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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】軸方向磁束モータウォータポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
F04D13/06 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021531690
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2019062656
(87)【国際公開番号】W WO2020117485
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】16/208,885
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ロサリアン,ヴァイジェル
(72)【発明者】
【氏名】リーバン,ステファン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】スペハー,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】コックス,マイケル
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第2553144(CN,Y)
【文献】中国特許出願公開第105332927(CN,A)
【文献】特開2012-193650(JP,A)
【文献】中国実用新案第205207206(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられたカバーと、
前記ハウジング内に搭載されたステータとを備え、前記ステータがリング状に取り付けられた複数のステータ極を備え、各ステータ極が電気巻線を備え、
単一ベアリング上の前記ステータと協働的な関係で前記ハウジングに軸支されるロータと、
前記ロータの端部に取り付けられたインペラと、
前記ステータ極と協働的な関係で前記ロータの端部に取り付けられた複数の磁石と、
前記ステータと磁石をドライゾーンにする前記ロータとハウジングの間のシールと、
ベントホールおよびドレンホールを備える凝縮液チャンバおよびリザーバと、
前記カバー内に収容されるパワーエレクトロニクス回路とを備え、
前記ベントホールとドレンホールは周囲に開放されており、前記凝縮液チャンバは、前記シールを越えて漏れる可能性のある流体を収集するように構成され、
前記ステータが、前記ハウジング内のサーマルポッティングの中に覆われ
ことを特徴とする軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項2】
前記電気巻線が平線を含むことを特徴とする請求項1に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項3】
前記電気巻線が丸線を含むことを特徴とする請求項1に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項4】
前記ロータが二列ボールベアリングに軸支されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項5】
前記インペラが前記ロータに片持ち状態で取り付けられることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項6】
前記パワーエレクトロニクス回路がモータ速度を制御するためのものであることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項7】
前記ベアリングが二列ベアリングであることを特徴とする請求項6に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項8】
前記二列ベアリングがボールベアリングであることを特徴とする請求項7に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項9】
前記二列ベアリングがローラベアリングであることを特徴とする請求項7に記載の軸方向磁束モータウォータポンプ。
【請求項10】
請求項1に記載の軸方向磁束モータウォータポンプを備える冷却システムであって
前記軸方向磁束モータウォータポンプがコントローラへ第1信号を送信するとともに第2信号をコントローラから受信してモータ速度を制御するように構成され、
軸方向磁束モータウォータポンプのインレットとアウトレットに接続される流体道管システムと、
前記軸方向磁束モータウォータポンプからの流体の流れを調整するための前記流体道管内の装置とを備え、前記装置が前記コントローラから制御信号を受信するように構成される
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項11】
前記装置がバルブを備えることを特徴とする請求項10に記載の冷却システム。
【請求項12】
1以上の熱交換器を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の冷却システム。
【請求項13】
各熱交換器を通る流体の流れを制御するための1以上のバルブを更に備えることを特徴とする請求項12に記載の冷却システム。
【請求項14】
各バルブが前記コントローラと通信を行うことを特徴とする請求項13に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向磁束モータウォータポンプに関し、より具体的にはメカニカルシールを備える軸方向磁束モータウォータポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、流体をポンピングするためのウォータポンプに関し、特に内燃機関内の冷却液や冷却流体の循環ポンプを必要とする他のアプリケーションに関する。ウォータポンプとして利用される軸方向磁束モータ(axial flux motors)は、関連技術から知られている。軸方向磁束モータでは、磁束線はモータのエアギャップ内を軸方向に沿って伸びる。ステータは通常、丸線巻線を備える。
【0003】
当技術分野の代表は、ステータおよびロータを含む軸方向磁束モータを備えた湿式ロータポンプを開示する米国特許出願第2015/0030479号である。ステータはドライゾーンに配置される一方、インペラのロータはウェットゾーンに配置される。ロータは、1つまたは複数のサマリウムコバルト(SmCo)永久磁石で形成されている。
【0004】
代表的な技術には、米国特許出願第2017/0016449号も含まれ、空洞を部分的に規定するハウジング、空洞内に配置されたインペラ、第1ディスクを含むインペラ、および第1ディスク上に配置されたベーンを備え、インペラは回転軸の周りを回転するように動作し、第1ステータのコアはハウジング上に配置され、巻線は第1ステータのコア上に配置され、第1インレットはハウジングによって規定され、第1インレット、インペラ、およびハウジングは部分的に流体流路を規定するポンプを開示する。
【0005】
必要とされているのは、メカニカルシールとステータ周りのサーマルポッティングを備える軸方向磁束モータウォータポンプである。本発明は、この要求に合致する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の目的は、メカニカルシールおよびステータの周りのサーマルポッティングを含む軸方向磁束モータウォータポンプを提供することである。
【0007】
本発明のその他の態様は、以下の本発明の詳細な説明と添付された図面により指摘され明らかにされる。
【0008】
本発明は、ハウジングと、ハウジングに取り付けられたカバーと、ハウジング内に搭載されたステータとを備え、ステータがリング状に取り付けられた複数のステータ極を備え、各ステータ極が電気巻線を備え、単一ベアリング上のステータと協働的な関係でハウジングに軸支されるロータと、ロータの端部に取り付けられたインペラと、ステータ極と協働的な関係でロータの端部に取り付けられた複数の磁石と、ステータと磁石をドライゾーンにするロータとハウジングの間のシールとを備え、ステータが、ハウジング内のサーマルポッティングの中に覆われ、カバー内に収容されるパワーエレクトロニクスを更に備える軸方向磁束モータウォータポンプを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を例示し、詳細な説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
図1図2のポンプのA-A断面図である。
図2】ポンプの平面図である。
図3】ポンプの平面図である。
図4】冷媒システムの模式図である。
図5】分解図である。
図6】ロータ磁石とフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、図2のポンプのA-A断面図である。ウォータポンプは、電動モータであり、インペラを駆動する。電動モータは、軸方向磁束モータである。軸方向磁束モータでは、磁束は、極の向きおよびステータの巻き線方向により、モータのエアギャップ内を軸方向に沿って伸びる。本発明のウォータポンプは、通常エンジン冷却システムで用いられる。ウォータポンプは、冷却液を加圧してエンジン冷却システム内を循環させる。
【0011】
ウォータポンプ1000は、ハウジング10とカバー50を備える。インペラ150は、ロータシャフト100の端部に取り付けられる。ステータ200は、ハウジング内に配置される。複数のステータの極201は、ハウジング10の内部11内のリングの中に配置される。軸方向磁束モータの場合と同様に、各極201の軸B-Bは、シャフト100の回転軸D-Dに平行である。モータは、三相9コイル構造で構成される。ステータの極201は、軟金属複合材料を含む。磁性材料もステータの極201に使用できる。
【0012】
電気巻線202は、各極201の周りに巻かれている。巻線202は、断面が平線または丸線のいずれかを含み得る。平線は、正方形または長方形の断面を有し得る。平線または丸線は、銅またはアルミニウムを含み得る。巻線202の巻線面C-Cは、シャフト軸D-Dに垂直に延在するので、磁束は、軸D-Dに平行な軸方向に延在する。本発明のモータは、200Wおよび最大12kWの電力定格を有する。
【0013】
複数の永久磁石110が、フレーム115上のシャフト100の別の端部に取り付けられている。磁石110はまた、複数の極を有する単一のリング磁石を含み得る。フレーム115は、シャフト100の端部に固定され、それによってシャフト100と共に回転する。磁石110は、極201と半径方向に位置合わせされる。極201と磁石110との間にエアギャップ「G」が維持され、それにより、動作中のそれらの間の接触が防止される。エアギャップは0.2mmから1.5mmの範囲である。ギャップ「G」は、最大の磁気効率を実現するために、好ましくは可能な限り小さい。
【0014】
メカニカルシール250は、加圧された液体冷媒が内部11に入り、それによってステータ200およびロータ磁石110と接触するのを防ぐ。これにより、ステータ200および磁石110はドライゾーンにある。ドライゾーンは通常、周囲の大気圧にある。シール250は、シャフト100とハウジング10との間に配置される。シール250は、当技術分野で知られている任意の適切なメカニカルシールを含むことができ、例えばベローズ、カートリッジ、バランスカートリッジおよびOリング、アンバランスカートリッジおよびOリング、プッシャおよび従来型シールなどを含み得る。ステータおよび磁石のためにドライ空間を維持することは、もし内部11に冷却液が含まれており、それによりステータの極とロータ磁石との間のギャップ「G」に冷却液が存在する場合に存在するであろう風損および粘性損失を低減することによってポンプの効率を高める。
【0015】
凝縮液チャンバおよびリザーバ301は、ベントホール302およびドレンホール303を備える。チャンバ301は、シール250を越えて漏れる可能性のある流体を収集する。ベント302およびドレン303は、周囲に開放されている。
【0016】
サーマルポッティング12は、ステータ200を覆うためにハウジング10で使用される。サーマルポッティングは、ステータおよびハウジングからの信頼できる熱伝達手段を提供することにより、ポンプをより低温で作動させる。ポンプの加熱は、通常、鉄損と銅損、および変化する磁場によってステータと巻線に誘導される渦電流による抵抗加熱、ポンピングされる冷却液やエンジンブロック(図示せず)からハウジングへの熱伝導によって発生する。サーマルポッティングは電気技術分野において周知である。
【0017】
ロータシャフト100は、単一のベアリング120内で回転する。ベアリング120はシャフト100がベアリング内輪を含む一体型ベアリングも含み得る。回転アセンブリは、シャフト100、フレーム115、磁石110、およびインペラ150を備える。単一ベアリング120は、二列ボールベアリングまたは二列ボールローラベアリングのいずれかを含み得る。ローラベアリングは、円筒ローラまたは円錐ローラを含み得る。軸方向磁束モータの構成によりポンプシャフトの長さが短いため、単一のベアリングの使用が可能になる。ベアリングはシールドベアリングで構成される。ポンプシャフト100の全長が短いため、インペラ150は、シャフト100に片持ち状態で取り付けられている。
【0018】
冷却液は、インペラインテーク151に流れ込み、インペラが回転するにつれてアウトレット152から排出される。インペラはウォータポンプの技術分野で周知である。通常の動作吐出圧力は最大約1.5バールであるが、エンジンの熱負荷に応じて5バールを超える場合がある。流量は、アプリケーションに応じて、最大220リットル/分、または最大500リットル/分までとなる。
【0019】
パワーエレクトロニクスは、カバー50内のエレクトロニクスハウジング51に配置されている。パワーエレクトロニクスは、シャフトの回転速度を制御し、故障を検出することもできる。軸方向磁束モータのパワーエレクトロニクスは当技術分野において周知である。カバー50は、パワーエレクトロニクスを冷却するためのヒートシンクとして機能する。モータは可変速であるため、エンジンの熱負荷要件に応じて冷却液の流れを調整できる。制御方法は、PWM、LINプロトコル/バスまたはCANプロトコル/バスで構成される。LINバスは、シリアル通信プロトコルに基づくサブバスシステムである。バスは、単一のワイヤを使用してデータを送信する単一のマスター/複数のスレーブバスである。コントローラ・エリア・ネットワークまたはCANプロトコルは、エンジン管理システム、ウォータポンプ、オイルポンプ、アクティブサスペンション、ABS、ギア制御、照明制御、エアコン、エアバッグ、自動車に組み込まれた中央ロックなどのさまざまな電子デバイス間の通信方法である。PWMまたはパルス幅変調は、制御回路を含むさまざまなアプリケーションで使用されるデジタル信号の一種である。
【0020】
図2はポンプの平面図である。排出ボリュート13は、エンジンブロック(図示せず)内の協働するチャネルと係合する。ハウジング10は、エンジンブロックに直接取り付けられている。吸込側またはインテーク側150は、エンジン内の流体導管(図示せず)と協働的に係合する。
【0021】
図3はポンプの平面図である。ファスナ(図示せず)は、取り付け穴14に係合して、ポンプをエンジンブロック(図示せず)などの取り付け面に取り付ける。
【0022】
図4は、冷媒システムの模式図である。ポンプ1000はエンジン(E)に取り付けられている。エンジン(E)は、3つのシリンダ(1)、(2)、(3)を備える。エンジン(E)は、必要に応じて任意の数のシリンダを含むことができる。ウォータジャケット(J)がシリンダを囲む。このシステムは、ラジエータ(R)、エンジントランスミッションオイル熱交換器(OC)、補助熱交換器(AUX)、およびエキゾーストマニホールド熱交換器(EM)をさらに備える。
【0023】
熱管理モジュール2000は、ポンプ1000のインテーク側に取り付けられている。モジュール2000は、複数のバルブ2001、2002、2003、2004、2005および2006を備える。各バルブは、システムコンポーネントのための冷却液の流れを制御する。バルブ2001はラジエータRへの流れを制御する。バルブ2002は熱交換器OCへの流れを制御する。バルブ2003は、熱交換AUXへの流れを制御する。バルブ2004は、R、OC、AUX、およびEMから戻る流れを制御する。バルブ2005は、ポンプ1000からの再循環フローとEMへのフローを制御する。バルブ2006は、E、EM、AUX、OC、およびRから戻る流れを制御する。エンジンECUは、複数のセンサと入力信号(3001)を介して、エンジンとシステムの状態、周囲の状態、システムとドライバの要求を検出し、各バルブを目的の位置に設定して冷却液の流れを調整し、エンジンとシステムの熱性能を制御する。各バルブは、ポンプインテーク151と流体的に連絡している。
【0024】
図5は分解図である。モータは三相モータである。巻線202(a)は第1相である。巻線202(b)は第2相である。巻線202(c)は第3相である。この実施形態では、各相は3つのステータの極を含む。ただし、単相または多相に接続された個々の極の巻線も使用できる。ガスケット15は、ハウジング10とエンジンEとの間をシールする。
【0025】
図6は、ロータの磁石とフレームの斜視図である。磁石220はフレーム115に取り付けられている。フレーム115はシャフト100に押し付けられる。フレーム115はまた、冷却エアを循環させるブレードを備えてもよい。
【0026】
磁石110は、円周の周りに極を有するリング磁石か、各々交互に極を配置した複数の磁石を含み得る。磁石は、フェライト、希土類、または他の既知の材料を含み得る。磁石は、既知の方法を用いてフレームに取り付けられる。
【0027】
本明細書では、本発明の複数の形態について説明されたが、当業者であれば、ここで説明された発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、その構成、パーツ間の関係に様々な変更ができることは明らかである。特に明記されていない限り、図面に示されている構成部は一定の縮尺で描かれていない。数値例は、発明を説明するために使用されており、特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。更に、「手段」または「ステップ」という言葉が特定のクレームで明示的に使用されていない限り、添付されたクレームまたはクレーム要素の何れかが35U.S.C.112(f)条の適用を意図するものではない。本開示は、図面に示され、本明細書に記載される例示的な実施形態または数値上の寸法に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6