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特許7180936電解コンデンサ用リード端子、圧延部の製造装置、及び、圧延部の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-12-05
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用リード端子、圧延部の製造装置、及び、圧延部の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20221122BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20221122BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20221122BHJP
【FI】
H01G9/008 303
H01G4/228 F
H01G13/00 303B
H01G13/00 307F
H01G13/00 371Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022064013
(22)【出願日】2022-04-07
【審査請求日】2022-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 弘和
(72)【発明者】
【氏名】藤中 博行
(72)【発明者】
【氏名】宮部 博幸
(72)【発明者】
【氏名】荒木 治人
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-147703(JP,A)
【文献】特開平11-045836(JP,A)
【文献】特開2003-347174(JP,A)
【文献】特開2006-086458(JP,A)
【文献】特開昭56-012720(JP,A)
【文献】特開昭62-052450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/008
H01G 4/228
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサ用リード端子(1)であって、
金属線(50)の軸方向における一部である対象部を圧延して形成された圧延部(12)と、
前記金属線の他部により構成される棒状部(18)と、
前記棒状部(18)の先端部に溶接されたリード線(20)と、
を備え、
前記圧延部(12)の側周面は、互いに対向している被押圧面であって前記圧延部(12)の幅方向及び前記軸方向に拡がる第1主面(14a、114a)及び第2主面(14b、114b)と、互いに対向しており前記圧延部(12)の厚み方向及び前記軸方向に拡がる一対のせん断面(14c,14d、114c,114d)と、前記第1主面と前記せん断面とを接続する第1接続面(S1,S3、S101,S103)と、前記第2主面と前記せん断面とを接続する第2接続面(S2,S4、S102,S104)と、を有し、
前記第1接続面又は前記第2接続面の一方(S1,S3、S102,S104)はダレ面であり、他方(S2,S4、S101,S103)は、前記第1主面(14a、114a)と前記第2主面(14b、114b)のうち自身が接続されている主面(14b、114a)に連続している被押圧面(S2a,S4a、S101a,S103a)を含み、
前記圧延部(12)を前記軸方向と直交する平面で切断した断面において、前記ダレ面(S1,S3、S102,S104)及び前記被押圧面(S2a,S4a、S101a,S103a)は何れも略円弧状であり、
一対の前記せん断面(14c,14d、114c,114d)にはそれぞれ前記軸方向に延びる段差(B1,B2、B101,B102)が設けられており、
前記段差は、前記圧延部(12)の前記厚み方向における中心から離間した位置に位置している、
電解コンデンサ用リード端子。
【請求項2】
請求項1に記載の電解コンデンサ用リード端子(1)であって、
前記段差により、一対の前記せん断面が、それぞれ、前記第1接続面と接続する第1せん断面(14c1,14d1、114c1,114d1)と前記第2接続面と接続する第2せん断面(14c2,14d2、114c2,114d2)とに分割され、
一対の前記第1せん断面間の幅方向距離(w1)が一対の前記第2せん断面間の幅方向距離(w2)よりも小さく、
前記段差は、前記圧延部の前記厚み方向における中心から第2主面側に位置している、
電解コンデンサ用リード端子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電解コンデンサ用リード端子であって、
前記第1接続面(S1,S3、S101,S103)と前記第2接続面(S2,S4、S102,S104)のうち前記被押圧面(S2a,S4a、S101a,S103a)を含む接続面(S2,S4、S101,S103)は、当該被押圧面と連続しているダレ面(S2b,S4b、S101b,S103b)を更に含む、
電解コンデンサ用リード端子。
【請求項4】
金属線(50)の軸方向における一部である対象部を圧延して形成された圧延部(12)と、前記金属線の他部により構成される棒状部(18)と、前記棒状部の先端部に溶接されたリード線(20)と、を備える電解コンデンサ用リード端子の前記圧延部の製造装置(40)であって、
第1方向に延びる辺及び前記第1方向と直交する第2方向に延びる辺を含み、前記第1方向及び前記第2方向に平行な第1押圧面(42a)を有し、前記第1押圧面に直交する第3方向に移動可能な第1型(42)と、
前記第1方向に延びる辺及び前記第2方向に延びる辺を含み、前記第1押圧面(42a)と対向するとともに、前記金属線(50)の前記軸方向が前記第2方向に一致するように前記金属線の前記対象部が載置される第2押圧面(44a)を有する第2型(44)と、
前記第1型(42)の外周側にて前記第3方向に移動可能に設けられ、前記第1押圧面(42a)の少なくとも前記第2方向に延びる辺からその外周側に所定の第1クリアランス(C1)だけ離間した第1位置(Pu)にて前記第3方向に移動可能な第1切刃(46a乃至46c)を有する第1切断部材(46)と、
前記第2型(44)の外周側にて前記第3方向に移動可能に設けられ、前記第2押圧面(44a)の少なくとも前記第2方向に延びる辺からその外周側に前記第1クリアランス(C1)よりも大きい所定の第2クリアランス(C2)だけ離間した第2位置(Pl)にて前記第3方向に移動可能な第2切刃(48a乃至48c)を有する第2切断部材(48)と、
を備え、
前記第1押圧面(42a)又は前記第2押圧面(44a)の一方の押圧面が平坦であり、他方の押圧面の前記第1方向における両側の辺縁部は、前記第2方向に沿って前記一方の押圧面に向かって反り返っており、前記第1方向及び前記第3方向を含む平面で切断した断面形状が略円弧状である
圧延部の製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の圧延部の製造装置(40)であって、
前記金属線(50)の前記対象部が前記第1押圧面(42a)と前記第2押圧面(44a)との間で押圧されて圧延されることにより所定の厚み(t)となるように、前記第1型(42)を前記第3方向の一方に移動可能に構成された型移動装置(60)と、
前記圧延された前記金属線(50)の前記対象部の厚み方向における一部に前記第1切刃(46a乃至46c)によって第1せん断面(14c1,14d1、114c1,114d1)が形成されるように、前記第1切断部材(46)を前記第3方向の前記一方に移動させる第1切刃移動動作と、
前記第1せん断面が形成された前記金属線の前記対象部の前記厚み方向における他部に前記第2切刃(48a乃至48c)によって第2せん断面(14c2,14d2、114c2,114d2)を形成するとともに、前記対象部のうち前記第1押圧面(42a)と前記第2押圧面(44a)との間からはみ出した部分であるはみ出し部(50a、50b)を切除するように、前記第2切断部材(48)を前記第3方向の他方に移動させる第2切刃移動動作と、
を実現可能に構成された切断部材移動装置(62)と、
を備える、圧延部の製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の圧延部の製造装置(40)であって、
前記第1切刃(46a乃至46c)が前記第1せん断面(14c1,14d1、114c1,114d1)を形成するために前記第1位置(Pu)から前記第3方向の前記一方に移動する切断距離(d)は、前記所定の厚み(t)の半分の距離よりも長い、
圧延部の製造装置。
【請求項7】
金属線(50)の軸方向における一部である対象部を、前記軸方向に直交する厚み方向の一方に所定の厚み(t)となるように押圧することにより、前記厚み方向に直交する平坦面である第1被押圧面(Sa)と、前記軸方向に直交する平面で切断した断面形状が略円弧状の辺縁部(Sbe)を含む第2被押圧面(Sb)と、を有する押圧部(50a)を形成する押圧工程と、
前記押圧工程により前記押圧部(50a)を押圧したまま、前記押圧部の外側に位置するはみ出し部(50b,50c)を第1被押圧面側又は第2被押圧面側の一方の被押圧面側から前記厚み方向における所定のせん断位置までせん断して、前記押圧部の前記厚み方向の一部に、前記軸方向及び前記厚み方向に直交する幅方向に所定の幅方向距離(w1)だけ離間した一対の第1せん断面(14c1,14d1、114c1,114d1)を形成する第1せん断工程と、
前記押圧工程により前記押圧部(50a)を押圧したまま、前記はみ出し部(50b,50c)を前記第1被押圧面側又は前記第2被押圧面側の他方の被押圧面側から前記厚み方向にせん断して、前記押圧部の厚み方向の別の一部であって一対の前記第1せん断面よりも幅方向における外側に、一対の第2せん断面(14c2,14d2、114c2,114d2)を形成するとともに、前記はみ出し部(50b,50c)を切除する第2せん断工程と、
を含み、
前記せん断位置は、前記押圧部(50a)の前記厚み方向における中心位置よりも前記他方の被押圧面側に位置している、
圧延部の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の圧延部の製造方法であって、
前記第1せん断工程において前記はみ出し部(50b,50c)を前記第1被押圧面側から前記せん断位置までせん断する場合、前記第1せん断工程を終了すると、前記金属線(50)の前記対象部のうち、一対の前記第1せん断面(14c1,14d1)と前記第1被押圧面側で接続している部分(S1,S3)にダレ面が形成される、
圧延部の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の圧延部の製造方法であって、
前記第2せん断工程を終了すると、前記辺縁部(Sbel(S2a),Sber(S4a))と一対の前記第2せん断面(14c2,14d2)との間(S2b,S4b)にダレ面が形成される、
圧延部の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の圧延部の製造方法であって、
前記第1せん断工程において前記はみ出し部(50b,50c)を前記第2被押圧面側から前記せん断位置までせん断する場合、前記第1せん断工程を終了すると、前記辺縁部(Sbel(S101a),Sber(S103a))と一対の前記第1せん断面(114c1,114d1)との間(S101b,S103b)にダレ面が形成される、
圧延部の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の圧延部の製造方法であって、
前記第2せん断工程を終了すると、前記金属線(50)の前記対象部のうち、一対の前記第2せん断面(114c2,114d2)と前記第1被押圧面側で接続している部分(S102,S104)にダレ面が形成される、
圧延部の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用リード端子、圧延部の製造装置、及び、圧延部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電解コンデンサ用のリード端子が知られている。リード端子は、圧延部と、棒状部と、リード線と、を備える。圧延部は、金属線の軸方向における一部を圧延して形成された部分である。棒状部は、当該金属線の他部により構成される部分である。リード線は棒状部の先端部に溶接されている。
【0003】
リード端子は、電解コンデンサの構成部品の1つである。電解コンデンサは、有底円筒状のケースと、コンデンサ素子と、一対のリード端子と、ケースの開口部を封閉する封口体と、を備える。コンデンサ素子は、一対の電極箔(陽極箔及び陰極箔)と、これらの電極箔間に設けられたセパレータと、を有する。コンデンサ素子は、各リード端子の圧延部を対応する電極箔に接続した状態で電極箔及びセパレータを筒状に巻回することにより形成され、その内部に電解質を保持している。コンデンサ素子は、ケースの内部に収容されている。封口体には一対の貫通孔が設けられている。コンデンサ素子の一端面から突出している一対のリード端子は、対応する貫通孔にそれぞれ挿通されている。具体的には、各リード端子は、棒状部が貫通孔の内部に位置し、リード線がケースの外部に位置するように貫通孔に挿通されている。
【0004】
近年、電解コンデンサを小型化するとともに静電容量を増大させる(大容量化する)技術の開発が進められている。電解コンデンサの静電容量は、コンデンサ素子の電極箔(厳密には、陽極箔)の表面積が大きくなるほど増大する。このため、電極箔の巻回量(別言すれば、ケース内部における電極箔の収容量)を増大させてその表面積を大きくし、これにより素子体積効率を向上させるための様々な工夫が実施されている。なお、素子体積効率とは、ケース内部の単位体積当たりの静電容量の大小を表す指標である。
【0005】
圧延部の断面(厳密には、圧延部をその長手方向と直交する平面で切断したときの断面)の四隅は、通常、略直角である。このため、電極箔の巻回量を増大させるべく高い張力で圧延部に電極箔を巻回すると、これら四隅にて電極箔が損傷する可能性があり、巻回量を増大させることが難しい。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1には、圧延部の断面四隅に面取り加工が施された電解コンデンサ用リード端子が開示されている。このリード端子の圧延部は、まず、受け台の上に載置されたアルミ頭部(アルミニウム線の一部)をパンチにてプレスして所定の厚みとし、次に、パンチの外にはみ出た部分を切込み用切刃及び切除用切刃により切除することにより製造される。受け台の押圧面及びパンチの押圧面は、何れも、幅方向における両側の辺縁部が反り返った形状となっている。このような形状の押圧面を有する受け台とパンチとの間でアルミ頭部がプレスされることにより、圧延部の四隅に面取り加工が施される。なお、特許文献1では、リード端子は「タブ端子」と記載されており、受け台の押圧面及びパンチの押圧面は、それぞれ「受け台の先端」及び「パンチの先端」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-147703号公報
【発明の概要】
【0008】
特許文献1では、圧延部の四隅に面取り加工を施すことにより、従来の平板状の圧延部と比較して、電極箔を高い張力で巻回しても電極箔の損傷が起こり難くなるため、より高密度に電極箔を巻回できる旨が記載されている。しかしながら、特許文献1の製造方法によれば、圧延部の成形性が低下する可能性がある。
【0009】
即ち、一般に、受け台とパンチとの間でアルミ頭部をプレスすると、圧延されたアルミ頭部が受け台の押圧面とパンチの押圧面との間の空間を隙間なく充填し、余った部分が受け台及びパンチからはみ出すようになっている。しかしながら、特許文献1の受け台及びパンチは、上述したように、それぞれの押圧面の幅方向における両側の辺縁部が反り返った形状となっているため、プレス時における「受け台の辺縁部とパンチの辺縁部との間の距離」が短くなる。その結果、アルミ頭部をプレスすると、アルミ頭部は長手方向には比較的に容易に圧延されるものの、幅方向には圧延され難くなる(辺縁部がアルミ頭部の幅方向への圧延を阻害するため)。従って、圧延されたアルミ頭部が受け台の押圧面とパンチの押圧面との間の空間を好適に充填することが困難になり、圧延部の成形性が低下する可能性がある。
【0010】
本発明は、上述した問題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、圧延部の成形性の低下を抑制しながら、電解コンデンサの素子体積効率を好適に向上させることが可能な技術を提供することにある。
【0011】
本発明による電解コンデンサ用リード端子(1)は、
金属線(50)の軸方向における一部である対象部を圧延して形成された圧延部(12)と、
前記金属線の他部により構成される棒状部(18)と、
前記棒状部(18)の先端部に溶接されたリード線(20)と、
を備え、
前記圧延部(12)の側周面は、互いに対向している被押圧面であって前記圧延部(12)の幅方向及び前記軸方向に拡がる第1主面(14a、114a)及び第2主面(14b、114b)と、互いに対向しており前記圧延部(12)の厚み方向及び前記軸方向に拡がる一対のせん断面(14c,14d、114c,114d)と、前記第1主面と前記せん断面とを接続する第1接続面(S1,S3、S101,S103)と、前記第2主面と前記せん断面とを接続する第2接続面(S2,S4、S102,S104)と、を有し、
前記第1接続面又は前記第2接続面の一方(S1,S3、S102,S104)はダレ面であり、他方(S2,S4、S101,S103)は、前記第1主面(14a、114a)と前記第2主面(14b、114b)のうち自身が接続されている主面(14b、114a)に連続している被押圧面(S2a,S4a、S101a,S103a)を含み、
前記圧延部(12)を前記軸方向と直交する平面で切断した断面において、前記ダレ面(S1,S3、S102,S104)及び前記被押圧面(S2a,S4a、S101a,S103a)は何れも略円弧状であり、
一対の前記せん断面(14c,14d、114c,114d)にはそれぞれ前記軸方向に延びる段差(B1,B2、B101,B102)が設けられており、
前記段差は、前記圧延部(12)の前記厚み方向における中心から離間した位置に位置している。
【0012】
本発明による圧延部の製造装置(40)は、
金属線(50)の軸方向における一部である対象部を圧延して形成された圧延部(12)と、前記金属線の他部により構成される棒状部(18)と、前記棒状部の先端部に溶接されたリード線(20)と、を備える電解コンデンサ用リード端子の前記圧延部の製造装置である。
この製造装置(40)は、
第1方向(幅方向)に延びる辺及び前記第1方向と直交する第2方向(長手方向)に延びる辺を含み、前記第1方向及び前記第2方向に平行な第1押圧面(42a)を有し、前記第1押圧面に直交する第3方向(上下方向)に移動可能な第1型(42)と、
前記第1方向(幅方向)に延びる辺及び前記第2方向(長手方向)に延びる辺を含み、前記第1押圧面(42a)と対向するとともに、前記金属線(50)の前記軸方向が前記第2方向に一致するように前記金属線の前記対象部が載置される第2押圧面(44a)を有する第2型(44)と、
前記第1型(42)の外周側にて前記第3方向(上下方向)に移動可能に設けられ、前記第1押圧面(42a)の少なくとも前記第2方向(長手方向)に延びる辺からその外周側に所定の第1クリアランス(C1)だけ離間した第1位置(Pu)にて前記第3方向に移動可能な第1切刃(46a乃至46c)を有する第1切断部材(46)と、
前記第2型(44)の外周側にて前記第3方向(上下方向)に移動可能に設けられ、前記第2押圧面(44a)の少なくとも前記第2方向(長手方向)に延びる辺からその外周側に前記第1クリアランス(C1)よりも大きい所定の第2クリアランス(C2)だけ離間した第2位置(Pl)にて前記第3方向に移動可能な第2切刃(48a乃至48c)を有する第2切断部材(48)と、
を備え、
前記第1押圧面(42a)又は前記第2押圧面(44a)の一方の押圧面(42a)が平坦であり、他方の押圧面(44a)の前記第1方向(幅方向)における両側の辺縁部(44a1)は、前記第2方向(長手方向)に沿って前記一方の押圧面(42a)に向かって反り返っており、前記第1方向及び前記第3方向(上下方向)を含む平面で切断した断面形状が略円弧状である。
【0013】
本発明による圧延部の製造方法は、
金属線(50)の軸方向における一部である対象部を、前記軸方向に直交する厚み方向の一方に所定の厚み(t)となるように押圧することにより、前記厚み方向に直交する平坦面である第1被押圧面(Sa)と、前記軸方向に直交する平面で切断した断面形状が略円弧状の辺縁部(Sbe)を含む第2被押圧面(Sb)と、を有する押圧部(50a)を形成する押圧工程と、
前記押圧工程により前記押圧部(50a)を押圧したまま、前記押圧部の外側に位置するはみ出し部(50b,50c)を第1被押圧面側又は第2被押圧面側の一方の被押圧面側から前記厚み方向における所定のせん断位置までせん断して、前記押圧部の前記厚み方向の一部に、前記軸方向及び前記厚み方向に直交する幅方向に所定の幅方向距離(w1)だけ離間した一対の第1せん断面(14c1,14d1、114c1,114d1)を形成する第1せん断工程と、
前記押圧工程により前記押圧部(50a)を押圧したまま、前記はみ出し部(50b,50c)を前記第1被押圧面側又は前記第2被押圧面側の他方の被押圧面側から前記厚み方向にせん断して、前記押圧部の厚み方向の別の一部であって一対の前記第1せん断面よりも幅方向における外側に、一対の第2せん断面(14c2,14d2、114c2,114d2)を形成するとともに、前記はみ出し部(50b,50c)を切除する第2せん断工程と、
を含み、
前記せん断位置は、前記押圧部(50a)の前記厚み方向における中心位置よりも前記他方の被押圧面側に位置している。
【0014】
本発明によれば、圧延部の成形性の低下を抑制しながら、電解コンデンサの素子体積効率を好適に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の実施形態に係る電解コンデンサ用リード端子(以下、単に「リード端子」とも称する。)の平面図である。
図1B図1のリード端子の側面図である。
図2図1のリード端子のII-II線における断面図である。
図3A図2の左側の部分拡大図である。
図3B図2の右側の部分拡大図である。
図4】圧延部の製造装置の正面図である。
図5図4の上型と下型の縦断面の部分拡大図である。
図6A】圧延部の製造方法(金属線載置工程)を説明するための図である。
図6B】圧延部の製造方法(押圧工程)を説明するための図である。
図6C】圧延部の製造方法(上切刃切断工程)を説明するための図である。
図6D】圧延部の製造方法(下切刃切断工程)を説明するための図である。
図6E】圧延部の製造方法(はみ出し部除去工程)を説明するための図である。
図6F】圧延部の製造方法を説明するための図である。
図7図6Bの部分拡大図である。
図8図6Cの部分拡大図である。
図9図6Dの部分拡大図である。
図10】本発明の変形例に係る圧延部の製造装置の上型と下型の縦断面の部分拡大図である。
図11】変形例に係るリード端子の図2に対応する断面図である。
図12図11の左側の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るリード端子1について説明する。リード端子1は、電解コンデンサの構成部品の1つである。図1A及び図1Bは、それぞれ、リード端子1の平面図及び側面図である。
【0017】
図1A及び図1Bに示すように、リード端子1は、前後方向に延びる長尺部材であり、圧延部12と、棒状部18と、リード線20と、溶接部30と、を備える。
【0018】
圧延部12及び棒状部18は、軸方向(前後方向)に亘って同一の径を有する所定長さの金属線から形成される。この金属線は、アルミニウム線の外表面全体を一次化成処理(ホウ酸及びアジピン酸等を含む化成液に浸漬する処理)により一次化成被膜(酸化被膜)で被覆し、その後、一次化成処理が施されたアルミニウム線を所定長さに切断することにより形成される。圧延部12は、金属線の軸方向における一部を、後述する圧延部製造装置40を用いてプレス加工により圧延するとともにその外周を切断する切断加工を行うことにより形成された部分である。棒状部18は、金属線のうちプレス加工及び切断加工が行われずに残存している部分(即ち、金属線の他部により構成される部分)であり、金属線と同一の径を有する円柱である。棒状部18の軸線は前後方向に延びている。以下、金属線の軸方向における一部を「金属線の対象部」とも称する。
【0019】
リード線20は、棒状部18の後端部(先端部)に溶接により接続されている。リード線20は、その外周面全体がスズめっきされたCP線(銅被覆鋼線)である。リード線20は、棒状部18よりも小径であり、その軸線は棒状部18の軸線と同軸である。なお、リード線20はCP線に限られず、例えばCu線(銅線)であってもよい。また、CP線又はCu線は、スズの代わりに、例えば鉛フリーはんだでめっきされていてもよい。
【0020】
溶接部30は、棒状部18とリード線20との間に形成されている。溶接部30は略半球状であり、棒状部18との境界位置において棒状部18と同一の径を有し、後方に向かうにつれて縮径している。
【0021】
圧延部12は、薄板部14と、リブ16と、を備える。薄板部14は、圧延部12のうちリブ16を除いた部分である。薄板部14は、所定の厚みを有し、平面視において略矩形状を呈する薄板状の部材であり、上面14a(第1主面)及び下面14b(第2主面)を有する。薄板部14の厚み方向の中心は、棒状部18の軸線上に位置している。また、薄板部14は平面視において左右対称であり、その対称軸は棒状部18の軸線と幅方向(左右方向)において一致する。
【0022】
リブ16は、棒状部18と薄板部14との境界部分を補強するための部材であり、薄板部14の後端部側に位置している。リブ16は、圧延部12を形成するためのプレス加工により形成される。側面視において、リブ16は、薄板部14の上側に設けられたリブ16aと、薄板部14の下側に設けられたリブ16bと、を有する。リブ16a及びリブ16bの後端は棒状部18の外周面にそれぞれ接続されており、リブ16a及びリブ16bの前端は薄板部14の上面14a及び下面14bにそれぞれ接続されている。即ち、リブ16a及びリブ16bは、それぞれの厚みが前方に向かって小さくなるように傾斜している。
【0023】
領域Rは、圧延部12の側周面のうち、コンデンサ素子を形成する際に電極箔が巻回されることになる領域である。電極箔は、リブ16が設けられている領域には巻回されない。このため、領域Rの後端は、リブ16の前端より僅かに前方に位置している。領域Rの前端は、圧延部12の前端と一致している。
【0024】
薄板部14の側周面(別言すれば、領域Rにおける圧延部12の側周面)の構成について図2乃至図3Bを参照して説明する。図2は、図1AのII-II線における薄板部14の断面図(別言すれば、領域Rにおける圧延部12の断面図)である。図3Aは、図2の断面図の左側の部分拡大図であり、図3Bは、図2の断面図の右側の部分拡大図である。なお、II-II線は、領域R内の軸方向における任意の位置に設定され得る。図2に示すように、薄板部14の側周面は、上面14aと、下面14bと、側面14cと、側面14dと、上接続面S1及びS3(第1接続面)と、下接続面S2及びS4(第2接続面)と、から構成されている。
【0025】
上面14aは、幅方向及び軸方向に拡がる平坦な面であり、薄板部14の一方の幅広面を構成している。上面14aは、断面視において位置P1から位置P5までの範囲に形成されている。
下面14bは、幅方向及び軸方向に拡がる平坦な面であり、薄板部14の他方の幅広面を構成している。下面14bは、断面視において位置P3から位置P7までの範囲に形成されており、上面14aと対向している。下面14bの幅方向の長さ(長さP3P7)は、上面14aの幅方向の長さ(長さP1P5)と略等しい。薄板部14の厚み(別言すれば、領域Rにおける圧延部12の厚み)tは、上面14aと下面14bとの間の距離として規定される。
【0026】
側面14cは、厚み方向(上下方向)及び軸方向に拡がる平坦な面であり、上面14a及び下面14bに対して左側に位置している。側面14cは、断面視において位置P2から位置P4までの範囲に形成されている。側面14cには、軸方向に延びる段差B1が設けられている。図3Aに示すように、側面14cは、段差B1により、側面14c1と、側面14c2と、に分割される。断面視において、側面14c1は位置P2から段差B1までの範囲に形成されており、側面14c2は位置P4から段差B1までの範囲に形成されている。側面14c2は、側面14c1に対して幅方向外側(左側(外周側))に位置している。
【0027】
図2に示すように、側面14dは、厚み方向及び軸方向に拡がる平坦な面であり、上面14a及び下面14bに対して右側に位置している。側面14dは、断面視において位置P6から位置P8までの範囲に形成されている。側面14dには、軸方向に延びる段差B2が設けられている。図3Bに示すように、側面14dは、段差B2により、側面14d1と、側面14d2と、に分割される。断面視において、側面14d1は位置P6から段差B2までの範囲に形成されており、側面14d2は位置P8から段差B2までの範囲に形成されている。側面14d2は、側面14d1に対して幅方向外側(右側(外周側))に位置している。なお、側面14d2が側面14d1に対して幅方向外側に離間している距離(図3B参照)は、側面14c2が側面14c1に対して幅方向外側に離間している距離(図3A参照)と略等しい。
【0028】
図2に示すように、位置P2及び位置P6は、厚み方向において略同一の高さに位置している。また、段差B1及び段差B2は、厚み方向において略同一の高さに位置しているとともに、薄板部14の厚み方向における中心から離間した位置(より具体的には、下面14b側)に位置している。更に、位置P4及び位置P8は、厚み方向において略同一の高さに位置している。このため、側面14c1及び側面14d1(図3A及び図3B参照)は互いに対向しており且つ合同である。同様に、側面14c2及び側面14d2(図3A及び図3B参照)は互いに対向しており且つ合同である。
【0029】
上記の説明から明らかなように、一対の側面14c1及び14d1間の幅方向距離w1は、一対の側面14c2及び14d2間の幅方向距離w2よりも小さい。別言すれば、薄板部14の幅方向の長さは、段差B1及び段差B2に対して上面14a側のほうが下面14b側よりも短くなっている。
また、位置P1と位置P5は、幅方向において対称に位置している。同様に、位置P3と位置P7は、幅方向において対称に位置している。
【0030】
上接続面S1は、上面14aと側面14c(厳密には、側面14c1)とを接続している。断面視において、上接続面S1は位置P1から位置P2までの範囲に、曲率半径R1を有する略円弧形状となるように形成されている。
上接続面S3は、上面14aと側面14d(厳密には、側面14d1)とを接続している。断面視において、上接続面S3は位置P5から位置P6までの範囲に、曲率半径R3を有する略円弧形状となるように形成されている。
ここで、薄板部14の断面四隅の曲率半径が過小である(例えば、略直角である)場合、電極箔を高い張力で巻回するとこれら四隅にて電極箔が損傷する可能性がある。一方、断面四隅の曲率半径が過大である場合、断面四隅が直線状に面取りされた形状となり、上面(又は下面)と側面との接続箇所に角部が形成されるため、電極箔を高い張力で巻回するとこれら角部にて電極箔が損傷する可能性がある。このため、電極箔を高い張力で巻回し得る断面四隅の曲率半径には所定の許容範囲Rtolがある。この許容範囲Rtolは、実験又はシミュレーションにより予め決定され得る。曲率半径R1と曲率半径R3は互いに略等しく(R1=R3)、許容範囲Rtol内に含まれている。
【0031】
下接続面S2は、下面14bと側面14c(厳密には、側面14c2)とを接続している。断面視において、下接続面S2は位置P3から位置P4までの範囲に形成されている。図3Aに示すように、下接続面S2は、面S2aと、面S2bと、を含む。断面視において、面S2aは位置P3から位置P9(位置P3と位置P4の間の位置)までの範囲に、曲率半径R2を有する略円弧形状となるように形成されており、面S2bは位置P9から位置P4までの範囲に形成されている。
下接続面S4は、下面14bと側面14d(厳密には、側面14d2)とを接続している。断面視において、下接続面S4は位置P7から位置P8までの範囲に形成されている。図3Bに示すように、下接続面S4は、面S4aと、面S4bと、を含む。断面視において、面S4aは位置P7から位置P10(位置P7と位置P8の間の位置)までの範囲に、曲率半径R4を有する略円弧形状となるように形成されており、面S4bは位置P10から位置P8までの範囲に形成されている。曲率半径R2と曲率半径R4は互いに略等しく(R2=R4)、許容範囲Rtol内に含まれている。
特に、本実施形態では、曲率半径R1、R2、R3及びR4の間には、R1=R3≒R2=R4の関係が成立している。
【0032】
薄板部14の側周面が含むこれらの面は、表面構造が異なる以下の3種類の面、即ち、ダレ面、せん断面、及び、被押圧面の何れかに分類され得る。一般に、ダレ面は、下型に載置された加工材を切刃で切断する際に加工材が引っ張られることにより形成される湾曲面であり、滑らかな表面になることを特徴としている。せん断面は、加工材の内部に切刃がめり込むことにより形成される平坦面であり、光沢があり、切断方向に細かい筋が付くことを特徴としている。被押圧面は、上型又は下型の押圧面により押圧されることにより形成される面である。ダレ面、せん断面及び被押圧面は、表面構造を解析する周知の手法(典型的には、SEM分析法)により互いに識別可能である。
【0033】
上面14a及び下面14bは、何れも被押圧面である。側面14c(側面14c1及び14c2)並びに側面14d(側面14d1及び14d2)は、何れもせん断面である。上接続面S1及びS3は、何れもダレ面である。側面14c1及び14d1は、それぞれ「第1せん断面」の一例に相当し、側面14c2及び14d2は、それぞれ「第2せん断面」の一例に相当する。
【0034】
このように、上面14a及び下面14b、側面14c及び側面14d、並びに、上接続面S1及びS3は、何れも1種類の面により構成されているのに対し、下接続面S2及びS4は、それぞれ2種類の面により構成されている。
【0035】
具体的には、下接続面S2に含まれる面S2aは被押圧面であり、面S2bはダレ面である。また、下接続面S4に含まれる面S4aは被押圧面であり、面S4bはダレ面である。なお、位置P9と位置P10は、厚み方向において略同一の高さに位置している。
【0036】
つまり、本実施形態では、上接続面S1及びS3と下接続面S2及びS4のうち、上面14a(即ち、上面14aと下面14bのうち厚み方向において段差B1及びB2から遠い側の面)に接続された接続面(即ち、上接続面S1及びS3)が、ダレ面である。一方、上接続面S1及びS3と下接続面S2及びS4のうち、下面14b(即ち、上面14aと下面14bのうち厚み方向において段差B1及びB2から近い側の面)に接続された接続面(即ち、下接続面S2及びS4)が、下面14bと連続している面S2a及びS4a(被押圧面)と、面S2a及びS4aにそれぞれ連続している面S2b及びS4b(ダレ面)と、を含んでいる。
【0037】
次に、リード端子1の製造方法について説明する。この製造方法は、金属線準備工程と、リード線溶接工程と、圧延部成形工程と、二次化成工程と、を備える。リード端子1は、各工程が上述した順序で実施されることにより製造され得る。
【0038】
まず、金属線準備工程では、外周面全体が一次化成処理された金属線(アルミニウム線)を所定長さに切断することにより準備する。
次に、リード線溶接工程では、金属線の先端部にリード線20を溶接する。溶接には、アーク放電による溶接、抵抗溶接、又は、レーザ溶接などの手法が用いられ得る。
【0039】
続いて、圧延部成形工程では、金属線の軸方向における一部を、後述する圧延部製造装置40を用いてプレス加工及び切断加工して、圧延部12を成形する。これにより、金属線から、圧延部12及びこれに接続された棒状部18が形成される。
【0040】
なお、圧延部成形工程がリード線溶接工程に先立って実施されてもよい。即ち、金属線準備工程の終了後に圧延部成形工程が実施され、その後、棒状部18の後端部にリード線20を溶接する工程が実施されてもよい。
【0041】
次いで、二次化成工程では、圧延部12の領域Rを含む所定領域を二次化成処理する。二次化成処理は、所定領域を二次化成被膜(酸化被膜)で被覆する処理である。二次化成処理には複数の種類があるが、本実施形態ではその種類は問わない。これらの二次化成処理は何れも周知であるため、それらの詳細な説明は省略する(詳細については、例えば、特開2000-340475号公報及び特開昭58-223310号公報を参照)。
【0042】
なお、二次化成工程の後で、圧延部12のうち二次化成被膜が形成されていない部分を樹脂層で被覆する樹脂コーティング処理を行う樹脂コーティング工程が実施されてもよい。
【0043】
圧延部成形工程についてより詳細に説明する。図4は、圧延部成形工程で用いられる圧延部製造装置40の正面図である。装置40は、上型42(第1型)と、下型44(第2型)と、上切断部材46(第1切断部材)と、下切断部材48(第2切断部材)と、移動装置60(型移動装置)と、移動装置62(切断部材移動装置)と、を備える。
【0044】
上型42は、下方に面する押圧面42a(第1押圧面)を有しており、移動装置60により上下方向(第3方向)に移動可能に構成されている。押圧面42aは、幅方向(左右方向(第1方向))に延びる辺及び長手方向(前後方向(第2方向))に延びる辺を含む。
下型44は、上型42の下方に配置されており、上方に面する押圧面44a(第2押圧面)を有する。押圧面44aは、押圧面42aと対向しており、幅方向に延びる辺及び長手方向に延びる辺を含む。押圧面44a(本実施形態では、後述する面44a2)には、金属線の対象部が、その軸方向が長手方向と一致するように載置される。押圧面42aの外郭と押圧面44aの外郭は、平面視において一致する。下型44は、図示しない基台に固定されている。
【0045】
図5は、上型42及び下型44を、長手方向における任意の位置(厳密には、「押圧面42a及び押圧面44aのうち、薄板部14の領域R(図1A及び図1B参照)に対応する領域内」の長手方向における任意の位置)において長手方向と直交する平面で切断したときの断面の部分拡大図である。図5に示すように、本実施形態では、押圧面42aは、幅方向及び長手方向に拡がる平坦面である。一方、押圧面44aは、辺縁部44a1と、面44a2と、を含む。辺縁部44a1は、左辺縁部44a1l及び右辺縁部44a1rにより構成される。
【0046】
左辺縁部44a1lは、押圧面44aの幅方向における左端部が軸方向に沿って押圧面42aに向かって反り返っている部分である。断面視において、左辺縁部44a1lは位置P13から位置P19までの範囲に、曲率半径R2を有する略円弧形状となるように形成されている。即ち、断面視において、薄板部14の下接続面S2の面S2a(図3A参照)の曲率半径は、左辺縁部44a1lの曲率半径に等しい。これは、面S2aは、左辺縁部44a1lにより押圧されて形成されるからである(後述)。
【0047】
右辺縁部44a1rは、押圧面44aの幅方向における右端部が軸方向に沿って押圧面42aに向かって反り返っている部分である。断面視において、右辺縁部44a1rは位置P17から位置P20までの範囲に、曲率半径R4を有する略円弧形状となるように形成されている。即ち、断面視において、薄板部14の下接続面S4の面S4a(図3B参照)の曲率半径は、右辺縁部44a1rの曲率半径に等しい。これは、面S4aは、右辺縁部44a1rにより押圧されて形成されるからである(後述)。
【0048】
辺縁部44a1の厚み方向における高さは、後述する押圧工程において辺縁部44a1が損傷することを防ぐために比較的に低く設計されている。辺縁部44a1の幅方向における長さは、辺縁部44a1の高さが上記のように設計されたときの曲率半径が、許容範囲Rtol内に含まれるような長さに設計されている。別言すれば、辺縁部44a1の幅方向における長さは、辺縁部44a1の高さに応じて自動的に決定され得る。
なお、左辺縁部44a1l及び右辺縁部44a1rの断面視形状が略円弧形状に近似可能である限り、これらは湾曲面でなくてもよく、複数の折り目がつけられた屈曲面であってもよい。
【0049】
面44a2は、幅方向及び長手方向に拡がる平坦面であり、左辺縁部44a1lと右辺縁部44a1rとの間に位置している。薄板部14の下面14bは、面44a2により押圧されて形成される(後述)。
【0050】
図4に戻って説明を続ける。上切断部材46は、上型42の外周側に、移動装置62により上下方向に移動可能に設けられている。上切断部材46は、上切刃46a、46b及び46c(第1切刃)を有する。上切刃46a及び上切刃46bは、高さ方向(上下方向)及び長手方向に拡がる平坦面にそれぞれ設けられた切刃である。上切刃46cは、高さ方向及び幅方向に拡がる平坦面に設けられた切刃である。上切刃46a、46b及び46cは、上切断部材46の上下動に伴い上昇又は下降する。具体的には、上切刃46a及び46bは、押圧面42aの長手方向に延びる左右の辺からその外周側(左側及び右側)にそれぞれ所定のクリアランスC1(図8参照)だけ離間した位置Pu(第1位置)を通過可能(上下動可能)となっている。上切刃46cは、押圧面42aの幅方向に延びる前方の辺(紙面奥側の辺)からその外周側(前側、紙面奥側)にクリアランスC1だけ離間した位置Pu(図示省略)を通過可能となっている。クリアランスC1は、例えば0.015[mm]である。なお、上切刃46a及び上切刃46b間の距離は、薄板部14の幅方向の長さ(w1)(図2参照)に略等しい。
【0051】
下切断部材48は、連結部材M1及びM2により上切断部材46に連結されており、上切断部材46と一体的に移動するようになっている。これにより、下切断部材48は、下型44の外周側に上下動可能に設けられている。下切断部材48は、下切刃48a、48b及び48c(第2切刃)を有する。下切刃48a及び48bは、高さ方向及び長手方向に拡がる平坦面にそれぞれ設けられた切刃である。下切刃48cは、高さ方向及び幅方向に拡がる平坦面に設けられた切刃である。下切刃48a、48b及び48cは、下切断部材48の上下動に伴い上昇又は下降する。具体的には、下切刃48a及び48bは、押圧面44aの長手方向に延びる左右の辺からその外周側(左側及び右側)にそれぞれ所定のクリアランスC2(図9参照)だけ離間した位置Pl(第2位置)を通過可能(上下動可能)となっている。下切刃48cは、押圧面44aの幅方向に延びる前方の辺(紙面奥側の辺)からその外周側(前側、紙面奥側)にクリアランスC2だけ離間した位置Pl(図示省略)を通過可能となっている。クリアランスC2は、例えば0.025[mm]である。即ち、クリアランスC2は、クリアランスC1よりも僅かに大きい。位置Plは、平面視において位置Puよりも外周側に位置している。なお、下切刃48a及び下切刃48b間の距離は、薄板部14の幅方向の長さ(w2)(図2参照)に略等しい。
【0052】
移動装置60は、公知の駆動手段を用いて上型42を上下方向に移動可能となっている。具体的には、移動装置60は、金属線の対象部が上型42の押圧面42aと下型44の押圧面44aとの間で押圧されて圧延されることにより、その厚みがtとなるように上型42を下方に移動可能に構成されている。別言すれば、移動装置60は、押圧面42aと押圧面44aの面44a2との距離がtになった時点で上型42の下降を停止するようになっている。
【0053】
移動装置62は、公知の駆動手段を用いて上切断部材46と下切断部材48とを上下方向に一体的に移動可能となっている。具体的には、移動装置62は、上切刃移動動作(第1切刃移動動作)と、下切刃移動動作(第2切刃移動動作)と、を実現可能に構成されている。上切刃移動動作とは、圧延された金属線の対象部の厚み方向における一部に上切刃46a乃至46cによってせん断面(第1せん断面)が形成されるように、上切断部材46を下降させる動作である。下切刃移動動作とは、上記せん断面が形成された金属線の対象部の厚み方向における他部に下切刃48a乃至48cによって別のせん断面(第2せん断面)を形成するとともに、対象部のうち上型42の押圧面42aと下型44の押圧面44aとの間からはみ出した部分であるはみ出し部を切除するように、下切断部材48を上昇させる動作である。
本実施形態では、上型42の押圧面である押圧面42aは平坦であり、下型44の押圧面である押圧面44aは辺縁部44a1を有する。移動装置62は、上切刃46a乃至46cの下端が位置Puから下降する距離である切断距離dが、圧延された金属線の厚みtの半分の距離よりも長くなるように(即ち、t/2<d<tを満たすように)上切断部材46を下降させる。
【0054】
以上が装置40の概要である。
圧延部成形工程は、金属線載置工程と、押圧工程と、上切刃切断工程(第1せん断工程)と、下切刃切断工程(第2せん断工程)と、はみ出し部除去工程と、を更に備える。圧延部12は、各工程が上述した順序で実施されることにより製造(成形)され得る。
【0055】
図6A乃至図6Fは、装置40を長手方向における任意の位置において長手方向と直交する平面で切断したときの断面図であり、圧延部成形工程の各工程を例示した図である。まず、金属線載置工程では、図6Aに示すように、下型44の押圧面44a上に金属線50の対象部を載置する。なお、金属線50の先端部には、リード線溶接工程によりリード線20(図6Aは断面図であるため不図示)が溶接されている。
【0056】
次に、押圧工程では、図6Bに示すように、上型42を、押圧面42aと押圧面44aの面44a2との間の距離がtになるまで下降させる。即ち、金属線50の対象部を厚みtとなるように下方に押圧し、これにより押圧部50a及びその外側に位置するはみ出し部を形成する。図7は、図6Bの金属線50及びその近傍の部分拡大図である。金属線50の対象部が押圧されて圧延されると、対象部は、押圧面42aと押圧面44aとの間の空間を隙間なく充填し、余った部分が押圧面42aと押圧面44aとの間から外側にはみ出す。
押圧部50aは、金属線50の対象部のうち、押圧面42aと押圧面44aとの間に位置している部分(即ち、両者の間の空間を充填している部分)である。押圧部50aは、被押圧面Sa(第1被押圧面)と、被押圧面Sb(第2被押圧面)と、を有する。被押圧面Saは、幅方向及び軸方向に拡がる平坦面(即ち、厚み方向に直交する平坦面)である。被押圧面Sbは、軸方向に直交する平面で切断した断面形状が略円弧状の辺縁部Sbeを含む。辺縁部Sbeは、左辺縁部Sbel及び右辺縁部Sberにより構成される。左辺縁部Sbelは、被押圧面Sbの幅方向における左端部が軸方向に沿って湾曲している部分であり、金属線の対象部が左辺縁部44a1l(図5参照)に押圧されることにより形成される。右辺縁部Sberは、被押圧面Sbの幅方向における右端部が軸方向に沿って湾曲している部分であり、金属線の対象部が右辺縁部44a1r(図5参照)に押圧されることにより形成される。
一方、はみ出し部は、金属線50の対象部のうち、押圧面42aと押圧面44aとの間からはみ出した部分である。以下では、はみ出し部のうち上型42及び下型44の左側及び右側にはみ出した部分をそれぞれ「はみ出し部50b」及び「はみ出し部50c」と称する。
【0057】
続いて、上切刃切断工程では、図6Cに示すように、押圧工程により押圧部50aを押圧したまま、上切刃46a乃至46cではみ出し部を被押圧面Sa(図7参照)側から厚み方向における所定のせん断位置までせん断して、押圧部50aの厚み方向の一部にせん断面(第1せん断面)を形成する(断面図であるため、上切刃46cは不図示)。図8は、図6Cの金属線50及びその近傍の部分拡大図である。本実施形態では、上述したように、移動装置62は、切断距離dがt/2<d<tを満たすように上切断部材46を下降させる。
【0058】
図8に示すように、上切刃46aが位置Puを通過してt/2<d<tを満たすようにはみ出し部50bを切断すると、上切刃46aの近傍の押圧部50aが引っ張られることにより、断面視において位置P1から位置P2までの範囲にダレ面が形成される。また、上切刃46aがはみ出し部50bの内部にめり込むことにより、断面視において位置P2からせん断位置(上切刃46aの下端)までの範囲(押圧部50aの厚み方向の一部)にせん断面が形成される。即ち、ダレ面は、せん断面を形成する際に必然的に形成される。これらダレ面及びせん断面が、それぞれ、圧延部12成形後の上接続面S1及び側面14c1となる(図3A参照)。
【0059】
同様に、上切刃46bが位置Puを通過してt/2<d<tを満たすようにはみ出し部50cを切断すると、上切刃46bの近傍の押圧部50aが引っ張られることにより、断面視において位置P5から位置P6までの範囲にダレ面が形成される。また、上切刃46bがはみ出し部50cの内部にめり込むことにより、断面視において位置P6からせん断位置までの範囲(押圧部50aの厚み方向の一部)にせん断面が形成される。これらダレ面及びせん断面が、それぞれ、圧延部12成形後の上接続面S3及び側面14d1となる(図3B参照)。
上切刃46a及び46bのせん断により形成されたこれら一対のせん断面の幅方向距離は、距離w1(図2参照)となっている。
また、切断距離dがt/2<d<tを満たすことにより、せん断位置は、押圧部50aの厚み方向における中心位置よりも被押圧面Sb側に位置している。
【0060】
また、押圧工程において形成された被押圧面Sa(図7参照)のうち、断面視において位置P1から位置P5までの範囲に形成されている被押圧面が、圧延部12成形後の上面14aとなる(図2参照)。
【0061】
次いで、下切刃切断工程では、図6Dに示すように、押圧工程により押圧部50aを押圧したまま、下切刃48a乃至48cではみ出し部を被押圧面Sb(図7参照)側から厚み方向にせん断して、押圧部50aの厚み方向の別の一部にせん断面(第2せん断面)を形成するとともに、はみ出し部を切除する(断面図であるため、下切刃48cは不図示)。これにより圧延部12が成形される。下切刃48a乃至48cは、上切刃46a乃至46cよりも外周側を移動するため(C2>C1)、圧延部12(薄板部14)の側面及び前方の端面には段差が形成される。
【0062】
図9は、図6Dの圧延部12及びその近傍の部分拡大図である。図9に示すように、押圧工程において形成された被押圧面Sbの左辺縁部Sbel(図7参照)は、断面視において位置P3から位置P9までの範囲に形成されている。位置P3及び位置P9は、下型44の押圧面44aの左辺縁部44a1lの位置P13及び位置P19にそれぞれ対応している。左辺縁部Sbelは、圧延部12成形後の面S2a(下接続面S2の一部)となる(図3A参照)。
また、下切刃48aが位置Plを通過してはみ出し部50bを切除すると、下切刃48aの近傍の押圧部50a(図8参照)が引っ張られることにより、断面視において位置P9から位置P4までの範囲にダレ面が形成される。更に、下切刃48aがはみ出し部50bの内部にめり込んでこれを切除することにより、断面視において、位置P4から、はみ出し部50bが切除される位置まで、の範囲(押圧部50aの厚み方向の他部)にせん断面が形成される。これらダレ面及びせん断面が、それぞれ、圧延部12成形後の面S2b(下接続面S2の残部)及び側面14c2となる(図3A参照)。はみ出し部50bが押圧面42aと押圧面44aとの間で切除されることにより、側面14cには段差B1が形成される。
【0063】
同様に、押圧工程において形成された被押圧面Sbの右辺縁部Sber(図7参照)は、断面視において位置P7から位置P10までの範囲に形成されている。位置P7及び位置P10は、下型44の押圧面44aの右辺縁部44a1rの位置P17及び位置P20にそれぞれ対応している。右辺縁部Sberは、圧延部12成形後の面S4a(下接続面S4の一部)となる(図3A参照)。
また、下切刃48bが位置Plを通過してはみ出し部50cを切除すると、下切刃48bの近傍の押圧部50a(図8参照)が引っ張られることにより、断面視において位置P10から位置P8までの範囲にダレ面が形成される。更に、下切刃48bがはみ出し部50cの内部にめり込んでこれを切除することにより、断面視において、位置P8から、はみ出し部50cが切除される位置まで、の範囲(押圧部50aの厚み方向の他部)にせん断面が形成される。これらダレ面及びせん断面が、それぞれ、圧延部12成形後の面S4b(下接続面S4の残部)及び側面14d2となる(図3B参照)。はみ出し部50cが押圧面42aと押圧面44aとの間で切除されることにより、側面14dには段差B2が形成される。
下切刃48a及び48bのせん断により形成されたこれら一対のせん断面の幅方向距離は、距離w2(>w1)(図2参照)となっている。
【0064】
また、押圧工程において形成された被押圧面Sb(図7参照)のうち、断面視において位置P3から位置P7までの範囲に形成されている被押圧面が、圧延部12成形後の下面14bとなる(図2参照)。
【0065】
即ち、上接続面S1及びS3は被押圧面を含んでおらず、下接続面S2及びS4は被押圧面を含んでいる。本実施形態では、上型42と下型44のうち、下型44の押圧面44aしか辺縁部44a1を有していないからである。
【0066】
続いて、はみ出し部除去工程では、図6Eに示すように、上切断部材46及び下切断部材48が下降して、下切刃48a乃至48c上に残存しているはみ出し部がエアにより除去される。その後、図6Fに示すように、上型42が上昇する。これにより、圧延部12を含むリード端子の半製品(別言すれば、二次化成工程が実施される前のリード端子)が取り出される。
以上の工程により、圧延部12が成形される。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、薄板部14の上接続面S1及びS3と下接続面S2及びS4のうち、上接続面S1及びS3はダレ面を含む一方で被押圧面を含んでおらず、下接続面S2及びS4は被押圧面を含んでいる。これは、圧延部製造装置40の上型42と下型44のうち、押圧面42aは辺縁部を有しておらず、押圧面44aのみが辺縁部44a1を有していることを意味している。この構成によれば、押圧面42aと44aの両方が辺縁部を含んでいる構成と比較して、押圧工程において押圧面42aと押圧面44aとの幅方向両側における上下方向の距離が過度に短くなることを抑制できる。このため、金属線50の対象部の幅方向への圧延が辺縁部44a1により阻害され難くなり、当該対象部は押圧面42aと押圧面44aとの間の空間を好適に充填できる。
また、一般に、上接続面S1及びS3の曲率半径R1及びR3は、切断距離dが長くなるほど小さくなる。これは、切断距離dが長くなるほど、はみ出し部50b及び50cを切断する際に押圧部50aが引っ張られる力が大きくなるからである。本願発明者らは、辺縁部44a1が押圧面44aに含まれている場合は、切断距離dが薄板部14の厚みtの半分の距離よりも長いときに、これら曲率半径R1及びR3が許容範囲Rtol内に収まるという知見を得た。本実施形態では、この知見に基づき、t/2<d<tが成立するように切断距離dを制御する(別言すれば、段差B1及び段差B2を、薄板部14の厚み方向における中心から下面14b側に位置するように形成する)ことにより、上接続面S1及びS3の曲率半径R1及びR3が許容範囲Rtol内に含まれるようにしている。加えて、下型44の辺縁部44a1の形状を調整することにより、下接続面S2の面S2a及び下接続面S4の面S4aの曲率半径R2及びR4が許容範囲Rtol内に含まれるようにしている。この構成によれば、電極箔を薄板部14(圧延部12)に高い張力で巻回でき、巻回量を増大させることができる。
以上より、本実施形態によれば、圧延部12の成形性の低下を抑制しながら、電解コンデンサの素子体積効率を好適に向上できる。
【0068】
特に、本実施形態では、曲率半径R1及びR3が辺縁部44a1の曲率半径R2及びR4と略等しくなるように切断距離dが制御される。これにより、コンデンサ素子を形成する際に一対のリード端子1が互いに対向する面が上面14a又は下面14bの何れであっても電極箔の巻回量が同程度となるため、電解コンデンサの静電容量にばらつきが生じることを抑制できる。
【0069】
加えて、本実施形態の圧延部製造装置40によれば、断面四隅の曲率半径が何れも許容範囲Rtol内である薄板部14を有する圧延部12を製造することができる。
【0070】
また、本実施形態の圧延部12の製造方法によれば、断面四隅の曲率半径が何れも許容範囲Rtol内である薄板部14を有する圧延部12を製造することができる。
【0071】
(変形例)
次に、図面を参照して本発明の変形例に係るリード端子について説明する。上記実施形態に係るリード端子1と同一の要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。変形例に係る圧延部の製造装置は、上型42及び下型44の代わりに上型142及び下型144をそれぞれ備えており、以下の点で圧延部製造装置40と相違している。
・上型142の押圧面142aが辺縁部142a1を有する。
・下型144の押圧面144aは平坦面である。
【0072】
図10は、上型142及び下型144を、長手方向における任意の位置において長手方向と直交する平面で切断したときの断面の部分拡大図である。図10に示すように、本変形例では、押圧面142aは、辺縁部142a1と、面142a2と、を含む。辺縁部142a1は、左辺縁部142a1l及び右辺縁部142a1rにより構成される。
左辺縁部142a1lは、押圧面142aの幅方向における左端部が軸方向に沿って押圧面144aに向かって反り返っている部分である。断面視において、左辺縁部142a1lは位置P111から位置P119までの範囲に、曲率半径R101を有する略円弧形状となるように形成されている。
右辺縁部142a1rは、押圧面142aの幅方向における右端部が軸方向に沿って押圧面144aに向かって反り返っている部分である。断面視において、右辺縁部142a1rは位置P115から位置P120までの範囲に、曲率半径R103を有する略円弧形状となるように形成されている。
曲率半径R101と曲率半径R103は互いに略等しく(R101=R103)、許容範囲Rtol内に含まれている。
この場合、押圧工程によって形成された押圧部50aの図示しない被押圧面Sa(即ち、厚み方向に直交する平坦面)は、押圧部50aの下面として形成され、図示しない被押圧面Sb(即ち、辺縁部Sbe(左辺縁部Sbel,右辺縁部Sber)を含む面)は、押圧部50aの上面として形成される。即ち、本変形例では、上切刃切断工程では、はみ出し部は、被押圧面Sb側から厚み方向における所定のせん断位置までせん断される。なお、本変形例においても、移動装置62は、切断距離dが、圧延された金属線の厚みtの半分の距離よりも長くなるように(即ち、t/2<d<tを満たすように)上切断部材46を下降させるように構成されている。このため、せん断位置は、押圧部50aの厚み方向における中心位置よりも被押圧面Sa側に位置している。
【0073】
図11は、変形例の圧延部製造装置により製造された圧延部の薄板部114の断面図(上記実施形態の図2に対応する断面図)であり、図12は、図11の左側の部分拡大図である。
【0074】
金属線50が押圧面142aの左辺縁部142a1l(図10参照)に押圧されると、断面視において位置P101から位置P109(図12参照)までの範囲に被押圧面(左辺縁部Sbel)が形成される。また、上切刃46aが位置Puを通過してt/2<d<tを満たすようにはみ出し部50bを切断すると、上切刃46aの近傍の押圧部50aが引っ張られることにより、断面視において位置P109から位置P102までの範囲にダレ面が形成される。更に、上切刃46aがはみ出し部50bの内部にめり込むことにより、断面視において位置P102からせん断位置までの範囲(押圧部50aの厚み方向の一部)にせん断面が形成される。これら被押圧面、ダレ面及びせん断面が、それぞれ、圧延部成形後の面S101a(上接続面S101の一部)、面S101b(上接続面S101の残部)及び側面114c1となる(図11参照)。なお、上接続面S101及び側面114c1は、それぞれ「第1接続面」及び「第1せん断面」の一例に相当する。
【0075】
また、金属線50が押圧面142aの平坦面142a2に押圧されることにより、断面視において位置P101から位置P105までの範囲に被押圧面が形成される。この被押圧面が、圧延部成形後の上面114aとなる(図11参照)。上面114aは、「第1主面」の一例に相当する。
【0076】
一方、下切刃48aが位置Plを通過してはみ出し部50cを切除すると、下切刃48aの近傍の押圧部50aが引っ張られることにより、断面視において位置P103から位置P104までの範囲にダレ面が形成される。また、下切刃48aがはみ出し部50cの内部にめり込んでこれを切除することにより、断面視において、位置P104から、はみ出し部50cが切除される位置まで、の範囲(押圧部50aの厚み方向の他部)にせん断面が形成される。これらダレ面及びせん断面が、それぞれ、圧延部成形後の下接続面S102及び側面114c2となる(図12参照)。はみ出し部50cが押圧面142aと押圧面144aとの間で切除されることにより、側面114cには段差B101が形成される。このようにして形成された下接続面S102の曲率半径R102は、許容範囲Rtol内に含まれている。下接続面S102及び側面114c2は、それぞれ「第2接続面」及び「第2せん断面」の一例に相当する。
【0077】
また、金属線50が押圧面144aに押圧されることにより、断面視において位置P103から位置P107までの範囲に被押圧面が形成される。この被押圧面が、圧延部成形後の下面114bとなる(図10参照)。下面114bは、「第2主面」の一例に相当する。
【0078】
なお、上接続面S103、側面114d、段差B102及び下接続面S104は、それぞれ、上接続面S101、側面114c、段差B101及び下接続面S102と同様の手法で形成される。即ち、下接続面S104の曲率半径R104は、曲率半径R102と略等しく、許容範囲Rtol内に含まれている。本変形例においても、段差B101及びB102は、薄板部114の厚み方向における中心から離間した位置(より具体的には、下面114b側)に位置している。
【0079】
また、上接続面S103の面103a及び面103bは、上接続面S101の面S101a及び面S101Bにそれぞれ対応している(即ち、面S103aは、押圧工程において形成された被押圧面Sbの右辺縁部Sber(図示省略)である。)。側面114dの側面114d1及び側面114d2は、側面114cの側面114c1及び側面114c2にそれぞれ対応している。面S103aは被押圧面であり、面S103bはダレ面である。側面114d1及び側面114d2は何れもせん断面である。下接続面S104はダレ面である。
一対の側面114c1及び114d1間の幅方向距離w1は、一対の側面114c2及び114d2間の幅方向距離w2よりも小さい(図11参照)。
【0080】
本変形例では、上接続面S101の面S101aの曲率半径R101、上接続面S103の面S103aの曲率半径R103、下接続面S102の曲率半径R102、及び、下接続面S104の曲率半径R104の間には、R101=R103≒R102=R104の関係が成立している。
【0081】
なお、本変形例では、切断距離d(即ち、上切刃切断工程において上切刃46a及び46bの下端が位置Puからせん断位置まで移動する移動距離)は、実施形態と同様にt/2<d<tである。このため、下切刃切断工程において下切刃48a及び48bの上端が位置Plからせん断位置まで移動する移動距離Dは、実施形態の上切刃切断工程における切断距離dよりも短い。これにも関わらず、変形例の下切刃切断工程において形成される下接続面S102及びS104の曲率半径R102及びR104は、実施形態の上切刃切断工程において形成される上接続面S1及びS3の曲率半径R1及びR3と同様に、許容範囲Rtol内に含まれている。これは、下切刃切断工程では、移動距離Dが比較的に短くてもダレ面の曲率半径が小さくなり易いからである。即ち、上切刃切断工程を終了すると、はみ出し部50b及び50cは、下型144の押圧面144aの幅方向両端の角部を起点として下方に曲げられている。このため、下切刃切断工程では、下切刃48a及び48bの上端は、位置Plよりも下方ではみ出し部50b及び50cに接触し、これらを持ち上げながら切断していく。即ち、下切刃48a及び48bは比較的に早いタイミングではみ出し部50b及び50cに接触してこれらを持ち上げていくため、実際の移動距離Dの割には下切刃48a及び48b近傍の押圧部50aが大きく引っ張られ、その結果、ダレ面の曲率半径が移動距離Dの割に小さくなる。
本願発明者らは、辺縁部142a1が押圧面142aに含まれている場合は、実施形態と同様、切断距離dが薄板部114の厚みtの半分の距離よりも長いとき(即ち、移動距離Dが比較的に短いとき)に、下接続面S102及びS104の曲率半径R102及びR104が許容範囲Rtol内に収まるという知見を得た。本変形例では、この知見に基づき、t/2<d<tが成立するように切断距離dを制御する(別言すれば、段差B101及び段差B102を、薄板部114の厚み方向における中心から下面114b側に位置するように形成する)ことにより、曲率半径R102及びR104が許容範囲Rtol内に含まれるようにしている。
【0082】
変形例の構成によっても、実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0083】
以上、実施形態及び変形例に係るリード端子について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、曲率半径R1、R2、R3及びR4の間には、R1=R3≒R2=R4の関係に限られず、R1=R3>R2=R4又はR1=R3<R2=R4の関係が成立していてもよい。即ち、曲率半径R1及びR3の値は、切断距離dを調整することにより許容範囲Rtol内で変更可能であり、また、曲率半径R2及びR4の値は、下型44の押圧面44aが有する辺縁部44a1(左辺縁部44a1l、右辺縁部44a1r)の曲率半径を調整することにより許容範囲Rtol内で変更可能である。このため、曲率半径R1乃至R4の値は、リード端子の用途に応じて、R1=R3>R2=R4又はR1=R3<R2=R4の関係が成立するように変更されてもよい。
これは、曲率半径R101乃至R104についても同様である。即ち、曲率半径R101、R102、R103及びR104の間には、R101=R103≒R102=R104の関係に限られず、R101=R103>R102=R104又はR101=R103<R102=R104の関係が成立していてもよい。
これらの構成によっても、上記実施形態及び変形例と同様の作用効果を奏することができる。
【0085】
また、圧延部12は、棒状部18に対して偏心していてもよい。また、リブ16は形成されていなくてもよい。
【0086】
更に、切断距離dがd=t/2の場合は、押圧面42aが辺縁部を有していてもよいし、押圧面44aが辺縁部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1:リード端子、12:圧延部、14:薄板部、14a:上面、14b:下面、14c(14c1,14c2):側面、14d(14d1,14d2):側面、16:リブ、18:棒状部、20:リード線、30:溶接部、40:圧延部製造装置、42:上型、42a:押圧面、44:下型、44a:押圧面、44a1(44a1l,44a1r):辺縁部、44a2:面、46:上切断部材、46a,46b,46c:上切刃、48:下切断部材、48a,48b,48c:下切刃、50:金属線、50a,50b:はみ出し部、60:移動装置、62:移動装置、142:上型、142a:押圧面、142a1(142a1l,142a1r):辺縁部、142a2:面、144:下型、144a:押圧面

【要約】
【課題】 圧延部の成形性の低下を抑制しながら、電解コンデンサの素子体積効率を好適に向上させる。
【解決手段】 電解コンデンサ用リード端子1は、圧延部12と、棒状部18と、リード線20とを備え、圧延部の側周面は、第1主面14a及び第2主面14bと、一対のせん断面14c,14dと、第1主面とせん断面とを接続する第1接続面と、第2主面とせん断面とを接続する第2接続面とを有し、第1接続面又は第2接続面の一方はダレ面であり、他方は、第1主面と第2主面のうち自身が接続されている主面に連続している被押圧面を含み、断面視においてダレ面及び被押圧面は何れも略円弧状であり、一対のせん断面にはそれぞれ軸方向に延びる段差が設けられており、段差は、圧延部の厚み方向における中心から離間した位置に位置している。
【選択図】 図2
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10
図11
図12