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特許7180979排水の生物処理方法及び排水処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】排水の生物処理方法及び排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20221122BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20221122BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20221122BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20221122BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20221122BHJP
   C02F 3/28 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C02F3/00 D
C02F3/34
C02F1/24 A
C02F1/24 B
C02F1/52 A
C02F1/52 F
C02F3/12 A
C02F3/12 B
C02F3/28 A
C02F3/28 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018010589
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2019126782
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103949(WO,A1)
【文献】特開2006-095377(JP,A)
【文献】特開2015-123437(JP,A)
【文献】特開2007-209890(JP,A)
【文献】特開2016-087564(JP,A)
【文献】特開2009-113041(JP,A)
【文献】特開2001-334259(JP,A)
【文献】特開2015-131271(JP,A)
【文献】特開2008-086862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/24、40、52-56、3/00-34
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離対象物を含む排水を生物処理する方法であって、
分離対象物を含む排水に対して前記分離対象物の分解菌と凝集剤を添加する添加工程、前記添加工程により形成されるフロックをスカムとして分離する分離工程、及び、形成されたフロック又はスカムの状態を監視する監視工程を備え、
前記添加工程は、前記監視工程の結果に応じて、前記分解菌と前記凝集剤の添加量、及び、添加割合を制御するステップを有し、
前記分離工程は、分離槽の底部から微細気泡を供給してスカムを形成するステップ、微細気泡が供給された排水を前記分離槽に設けられた仕切り板の槽上部側を越流させるステップ、前記仕切り板を越流した排水をスカムと処理水に分離するステップを有することを特徴とする、生物処理方法。
【請求項2】
前記分離対象物を分解する生物処理工程を備え、
前記分解菌として、前記生物処理工程により生じる汚泥又は処理水を用いることを特徴とする、請求項1に記載の生物処理方法。
【請求項3】
分離対象物を含む排水を生物処理する排水処理システムであって、
前記分離対象物を分解する生物処理槽と、
前記生物処理槽の前段で排水中に含まれる前記分離対象物の分解菌と凝集剤を添加する添加部と、
前記添加部により形成されるフロックをスカムとして分離する分離部と、
前記添加部により形成されたフロック又はスカムの状態を監視する監視機構と、
前記添加部は、前記監視機構の結果に応じて前記分解菌と前記凝集剤の添加量、及び、添加割合を制御する制御部を備え、
前記分離部は、前記排水を貯留するための分離槽と、槽上部側を越流可能とする仕切り板と、前記分離槽の底部から微細気泡を供給する微細気泡供給部を有し、
前記微細気泡供給部は、前記仕切り板の上流側に配置され、
前記仕切り板の上流側を、スカムを形成するスカム形成槽とし、前記仕切り板の下流側を、スカムと処理水を分離するためのスカム分離槽とすることを特徴とする、排水処理システム。
【請求項4】
前記生物処理槽の汚泥又は処理水を前記添加部に返送する返送手段を備え、返送された汚泥又は処理水を前記分解菌として用いることを特徴とする、請求項に記載の排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の生物処理に係る方法及び排水処理システムに関するものである。特に、分離対象物を含む排水の生物処理方法及び排水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機物を含む排水を処理する方法として、種々の微生物を利用した生物処理が知られている。このとき、排水中に含まれる成分によっては、生物処理工程のほかに当該成分を分離工程により分離する処理が行われる場合もある。
【0003】
例えば、油脂含有排水の生物処理においては、油脂のような水難溶性物質は微生物で分解され難く、微生物活動を阻害したり、生物処理過程で分解されずに処理水に残留するという問題がある。したがって、高濃度の油脂含有排水に対しては油脂を分離する処理を行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、油脂含有廃水に凝集剤を加えてフロックを形成するとともに、ガス生成を伴う嫌気的生物処理を密閉可能な容器内で行うことにより、廃水中にガスを加圧状態で含ませた加圧廃水を得た後、加圧廃水を大気圧開放することで微細気泡を発生させ、油脂等を吸着したフロックを浮上分離し、スカムとして回収して分解処理槽に投入し、分解処理するという方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-252968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような方法で分離したスカムを分解処理槽に投入した場合、油脂分解菌を含有する溶液とスカムが分離してしまい、スカムと油脂分解菌の接触頻度が低く、その結果、スカムの分解効率が低いという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、油脂などの分離対象物を含む排水の生物処理において、分離対象物の分解処理を促進するために、分離対象物と分離対象物を分解する分解菌との接触効率を向上させることができる生物処理方法及び排水処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、分離対象物とその分解菌とを一体に凝集させることにより、分離対象物と分解菌との接触効率を向上させることができることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の生物処理方法及び排水処理システムである。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の生物処理方法は、分離対象物を含む排水を生物処理する方法であって、分離対象物を含む排水に対して分離対象物の分解菌と凝集剤を添加するという特徴を有する。
本発明の生物処理方法は、分離対象物を含む排水に対して、分離対象物の分解菌と凝集剤を添加することで、分離対象物と分解菌とを一体に凝集させて、分離対象物と分解菌との接触効率を向上させることができるものである。これにより、分離対象物の効率的な分解処理が可能となる。
【0010】
また、本発明の生物処理方法の一実施態様としては、分離対象物を分解する生物処理工程を備え、分解菌として、生物処理工程により生じる汚泥又は処理水を用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、生物処理工程により生じる汚泥又は処理水に含まれる分解菌を有効活用することが可能となる。
【0011】
また、本発明の生物処理方法の一実施態様としては、分離対象物を含む排水に対して分離対象物の分解菌と凝集剤を添加することにより形成されたフロックを分離する分離工程を備え、分離工程は、浮上分離により分離するという特徴を有する。
この特徴によれば、排水中の分離対象物を分解菌と一体となったフロックとして容易に分離することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明の排水処理システムは、分離対象物を含む排水を生物処理する排水処理システムであって、分離対象物を分解する生物処理槽と、生物処理槽の前段で排水中に含まれる分離対象物の分解菌と凝集剤を添加する添加部とを備えるという特徴を有する。
本発明の排水処理システムによれば、分解対象物を分解する生物処理槽の前段に、分離対象物の分解菌と凝集剤を添加する添加部を備えるため、分離対象物と分解菌とを一体に凝集させて、分離対象物と分解菌との接触効率を向上させることができる。これにより、分離対象物の効率的な分解処理が可能となる。
【0013】
また、本発明の排水処理システムの一実施態様としては、生物処理槽の汚泥又は処理水を添加部に返送する返送手段を備え、返送された汚泥又は処理水を分解菌として用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、生物処理槽の汚泥又は処理水内に存在する分解菌を有効活用することが可能となる。
【0014】
また、本発明の生物処理方法の一実施態様としては、添加部により形成されるフロックを分離するための分離部を備え、分離部は、浮上分離を行うという特徴を有する。
この特徴によれば、排水中の分離対象物と分解菌が一体となったフロックを容易に分離することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、油脂などの分離対象物を含む排水の生物処理において、分離対象物の分解処理を促進するために、分離対象物と分離対象物を分解する分解菌との接触効率を向上させることができる生物処理方法及び排水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施態様に係る排水処理システムの概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様に係る排水処理システムの別の一態様を示す概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様に係る排水処理システムの概略説明図である。
図4】本発明の第3の実施態様に係る排水処理システムの概略説明図である。
図5】本発明の第4の実施態様に係る排水処理システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の生物処理方法及び排水処理システムは、分離対象物を含む排水の生物処理において好適に利用されるものである。
分離対象物は、生物処理で分解され難いものを指し、例えば、油脂、パルプなどの水難溶性物質が挙げられる。特に、微生物の活動を阻害する可能性の高い油脂を分離対象物とすることで、本発明に係る効果を好適に発揮することができる。
なお、油脂の具体例としては、動物性油脂、植物性油脂、脂肪酸、炭化水素、芳香油、高級アルコール、界面活性剤等が挙げられる。これらの油脂は、水中にSS(Suspended Solid)として固体状態で存在してもよく、または水中に乳化分散した液体状態や水と分離した状態で存在するものであってもよい。
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る生物処理方法及び排水処理システムの実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の生物処理方法については、以下の排水処理システムの構成及び作動の説明に置き換えるものとする。また、この実施態様は、本発明を限定するものではない。
【0019】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様の排水処理システムの概略説明図である。
本発明に係る排水処理システム1aは、分離対象物として油脂を含む排水WOを処理するものであり、分離対象物を分解する生物処理槽5と、その前段に分離対象物を分解する分解菌Mと凝集剤31を添加する添加部3と、添加部3により形成されるフロックを分離するための分離部2を備える。本発明に係る排水処理システム1aによれば、添加部3から分解菌Mと凝集剤31を排水WOに添加することで、排水WO中の分離対象物と分解菌Mとが一体となったフロックFが形成される。よって、分離対象物(油脂)と分解菌Mの接触効率を高めた状態で処理を行うことが可能となる。
【0020】
(添加部)
添加部3は、排水WOに凝集剤31及び分解菌Mを添加して、排水WO中の分離対象物と分解菌Mとが一体となったフロックFを形成させるものである。添加部3は、生物処理の前段で凝集剤31と分解菌M1を添加できれば、どの位置に設置してもよい。例えば、図1に示すように、ラインL1に設けてもよいし、分離部2に設けてもよい。図1のようにフロックFを分離するための分離部2を設ける場合には、分離部2の前段に設けることが好ましい。これにより、フロックFを形成させて分離部2内に供給することができるため、分離部2における分離処理効率を高めることができる。具体的には、図1に示すように、排水WOを供給するラインL1に対して、ラインL2から凝集剤31を、ラインL3から分解菌Mを供給するものとすることが好ましい。
【0021】
分解菌Mの種類は、分離対象物に応じて選択し、分離対象物を分解する能力を有するものであれば、特に限定されない。例えば、分離対象物が油脂の場合、既知の油脂分解菌としてBurkholderia属細菌、Pseudomonas属細菌、Rhodococcus属細菌、Acinetobacter属細菌、Bacillus属細菌、Enterobacter属細菌、Syntrophomonas属細菌、Microcossus属細菌、Alcanivorax属細菌などを用いることができるが、油脂を分解できる能力を有する微生物であればよく、これらに限定されない。また、例えば、分離対象物がパルプの場合、既知のパルプ分解菌として、Sphaerotilus属細菌、Phanerochaete属細菌、Coriolus属細菌、Geotrichum属細菌、Fusarium属細菌、Penicillium属細菌、Pullularia属細菌などを用いることができるが、パルプを分解できる能力を有する微生物であればよく、これらに限定されない。
分解菌Mは単離した菌を用いてもよいが、複数の菌が混合された複合微生物として用いるものでもよい。
【0022】
凝集剤31としては、特に制限されず、無機凝集剤、高分子凝集剤のいずれでもよい。無機凝集剤としては、例えば、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリシリカ鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等が挙げられ、高分子凝集剤としては、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサン、尿素-ホルマリン樹脂等のカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド)-2-メチルプロパン硫酸塩等のアニオン性高分子凝集剤、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等のノニオン性高分子凝集剤、アクリルアミドとアミノアルキルメタクリレートとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子凝集剤が挙げられる。凝集状態を良好に維持することができることから、無機凝集剤を使用することが好ましい。また、排水中の成分や凝集状態に応じて、無機凝集剤と高分子凝集剤を併用してもよい。
【0023】
図1に示した排水処理システム1aでは、添加部3において、凝集剤31、分解菌Mの順に添加を行うものとしているが、分解菌M、凝集剤31の順番で添加するものとしても、分解菌Mと凝集剤31を混合して同時に添加するものとしてもよい。添加部3における添加の順番は、分離対象物、凝集剤31、分解菌Mの種類に応じて、安定したフロックFを形成する組み合わせとなるように選択することができる。
また、凝集剤31として無機凝集剤と高分子凝集剤を併用する場合においては、無機凝集剤と分解菌Mを先に添加し、高分子凝集剤を最後に添加することによって、安定したフロックFを形成することができる。なお、この際、無機凝集剤と分解菌Mの添加の順番は問わない。
【0024】
また、排水W、凝集剤31及び分解菌Mを撹拌するための撹拌部を設けてもよい。これにより、確実にフロックFの形成を進行させた状態で分離部2に供給することが可能となる。撹拌部の具体例としては、例えば、ラインL1に設置したインラインミキサーや、撹拌機を有する貯留槽等が挙げられる。
【0025】
(分離部)
分離部2は、図1に示すように、排水WOを貯留するための分離槽に、微細気泡供給部4を備えたものである。微細気泡供給部4は、添加部3により形成したフロックFを分離槽内で浮上分離するためのものであり、図1に示すように、分離槽の底部から微細気泡を供給するものである。微細気泡を供給すると、フロックFに微細気泡が付着する。これにより、フロックFがスカムSとして分離槽の水面に浮上するため、フロックFを容易に回収することができる。微細気泡供給部4の具体例としては、空気などのガスを含んだ加圧水を供給し、分離槽2内で大気圧となることで微細気泡を発生させる加圧水供給装置や、マイクロバブル、ナノバブルを直接供給する気泡供給装置等が挙げられる。
【0026】
微細気泡として供給される気体は、どのような気体でもよく、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、酸素等が挙げられる。後段の生物処理槽5における生物処理の条件に応じて適宜設定すればよく、例えば、生物処理槽5において好気性生物処理をする場合には、空気や酸素等の活性ガスを供給すればよく、生物処理槽5において嫌気性生物処理をする場合には、窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを供給すればよい。
【0027】
スカムSとして回収されたフロックFは、ラインL5を介して生物処理槽5に供給され、フロックFが除去された処理水W1は、ラインL4を介して分離部2の外に排出される。
【0028】
なお、処理水W1は、必要に応じて生物処理等の処理が行われる。その生物処理としては、例えば、酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵や、脱窒菌により硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理や、硫酸還元菌により硫酸の還元を行う硫酸還元処理等の嫌気性生物処理や、活性汚泥を用いる活性汚泥処理等の好気性生物処理などが挙げられる。
また、処理水W1の生物処理は、分離部2で行ってもよい。
【0029】
図2は、本実施態様における排水処理システムの分離部2の別の態様を示す概略説明図である。
図2に示すように、排水処理システム1bとして、分離部21内に仕切り板6を設け、仕切り板6の槽上部側を越流可能とし、上流側を、スカムSを形成するスカム形成槽2a、下流側を、スカムSと処理水W1を分離するためのスカム分離槽2bとしたものである。仕切り板6を設けることにより、フロックFが処理水W1と共に分離部から流出することを抑制されるため、スカムSの回収率を向上することができる。
【0030】
(生物処理槽)
生物処理槽5は、フロックFに含まれる分離対象物を分解するための槽である。図1に示すように、ラインL5を介してスカムSとして回収されたフロックFが生物処理槽5に供給される。スカムS(フロックF)は、分離対象物と分解菌Mが一体となっているため、分離対象物と分解菌Mの接触効率が高く、その結果分解効率も向上する。また、スカムSの分解効率をさらに高めるために、生物処理槽5には、さらに分解菌Mを添加する手段を設けるものとしてもよい(不図示)。分解処理後の処理水W2は、ラインL6を介して生物処理槽5から排出される。
【0031】
生物処理槽5にける生物処理は、分解菌Mにより分離対象物を分解するものであればよく、嫌気性生物処理、好気性生物処理のいずれであってもよい。また、分解菌Mによる生物処理の分解物を、さらにメタン発酵や、活性汚泥処理などにより処理してもよい。メタン発酵や活性汚泥処理などの他の生物処理は、生物処理槽5内で分解菌Mによる生物処理と同時に行ってもよいし、生物処理槽5とは別の生物処理槽で行ってもよい。
【0032】
なお、分離部及び生物処理槽は、さらに付帯する各種設備を設けることができる。例えば、分離部及び生物処理槽に、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、分解菌Mが必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい。
【0033】
本実施態様における生物処理方法及び排水処理システムは、分離対象物とその分解菌を一体としたフロックを形成し、浮上分離によってスカムとして回収する。このスカムには、分離対象物とその分解菌が一体となって含まれるため、スカムの分解処理を効率よく行うことが可能である。特に、増殖速度が遅く、分解処理に時間を要する油脂分解菌を用いた油脂含有排水の生物処理に好適に用いられる。
【0034】
[第2の実施態様]
図3は、本発明の第2の実施態様の排水処理システム1cの概略説明図である。
本実施態様の排水処理システム1cは、図3に示すように、生物処理槽5から排出される汚泥や一部の処理水W2′を返送する返送手段7を設けるものであり、図1に示した第1の実施態様の排水処理システム1aにおいて、ラインL6から分岐したラインL6′をラインL1側に延伸するものである。なお、排水処理システム1cの構造のうち、第1の実施態様の排水処理システム1aの構造と同じものについては、説明を省略する。
【0035】
生物処理槽5では分解菌Mが増殖するため、生物処理槽5から排出される汚泥や返送される処理水W2′には、分離対象物の分解菌Mが多量に含まれている。本実施態様の排水処理システム1cによれば、生物処理槽5において増殖した分解菌Mを循環させて有効活用することが可能となる。
【0036】
ここで、返送手段7であるラインL6′と、添加部3における分解菌Mの添加ラインL3とは別々に設けるものとしてもよく、一体化するものとしてもよい。
返送手段7と添加部3における分解菌Mの添加ラインL3を別々に設けた場合、添加部3からは分解菌Mを追加供給することができるため、分解処理効率の低減を防ぐことが可能となる。一方、返送手段7と添加部3における分解菌Mの添加ラインL3を一体化した場合、装置を簡素化することができる。
【0037】
また、返送手段7は、返送量を可変する制御機構を設けるものとしてもよい。これにより、分解菌Mの添加量を処理効率に応じて適切に制御することが可能となる。
【0038】
[第3の実施態様]
図4は、本発明の第3の実施態様の排水処理システム1dの概略説明図である。
本実施態様の排水処理システム1dは、図4に示すように、第2の実施態様の排水処理システム1cから分離部2を除いたものである。
この排水処理システム1dによれば、分離対象物をフロックFとして排水WOから実質的に分離する。また、フロックF内には、分離対象物と分解菌Mが一体となっていることから、分離対象物と分解菌Mの接触効率を高めた状態で処理を行うことが可能となる。
【0039】
[第4の実施態様]
本発明の排水処理システムは、分離対象物の分離を浮上分離ではなく、沈降によるものとしてもよい。
図5は、本発明の第4の実施態様の排水処理システム1eの概略説明図である。
図5に示すように、本実施態様における排水処理システム1eは、分離部2′の底部を漏斗状に傾斜した形とし、添加部3により凝集剤31及び分解菌Mを添加し、排水WO内の分離対象物と分解菌Mとを一体化したフロックFを形成する。フロックFは、分離槽2′の底部からラインL7を介して回収される。回収したフロックFは生物処理槽5′に供給され、分解処理された後、処理水W4としてラインL9から排出される。また、生物処理槽5′から排出される一部の処理水W4′を返送する返送手段7′を設けるものとしてもよい(ラインL8′)。なお、分離槽2′で処理された処理水W3は、ラインL8を介して排出される。
これにより、分離対象物と分解菌Mを一体化した状態で、排水中の分離対象物の分解処理を行うことができ、その結果、処理効率を高めることが可能となる。
【0040】
なお、上述した実施態様は生物処理方法及び排水処理システムの一例を示すものである。本発明に係る生物処理方法及び排水処理システムは、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る生物処理方法及び排水処理システムを変形してもよい。
【0041】
例えば、本実施態様の排水処理システムにおいて、形成されたフロックの状態を監視する監視機構を設け、監視機構の結果に応じて添加部から添加する凝集剤及び分解菌の添加量及び添加割合を制御するものとしてもよい。これにより、安定したフロックFの形成を維持した状態で処理を行うことができるようになる。
また、フロックを浮上分離により分離する場合、スカムの状態から添加部の添加量及び添加割合を制御することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の生物処理方法及び排水処理システムは、分離対象物を含む排水の生物処理に利用される。特に水難溶性物質である油脂やパルプを含有する排水の生物処理において好適に利用される。
また、本発明の生物処理方法及び排水処理システムは、浮上分離を伴う排水の生物処理において好適に利用される。
【符号の説明】
【0043】
1a,1b,1c,1d 排水処理システム、2,21,2′ 分離部、2a スカム形成槽、2b スカム分離槽、3 添加部、31 凝集剤、4 微細気泡供給部、5,5′ 生物処理槽、6 仕切り板、7,7′ 返送手段、L1~L9 ライン、L6′,L8′ 返送ライン、F フロック、M 分解菌、S スカム、WO 排水、W1~W4 処理水、W2′,W4′ 返送される処理水
図1
図2
図3
図4
図5