IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-印刷システムおよびプリンタの調整方法 図1
  • 特許-印刷システムおよびプリンタの調整方法 図2
  • 特許-印刷システムおよびプリンタの調整方法 図3
  • 特許-印刷システムおよびプリンタの調整方法 図4
  • 特許-印刷システムおよびプリンタの調整方法 図5
  • 特許-印刷システムおよびプリンタの調整方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】印刷システムおよびプリンタの調整方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20221122BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20221122BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221122BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221122BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B41J2/21
H04N1/00 002A
G03G15/00 303
B41J2/01 451
H04N1/60 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018166021
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020037238
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 世新
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-328255(JP,A)
【文献】特開2005-096307(JP,A)
【文献】特開2015-202606(JP,A)
【文献】特開2008-066923(JP,A)
【文献】特開2016-203472(JP,A)
【文献】特開2011-126126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
H04N 1/00
G03G 15/00
H04N 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の記録媒体に所定のインクを吐出して、複数のテストパッチを含むテストチャートを印刷するインクヘッドと、
複数の前記テストパッチの所定の三次元色空間の色彩値および濃度値を測定する測色器と、
前記インクヘッドを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
基準となる基準記録媒体に前記所定のインクを吐出して印刷された複数の前記テストパッチを含む前記テストチャートの前記色彩値の変化軌跡であって、前記所定の三次元色空間を構成する第1の指標および第2の指標および第3の指標の少なくともいずれか2つの指標で表された基準平面または3つの指標で表された基準空間における基準変化軌跡を記憶する記憶部と、
前記所定の記録媒体に印刷された複数の前記テストパッチを含む前記テストチャートの前記色彩値の変化軌跡であって、前記基準変化軌跡が表された前記基準平面または前記基準空間における対象変化軌跡を、前記測色器によって測定された前記テストパッチの前記色彩値に基づいて取得する取得部と、
前記基準変化軌跡と前記対象変化軌跡との差が所定の閾値より大きい場合には前記所定の記録媒体が不適切であると判定し、かつ、前記基準変化軌跡と前記対象変化軌跡との差が前記所定の閾値以下の場合には前記所定の記録媒体が適切であると判定する判定部と、
前記判定部によって前記所定の記録媒体が適切であると判定されたとき、前記測色器によって測定された前記濃度値に基づいてキャリブレーションを実行する実行部と、を備えている、印刷システム。
【請求項2】
前記基準変化軌跡には、前記基準記録媒体の前記色彩値が含まれ、
前記対象変化軌跡には、前記所定の記録媒体の前記色彩値が含まれている、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記基準変化軌跡および前記対象変化軌跡は、前記基準空間において表されている、請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記所定の三次元色空間は、CIEL色空間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記基準変化軌跡および前記対象変化軌跡は、前記基準平面において表されている、請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記所定の三次元色空間はCIEL色空間であり、前記基準平面はa平面である、請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記所定のインクは、シアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクとを含み、
前記インクヘッドは、前記シアンインク、前記マゼンタインクおよび前記イエローインクごとに複数の前記テストパッチを含む前記テストチャートを印刷し、
前記基準変化軌跡および前記対象変化軌跡は、前記シアンインク、前記マゼンタインクおよび前記イエローインクを用いて印刷された複数の前記テストパッチの前記所定の三次元色空間の前記色彩値によって表されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項8】
所定の記録媒体に所定のインクを吐出して、複数のテストパッチを含むテストチャートを印刷すること、
複数の前記テストパッチの所定の三次元色空間の色彩値および濃度値を測定すること、
基準となる基準記録媒体に前記所定のインクを吐出して印刷された複数の前記テストパッチを含む前記テストチャートの前記色彩値の変化軌跡であって、前記所定の三次元色空間を構成する第1の指標および第2の指標および第3の指標の少なくともいずれか2つの指標で表された基準平面または3つの指標で表された基準空間における基準変化軌跡を準備すること、
前記所定の記録媒体に印刷された複数の前記テストパッチを含む前記テストチャートの前記色彩値の変化軌跡であって、前記基準変化軌跡が表された前記基準平面または前記基準空間における対象変化軌跡を、測色器によって測定された前記テストパッチの前記色彩値に基づいて取得すること、
前記基準変化軌跡と前記対象変化軌跡との差が所定の閾値より大きい場合には前記所定の記録媒体が不適切であると判定し、かつ、前記基準変化軌跡と前記対象変化軌跡との差が前記所定の閾値以下の場合には前記記録媒体が適切であると判定すること、
前記記録媒体が適切であると判定されたとき、測定された前記濃度値に基づいてキャリブレーションを実行すること、を包含する、プリンタの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよびプリンタの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクヘッドから所定のカラーインクを吐出して記録媒体にカラー印刷を行うプリンタでは、時間の経過と共に記録媒体に印刷される画像の色に変化が生じ得る。即ち、インクヘッドから吐出されるインク重量に変化が生じて、画像に色差が生じ得る。このため、画像の色の変化(即ち色差)をユーザが許容できる範囲に抑えるため、定期的にキャリブレーション(カラーキャリブレーションともいう)が行われている。
【0003】
キャリブレーションの方法としては、例えば、所定のカラーインクとしてのシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクの各色について、テストパッチを複数配列したテストチャートを記録媒体に印刷し、各テストパッチの濃度値を測色器で測定し、測定された濃度値が基準濃度値(各パッチに対して予め設定された基準となる濃度値)となるように、インクヘッドからのインクの吐出量を調整することが挙げられる。
【0004】
ここで、特許文献1には、所定の条件下でキャリブレーションを行う画像処理装置が開示されている。特許文献1に示す技術では、色差を用いることによってキャリブレーションを行うか否かを判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-123836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、色差が発生する理由には、インクヘッドからのインクの吐出量(即ちインク重量)が減少すること、インクの種類が異なること、記録媒体の種類が異なること等様々な要因がある。このため、印刷されたテストパッチの色差を比較するだけでは、色差が発生している要因を特定することができない。
【0007】
例えば、インクの種類や記録媒体の種類が、基準濃度値を測定したときのインクや記録媒体と異なっている場合にキャリブレーションを行ってしまうと、インクの吐出量を誤って設定することになる。言い換えると、誤った色補正を行ってしまうことになる。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、適切な条件下でキャリブレーションを行うことができる印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、キャリブレーションでは、インクの種類および記録媒体の種類を、基準濃度値を測定したときのインクおよび記録媒体と同じにすることが重要であることに気が付いた。そして、インクの種類を同じにすることは比較的容易である一方、記録媒体の種類を同じにすることが比較的難しいことに着目し、インクの種類が同じ場合に、記録媒体がキャリブレーションに適しているかをまず判断し、正しい場合にキャリブレーションを行うことにした。
【0010】
本発明に係る印刷システムは、所定の記録媒体に所定のインクを吐出して、複数のテストパッチを含むテストチャートを印刷するインクヘッドと、複数の前記テストパッチの所定の三次元色空間の色彩値および濃度値を測定する測色器と、前記インクヘッドを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、基準となる基準記録媒体に前記所定のインクを吐出して印刷された複数の前記テストパッチを含む前記テストチャートの前記色彩値の変化軌跡であって、前記所定の三次元色空間を構成する第1の指標および第2の指標および第3の指標の少なくともいずれか2つの指標で表された基準平面または3つの指標で表された基準空間における基準変化軌跡を記憶する記憶部と、前記所定の記録媒体に印刷された複数の前記テストパッチを含む前記テストチャートの前記色彩値の変化軌跡であって、前記基準変化軌跡が表された前記基準平面または前記基準空間における対象変化軌跡を、前記測色器によって測定された前記テストパッチの前記色彩値に基づいて取得する取得部と、前記基準変化軌跡と前記対象変化軌跡との差が所定の閾値より大きい場合には前記所定の記録媒体が不適切であると判定し、かつ、前記基準変化軌跡と前記対象変化軌跡との差が前記所定の閾値以下の場合には前記所定の記録媒体が適切であると判定する判定部と、前記判定部によって前記所定の記録媒体が適切であると判定されたとき、前記測色器によって測定された前記濃度値に基づいてキャリブレーションを実行する実行部と、を備えている。
【0011】
本発明の印刷システムによると、基準変化軌跡と対象変化軌跡との差が所定の閾値以下の場合には、制御装置の判定部は所定の記録媒体が適切であると判定する。そして、制御装置の実行部は、判定部によって所定の記録媒体が適切であると判定されたとき、測色器によって測定された濃度値に基づいてキャリブレーションを実行する。本願発明者は、同じインクでテストパッチを含むテストチャートを印刷した場合に、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであれば、各テストパッチの色彩値は相互に異なるものの、基準変化軌跡と対象変化軌跡との差がほとんどなく、その差が所定の閾値以下であれば所定の記録媒体と基準記録媒体とは実質的に同じであると推定できることを見出した。一方、同じインクでテストパッチを含むテストチャートを印刷した場合に、所定の記録媒体と基準記録媒体とが異なる場合には、基準変化軌跡と対象変化軌跡との差が大きく、その差が所定の閾値より大きければ所定の記録媒体と基準記録媒体とは相互に異なることを見出した。このように、キャリブレーションを実行する前に、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであるかを基準変化軌跡と対象変化軌跡とを用いて判定することができるため、記録媒体が異なるにもかかわらず、キャリブレーションを実行することが抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、適切な条件下でキャリブレーションを行うことができる印刷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る印刷システムの正面図である。
図2】一実施形態に係る印刷システムのブロック図である。
図3】一実施形態に係るテストチャートの模式図である。
図4】一実施形態に係る基準変化軌跡および対象変化軌跡が基準平面に表された図である。
図5】一実施形態に係るキャリブレーションの手順を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係る補正テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る印刷システムについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る印刷システム100の正面図である。図1に示すように、印刷システム100は、プリンタ10と、測色器60とを備えている。なお、本実施形態では、測色器60はプリンタ10に搭載されているが、測色器60は、プリンタ10とは別個独立して設けられていてもよい。この場合には、例えば、ユーザが測色器60を操作する。
【0016】
以下の説明では、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0017】
プリンタ10は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、家庭用のプリンタと比較すると主走査方向Yに長い、いわゆる大型のプリンタである。例えば、プリンタ10は業務用のプリンタである。本実施形態では、プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方に移動させると共に、主走査方向Yに移動するキャリッジ30に搭載された第1インクヘッド30A、第2インクヘッド30B、第3インクヘッド30Cおよび第4インクヘッド30Dから所定のインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0018】
記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板等の比較的厚みを有するものが含まれる。
【0019】
図1に示すように、プリンタ10は、本体部10aと、脚11と、操作パネル12と、プラテン16と、制御装置40とを備えている。本体部10aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有する。脚11は、本体部10aを支持するものであり、本体部10aの下面に設けられている。操作パネル12は、本体部10aの右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、例えば、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、例えば、解像度、インクの吐出量(インク重量)などの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ10のステータスなどが表示される表示部、および、印刷に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。
【0020】
プラテン16は、記録媒体5への印刷の際、記録媒体5を支持するものである。プラテン16には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷は、プラテン16上で行われる。プラテン16は主走査方向Yに延びている。プラテン16は、本体部10aに設けられている。
【0021】
図1に示すように、プリンタ10は、キャリッジ30と、ヘッド移動機構31とを備えている。ヘッド移動機構31は、プラテン16に載置された記録媒体5に対してキャリッジ30を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。ヘッド移動機構31は、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構31の構成は特に限定されない。ヘッド移動機構31は、ガイドレール20と、プーリ21と、プーリ22と、無端状のベルト23と、キャリッジモータ24(図2も参照)とを備えている。ガイドレール20は、キャリッジ30の主走査方向Yへの移動をガイドするものである。ガイドレール20は、プラテン16の上方に配置されている。ガイドレール20は、本体部10aに設けられている。ガイドレール20は主走査方向Yに延びている。プーリ21は、ガイドレール20の左端より左方に設けられている。プーリ22は、ガイドレール20の右端より右方に設けられている。ベルト23は、プーリ21とプーリ22とに巻き掛けられている。右側のプーリ22には、キャリッジモータ24が接続されている。ただし、キャリッジモータ24は、左側のプーリ21に接続されていてもよい。ここでは、キャリッジモータ24が駆動して、プーリ22が回転することで、プーリ21とプーリ22との間においてベルト23が走行する。
【0022】
キャリッジ30は、ベルト23に取り付けられている。キャリッジ30は、ガイドレール20に係合しており、ガイドレール20に摺動自在に設けられている。キャリッジ30には、第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dが搭載されている。キャリッジモータ24の駆動によってベルト23が走行して、キャリッジ30が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ30に搭載された第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dは主走査方向Yに移動する。
【0023】
プリンタ10は、媒体搬送機構32を備えている。媒体搬送機構32は、プラテン16に載置された記録媒体5をキャリッジ30に対して相対的に副走査方向X(図3参照)に移動させるものである。ここでは、媒体搬送機構32は、プラテン16に載置された記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。なお、媒体搬送機構32の構成は特に限定されない。媒体搬送機構32は、グリットローラ25と、ピンチローラ26と、フィードモータ27(図2参照)とを備えている。グリットローラ25は、プラテン16に設けられている。ここでは、グリットローラ25の一部はプラテン16に埋設されている。ピンチローラ26は、記録媒体5を上から押え付けるものである。ピンチローラ26は、グリットローラ25と上下方向で対向するように、グリットローラ25の上方に配置されている。ピンチローラ26は、記録媒体5の厚みに応じて、上下方向に移動可能に構成されていてもよい。なお、グリットローラ25およびピンチローラ26のそれぞれの配置位置および数は特に限定されない。本実施形態では、グリットローラ25およびピンチローラ26は、プラテン16の左端部および右端部にそれぞれ配置されている。フィードモータ27は、グリットローラ25に接続されている。グリットローラ25とピンチローラ26との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ27が駆動してグリットローラ25が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0024】
図1に示すように、第1インクヘッド30A、第2インクヘッド30B、第3インクヘッド30Cおよび第4インクヘッド30Dは、主走査方向Yに並ぶ。第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dは、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dは、副走査方向X(図3参照)に並ぶ複数のノズル(図示せず)を備えている。第1インクヘッド30Aは、例えば、シアンインクを記録媒体5に吐出する。第2インクヘッド30Bは、例えば、マゼンタインクを記録媒体5に吐出する。第3インクヘッド30Cは、例えば、イエローインクを記録媒体5に吐出する。第4インクヘッド30Dは、例えば、ブラックインクを記録媒体5に吐出する。なお、第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dから吐出されるインクは、上述のものに限定されない。第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dから記録媒体5にそれぞれインクが吐出されることによって、記録媒体5に画像や後述するテストチャートPC(図3参照)が形成される。
【0025】
図3に示すように、第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dが印刷するテストチャートPCは、主走査方向Yに21個のテストパッチP1~P21が並ぶように構成されている。21個のテストパッチP1~P21は、それぞれインクの吐出量(インク重量)を変えて形成されたテストパッチである。21個のテストパッチP1~P21は、それぞれ記録媒体5上の異なる領域に形成され、互いに重ならないように配置されている。テストパッチP1~P21は、左方からP1、P2、・・・P21の順に配置されている。また、1つのテストチャートPCは、異なる4色のインクによって着色された4つの領域から構成されている。上記4つの領域は、前後方向に並んでいる。本実施形態では、4色のインクは、後方から順に、シアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクYおよびブラックインクKである。なお、4色のインクの並びは特に限定されない。
【0026】
図3に示すように、21個のテストパッチP1~P21の後方には、それぞれ識別符号S1~S21が印刷されている。識別符号S1~S21は、それぞれ、その前方に形成されたテストパッチP1~P21におけるインクの吐出量(インク重量)に対応している。21個の識別符号S1~S21は、S1から順に、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100と印刷されている。識別符号S1~S21の単位は%である。識別符号S1~S21の数値[%]は、第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dから吐出されるインクの吐出量(インク重量)の最大値に対する割合である。例えば、テストパッチP1の印刷においては、シアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクY、ブラックインクKはインク重量の最大値に対して0%で吐出される。テストパッチP2の印刷においては、シアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクY、ブラックインクKはインク重量の最大値に対して5%で吐出される。以下同様に、右方のテストパッチに行くほどインク重量の最大値に対する割合は5%ずつ上がっていき、テストパッチP21では、インク重量の最大値(即ち100%)で吐出される。
【0027】
図1に示すように、測色器60はキャリッジ30に搭載されている。即ち、測色器60は、キャリッジ30が主走査方向Yに移動することに伴って、主走査方向Yに移動可能に構成されている。測色器60は、記録媒体5に印刷されたテストチャートPC(図3参照)の複数のテストパッチP1~P21の所定の三次元空間の色彩値および濃度値をそれぞれ測定する。測定された色彩値および濃度値は、制御装置40に送信される。所定の三次元色空間としては、CIEL色空間、CIEL色空間およびCIEXYZ色空間等が挙げられる。例えば、CIEL色空間の色彩値は、L値、a値、b値である。濃度値は、例えば、ステータスT濃度値である。測色器60としては、光の波長ごとに計測可能なスペクトル方式の分光光度計等が挙げられる。
【0028】
図2に示すように、制御装置40は、記録媒体5への印刷を制御する装置である。制御装置40の構成は特に限定されない。制御装置40は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。図1に示すように、制御装置40は、本体部10aの内部に設けられている。ただし、制御装置40は本体部10aの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置40は、本体部10aの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置40は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0029】
図2に示すように、制御装置40は、操作パネル12と、ヘッド移動機構31のキャリッジモータ24と、第1インクヘッド30A~第4インクヘッド30Dと、媒体搬送機構32のフィードモータ27と、測色器60と通信可能に接続しており、これらを制御する。
【0030】
図2に示すように、制御装置40は、記憶部42と、取得部44と、平均色差算出部46と、判定部48と、実行部50と、通知部52とを備えている。これら各部は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、これら各部は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0031】
記憶部42は、基準変化軌跡B(図4参照)を記憶する。基準変化軌跡Bは、予め記憶部42に記憶されている。基準変化軌跡Bは、キャリブレーションを行うときの基準となる基準色データに基づいて算出される。基準変化軌跡Bとは、基準となる基準記録媒体に所定のインクを吐出して印刷された複数のテストパッチP1~P21を含むテストチャートPCの所定の三次元色空間の色彩値の変化軌跡である。変化軌跡は、例えば、各テストパッチP1~P21の色彩値から算出される近似曲線である。基準変化軌跡Bは、所定の三次元色空間を構成する第1の指標および第2の指標および第3の指標の少なくともいずれか2つの指標で表された基準平面または3つの指標で表された基準空間における変化軌跡である。例えば、所定の三次元色空間がCIEL色空間である場合、第1の指標はL値であり、第2の指標はa値であり、第3の指標はb値である。図4に示す例では、基準変化軌跡Bは、基準平面において表されている。より詳細には、基準変化軌跡Bは、a平面において表されている。本実施形態では、基準変化軌跡Bは、シアンインクCのテストパッチP1~P21に基づいて算出された第1基準変化軌跡B1と、マゼンタインクMのテストパッチP1~P21に基づいて算出された第2基準変化軌跡B2と、イエローインクYのテストパッチP1~P21に基づいて算出された第3基準変化軌跡B3と、を含む。なお、シアンインクC、マゼンタインクMおよびイエローインクYのテストパッチP1の色彩値は、基準記録媒体の色彩値と同じである。図4では、基準変化軌跡Bは実線で表されている。
【0032】
図5は、キャリブレーションの手順を示すフローチャートである。ここでは、同一のプリンタ10においてキャリブレーションを行う場合を例に説明する。また、シアンインクC、マゼンタインクMおよびイエローインクYの色毎に、基準変化軌跡と対象変化軌跡との差が所定の閾値より大きいか否かを判定する場合を説明する。
【0033】
ステップS10において、シアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクY、ブラックインクKの各インクによって、複数のテストパッチP1~P21を含むテストチャートPCを所定の記録媒体に印刷する。なお、ここで用いられるシアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクY、ブラックインクKは、基準変化軌跡Bを取得するときに用いられたテストチャートを印刷したときのシアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクY、ブラックインクKと同じである。また、所定の記録媒体は、上述した基準記録媒体と同じ場合もあるし、異なる場合もある。
【0034】
ステップS20において、各テストパッチP1~P21の所定の三次元色空間の色彩値および濃度値をそれぞれ測定する。ここでは、測色器60によって、例えば、L値、a値、b値と、ステータスT濃度値とを取得する。取得された色彩値および濃度値は記憶部42に記憶される。
【0035】
ステップS30において、取得部44は、対象変化軌跡RA(図4参照)を取得する。取得された対象変化軌跡RAは、記憶部42に記憶される。対象変化軌跡RAは、ステップS20において測色器60によって測定された各テストパッチP1~P21の色彩値に基づいて算出される。対象変化軌跡RAとは、所定の記録媒体(基準記録媒体と同じ場合もあるし、基準記録媒体と異なる場合もある。)に所定のインク(基準変化軌跡Bを取得するときに用いられたテストチャートを印刷したときのインクと同じインク)を吐出して印刷された複数のテストパッチP1~P21を含むテストチャートPCの所定の三次元色空間の色彩値の変化軌跡である。対象変化軌跡RAは、基準変化軌跡Bが表された基準平面または基準空間における変化軌跡である。図4に示す例では、対象変化軌跡RAは、基準平面において表されている。より詳細には、対象変化軌跡RAは、a平面において表されている。本実施形態では、対象変化軌跡RAは、シアンインクCのテストパッチP1~P21に基づいて算出された第1対象変化軌跡RA1と、マゼンタインクMのテストパッチP1~P21に基づいて算出された第2対象変化軌跡RA2と、イエローインクYのテストパッチP1~P21に基づいて算出された第3対象変化軌跡RA3と、を含む。なお、シアンインクC、マゼンタインクMおよびイエローインクYのテストパッチP1の色彩値は、所定の記録媒体の色彩値と同じである。なお、図4では、対象変化軌跡RAは、一点鎖線で表されている。また、図4には、対象変化軌跡RAとは異なる例として二点鎖線で表された対象変化軌跡RBが図示されている。対象変化軌跡RBは、対象変化軌跡RAと同様にして取得される。対象変化軌跡RBと対象変化軌跡RAとの軌跡が異なるのは、テストチャートPCを印刷するときに用いた記録媒体が異なるからである。
【0036】
ステップS40において、平均色差算出部46は、シアンインクC、マゼンタインクMおよびイエローインクYの色毎に、a平面における基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差(平均色差)を取得する。平均色差算出部46は、対象変化軌跡RAの第1対象変化軌跡RA1と基準変化軌跡Bの第1基準変化軌跡B1との差を取得する。平均色差算出部46は、シアンインクCの各テストパッチP1~P21の色彩値(ここではa値およびb値)と第1基準変化軌跡B1との最短距離(色差Δab)をそれぞれ算出する。図4の矢印L1は、シアンインクCのテストパッチP2の色彩値と第1基準変化軌跡B1との色差Δabを表している。矢印L1から明らかなように、第1対象変化軌跡RA1のテストパッチP2の色彩値と第1基準変化軌跡B1との色差Δabは、第1対象変化軌跡RA1のテストパッチP2の色彩値と第1基準変化軌跡B1のテストパッチP2の色彩値との色差ではなく、第1対象変化軌跡RA1のテストパッチP2の色彩値と第1基準変化軌跡B1との最短距離である。平均色差算出部46は、シアンインクCの各テストパッチP1~P21の色彩値について第1基準変化軌跡B1との色差Δabをそれぞれ算出し、これらを平均したC平均色差Δabを取得する。
【0037】
また、平均色差算出部46は、対象変化軌跡RAの第2対象変化軌跡RA2と基準変化軌跡Bの第2基準変化軌跡B2との差(平均色差)を取得する。平均色差算出部46は、マゼンタインクMの各テストパッチP1~P21の色彩値と第2基準変化軌跡B2との色差Δabをそれぞれ算出する。図4の矢印L2は、シアンインクCのテストパッチP2の色彩値と第2基準変化軌跡B2との色差Δabを表している。平均色差算出部46は、マゼンタインクMの各テストパッチP1~P21の色彩値について第2基準変化軌跡B2との色差Δabをそれぞれ算出し、これらを平均したM平均色差Δabを取得する。
【0038】
さらに、平均色差算出部46は、対象変化軌跡RAの第3対象変化軌跡RA3と基準変化軌跡Bの第3基準変化軌跡B3との差(平均色差)を取得する。平均色差算出部46は、イエローインクYの各テストパッチP1~P21の色彩値と第3基準変化軌跡B3との色差Δabをそれぞれ算出する。平均色差算出部46は、イエローインクYの各テストパッチP1~P21の色彩値について第3基準変化軌跡B3との色差Δabをそれぞれ算出し、これらを平均したY平均色差Δabを取得する。
【0039】
ステップS50において、判定部48は、ステップS10において用いられた所定の記録媒体が適切であるか否かを判定する。即ち、判定部48は、所定の記録媒体が基準記録媒体とほとんど差がないか否かを判定する。判定部48は、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差(ここではC平均色差Δab)が所定の閾値T1より大きいか否かを判定する。判定部48は、C平均色差Δabが所定の閾値T1より大きい場合には、所定の記録媒体が不適切であると判定し、ステップS90に進む。一方、判定部48は、C平均色差Δabが所定の閾値T1以下の場合には、所定の記録媒体が適切であると判定し、ステップS60に進む。ここで、所定の閾値T1は、予め記憶部42に記憶されている。閾値T1は、例えば、2~5(例えば3)に設定されている。
【0040】
ステップS60において、判定部48は、ステップS10において用いられた所定の記録媒体が適切であるか否かを判定する。判定部48は、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差(ここではM平均色差Δab)が所定の閾値T2より大きいか否かを判定する。判定部48は、M平均色差Δabが所定の閾値T2より大きい場合には、所定の記録媒体が不適切であると判定し、ステップS90に進む。一方、判定部48は、M平均色差Δabが所定の閾値T2以下の場合には、所定の記録媒体が適切であると判定し、ステップS70に進む。ここで、所定の閾値T2は、予め記憶部42に記憶されている。閾値T2は、例えば、2~5(例えば3)に設定されている。閾値T2は、例えば、閾値T1と同じである。
【0041】
ステップS70において、判定部48は、ステップS10において用いられた所定の記録媒体が適切であるか否かを判定する。判定部48は、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差(ここではY平均色差Δab)が所定の閾値T3より大きいか否かを判定する。判定部48は、Y平均色差Δabが所定の閾値T3より大きい場合には、所定の記録媒体が不適切であると判定し、ステップS90に進む。一方、判定部48は、Y平均色差Δabが所定の閾値T3以下の場合には、所定の記録媒体が適切であると判定し、ステップS80に進む。ここで、所定の閾値T3は、予め記憶部42に記憶されている。閾値T3は、例えば、2~5(例えば3)に設定されている。閾値T3は、例えば、閾値T1と同じである。
【0042】
ステップS80において、判定部48によって所定の記録媒体が適切であると判定されたため、実行部50は、ステップS20において測色器60によって測定された濃度値に基づいてキャリブレーションを実行する。これにより、図6に示すような補正テーブルが取得される。図6では、横軸に補正前のインク重量の割合[%]が表示され、縦軸に補正後のインク重量の割合[%]が表示されている。取得された補正テーブルは、記憶部42に記憶される。また、キャリブレーションが行われたプリンタ10では、印刷を行うときにステップS80で取得された補正テーブルが用いられる。
【0043】
ステップS90において、判定部48によって所定の記録媒体が不適切であると判定されたため、通知部52は、ユーザにステップS10で用いた所定の記録媒体が不適切であることを通知(即ち記録媒体の異常を通知)する。なお、通知方法は特に限定されず、例えば、視覚的な表示、音声等による通知が挙げられる。本実施形態では、操作パネル12を通じて視覚的に作業者に対する通知を行う。記録媒体が不適切であるため、実行部50は、キャリブレーションを実行せず、処理を終了する。
【0044】
以上のように、本実施形態の印刷システム100によると、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差(C平均色差Δab、M平均色差ΔabおよびY平均色差Δab)が所定の閾値(閾値T1、閾値T2および閾値T3)以下の場合には、制御装置40の判定部48は所定の記録媒体が適切であると判定する。そして、制御装置40の実行部50は、判定部48によって所定の記録媒体が適切であると判定されたとき、測色器60によって測定された濃度値に基づいてキャリブレーションを実行する。本願発明者は、同じインクでテストパッチP1~P21を含むテストチャートPCを印刷した場合に、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであれば、各テストパッチP1~P21の色彩値は相互に異なるものの、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差がほとんどなく、その差が所定の閾値以下であれば所定の記録媒体と基準記録媒体とは実質的に同じであると推定できることを見出した。一方、同じインクでテストパッチP1~P21を含むテストチャートPCを印刷した場合に、所定の記録媒体と基準記録媒体とが異なる場合には、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差が大きく、その差が所定の閾値より大きければ所定の記録媒体と基準記録媒体とは相互に異なることを見出した。このように、キャリブレーションを実行する前に、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであるかを基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとを用いて判定することができるため、記録媒体が異なるにもかかわらず、キャリブレーションを実行することが抑制される。
【0045】
本実施形態の印刷システム100では、基準変化軌跡Bには、基準記録媒体の色彩値が含まれ、対象変化軌跡RAには、所定の記録媒体の色彩値が含まれている。基準記録媒体の色彩値(例えば白の色彩値)や所定の記録媒体の色彩値(例えば白の色彩値)は、所定の三次元色空間において、原点、最大値または極限値であったりするため、軌跡を比較するときの基準として分かり易い。このため、基準記録媒体の色彩値と所定の記録媒体の色彩値とがさらに含まれることによって、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差をより精度よく求めることができる。
【0046】
本実施形態の印刷システム100では、基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAは、基準平面において表されている。このように、基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAは、所定の三次元色空間を構成する第1の指標および第2の指標および第3の指標のいずれか2つの指標で表された基準平面で表されているため、基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差をより容易に求めることができる。
【0047】
本実施形態の印刷システム100では、所定の三次元色空間はCIEL色空間であり、基準平面はa平面である。これにより、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであるかをより高精度に判定することができる。
【0048】
本実施形態の印刷システム100では、基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAは、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを用いて印刷された複数のテストパッチP1~P21のCIEL色空間の色彩値によって表されている。このように、複数のインクを用いて基準変化軌跡Bと対象変化軌跡RAとの差を求めることができるため、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであるかをより高精度に判定することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0050】
上述した実施形態では、基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAは、基準平面において表されているが、これに限定されない。基準変化軌跡および対象変化軌跡は、基準空間において表されていてもよい。これにより、基準変化軌跡および対象変化軌跡は、所定の三次元色空間を構成する第1の指標および第2の指標および第3の指標の全てで表された基準空間で表されるため、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであるかをより高精度に判定することができる。この場合、所定の三次元色空間は、例えば、CIEL色空間である。これにより、所定の記録媒体と基準記録媒体とが同じであるかをより高精度に判定することができる。また、CIEL色空間は他の三次元色空間と比較して色の変化がより均一である。即ち、CIEL色空間にある2つの色(2つのポイント)間の空間距離が一定であれば、その2つの色の所在する位置が変わっても、2つの色の目視での差はほぼ一定である。このため、CIEL色空間において、基準変化軌跡Bの各パッテストパッチと対象変化軌跡RAの各テストパッチとの差は、各テストパッチの位置に関わらず、同じ重みづけで平均を取ることができる。
【0051】
上述した実施形態では、基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAは、CIEL色空間のa平面において表されているが、これに限定されない。基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAは、CIEL色空間のL平面やL平面において表されていてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、シアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクYの各インクによって、印刷されたテストチャートPCに基づいて基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAを取得していたが、これに限定されない。シアンインクC、マゼンタインクMおよびイエローインクYの少なくとも一色を用いればよい。なお、一色の場合には、シアンインクCかマゼンタインクMを用いるとよい。また、シアンインクC、マゼンタインクMおよびイエローインクYに加えて、ブラックインクKによって印刷されたテストチャートPCに基づいて基準変化軌跡Bおよび対象変化軌跡RAを取得してもよい。
【0053】
上述した実施形態では、同一のプリンタ10においてキャリブレーションを行う場合を例に説明したが、複数のプリンタ間において、1つの基準プリンタの色に合わせるように他のプリンタにおいてキャリブレーションを行ってもよい。この場合、1つの基準プリンタの基準変化軌跡と、他のプリンタの対象変化軌跡との差を比較することなる。
【符号の説明】
【0054】
10 プリンタ
30A~30D 第1インクヘッド~第4インクヘッド
40 制御装置
42 記憶部
44 取得部
48 判定部
50 実行部
60 測色器
100 印刷システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6