(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ワーク保持装置、印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41F 17/20 20060101AFI20221122BHJP
B41F 17/22 20060101ALI20221122BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20221122BHJP
B41F 3/20 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B41F17/20 G
B41F17/22
B41M1/10
B41F3/20 D
(21)【出願番号】P 2018223534
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】古村 智之
(72)【発明者】
【氏名】村元 秀次
(72)【発明者】
【氏名】寺木 邦子
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02132818(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0081725(US,A1)
【文献】特開2002-067271(JP,A)
【文献】米国特許第02767647(US,A)
【文献】米国特許第03277816(US,A)
【文献】特開平07-214887(JP,A)
【文献】特表2016-508080(JP,A)
【文献】特開2017-196887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 17/20
B41F 17/22
B41M 1/10
B41F 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの側面に対して印刷装置を相対的に押し当てて印刷を行う際に前記ワークを前記回転対称軸まわりに回転自在に保持するワーク保持装置であって、
保持本体部と、
前記回転対称軸の軸方向における前記ワークの一方端部を前記保持本体部に対して回転自在に保持する第1保持部と、
前記軸方向における前記ワークの他方端部を前記保持本体部に対して回転自在に保持する第2保持部と、
前記ワークの側面に当接して前記回転対称軸まわりに回転自在な姿勢の前記ワークを支持するとともに、前記回転対称軸と平行な軸周りに回転自在に設けられた第1バックアップ部材と、を備え、
前記第1保持部は自動調心軸受を介して前記ワークの一方端部を保持
し、
前記ワークはボトルであり、
前記第1保持部は前記自動調心軸受を介して前記保持本体部に対して回転自在に設けられた状態で前記ボトルの口元部を保持する口元保持部材を有し、
前記第2保持部は前記ボトルの底部を保持する底保持部材を有し、
前記口元保持部材は、前記口元部に設けられた雄ネジ部に対して螺合可能な雌ネジ部を有し、前記雌ネジ部を前記口元部の前記雄ネジ部に螺合させて前記ボトルを保持する
ことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のワーク保持装置であって、
前記第1バックアップ部材は、前記印刷装置を押し当てる押当方向において前記ワークを挟んで前記印刷装置の反対側に配置される、ワーク保持装置。
【請求項3】
回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの側面に対して印刷装置を相対的に押し当てて印刷を行う際に前記ワークを前記回転対称軸まわりに回転自在に保持するワーク保持装置であって、
保持本体部と、
前記回転対称軸の軸方向における前記ワークの一方端部を前記保持本体部に対して回転自在に保持する第1保持部と、
前記軸方向における前記ワークの他方端部を前記保持本体部に対して回転自在に保持する第2保持部とを備え、
前記第1保持部は自動調心軸受を介して前記ワークの一方端部を保持し、
前記印刷装置を押し当てる押当方向において前記ワークを挟んで前記印刷装置の反対側に配置され、前記ワークの側面に当接して前記回転対称軸まわりに回転自在な姿勢の前記ワークを支持する第1バックアップ部材を備え、
鉛直方向において前記第1バックアップ部材よりも低い位置で前記ワークの側面に当接して前記回転対称軸まわりに回転自在な姿勢の前記ワークを支持する第2バックアップ部材を備えるワーク保持装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか一項に記載のワーク保持装置であって、
前記第1保持部に対して回転駆動力を与え、前記第1保持部および前記第2保持部により保持された前記ワークを前記回転対称軸まわりに回転させる回転駆動部を備えるワーク保持装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のワーク保持装置であって、
前記回転駆動部は、前記回転駆動力を発生させる駆動源と、前記駆動源から前記第1保持部に前記回転駆動力を伝達する動力伝達機構とを有し、
前記動力伝達機構は、前記駆動源から前記第1保持部への前記回転駆動力の伝達と前記回転駆動力の伝達遮断とを切り替えるクラッチを有するワーク保持装置。
【請求項6】
回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの側面に対して印刷装置を相対的に押し当てて印刷を行う際に前記ワークを前記回転対称軸まわりに回転自在に保持するワーク保持装置であって、
保持本体部と、
前記回転対称軸の軸方向における前記ワークの一方端部を前記保持本体部に対して回転自在に保持する第1保持部と、
前記軸方向における前記ワークの他方端部を前記保持本体部に対して回転自在に保持する第2保持部とを備え、
前記第1保持部は自動調心軸受を介して前記ワークの一方端部を保持し、
前記第1保持部に対して回転駆動力を与え、前記第1保持部および前記第2保持部により保持された前記ワークを前記回転対称軸まわりに回転させる回転駆動部を備え、
前記回転駆動部は、前記回転駆動力を発生させる駆動源と、前記駆動源から前記第1保持部に前記回転駆動力を伝達する動力伝達機構とを有し、
前記動力伝達機構は、前記駆動源から前記第1保持部への前記回転駆動力の伝達と前記回転駆動力の伝達遮断とを切り替えるクラッチを有し、
前記動力伝達機構は、前記駆動源からの前記回転駆動力を受けて回転する第1プーリと、前記第1保持部に連結される第2プーリと、前記第1プーリおよび前記第2プーリに対して変位可能に設けられる第3プーリと、前記第1プーリ、前記第2プーリおよび前記第3プーリに掛架された無端ベルトと、前記第3プーリを前記第1プーリおよび前記第2プーリから離間する方向に付勢することで前記無端ベルトに張力を与える付勢部材とを有するワーク保持装置。
【請求項7】
回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの側面に対して印刷を行う印刷システムであって、
請求項1ないし
6のいずれか一項に記載のワーク保持装置と、
前記ワーク保持装置に保持された前記ワークの側面に第1の印刷パターンを印刷する第1の印刷装置と、
前記ワーク保持装置に保持された前記ワークの側面に第2の印刷パターンを印刷する第2の印刷装置と、
前記ワークを保持した前記ワーク保持装置を前記第1の印刷装置と前記第2の印刷装置との間で搬送させる搬送装置と
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークを請求項1ないし
6のいずれか一項に記載のワーク保持装置により保持する工程と、
前記ワークを保持した前記ワーク保持装置を第1の印刷装置および第2の印刷装置の順序で搬送させる工程と、
前記第1の印刷装置に搬送されてきた前記ワーク保持装置に保持された前記ワークの側面に前記第1の印刷装置により第1の印刷パターンを印刷する工程と、
前記第1の印刷装置から前記第2の印刷装置に搬送されてきた前記ワーク保持装置に保持された前記ワークの側面に前記第2の印刷装置により第2の印刷パターンを印刷する工程と
を備えることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するガラス容器やプラスチック容器などのワークの側面に印刷を行うために、当該ワークを回転対称軸まわりに回転自在に保持する保持技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば化粧品などの付加価値の高い商品を収容するガラス製やプラスチック製の容器やボトルなどにおいては、当該容器等の側面に対して高品質な印刷を施すことが近年望まれている。このようなニーズに対応するために、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するガラス容器やプラスチック容器などの容器(本発明の「ワーク」の一例に相当)については、グラビアオフセット印刷によりワークの側面(容器の胴部)に高精度な印刷を行うことが提案されている。すなわち、印刷装置において凹版にインクを充填させてインクパターンを形成し、当該インクパターンを円筒状のブランケットロールの表面に受理させる。そして、同印刷装置でインクパターンを担持するブランケットロールに対してワークの側面を当接させながら回転対称軸まわりにワークを回転させることで、ブランケットロール上のインクパターンがワークに転写される。また、互いに異なる複数の印刷装置の間でワークを移動させ、複数層のインクパターンをワークの側面で互いに重ね合せることで多色印刷が実現される。
【0003】
ここで、ワークへのインクパターンの転写を行う際には、ワークを回転対称軸まわりに回転自在に保持する必要がある。そこで、例えば特許文献1や特許文献2などに記載されているようにマンドレルを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2009/044569号
【文献】特開2009-101605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マンドレルは回転対称軸の軸方向におけるワークの一方側よりワークの内部に挿入されてワークを内側から支持するものであるため、ワークの種類によってはマンドレルを使用することができないケースがある。また、仮にマンドレルを使用することができたとしても、上記転写処理を良好に行うためには、ブランケットロールに対してワークの側面を強く押し当てる必要がある。このとき、マンドレルは、いわゆる片持ち状態でワークの内部に挿入されてワークを内側から支持しているため、マンドレルの先端側と後端側とでワークを支持する力が相違してブランケットロールに対してワークの側面を均一に押し当てることが難しい場合がある。また、ワークの肩部分にインクパターンを転写することが要望されているが、このニーズをさらに満足するためには、押当力を高める必要がある。しかしながら、片持ち状態で支持するマンドレルでは十分な押当力が得られないという問題もあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するガラス製あるいはプラスチック製の容器やボトルなどのワークの側面に印刷を行う際に、ワークの種類を問わず、ワークを良好に支持しながら回転対称軸まわりに回転自在に保持することができるワーク保持装置、ならびに当該ワーク保持装置を用いてワークの側面に対して印刷を良好に行うことができる印刷システムおよび印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の態様は、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの側面に対して印刷装置を相対的に押し当てて印刷を行う際にワークを回転対称軸まわりに回転自在に保持するワーク保持装置に関するものである。
第1の態様の一のワーク保持装置は、保持本体部と、回転対称軸の軸方向におけるワークの一方端部を保持本体部に対して回転自在に保持する第1保持部と、軸方向におけるワークの他方端部を保持本体部に対して回転自在に保持する第2保持部と、ワークの側面に当接して回転対称軸まわりに回転自在な姿勢のワークを支持するとともに、回転対称軸と平行な軸周りに回転自在に設けられた第1バックアップ部材と、を備え、第1保持部は自動調心軸受を介してワークの一方端部を保持し、ワークはボトルであり、第1保持部は自動調心軸受を介して保持本体部に対して回転自在に設けられた状態でボトルの口元部を保持する口元保持部材を有し、第2保持部はボトルの底部を保持する底保持部材を有し、口元保持部材は、口元部に設けられた雄ネジ部に対して螺合可能な雌ネジ部を有し、雌ネジ部を口元部の雄ネジ部に螺合させてボトルを保持することを特徴としている。
第1の態様の他のワーク保持装置は、保持本体部と、回転対称軸の軸方向におけるワークの一方端部を保持本体部に対して回転自在に保持する第1保持部と、軸方向におけるワークの他方端部を保持本体部に対して回転自在に保持する第2保持部とを備え、 第1保持部は自動調心軸受を介してワークの一方端部を保持し、印刷装置を押し当てる押当方向においてワークを挟んで印刷装置の反対側に配置され、ワークの側面に当接して回転対称軸まわりに回転自在な姿勢のワークを支持する第1バックアップ部材を備え、鉛直方向において第1バックアップ部材よりも低い位置でワークの側面に当接して回転対称軸まわりに回転自在な姿勢のワークを支持する第2バックアップ部材を備えることを特徴としている。
第1の態様の別のワーク保持装置は、保持本体部と、回転対称軸の軸方向におけるワークの一方端部を保持本体部に対して回転自在に保持する第1保持部と、軸方向におけるワークの他方端部を保持本体部に対して回転自在に保持する第2保持部とを備え、第1保持部は自動調心軸受を介してワークの一方端部を保持し、第1保持部に対して回転駆動力を与え、第1保持部および第2保持部により保持されたワークを回転対称軸まわりに回転させる回転駆動部を備え、回転駆動部は、回転駆動力を発生させる駆動源と、駆動源から第1保持部に回転駆動力を伝達する動力伝達機構とを有し、動力伝達機構は、駆動源から第1保持部への回転駆動力の伝達と回転駆動力の伝達遮断とを切り替えるクラッチを有し、動力伝達機構は、駆動源からの回転駆動力を受けて回転する第1プーリと、第1保持部に連結される第2プーリと、第1プーリおよび第2プーリに対して変位可能に設けられる第3プーリと、第1プーリ、第2プーリおよび第3プーリに掛架された無端ベルトと、第3プーリを第1プーリおよび第2プーリから離間する方向に付勢することで無端ベルトに張力を与える付勢部材とを有することを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2の態様は、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの側面に対して印刷を行う印刷システムであって、上記ワーク保持装置と、ワーク保持装置に保持されたワークの側面に第1の印刷パターンを印刷する第1の印刷装置と、ワーク保持装置に保持されたワークの側面に第2の印刷パターンを印刷する第2の印刷装置と、ワークを保持したワーク保持装置を第1の印刷装置と第2の印刷装置との間で搬送させる搬送装置とを備えることを特徴としている。
【0009】
さらに、この発明の第3の態様は、印刷方法であって、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークを上記ワーク保持装置により保持する工程と、ワークを保持したワーク保持装置を第1の印刷装置および第2の印刷装置の順序で搬送させる工程と、第1の印刷装置に搬送されてきたワーク保持装置に保持されたワークの側面に第1の印刷装置により第1の印刷パターンを印刷する工程と、第1の印刷装置から第2の印刷装置に搬送されてきたワーク保持装置に保持されたワークの側面に第2の印刷装置により第2の印刷パターンを印刷する工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、回転対称軸の軸方向においてワークの一方端部および他方端部がそれぞれ第1保持部および第2保持部で回転自在に保持される。このため、ワークはワーク保持装置により良好に保持される。したがって、当該ワークの側面に対して印刷装置に印刷を行う際に、ワークの側面に対して印刷装置を相対的にしっかりと押し当てた状態でワークの側面への印刷が実行される。また、ワークの個体差により回転対称軸が多少ずれたとしても、自動調心軸受が回転対称軸のずれを吸収し、ワークを安定的に回転させる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの種類を問わず、ワークを良好に回転対称軸まわりに回転自在に保持することができるとともに、ワークの側面に対して印刷を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るワーク保持装置の第1実施形態を用いてワークの側面を印刷する印刷システムの概略構成例を示す模式図である。
【
図2】版ステージユニットおよびインク充填ユニットの構成を示す図である。
【
図3】ボトル保持装置およびボトル保持装置に保持されたボトルの構成を示す図である。
【
図4】ボトル保持装置に装備される回転駆動部の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図3に示すボトル保持装置によりボトルを回転させた際の偏心特性を示すグラフである。
【
図7】本発明に係るワーク保持装置の第2実施形態を示す図である。
【
図8】本発明に係るワーク保持装置の第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係るワーク保持装置の第1実施形態を用いてワークの側面を印刷する印刷システムの概略構成例を示す模式図である。この印刷システム100は、例えばガラス製の容器やボトル、樹脂製の容器やボトル等、回転対称軸(
図3の符号AR)まわりに回転対称な形状を有する物品(以下においては、これら総称して「ボトルB」と称する)の側面Baに印刷を行うためのシステムであり、ボトルBが本発明の「ワーク」の一例に相当し、ボトルBを保持するためのボトル保持装置が本発明の「ワーク保持装置」の一例に相当している。ここで、各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。例えばXY平面を水平面、Z軸を鉛直軸と考えることができる。以下においては(-Z)方向を鉛直下向きとする。また、以下の各図において構成要素の近傍に付された点線矢印は、当該構成要素の動きを示すものである。
【0014】
印刷システム100は、ボトルBの側面Baに対し、それぞれが1つのインク色で印刷を行う2組の印刷装置、すなわち第1の印刷装置101および第2の印刷装置102を備えている。したがって、この印刷システム100はボトルBの側面Baに対して2色印刷を行うことができる。なお、印刷装置を1組とした単色印刷システム、あるいは印刷装置を3組以上備えた多色印刷システムを構成することも可能である。
【0015】
第1の印刷装置101および第2の印刷装置102は、版ステージユニット1、インク充填ユニット2、転写ユニット3および仮硬化ユニット4をそれぞれ備えている。これらの各ユニットは、(-Y)方向側から(+Y)方向側に向けて上記の順番で並べて配置される。また、第2の印刷装置102の近傍には本硬化装置200が設けられている。これら第1の印刷装置101、第2の印刷装置102、本硬化装置200およびボトル着脱ステーション(図示省略)の間で、ボトルBはボトル保持装置300で保持された状態でボトル搬送装置400により循環搬送される。なお、本実施形態では、ボトル保持装置300に対するボトルBの装着および取り外しは上記ボトル着脱ステーションにてオペレータによる手動作業によって行われる。一方、それ以外の作業を自動化するために、印刷システム100はさらに、これらの各ユニット動作を制御する制御装置900を備えている。
【0016】
第1の印刷装置101および第2の印刷装置102は、以下に説明するように、同じ構成を有し、同様の動作を実行する。また、ボトル保持装置300の構成および動作については後で詳述する。
【0017】
印刷システム100における印刷処理は、
(1)版ステージユニット1およびインク充填ユニット2による光硬化性インクを用いたインクパターンの形成、
(2)インクパターンの転写ユニット3への転写、
(3)インクパターンの転写ユニット3からボトルBの側面Baへの転写、
(4)仮硬化ユニット4からの光照射によるインクの仮硬化、
の各工程からなる単色印刷動作を各印刷装置101,102でそれぞれ実行した後、
(5)本硬化装置200によるインクの本硬化、
を実行することにより完結する。
【0018】
より具体的には、ボトルBはボトル着脱ステーションでオペレータによる手動操作にてボトル保持装置300に着脱される。つまり、印刷済のボトルBがボトル保持装置300から取り外された後で印刷すべきボトルBがボトル保持装置300に装着される。こうして装着されたボトルBはボトル保持装置300より回転対称軸まわり回転自在に保持され、その状態でボトル保持装置300と一体的にボトル搬送装置400によって第1の印刷装置101に搬送される。この第1の印刷装置101においてボトル保持装置300でボトルBを回転自在に保持したまま当該ボトルBに対し上記(1)~(4)の各工程が実行される。その後で、ボトルBを保持したボトル保持装置300が第1の印刷装置101から第2の印刷装置102に搬送される。
【0019】
図2は版ステージユニットおよびインク充填ユニットの構成を示す図である。版ステージユニット1は、インクパターンを形成するための版(例えば凹版)Pを上面に載置するステージ11を備えている。ステージ11はアライメント機構12を介してベース部13に取り付けられている。アライメント機構12は、制御装置900からの制御指令に応じて、ステージ11をXYZ方向およびZ軸回りの回転方向に移動させる。例えばクロスローラベアリング機構をアライメント機構12として使用することができる。
【0020】
ベース部13は、印刷システム100の台座にY方向に延設されたガイドレール14に係合され、ガイドレール14に沿ってY方向に往復移動可能となっている。より具体的には、ベース部13には制御装置900により制御される図示しない駆動機構が連結されており、駆動機構が作動することにより、ベース部13は(-Y)方向および(+Y)方向に移動する。ベース部13の可動範囲のうち最も(-Y)方向側に寄った位置(
図2に実線で示す位置)がベース部13のホームポジションである。
【0021】
ホームポジションに位置決めされた状態におけるステージ11の上方にはアライメントカメラ15,15が配置されている。アライメントカメラ15,15はステージ11に載置された版Pの周縁部または版Pの上面に設けられたアライメントマークを撮像し、画像データを制御装置900に送出する。制御装置900はステージ11上における版Pの位置を検出し、必要に応じてアライメント機構12を動作させることで、版Pの位置を適正位置に調整する。
【0022】
ベース部13がホームポジションから(+Y)方向に移動する経路に沿って、インク充填ユニット2および転写ユニット3が設けられている。インク充填ユニット2は、直下を通過するステージ11に載置された版Pの上面に対向するノズル21を備えている。ノズル21には、制御装置900により制御されるインク供給部22から光硬化性インク(以下、単に「インク」ということがある)が供給される。供給されたインクはノズル21の下端に設けられた吐出口から吐出され、版Pの上面に塗布される。
【0023】
光硬化性インクは、顕色剤としての顔料、重合により強固なポリマー層を構成するポリマー材料(モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を含む)、および光照射を受けて化学変化することで生じる活性種によりポリマー材料の重合反応を促進する光重合開始剤を含むものである。
【0024】
ノズル21の(+Y)方向側にはドクターブレード23が設けられている。ドクターブレード23はインクが供給された版Pの表面を摺擦してインクを掻き取る。これにより、版Pの上面に設けられた凹部にインクが充填される一方、それ以外の余剰インクが除去されてインクパターンが形成される。
【0025】
こうしてインクが充填された版Pは、さらに(+Y)方向に移動して転写ユニット3の配設位置に到達する。
図1および
図2に示すように、転写ユニット3は、ブランケットロール30とこれを回転させるモータ33とを備えている。より詳しくは、ブランケットロール30は、例えば金属製の円筒であるブランケット胴31と、その表面に巻き付けられたブランケット32とを備えており、全体として概略円筒形状をなしている。ブランケットロール30は、図示しないフレームにより回転自在に支持されており、制御装置900により制御されるモータ33により、
図1に一点鎖線で示す中心軸回りに回転駆動される。
【0026】
ブランケット32は弾性を有する樹脂材料、例えばシリコン樹脂製であり、その表面にインクパターンを担持可能である。ブランケット32はボトルBの側面BaであるボトルBの表面に生じ得る凹凸よりも十分に大きな厚さを有している。
図2に示すように、ステージ11に載置された版Pがブランケットロール30の直下位置を通過するとき、ブランケット32の表面が版Pの上面に当接する。このとき、版Pの凹部に充填されているインクがブランケット32の表面に移行する。こうして版P上のインクパターンがブランケット32に受理される。
【0027】
こうしていったんブランケット32に受理(一次転写)されたインクパターンは、最終的なボトルBの側面BaであるボトルBの表面に二次転写される。このように、ブランケット32は、ボトルBの側面Baに最終転写されるインクパターンを一時的に担持する中間転写体として機能するものである。なお、本実施形態では、2つの印刷装置101、102が装備されて2種類のインクパターンを形成しているが、印刷装置101、102で形成されるインクパターンがそれぞれ本発明の「第1の印刷パターン」および「第2の印刷パターン」の一例に相当している。
【0028】
図3はボトル保持装置およびボトル保持装置に保持されたボトルの構成を示す図である。ボトル保持装置300は、同図に示すように、ボトルキャップ(図示省略)を外した状態でボトルBを保持可能となっている。このボトルBは例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を主材料とした樹脂材料やガラス材料で成形されており、回転対称軸ARまわりに回転対称な形状を有している。本実施形態ではボトルBの胴部Bbが円筒形状に仕上げられ、当該胴部Bbの表面、つまりボトルBの側面Baに対して2種類のインクパターンが重ね合わせて印刷される。また、ボトルBの内部に水、お茶、ジュースなどの飲料物や化粧品などを貯留可能となっている。このボトルBでは、回転対称軸ARの軸方向Xにおける一方側、つまり(+X)方向側で口元部Bcが形成されている。ここに言う口元部Bcは胴部Bbの肩部から概ねボトルキャップが装着される範囲を概略的に口元部とするものである。口元部Bcの(+X)方向端面には開口が設けられる一方、開口の近くから(-X)方向に向かって雄ネジ部Bdが適宜形成されている。このように構成された口元部BcおよびボトルBの底部Beがそれぞれボトル保持装置300の第1保持部310および第2保持部320により保持されてボトルBは横向き姿勢で回転対称軸ARまわりに回転自在に保持され、さらに適宜回転駆動される。
【0029】
ボトル保持装置300は、第1保持部310および第2保持部320を介してボトルBを回転自在に保持する保持本体部330を有している。この保持本体部330は、平板状の基台333と、第1支持部331と、第2支持部332とを有している。第1支持部331は、(+X)方向側で基台333から上方に立設されている。また、第2支持部332は、第1支持部331からボトルBの高さ(
図3におけるX方向サイズに相当)よりも少し広い間隔だけ(-X)方向に離間した位置で基台333から上方に立設されている。
【0030】
第1保持部310はX方向に延設されたシャフト311を有している。このシャフト311は第1支持部331に対して回転自在に軸支されており、その(-X)方向端部には自動調心軸受312を介して口元保持部材313が取り付けられている。口元保持部材313の内側に雌ネジ部が形成されている。このため、オペレータがボトルBを保持してボトルBの回転を規制しながらシャフト311の(+X)方向端部に取り付けられた摘み部材314を回転操作すると、口元部Bcに設けられた雄ネジ部Bdと螺合して口元保持部材313は横向き姿勢のボトルBと連結される。逆に、オペレータがボトルBの回転を規制しながら摘み部材314を反対側に回転させることでボトルBから口元保持部材313を取り外すことが可能となっている。なお、口元保持部材313による口元部Bcの保持形態は上記したネジ構造に限定されるものではなく、例えば複数の把持部材で把持するグリップ構造を採用してもよい。
【0031】
一方、第2保持部320はX方向に延設されたシャフト321を有している。このシャフト321は、シャフト311の軸線と一致するように配置された状態で、第2支持部332に対して回転自在に軸支されている。また、このシャフト321の(+X)方向端部には、ボトルBの底部Beと係合可能な形状に仕上げられた底保持部材322が取り付けられている。この底保持部材322と第2支持部332の(+X)側壁面との間でバネ部材323がシャフト321に遊挿されており、底保持部材322をボトルBの底部Beに付勢する。このため、
図3に示すように、ボトルBを横向き姿勢で配置するとともに口元部Bcを口元保持部材313で連結した状態で底保持部材322がボトルBの底部Beを付勢して保持することでボトルBの回転対称軸ARがシャフト311、321の軸線とほぼ一致して回転対称軸ARまわりボトルBが回転自在となる。一方、シャフト321の(-X)方向端部に取り付けられた摘み部材324をオペレータがバネ部材323の付勢力に抗いながら(-X)方向に引っ張ることで底保持部材322がボトルBの底部Beから離れてボトルBの取り外しが可能となる。
【0032】
このようにボトル保持装置300では、第1保持部310および第2保持部320によってボトルBを回転対称軸ARまわりに回転可能に保持しているが、さらに回転駆動部340が第1支持部331に設けられ、シャフト311を回転駆動してボトルBを回転させることが可能となっている。以下、
図3および
図4を参照しつつ回転駆動部340の構成および動作について詳述する。
【0033】
図4はボトル保持装置に装備される回転駆動部の構成を模式的に示す斜視図である。回転駆動部340は、第1支持部331に固定されたモータ341を本発明の「駆動源」とし、モータ341で発生した回転駆動力を動力伝達機構342を介して適宜シャフト311に与えてボトルBを回転対称軸ARまわりに回転させるものである。動力伝達機構342は、2つのギア343a、343bと、3つのプーリ344a~344cと、プーリ344a~344cの間に掛架された無端ベルト345と、クラッチ346とを有している。ギア343aはモータ341の回転軸に取り付けられている。このギア343aに対してギア343bが歯合し、さらにギア343bに対してプーリ344aがクラッチ346を介して接続されている。また、プーリ344aは無端ベルト345によりプーリ344b、344cと連結されている。これらのうちプーリ344bはシャフト311に取り付けられ、プーリ344cは揺動部材347に取り付けられている。この揺動部材347はバネ部材348による付勢力を受けてプーリ344a、344bから離間する方向Rに付勢されている。このようにプーリ344cはプーリ344a、344bに対して変位可能に設けられ、いわゆるテンションプーリとして機能し、無端ベルト345はプーリ344a~344cの間で張架され、プーリ344cの変位に伴って張力を受けている。したがって、制御装置900からの伝達指令に応じてクラッチ346がON状態に切り替わると、ギア343bとともにプーリ344aが回転してシャフト311への動力伝達が行われる。その結果、ボトルBが回転対称軸ARまわりに回転駆動される。一方、クラッチ346がOFF状態に切り替わると、上記動力伝達が遮断される。その結果、ボトルBが回転対称軸ARまわりに回転自在な状態に維持され、ブランケット32からインクパターンの転写を受ける際にはブランケット32の移動に伴ってボトルBを従動回転させることが可能となっている。
【0034】
このように回転駆動部340によりボトルBは横向き姿勢で回転駆動されたり、ブランケット32に対して従動回転するが、ボトルBを補助的に支持してボトルBの姿勢を安定させるために、ボトル保持装置300は
図5に示すように2本のバックアップローラ351、352を備えている。
【0035】
図5は
図3に示すボトル保持装置の側面図である。バックアップローラ351、352はX方向を軸方向とする軸体構造を有し、第1支持部331と第2支持部332とに対して回転自在に支持されている。このうちバックアップローラ351は、ボトルBの側面Baを印刷装置101、102のブランケット32に押し当てる押当方向Yにおいて、ボトルBを挟んでブランケット32の反対側、つまり(+Y)方向側に配置されている。このバックアップローラ351がボトルBの(+Y)方向側側面に当接することで、(+Y)方向へのボトルBの変位を規制する。
【0036】
また、もう一方のバックアップローラ352は鉛直方向Zにおいてバックアップローラ351よりも低い位置に配置されている。このバックアップローラ352がボトルBの側面Baに下方から当接することで、重力方向、すなわち(-Z)方向へのボトルBの変位を規制する。このように、本実施形態では、バックアップローラ351、352がそれぞれ本発明の「第1バックアップ部材」および「第2バックアップ部材」として機能している。
【0037】
このように構成された印刷システム100では、制御装置900によってボトル搬送装置400が制御されることで、ボトル保持装置300がボトル着脱ステーション、第1の印刷装置101、第2の印刷装置102および本硬化装置200の順序で循環搬送される。このうちボトル着脱ステーションでは、搬送されてきたボトル保持装置300に対し、オペレータがボトルBの着脱作業をマニュアルで行う。つまり、ボトル保持装置300に印刷済のボトルBが装着されている場合、オペレータは摘み部材314、324を操作して第1保持部310および第2保持部320によるボトルBの保持を解除して印刷済のボトルBをボトル保持装置300から取り外す。一方、ボトル保持装置300に対して印刷前のボトルBが未装着の場合には、オペレータは印刷前のボトルBをボトル保持装置300に運び込み、摘み部材314、324を操作して第1保持部310および第2保持部320に保持させる。こうしてボトルBの装着操作が完了し、その旨を操作パネルなどの入力装置(図示省略)に入力すると、それを受け取った制御装置900はボトルBを保持したボトル保持装置300を第1の印刷装置101に搬送して印刷処理を行う。
【0038】
この印刷処理は、制御装置900が予め記憶されたプログラムを実行し装置各部に所定の動作を実行させることにより実現される。この印刷処理では、版Pが第1の印刷装置101に搬入されてステージ11にセットされ、アライメント調整を受ける。一方、第1の印刷装置101に搬送されてきたボトル保持装置300では、制御装置900からの駆動指令に応じてモータ341が作動を開始するとともに伝達指令に応じてクラッチ346がON状態に切り替わってモータ341の回転駆動力を伝達する。これによってボトルBが回転対称軸ARまわりに回転する。その回転中にボトルBの印刷開始位置を検出し、検出結果に基づいてボトルBの回転量を調整することで当該印刷開始位置が印刷装置101と対向するようにボトルBが位置決めされる。なお、この位置決め処理については、版Pのアライメント調整処理と同様にカメラによるボトルBを撮像して得られる画像に基づいて行ってもよいし、ボトルBの特定部位をセンサで検出することでセンサから出力される検出信号に基づいて行ってもよい。いずれにしても、本実施形態では、版Pのアライメント調整処理と並行して、印刷装置101に対するボトルBの位置決め処理を自動的に行っている。もちろん、ボトルBの位置決め処理を次に説明する印刷装置101でのインクパターンの受理処理と並行して行うように構成してもよい。
【0039】
続いて、第1の印刷装置101のステージ11が(+Y)方向に移動を開始し、版Pの上面にインク充填ユニット2のノズル21から光硬化性インクIKが塗布され、ドクターブレード23により余剰インクが掻き取られることで、版面にインクが充填される。ステージ11がさらに移動し、回転するブランケットロール30の直下位置を通過することで、版Pに形成されたインクパターンがブランケット32の表面に受理される。その後で、ボトル保持装置300が(-Y)方向に移動し、ボトルBの側面Baの印刷開始位置をブランケット32の表面に押し当てる。これにより、ブランケット32からボトルBへのインクパターンの転写が開始される。この転写処理では、インクパターンを受理しているブランケット32とボトルBとが当接しながら互いにウィズ回転することにより、ブランケット32表面のインクパターンが順次ボトルBに転写されてゆく。
【0040】
ここで、ボトルBの胴部Bbはバックアップローラ351、352に当接しており、ボトルBの回転に伴いインクパターンがバックアップローラ351、352との当接位置に到達すると、未硬化のインクがボトルBからバックアップローラ351、352に転写されることがある。また、ボトルBが1周以上回転する場合、ボトルBの側面Baのインクパターンがブランケット32に再転写されてしまうことがある。これらはボトルBの側面Baのインクパターンを乱すとともに、ブランケット32やバックアップローラ351、352をインクにより汚染することになる。
【0041】
この問題を防止するために、比較的低露光量の紫外線照射による仮硬化処理が行われる。すなわち、ブランケット32からインクパターンの転写を受けた直後のボトルBの表面に向けて、仮硬化ユニット4から光(紫外線)が照射される。後述するように、仮硬化ユニット4から照射される光は、インクに含まれるポリマー材料の一部を重合させることでインクの粘度を増大させるが、インク全体を硬化させるには至らない性質を有するものである。
【0042】
こうしてインクの粘度が増大することで他の物体への付着性が低下し、インクを担持するボトルBの側面Baがバックアップローラ351、352またはブランケット32に接触したときにインクがこれらに転写されてしまうことが防止される。
【0043】
印刷装置101での印刷処理が完了すると、上記インクパターンが印刷されたボトルBを保持したままボトル保持装置300は第1の印刷装置101から第2の印刷装置102に搬送される。そして、第2の印刷装置102により、第1の印刷装置101と同様にして、印刷処理が行われる。これによって、既に印刷されたインクパターンの上に第2の印刷装置102による別のインクパターンが重ね合わせて印刷される。その後で、これらのインクパターンが印刷されたボトルBを保持したままボトル保持装置300は第2の印刷装置102から本硬化装置200に搬送される。
【0044】
この時点ではインクは完全に硬化していない。これを完全に硬化させるために本硬化装置200は仮硬化ユニット4よりも大出力の光(紫外線)をボトルBに照射する。これによって、インクが完全に硬化して印刷を完了する。その後で、ボトルBを保持したままボトル保持装置300は本硬化装置200から着脱ステーションに戻される。このような一連の動作が繰り返して実行される。
【0045】
以上のように、本実施形態では、回転対称軸ARの軸方向XにおいてボトルBの両端部、つまり口元部Bcおよび底部Beをそれぞれ第1保持部310および第2保持部320で回転自在に保持している。このため、上記したように胴部Bbが円筒形状であるボトルBはもちろんのこと他の種類のボトル、例えば回転対称軸ARまわりに回転対称な形状であるものの側面Baの外径寸法が軸方向Xにおいて変化する形状を有するボトルについても良好に支持しながら回転対称軸ARまわりに回転自在に保持することができる。したがって、当該ボトルBの側面Baに対しても印刷を良好に行うことができる。
【0046】
また、ボトルBは大量生産されるものの、それらの間で個体差をゼロとすることは事実上不可能である。例えばボトルキャップと螺合する雄ネジ部の形状はある程度均一であるものの、その回転軸ARに対する角度は複数のボトルBの間でばらついていることが多い。したがって、ボトルBの口元部Bcおよび底部Beをそれぞれ口元保持部材313および底部Beで保持したとしても、ボトルBを常時安定して回転させることは難しく、口元部Bcの変形度が大きい場合には口元部Bcに対して多大な応力が作用してボトルBを破損する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、第1保持部310のシャフト311と口元保持部材313との間に自動調心軸受312を介在させているため、ボトルBを安定して回転対称軸ARまわりに回転させることができ、印刷処理中に口元部Bcに対して多大な応力が作用するのを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るボトル保持装置300では、ボトルBを保持して回転させる場合、ボトルBの偏心をゼロとすることも事実上不可能であるが、本実施形態によれば、偏心量を抑えて安定して回転させることができるとともに、ボトルBの偏心特性の変動も少なく、高い再現性でボトルBを回転させることができる。例えばボトル保持装置300によりボトルBを保持して複数回(
図6に示す検証実験では3回)回転対称軸ARまわりに回転させながら偏心特性を計測すると、
図6に示す結果が得られた。
【0048】
図6は
図3に示すボトル保持装置によりボトルを回転させた際の偏心特性を示すグラフであり、同図中の(a)~(c)はそれぞれ1回転目、2回転目および3回転目の偏心特性を示し、(d)はそれらの偏心特性を重ね合わせたグラフである。同図における横軸は回転位置を示し、縦軸はボトル保持装置300の基台333の上面からボトルBの側面中央部までの距離を示している。これらのグラフからわかるように、ボトルBの偏心量を抑えながら高い再現性でボトルBを回転対称軸ARまわりに回転させることができる。したがって、このようなボトル保持装置300でボトルBを保持したまま各印刷装置101、102で印刷処理を行うことで各インクパターンの歪みを抑えて印刷することができるだけでなく、両インクパターンの間での位置ずれも抑制することができ、優れた品質で所望画像をボトルBの側面Baに印刷することができる。
【0049】
さらに本実施形態では、ボトル保持装置300にモータ341および動力伝達機構342を設け、各印刷装置101、102での印刷処理前に位置決め処理を行っているので、高精度な印刷を行うことができる。しかも、動力伝達機構342にクラッチ346を設け、クラッチ346による回転駆動力の伝達と伝達遮断との切替制御によって位置決め処理に適したモータ駆動による回転と転写処理に適したブランケット32の回転に従動した回転とを切り替えている。このように位置決め処理および転写処理に適した態様でボトルBを回転させることができ、ボトルBの側面Baへの印刷をさらに良好に行うことができる。
【0050】
以上説明したように、上記実施形態においては、ボトルBが本発明の「ワーク」の一例に相当し、ボトル保持装置300が本発明の「ワーク保持装置」の一例に相当している。また、ボトルBの口元部Bcおよび底部Beをそれぞれ本発明の「ワークの一方端部」および「ワークの他方端部」の一例に相当している。また、プーリ344a~344cがそれぞれ本発明の「第1プーリ」、「第2プーリ」および「第3プーリ」の一例に相当している。また、バネ部材348が本発明の「付勢部材」の一例に相当している。さらに、ボトル搬送装置400が本発明の「搬送装置」の一例に相当している。
【0051】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の印刷システム100では、3つのプーリ344a~344cと無端ベルト345とを組み合わせてモータ341からの回転駆動力をシャフト311に伝達しているが、例えば
図7に示すように2つのギア349a、349bをそれぞれクラッチ346のクラッチ板(図示省略)およびシャフト311に取り付けて動力伝達するように構成してもよい(第2実施形態)。
【0052】
また、上記実施形態では、印刷処理を行う際にはモータ341で発生した回転駆動力の伝達を遮断してブランケット32の回転に伴ってボトルBを従動回転させているが、印刷処理においても回転駆動力によりボトルBをブランケット32と同期して回転させてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、回転駆動部340をボトル保持装置300に設け、シャフト311を回転駆動してボトルBを回転させるように構成しているが、回転駆動部340を省略して常にボトルBを従動回転させるように構成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、2本のバックアップローラ351、352でボトルBを補助的に支持しているが、バックアップローラの本数はこれに限定されるものではなく、例えば
図8に示すように4本のバックアップローラ353~356によりボトルBを補助的に支持してもよい(第3実施形態)。この第3実施形態では、バックアップローラ353、354は、押当方向YにおいてボトルBを挟んでブランケット32の反対側、つまり(+Y)方向側に配置され、ボトルBの(+Y)方向側側面に当接することで(+Y)方向へのボトルBの変位を規制する。また、残りのバックアップローラ355、356は鉛直方向Zにおいてバックアップローラ353、354よりも低い位置に配置され、ボトルBの側面Baに下方から当接することで、重力方向、すなわち(-Z)方向へのボトルBの変位を規制する。このように、本実施形態では、バックアップローラ353、354が本発明の「第1バックアップ部材」として機能する一方、バックアップローラ355、356が本発明の「第2バックアップ部材」として機能している。なお、第1保持部310および第2保持部320によりボトルBを安定して保持可能な場合には、バックアップローラを省いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、2台の印刷装置101、102および2台のボトル保持装置300を装備して2種類のインクパターンをボトルBの側面Baに重ね合せて印刷する印刷システム100に本発明を適用しているが、印刷装置およびボトル保持装置300の台数はこれに限定されるものではなく、1台あるいは3台以上装備してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、固定されたブランケットロール30に対し、版ステージ11が版Pを、ボトル保持装置300がボトルBをそれぞれ移動させることで印刷処理における互いの位置決めがなされる。しかしながら、これらの移動は相対的に実現されていればよく、どの装置を可動とするかについては上記に限定されず任意である。
【0057】
さらに、上記実施形態では、略円筒形状のボトルBが本発明の「ワーク」の一例であるが、ワークはこれに限定されるものではない。例えば両端部が開放された筒状の物体や、概ね円筒面である表面に対し凹凸が設けられた物体に対しても、各物体が回転対称軸まわりに回転対称な形状を有する限り、上記したボトル保持装置300と同様に構成されたワーク保持装置によって回転自在に保持するとともに印刷システム100でワーク保持装置を用いて印刷処理を実行することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は、回転対称軸まわりに回転対称な形状を有するワークの側面に対して印刷を行う際にワークを回転対称軸まわりに回転自在に保持するワーク保持装置全般、ならびにワーク保持装置によりワークを保持しながらワークの側面に対して印刷を行う印刷技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
100…印刷システム
101…第1の印刷装置
102…第2の印刷装置
300…ボトル保持装置
310…第1保持部
312…自動調心軸受
313…口元保持部材
320…第2保持部
322…底保持部材
348…バネ部材(付勢部材)
330…保持本体部
331…第1支持部
332…第2支持部
333…基台
340…回転駆動部
341…モータ(駆動源)
342…動力伝達機構
344a…(第1)プーリ
344b…(第2)プーリ
344c…(第3)プーリ
345…無端ベルト
346…クラッチ
351、353、354…(第1)バックアップローラ
352、355、356…(第2)バックアップローラ
400…ボトル搬送装置
AR…回転対称軸
B…ボトル(ワーク)
Ba…(ボトルの)側面
Bc…(ボトルの)口元部
Bd…雄ネジ部
Be…(ボトルの)底部
X…軸方向
Y…押当方向
Z…鉛直方向