IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社グラフィーの特許一覧

<>
  • 特許-3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物 図1
  • 特許-3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物 図2
  • 特許-3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物 図3
  • 特許-3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20221122BHJP
   C08L 75/16 20060101ALI20221122BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20221122BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221122BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221122BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20221122BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20221122BHJP
【FI】
B29C64/314
C08L75/16
C08F290/06
B33Y70/00
B33Y10/00
C08F2/50
B29C64/124
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021516349
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 KR2019007232
(87)【国際公開番号】W WO2020040414
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0099277
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520456114
【氏名又は名称】株式会社グラフィー
【氏名又は名称原語表記】GRAPHY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】シム ウンソブ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/020159(WO,A1)
【文献】特公平08-019205(JP,B2)
【文献】特開2006-273895(JP,A)
【文献】特開2018-083901(JP,A)
【文献】特開2014-065787(JP,A)
【文献】特表2016-520144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式で表されるUV硬化ポリウレタンオリゴマーと、
前記UV硬化ポリウレタンオリゴマー100重量部に対して、
光開始剤1.5重量部~15重量部と、
シランカップリング剤0.1重量部~1.5重量部と、
オリゴマー15重量部~45重量部と、
安定剤0.1重量部~2重量部と、を含む3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物:
【化1】
【化2】
ここで、
Aは、前記化学式2で表される置換基であり、
*は、結合される部分を意味し、
、R 、R 、R は互いに同一または異なり、それぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~200のアルキレン基、置換または非置換の炭素数6~200のアリーレン基、置換または非置換の核原子数5~200のヘテロアリーレン基、および置換または非置換の炭素数3~200のシクロアルキレン基であり、
前記置換されたアルキレン基、置換されたアリーレン基、置換されたヘテロアリーレン基、および置換されたシクロアルキレン基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数6~30のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、炭素数6~30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数6~30のアラルキルアミノ基、炭素数2~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、および炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数の置換基で置換される場合、これらは互いに同一または異なり、
nおよびmは互いに同一または異なり、それぞれ独立して1~200の整数である
【請求項2】
前記UV硬化ポリウレタンオリゴマーは、重量平均分子量10000~1000000である、請求項1に記載の3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物。
【請求項3】
前記光開始剤は、下記化学式4で表される化合物である、請求項1に記載の3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物:
【化3】
ここで、
は、S、OまたはN(R11)であり、
~R11は互いに同一または異なり、それぞれ独立して水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基および置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基であり、
前記置換されたアルキル基および置換されたシクロアルキル基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数6~30のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、炭素数6~30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数6~30のアラルキルアミノ基、炭素数2~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、および炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数の置換基で置換される場合、これらは互いに同一または異なる。
【請求項4】
前記オリゴマーは、エポキシアクリレートオリゴマー、H12ジアンジグリシジルエーテル(4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(シクロヘキサノール)、(クロロメチル)オキシランを有するポリマー)およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物。
【請求項5】
前記安定剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ジエチルエタノールアミン、トリヘキシルアミン、ヒンダードアミン、有機リン酸塩、ヒンダードフェノール、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物であり、より具体的には、3Dプリントに適用し得る形態の光硬化型高分子であり、これを利用して、3Dプリントすることにより、熱的性質、強度、弾性率、および伸び率のような物理的特性に優れ、形状復元が可能な3Dプリント出力物を製造し得る3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタは、物理的オブジェクトを3Dで形成するように構成される3Dプリントメカニズムを有する。このような3Dプリンタにおいて物理的オブジェクトを3Dに形成するようにする3Dプリント用インクとして、3Dプリント用樹脂組成物に関する研究が続けられている。
【0003】
3Dプリントの利点は、一つの製品のみを生産する場合でも、生産コストが比較的少なくて済み、如何なる形状の製品でも自由に製作できるということにある。従来の模型製造技術では、まず金型(枠)を製作した後、金型を利用して製品を生産するため、一つの製品を作るためにかかるコストが非常に大きいが、3Dプリント技術は金型なしで原料を一層ずつ積層して製品を生産するため、多品種少量生産に非常に適している。
【0004】
また、3Dプリント技術によれば、いかに複雑な形状の製品であっても簡単に生産可能なので、3Dプリント技術を利用して生産可能な製品の種類は、事実上無限であると言える。そのため、3Dプリント技術は、製造業、医療、IT分野など、多方面において技術のパラダイムを変えながら、産業革新を率いるものと期待されている。
【0005】
3Dプリンタ用素材は、FDM方式の場合、プリンタのノズル部においてスムーズな流れ性を示すための適切な融点と流動性を有する必要があり、露出部における押出後、出力物の変形防止のための早い凝固速度を有する必要がある。熱可塑性樹脂の中で、前記の特性を有し、現在最も一般的に使用されるフィラメント素材としては、ポリ乳酸(poly lactic acid)、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)が主流であり、高耐熱性、高機能性素材としては、PEI(Polyetherimide)、PC(Polycarbonate)などが用いられている。しかし、元来射出材料で作られる方式の素材とは物性特性に大差があるという限界があり、出力後には強度をさらに上げられる術は特にない。
【0006】
3Dプリンタの一般的な素材の一つであるポリ乳酸は、トウモロコシのでんぷんから抽出した原料からなる環境にやさしい樹脂として、熱い食べ物を入れたり、子どもが口に入れたりしゃぶったりしても環境ホルモンはもちろん、重金属などの有害物質が検出されず、実生活に活用されるのに安定した特性を有している。
【0007】
また、これは生分解性高分子として、使用中は一般のプラスチックと同等の特徴を有するが、廃棄の際、微生物により100%生分解される利点を持っている。ポリ乳酸(poly lactic acid)は、このような人体や環境に無害な生分解特性により、最近ではプラスチック廃棄物問題と関連して関心を集めている。
【0008】
しかし、前記利点を有するポリ乳酸(poly lactic acid)素材の場合、脆性が高いため耐衝撃性が弱く柔軟性が低いことから、玩具のように滑らかな触感や耐衝撃性が求められる産業用出力物への適用には限界があり、新たな素材の開発が持続的に求められている。FDM方式では技術的な限界により精密パーツや高機能性パーツを製作し難い部分が存在するので、3Dプリンタ材料のうち、出力品質も良く製作速度も速いため産業用の専門3Dプリンタでよく使用される光硬化性樹脂として高分子ポリマー特性を有する材料の発明が必要である。
【0009】
近年、3Dプリント技術は様々な医学分野で活用されており、従来の切削加工よりも製作時間、コスト、プロセスの面から非常に効率的である。しかし、前記に述べたように、従来のポリ乳酸のような3Dプリンタ用素材を用いる場合、出力物に対する物理的特性の限界のため、医学分野に適用するのが難しい問題があり、様々な医学分野に適用し得る光硬化型高分子3Dプリンタ用素材の開発が急務である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国登録特許第10-1831819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、熱的性質、強度、弾性率、および伸び率のような物理的特性に優れた3Dプリント出力物を製造し得る3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物を提供するものである。
【0013】
本発明のまた他の目的は、使用によって元の形状が変形されても、形状復元が可能な3Dプリント出力物を製造し得る3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例に係る3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物は、下記化学式1で表されるUV硬化ポリウレタンオリゴマーと、光開始剤と、シランカップリング剤と、オリゴマーと、安定剤と、を含み得る。
【0015】
【化1】
【化2】
ここで、
Aは、前記化学式2で表される置換基であり、
*は、結合される部分を意味し、
~Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~200のアルキレン基、置換または非置換の炭素数6~200のアリーレン基、置換または非置換の核原子数5~200のヘテロアリーレン基、および置換または非置換の炭素数3~200のシクロアルキレン基である。
【0016】
前記置換されたアルキレン基、置換されたアリーレン基、置換されたヘテロアリーレン基、および置換されたシクロアルキレン基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数6~30のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、炭素数6~30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数6~30のアラルキルアミノ基、炭素数2~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、および炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数の置換基で置換される場合、これらは互いに同一または異なる。
【0017】
前記UV硬化ポリウレタンオリゴマーは、重量平均分子量10000~1000000である。
【0018】
前記光開始剤は、下記化学式4で表される化合物である。
【0019】
【化3】
ここで、
は、S、OまたはN(R11)であり、
~R11は互いに同一または異なり、それぞれ独立して水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基および置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基である。
【0020】
前記置換されたアルキル基および置換されたシクロアルキル基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数6~30のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、炭素数6~30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数6~30のアラルキルアミノ基、炭素数2~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、および炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数の置換基で置換される場合、これらは互いに同一または異なる。
【0021】
前記オリゴマーは、エポキシアクリレートオリゴマー、H12ジアンジグリシジルエーテル(4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(シクロヘキサノール)、(クロロメチル)オキシランを有するポリマー)およびこれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0022】
前記安定剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ジエチルエタノールアミン、トリヘキシルアミン、ヒンダードアミン、有機リン酸塩、ヒンダードフェノール、およびこれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0023】
前記3Dプリンタ用高分子組成物は、UV硬化ポリウレタンオリゴマーを含み、前記UV硬化ポリウレタンオリゴマー100重量部に対して、光開始剤1.5重量部~15重量部と、シランカップリング剤0.1重量部~1.5重量部と、オリゴマー15重量部~45重量部と、安定剤0.1重量部~2重量部とを含み得る。
【0024】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の3Dプリントは、3Dデジタルデータを利用して素材を積層し、3次元物体を製造するプロセスのことをいう。本明細書においては、3Dプリント技術として、DLP(Digital Light Processing)、SLA(StereoLithography Apparatus)、およびポリジェット(PolyJet)方式を中心に述べるが、他の3Dプリント技術にも適用可能なものとして理解され得る。
【0025】
本発明の光硬化型高分子は、光照射により硬化される物質として、架橋され網状構造に重合される高分子のことをいう。本明細書においてはUV光を中心に述べるが、UV光に限定されず他の光に対しても適用可能である。
【0026】
本発明の一実施例に係る3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物は、下記化学式1で表されるUV硬化ポリウレタンオリゴマーと、光開始剤と、シランカップリング剤と、オリゴマーと、安定剤とを含む。
【0027】
【化4】
【化5】
ここで、
Aは、前記化学式2で表される置換基であり、
*は、結合される部分を意味し、
~Rは互いに同一または異なり、それぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~200のアルキレン基、置換または非置換の炭素数6~200のアリーレン基、置換または非置換の核原子数5~200のヘテロアリーレン基、および置換または非置換の炭素数3~200のシクロアルキレン基である。
【0028】
前記置換されたアルキレン基、置換されたアリーレン基、置換されたヘテロアリーレン基、および置換されたシクロアルキレン基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数6~30のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、炭素数6~30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数6~30のアラルキルアミノ基、炭素数2~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、および炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数の置換基で置換される場合、これらは互いに同一または異なる。
【0029】
前記UV硬化ポリウレタンオリゴマーは、重量平均分子量10000~1000000である高分子である。
【0030】
より好ましくは、UV硬化ポリウレタンオリゴマーは、下記化学式3で表される化合物である。
【0031】
【化6】
ここで、
nおよびmは互いに同一または異なり、それぞれ独立して1~200の整数であり、
Aは、前記化学式1で定義した通りである。
【0032】
より具体的には、UV硬化のために、ポリウレタンオリゴマーに光硬化官能基が結合された高分子化合物であり、前記光硬化官能基は前記化学式2で表される置換基である。
【0033】
前記化学式2で表される置換基内の炭素同士の二重結合構造を含んでおり、前記炭素同士の二重結合によって光硬化作用を示し得る。
【0034】
また、前記UV硬化ポリウレタンオリゴマーは、主鎖にポリウレタン構造を含み、前記ポリウレタン構造に光硬化官能基が結合され、前記ポリウレタン構造および光硬化官能基間の結合には、ウレタンリンカーにソフトセグメントを結合したリンカーおよびウレタンリンカーにハードセグメントを結合したリンカーを利用する。
【0035】
前記ウレタンリンカーにソフトセグメントを結合したリンカーの場合、ソフトセグメントのフレキシブルな性質をともに利用することができ、ハードセグメントは熱抵抗性(Heat resistant)を示し得る。
【0036】
つまり、UV硬化ポリウレタンオリゴマーに光硬化官能基を結合させ、リンカーとしてソフトセグメントおよびハードセグメントを利用することにより、常温でソフトな性質を有する炭素骨格を利用して、フレキシブル効果を示し得るだけでなく、常温でハードな性質を有する炭素骨格を利用いて、熱に強い性質をともに示し得る。
【0037】
前記UV硬化ポリウレタンオリゴマーは、ハードな性質を有する炭素骨格を含むことによって、熱的性質、強度、弾性率、および伸び率のような物理的特性に優れた3Dプリント出力物を製造し得る。
【0038】
また、UV硬化ポリウレタンオリゴマーは、ソフトな性質を有する炭素骨格を含むことによって、使用によって元の形状が変形されても、形状復元が可能な3Dプリント出力物を製造し得る。
【0039】
一般に、3Dプリンタ用組成物は、3Dプリント出力物の物理的な特性を高めるために、ハードな性質を有する炭素骨格のみを含んで、出力物の物理的特性を高められるが、逆に、使用によって形状が変形すると、形状復元が不可であるため、多数回の使用が不可である問題がある。
【0040】
また、3Dプリンタ用組成物が、ソフトな性質を有する炭素骨格のみを含む場合には、出力物の物理的特性が低く、出力物として使用可能な程度の熱的性質、強度、弾性率、および伸び率を示せない問題がある。
【0041】
本発明における3Dプリンタ用組成物は、UV硬化ポリウレタンオリゴマーに、ハードな性質を有する炭素骨格およびソフトな性質を有する炭素骨格を含むことによって、熱的性質、強度、弾性率、および伸び率のような物理的特性に優れるのみならず、ソフトセグメントのフレキシブルな性質をともに利用することができ、使用によって形状が変形する場合には、形状を復元させ再利用が可能である。
【0042】
前記光開始剤は、下記化学式4で表される化合物である。
【0043】
【化7】
ここで、
は、S、OまたはN(R11)であり、
~R11は互いに同一または異なり、それぞれ独立して水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基、および置換または非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基である。
【0044】
前記置換されたアルキル基および置換されたシクロアルキル基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数6~30のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、炭素数6~30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数6~30のアラルキルアミノ基、炭素数2~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、および炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数の置換基で置換される場合、これらは互いに同一または異なる。
【0045】
より好ましくは、下記化学式5で表される化合物である。
【化8】
【0046】
前記オリゴマーは、エポキシアクリレートオリゴマー、H12ジアンジグリシジルエーテル(4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(シクロヘキサノール)、(クロロメチル)オキシランを有するポリマー)、およびこれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0047】
より具体的に、エポキシアクリレートオリゴマーは、フェニルエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族アルキルエポキシジ(メタ)アクリレートオリゴマー、および脂肪族アルキルエポキシトリ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群より1種以上選択される化合物を使用し得る。前記オリゴマーは、有機溶媒による膨潤(swelling)現象を低減するのみならず、表面硬度、耐摩耗性、耐熱性などを向上させ得る。
【0048】
前記シランカップリング剤はより具体的に、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-Methacryloxypropyltrimethoxysilane)であるが、前記の例示に限定されない。
【0049】
前記安定剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ジエチルエタノールアミン、トリヘキシルアミン、ヒンダードアミン、有機リン酸塩、ヒンダードフェノール、およびこれらの混合物からなる群より選択され、より具体的に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールである。
【0050】
熱的安定性、酸化安定性、貯蔵安定性、表面特性、流動特性、および工程特性などを向上させるために、例えば、レベリング剤、スリップ剤または安定剤などの通常の添加剤を含み得る。
【0051】
前記3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物は、UV硬化ポリウレタンオリゴマーを含み、前記UV硬化ポリウレタンオリゴマー100重量部に対して、光開始剤1.5重量部~15重量部と、シランカップリング剤0.1重量部~1.5重量部と、オリゴマー15重量部~45重量部と、安定剤0.1重量部~2重量部とを含み得る。前記シランカップリング剤は、前記使用範囲内で使用すると、顔料やフィラーなどの表面処理に使用した場合の樹脂との相溶性および密着強度を向上させ得る。前記オリゴマーは使用範囲を超えると、表面エネルギーが高くなり、モールドと樹脂との離型性が低下することとなり、表面硬度が高くなりモールドのスタンピング後の復元力のような表面特性の低下となるおそれがある。前記安定剤の場合、使用範囲内で使用すると、周りの硬化を減少させ、強度を高められる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物によると、熱的性質、強度、弾性率、および伸び率のような物理的特性に優れた3Dプリント出力物を製造し得る。
【0053】
また、3Dプリント出力物の使用によって元の形状が変形されても、形状復元が可能な3Dプリント出力物を製造し得る3Dプリンタ用高分子組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、本発明の一実施例に係る高分子組成物を利用した3Dプリント出力物に関する写真である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る3Dプリント出力物の引張試験結果のグラフである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る3Dプリント出力物の曲げ試験結果のグラフである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る3Dプリント出力物の圧縮試験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、下記化学式1で表されるUV硬化ポリウレタンオリゴマーと、光開始剤と、シランカップリング剤と、オリゴマーと、安定剤とを含む3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物に関するものである。
【0056】
【化9】
【化10】
ここで、
Aは、前記化学式2で表される置換基であり、
*は、結合される部分を意味し、
~Rは互いに同一または異なり、それぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~200のアルキレン基、置換または非置換の炭素数6~200のアリーレン基、置換または非置換の核原子数5~200のヘテロアリーレン基、および置換または非置換の炭素数3~200のシクロアルキレン基である。
【0057】
前記置換されたアルキレン基、置換されたアリーレン基、置換されたヘテロアリーレン基、および置換されたシクロアルキレン基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~24のアルキニル基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数6~30のアリール基、核原子数5~60のヘテロアリール基、炭素数6~30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数6~30のアラルキルアミノ基、炭素数2~24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1~30のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、および炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数の置換基で置換される場合、これらは互いに同一または異なる。
【実施例
【0058】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現されることができ、ここに説明する実施例に限定されない。
【0059】
[調製例:3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物の調製]
下記化学式3で表されるUV硬化ポリウレタンオリゴマーと、下記化学式5で表される光開始剤と、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランと、エポキシアクリレートオリゴマーと、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールとを混合して、3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物を調製した。前記高分子組成物の調製に使用されたオリゴマーなどは購入して利用しており、構成成分の含有量は、下記表1の通りである。
【0060】
【化11】
【化12】
【化13】
ここで、
Aは、化学式2で表される置換基であり、nおよびmは互いに同一または異なり、それぞれ独立して1~200の整数である。
【0061】
【表1】
【0062】
[実験例:物性評価実験]
1.試験条件
1-1.引張試験
試験方法:ASTM D638
試験機器:万能試験機(Universal Testing Machine)
試験速度:50mm/min
グリップ間の距離:115mm
ロードセル:3000N
弾性区間:(0.05~0.25)%
降伏点:0.2%オフセット
試験環境:(23±2)℃、(50±5)%R.H.
【0063】
1-2.曲げ試験
試験方法:ASTM D790
試験機器:万能試験機
試験速度:1.4mm/min
支点間距離:55mm
ロードセル:200N
弾性区間:(0.05~0.25)%
試験環境:(23±2)℃、(50±5)%R.H.
【0064】
1-3.IZOD衝撃強度
試験方法:ASTM D256
ノッチ部の深さ:2.54mm(依頼者加工)
試験環境:(23±2)℃、(50±5)%R.H.
【0065】
1-4.圧縮試験
試験方法:ASTM D695
試験速度:1.3mm/min
ロードセル:30000N
試験環境:(23±2)℃、(50±5)%R.H.
【0066】
1-5.デュロメータ(Durometer)硬度
試験方法:ASTM D2240
試験環境:(23±2)℃、(50±5)%R.H.
【0067】
1-6.熱変形温度
試験方法:ASTM D648
試験荷重:0.45MPa
昇温速度:2℃/min
【0068】
2.試験結果
前記実験は、韓国高分子試験研究所に依頼して実験を行っており、試験片は前記表1のS10~S50の高分子組成物を3Dプリンタにより図1の試験片として出力して提供した。
【0069】
比較実験を行なうために、Next Dent社の製品、ABS素材、およびPC素材を利用して試験片を製造し、S50との比較実験の結果を確認しており、その結果は下記表2の通りである。
【0070】
【表2】
【0071】
前記表2に示すように、従来の市販されている製品と比較して、S50は低い粘度を示し取り扱いが容易であるのに対し、引張試験および曲げ試験においては相対的に優れた効果を示すことを確認した。
【0072】
S10~S60に対して、圧縮強度、引張強度、降伏強度、曲げ強度、曲げ弾性率、伸び率、および熱変形温度を測定した。
【0073】
【表3】
【0074】
前記表3に示すように、S10~S60の物性評価の結果、S10およびS60は、試料の最大荷重、引張強度、降伏強度、標点距離、最大変位、伸び率、および弾性率が相対的に低いものと確認された。
【0075】
S20およびS30の場合、熱変形温度が52℃~58℃程度で出力物が使用によって変形される場合、52℃~58℃の水で原形に復元可能であり、圧縮強度、引張強度、弾性率などにおいて優れた効果を示すことを確認した。
【0076】
S40およびS50の場合は、S20およびS30に比べて熱変形温度は高いが、他の物性においてより優れた効果を示すことを確認した。
【0077】
前記S20~S50に対する物性の差は、構成成分の含有量に応じて差を示すもので、3Dプリンタにより印刷した出力物の使用用途に応じて、好適な高分子組成物を選択して使用することが可能であると言える。
【0078】
以上において、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物であって、より具体的には、3Dプリントに適用し得る形態の光硬化型高分子であり、これを利用して3Dプリントをすることにより、熱的性質、強度、弾性率、および伸び率のような物理的特性に優れ、形状復元が可能な3Dプリント出力物を製造し得る3Dプリンタ用光硬化型高分子組成物に関するものである。

図1
図2
図3
図4