(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221122BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20221122BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20221122BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L21/20
H01L29/78 652T
H01L29/78 658E
(21)【出願番号】P 2018193431
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛島 隆志
(72)【発明者】
【氏名】森 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 博之
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-326911(JP,A)
【文献】特開2017-168506(JP,A)
【文献】特開2018-056297(JP,A)
【文献】特開2011-210780(JP,A)
【文献】特開2009-283692(JP,A)
【文献】特開2017-195251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20、21/336、
29/12、29/78、
33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極と、
前記窒化物半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極と、
絶縁ゲート部と、を備えており、
前記窒化物半導体層は、
n型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられているn型のJFET領域と、
前記ドリフト領域上に設けられており、前記JFET領域を間に置いて対向するように設けられており、p型不純物を相対的に高濃度に含む高濃度ボディ領域とp型不純物を相対的に低濃度に含む低濃度ボディ領域が積層して構成されているボディ領域と、
前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられているn型のソース領域と、を有しており、
前記絶縁ゲート部は、前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分の前記ボディ領域に対向している、窒化物半導体装置の製造方法であって、
前記高濃度ボディ領域を形成する工程が、
p型不純物を含む窒化物半導体の第1エピタキシャル層とp型不純物を含む窒化物半導体の第2エピタキシャル層を離間して結晶成長させる結晶成長工程と、
アニール処理を実施して前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の間の領域に前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の双方から前記p型不純物を拡散させて前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層を含む範囲に前記高濃度ボディ領域を形成するアニール処理工程と、を備える、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記結晶成長工程では、前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の間に窒化物半導体の中間エピタキシャル層を結晶成長させており、
前記中間エピタキシャル層は、i型、n型、又は、前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の前記p型不純物の濃度よりも薄いp型不純物を含む、のいずれかである、請求項
1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記JFET領域を間に置いて対向する前記高濃度ボディ領域間の距離が、前記JFET領域を間に置いて対向する前記低濃度ボディ領域間の距離よりも小さい、請求項
1又は
2に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記p型不純物がマグネシウムである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、窒化物半導体装置と窒化物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、半導体層と、半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極と、半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極と、を備えた縦型の半導体装置が開示されている。半導体層は、n型のドリフト領域と、そのドリフト領域上に設けられているn型のJFET領域と、そのドリフト領域上に設けられているとともにJFET領域を間に置いて対向するように設けられているp型のボディ領域を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「ホモエピGaN上ノーマリオフ型MOSFETの開発」 応用物理 第86巻 第5号 p.376(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結晶成長技術を利用してp型のボディ領域を形成しようとすると、原料ガスに含まれる水素とp型不純物のマグネシウムが結合し、p型のボディ領域の活性化率が低いという問題がある。また、アニール処理によって水素を取り除くことでp型不純物を活性化しようとしても、p型不純物が凝集し、良好に活性化しないという問題がある。
【0005】
例えば、パンチスルー現象を抑えるために、p型のボディ領域のうちの深い側にp型不純物が良好に活性化した高キャリア濃度のp型半導体領域を形成したいことがある。ところが、上記理由により、このようなp型半導体領域を形成することが難しいという問題がある。なお、このような高キャリア濃度の窒化物半導体のp型半導体領域を形成したい状況は、他の種類の窒化物半導体装置においても存在する。本明細書は、高キャリア濃度の窒化物半導体のp型半導体領域を形成する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する窒化物半導体装置の製造方法は、p型不純物を含む窒化物半導体の第1エピタキシャル層とp型不純物を含む窒化物半導体の第2エピタキシャル層を離間して結晶成長させる結晶成長工程と、アニール処理を実施して前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の間の領域に前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の双方から前記p型不純物を拡散させて前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層を含む範囲にp型半導体領域を形成するアニール処理工程と、を備えることができる。この製造方法によると、前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の間の領域に拡散した前記p型不純物は、凝集することなく良好に活性化することができる。これにより、前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層を含む範囲に高キャリア濃度の前記p型半導体領域を形成することができる。
【0007】
本明細書が開示する窒化物半導体装置の製造方法は、窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極と、前記窒化物半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極と、絶縁ゲート部と、を備えており、前記窒化物半導体層は、n型のドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられているn型のJFET領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記JFET領域を間に置いて対向するように設けられており、p型不純物を相対的に高濃度に含む高濃度ボディ領域とp型不純物を相対的に低濃度に含む低濃度ボディ領域が積層して構成されているボディ領域と、前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられているn型のソース領域と、を有しており、前記絶縁ゲート部は、前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分の前記ボディ領域に対向している、窒化物半導体装置の製造方法に適用することができる。この窒化物半導体装置の製造方法では、前記高濃度ボディ領域を形成する工程が、p型不純物を含む窒化物半導体の第1エピタキシャル層とp型不純物を含む窒化物半導体の第2エピタキシャル層を離間して結晶成長させる結晶成長工程と、アニール処理を実施して前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の間の領域に前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の双方から前記p型不純物を拡散させて前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層を含む範囲に前記高濃度ボディ領域を形成するアニール処理工程と、を備えることができる。この製造方法によると、前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層の間の領域に拡散した前記p型不純物は、凝集することなく良好に活性化することができる。これにより、前記第1エピタキシャル層と前記第2エピタキシャル層を含む範囲に高キャリア濃度の前記高濃度ボディ領域を形成することができる。
【0008】
本明細書が開示する窒化物半導体装置は、窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極と、前記窒化物半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極と、絶縁ゲート部と、を備えることができる。前記窒化物半導体層は、n型のドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられているn型のJFET領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記JFET領域を間に置いて対向するように設けられており、p型不純物を相対的に高濃度に含む高濃度ボディ領域とp型不純物を相対的に低濃度に含む低濃度ボディ領域が積層して構成されているボディ領域と、前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられているn型のソース領域と、を有することができる。前記絶縁ゲート部は、前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分の前記ボディ領域に対向している。前記JFET領域を間に置いて対向する前記高濃度ボディ領域間の距離が、前記JFET領域を間に置いて対向する前記低濃度ボディ領域間の距離よりも小さい。この窒化物半導体装置によると、前記絶縁ゲート部に加わる電界が緩和されるとともに、低オン抵抗という電気的特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図2】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図3】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図4】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図5】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図6】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図7】
図1の半導体装置の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示されるように、窒化物半導体装置1は、窒化物半導体層20、窒化物半導体層20の裏面を被覆するドレイン電極32、窒化物半導体層20の表面の一部を被覆するソース電極34、及び、窒化物半導体層20の表面上の一部に設けられている絶縁ゲート部36を備えている。窒化物半導体層20は、n型のドリフト領域22、n型のJFET領域23、p型のボディ領域26及びn
+型のソース領域27を有している。
【0011】
ドリフト領域22は、窒化物半導体層20の裏面に露出しており、ドレイン電極32にオーミック接触している。ドリフト領域22は、後述の製造方法で説明するように、n型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)の基板として準備される。
【0012】
JFET領域23は、ドリフト領域22上に設けられており、ドリフト領域22の表面から窒化物半導体層20の表面まで厚み方向に延びており、ドリフト領域22の表面から突出した形態を有している。換言すると、JFET領域23は、窒化物半導体層20の表面からボディ領域26を貫通してドリフト領域22まで延びている。JFET領域23は、n型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)を材料としている。この例では、JFET領域23の不純物濃度は、ドリフト領域22の不純物濃度と等しい。
【0013】
ボディ領域26は、ドリフト領域22上に設けられており、JFET領域23を間に置いて窒化物半導体層20の面方向(紙面左右方向)に対向するように設けられており、JFET領域23の側面に隣接している。ボディ領域26は、高濃度ボディ領域24と低濃度ボディ領域25が積層して構成されている。ボディ領域26は、p型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)を材料としている。
【0014】
高濃度ボディ領域24は、ドリフト領域22と低濃度ボディ領域25の間に配置されているとともに、JFET領域23の下側の側面に接している。高濃度ボディ領域24は、低濃度ボディ領域25よりもp型不純物を高濃度に含んでおり、オフのときに低濃度ボディ領域25がパンチスルーするのを抑えるために設けられている。また、高濃度ボディ領域24は、後述の製造方法で説明するように、アニール処理によって拡散したp型不純物のマグネシウムが良好に活性化した高キャリア濃度の領域である。
【0015】
低濃度ボディ領域25は、高濃度ボディ領域24上に設けられており、窒化物半導体層20の表面に位置しており、JFET領域23の上側の側面に接している。低濃度ボディ領域25の不純物濃度は、所望のゲート閾値電圧となるように調整されている。低濃度ボディ領域25は、ソース電極34にオーミック接触している。なお、低濃度ボディ領域25のうちのソース電極34に接する部分に、p型不純物が高濃度のコンタクト領域が設けられていてもよい。
【0016】
ソース領域27は、ボディ領域26上に設けられており、窒化物半導体層20の表面に位置しており、ボディ領域26(特に、低濃度ボディ領域25)によってJFET領域23から隔てられている。ソース領域27は、n型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)を材料としている。ソース領域27は、ソース電極34にオーミック接触している。
【0017】
絶縁ゲート部36は、窒化物半導体層20の表面上の一部に設けられており、酸化シリコンのゲート絶縁膜36a及びポリシリコンのゲート電極36bを有している。ゲート電極36bは、JFET領域23とソース領域27を隔てる部分の低濃度ボディ領域25、及び、JFET領域23にゲート絶縁膜36aを介して対向している。
【0018】
次に、窒化物半導体装置1の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極32に正電圧が印加され、ソース電極34が接地される。ゲート電極36bにゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、JFET領域23とソース領域27を隔てる部分の低濃度ボディ領域25に反転層が形成され、窒化物半導体装置1がターンオンする。このとき、反転層を経由してソース領域27からJFET領域23に電子が流入する。JFET領域23に流入した電子は、そのJFET領域23を縦方向に流れてドレイン電極32に向かう。これにより、ドレイン電極32とソース電極34が導通する。
【0019】
ゲート電極36bが接地されると、反転層が消失し、窒化物半導体装置1がターンオフする。このとき、JFET領域23内に高濃度ボディ領域24及び低濃度ボディ領域25から空乏層が伸びてくる。JFET領域23は、両側から伸びてくる空乏層が繋がってピンチオフの状態となる。JFET領域23がピンチオフすることで、絶縁ゲート部36のゲート絶縁膜36aに加わる電界が緩和され、ゲート絶縁膜36aの絶縁破壊が抑えられる。
【0020】
窒化物半導体装置1では、
図1に示されるように、ボディ領域26の側面(JFET領域23に接する面)に直交する方向(窒化物半導体層20の面方向)において、JFET領域23を間に置いて対向する高濃度ボディ領域24間の距離L1が、JFET領域23を間に置いて対向する低濃度ボディ領域25間の距離L2よりも小さい。高濃度ボディ領域24間の距離L1が小さいことから、窒化物半導体装置1がオフのときに、高濃度ボディ領域24に隣接するJFET領域23が良好にピンチオフされ、絶縁ゲート部36のゲート絶縁膜36aに加わる電界が緩和される。一方、低濃度ボディ領域25間の距離L2が大きい、換言すると、JFET領域23とソース領域27の間の低濃度ボディ領域25の距離が短いことから、チャネル抵抗が抑えられ、窒化物半導体装置1は低オン抵抗という電気的特性を有することができる。
【0021】
次に、窒化物半導体装置1の製造方法を説明する。まず、
図2に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、n型不純物(例えば、シリコン)を含むGaN基板であるドリフト領域22の表面からGaN積層体124と低濃度ボディ領域25をこの順で積層し、窒化物半導体層20を準備する。GaN積層体124は、n型GaN層124aとp型GaN層124bが繰り返し積層して構成されている。この例では、GaN積層体124は、最下面のn型GaN層124aと最上面のn型GaN層124aの間に3つのp型GaN層124bと2つのn型GaN層124aを含むように構成されている。GaN積層体124では、少なくとも複数のp型GaN層124bが形成され、それらp型GaN層124bが離間して構成されている。後述するように、GaN積層体124は、最終的に窒化物半導体装置1の高濃度ボディ領域24となる。なお、p型GaN層124bが、第1エピタキシャル層又は第2エピタキシャル層の一例である。p型GaN層124bに挟まれるn型GaN層124aが、中間エピタキシャル層の一例である。
【0022】
n型GaN層124aは、n型不純物としてシリコンを含んでおり、その濃度が約1×1017cm-3である。n型GaN層124aの厚みは、最下面及び最上面のn型GaN層124aが約0.1μmであり、p型GaN層124bに挟まれるn型GaN層124aが約0.2μmである。なお、n型GaN層124aに代えて、i型のGaN層が設けられていてもよく、あるいは、p型GaN層124bよりもp型不純物の濃度が薄いGaN層が設けられていてもよい。
【0023】
p型GaN層124bは、p型不純物としてマグネシウムを含んでいる。p型GaN層124bは、p型不純物の濃度が1×1019cm-3以上であり、n型GaN層124aのn型不純物の濃度よりも2桁以上の濃度となるように形成されている。この例では、p型不純物の濃度が約8×1019cm-3である。p型GaN層124bの厚みは、約0.1μmである。
【0024】
次に、
図3に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、窒化物半導体層20の表面から低濃度ボディ領域25とGaN積層体124を貫通してドリフト領域22に達するトレンチTR1を形成する。トレンチTR1の底面には、ドリフト領域22の表面が露出する。
【0025】
次に、
図4に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、トレンチTR1を充填するようにn型GaNのJFET領域23を形成する。
【0026】
次に、
図5に示されるように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を利用して、低濃度ボディ領域25の表面上に成膜されたJFET領域23を除去してJFET領域23及び低濃度ボディ領域25の表面を平坦化する。
【0027】
次に、
図6に示されるように、イオン注入技術を利用して、低濃度ボディ領域25の表面の一部にn型不純物(例えば、シリコン)を注入し、ソース領域27を形成する。
【0028】
次に、
図7に示されるように、活性化アニール処理を実施する。アニール条件は、例えば窒素ガスの雰囲気で約1000℃である。このアニール処理を実施すると、低濃度ボディ領域25とp型GaN層124bに含まれる水素(原料由来の水素)が抜け、p型不純物であるマグネシウムが活性化する。ところが、p型GaN層124bのマグネシウムの濃度が高いので、p型GaN層124b内においてマグネシウムの凝集が起き、p型GaN層124b内のマグネシウムは良好に活性化しない。マグネシウムの濃度が約1×10
19cm
-3以上であると、このような凝集が起きる。しかしながら、p型GaN層124bのマグネシウムの濃度が高いので、p型GaN層124bに含まれていたマグネシウムの一部が隣接するn型GaN層124aに拡散し、n型GaN層124aがp型となる。例えば、p型GaN層124bからn型GaN層124aに2~3×10
18cm
-3のマグネシウムが拡散するエピタキシャル成長技術を利用して形成されたn型GaN層124aにはほぼ水素が含まれておらず、また、拡散してくるマグネシウムは凝集することもないことから、p型GaN層124bから拡散してきたマグネシウムは良好に活性化することができる。p型GaN層124bの部分ではマグネシウムが良好に活性化していないものの、p型化したn型GaN層124aの部分ではマグネシウムが良好に活性化しており、GaN積層体124を全体として見たときに、高キャリア濃度のp型半導体領域となる。これにより、GaN積層体124は、マグネシウムが良好に活性化された高濃度ボディ領域24となる。
【0029】
上記現象により、高濃度ボディ領域24は、窒化物半導体層20の厚み方向で観測したときに、マグネシウムが高密度で凝集した領域とマグネシウムが凝集していない領域が交互に現れる。このような特徴を有するp型半導体領域は、本願明細書が開示する技術が適用されたことを示している。
【0030】
また、
図7に示されるように、p型GaN層124bに含まれていたマグネシウムは、JFET領域23にも拡散し、JFET領域23の下方の部分の幅を狭くする。これにより、上記したように、窒化物半導体装置1は、絶縁ゲート部36に加わる電界が緩和されるとともに、低オン抵抗という電気的特性を有することができる。さらに、p型GaN層124bに含まれていたマグネシウムの拡散によって形成された高濃度ボディ領域24は、JFET領域23に露出する角部(図中に破線で囲む部分)の形状が曲面形状となる。これにより、この角部における電界集中が緩和される。
【0031】
最後に既知の製造技術を利用して、ドレイン電極32、ソース電極34、絶縁ゲート部36を形成することで、
図1に示す窒化物半導体装置1が完成する。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
1:窒化物半導体装置
20:窒化物半導体層
22:ドリフト領域
23:JFET領域
24:高濃度ボディ領域
25:低濃度ボディ領域
26:ボディ領域
27:ソース領域
32:ドレイン電極
34:ソース電極
36:絶縁ゲート部
36a:ゲート絶縁膜
36b:ゲート電極