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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】情報伝達システムと情報伝達プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
G06F3/01 560
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022088500
(22)【出願日】2022-05-31
【審査請求日】2022-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320001558
【氏名又は名称】株式会社エヌアンドエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100185937
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 輝行
(72)【発明者】
【氏名】四宮 孝史
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 明男
(72)【発明者】
【氏名】タン ジュークイ
(72)【発明者】
【氏名】石川 聖二
(72)【発明者】
【氏名】当麻 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】増田 朗菜
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-503515(JP,A)
【文献】特開2022-014034(JP,A)
【文献】特開2002-123169(JP,A)
【文献】特開2004-272698(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動情報に応じて、ユーザに装着された複数の振動子を選択的に振動させる情報伝達装置と、
前記振動情報若しくは前記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を前記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、
前記送信装置が前記振動情報を送信する場合には前記送信装置、前記送信装置が前記伝達情報を送信する場合には前記情報伝達装置が演算手段を含み
前記演算手段は、前記伝達情報と、前記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力することにより、前記伝達情報に応じた前記符号を前記第1の学習済ニューラルネットワークに出力させ、出力された前記符号を、前記符号と前記符号に応じた冗長符号をデータセットとする教師データにより学習された第2の学習済ニューラルネットワークへ入力することにより、前記第1の学習済ニューラルネットワークから出力された前記符号に応じた冗長符号を前記第2の学習済ニューラルネットワークに出力させ、出力された前記冗長符号に対応する前記振動情報を生成する情報伝達システム。
【請求項2】
振動情報に応じて、ユーザに装着された複数の振動子を選択的に振動させる情報伝達装置と、
前記振動情報若しくは、言語情報により構成された前記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を前記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、
前記送信装置が前記振動情報を送信する場合には前記送信装置、前記送信装置が前記伝達情報を送信する場合には前記情報伝達装置が演算手段を含み
前記演算手段は、前記言語情報から構成言語を抽出して知覚容易順にファイリングして、前記ファイリングにより最も高くランクされている前記構成言語を、前記伝達情報を示す符号として採用し、前記伝達情報と、前記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力することにより、前記伝達情報に応じた前記符号を前記第1の学習済ニューラルネットワークに出力させ、出力された前記符号に対応する前記振動情報を生成する情報伝達システム。
【請求項3】
前記演算手段は、前記構成言語と前記符号をデータセットとする教師データにより学習された第2の学習済ニューラルネットワークへ構成言語を入力することにより前記第2の学習済ニューラルネットワークから出力された符号を追加的にファイリングする、請求項に記載の情報伝達システム。
【請求項4】
ユーザの少なくとも片手における指の背側で、親指を構成する末節骨及び基節骨と、示指、中指、環指、及び小指を構成する末節骨と中節骨及び基節骨の直上にそれぞれ配置された複数の振動子を、振動情報に応じて選択的に振動させる情報伝達装置と、
前記振動情報若しくは前記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を前記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、
前記送信装置が前記振動情報を送信する場合には前記送信装置、前記送信装置が前記伝達情報を送信する場合には前記情報伝達装置が、前記伝達情報と、前記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力することにより、前記伝達情報に応じた前記符号を前記第1の学習済ニューラルネットワークに出力させ、出力された前記符号に対応する前記振動情報を生成する演算手段を含む情報伝達システム。
【請求項5】
前記伝達情報は、音声情報、点字や筆跡を含む文字情報、画像情報、対象物を示す三次元空間情報、位置情報、誘導情報のうち少なくとも一つに基づいて生成された、請求項1、2、4のいずれか一項に記載の情報伝達システム。
【請求項6】
前記振動情報は、前記振動子の発振位置及び振動の少なくとも一方に関する変調を規定する情報である、請求項1、2、4のいずれか一項に記載の情報伝達システム。
【請求項7】
前記振動情報は、前記振動子が発振する位置、時間、強度の組み合わせや、前記組み合わせに基づいて並列や重ね合わせにより変調させた振動刺激を規定する情報である、請求項に記載の情報伝達システム。
【請求項8】
振動情報に応じて、ユーザに装着された複数の振動子を選択的に振動させる情報伝達装置と、前記振動情報若しくは前記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を前記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、前記送信装置が前記振動情報を送信する場合には前記送信装置、前記送信装置が前記伝達情報を送信する場合には前記情報伝達装置が、演算手段を含む情報伝達システムを制御する情報伝達プログラムであって、
前記演算手段に対し、前記伝達情報と、前記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力させ、前記第1の学習済ニューラルネットワークに対して前記伝達情報に応じた前記符号を出力させる第1のステップと、
前記演算手段に対し、前記符号と前記符号に応じた冗長符号をデータセットとする教師データにより学習された第2の学習済ニューラルネットワークへ前記第1のステップで出力された前記符号を入力させ、前記第2の学習済ニューラルネットワークに対して前記第1のステップで出力された前記符号に応じた冗長符号を出力させる第2のステップと、
前記演算手段に対し、前記第2のステップで出力された前記冗長符号に対応する前記振動情報を生成させる第3のステップする情報伝達プログラム。
【請求項9】
振動情報に応じて、ユーザに装着された複数の振動子を選択的に振動させる情報伝達装置と、前記振動情報若しくは、言語情報により構成された前記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を前記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、前記送信装置が前記振動情報を送信する場合には前記送信装置、前記送信装置が前記伝達情報を送信する場合には前記情報伝達装置が、演算手段を含む情報伝達システムを制御する情報伝達プログラムであって、前記演算手段に対し、
前記言語情報から構成言語を抽出して知覚容易順にファイリングさせる第1のステップと、
前記第1のステップにおけるファイリングにより最も高くランクされている前記構成言語を、前記伝達情報を示す符号として採用させる第2のステップと、
前記伝達情報と、前記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力させ、前記第1の学習済ニューラルネットワークに対して前記伝達情報に応じた前記符号を出力させる第のステップと、
記第のステップで出力された前記符号に対応する前記振動情報を生成させる第のステップをする情報伝達プログラム。
【請求項10】
前記演算手段に対し、さらに、前記構成言語と前記符号をデータセットとする教師データにより学習された第2の学習済ニューラルネットワークへ構成言語を入力させることにより前記第2の学習済ニューラルネットワークから出力された符号を追加的にファイリングさせる、請求項に記載の情報伝達プログラム。
【請求項11】
ユーザの少なくとも片手における指の背側で、親指を構成する末節骨及び基節骨と、示指、中指、環指、及び小指を構成する末節骨と中節骨及び基節骨の直上にそれぞれ配置された複数の振動子を、振動情報に応じて選択的に振動させる情報伝達装置と、前記振動情報若しくは前記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を前記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、前記送信装置が前記振動情報を送信する場合には前記送信装置、前記送信装置が前記伝達情報を送信する場合には前記情報伝達装置が、演算手段を含む情報伝達システムを制御する情報伝達プログラムであって、
前記演算手段に対し、前記伝達情報と、前記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力させ、前記第1の学習済ニューラルネットワークに対して前記伝達情報に応じた前記符号を出力させる第1のステップと、
前記演算手段に対し、前記第1のステップで出力された前記符号に対応する前記振動情報を生成させる第2のステップをする情報伝達プログラム。
【請求項12】
前記伝達情報は、音声情報、点字や筆跡を含む文字情報、画像情報、対象物を示す三次元空間情報、位置情報、誘導情報のうち少なくとも一つに基づいて生成された、請求項8、、11のいずれか一項に記載の情報伝達プログラム。
【請求項13】
前記振動情報は、前記振動子の発振位置及び振動の少なくとも一方に関する変調を規定する情報である、請求項8、、11のいずれか一項に記載の情報伝達プログラム。
【請求項14】
前記振動情報は、前記振動子が発振する位置、時間、強度の組み合わせや、前記組み合わせに基づいて並列や重ね合わせにより変調させた振動刺激を規定する情報である、請求項13に記載の情報伝達プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザへ情報を伝達する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザへ装着したデバイスを用いて当該ユーザへ情報を提供する技術は種々知られているが、例えば特許文献1には、ユーザが有する指の所定の位置に配置された複数の振動子を選択的に振動させることによって、当該ユーザへ情報を伝達するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6890355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図4から図7及びそれらの説明部分においては、当該ユーザへ情報を伝達する方法の具体例が示されているが、本文献に示された情報伝達システムを社会実装する段階では、多くの情報を即時かつ確実に当該ユーザへ伝達する仕組みが必要になる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ユーザへ多くの情報を即時かつ確実に伝達しうる情報伝達システム、及び本システムを制御するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、振動情報に応じて、ユーザに装着された複数の振動子を選択的に振動させる情報伝達装置と、上記振動情報若しくは上記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を上記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、上記送信装置が上記振動情報を送信する場合には上記送信装置、上記送信装置が上記伝達情報を送信する場合には上記情報伝達装置が、上記伝達情報と、上記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力することにより、上記伝達情報に応じた符号を第1の学習済ニューラルネットワークに出力させ、出力された符号に対応する振動情報を生成する演算手段を含む情報伝達システムを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決するため、振動情報に応じて、ユーザに装着された複数の振動子を選択的に振動させる情報伝達装置と、上記振動情報若しくは上記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を上記情報伝達装置へ送信する送信装置を備え、上記送信装置が上記振動情報を送信する場合には上記送信装置、上記送信装置が上記伝達情報を送信する場合には上記情報伝達装置が、演算手段を含む情報伝達システムを制御する情報伝達プログラムであって、上記演算手段に対し、上記伝達情報と、上記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力させ、第1の学習済ニューラルネットワークに対して上記伝達情報に応じた符号を出力させる第1のステップと、上記演算手段に対し、第1のステップで出力された符号に対応する振動情報を生成させる第2のステップを実行する情報伝達プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザへ多くの情報を即時かつ確実に伝達しうる情報伝達システム及び情報伝達プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る情報伝達システム1の構成を示す図である。
図2図1に示された振動子a3,b3,c3の設置位置を示す斜視図である。
図3図1に示された手袋2に代替しうる指輪型発振子rの構成を示す斜視図である。
図4図1に示された送信装置3の構成を示すブロック図である。
図5図4に示された演算部33で実行される情報伝達プログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
図6図5に示されたステップS1及びステップS2における演算部33の動作の具体例を示す図である。
図7図6に示された符号化により生成された符号に対応した振動情報による発振例を示す模式図である。
図8図6に示された冗長化により生成された冗長符号に対応した振動情報による発振例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一又は相等部分を示す。
【0011】
以下においては、ユーザへ伝える伝達情報を中央演算処理装置(CPU)により振動情報へ変換し、上記ユーザが有する少なくとも片手の指に行列配置された複数振動子を上記振動情報に応じて振動させることによって、上記ユーザへ上記伝達情報を伝える情報伝達システムについて詳しく説明する。
【0012】
ここで、上記「伝達情報」は、音声情報、点字や筆跡を含む文字情報、スマートフォンやカメラ等で撮像された画像を処理することで取得される周囲の状況を示す現況情報等の視覚情報、対象物の大きさ、凹凸、高さ、深さ、速さ、遠近距離、連なり、拡がり、方位などの三次元空間情報、位置情報、誘導情報のうち少なくとも一つに基づいて生成された情報を意味する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報伝達システム1の構成を示す図である。図1に示されるように、情報伝達システム1は、ポケット4にそれぞれ格納されると共に、それぞれ独立して制御され、独立してユーザに識別知覚される複数の円盤型振動モータa2~a5,b2~b5,c1~c5,d1(以下「円盤型振動モータa2等」と略す。)と、受信された情報に応じて上記複数の振動子を選択的に振動させる受信部6と、円盤型振動モータa2等及び受信部6へ電力を供給する電源5を含む情報伝達装置としての手袋2と、受信部6へ上記情報を有線、若しくは無線で送信する送信装置3を備える。ここで、円盤型振動モータa2等は、ユーザにおいて個々に振動が弁別、若しくは識別され、かつ、独立した制御がなされるものである。なお、上記振動子は、電気的な制御により起振可能な圧電(ピエゾ)素子などでも構わない。
【0014】
また、全ての円盤型振動モータa2等はそれぞれ、電源5及び受信部6に接続されるが、図1においては、このうち円盤型振動モータc5,d1の配線のみが図示され、その他の円盤型振動モータa2~a5,b2~b5,c1~c4の配線は省略されている。
【0015】
また、ここでは、円盤型振動モータa2~a5,b2~b5,c1~c5の3行、及び第1列から第5列までの5列、合計14個の行列状に配置された振動子は、振動強度、発振長、及び振動変調により、立体空間上に位置する物体の高さや動き、それらの組み合わせ等を表現し、知覚情報としてユーザへ提示するものであるが、ユーザの手の甲における中手骨などへも振動子を設置して情報提示量を増やすこともできる。
【0016】
円盤型振動モータa2等は、図2に示されるように、ユーザの少なくとも片手における指の背側で、親指を構成する末節骨及び基節骨と、示指、中指、環指、及び小指を構成する末節骨と中節骨及び基節骨の直上にそれぞれ配置される。
【0017】
なお、用途によっては、ユーザへ提示する情報量が少ない活用方法もある。その場合には、片手の5指でなく、3指や2指だけに振動子を配置すれば良い。また、1指だけで済む場合などでは、電源、1~3個の振動子、無線通信受信端子、発振制御用CPUチップを内蔵したリストバンド型や時計ベルト型等の腕輪型発振子を使用しても良い。また、このような場合には、図3に示されるような、電力や制御信号を伝送する配線w及び円形の振動面eを有してユーザの指に装着される指輪型発振子rなどを使用しても良い。
【0018】
送信装置3は、上記ユーザ自身が所持する他、外部環境に置かれても良く、例えばスマートフォンの他、各種カメラや全地球測位システム(GPS)、マイク機能等を有する携帯型コンピュータ端末等による無線通信等の手段により実現される。
【0019】
図4は、図1に示された送信装置3の構成を示すブロック図である。図4に示されるように、送信装置3は、入出力ノード31と、入出力ノード31に接続されたバス32と、それぞれバス32に接続された演算部33、送信部34、及び記憶部35を含む。
【0020】
ここで、演算部33は、上記CPUにより構成され、入出力ノード31からバス32を介して入力され、若しくは、後述する記憶部35に記憶された上記伝達情報に応じた振動情報を生成するが、演算部33の本動作については後に詳しく説明する。
【0021】
送信部34は、上記のように、バス32及び入力ノード31を介した有線通信、又は無線通信によって、演算部33により生成された振動情報を受信部6へ送信する。
【0022】
記憶部35は、送信装置3自身で取得し、又は入出力ノード31及びバス32を介した有線通信、若しくは無線通信により外部から入力された上記伝達情報や、演算部33により実行されるプログラムの他、演算部33により生成された振動情報や、後述するファイリング情報等を記憶する。
【0023】
なお、演算部33は、送信装置3の替わりに手袋2に含まれていても良い。この場合には、送信部34から受信部6へ上記伝達情報が送信され、手袋2に内蔵された演算部33により、図5に示されたステップS1からステップS3の動作が実行される。そして、円盤型振動モータa2等は、手袋2に内蔵された演算部33により生成された振動情報に応じて、選択的に起振される。
【0024】
図5は、図4に示された演算部33で実行される情報伝達プログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。図5に示されるように、本プログラムは、ステップS1において、演算部33に対し、ユーザへ伝える伝達情報と、上記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力させ、上記第1の学習済ニューラルネットワークに対して上記伝達情報に応じた符号を出力させる。
【0025】
上記符号は、言語情報として冗長性が欠ける合図、暗号、略称などに簡略化したものや、人間の本能や経験、学習により取得している直感、体感、体現という経験を活用した最適な振動提示パターンを指定するものとされ、振動発振に関する規定に基づいて定められる。具体的には、例えば、基準となる標準発振の他、この方法を基に、振動強度を変えた発振、振動変調(周波数など)させた発振、複数種類の間欠発振、発振位置の移動知覚が得られる発振、同時複数発振等や、これらの組み合わせを指定するものとされる。
【0026】
また、上記伝達情報が言語情報である場合には、以下のファイリング情報とフィルタリング機能を用いて、類似情報の仕訳や、振動刺激の簡略表現を知覚や識別容易性に基づいて類別統合するなど、学習成果に基づく選択的な変換を行う。より具体的には、本プログラムは、演算部33に対し、上記言語情報からフィルタリング処理を用いて体言や用言等の構成言語を抽出して記憶部35等において利用頻度や簡略表現の周知度など知覚容易順にファイリングさせ、本ファイリングにより最も高くランクされている構成言語を、擬態表現を模した振動刺激提示表現や、衝撃的振動などを活用した緊張や弛緩の表現に変換して活用すべく、上記伝達情報を示す代表符号として採用すると好適である。
【0027】
ここで、演算部33が本ファイルの参照時に、上記構成言語と上記代表符号をデータセットとした教師データにより学習された学習済ニューラルネットワークへ構成言語を入力することにより、出現頻度や類似性、関連性、近似性などを踏まえた代表符号を出力させ、その結果を統一的な表現として上記ファイルに追加してファイルの更新を行う。これにより、時代と共に移り変わる出現頻度の変化に応じて、本ファイルのバージョンアップを実現することができる。また、本ファイル更新の機能によれば、本システムに対するユーザ毎の利用状況を反映させることもできるため、個別最適な使い勝手の良さ(パーソナルユース)を実現することもできる。
【0028】
次に、本プログラムは、ステップS2において、演算部33に対し、上記符号とそれに応じた冗長符号をデータセットとする教師データにより学習された第2の学習済ニューラルネットワークへステップS1で出力された符号を入力させ、第2の学習済ニューラルネットワークに対してステップS1で出力された符号に応じた冗長符号を出力させる。
【0029】
上記冗長符号は、第1の学習済ニューラルネットワークから出力された符号を修飾することにより生成され、情報伝送路や受振容易性といったシステムの信頼性を高める役割を担う。具体的な修飾方法としては、同一位置での繰返し発振、複数位置の同時(並列)発振、三点あるいは、それ以上の複数位置への直列、若しくは単列での移動発振、そして複数位置の同時(並列)移動発振等が採用される。
【0030】
なお、第1の学習済ニューラルネットワークから出力された符号が既に上記信頼性を有していると判断される場合には、第2の学習済ニューラルネットワークは、入力された符号と同じ符号を出力するようにしても良い。
【0031】
次に、本プログラムは、ステップS3において、演算部33に対し、ステップS2で出力された冗長符号に対応する振動情報を生成させる。記憶部35には各種符号、及びそれらに対応する振動情報、すなわち振動パターンを規定した振動刺激規定ファイルが予め格納され、演算部33は本ファイルを参照して、冗長符号に対応する振動情報を生成する。
【0032】
なお、振動情報は、円盤型振動モータa2等に対して、発振する位置、時間、強度等につき、それらの組み合わせを規定する情報とされる。この振動情報の生成においては、単独発振ではユーザにおける振動刺激の識別能が基となる。そして、本振動情報により、周波数変調による識別、個々に独立した複数の振動子を連携使用する方法において、振動時間の長さや発振タイミングや間合など、常用的で汎用的な知覚容易性が高いと判断される最適な方法で時間差を設けることによって、容易に発振位置の移動知覚や識別を可能とし、また、独立した複数の振動子の同時並列起振や単列複数位置への移動発振の方法による欠落(飛び)チェック等が実行される。
【0033】
振動情報の具体例としては、振動の有無とその長さにより規定される間欠発振、振動の強度、識別容易な発振位置、発振移動方向、同一手指を構成する骨部全てや、隣接する手指の骨部など同時複数位置での発振等の組み合せを活用した発振を規定する情報とすることができる。
【0034】
ここで、手指等に配した振動子を個別に独立してユーザへ知覚、若しくは認識させる方法としては、振動を発振する振動子を個々に識別可能な部位に配置する方法のほか、個々の振動子が個別に、また指毎に、そして各指を構成する骨毎に、体系的に異なる振動刺激を発振させるという振動発振の方法がある。具体的には、振動刺激の変調と発振位置の変調を組合せた方法によって識別を行う方法を用いる。例えば、五指それぞれの指毎に異なる特徴を持つ振動や変調振動による発振と、同一指内では、末節骨上、中節骨上、基節骨上など部位間で変調を行い、それぞれの変調の組合せにより個々の振動子を特定する方法によって、変調の有無を含めた発振方法を含めて、個々の振動子を独立して識別させることが可能である。
【0035】
このような方法によれば、発振部位を特定することを可能にするだけでなく、連携発振や協調発振、そして並列同時発振などの識別も容易となる。この発振部位の特定と識別の方法を基に、発振振動の有無や発振時間と休止時間の長短、発振の間欠提示、発振の強弱、協調発振や発振位置移動、発振位置に特定の意味を持たせる発振などを組合せた発振方法を用いて暗号や符号語などを規定することにより、信頼性の高い情報提示の方法を確立している。
【0036】
次に、本プログラムは、ステップS4において、送信部34に対し、ステップS3で生成された振動情報を受信部6へ送信させる。これにより、上記のように、受信部6は、受信した振動情報に応じて、ユーザに装着された円盤型振動モータa2等を選択的に振動させる。
【0037】
以下においては、図6から図8を参照しつつ、演算部33による上記動作の具体例について説明する。
【0038】
例えば、上記伝達情報として、GPSを使った現在位置の確認情報や、RGB-Dカメラを使ってカメラ前方の情景と奥行き距離の不連続や急変する部位の検出から、段差や路面の欠落や隆起を識別、特定して、階段や傾斜の規定された許容限度を超えているという障害情報をユーザへ瞬時に提供できる。この機能によって、路面の穴や障害物の存在を特定する。そして、鉄道駅ホーム端位置の特定(転落防止誘導)や、駐停車中の車両、カメラに向かってくる移動物に対し、画像の物体認識と物体像の重心の拡大や縮小を検出することにより、当該物体の移動方向を特定すること等が可能となる。この機能によって、ユーザを取り巻く状況や状態を示す情報に基づいて、ユーザへ回避や回避不要などの行動支援の情報を提供することができる。なお、スマートフォン等の情報端末を併用し、当該情報端末に内蔵される道案内アプリを活用したり、GPSを活用したりする方法によって情報を取得しても良い。
【0039】
ここで、図6に示されるように、ユーザへ伝える伝達情報が「前方に障害物あり。危険、止まれ。右へ二歩進め。」という情報である場合、演算部33は、上記ステップS1において本伝達情報を第1の学習済ニューラルネットワークへ入力することにより、「危険な障害物」に相当する符号「D」と、「(緊急)停止」に相当する符号「ST」と、「右へ二歩」に相当する「R2」を本順序で組み合わせた符号へ符号化する。
【0040】
このとき、「危険な障害物」という伝達情報と「(緊急)停止」という伝達情報を合わせた情報に対して、一つの簡略化した組み合わせ暗号「DS」を対応させて上記ニューラルネットワークに学習させておけば、伝達情報から生成される符号を短縮化して情報提示量を削減することにより、情報伝送効率を高めることができる。
【0041】
次に、演算部33は、上記ステップS2において上記の暗号「DS」と符号「R2」を組み合わせた符号を第2の学習済ニューラルネットワークへ入力することにより、符号「DDD」、符号「DS」、及び符号「Rr2」を組み合わせた冗長符号へ冗長化する。ここで、符号「DDD」は符号「D」を三回繰り返したものであり、ユーザにとって重要な「危険な障害物」という伝達情報が強調されたことになる。また、符号「Rr2」は符号「R2」に符号「r」が付加されているが、符号「r」は符号「R」に対応する発振を行う時に、隣接する発振子も同時(並列)に発振させることを意味する。
【0042】
次に、演算部33は、上記ステップS3において、上記振動刺激規定ファイルを参照することにより、上記冗長符号、すなわち符号「DDD」、符号「DS」、及び符号「Rr2」をこの順序で組み合わせた符号に対応する振動情報を生成する。
【0043】
ここで、演算部33が仮に、上記の符号「D」、符号「ST」、及び符号「R2」をこの順序で組み合わせた符号に対応する振動情報を生成した場合には、結果として、図7の白抜き矢印で示されるように、最初に符号「D」に対応する円盤型振動モータb2、符号「ST」に対応する円盤型振動モータc2の順で発振し、その後、同図のハッチング矢印で示されるように、符号「R2」に対応して円盤型振動モータb2,b3,b4の順で発振することになる。
【0044】
これに対し、演算部33が上記冗長符号に対応する振動情報を生成した場合には、結果として、図8の三重丸に示されるように、最初に符号「DDD」に対応して円盤型振動モータb2が三回繰り返して発振し、その後、符号「ST」に対応する円盤型振動モータc2が一回発振し、さらにその後、同図の破線及びハッチング矢印で示されるように、符号「Rr2」に対応して円盤型振動モータb2,c2、円盤型振動モータb3,c3、円盤型振動モータb4,c4が順次、同時発振することになる。
【0045】
このように、冗長符号を活用して円盤型振動モータa2等を多点同時発振させることにより、ユーザへ振動の飛びや欠落、規定外の変調、振動間隔の異変等を知覚させることが容易になるため、単位時間当たりの情報伝送量や伝送速度を向上させつつ、情報伝達の信頼性を高めることができる。
【0046】
また他の例としては、筆談時や片仮名など画数の少ない文字を伝達情報とする場合には、筆跡におけるトメ、ハネ、ハライ、湾曲表現を共調発振の手法によって体現的に表現することで、誰もが過去に経験したであろう学習成果を活用した意味理解を図ると共に、発振位置の複数箇所を使った移動発振方法(新たな伝送路の並列活用の方法)による発振欠落チェックなども含めて多重な機能を付した発振方法によって解読容易性を高めることでシステムの信頼性を高めながらも、暗号などの符号長を更に短縮化することができる。
【0047】
また、点字情報をユーザへ伝達する例、すなわち、点字規定に従って4行3列の凹凸刺激を指でなぞる既存の方法を、手指に振動刺激を提示する方法に代替することが考えられる。この場合には、図1に示されるように、第二指から第五指の4本の指の各指に3個の円盤型振動モータa2~a5,b2~b5,c2~c5を配して点字の凹凸を振動で表現する。具体的には、振動刺激の発振について、既存点字による点の有無に対して、凸の有には起振、凹の無には無起振として対応させる。
【0048】
この例では、並列発振方式などを流用することにより、伝送する情報量を増大させることが可能となる。また、起振時と無振動時という振動刺激の有無を読取る方法も可能になる。このように、表現方法の多様化と単位時間当たりの情報伝送容量の増大が可能になると共に、ユーザにとっては、既存の点字読み取り方法のように手指を動かすことなく、振動の有無を感じ取るだけのパッシブ(受動的)な使い方が可能となる。
【0049】
なお、点字は各国や地域によって規定が複数存在しているが、本システムで実行するプログラムを組み換えることにより、規定間での変換を含めて、各規定に準拠する方法に変換することが容易となる。
【0050】
これらのことから、点字情報の伝達の高速化と操作の容易化、そして高い情報伝達の信頼性を実現できるため、既存の点字機の機能を代替することも可能となる。
【0051】
なお、上記においては、ユーザが有する片手の指を使った振動刺激情報の提示方法について説明したが、情報提示量の拡大、微細な情報や表現が複雑で難解な情報を提示する場合など、必要に応じて左右の手の指を個別発振させたり、両手の指を協調的に発振させたりしても良い。
【0052】
以上のような振動刺激を活用した情報伝達方法を採用することにより、視聴覚障がい者の歩行誘導支援の他、健常者の野外に於ける走歩行誘導や視聴覚情報取得を補う手段として即時応答力の高いシステムを構築できる。
【0053】
例えば、会議や面談などに於ける英訳や仏訳など、異言語の音声を即時変換提示するなど、音声の重複による混乱も無い同時通訳用途や、テレビの生字幕放送などの文字情報を更に振動刺激情報に変換提示することなどが可能な、即応性が求められる情報伝達手段としての活用が可能なシステムを実現できる。
【0054】
また、進路情報などの現況、避難、誘導提示等の伝達情報を、音声や取得画像の処理解析結果に基づく振動刺激としてユーザへ情報提示することが可能となる。本情報提示は、手指への触覚刺激による直接的な提示方法であるため、合図や暗号などを用いた知覚容易で、即応性の高い音声による情報提示に一歩近づいた情報伝達速度での提示を実現できる。
【0055】
以上のように、本発明の実施の形態に係る情報伝達システム1及び情報伝達プログラムによれば、人間の触覚受容器機構の特性を十分に活かし、同時発振や連携発振を活用した発振の仕組みによって、短時間で、より多くの伝達情報を即時かつ確実に伝える高速伝送(情報伝達速度の向上)が可能となる。
【0056】
より具体的には、一般的に情報伝送の原理として、電子を用いた古典ビット単位による伝送と処理方法の他に、電子や光子を用いて量子ビットに変換活用する並列や重ね合わせ処理の考え方が知られているが、上記情報伝達システム1や情報伝達プログラムでは、伝送路の受信者であるヒトの知覚能を効率的に活用すべく、振動刺激の変調を識別、若しくは知覚の1つの識別単位として位置付けていることを特徴としている。
【0057】
そして、並列や重ね合わせ等の方法により変調させた振動刺激を与える振動発振と、その制御・処理を手段として、ユーザが取得する知覚や識別に対して振動による変調をもたらすことで、一般的なコンピュータでは0か1かなど2値の何れかの状態を表すビット表現でしか表せなかった情報提示の方法において、発振する位置、時間、強度による識別知覚だけでなく、これらを基にして上記のように並列や重ね合わせ等により変調させた振動刺激を新たな情報提示の識別単位(要素)として活用している。このような手法によって、ヒトの限られた振動知覚能(知覚弁別能)や情報処理能力を有効に使い、提示情報の識別に要する時間の短縮や伝送路に於ける通信容量の増大、そして伝送路の信頼性向上を達成していることになる。
【符号の説明】
【0058】
1 情報伝達システム、2 手袋、3 送信装置、33 演算部、34 送信部、a2~a5,b2~b5,c1~c5,d1 円盤型振動モータ、r 指輪型発振子、B1 末節骨、B2 中節骨、B3 基節骨、B4 中手骨、J1 DIP関節、J2 PIP関節、J3 MP関節。
【要約】
【課題】ユーザへ多くの情報を即時かつ確実に伝達しうる情報伝達システム、及び本システムを制御するためのプログラムを提供する。
【解決手段】
上記課題を解決するため、振動情報に応じて、ユーザに装着された複数の円盤型振動モータa2~a5,b2~b5,c1~c5,d1を選択的に振動させる手袋2と、上記振動情報若しくは上記ユーザへ伝える伝達情報のいずれか一方を受信部6へ送信する送信装置3を備え、送信装置3が上記振動情報を送信する場合には送信装置3、上記伝達情報を送信する場合には受信部6が、上記伝達情報と、上記伝達情報を示す符号をデータセットとする教師データにより学習された第1の学習済ニューラルネットワークへ伝達情報を入力することにより、上記伝達情報に応じた符号を第1の学習済ニューラルネットワークに出力させ、出力された符号に対応する振動情報を生成する演算部33を含む情報伝達システム1を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
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図6
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図8