(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】安全性向上航空機
(51)【国際特許分類】
B64D 45/00 20060101AFI20221122BHJP
B64D 33/00 20060101ALI20221122BHJP
B64D 37/00 20060101ALI20221122BHJP
B64D 41/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B64D45/00
B64D33/00
B64D37/00
B64D41/00
(21)【出願番号】P 2020506220
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2019000103
(87)【国際公開番号】W WO2019192750
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520036743
【氏名又は名称】ロー、スティーブン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ロー、スティーブン
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-192796(JP,A)
【文献】特開平2-267327(JP,A)
【文献】特表2016-508466(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第2507280(CA,A1)
【文献】米国特許第8528312(US,B1)
【文献】米国特許第3529793(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/00,37/00,
41/00,45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主推進
ジェットエンジン
及び前記主推進
ジェットエンジンのための第1の燃料供給源と
、予備補助推進ジェットエンジン及び前記予備補助推進ジェットエンジンのための第2の燃料供給源と、を有し、
前記第2の燃料供給源は前記第1の燃料供給源から完全に分離され、前記予備補助推進
ジェットエンジンのみを供給するための専用であり、
前記
予備補助推進
ジェットエンジンは、前記主推進
ジェットエンジンとは独立してスイッチオンすることができる航空機
であって、
前記航空機は、飛行中に前記予備補助推進ジェットエンジンの吸気および排気開口部を覆い、かつ、飛行中に開放されるように制御可能な保護カバー要素を更に備え、前記保護
カバー要素は、前記予備補助推進ジェットエンジンを保護する通常の保護位置と、前記予備補助推進ジェットエンジンの開口部を覆わない開放位置と、を有し、
前記航空機は、前記主推進ジェットエンジンが使用され、かつ、前記予備補助推進ジェットエンジンは、全ての運転中のエンジンに影響を及ぼす劇的な事象が発生したときに作動の準備ができたままであることを保証するために使用されず、前記保護カバー要素は通常の保護位置にある、通常飛行モードを有し、及び、
前記航空機は、全ての前記主推進ジェットエンジンが故障した場合に、前記保護カバー要素が開放位置にあり、前記予備補助推進ジェットエンジンが前記航空機の降下角度を低減させる推進力を提供する、緊急飛行モードを有する、
航空機。
【請求項2】
前記
予備補助推進
ジェットエンジンは、高度を維持するのに十分に強力である、
請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
個別の前記主推進
ジェットエンジンに比べて、前記
予備補助推進
ジェットエンジンの動力が劣る、請求項1
又は請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
補助動力ユニットと、前記補助動力ユニットにより電力を生み出す発電機とを更に備え、
前記補助動力ユニットは、前記
予備補助推進
ジェットエンジンとは異なる燃料消費エンジンから構成され、前記第2の燃料供給源とは異なる燃料供給源から燃料を供給される、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の航空機を運航する方法であって、
前記主推進
ジェットエンジンから提供される推進力により、前記
予備補助推進
ジェットエンジンが切られた状態で、
通常飛行モードで航空機を運航するステップと、
全ての前記主推進
ジェットエンジンが故障した場合に、
前記保護カバー要素を飛行中に通常の保護位置から解放位置に変位させて、前記
予備補助推進
ジェットエンジンによって提供される推進力を用いて緊急飛行
モードで航空機を運航するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、航空機設計の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は典型的には推進エンジンを備えており、本発明は、グライダーに関するものではない。
【0003】
推進エンジンは、大まかにはプロペラエンジンおよびジェットエンジンとして区別することができる。より大きな距離、特に大陸間飛行に向けられたより大きな航空機は、常にジェットエンジンを有する。
【0004】
エンジンの数は変えることができる。多くの設計は2つのエンジンを含み、幾つかは4つのエンジンを含む。また、各翼に1つ、尾部に1つずつの3つの推進ジェットエンジンを有する設計もある。
【0005】
エンジンは故障する可能性がある。原因は技術的な性質のものであり得るが、これは通常、1つのエンジンのみに影響を及ぼす。航空機は、1つのエンジンをオフにして安全に継続できるように設計されている。
【0006】
2つ以上のエンジンが故障する事象、特に全てのエンジンが故障する事象は、典型的には燃料不足またはエンジンに入る物体などの共通の原因によって引き起こされる。
【0007】
全てのエンジンが故障すると、航空機は推力なしに放置され、下降する。それは今やグライダーとして振る舞う。滑走路の到達範囲内に着陸場所があれば、安全に着陸することができる。これは、例えば、2009年の有名なハドソン川事件(USエアウェイズ1549号)および1983年のギムリ滑空事件(エアカナダ航空143号)によって実証されている。
【0008】
USエアウェイズ1549便は、離陸直後、数百メートルの高度でガチョウの群れに当たった。下降は約3分間継続した。このような状況では、現実的な選択肢は存在しない。
【0009】
エアカナダ143便は高度で燃料切れになり、その結果、より長い時間がかかったが、空港が不足している地域を巡航していたため、利用可能な滑走路の数が少なかった。
【0010】
どちらの飛行も運が良かった。機長は普通ではないが適切な着陸場所を見つけることができ、安全な着陸を行うことができたという意味でだった。このような事故の結果は、下降航空機の到達範囲内に適切な着陸場所がない場合にははるかに破滅的であると想像することは容易である。船長は、推力がない場合、下降角度に影響を及ぼす可能性は限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、適切な着陸地点を見つける機会を増加させ、それによって生存の機会を増加させるという意味で、この問題に対する解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
もちろん、適切なランディングスポットを生成したり、位置を変えたりすることはできない。船長は既存の場所で対応しなければならない。本発明によれば、航空機は、主推進エンジンの停止後でさえ飛行を継続することを可能にする安全対策を備える。
【0013】
このために、本発明による航空機は、補助推進エンジンと、補助推進エンジン専用に指定され、主推進エンジンの燃料供給源とは独立した補助燃料供給源とを備える。また、補助推進エンジン用の電気回路は、完全に独立していなければならない。他方、計器及び油圧は、補助推進エンジンから動力を供給されることができなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ほとんどの商用航空機は補助動力ユニット(APU)を有し、この補助動力ユニットは燃料消費エンジン、通常はタービンを含み、このタービンは、主エンジンがゲートでオフのときに発電するための発電機を駆動することに留意されたい。これは、計器、空調などのための動力を提供する。それはまた、主タービンエンジンを始動させるための動力を提供する。そして、完全なエンジン故障の場合には、計器及び他の全ての飛行システムに電力を供給するためにスイッチを入れることができるという意味で、それ自体が安全機能である。しかしながら、このような補助動力装置は飛行推進エンジンではない。さらに、このような補助動力ユニットは、推進エンジンと同じ燃料供給源から供給されることに留意されたい。
【0015】
タクシー(taxi)中にAPUによって動力を供給されるが、飛行中は推進力ではない、車輪内に電気モータを有する航空機が提案されている。
【0016】
本発明者によって提供された発明概念は基本的に、レンジエクステンダ(range extender)の機能を有する予備推進エンジンを含む。通常の条件下では、予備推進エンジンは、例えば全ての運転中のエンジンに影響を及ぼす劇的な事象が発生したときにこのエンジンが作動の準備ができたままであることを保証するために、使用されないであろう。さもなければ、他のエンジンを停止させるのと同じ原因によって影響を受ける可能性のある、主推進エンジンの追加の1つにすぎないであろう。別個の燃料供給源を有していない場合、燃料の消耗も「追加の」エンジンに影響を及ぼすことになる。もしそれが作動しており、従って燃焼のために空気を受け取っているならば、空気中の任意の物体(例えば鳥)もまた「追加の」エンジンを損傷することがある。この予備エンジンを安全に保ち、航空機を守ることができるようにすることが、全体的なアイデアである。
【0017】
したがって、本発明者によって提案された航空機設計では、航空機が2つまたは3つまたは4つ(またはそれ以上)の主エンジンと、電力用の発電機を駆動する少なくとも1つのAPUと、予備推進エンジンとを有することになる。
【0018】
予備推進エンジンを保護するために、予備推進エンジンは好ましくはその吸気開口部の上に、好ましくはその排気開口部の上にも、保護キャップまたはカバーまたは蓋を備える。この保護要素は対応するエンジンを保護する通常の保護位置を有し、この保護要素は、飛行中、その通常の保護位置にある。保護要素はまた、対応するエンジン開口部を覆わない解放位置を有する。保護要素は制御可能であり、飛行中に通常の保護位置から解放位置に変位されるように、機長および/またはシステムのコンピュータによって制御することができる。
【0019】
予備推進エンジンのサイズは、設計上の選択事項であり得る。それが大きければ大きいほど、提供することができる推力は大きくなるが、それはまた、航空機のデッド荷重(dead weight)を増加させる。
【0020】
飛行を維持することができるためには、予備推進エンジンはメインエンジンほど強力である必要はない。最も高い動力要件は、離陸及び低高度飛行中に生じる。空気の密度がより低い高度で巡航する場合、低高度と比較して、空気抵抗を克服し、高度を維持するために必要とされる動力はより少ない。高度を維持することは安全上の問題である。
【0021】
このような予備推進エンジンが実際に高度を維持するために必要とされるよりも少ない動力を提供する場合でも、いずれにしても下降角度を減少させ、従って残りの飛行距離を増加させ、その結果、適切な着陸地点を見つける機会を増加させるので、既に改善されている。
【0022】
設計選択のさらなる問題は、予備推進エンジンがどれだけ長く作動すると予想されるかという問題である。これは、関連する重量を有する補助燃料供給の対応するサイズに換算される。
【0023】
例えば、エアカナダ143便は、Winnipegから約200キロメートルと報告されている高度で巡航していた。全てのエンジンが故障し、滑空路(glide path)が始動したとき、それは約12kmの高さであった。降下速度は、約10:1の比で約600m/分であった。これは、約24分の降下持続時間および約120kmの降下範囲が利用可能であることを意味する。比較的小型の予備推進エンジンが下降速度が例えば100m/分に低減されるように十分な推力を提供することができる場合、残りの範囲は約2.5時間の下降持続時間で約700kmであり、換言すれば、約2.5時間の持続時間の燃料供給が必要とされる。
【0024】
本発明は上述の例示的な実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の保護範囲内でいくつかの変形および修正が可能であることは当業者には明らかであろう。特定の特徴が異なる従属請求項に記載されている場合であっても、本発明は、これらの特徴を共通に含む実施形態にも関する。特定の特徴が互いに組み合わせて説明されている場合であっても、本発明は、これらの特徴のうちの1つまたは複数が省略されている実施形態にも関する。必須であるとして明示的に説明されていない特徴も省略されてもよい。