾燥(-0.095MPa、室温、P2O5収容)させた。生成物として2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩白色固体360.07gを得て、収率が87.7%であった。
この方法で製造された結晶を結晶A1と定義した。
【0046】
図5は(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(結晶A1)の粉末X線回折スペクトルである。パターンデータを表2に示す。
【0047】
【0048】
式(1)化合物結晶(A1)の特徴は粉末X線回折図(CuKα、λ=1.54060Å、約25℃)であり、また下記データでキャラクタリゼーションしてもよく、以下から選ばれる2θ値を含む:4.0±0.2、6.7±0.2、6.9±0.2。
【0049】
上記で得られた2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩結晶(A1)を無菌水500mLに溶解し、濾過して凍結乾燥させ、製品342.7gを得て、収率が95.2%であった。
【0050】
この方法で製造された製品の結晶を結晶A2と定義し、合計3バッチの製品について粉末X線回折図を検出したところ、3バッチの検出結果はすべて
図6と一致し、このことから、本方法で(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩を製造すると、品質の制御性を確保できることがわかる。
1H-NMR(DMSO-d
6)(ppm)6.75(ブロードピーク),5.90-5.96(m,2H),5.27-5.29(m,2H),3.51-3.55(t,1H),2.82-2.85(q,4H),2.69-2.73(t,2H),2.08(m,2H),1.79-1.83(m,2H),1.79-1.83(m,2H),1.53-1.59(m,2H),1.44-1.15(m,2H),1.22-1.29(m,2H),1.22-1.29(m,2H),1.09-1.13(t,6H),0.97-1.04(m,2H)。
【0051】
図6は、(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(結晶A2)の粉末X線回折スペクトルであり、結果を表3に示す。
【0052】
【0053】
式(1)化合物結晶(A2)の特徴は、粉末X線回折図(CuKα、λ=1.54060Å、約25℃)であり、また下記データでキャラクタリゼーションしてもよく、以下から選ばれる2θ値を含む:4.0±0.2、8.0±0.2。
【0054】
実施例6
100ml三口反応フラスコに、イソプロパノール水溶液(95:5)20mlを加え、その後、氷浴で内温0~5℃まで冷却し、2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)(遊離塩基)化合物1.08g(2.0mmol)を加えて、固体を溶液に完全に懸濁し、0~5℃で保温しながら15min撹拌し、その後、内温0~5℃でリン酸0.235g(2.40mmol)を含有するイソプロパノール水溶液5mLを滴下し、イソプロパノールの滴下が終了後、内温0~5℃で保温して撹拌し結晶を40min析出させ、溶液が完全に透明となると、反応が終了した。一部のイソプロパノールを減圧除去し、冷凍して結晶化させ、固体を濾取し、減圧乾燥させて2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩1.01gを得て、収率が79.4%であった。
【0055】
この方法で製造された結晶を結晶Bと定義した。粉末X線回折によりその結晶形を測定した。
図7は2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(B)の粉末X線回折スペクトルであり、該図から示すように、該化合物には回折ピークを有する。
【0056】
【0057】
式(1)化合物結晶(B)の特徴は粉末X線回折図(CuKα、λ=1.54060Å、約25℃)であり、また下記データでキャラクタリゼーションしてもよく、以下から選ばれる2θ値を含む:4.5±0.2、8.83±0.2、20.4±0.2。
【0058】
実施例7
100ml三口反応フラスコに、イソプロパノール水溶液(90:10)15mLを加え、その後、氷浴で内温0~5℃まで冷却し、2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)(遊離塩基)化合物1.08g(2.0mmol)を加えて、固体を溶液に完全に懸濁し、0~5℃で保温しながら15min撹拌し、その後、内温0~5℃でリン酸0.235g(2.40mmol)を含有するイソプロパノール水(90:10)溶液3mLを滴下し、イソプロパノールの滴下が終了後、内温0~5℃で保温して撹拌し結晶を30min析出させ、溶液が完全に透明となると、反応が終了した。溶液にイソプロパノール10mLを滴下し、冷凍して結晶化させ、固体を濾取し、減圧乾燥させて2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩1.12gを得て、収率が88.1%であった。
この方法で製造された結晶を結晶Cと定義した。
【0059】
粉末X線回折によりその結晶形を測定し、
図8は2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩(C)の粉末X線回折スペクトルであり、
該図から示すように、該化合物には回折ピークを有する。
【0060】
【0061】
式(1)化合物結晶(C)の特徴は、粉末X線回折図(CuKα、λ=1.54060Å、約25℃)であり、また下記データでキャラクタリゼーションしてもよく、以下から選ばれる2θ値を含む:3.8±0.2、4.4±0.2、7.5±0.2、19.9±0.2、20.4±0.2、20.8±0.2。
【0062】
実施例8
100ml三口反応フラスコに、無水メタノール22mlを加え、塩氷浴で内温-10~-5℃まで冷却し、次に2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)(遊離塩基)1.08g(2.0mmol)を加えて、固体を無水メタノールに完全に溶解し、-10~-5℃で保温して30min撹拌し、その後、内温-5~0℃でリン酸0.235g(2.40mmol)を含有するイソプロパノール溶液15mlを滴下し、イソプロパノールの滴下が終了後、内温-5~0℃で保温して撹拌し結晶を10min析出させ、減圧濾過して2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩0.89gを得て、収率が69.9%であった。
【0063】
図9は、2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)リン酸塩の粉末X線回折スペクトルであり、該図から示すように、該化合物には回折ピークを有する。この方法で製造された結晶を結晶Dと定義した。
【0064】
【0065】
式(1)化合物結晶(D)の特徴は粉末X線回折図(CuKα、λ=1.54060Å、約25℃)であり、また、下記データでキャラクタリゼーションしてもよく、以下から選ばれる2θ値を含む:3.9±0.2、6.8±0.2、7.1±0.2.
【0066】
製剤実施例1
式(1)化合物(A2)型結晶 20g
マンニトール 50g
注射用水 1000mlまで添加
1000本を製造する。
【0067】
プロセス
低結晶度の式(1)化合物20g及びマンニトール50gを、1000mlガラス皿に加え、低温(2~8℃)で注射用水を1000ml加えて溶解させ、薬用活性炭2.0gを加えて10min撹拌した後、20min静置して吸着させた。0.22μm微孔性濾過膜で濾過した後、2mlバイアルに個包装して、1本ごとに溶液1mlを詰めて、凍結乾燥させて完成し、規格は20mg/本であった。製品は白色の多孔質塊状物であり、pH値が4.10であった。
【0068】
製剤例2
式(1)化合物(A2)型結晶 100g
注射用水 1000mlまで添加
【0069】
プロセス
低結晶度の式(1)化合物50gを1000mlガラス皿に加え、低温(2~8℃)で注射用水1000mlを加えて溶解させ、薬用活性炭2.0gを加えて10min撹拌した後、20min静置して吸着させた。0.22μm微孔性濾過膜で濾過した後、2mlバイアルに個包装して、1本ごとに溶液1mlを詰めて、凍結乾燥させて完成し、規格は100mg/本であった。
製品は白色の多孔質塊状物であり、pH値が4.20であった。
【0070】
図10の粉末X線回折スペクトルに示すように、その結晶形の回折図は原料と同じであり、ピーク形状が鈍くてブロードであり、これは、結晶に欠陥が存在するか、粒径や晶癖などがピーク形状に影響することを示し、主な回折ピークの2θ角が原料と一致し、これは、水を溶媒とする場合、複数回の凍結乾燥が結晶形に影響を与えないことを示す。動物モデルでは、この医薬品についての薬力学及び毒理学から、このような結晶形が安全的かつ効果的に利用できることを示す。
【0071】
【0072】
式(1)化合物の凍結乾燥製剤の結晶特徴は、粉末X線回折図(CuKα、λ=1.54060Å、約25℃)であり、また下記データでキャラクタリゼーションしてもよく、以下から選ばれる2θ値を含む:4.1±0.2、8.0±0.2。
【0073】
製剤例3
式(1)化合物(A2)型結晶 20g
リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム緩衝液 100mlまで添加
【0074】
プロセス
低結晶度の式(1)化合物20gを200mlガラス皿に加え、低温(2~8℃)でリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH6.0)100mlを加えて溶解させ、薬用活性炭0.5gを加えて10min撹拌した後、20min静置して吸着させた。0.22μm微孔性濾過膜で濾過した後、2mlバイアルに個包装して、1本ごとに溶液1mlを詰めて、凍結乾燥させて完成し、規格は200mg/本であった。
製品は白色の多孔質塊状物であり、pH値が4.67であった。
【0075】
実験例:2-(4-ジエチルアミノ)ブチルマロン酸-(1R,2R)-(-)-1,2-シクロヘキサンジアミン白金(II)の各種の塩類の溶解度及び吸湿性実験