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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20221122BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
B32B5/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018067571
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178213
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓明
(72)【発明者】
【氏名】杉江 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】高杉 基
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-072258(JP,A)
【文献】特開2001-151920(JP,A)
【文献】特開平08-151467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
B29C44/00-44/60;67/20-67/24
B29D30/00-30/72
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される化合物(B)とを含むポリオレフィン系樹脂組成物を架橋及び発泡してなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、
前記樹脂(A)は、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含有し、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物において、前記化合物(B)が、前記樹脂(A)100質量部に対して1.5~5質量部配合され、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物における樹脂(A)が、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種からなる、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化1】

(一般式(1)中、Rは炭素数1~8のアルキル基を示し、Rは炭素数1~30の有機基を示し、nは1~6の整数を示す。)
【請求項2】
前記化合物(B)が、下記一般式(1a)で表されるカルボン酸とアルコールとのエステル化合物である、請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化2】

(一般式(1a)中のRは前記一般式(1a)のRと同義である。)
【請求項3】
前記アルコールが1~4価のアルコールである、請求項2に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記化合物(B)が、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、及び3,9-Bis{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】
電子線架橋された、請求項1~4のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項6】
架橋度が35~65質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項7】
発泡倍率が10~30cm/gである、請求項1~6のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも1面に熱可塑性樹脂シートを積層した積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体、及びこれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、一般的に柔軟性、軽量性及び断熱性に優れており、断熱材、及びクッション材等として汎用されている。特に自動車分野では、天井材、ドア、及びインスツルメントパネル等の自動車内装材用として用いられている。
このような発泡体として、例えば特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂10~90重量%及びポリエチレン系樹脂10~90重量%からなるポリオレフィン系樹脂に電離性放射線を照射して架橋した上で発泡させてなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが開示される。特許文献1では、発泡シートが、示差走査熱量分析による、ポリピロピレン系樹脂の融点〔mp(PP)〕とポリエチレン系樹脂の融点〔mp(PE)〕とが特定の関係を満たすことが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-169404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両用内装材には、高い意匠性が求められてきており、発泡体を複雑な形状に成形するために、成形温度を高くする必要があり、例えば、180℃以上での成形が要求されることがある。発泡体が180℃以上に加熱されると、真空成形時に樹脂の劣化が生じて伸び強度が低下することにより柔軟性が失われ、発泡体の表面に開裂が生じ、結果として発泡体にあばたが発生することがある。特に発泡倍率を高倍率にした場合は、発泡体にあばたが生じやすくなり、また、電離性放射線を用いて架橋すると化学架橋と比較して発泡体の表面が均一になるため、あばたが目立ち、意匠性が低下するという問題がある。
引用文献1では、ポリピロピレン系樹脂の融点〔mp(PP)〕とポリエチレン系樹脂の融点〔mp(PE)〕とを特定の範囲に調整することにより発泡体の破れ等を生じにくくすることが開示されるが、あばたの発生を抑制することについては検討されていない。
【0005】
また、発泡体には、樹脂劣化を防止するために、酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールなどのフェノール系酸化防止剤が配合されるのが一般的である。しかし、一般的なフェノール系酸化防止剤では、成形温度を高温にした場合には、樹脂劣化を十分に防止することが難しく、また、発泡体表面に白化が生じることがある。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、白化の発生を抑制しつつ、発泡体を成形体に成形する際の成形温度を高くしたような場合でも、あばたの発生等を防止することができる成形性が良好な発泡体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の構造を有する化合物を特定量配合したポリオレフィン系樹脂組成物を用いると、あばたや白化の発生を抑制できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
[1]ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂(A)と、下記一般式(1)で表される化合物(B)とを含むポリオレフィン系樹脂組成物を架橋及び発泡してなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、前記ポリオレフィン系樹脂組成物において、前記化合物(B)が、前記樹脂(A)100質量部に対して0.5~5質量部配合される架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【0008】
【化1】

(一般式(1)中、Rは炭素数1~8のアルキル基を示し、R2は炭素数1~30の有機基を示し、nは1~6の整数を示す。)
【0009】
[2]前記化合物(B)が、下記一般式(1a)で表されるカルボン酸とアルコールとのエステル化合物である、上記[1]に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化2】

(一般式(1a)中のRは前記一般式(1a)のRと同義である。)
[3]前記アルコールが1~4価のアルコールである、上記[2]に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[4]前記化合物(B)が、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、及び3,9-Bis{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカンから選ばれる1種以上である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[5]電子線架橋された、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[6]架橋度が35~65質量%である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[7]発泡倍率が10~30cm/gである、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[8]上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも1面に熱可塑性樹脂シートを積層した積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、白化の発生を抑制しつつ、発泡体を成形体に成形する際の成形温度を高くしたような場合でも、あばたの発生等を防止することができる成形性が良好な発泡体を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
[架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体]
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体(以下、単に「発泡体」ということがある。)は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂(A)と、化合物(B)とを含むポリオレフィン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある。)を架橋及び発泡してなるものである。以下、樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0012】
<樹脂(A)>
樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂を含むものである。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0013】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体等が挙げられるが、これらの中でも、ランダム共重合体(すなわち、ランダムポリプロピレン)が好ましい。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、炭素数2のエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数4~10程度のα-オレフィン等が挙げられるが、これらの中でも、成形性及び耐熱性の観点から、エチレンが好ましい。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
また、ランダムポリプロピレンは、プロピレン50質量%以上100質量%未満と、プロピレン以外のα-オレフィン50質量%以下とを共重合させて得られるものが好ましい。ここで、共重合体を構成する全モノマー成分に対して、プロピレンが80~99.9質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが0.1~20質量%であることがより好ましく、プロピレンが90~99.5質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが0.5~10質量%であることが更に好ましい。さらに、共重合体を構成する全モノマー成分に対して、プロピレンが95~99質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが1~5質量%であることがより更に好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、ランダムポリプロピレンであることが好ましいが、ホモポリプロピレンとランダムポリプロピレンの混合物であってもよい。
【0015】
(ポリエチレン系樹脂)
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂等が挙げられるが、これらの中でも、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)が好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、密度が0.910g/cm以上0.950g/cm未満のポリエチレンであり、好ましくは密度が0.910~0.930g/cmのものである。
発泡体は、密度が低い直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を含有することで、樹脂組成物を発泡体に加工する際の加工性、発泡体を成形体に成形する際の成形性等が良好になりやすい。なお、上記樹脂の密度はJIS K7112に準拠して測定したものである。
【0016】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、通常、エチレンを主成分(全モノマーの50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、エチレンと少量のα-オレフィンの共重合体である。ここで、α-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~10のものが挙げられ、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエチレン系樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
樹脂(A)は、ポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましく、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の両方を含む態様も好ましい。
樹脂(A)は、上記したポリプロピレン系樹脂を、50質量%以上含有することが好ましく、55~90質量%含有することがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂を樹脂(A)の主成分とすることで、発泡体の機械的強度、耐熱性等を良好にすることが可能になる。
さらに、樹脂(A)は、上記ポリプロピレン系樹脂に加えて、上記したポリエチレン系樹脂を1~50質量%含有することが好ましく、10~45質量%含有することがより好ましい。ポリエチレン系樹脂を含有することで、機械的強度、耐熱性等を高めつつ、加工性、成形性も良好にしやすくなる。
【0018】
樹脂(A)としては、上記した樹脂以外のポリオレフィン系樹脂成分も使用可能である。そのような樹脂成分としては、具体的には、エチレン-プロピレン-ゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アルキルアクリレート共重合体、又はこれらに無水マレイン酸を共重合した変性共重合体等が挙げられる。これら樹脂成分は、例えば、上記ポリプロピレン系樹脂、又はポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合物にさらに加えられるとよい。
【0019】
樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂単独で構成されていてもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分を含んでいてもよい。
ポリオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂(A)全量に対して、通常、70質量%以上であり、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
【0020】
前記樹脂組成物中の樹脂(A)の含有量は、50~98質量%が好ましく、60~96質量%がより好ましく、70~94質量%が更に好ましい。樹脂組成物中の樹脂(A)の含有量が前記範囲内であると、発泡体の機械強度を保ちつつ加工性及び成形性を良好にすることができる。
【0021】
<化合物(B)>
本発明に用いる化合物(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である。一般式(1)で表される構造を有する化合物を用いると、発泡体の成形時に例えば180℃以上の高温に加熱した場合であっても樹脂の伸び強度の劣化を抑制することができるため、発泡体にあばたが生じることを防止することができる。
【0022】
【化3】

(一般式(1)中、Rは炭素数1~8のアルキル基を示し、R2は炭素数1~30の有機基を示し、nは1~6の整数を示す。)
【0023】
前記一般式(1)中のRは炭素数1~8のアルキル基であり、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、及び各種オクチル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
前記アルキル基の中でも、あばたの発生を抑制する観点から、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はtert-ブチル基が更に好ましい。
【0024】
前記一般式(1)中のR2は炭素数1~30の有機基を示し、炭素数1~20の有機基が好ましい。有機基はヘテロ原子を有してもよく、ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子及びリン原子が挙げられ、中でも酸素原子が好ましい。
2としては、炭化水素基、エーテル結合を有する炭化水素基、エステル基を有する炭化水素基などが挙げられ、中でも、飽和炭化水素基、エーテル結合を有する飽和炭化水素基が好ましい。R2は直鎖でもよいし、分岐構造や環状構造を有していてもよい。
前記一般式(1)中のnは1~6の整数を示し、1~4が好ましく、2~4がより好ましい。なお、R2の結合部の数は、1~6であり、結合部の数はnに応じた数となる。
【0025】
本発明に用いる化合物(B)は、前記一般式(1)で表される化合物であれば特に制限はないが、例えば、下記一般式(1a)で表されるカルボン酸とアルコールとのエステル化合物であることが好ましい。
【0026】
【化2】

(一般式(1a)中のRは前記一般式(1a)のRと同義である。)
【0027】
前記一般式(1a)で表されるカルボン酸としては、例えば、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)プロピオン酸、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-プロピルフェニル)プロピオン酸、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-iso-プロピルフェニル)プロピオン酸、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸が挙げられる。これらの中でも、あばたの発生を効果的に抑制する観点から、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸が好ましい。
【0028】
また、前記アルコールに特に制限はなく、飽和でも不飽和でも、直鎖でも分岐でも、環状構造を有していてもよいが、飽和アルコールが好ましい。また、1価のアルコールでも多価アルコールでもよいが、1~4価のアルコールが好ましく、2~4価のアルコールがより好ましい。
【0029】
1価アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、各種プロピルアルコール、各種ブチルアルコール、各種ペンチルアルコール、各種ヘキシルアルコール、各種オクチルアルコール、各種デシルアルコール、各種ドデシルアルコール、各種テトラデシルアルコール、各種セチルアルコール、各種ヘプタデシルアルコール、各種オクタデシルアルコール、各種ノナデシルアルコール、各種アラキルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、炭素数6~18の1価アルコールが好ましく、炭素数10~18の1価アルコールがより好ましい。
【0030】
2価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、及び1,6-ヘキサンジオール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が好ましく、中でも、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
【0031】
3価アルコール及び4価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の3価アルコール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の4価アルコールが挙げられ、中でも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が好ましく、ペンタエリスリトールがより好ましい。
なお、本発明において多価アルコールを用いる場合、多価アルコール1分子中の全ての水酸基が前記カルボン酸によりエステル化されていてもよく、また、その一部のみエステル化されていてもよいが、あばたを効率的に防止する観点から、多価アルコール1分子中のすべての水酸基がエステル化されていることが好ましい。
【0032】
前記一般式(1a)で表されるカルボン酸とアルコールとのエステル化反応に特に制限はなく、一般的なエステル化反応により製造することができる。
【0033】
具体的な化合物(B)としては、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、及び3,9-Bis{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカンから選ばれる1種以上が好ましく、これらの中でも、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、及び3,9-Bis{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカンから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0034】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物において、前記化合物(B)は、前記樹脂(A)100質量部に対して0.5~5質量部配合される。前記化合物(B)の配合量が前記下限値未満であるとあばたの発生を抑制することができない。一方、化合物(B)の含有量が前記上限値を超えると白化が生じるため発泡体の意匠性が低下する。これらの観点から、前記化合物(B)の配合量は、0.7~4.0質量部が好ましく、0.8~3.0質量部がより好ましい。
【0035】
<添加剤>
本発明に用いる樹脂組成物は、添加剤として化合物(B)以外に、通常、発泡剤を含有する。また、樹脂組成物は、化合物(B)以外に、さらに架橋助剤、及び酸化防止剤の一方又は両方を含有してもよい。
【0036】
(発泡剤)
樹脂組成物を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、樹脂組成物に添加した化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、均一な独立気泡発泡体を得る観点から、化学的発泡法が好ましい。
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が使用され、例えば、分解温度が160~270℃程度の有機系熱分解型発泡剤又は無機系熱分解型発泡剤を用いることができる。
【0037】
有機系熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0038】
無機系熱分解型発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中でも、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、有機系熱分解型発泡剤が好ましく、アゾ化合物、ニトロソ化合物がより好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が更に好ましく、アゾジカルボンアミドがより更に好ましい。
これらの発泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
樹脂組成物中における有機系熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して2~20質量部が好ましく、3~12質量部がより好ましい。有機系熱分解型発泡剤の配合量がこの範囲内であると、発泡性ポリオレフィン樹脂シートの発泡性が向上し、所望する発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートを得ることができる。
【0040】
(架橋助剤)
架橋助剤としては、例えば、多官能モノマーを使用することができる。多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート系化合物、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を有する化合物、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート系化合物、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を有する化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらの架橋助剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、3官能(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
架橋助剤を樹脂組成物に配合することによって、少ない電離性放射線量で樹脂組成物を架橋することが可能になる。そのため、電離性放射線の照射に伴う各樹脂分子の切断、劣化等を防止することができる。
【0041】
樹脂組成物中における架橋助剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.2~10質量部が好ましく、0.5~7質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。配合量が0.2質量部以上であると樹脂組成物を発泡する際、所望する架橋度に調整しやすくなる。また、10質量部以下であると樹脂性組成物に付与する架橋度の制御が容易となる。
【0042】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びアミン系酸化防止剤等が挙げられるが、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましくい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。これらのイオウ系酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
樹脂組成物中における酸化防止剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0044】
また、樹脂組成物は、必要に応じて、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等の分解温度調整剤、難燃剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等の上記以外の添加剤を含有してもよい。
【0045】
本発明の発泡体は、上記した樹脂組成物を架橋及び発泡してなるものである。発泡体の架橋度は、35~65質量%が好ましく、40~55質量%がより好ましい。発泡体の架橋度を上記の範囲とすることで、機械的強度、柔軟性及び成形性をバランスよく向上させることができる。なお、発泡体の架橋度の測定方法は、後述する実施例に記載されるとおりである。
【0046】
発泡体の形状は、特に限定されないが、シート状であることが好ましい。また、発泡体の厚みは、0.5~10mmが好ましく、0.8~8mmがより好ましい。このような厚みを有する発泡体は、自動車用内装材として適切に成形することが可能である。
【0047】
発泡体の発泡倍率は10~30cm/gが好ましく、15~25cm/gがより好ましい。本発明においては化合物(B)を用いているため発泡体の発泡倍率を前記範囲のような高倍率にしてもあばたの発生を抑制することができる。
本発明の発泡体は、必要に応じて着色していてもよいが、意匠性の自由度を高める観点からは、着色されていないことが好ましく、ナチュラル色であることがより好ましい。
【0048】
[架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法]
本発明の一実施形態に係る発泡体の製造方法としては、例えば、少なくとも(A)成分及び(B)成分を含有する樹脂組成物を、押出機により押し出して、その押し出した樹脂組成物を架橋及び発泡する方法が挙げられる。より具体的には、以下の工程(1)~(3)により製造することが。
工程(1):上記(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて配合されるその他添加剤を押出機に供給して、溶融混練した後、押出機から押し出してシート状等の所定形状の樹脂組成物を得る工程
工程(2):工程(1)で得た樹脂組成物に電離性放射線を照射して、架橋する工程
工程(3):工程(2)で架橋した樹脂組成物を発泡させ、発泡体を得る工程
【0049】
本製造方法で使用される押出機としては、単軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。これらの押出機は、樹脂組成物中の異物、ゴミ等を除去する観点から、スクリーンメッシュを備えていることが好ましい。スクリーンメッシュのメッシュサイズは、特に限定されないが、得られる発泡体の品質を均一にする観点からは、80メッシュ以上が好ましく、150メッシュ以上がより好ましい。メッシュサイズの上限値は生産性を考慮して適宜決定すればよいが、例えば、280メッシュ以下である。
押し出し機内部の樹脂温度は、130~195℃が好ましく、160~195℃がより好ましい。
【0050】
工程(2)においては、工程(1)で得た樹脂組成物に電離性放射線を照射して、架橋する。通常、電離性放射線を用いて架橋すると化学架橋と比較して発泡体の表面が均一になりやすいため、あばたが生じた場合に目立ちやすくなる。しかし、本発明においては化合物(B)を用いているため樹脂の伸び劣化に起因するあばたの発生を抑制することができる。よって、電離性放射線により架橋することにより、より一層意匠性に優れる成形体を得ることが可能になる。
工程(2)において使用できる電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができ、これらの中でも、電子線が好ましい。電離性放射線の照射量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、0.1~10Mradが好ましく、0.2~5Mradがより好ましい。電離性放射線の照射による架橋の進行は、樹脂組成物の組成に影響されるため、通常は架橋度を測定しながら照射量を調整する。
【0051】
本製造方法では、樹脂組成物に発泡剤として熱分解型発泡剤を配合することが好ましい。熱分解型発泡剤を含有する場合、工程(3)において、架橋した樹脂組成物を発泡させる際の加熱温度は、熱分解型発泡剤の分解温度以上の温度に加熱することが好ましい。具体的には、加熱温度は、通常200~290℃であり、220~280℃が好ましい。
また、工程(3)においては、発泡体は、発泡後又は発泡中に、MD方向又はCD方向のいずれか一方又は双方に延伸されてもよい。
なお、本発明の発泡体の製造方法は上記の製造方法に限定されず、他の製造方法で製造されてもよい。
【0052】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも1面に熱可塑性樹脂シートを積層したものである。本発明の積層体の製造方法に特に制限はないが、発泡体の少なくとも1面に熱可塑性樹脂シートを積層して公知の方法で成形して製造することが好ましい。
熱可塑性樹脂シートに用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0053】
[成形体]
本発明においては、上記発泡体又は積層体を、必要に応じて異種材料をさらに積層したうえで、公知の方法で成形して、成形体とするとよい。成形方法としては、真空成形、圧縮成形、スタンピング成形、射出成形等が挙げられるが、これらの中でも、真空成形が好ましい。また、成形温度は、特に限定されないが、例えば160~250℃、好ましくは180~230℃である。本発明では、化合物(B)が配合されることで、高温で成形してもあばたが発生しにくい。
【0054】
また、異種材料としては、骨材、表皮材などが挙げられる。骨材は、成形体の骨格となるものであり、通常、熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、上述したポリオレフィン系樹脂、エチレンとα-オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等との共重合体、ABS樹脂、及びポリスチレン樹脂等を適用することができる。骨材は、上記発泡体又は積層体にシート状の樹脂などを重ね合わせてもよいし、射出成形などにより発泡体又は積層体の上に積層させてもよい。骨材は、上記積層体に対しては、通常、熱可塑性樹脂シートが設けられた側の面に積層される。
【0055】
表皮材としては、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂からなるシート、熱可塑性エラストマーシート、天然繊維や人造繊維を用いた織物、編物、不織布、人工皮革や合成皮革等のレザー、金属等が挙げられる。また、本革や、石や木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパ等を用いて、表面に皮目や木目模様等の意匠が施された複合成形体としてもよい。
表皮材を貼り合わせる方法としては、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法、金属等では無電解メッキ法、電解メッキ法及び蒸着法等が挙げられるが、如何なる方法でも両者が接着されればよい。
成形体は、各種用途に使用可能であるが、好ましくは、自動車の天井材、ドア、インスツルメントパネル等の自動車用内装材として使用される。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0057】
各物性の測定方法、及び発泡体の評価方法は以下のとおりである。
(1)架橋度
発泡体から約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
(2)密度及び発泡倍率
発泡体の密度(見かけ密度)はJIS K 7222に準拠して測定したものであり、発泡倍率は、密度の逆数である。
(3)発泡体の厚み
ダイヤルゲージで計測した。
(4)あばた及び白化の有無
各実施例、比較例の発泡体を、表面温度180℃、深さHと直径Dの比H/D=0.7、メス引きカップで真空成形して、更に200℃に調温したオーブン内で5分間加熱して加速劣化させた。加速劣化後の成形体について、あばたがあるかどうかを目視により観察し、あばたがないものを「A」、あばたがあるものを「B」として評価した。結果を表1に示す。
また、加速劣化後の成形体について、白化があるかどうかを目視により観察し、白化がないものを「A」、白化があるものを「B」として評価した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例1~2、比較例1~3
各実施例及び比較例において、表1に示す各成分を、表1に示す部数で、スクリーンメッシュ(120メッシュ)を備える単軸押出機に投入して、樹脂温度190℃にて溶融混練して押し出し、厚さ2.0mmのシート状の樹脂組成物を得た。このシート状の樹脂組成物の両面に加速電圧800kVで電子線を表1に記載の照射量で照射することにより樹脂組成物を架橋した。その後、架橋した樹脂組成物を熱風オーブンによって250℃で5分間加熱し、その加熱により発泡させて厚み4mmの発泡シート(発泡体)とした。各実施例、比較例の発泡体の評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1における各成分の詳細は以下のとおりである。
・樹脂(A1):エチレン-プロピレンランダム共重合体(ランダムPP)、製品名:EG7F、日本ポリプロ株式会社製、MFR=1.3g/10分、エチレン量:3質量%
・樹脂(A2):直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、製品名:2035G、ダウケミカル日本株式会社製、密度:0.919g/cm
・化合物(B1):株式会社ADEKA製、製品名:アデカスタブ AO-80(3,9-Bis{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン)
・化合物(B2):株式会社ADEKA製、製品名:アデカスタブ AO-60(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])
・発泡剤:アゾジカルボンアミド
・架橋助剤:TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)
・フェノール系酸化防止剤:楠本化成株式会社製、製品名:NA-LUBE AO-210
・イオウ系酸化防止剤:ジラウリルチオジプロピオネート
【0061】
実施例1~2では、前記一般式(1)で表される化合物(B)を所定量配合したことにより、あばたの発生を抑制することができ、さらに白化の発生も抑制した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができた。
それに対して、比較例1では、化合物(B)が配合されなかったため、あばたの発生を抑制することができなかった。また、比較例2では、化合物(B)の配合量が多すぎたため、白化が発生した。比較例3は、化合物(B)の代わりにフェノール系酸化防止剤を用いたところ、あばた及び白化が確認された。