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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20221122BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20221122BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20221122BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20221122BHJP
   G08B 29/06 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G01R31/52
G01R31/56
G01R31/58
G08B29/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018184622
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020052963
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 隆文
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-067032(JP,A)
【文献】特開平10-061400(JP,A)
【文献】特開平05-066240(JP,A)
【文献】特開平06-004783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-17/12
G08B 19/00-31/00
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線に流れる電流値をサンプリングして測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果を記録する記録手段と、
前記記録手段に記録された測定結果に基づいて、前記信号線に対する外部からのノイズを検知する検知手段と
を備える防災システム。
【請求項2】
信号線に流れる電流値をサンプリングして測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果を記録する記録手段と、
前記記録手段に記録された測定結果をグラフで表示する表示手段と、
前記記録手段に記録された測定結果に基づいて、前記信号線に対する外部からのノイズを検知する検知手段
を備える防災システム。
【請求項3】
前記サンプリングの周期が1秒未満である
請求項1または請求項2に記載の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
防災受信盤と端末機器で構成されるトンネル防災システムにおいては、手動通報装置、消火栓起動装置、ダクト温度検知器等の端末機器は、防災受信盤に信号回線で接続される。この信号回線がどのような状態にあるかを調べる発明として、例えば特許文献1に開示されたトンネル防災システムがある。このトンネル防災システムは、複数の信号回線から一の信号回線を順次選択し、選択した信号回線を制御部のAD変換ポートに接続する。制御部は、接続された信号回線からAD変換ポートに入力される信号をサンプリングすることにより、信号回線に流れる電流を測定して記録する。測定結果は、例えば、特許文献2に開示されているトンネル防災システムのように、防災受信盤が備えるメインモニタ装置やサブモニタ装置で表示することにより、ユーザが信号回線の絶縁の劣化等、信号回線がどのような状態にあるのかを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-34489号公報
【文献】特開2018-45541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信号回線に対しては、例えば、誘導ノイズや電波ノイズ、雷サージなどの外部からのノイズが影響することがある。外部からのノイズが影響した信号回線を測定すると、絶縁の低下が生じていなくても測定結果が異常な値を示すことがあり、信号回線の状態を正確に把握できないこととなる。
【0005】
本発明は、信号線の絶縁劣化の判定に影響する外部からのノイズの有無を判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る防災システムは、信号線に流れる電流値をサンプリングして測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果を記録する記録手段と、前記記録手段に記録された測定結果をグラフで表示する表示手段とを備える。
【0007】
(2)本発明に係る防災システムは、(1)に記載の構成において、前記記録手段に記録された測定結果に基づいて、前記信号線に対する外部からのノイズを検知する検知手段を備えることを特徴とする。
【0008】
(3)また、本発明に係る防災システムは、(1)または(2)の構成において、前記サンプリングの周期が1秒未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の(1)の構成によれば、信号線の絶縁劣化の判定に影響する外部からのノイズの有無を判定することができる。
上記の(2)の構成によれば、信号線の絶縁劣化の判定に影響する外部からのノイズを検知することができる。
上記の(3)の構成によれば、信号線の絶縁劣化の判定に影響する外部からのノイズの有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る防災システム1の構成を説明する図。
図2】伝送部102の構成を示したブロック図。
図3】測定回路202a、測定回路202c、測定回路202dの詳細を示した図。
図4】GOT104が表示するGUI画面の一例を示した図。
図5】GOT104が表示するGUI画面の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
(全体構成)
図1は、防災システム1の概要を示した図である。防災システム1は、トンネル内で発生する火災の拡大を防ぐためのシステムである。図1においては、自動車専用道路で上り線のトンネル2aと下り線のトンネル2bを有するトンネルに係る防災システム1の概要を示している。
【0012】
トンネル2aとトンネル2bの壁面には、トンネルの延伸方向に沿って予め定められた間隔で火災検知器32が設置されている。火災検知器32は、トンネルの上流側と下流側を監視して火災による炎を検知する。火災による炎が火災検知器32により検知されると、火災信号が流れる。
【0013】
トンネル2aとトンネル2bには、トンネルの延伸方向に沿って換気や排気のためのダクトが設けられており、ダクト内においては、予め定められた間隔で温度検知器31が設置されている。温度検知器31は、接点手段として機能するスイッチを備えており、火災によりダクト内の温度が上昇すると、このスイッチがオンとなり、温度検知信号が流れる。
【0014】
また、トンネル2aとトンネル2bの監視員通路の壁面には、監視員通路の延伸方向に沿って、予め定められた間隔で消火栓装置33と手動通報装置34が設置されている。
【0015】
消火栓装置33は、初期消火用の放水設備であり、ノズル付きホースが接続された消火栓と消火器を扉内に収納している。火災時には消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出し、消火栓弁開閉レバーを開操作すると、消火栓へ給水を行うための消火栓起動スイッチがオンとなり、起動信号が流れる。起動信号が流れると、消火栓に給水を行う消火ポンプが起動し、ホースのノズルから消火用水が放水される。
【0016】
また、消火栓装置33には、消防隊が使用する給水栓と、給水栓へ給水を行う消火ポンプを起動する給水栓起動スイッチが設けられている。消防隊の操作により給水栓起動スイッチがオンとなると、起動信号が流れる。起動信号が流れると、消火ポンプが起動し、給水栓へ給水が行われる。なお、給水栓は必須の構成ではないため、消火栓装置33は、給水栓を備えていない構成であってもよい。
【0017】
なお、消火栓起動スイッチと給水栓起動スイッチは、共に同じ消火ポンプを起動させるための起動信号を出力するスイッチであることから、以下、消火栓起動スイッチおよび給水栓起動スイッチを起動スイッチと称する場合がある。
【0018】
手動通報装置34は、火災を知らせるための装置であり、押しボタンが操作されてスイッチがオンとなると、火災通報信号が流れる。なお、押しボタン式である手動通報装置は、トンネル2aとトンネル2bの壁面に設けられた非常電話機にも設置されている。
【0019】
手動通報装置34、消火栓装置33および温度検知器31は、本発明に係る端末機器の一例である。
【0020】
防災受信盤10は、トンネル内の異常を検知する機能を有し、火災の発生を報知し、他の設備と連動してトンネル内の火災の拡大を防ぐ設備である。防災受信盤10は、トンネルの通信機械室に設置されている。防災受信盤10は、P型のシステムであり、温度検知器31に接続されている信号線11a、火災検知器32に接続されている信号線11b、手動通報装置34に接続されている信号線11d、および起動スイッチに接続されている信号線11cが接続されている。
【0021】
温度検知器31に接続する信号線11aは、トンネル内を分割した複数の区画毎に設けられており、複数の信号線11aの各々は、対応する区画に設置されている温度検知器31に接続されている。火災検知器32に接続する信号線11bは、トンネル内を分割した複数の区画毎に設けられており、複数の信号線11bの各々は、対応する区画に設置されている火災検知器32に接続されている。手動通報装置34に接続する信号線11dは、トンネル内を分割した複数の区画毎に設けられており、複数の信号線11dの各々は、対応する区画に設置されている手動通報装置34に接続されている。起動スイッチに接続する信号線11cは、トンネル内を分割した複数の区画毎に設けられており、複数の信号線11cの各々は、対応する区画に設置されている起動スイッチに接続されている。
【0022】
また、防災システム1は、消火ポンプの制御と、ダクトを冷却するダクト冷却ポンプの制御を行うポンプ制御盤21を備える。
【0023】
(防災受信盤10の構成)
防災受信盤10は、制御部101、伝送部102、通信部103、GOT104、操作部105、警報部106、ポンプ制御部107、表示部108、および記憶部109を備える。
【0024】
制御部101は、所謂PLC(Programmable Logic Controller)であり、CPUおよびメモリを有するCPUユニット、電源ユニット、AD変換機能を有する入力ポートを含む各種の入力ポートおよび出力ポートを備えた入出力ユニットを備える。
【0025】
伝送部102は、信号線11a、信号線11b、信号線11cおよび信号線11dに接続されている。伝送部102は、温度検知信号、火災信号、起動信号、および火災通報信号を制御部101へ供給する。
【0026】
GOT(Graphic Operation Terminal)104は、タッチパネルを備えた入出力装置である。GOT104は、制御部101と協働して各種のGUI画面を表示し、GUI画面に対して行われた操作を受け付ける。GOT104は、信号線11a、信号線11cおよび信号線11dを流れる電流の測定結果の表示や、電流の測定に係る設定画面の表示などを行う。また、GOT104は、USB端子を備えており、USB端子に接続されたUSBメモリに対して各種データを出力する。
【0027】
通信部103は、通信ネットワーク3を介して外部の上位設備である遠隔制御設備30と通信を行うための通信インターフェースとして機能する。操作部105は、防災受信盤10を操作するための各種スイッチやボタンを有する。警報部106は、スピーカ、主音響装置、警報表示灯を有し、火災発生時に警報を発する。ポンプ制御部107は、ポンプ制御盤21を制御し、消火ポンプやダクト冷却ポンプの制御を行う。表示部108は、液晶ディスプレイ装置を有し、火災の発生の警報表示や、信号線11a、信号線11cおよび信号線11dを流れる電流の異常表示などを行う。記憶部109は、例えば、メモリカードなどの不揮発性メモリであり、伝送部102に接続されている信号線に流れる電流の測定結果を記憶する。記憶部109は、本発明に係る記録手段の一例である。なお、制御部101は、PLCに限定されるものではなく、CPU、メモリ、入出力ユニットを備えたマイクロコンピュータまたはパーソナルコンピュータであってもよい。また、本実施形態においては、表示部108と操作部105とが、防災受信盤10の筐体の盤面に配置されてメイン表示操作部を構成し、GOT104が、筐体の扉の内側に配置されてサブ表示操作部を構成し、別々の構成となっているが、一体の構成であってもよい。
【0028】
(伝送部102の構成)
図2は、伝送部102の構成を示したブロック図である。トンネル内を分割した複数の区画5の各々には、区画5に配置されている温度検知器31、消火栓装置33、手動通報装置34が含まれる。伝送部102は、トンネル内を分割した複数の区画5毎に入出力ユニット200を備えている。
【0029】
入出力ユニット200は、信号受信部201a、信号受信部201cおよび信号受信部201dを有する。信号受信部201aは、対応する区画5に含まれる温度検知器31に信号線11aで接続されている。信号受信部201cは、対応する区画5に含まれる消火栓装置33に信号線11cで接続されている。信号受信部201dは、対応する区画5に含まれる手動通報装置34に信号線11dで接続されている。
【0030】
また、入出力ユニット200は、測定回路202a、測定回路202cおよび測定回路202dを有する。測定回路202aは、信号線11aに流れる電流を測定するための回路である。測定回路202cは、信号線11cに流れる電流を測定するための回路である。測定回路202dは、信号線11dに流れる電流を測定するための回路である。
【0031】
図3は、測定回路202a、測定回路202cおよび測定回路202dの詳細を示した図である。信号線11a、信号線11cおよび信号線11dは、具体的には、信号ラインLとコモンラインCで構成されている。信号ラインLは抵抗R2を介して電源電圧Vcに接続されてプルアップされて直流信号が流れており、コモンラインCはグランドに接続されている。
【0032】
信号ラインLとコモンラインCからなる信号線11aには、温度検知器31に設けられているスイッチSWaおよび終端抵抗R1が並列に接続されており、通常状態でスイッチSWaは図示したようにオフとなっている。
【0033】
信号ラインLとコモンラインCからなる信号線11cには、消火栓装置33に設けられている起動スイッチSWcおよび終端抵抗R1が並列に接続されており、通常状態で起動スイッチSWcは図示したようにオフとなっている。
【0034】
信号ラインLとコモンラインCからなる信号線11dには、手動通報装置34に設けられているスイッチSWdおよび終端抵抗R1が並列に接続されており、通常状態でスイッチSWdは図示したようにオフとなっている。
【0035】
スイッチSWaがオフしている通常状態では、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧は電源電圧Vcとなっており、この電圧が信号受信部201aに入力されている。スイッチSWaのいずれかが温度上昇によりオンとなると、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧が低下する。信号受信部201aは、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧が予め定められた電圧より低下した場合、温度検知信号を制御部101へ出力する。
【0036】
また、起動スイッチがオフしている通常状態では、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧は電源電圧Vcとなっており、この電圧が信号受信部201cに入力されている。起動スイッチSWcのいずれかがオンとなると、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧が低下する。信号受信部201cは、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧が予め定められた電圧より低下した場合、起動信号を制御部101へ出力する。
【0037】
スイッチSWdがオフしている通常状態では、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧は電源電圧Vcとなっており、この電圧が信号受信部201dに入力されている。押しボタンが操作されてスイッチSWdのいずれかがオンとなると、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧が低下する。信号受信部201dは、信号ラインLとコモンラインCの間の電圧が予め定められた電圧より低下した場合、火災通報信号を制御部101へ出力する。
【0038】
測定回路202a、測定回路202cおよび測定回路202dは、信号ラインLとコモンラインCとの間の電圧を検出するための回路であり、信号ラインLに接続する信号ラインLaを有する。なお、測定回路202a、測定回路202cおよび測定回路202dは、図示した回路に限定されるものではなく、信号ラインLにおいて信号ラインLaが接続されている点とコモンラインCとの間の電圧を信号ラインLに流れる電流の増加に応じて変化させる回路であればよい。
【0039】
選択部210は、接続される複数の信号ラインLa毎にリレー回路を備えている。選択部210においては、制御部101からの制御信号によりリレー回路が動作し、複数の信号ラインLaのうちの一つがリレー回路により制御部101のAD変換ポートに接続される。
【0040】
(制御部101の構成)
制御部101においては、CPUがプログラムを実行することにより、本発明に係る電流測定部1001、検知部1002、監視部1004、GUI部1005を実現する。
【0041】
監視部1004は、伝送部102から供給される信号に応じて各部を制御する。監視部1004は、例えば、手動通報装置34の操作による火災通報信号を受信した場合、警報部106を制御して主音響装置を鳴動させ、表示部108を制御して火災表示と手動通報区画表示を行う。また、監視部1004は、火災通報信号を受信した場合、ポンプ制御部107でポンプ制御盤21を制御して消火ポンプを起動する。
【0042】
また、監視部1004は、ダクト内温度が上昇したことにより温度検知信号を受信した場合、ポンプ制御部107でポンプ制御盤21を制御して冷却ポンプを起動し、ダクト内に設置されているヘッドから散水してダクト内を冷却する制御を行う。
【0043】
電流測定部1001は、信号線11a、信号線11cおよび信号線11dに流れる電流の電流値を測定し、測定結果を記憶部109に記録する。具体的には、電流測定部1001は、信号ラインLaとグランド間の電圧VaをAD変換ポートで測定することにより、信号ラインLに流れる電流の電流値Iを、例えば、I=(Vc-Va)/R2の式で算出する。電流測定部1001は、本発明に係る測定手段の一例である。
【0044】
電流測定部1001は、一日の予め定められた時刻になると、選択部210を制御し、選択部210に接続されている信号ラインLaを順次AD変換ポートへ接続する。電流測定部1001は、接続された信号ラインLa毎に電圧を測定し、接続された信号ラインLaに流れる電流の電流値Iを、測定した電圧から算出し、算出した電流値を記憶部109に記録する。
【0045】
また、電流測定部1001は、全ての信号ラインLに流れる電流の測定を指示する操作がGOT104において行われた場合には、選択部210を制御して信号ラインLaを順次AD変換ポートへ接続する。電流測定部1001は、接続された信号ラインLa毎に電圧を測定し、接続された信号ラインLaに流れる電流の電流値を測定した電圧から算出し、算出した電流値を記憶部109に記録する。
【0046】
また、電流測定部1001は、電流値を測定する信号ラインLがGOT104において選択され、選択された信号ラインLに流れる電流の測定を指示する操作がGOT104において行われた場合には、選択された信号ラインLに接続されている信号ラインLaをAD変換ポートに接続する。電流測定部1001は、接続された信号ラインLaの電圧を測定し、接続された信号ラインLaに流れる電流の電流値を測定した電圧から算出し、算出した電流値を記憶部109に記録する。
【0047】
電流測定部1001は、電圧Vaの測定の際には、選択部210を制御した後、信号ラインLaとグランド間の電圧Vaのサンプリングを予め設定された時間が経過した後で開始する。電流測定部1001は、電圧Vaのサンプリングを開始してから予め定められた時間が経過するとサンプリングを終了する。サンプリングの周期は、予め設定されて記憶部109に記憶されており、電流測定部1001は、記憶部109に記憶されている周期でサンプリングを行う。サンプリングの周期は、例えば、1秒未満の周期が設定される。また、サンプリングを行う時間も予め設定されて記憶部109に記憶されており、電流測定部1001は、記憶部109に記憶されている時間の間、サンプリングを行う。サンプリングを行う時間は、秒単位で設定される。サンプリングの周期とサンプリングを行う時間は、ユーザにより変更が可能であり、GOT104を操作することにより変更することができる。
【0048】
電流測定部1001は、サンプリング毎に得た電圧Va毎に電流値Iを算出し、算出した電流値Iと、算出した電流値Iの平均値を記憶部109に記録する。電流測定部1001は、本発明に係る記録手段の一例でもある。
【0049】
信号ラインLに流れる電流が増加すると、信号ラインLとコモンラインCとの間の電圧Vaが流れる電流の増加に比例して増加する。例えば、信号線11aの絶縁が劣化すると、絶縁抵抗が低下し、信号線11aを流れる電流が増加するため、信号ラインLとコモンラインCとの間の電圧Vaが増加する。電圧Vaが変化すると、前述の式で得られる電流値Iが変化するため、電流測定部1001が信号ラインLに流れる電流を測定し、記憶部109に記憶された電流値Iの変化を監視することにより、信号線の絶縁低下を判定することができる。
【0050】
検知部1002は、記憶部109に記録された電流値Iを解析し、信号線の絶縁低下や信号線の信号に外部から重畳したノイズや雷サージを検知する。検知部1002は、本発明に係る検知手段の一例である。
【0051】
GUI部1005は、GOT104に対して行われた操作や操作部105で行われた操作に応じてGOT104で各種画面を表示する。例えば、GUI部1005は、測定した電流値の測定結果を表示する操作が行われた場合、記憶部109に記憶されている測定結果を、GOT104で表示する。GOT104で測定結果を表示する際は、測定結果を値で表示することや、サンプリングによる経時的な電流値の変化をグラフで表示することができる。GUI部1005は、本発明に係る表示手段の一例である。
【0052】
(実施形態の動作例)
次に、電流測定部1001が測定を行い、信号線11a、信号線11cおよび信号線11dに対する外部からのノイズを検知するときの動作例について説明する。
【0053】
図4は、信号線11a、信号線11cおよび信号線11dに流れる電流の測定を行うときにGOT104が表示するGUI画面(自動測定画面)の一例である。例えば、信号線11a、信号線11cおよび信号線11dを点検する利用者により図4に示したボタンB3を押す操作が行われると、電流測定部1001は、選択部210を制御して信号ラインLaを順次AD変換ポートへ接続する。電流測定部1001は、接続された信号ラインLa毎に電圧を測定し、接続された信号ラインLaに流れる電流の電流値を測定した電圧から算出し、算出した電流値と電流値の平均値を記憶部109に記録する。電流測定部1001は、一の信号ラインLaについて、流れる電流値の測定を終える毎にGUI画面を更新して平均値を表示する。例えば、電流測定部1001は、信号ラインLaの識別のために信号ラインLaの各々に付与されている回線番号が003の信号ラインLaについて測定が終了すると、算出した電流値の平均値を「No.」の列の「003」の行に表示する。なお、図4の画面例では、各回線番号に対応して、電流値を異常と判断するしきい値下限、電流値を異常と判断するしきい値上限、および電流値の測定値が表示されている。
【0054】
検知部1002は、算出した電流値の最小値と最大値の差が予め定められたしきい値未満であり、算出した平均値がしきい値上限以上またはしきい値下限以下であると判定した場合、信号線の電流値異常と判定し、信号線の絶縁低下を検知する。GUI部1005は、検知部1002が信号線の絶縁低下を検知すると、絶縁低下が検知された回線番号の測定値の欄をハイライト表示する。なお、電流値異常と判定する条件として、算出した電流値の最小値と最大値の差が予め定められたしきい値未満であるとの条件は、必須としなくてもよい。
【0055】
ところで、電流値の測定結果は、信号線の絶縁が低下していなくとも、サンプリングを行っているときに雷サージ、誘導ノイズ、電波ノイズなどが信号線の信号に重畳した場合、異常な値となる場合がある。ユーザは、電流測定部1001の各サンプリングの測定結果を確認することにより、雷サージ、誘導ノイズ、電波ノイズの発生を判定することができる。
【0056】
本実施形態においては、電流測定部1001がサンプリングして得た測定結果は、グラフにしてGOT104に表示することができる。例えば、図4の画面において信号回線の「No.」の列のいずれかの行を選択した後、図4に示したグラフ表示のボタンB1をユーザが操作すると、GOT104は、選択された回線番号の電流値の測定結果のグラフを表示する。
【0057】
図5は、ボタンB1を操作することによりGOT104に表示される画面の一例を示した図である。図5に示したように、電流値が急激に変化したあとに減少して収束した場合、ユーザは、信号線にサージ電流が発生したことをグラフの波形から判定することができる。また、図示していないが、ユーザは、グラフにおいて電流が変化している状態が継続している場合には、誘導ノイズや電波ノイズが発生したことをグラフの波形から判定することができる。
【0058】
本実施形態によれば、電流の測定結果の経時的な変化をグラフで表示するため、ユーザが電流値の変化をグラフで見て信号線に対する外部からのノイズの有無を判定することができる。
【0059】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態および以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0060】
本発明においては、検知部1002は、サンプリングによる測定結果を解析することにより、ノイズの重畳や雷サージを検知してもよい。例えば、電流測定部1001がサンプリングを行っている期間中において、誘導ノイズや電波ノイズが信号線の信号に重畳した場合、サンプリングした電流値が変動し、変動の期間が継続する。検知部1002は、算出した電流値が予め定められた範囲外である期間が、予め定められた時間を超えている場合、信号線に誘導ノイズまたは電波ノイズが重畳していると判定し、信号線へのノイズの重畳を検知する。GUI部1005は、検知部1002が、信号線へのノイズの重畳を検知すると、測定値の欄の背景を、予め定められた色に変更してもよい。
【0061】
また、電流測定部1001がサンプリングを行っている期間中において、信号線にサージ電流が発生した場合、サンプリングした電流値が急激に変動する。検知部1002は、電流値の経時的な測定結果において、算出した電流値が予め定められた値を超えた期間が予め定められた時間内である場合、サージ電流が発生したと判定し、信号線にサージ電流が発生したことを検知する。GUI部1005は、検知部1002が、信号線にサージ電流が発生したことを検知すると、測定値の欄の背景を、予め定められた色に変更してもよい。なお、検知部1002は、電流値の経時的な変化のパターンとサージ電流のパターンとのパターンマッチングにより、サージ電流の発生を検知してもよい。
【0062】
上述した実施形態においては、AD変換ポートに接続する信号線11a、信号線11c、信号線11dを順次切り替えて複数の信号線11a、信号線11c、信号線11dのそれぞれの電流値を測定しているが、信号線11a、信号線11c、信号線11dの電流値を測定する構成は、実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、制御部101が信号線11a、信号線11c、信号線11dの数と同じ数のAD変換ポートを備えている場合、一のAD変換ポートに一の信号線を接続し、複数の信号線の電流値を並行して測定してもよい。
【0063】
上述した実施形態においては、トンネル内に設置されている端末機器と防災受信盤10とを接続する信号線について、流れる電流を防災受信盤10で測定しているが、例えば、ビルなどの建築物に設置される火災受信機と熱や煙を感知する感知器や発信機とを接続する信号線に流れる電流について、火災受信機で測定してもよい。
上述した実施形態においては、電圧Vaを測定し、電圧Vaから算出した電流値Iを記憶部109に記録しているが、本発明においては、AD変換ポートで測定した電圧Vaを記憶部109に記録し、電流値Iの代わりに電圧Vaを利用して、信号線の絶縁劣化の判定、外部からのノイズの検知、記録した測定結果のグラフ表示等を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…防災システム、2a、2b…トンネル、3…通信ネットワーク、5…区画、10…防災受信盤、11a、11b、11c、11d…信号線、21…ポンプ制御盤、30…遠隔制御設備、31…温度検知器、32…火災検知器、33…消火栓装置、34…手動通報装置、101…制御部、102…伝送部、103…通信部、104…GOT、105…操作部、106…警報部、107…ポンプ制御部、108…表示部、109…記憶部、200…入出力ユニット、201a、201c、201d…信号受信部、202a、202c、202d…測定回路、210…選択部、1001…電流測定部、1002…検知部、1004…監視部、1005…GUI部。
図1
図2
図3
図4
図5