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特許7181012スプール弁及びスプール弁の抜き出し方法
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  • 特許-スプール弁及びスプール弁の抜き出し方法 図1
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  • 特許-スプール弁及びスプール弁の抜き出し方法 図3
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  • 特許-スプール弁及びスプール弁の抜き出し方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】スプール弁及びスプール弁の抜き出し方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/24 20060101AFI20221122BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20221122BHJP
   F16K 27/04 20060101ALI20221122BHJP
   B25B 27/24 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
F16K3/24 D
F16K27/00 Z
F16K27/04
B25B27/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018115454
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019218979
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水上 秀彦
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03952394(US,A)
【文献】特開平07-068434(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107745352(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0235930(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/24
B25B 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジング及び前記弁ハウジング内に設けられた弁体を有するスプール弁を弁保持体の挿入孔から、シャンク部及びシャンク部の先端に設けられた外方延出部によるT字形の被係合部を備えた工具により引き抜くための構造を備えたスプール弁であって、
前記弁ハウジングの軸線方向の外端に、前記工具の先端を挿入するための軸線方向スリット及び当該軸線方向スリットと協働してT字形の鉤形部を形成するように前記軸線方向スリットに連通すると共に前記弁ハウジングの外周面に開口し、前記工具の前記シャンク部の軸線周りの回転により当該工具の前記被係合部をなす前記外方延出部が引っ掛かるように進入する径方向スリットが設けられているスプール弁。
【請求項2】
請求項1に記載のスプール弁を弁保持体に形成された有底の挿入孔から抜き出す方法であって、
シャンク部及びシャンク部の先端に設けられた外方延出部によるT字形の被係合部を有する前記工具を前記挿入孔の開口端から当該挿入孔内に挿入する工程と、
前記工具を前記挿入孔内において前記シャンク部の軸線周りに回転させて前記被係合部がスプール弁に引っ掛かるように前記被係合部をなす前記外方延出部を前記径方向スリットに進入させる工程と、
前記被係合部をなす前記外方延出部が前記径方向スリットに進入した状態で前記工具を前記挿入孔から引き出して前記挿入孔の前記開口端から前記スプール弁を前記挿入孔外に抜き出す工程とを有するスプール弁の抜き出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール弁、弁組立体及びスプール弁の抜き出し方法に関し、更に詳細には、弁保持体に形成された挿入孔に挿入されるスプール弁、弁組立体及びスプール弁の抜き出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スプール弁として、スプール弁の全体が流体通路を形成されているマニホールド等の弁保持体に組み込まれて使用されるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
保守等に際してスプール弁を弁保持体から取り外すことがある。スプール弁が弁保持体に形成された挿入孔に挿入される場合には、スプール弁の保守や交換に際して挿入孔からスプール弁を引き出す作業が必要になる。挿入孔が両端開口である場合には、挿入孔の一方の開口から挿入孔に棒状部材を挿入或いはねじ棒をねじ込むことによってスプール弁を挿入孔の他方の開口から押し出すことができる(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-2433号公報
【文献】特開平10-252904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、挿入孔が片端開口の有底孔である場合には、棒状部材やねじ棒によって挿入孔からスプール弁を押し出すことができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、弁保持体に形成された挿入孔が有底孔であっても、スプール弁を挿入孔から取り出せるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態によるスプール弁は、弁ハウジング(22)内に弁体(24)を有し、弁保持体(100)に形成された挿入孔(102)に挿入されるスプール弁(10)であって、前記弁ハウジング(22)の端部に、当該スプール弁(10)を前記挿入孔(102)から引き抜くための係合部(50、52、54)を有する。
【0008】
この構成によれば、係合部(50、52、54)に係合する工具(120、130、140)を用いてスプール弁(10)を挿入孔(102)から抜き出すことができる。
【0009】
上記スプール弁において、好ましくは、前記係合部は鉤形部(50)を含んでいる。
【0010】
この構成によれば、鉤形部(50)に引っ掛かる工具(120)を用いてスプール弁(10)を挿入孔(102)が抜き出すことができる。
【0011】
上記スプール弁において、好ましくは、前記係合部は雌ねじ孔(52)或いは雄ねじ軸(54)を含んでいる。
【0012】
この構成によれば、雌ねじ孔(52)或いは雄ねじ軸(54)にねじ係合する工具(130、140)を用いてスプール弁(10)を挿入孔(102)から抜き出すことができる。
【0013】
本発明の一つの実施形態による弁組立体は、弁ハウジング(22)及び前記弁ハウジング(22)内に設けられた弁体(24)を有するスプール弁(10)と、前記スプール弁(10)を挿入される有底の挿入孔(102)を形成された弁保持体(100)とを含み、前記スプール弁(10)は前記弁ハウジング(22)の端部に、当該スプール弁(10)を前記挿入孔(102)から引き抜くための係合部(50、52、54)を有する。
【0014】
この構成によれば、係合部(50、52、54)に係合する工具(120、130、140)を用いてスプール弁(10)を有底の挿入孔(102)から抜き出すことができる。
【0015】
本発明の一つの実施形態によるスプール弁の抜き出し方法は、上述の実施形態によるスプール弁(10)を弁保持体(100)に形成された有底の挿入孔(102)から抜き出す方法であって、先端に前記係合部(50、52、54)と係合可能な被係合部(120B、130B、140B)を有する工具(120、130、140)を前記挿入孔(102)の開口端(102A)から当該挿入孔(102)内に挿入する工程と、前記工具(120、130、140)を前記挿入孔(102)内において回転させて前記被係合部(120B、130B、140B)を前記係合部(50、52、54)に係合させる工程と、前記被係合部(120B、130B、140B)に前記係合部(50、52、54)が係合した状態で前記工具(120、130、140)を前記挿入孔(102)から引き出して前記挿入孔(102)の前記開口端(102A)から前記スプール弁(10)を前記挿入孔(102)外に抜き出す工程とを有する。
【0016】
この抜き出し方法によれば、有底の挿入孔(102)からスプール弁(10)を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるスプール弁によれば、弁保持体に形成された挿入孔から有底孔であっても、スプール弁を挿入孔から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態によるスプール弁が弁保持体に組み込まれた状態を示す断面図
図2】本実施形態によるスプール弁の斜視図
図3】本実施形態によるスプール弁の断面図
図4】他の実施形態によるスプール弁の斜視図
図5】他の実施形態によるスプール弁の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明によるスプール弁の一つの実施形態を、図1図3を参照して説明する。
【0020】
図1に示されているように、弁保持体100は、円柱形状(円筒形状)のスプール弁10を挿入される挿入孔(丸孔)102と、スプール弁10の各ポート(後述の切換ポート25、26、28及びパイロットポート30、32)に連通する通路104及び各通路104のための外部接続ポート106とを有する。挿入孔102は弁保持体100の一方の外側面100Aに開口端102Aをもって開口した有底孔である。
【0021】
スプール弁10は、パイロット式の空気圧切換弁であり、図3に示されているように、円筒状のハウジング本体12及びハウジング本体12の両端に各々スプリングピン14、16によって固定されたエンドプラグ(ストッパ)18、20による弁ハウジング22と、弁ハウジング22内に軸線方向に移動可能に設けられた弁体24とを有する。
【0022】
ハウジング本体12には3個の切換ポート25、26、28及び2個のパイロットポート30、32が形成されている。弁体24は、2個のランド部34、36を有し、一方の端面24Aがエンドプラグ18の先端のストッパ面19に当接する第1の切換位置と、他方の端面24Bがエンドプラグ20の先端のストッパ面21に当接する第2の切換位置との間を往復移動することができる。弁ハウジング22は、弁体24とエンドプラグ18との間及び弁体24とエンドプラグ20との間に各々パイロット室40、42を画定している。
【0023】
弁体24は、パイロットポート32からパイロット室42に所定値以上の空気圧(パイロット圧)が供給されている時には、図3に示されているように、第1の切換位置に位置して切換ポート26と28との連通を遮断して切換ポート26と25との連通を確立する。弁体24はパイロットポート30からパイロット室40に所定値以上の空気圧が供給されている時には、第2の切換位置に位置して切換ポート26と25との連通を遮断して切換ポート26と28との連通を確立する。
【0024】
ハウジング本体12の外周には複数のOリング44が装着されている。弁体24の外周には複数のOリング46が装着されている。エンドプラグ18及び20にはOリング48が装着されている。
【0025】
エンドプラグ18の軸線方向の外端、つまり弁ハウジング22一方の最端部には、図1図3に示されているように、スプール弁10を挿入孔102から引き抜くための係合部をなす鉤形部50が形成されている。
【0026】
鉤形部50は、エンドプラグ18の軸線方向に延在して外端面18A及び外周面18Bに開口して軸線方向スリット50Aと、エンドプラグ18の径方向に延在して軸線方向スリット50Aに連通すると共に外周面18Bに開口した径方向スリット50Bとにより、T字形をなしている。
【0027】
スプール弁10は、図1に示されているように、エンドプラグ18が開口端102A側に位置する姿勢で、挿入孔102の奥部まで挿入される。
【0028】
スプール弁10の修理や交換に際して、スプール弁10を挿入孔102から抜き出す作業は、図1及び図2に示されているように、シャンク部120Aの先端の外方延出部120Bを有するT字形をした板状の工具120の先端側を、開口端102Aから挿入孔102に挿入し、外方延出部(被係合部)120Bを、軸線方向スリット50Aを通して径方向スリット50Bに位置させる。この状態で、つまり挿入孔102内で工具120を長手軸線周りに90度回転させ、外方延出部120Bを鉤形部50に引っ掛けた状態で工具120を挿入孔102から引き出すことにより、スプール弁10が工具120によって引かれるようにして挿入孔102の開口端102Aから挿入孔102外に抜き出される。
【0029】
つまり、本実施形態によるスプール弁10の抜き出し方法は、工具120を挿入孔102の開口端102Aから当該挿入孔102内に挿入する工程と、工具120を挿入孔102内において回転させて外方延出部120Bをスプール弁10の鉤形部50に係合せる工程と、外方延出部120Bに鉤形部50が係合した状態で工具120を挿入孔102から引き出して挿入孔102の開口端102Aからスプール弁10を挿入孔102外に抜き出す工程とを有する。
【0030】
このように、スプール弁10に鉤形部50があることにより、鉤形部50に引っ掛かり係合する工具120を用いてスプール弁10を挿入孔102から作業性よく抜き出することができるようになる。これにより、挿入孔102が有底孔であっても、スプール弁10を挿入孔102から取り出すことができる。
【0031】
次に、本発明によるスプール弁の他の実施形態を、図4を参照して説明する。
【0032】
本実施形態では、スプール弁10を挿入孔102から引き抜くための係合部として、エンドプラグ18の軸線方向に延在して外端面18Aに開口した雌ねじ孔52がエンドプラグ18に形成されている。
【0033】
この実施形態でも、スプール弁10は、エンドプラグ18が開口端102A側に位置する姿勢で、挿入孔102の奥部まで挿入される。
【0034】
スプール弁10の修理や交換に際して、スプール弁10を挿入孔102から抜き出す作業は、シャンク部130Aの先端に雄ねじ部(被係合部)130Bを有する工具130の先端側を、開口端102Aから挿入孔102に挿入し、工具130を長手軸線周りに回転させることにより、雄ねじ部130Bを雌ねじ孔52にねじ係合させる。この状態で工具130を挿入孔102から引き出すことにより、スプール弁10が工具130によって引かれるようにして挿入孔102の開口端102Aから挿入孔102外に抜き出される。
【0035】
このように、スプール弁10に雌ねじ孔52があることにより、雌ねじ孔52にねじ係合する雄ねじ部(被係合部)130Bを有する工具130を用いてスプール弁10を挿入孔102から作業性よく抜き出することができるようになる。これにより、挿入孔102が有底孔であっても、スプール弁10を挿入孔102から取り出すことができる。
【0036】
次に、本発明によるスプール弁の他の実施形態を、図5を参照して説明する。
【0037】
本実施形態では、スプール弁10を挿入孔102から引き抜くための係合部として、エンドプラグ18の外端面18Aから軸線方向に延出した雄ねじ軸54がエンドプラグ18に形成されている。
【0038】
この実施形態でも、スプール弁10は、エンドプラグ18が開口端102A側に位置する姿勢で、挿入孔102の奥部まで挿入される。
【0039】
スプール弁10の修理や交換に際して、スプール弁10を挿入孔102から抜き出す作業は、シャンク部140Aの先端に雌ねじ部140Bを有する工具140の先端側を、開口端102Aから挿入孔102に挿入し、工具140を長手軸線周りに回転させることにより、雌ねじ部140Bを雄ねじ軸54にねじ係合させる。この状態で工具140を挿入孔102から引き出すことにより、スプール弁10が工具140によって引かれるようにして挿入孔102の開口端102Aから挿入孔102外に抜き出される。
抜き出される。
【0040】
このように、スプール弁10に雄ねじ軸54があることにより、雄ねじ軸54にねじ係合する雌ねじ部140Bを有する工具140を用いてスプール弁10を挿入孔102から作業性よく抜き出することができるようになる。これにより、挿入孔102が有底孔であっても、スプール弁10を挿入孔102から取り出すことができる。
【0041】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。鉤形部50は、L字形、径方向の貫通孔等、引っ掛け部を有する工具が引っ掛かって、スプール弁10を挿入孔102から抜き出すことができる形状であればよい。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 :スプール弁
12 :ハウジング本体
14 :スプリングピン
16 :スプリングピン
18 :エンドプラグ(ストッパ)
18A :外端面
18B :外周面
19 :ストッパ面
20 :エンドプラグ(ストッパ)
21 :ストッパ面
22 :弁ハウジング
24 :弁体
24A :端面
24B :端面
25 :切換ポート
26 :切換ポート
28 :切換ポート
30 :パイロットポート
32 :パイロットポート
34 :ランド部
36 :ランド部
40 :パイロット室
42 :パイロット室
44 :Oリング
46 :Oリング
48 :Oリング
50 :鉤形部(係合部)
50A :軸線方向スリット
50B :径方向スリット
52 :雌ねじ孔(係合部)
54 :雄ねじ軸(係合部)
100 :弁保持体
100A :外側面
102 :挿入孔
102A :開口端
104 :通路
106 :外部接続ポート
120 :工具
120A :シャンク部
120B :外方延出部(被係合部)
130 :工具
130A :シャンク部
130B :雄ねじ部(被係合部)
140 :工具
140A :シャンク部
140B :雌ねじ部(被係合部)
図1
図2
図3
図4
図5