(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】樹脂製配管の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 13/02 20060101AFI20221122BHJP
F16L 11/06 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
F16L13/02
F16L11/06
(21)【出願番号】P 2018092333
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000140890
【氏名又は名称】ミライアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】溜渕 晴也
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実公昭51-034020(JP,Y1)
【文献】特開平10-138346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0257604(US,A1)
【文献】中国実用新案第203757213(CN,U)
【文献】特開昭51-003025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 13/02
F16L 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材とを連結して、樹脂製配管を製造する方法であって、
樹脂材料から成形した樹脂製チューブ部材の端部の内外径を、該樹脂製チューブ部材の残部の内外径よりも拡大させて、前記端部を拡径端部とする端部拡径工程と、
前記樹脂製チューブ部材の拡径端部、および、該樹脂製チューブ部材に連結する樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材の端部をともに加熱して溶融させ、当該拡径端部と端部とを突き合わせて溶着する端部溶着工程と
を含み、
前記端部拡径工程後に前記樹脂製チューブ部材の前記拡径端部が縮径し、
前記端部溶着工程を、当該拡径端部の内外径が拡大前の大きさに戻る前
に行う、樹脂製配管の製造方法。
【請求項2】
端部拡径工程で、樹脂製チューブ部材の前記端部の内側に、拡径治具を挿入することにより、当該端部の内外径を拡大させる、請求項1に記載の樹脂製配管の製造方法。
【請求項3】
前記拡径治具が、樹脂製チューブ部材の端部へ挿入される挿入部を含み、前記挿入部が、先端側から後方側に向かうに従って外径を漸増させたテーパ状の外周面を有する、請求項2に記載の樹脂製配管の製造方法。
【請求項4】
端部拡径工程で、樹脂製チューブ部材の前記拡径端部を、当該拡径端部の少なくとも一部で該拡径端部の端面側に向かうに従って内外径が漸増するテーパ形状とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂製配管の製造方法。
【請求項5】
樹脂製チューブ部材と他の樹脂製チューブ部材とを連結するに当り、
端部拡径工程で、前記樹脂製チューブ部材及び他の樹脂製チューブ部材のそれぞれの端部の内外径を拡大させて、それぞれの前記端部を拡径端部とし、
端部溶着工程で、前記樹脂製チューブ部材及び他の樹脂製チューブ部材のそれぞれの拡径端部どうしを溶着させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂製配管の製造方法。
【請求項6】
樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手とを連結するに当り、
端部拡径工程で、前記樹脂製チューブ部材及び樹脂製管継手のうち、樹脂製チューブ部材のみの端部の内外径を拡大させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂製配管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材とをそれらの端部の溶着により連結する樹脂製配管の製造方法に関するものであり、特に、樹脂製配管の品質向上に寄与することのできる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な産業で用いられる薬液輸送ライン等の樹脂製配管は、溶着機を用いて、熱可塑性樹脂等からなる樹脂製管継手や樹脂製チューブ部材のそれぞれの端部を互いに突き合わせて溶着させることにより製造されることがある。
【0003】
このような樹脂製配管の製造方法の一例を詳説すれば、たとえば、溶着機の対をなすクランプ治具のそれぞれに、二個の樹脂製チューブ部材や樹脂製管継手のそれぞれを、それらの端部が互いに対向する姿勢で保持させる。次いで、各クランプ治具に保持させた二個の樹脂製チューブ部材等のそれぞれの端部を、ヒーター等によって加熱することで、それらの端部を溶融させ、その状態で、二個の樹脂製チューブ部材等を互いに接近させて、当該端部を所要の圧力の作用により突き合わせて溶着させる。このような樹脂製チューブ部材等の端部どうしの溶着を繰り返し行うことで、所定の形状の配管を製造することができる。
【0004】
この種の樹脂製配管では、樹脂製チューブ部材や樹脂製管継手のそれぞれの溶着した端部間の内面の位置ずれや段差の発生を極力防止することが望ましい。これはすなわち、かかる位置ずれや段差は、端部の溶着強度を低下させる要因となり、長期間の使用による劣化や外力の作用によって、溶着した端部に破断やクラックを生じさせ得るからである。
【0005】
なお、特許文献1には、樹脂製管継手を端部で溶着させるに当り、樹脂製管継手の相互の溶着された端部の位置ずれを防止すること等を目的として、樹脂製管継手の外面に、溶着機のクランプ治具に保持させる固定部を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、樹脂材料をチューブ状に成形して得られる樹脂製チューブ部材では、溶着機等で、端部どうしを溶着させるべく当該端部を加熱して溶融させると、その端部が先細りに縮径する変形が生じることが解かった。そして、この状態のまま、当該樹脂製チューブ部材を、樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材と端部で溶着させて連結した場合は、溶着した端部間の内面に大きな位置ずれや段差が発生するという問題があった。
【0008】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、その目的とするところは、樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材の溶着された端部間での大きな位置ずれや段差の発生を有効に防止することのできる樹脂製配管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の樹脂製配管の製造方法は、樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材とを連結して、樹脂製配管を製造する方法であって、樹脂材料から成形した樹脂製チューブ部材の端部の内外径を、該樹脂製チューブ部材の残部の内外径よりも拡大させて、前記端部を拡径端部とする端部拡径工程と、前記樹脂製チューブ部材の拡径端部、および、該樹脂製チューブ部材に連結する樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材の端部をともに加熱して溶融させ、当該拡径端部と端部とを突き合わせて溶着する端部溶着工程とを含み、前記端部拡径工程後に前記樹脂製チューブ部材の前記拡径端部が縮径し、前記端部溶着工程を、当該拡径端部の内外径が拡大前の大きさに戻る前に行うというものである。
【0010】
ここで好ましくは、端部拡径工程で、樹脂製チューブ部材の前記端部の内側に、拡径治具を挿入することにより、当該端部の内外径を拡大させる。
この場合、前記拡径治具が、樹脂製チューブ部材の端部へ挿入される挿入部を含み、前記挿入部が、先端側から後方側に向かうに従って外径を漸増させたテーパ状の外周面を有することが好ましい。
【0011】
また好ましくは、端部拡径工程で、樹脂製チューブ部材の前記拡径端部を、当該拡径端部の少なくとも一部で該拡径端部の端面側に向かうに従って内外径が漸増するテーパ形状とすることが好ましい。
【0012】
上述したいずれかの樹脂製配管の製造方法では、樹脂製チューブ部材と他の樹脂製チューブ部材とを連結する場合、端部拡径工程で、前記樹脂製チューブ部材及び他の樹脂製チューブ部材のそれぞれの端部の内外径を拡大させて、それぞれの前記端部を拡径端部とし、端部溶着工程で、前記樹脂製チューブ部材及び他の樹脂製チューブ部材のそれぞれの拡径端部どうしを溶着させることが好ましい。
【0013】
また、上述したいずれかの樹脂製配管の製造方法では、樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手とを連結する場合、端部拡径工程で、前記樹脂製チューブ部材及び樹脂製管継手のうち、樹脂製チューブ部材のみの端部の内外径を拡大させることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、端部溶着工程に先立つ端部拡径工程で、樹脂製チューブ部材の端部の内外径を拡大させて前記端部を拡径端部とすることにより、端部溶着工程で加熱によって樹脂製チューブ部材の拡径端部が縮径変形すると、拡径前の内径に近い内径に戻るので、溶着された端部間での大きな位置ずれや段差の発生を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一の実施形態に係る樹脂製配管の製造方法を示すフロー図である。
【
図2】
図1の実施形態の端部拡径工程の一例を示す、中心軸線に沿う縦断面図である。
【
図3】
図2の端部拡径工程で得られる樹脂製チューブ部材の拡径端部を示す縦断面図である。
【
図4】
図1の実施形態の端部溶着工程の加熱時の様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係る樹脂製配管の製造方法は、樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材とを連結して、樹脂製配管を製造する方法であり、具体的には、樹脂材料から成形した樹脂製チューブ部材の端部の内外径を、該樹脂製チューブ部材の残部の内外径よりも拡大させて、その端部を拡径端部とする端部拡径工程と、樹脂製チューブ部材の拡径端部、および、樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材の端部をともに加熱して溶融させ、当該拡径端部と端部とを突き合わせて溶着する端部溶着工程とを含む。なお、樹脂製配管は、その主要部分を構成する樹脂製チューブ部材や樹脂製管継手が樹脂材料からなる配管であることを意味し、樹脂以外の金属等の材料からなる部材が含まれていてもよい。
【0018】
端部拡径工程で用いる樹脂製チューブ部材は、樹脂材料に対して押出成形等の所定の成形を行って得られる長尺管状素材を、切断工程で所定の長さに切断して形成されることがあるので、この実施形態は、
図1に例示するように、端部拡径工程の前に、当該切断工程をさらに含むものである。ここでは、
図1のフロー図に従って各工程について以下に詳説する。但し、樹脂製チューブ部材の形成方法は特に問わず、また、購買その他の何らかの方法で樹脂製チューブ部材を準備してもよいことから、切断工程は省略することもできる。
【0019】
(切断工程)
切断工程では、一般に押出成形により成形される長尺管状素材を、製造しようとする樹脂製配管で用いる箇所に応じた所定の長さに切断することで、一本以上の樹脂製チューブ部材を形成する。樹脂製チューブ素材は通常、直線もしくは曲線状の直管もしくは曲管形状をなす。
この切断工程は、たとえば、長尺管状素材を大まかにカットする一段目の切断と、その後、高い精度で所定の長さにカットしつつ端面を仕上げる二段目の切断との二つの過程に分けて行うことができる。
【0020】
長尺管状素材を構成する樹脂材料としては、たとえば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を挙げることができるが、ここで挙げた材料以外のものを用いることも可能である。後述する端部溶着工程で樹脂製チューブ部材に端部で溶着される樹脂製管継手や他の樹脂製チューブ部材も、これと同様の樹脂材料からなるものとすることができる。なお樹脂製管継手は、たとえば所定の金型を用いた射出成形により成形することが一般的であり、内部流路が略L字状に折れ曲がるエルボや、内部流路が途中で分岐してT字状等をなすチーズ、内部流路の断面積が途中で変化するレデューサ等の様々なものがある。
【0021】
(端部拡径工程)
端部拡径工程では、上記の樹脂製チューブ部材の端部の内径及び外径(すなわち内外径)を、その樹脂製チューブ部材の残部の内外径よりも拡大させ、それにより、当該端部を、内外径が残部のものよりも拡大した拡径端部とする。
【0022】
仮に端部拡径工程を経ずに後述の端部溶着工程を行った場合は、端部溶着工程で樹脂製チューブ部材の端部を加熱した際に、押出成形等により生じていた残留応力が加熱によって解放されて、加熱した端部が、その端面に向けて先細りに縮径して変形する。その状態で、当該端部を、樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材の端部と溶着させると、その内面に大きな段差や位置ずれが生じ、このことが、そこでの強度低下や、破断もしくはクラックの発生の原因となる。
これに対し、この実施形態では、端部溶着工程での加熱に際する樹脂製チューブ部材の端部の縮径変形を見越して、端部溶着工程に先立って端部拡径工程を行うことにより、端部拡径工程で、加熱時の端部の変形量を考慮してその端部を拡径させることができるので、端部溶着工程で当該端部を溶着した際の大きな内面段差及び位置ずれの発生を有効に防止することができる。
【0023】
樹脂製チューブ部材の端部の拡径は、たとえば、
図2に示す手法により実現することができる。
図2に示すところでは、樹脂製チューブ部材1の端部2に挿入することのできる拡径治具11を用いる。図示の拡径治具11は具体的には、全体として概して円柱形状をなすものであり、円柱状の基部12と、基部12の先端側(
図2では右側)に設けられて、樹脂製チューブ部材1の端部2に挿入される挿入部13とを含むものである。そして、この挿入部13は、基部12より膨出した形状であって、先端側から後方側(
図2では左側、すなわち基部12側)に向かうに従って外径が漸増するテーパ状の外周面13aを有する。図示の例では、挿入部13の外周面13aは、縦断面にてやや外側に凸の曲線で湾曲する形状としているも、図示しないが直線で外径が漸増する形状とすることも可能である。拡径治具11の挿入部13の外径は、その先端側では、樹脂製チューブ部材1の端部2の内径よりも小さく、その後方側では端部2の内径よりも大きくなるものとすることができる。
【0024】
このような拡径治具11を用いる場合、はじめに、
図2(a)に矢印で示すように、拡径治具11と樹脂製チューブ部材1のそれぞれの中心軸線がほぼ一致する向きで、拡径治具11の挿入部13に、樹脂製チューブ部材1の端部2を挿入する。
そうすると、樹脂製チューブ部材1の端部2が挿入部13に挿入されるに伴って、
図2(b)に示すように、樹脂製チューブ部材1の端部2は、その端部2の内径よりも外径が大きくなる挿入部13の外周面13aで押し広げられて拡径する。この場合、樹脂製チューブ部材1の端部2の内径及び外径が拡大されることになる。一方、樹脂製チューブ部材1の、内側で挿入部13が到達しない残部3は、元の内外径が維持される。
【0025】
これにより、樹脂製チューブ部材1の端部2は、
図3に示すように、残部3よりも内外径が拡大された拡径端部2aとなる。
【0026】
拡径治具11により樹脂製チューブ部材1の端部2を拡径させた場合は、拡径治具11の挿入部13を樹脂製チューブ部材1の端部2から引き抜いて、樹脂製チューブ部材1から拡径治具11を取り外すと、時間の経過に伴い、樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aが次第に縮径して元の形状に戻ることがある。
【0027】
それ故に、樹脂製チューブ部材1から拡径治具11を取り外した後は、できる限り速やかに、当該樹脂製チューブ部材1を後述の端部溶着工程に供することが望ましい。
【0028】
また、拡径治具11の挿入部13を樹脂製チューブ部材1の端部2に挿入している時間をある程度長くすることで、樹脂製チューブ部材1から拡径治具11を取り外した後に、樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aの拡径された形状を比較的長時間にわたって維持することができる。拡径治具11の挿入時間が短い場合は、樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aの形状が端部溶着工程まで維持されない可能性があり、この一方で、挿入時間が長い場合は、生産性の低下を招くおそれがある。
【0029】
拡径治具11を用いて得られる樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aは通常、拡径治具11の挿入部13の外周面形状に倣った形状となる。
図3に示す樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aは、その少なくとも一部、この場合は大部分が、拡径端部2aの端面4側に向かうに従って内径及び外径が漸増するテーパ形状となっている。
あるいは、図示は省略するが、拡径治具の挿入部の形状を適宜選択することにより、拡径端部を、残部との境界位置で内外径が急激に拡大し、そこから端面に向けて一定の内外径としなる縦断面視でほぼ四角形状のものとしたり、または多角形状のものとしたりする等といった様々な形状とすることができる。
【0030】
拡径端部2aの端面4での内径Daの、残部3の内径Dに対する比(Da/D)は適宜決めることができるが、残部3の内径Dに対する拡径端部2aの端面4での内径Daの比(Da/D)が小さすぎると、拡径端部2aの拡径が、端部溶着工程での加熱時の縮径変形を効果的に抑えることができるほど十分ではないことによって、溶着後に内面段差や位置ずれが生じ得る可能性を否定できない。一方、残部3の内径Dに対する拡径端部2aの端面4での内径Daの比(Da/D)が大きすぎると、拡径治具11を挿入した際の過度な負荷により、ひび(クラック)等が生じる懸念がある。
【0031】
また、拡径端部2aの軸線方向に沿う長さLは、端部溶着工程での加熱時の縮径変形が生じ得る長さとすることができ、この長さLを、樹脂製チューブ部材1の端部2の拡径させる範囲とすることができる。
【0032】
なお、
図2に示す手法の他、図示は省略するが、たとえば、樹脂製チューブ部材1の端部2に、収縮した状態のバルーンを挿入し、このバルーンを、端部2の内部で膨張させることにより、端部2の内外径を拡大させて当該端部2を拡径端部とすることもできる。
【0033】
(端部溶着工程)
上述した端部拡径工程を経て得られた拡径端部2aを有する樹脂製チューブ部材1は、樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材と連結するための端部溶着工程に供される。そして、このような連結を繰り返して、所期した形状をなす樹脂製配管を製造することができる。
【0034】
樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aと樹脂製管継手の端部を互いに溶着する場合は、たとえば、図示しない溶着機の対をなすクランプ治具のそれぞれに、相互に連結しようとする樹脂製チューブ部材の拡径端部及び樹脂製管継手の端部が互いに対向する姿勢で、それらの樹脂製チューブ部材1及び樹脂製管継手のそれぞれを保持させる。その後、
図4に示すように、樹脂製チューブ部材1の拡径端部2a及び樹脂製管継手21の端部22を、ヒーター31等によって加熱して溶融させる。そしてその状態で、樹脂製チューブ部材1と樹脂製管継手21とを互いに接近させ、それらの拡径端部2a及び端部22の相互を、所要の圧力の作用により突き合わせる。
【0035】
ここにおいて、樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aを加熱した際には、拡径端部2aは先細りになる縮径変形するも、この実施形態では、先述したような端部拡径工程で予め内外径を拡大させていることから、
図4に矢印で示すように、拡径端部2aは、実質的に拡径前の元の寸法に戻ることになる。それにより、樹脂製チューブ部材1の拡径端部2aが、樹脂製管継手21の端部22と同程度の内径となって、溶着後のそこでの内面段差及び位置ずれの発生が防止される。その結果として、拡径端部2aと端部22との所要の溶着強度が確保されて、長時間の使用や外力の作用によっても、溶着された拡径端部2a及び端部22での破断やクラックを有効に防止することができる。
【0036】
なお、二個の樹脂製チューブ部材のそれぞれの端部どうしを溶着する場合は、一の樹脂製チューブ部材と他の樹脂製チューブ部材とがいずれも、上述した端部拡径工程を経て作製されたものであることが好適である。それにより、それらの各樹脂製チューブ部材で、端部を溶着させる前の加熱溶融時の縮径変形を抑制でき、段差や位置ずれの発生がより有効に防止される。
【0037】
このようにして製造された配管では、樹脂製チューブ部材と樹脂製管継手もしくは他の樹脂製チューブ部材との連結箇所である溶着された端部間に生じ得る内面の段差が、当該端部で半径方向に沿って測定して、周方向の平均値で0.4mm以下、さらには0.3mm以下とすることができる。この段差の平均値は、周方向にて等間隔に4か所の各測定点で、顕微鏡を用いて測った値の平均とする。
【符号の説明】
【0038】
1 樹脂製チューブ部材
2 端部
2a 拡径端部
3 残部
4 端面
11 拡径治具
12 基部
13 挿入部
13a 外周面
21 樹脂製管継手
22 端部
31 ヒーター
D 樹脂製チューブ部材の残部の内径
Da 樹脂製チューブ部材の拡径端部の端面での内径
L 樹脂製チューブ部材の拡径端部の軸線方向長さ