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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
B25J19/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018207538
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020069624
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤宏之
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019058(JP,A)
【文献】特表2015-536253(JP,A)
【文献】特開昭63-003317(JP,A)
【文献】特開2014-046401(JP,A)
【文献】特開2007-313624(JP,A)
【文献】特開2009-208170(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073052(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 3/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクが複数の関節で連結されたアーム機構、前記アーム機構の先端に取り付けられた手首部及び前記手首部に装着されたエンドエフェクタを有するロボット装置において、
前記アーム機構に設置された単一の加速度センサと、
前記アーム機構、前記手首部及び前記エンドエフェクタ上に既定した複数の位置各々から前記加速度センサの設置位置までの機械的振動に関する伝搬特性のデータを記憶する記憶部と、
前記伝搬特性に基づいて、前記加速度センサにより測定された第1振動波形から前記複数の位置にそれぞれ対応する複数の第2振動波形を推定する推定部と、
前記推定された複数の第2振動波形に基づいて、前記アーム機構、前記手首部又は前記エンドエフェクタに対して物体が衝突したか否かを判定する判定部とを具備し、
前記記憶部は、前記位置とともに前記アーム機構、前記手首部及び前記エンドエフェクタの姿勢に関連付けて前記伝搬特性のデータを記憶し、
前記推定部は、前記第1振動波形の測定時の前記姿勢に関連付けられた前記伝搬特性に基づいて前記第2振動波形を推定するロボット装置。
【請求項2】
複数のリンクが複数の関節で連結されたアーム機構、前記アーム機構の先端に取り付けられた手首部及び前記手首部に装着されたエンドエフェクタを有するロボット装置において、
前記アーム機構に設置された単一の加速度センサと、
前記アーム機構、前記手首部及び前記エンドエフェクタ上に既定した複数の位置各々から前記加速度センサの設置位置までの機械的振動に関する伝搬特性のデータを記憶する記憶部と、
前記伝搬特性に基づいて、前記加速度センサにより測定された第1振動波形から前記複数の位置にそれぞれ対応する複数の第2振動波形を推定する推定部と、
前記推定された複数の第2振動波形に基づいて、前記アーム機構、前記手首部又は前記エンドエフェクタに対して物体が衝突したか否かを判定する判定部とを具備し、
前記記憶部は、前記アーム機構、前記手首部及び前記エンドエフェクタの動作により前記加速度センサの設置位置で発生する基準振動波形のデータを記憶し、
前記推定部は、前記動作以外の外乱因子による外乱振動波形を発生するために前記第1振動波形から前記基準振動波形を引き算し、前記外乱振動波形から前記第2振動波形を推定するロボット装置。
【請求項3】
複数のリンクが複数の関節で連結されたアーム機構、前記アーム機構の先端に取り付けられた手首部及び前記手首部に装着されたエンドエフェクタを有するロボット装置において、
前記アーム機構に設置された単一の加速度センサと、
前記アーム機構、前記手首部及び前記エンドエフェクタ上に既定した複数の位置各々から前記加速度センサの設置位置までの機械的振動に関する伝搬特性のデータを記憶する記憶部と、
前記伝搬特性に基づいて、前記加速度センサにより測定された第1振動波形から前記複数の位置にそれぞれ対応する複数の第2振動波形を推定する推定部と、
前記推定された複数の第2振動波形に基づいて、前記アーム機構、前記手首部又は前記エンドエフェクタに対して物体が衝突したか否かを判定する判定部とを具備し、
前記判定部は、前記第2振動波形から前記複数の位置各々の外力を演算し、前記外力を閾値と比較し、前記複数の位置の少なくとも一の位置の前記外力が前記閾値を超過するときに前記物体の衝突を判定するロボット装置。
【請求項4】
前記アーム機構は極座標型に構成され、
前記加速度センサは前記複数の関節のうち直動関節のアームを進退自在に支持する支持部に設置されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のロボット装置。
【請求項5】
前記アーム機構は垂直多関節型に構成され、
前記加速度センサは基台上の旋回用回転関節に接続された回転関節に設置されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ロボットが作業者と同一空間にいる環境が多くなってきている。介護用ロボットはもちろん産業用ロボットでも作業者と並んで協働して作業を行なう状況が今後拡大していくものと考えられる。その状況で重要なのは安全性である。作業者等に対するロボットアームの接触、特に衝突時に、迅速にアームを停止させ、又はアームを退避させる必要がある。
【0003】
例えば特許文献1にはアームの先端付近に加速度センサを取り付け、加速度センサの出力に基づいて衝突を判定するにあたってロボットの運転状態(動作モードと姿勢)に応じて判定条件を変更する技術が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、フォークに取り付けられた加速度センサの信号がしきい値以上の場合に衝突発生と判定するものであって、特に通常、高速等の動作モードに応じてしきい値を変更する技術が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1、2では物体がアームやフォークに加速度センサを取り付けた位置への衝突に関しては比較的高精度で判定する事ができるものの、他の位置への衝突判定精度の低下は避けられない。協働ロボットではアームの全体わたってより精度での衝突判定を実施する技術が要求される。
【0006】
高精度の衝突判定範囲をアーム全体に拡大するには、アームに多数の加速度センサを取り付けることが想定される。しかし、この場合、製造工数の増加に伴う製造コストの高騰は避けられない。加速度センサに代えて検知範囲の比較的広い静電容量センサであれば個数を減らす事が考えられるものの、静電容量センサは周辺環境の影響を大きく受けるため、汎用的な判定精度の確保が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-069585号公報
【文献】特開2005-342858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、センサ数を減少させて製造工数を減少させることにより製造コストの低減を実現すること、アーム、手首部、さらにエンドエフェクタまで衝突判定を実現すること、さらに衝突判定精度を確保することをともに達成するロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係るロボット装置は、複数のリンクが複数の関節で連結されたアーム機構、アーム機構の先端に取り付けられた手首部及び手首部に装着されたエンドエフェクタを有する。アーム機構には単一の加速度センサが設置される。記憶部は、アーム機構、手首部及びエンドエフェクタ上に既定した複数の位置各々から加速度センサの設置位置までの機械的振動に関する伝搬特性のデータを記憶する。推定部は、伝搬特性に基づいて、加速度センサにより測定された第1振動波形から複数の位置にそれぞれ対応する複数の第2振動波形を推定する。判定部は、推定された複数の第2振動波形に基づいて、アーム、手首部又はエンドエフェクタに対して物体が衝突したか否かを判定する。記憶部は、位置とともにアーム機構、手首部及びエンドエフェクタの姿勢に関連付けて伝搬特性のデータを記憶する。推定部は、第1振動波形の測定時の姿勢に関連付けられた伝搬特性に基づいて第2振動波形を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る極座標型アーム機構を備えたロボット装置の外観図である。
図2図2は、図1のロボット装置の内部構造を示す側面図である。
図3図3は、図1のロボット装置の図記号表現図である。
図4図4は、本実施形態に係る垂直多関節型アーム機構を備えたロボット装置の外観図及び図記号表現図である。
図5図5は、図1のロボット装置の構成図である。
図6図6は、図5の記憶装置に記憶される伝搬特性の補足説明図である。
図7図7は、図5の記憶装置に記憶される基準振動波形の一例を示す図である。
図8図8は、図5のプロセッサによる衝突判定処理の手順を示すフローチャートである。
図9図9は、図8の動作手順の補足説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るロボット装置を説明する。ロボット装置は、複数のリンクを複数の関節で連結するアーム機構を有する。本実施形態は典型的には極座標型のアーム機構又は垂直多関節型のアーム機構に適用される。
【0012】
図1図2図3には、本実施形態に係る極座標型のアーム機構を備えたロボット装置を示している。本実施形態に係るロボット装置のアーム機構は、基台1、基台1に垂直に設置された円筒形状の支柱部3、支柱部3上に載置されるショルダー部5、ショルダー部5から前方に伸びるアーム7を備える。アーム7の先端には手首部9が取り付けられる。手首部9には用途に応じたエンドエフェクタ(手先効果器)、例えばハンド部11が装着される。
【0013】
支柱部3には基台1に対して垂直な第1回転軸RA1を有する旋回用回転関節J1が装備される。ショルダー部5には、第1回転軸RA1に垂直な第2回転軸RA2を有する上下回転用回転関節J2が装備される。回転関節J2の回転部には直動関節、ここでは直動伸縮関節J3が装備される。
【0014】
直動伸縮関節J3は、屈曲自在に連結された複数の上側ピース13と、屈曲自在に連結された複数の下側ピース15とを有する。上側ピース13の先頭と下側ピース15の先頭とは先頭ピース17に結合される。上側ピース13と下側ピース15とは互いに重ね合わされることによりそれぞれの屈曲が拘束されて、一体化され、一定の剛性を有する柱状体としてのアーム7が構成される。アーム7の中心線を直動軸RA3という。支持部19はアーム7を進退自在に支持する。支持部19は角筒形の導通路を備える。角筒の内寸は重ねあわされた上側ピース13と下側ピース15の高さとそれらの幅に略等価である。支持部19の後部にはモータに接続されたピニオンギア22が配置される。上側ピース13それぞれの裏面には図示しないリニアギアが設けられる。ピニオンギア22はリニアギアに噛合わされる。ピニオンギア22が順回転するとき、上側ピース13は前方に送り出される。上側ピース13に伴って、上側ピース13と先頭において結合された下側ピース15も前方に送り出される。支持部19を通過する上側ピース13は下側ピース15と重ね合わされる。ピニオンギア22が逆回転するとき、上側ピース13は後方に引き戻される。上側ピース13とともに下側ピース15も後方に引き戻される。支持部19の導通路の後方で下側ピース15は上側ピース13から分離する。それにより上側ピース13と下側ピース15とは屈曲自在な状態に復帰し、支柱部3の内部に収容される。
【0015】
手首部9は、直交3軸の3つの回転関節J4、J5、J6が組み合わされてなる。回転関節J4は直動軸RA3に重なる回転軸RA4を有する。回転関節J5は回転軸RA4に垂直な回転軸RA5を有する。回転関節J6は回転軸RA4と回転軸RA5とに垂直な回転軸RA6を有する。回転関節J6の回転部にハンド部11が取り付けられる。
【0016】
本実施形態は典型的には上記極座標型アーム機構に適用されるものであるが、垂直多関節型アーム機構に適用されてもよい。
図4に示すように基台30には上腕リンク34が垂直回転軸を有する旋回用回転関節J11と水平回転軸を有する回転関節J12とを介して接続される。上腕リンク34には前腕リンク36が水平回転軸を有する回転関節J13を介して接続される。前腕リンク36の先端には、直交3軸の3つの回転関節J14、J15、J16が組み合わされた手首部38が装備される。
【0017】
図1図2図3に戻り、衝突による振動を検出するために好ましくは3軸の加速度センサ21が設けられる。加速度センサ21としては典型的にはMEMS(Micro Electro Mechanical System)加速度センサが採用されるが、他の種類の加速度センサの採用を否定するものではない。加速度センサ21は、アーム7を進退自在に支持する支持部19、つまりアーム7の付け根に設置することが好ましい。加速度センサ21を設置する支持部19は、旋回用回転関節J1の直上に位置することから、それをアーム7の先端や手首部9に設置するよりも、配線の取り回しが容易である。また極座標型アーム機構においては、物体が衝突する可能性が比較的高いのは、旋回や上下回転による移動距離が比較的長いアーム7、手首部9、ハンド部11の各部であり、アーム7に直結する支持部19に加速度センサ21を設置することにより、加速度センサ21を旋回用回転関節J1や支柱部3に設置するよりも、アーム7等に対する物体の衝突により生じる振動の検出感度を向上させることができる。さらに支持部19の旋回半径及び上下回転半径は、アーム7、ハンド部11、手首部9の各部のそれらよりも短く、従って加速度センサ21が検出する旋回運動及び上下回転運動による加速度の影響を極小化させる事ができる。同様の理由で、図4(a)、図4(b)に例示した垂直多関節型のアーム機構でも、加速度センサ21は、上腕リンク34に構造上接続する、旋回用の回転関節J11に連結された回転関節J12の回転軸の軸受け(固定部)に設置される。
【0018】
図5に示すように本実施形態に係るロボット装置は、プロセッサ23を有する。プロセッサ23には、データ・制御バス25を介して、記憶装置27、加速度センサ21、警告用のアラーム装置29、図示しない緊急停止用のスイッチ、モータドライバ31が接続される。モータドライバ31は、プロセッサ23からの指令値に従って、サーボモータ33の回転軸の回転角、回転速度、回転方向等を検出するロータリエンコーダ35の出力を参照しながら関節J1-J6にそれぞれ設けられたサーボモータ33を駆動する。
【0019】
記憶装置27には、ロボット装置による手先基準の移動及びハンド部11に関する一連の動作を記述したタスクプログラム、タスクプログラムを解読して逆運動学により各サーボモータ33の指令値を計算するモータ制御プログラム、衝突判定プログラム、伝搬特性データ、基準振動波形データ等が記憶されている。
【0020】
図6に例示するように、アーム7上のある位置で剛体衝突が生じたとき、その位置(振動発生源)で機械的振動が生起し、その振動波形(時間波形)がアーム7を伝搬して、加速度センサ21で検出される。振動発生源の振動波形は、振動発生源から加速度センサ21の設置位置(観測点PS)までの機械的振動に関する伝搬特性を乗ずることにより、加速度センサ21の設置位置の振動波形に変換される。手首部9、アーム7、さらにハンド部11上に既定した複数の位置(監視点PW1-PW13という)各々に例えばインパクト加振を加えて、監視点(加振点)の振動波形と加速度センサ21の設置位置(観測点PS)での振動波形とをそれぞれ計測し、それら2点の振動波形から任意の手法により両点間の伝搬特性が決定される。伝搬特性としては2点間の伝達関数、周波数応答又は監視点(加振点)の振動波形を加速度センサ21の設置位置(観測点PS)の振動波形に変換する変換行列として与えられる。この振動波形の計測作業は、関節J1-J6の変位(回転角度、伸縮動より変化するアーム長)の組み合わせにより決まるアーム7及び手首部9の姿勢を様々に変えながら繰り返される。アーム7及び手首部9の姿勢を変えながら繰り返し振動波形から複数の伝搬特性が求められ、それら複数の伝搬特性は、監視点PW1-PW13、さらにアーム7及び手首部9の様々な姿勢に関連付けられて、記憶装置27に記憶される。
【0021】
図7(a)、図7(b)、図7(c)に例示するように、基準振動波形は、アーム7の旋回、上下回転、伸縮、手首部9の軸回転、手首部9の曲げ、ハンド部11によるワークの把持、ワークのリリース等の様々な動作又はそれらの組み合わせを実行し、それら実行期間に加速度センサ21の設置位置で生じる振動波形が加速度センサ21で事前に測定される。測定された複数の基準振動波形が、アーム等の動作に関連付けられて、記憶装置27に記憶される。
【0022】
図8に衝突判定プログラムを実行するプロセッサ23による衝突判定処理手順を示している。なお、加速度センサ21は3軸の振動波形とそれらの合成振動波形とをデジタル信号として出力するものであり、ここでは合成振動波形を処理するものとして説明するが、もちろん3軸の振動波形を個別に処理するものであってもよいし、3軸の振動波形を個別に処理して、監視点に関する3軸の推定波形を合成するものであっても良い。また、振動波形をそのままで処理しても良いし、特定のノイズ周波数成分を除去する等の前処理を適用した振動波形を処理するようにしても良いし、振動波形の包絡線を処理対象としても良い。
【0023】
まず変数nを1に初期化する(工程S1)。“n”は監視点PW1-PW13を個々に識別するための変数である。加速度センサ21により測定された振動波形(応答波形)に窓関数を掛け合わせることにより、直近の10msec等の所定区間の部分的な振動波形が処理対象として切り出される(工程S2)。次に、振動波形測定時のアーム動作に従って、当該アーム動作に関連付けられている基準振動波形のデータが記憶装置27から選択的に読み出され、工程S2で切り出された振動波形から引き算される(工程S3)。それにより加速度センサ21により測定された振動波形から、アーム動作に由来する振動成分が取り除かれ、衝突等の外乱成分を表す振動波形(外乱振動波形)だけが抽出される。
【0024】
次に測定時のアーム等の姿勢に従って、それに関連付けられた伝搬特性のデータが記憶装置27から選択的に読み出され、その逆伝搬特性が、工程S3で抽出された外乱振動波形に乗ぜられる(工程S4)。それにより、監視点PW1の衝突等の外乱因子による振動波形が推定される。工程S4で推定された監視点PW1の振動波形から、任意の手法により外力(加振力、衝撃力)又はそれに対応する値を計算する(工程S5)。ここでは仮に振動波形の振幅のピーク値Pを特定するものとする。
【0025】
ピーク値Pを所定の閾値THと比較し(工程S6)、ピーク値Pが閾値THを超過しているとき監視点PW1又はその近傍で物体の衝突が生じたことを判定し、アラーム装置29を駆動して警報を発生し、また必要に応じて動作を停止させる(工程S7)。ピーク値Pが閾値TH以下であるときには、次の監視点での衝突判定処理のために、変数“n”を1だけインクリメントする(工程S8)。変数nが監視点数N、図1の例ではN=13以下であるとき(工程S9)、工程S2にリターンして、次の監視点での衝突判定処理(S2-S6)を実行する。変数nが監視点数Nを超えているときには、タスク終了するまで(工程S10)、工程S1にリターンして、最初の監視点PW1から衝突判定処理(S2-S6)を再開する。
【0026】
上述したように本実施形態は、単一の加速度センサをアーム機構上に設置し、測定した振動波形から伝搬特性によりアーム7、手首部9、さらにハンド部11上の複数の位置における振動波形を推定し、推定した振動波形から衝突の有無を判定することを重要な概念とする。単一の加速度センサであるので多数のセンサをアーム7、手首部9、さらにハンド部11上に分散設置するよりも製造工数が削減され、製造コストの低減を図ることができる。また手首部、さらにハンド部11上の複数の位置における振動波形を推定し、推定した振動波形から複数の位置での衝突判定を実施する事ができるので、多数のセンサをアーム7、手首部9、さらにハンド部11上に分散設置する場合と同等の判定精度を確保することができる。振動波形の推定処理には位置的制限は無いので、従来、センサの設置が比較的困難であるハンド部11の衝突判定も容易に実現できる。さらに加速度センサを極座標型であればアーム7の付け根(支持部19)、垂直多関節型であれば上腕リンク34の付け根(関節J12の固定部)に設置するので衝突による振動を高精度に検出して、衝突判定精度を向上することができる。
【0027】
なお、上述では、推定した監視点の振動波形から衝突を判定した、加速度センサ21で測定した振動波形から、伝搬特性等により監視点における加振力を推定するものであっても良い。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…基台、3…支柱部、5…ショルダー部、7…アーム、9…手首部、11…ハンド部、13…上側ピース、15…下側ピース、17…先頭ピース、19…支持部、21…加速度センサ、23…プロセッサ、25…データ・制御バス、27…記憶装置、29…アラーム装置、31…モータドライバ、33…サーボモータ、35…ロータリエンコーダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9