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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】逆打支柱位置決め冶具
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/04 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
E02D13/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018228247
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020090839
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 真一
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆政
(72)【発明者】
【氏名】木田 聖二
(72)【発明者】
【氏名】八波 理沙
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-129562(JP,A)
【文献】特開平07-062658(JP,A)
【文献】特表2015-531442(JP,A)
【文献】特開2000-001854(JP,A)
【文献】特開平09-203042(JP,A)
【文献】特開2006-291550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆打工法において逆打支柱を位置決めするための冶具であって、
長手方向両端が開口した筒形に形成され、前記逆打支柱が埋め込まれる縦穴内に設置されるケーシングと、
地面から突出している前記ケーシングの上端部にそれぞれ連結され、前記ケーシングの上端開口部を横断する第1支持部材及び第2支持部材と、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材の上に、これら第1支持部材及び第2支持部材に跨って配置されるプレート部材と、
前記プレート部材に設けられ、前記逆打支柱を挿入可能な開口部と、
前記開口部の周縁から前記逆打支柱の挿入方向に沿って延在し、前記逆打支柱の挿入をガイドするガイド部材と、を有し、
前記第1支持部材の長手方向における異なる二箇所から前記ケーシングの上端までの鉛直距離をそれぞれ調節可能であり、
前記第2支持部材の長手方向における異なる二箇所から前記ケーシングの上端までの鉛直距離をそれぞれ調節可能であり、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材に対する前記プレート部材の位置を調節可能であり、
前記ガイド部材の長さは、前記逆打支柱の全長よりも短く、かつ、前記逆打支柱の全長の1/2よりも長い、
逆打支柱位置決め冶具。
【請求項2】
請求項1に記載の逆打支柱位置決め冶具において、
2本の前記ガイド部材が前記開口部の周縁から前記逆打支柱の挿入方向に沿って延在しており、
前記開口部を通過した前記逆打支柱は、前記2本のガイド部材により四方から取り囲まれる、
逆打支柱位置決め冶具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の逆打支柱位置決め冶具において、
前記第1支持部材の長手方向における異なる二箇所と前記ケーシングの前記上端部とをそれぞれ連結する一対の第1連結具と、
前記第2支持部材の長手方向における異なる二箇所と前記ケーシングの前記上端部とをそれぞれ連結する一対の第2連結具と、を有し、
前記第1連結具及び前記第2連結具のそれぞれは、
前記ケーシングの前記上端部に固定される固定部と、
前記固定部に連接された筒部と、
前記筒部に挿入されるとともに、当該筒部から突出している一端側が前記第1支持部材又は前記第2支持部材に連結される支持部と、を有し、
前記筒部に対する前記支持部の突出長を変更可能である、
逆打支柱位置決め冶具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の逆打支柱位置決め冶具であって、
前記プレート部材は、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の長手方向と平行な方向に移動可能であり、かつ、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の長手方向と直交する方向に移動可能であり、
任意の位置に移動された前記プレート部材は、複数の固定具により、前記第1支持部材及び前記第2支持部材に固定される、
逆打支柱位置決め冶具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の逆打支柱位置決め冶具であって、
前記プレート部材に、当該逆打支柱位置決め冶具の全部又は一部を吊り上げるための係止具を係止可能な係止部が設けられている、
逆打支柱位置決め冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆打工法において逆打支柱を埋め込む際に用いる冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の地下階を構築する方法には、大別して「順打工法」と「逆打工法」とがある。「順打工法」とは、地下階の躯体等を下から上に向かって構築する工法であり、「逆打工法」とは、地下階の躯体等を上から下に向かって構築する工法である。地下階を構築しながら地上階を同時に構築できる逆打工法には、工期短縮等のメリットがある。
【0003】
地下階の躯体等を上から下に向かって構築する逆打工法では、上層階の躯体重量等を支えるための支柱を予め地中に埋め込む必要がある。かかる支柱の埋め込みは、例えば次のようにして行われる。まず、支柱を埋め込むべき場所に縦穴を掘削し、掘削した縦穴内にコンクリートを打設する。その後、クレーン等で支柱を吊り上げて縦穴内に挿入する。このとき、支柱の下部を所定長以上コンクリート内に埋没させる。尚、縦穴内に支柱を挿入した後にコンクリートが打設されることもある。いずれにしても、縦穴内に打設されたコンクリートが硬化すると、縦穴に挿入されている支柱の下部が固定される。
【0004】
ここで、上記のようにして埋め込まれる支柱は、本設の柱である場合と仮設の柱である場合とがある。そして、上記支柱は、それが本設の柱である場合には「構真柱」と呼ばれ、それが仮設の柱である場合には「仮支柱」と呼ばれることがある。もっとも、構真柱及び仮支柱は、逆打工法において、上層階の躯体重量等を支えるために予め地中に埋め込まれる支柱である点で共通する。よって、本明細書では、構真柱及び仮支柱を「逆打支柱」と総称する。つまり、本発明における「逆打支柱」には、「構真柱」及び「仮支柱」の双方が含まれる。
【0005】
逆打支柱を地中に埋め込む際には、当該逆打支柱の位置,高さ,傾き等について高い精度が求められる。そこで、逆打支柱の埋め込みに際しては、特許文献1に記載されているような位置決め装置等が用いられることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭59-39010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている位置決め装置は、基枠,基枠上に横方向に移動・固定可能に設けられたY軸台車,Y軸台車上に縦方向に移動・固定可能に設けられたX軸台車,X軸台車上に回転・固定可能に設けられた回転台等から構成される上部位置決め装置を含んでおり、構造が非常に複雑である。
【0008】
さらに、特許文献1に記載されている位置決め装置を用いて逆打支柱をより高精度に位置決めするためには、前記上部位置決め装置と下部位置決め装置とを併用する必要がある。しかしながら、下部位置決め装置は、複数本のシリンダを備える基環や複数個の案内ローラ等から構成されおり、上部位置決め装置と同等か、それ以上に複雑な構造を有している。
【0009】
総じて、逆打支柱を位置決めするための従来の装置や冶具は、構造が複雑であり、現場での組立や解体に手間や時間を要する。
【0010】
本発明の目的は、簡易な構造でありながら、逆打支柱を必要十分な精度で位置決めすることができる冶具を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の逆打支柱位置決め冶具は、逆打工法において逆打支柱を位置決めするための冶具である。本発明の逆打支柱位置決め冶具は、長手方向両端が開口した筒形に形成され、前記逆打支柱が埋め込まれる縦穴内に設置されるケーシングと、地面から突出している前記ケーシングの上端部の上方に配置され、前記ケーシングの上端開口部を横断する第1支持部材及び第2支持部材と、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の上に、これら第1支持部材及び第2支持部材に跨って配置されるプレート部材と、前記プレート部材に設けられ、前記逆打支柱を挿入可能な開口部と、前記開口部の周縁から前記逆打支柱の挿入方向に沿って延在するガイド部材と、を有する。前記第1支持部材の長手方向における異なる二箇所から前記ケーシングの上端までの鉛直距離をそれぞれ調節可能であり、前記第2支持部材の長手方向における異なる二箇所から前記ケーシングの上端までの鉛直距離をそれぞれ調節可能である。また、前記第1支持部材及び前記第2支持部材に対する前記プレート部材の位置を調節可能である。そして、前記ガイド部材の長さは、前記逆打支柱の全長よりも短く、かつ、前記逆打支柱の全長の1/2よりも長い。
【0012】
本発明の一態様では、2本の前記ガイド部材が前記開口部の周縁から前記逆打支柱の挿入方向に沿って延在しており、前記開口部を通過した前記逆打支柱は、前記2本のガイド部材により四方から取り囲まれる。
【0013】
本発明の他の一態様では、前記第1支持部材の長手方向における異なる二箇所と前記ケーシングの前記上端部とをそれぞれ連結する一対の第1連結具と、前記第2支持部材の長手方向における異なる二箇所と前記ケーシングの前記上端部とをそれぞれ連結する一対の第2連結具と、が設けられる。前記第1連結具及び前記第2連結具のそれぞれは、前記ケーシングの前記上端部に固定される固定部と、
前記固定部に連接された筒部と、前記筒部に挿入されるとともに、当該筒部から突出している一端側が前記第1支持部材又は前記第2支持部材に連結される支持部と、を有し、前記筒部に対する前記支持部の突出長を変更可能である。
【0014】
本発明の他の一態様では、前記プレート部材は、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の長手方向と平行な方向に移動可能であり、かつ、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の長手方向と直交する方向に移動可能である。任意の位置に移動された前記プレート部材は、複数の固定具により、前記第1支持部材及び前記第2支持部材に固定される。
【0015】
本発明の他の一態様では、前記プレート部材に、当該逆打支柱位置決め冶具の全部又は一部を吊り上げるための係止具を係止可能な係止部が設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構造でありながら、逆打支柱を必要十分な精度で位置決めすることができる冶具が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用された位置決め冶具の一例を示す斜視図である。
図2】連結具の構造を示す説明図である。
図3図1に示される位置決め冶具を用いて逆打支柱を位置決めする手順の一工程を示す説明図である。
図4図1に示される位置決め冶具を用いて逆打支柱を位置決めする手順の他の一工程を示す説明図である。
図5図1に示される位置決め冶具を用いて逆打支柱を位置決めする手順の他の一工程を示す説明図である。
図6図1に示される位置決め冶具を用いて逆打支柱を位置決めする手順の他の一工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の逆打支柱位置決め冶具の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る逆打支柱位置決め冶具(以下、「位置決め冶具1」と略称する。)は、逆打工法において逆打支柱を位置決めするための冶具である。図1に示されるように、本実施形態に係る位置決め冶具1は、ケーシング10,支持部材20,プレート部材30及びガイド部材40を有する。
【0019】
<ケーシング>
図1に示されるように、位置決め冶具1が有するケーシング10は、長手方向両端(図1には上端のみが図示されている。)が開口した筒形に形成されている。ケーシング10は、地面Gに掘削された縦穴内に、その上端部10aが地面Gから突出するように設置される。図示されているケーシング10は、円筒形に形成されており、その全長は縦穴の深さよりも長い。もっとも、ケーシング10の形状は筒形であればよく、円筒形に限られない。また、ケーシング10は、その上端部10aが地面Gから突出するように縦穴内に設置可能な全長を備えていればよく、必ずしも縦穴の深さ以上の全長を備えている必要はない。さらに、ケーシング10を所望の位置を保持することができれば、ケーシング10の下端を縦穴の底に到達させる必要はない。つまり、縦穴の深さとの関係でケーシング10の全長を規定する必要はない。
【0020】
<支持部材>
図1に示されるように、位置決め冶具1は、2つの支持部材20(第1支持部材21及び第2支持部材22)を有する。第1支持部材21及び第2支持部材22は、実質的に同一の形状,構造及び寸法を備えている。第1支持部材21及び第2支持部材22は、所謂「H鋼」であって、一対のフランジ23a,23b及びウェブ24を有する。以下の説明では、各支持部材20におけるフランジ23aを「上側フランジ23a」と呼び、フランジ23bを「下側フランジ23b」と呼んで区別する場合がある。さらに、各支持部材20における上側フランジ23aの外面を当該支持部材20の「上面」と呼び、各支持部材20における下側フランジ23bの外面を当該支持部材20の「下面」と呼ぶ場合がある。もっとも、かかる区別や呼称は説明の便宜上の区別や呼称に過ぎない。
【0021】
第1支持部材21及び第2支持部材22は、ケーシング10の上端部10aの上方に、ケーシング10の上端開口部11を横断するように配置される。また、第1支持部材21及び第2支持部材22は、ウェブ24同士がケーシング10の径方向において対向する向きで互いに平行又は略平行に配置される。
【0022】
<連結具>
図1に示されるように、第1支持部材21の長手方向における異なる二箇所は、一対の第1連結具51によってケーシング10の上端部10aにそれぞれ連結される。同じく、第2支持部材22の長手方向における異なる二箇所は、一対の第2連結具52によってケーシング10の上端部10aにそれぞれ連結される。より具体的には、第1支持部材21の長手方向中央よりも前方の一箇所が第1連結具51によって上端開口部11の縁に連結され、第1支持部材21の長手方向中央より後方の一箇所が他の第1連結具51によって上端開口部11の縁に連結される。
【0023】
同様に、第2支持部材22の長手方向中央よりも前方の一箇所が第2連結具52によって上端開口部11の縁に連結され、第2支持部材22の長手方向中央よりも後方の一箇所が他の第2連結具52によって上端開口部11の縁に連結される。尚、図1では、作図の便宜上の理由から、第2支持部材22をケーシング10に連結する2つの第2連結具52のうちの一方のみが示されている。
【0024】
第1連結具51及び第2連結具52は、同一の形状,構造及び寸法を有する。そこで、以下の説明では、第1連結具51及び第2連結具52を「連結具50」と総称する場合がある。
【0025】
図2に示されるように、連結具50は、ケーシング10の上端開口部11の縁(ケーシング10の管壁)に固定される固定部53と、固定部53に連接された筒部54と、一端側が筒部54から上方に突出するように筒部54に挿入される支持部55と、を有する。そして、筒部54から突出している支持部55の一端が第1支持部材21又は第2支持部材22に連結される。
【0026】
固定部53は、アングル53a及びボルト53bから構成されている。アングル53aは、ケーシング10の上端開口部11の縁(ケーシング10の管壁)に引っ掛けることが可能な略L字形に形成されている。アングル53aの一端側は、ケーシング10の管壁の外側に配置され、管壁の外周面に沿って下方に延びている。一方、アングル53aの他端側は、ケーシング10の管壁の端面に載せられ、その端面は上端開口部11の内側に臨んでいる。そして、上端開口部11の内側に臨んでいるアングル53aの一方の端面に、筒部54が固定(溶接)されている。
【0027】
ケーシング10の管壁の外側に配置されるアングル53aの一端側には、これを貫通するねじ穴が設けられており、このねじ穴にボルト53bがねじ結合されている。ボルト53bは、ねじ穴を貫通して管壁の外周面に当接しており、ボルト53bを所定方向に回転させてねじ穴にねじ込むと、当該ボルト53bの先端面と筒部54の外周面との間に管壁が挟み込まれる。このようにして、アングル53a及びボルト53bから構成される固定部53がケーシング10の管壁の上端、つまりケーシング10の上端部10aに固定される。
【0028】
支持部55は、筒部54に挿入可能な棒状に形成されており、その外周面には雄ねじが形成されている。支持部55にはカラー56が取り付けられており、カラー56の内周面には、支持部55の外周面に形成されている雄ねじとねじ結合する雌ねじが形成されている。支持部55の外周面に形成されている雄ねじとカラー56の内周面に形成されている雌ねじは、協働して送りねじとして機能する。また、カラー56の外周面には、当該カラー56の径方向外側に向けて延びる操作ピン56aが突設されている。操作ピン56aは、カラー56の径方向両側にそれぞれ突出している。
【0029】
カラー56の下端面は筒部54の上端面に当接しており、カラー56を回転させると、筒部54に対する支持部55の挿入長が増減する。具体的には、操作ピン56aを把持してカラー56を第1方向に回転させると、送りねじの作用により、支持部55が筒部54に引き込まれ、筒部54に対する支持部55の挿入長が増加する。この結果、筒部54に対する支持部55の突出長が減少する。一方、操作ピン56aを把持してカラー56を第1方向と反対の第2方向に回転させると、送りねじの作用により、支持部55が筒部54から引き出され、筒部54に対する支持部55の挿入長が減少する。この結果、筒部54に対する支持部55の突出長が増加する。このように、筒部54に対する支持部55の突出長は変更可能である。以下、特に断らない限り、「支持部55の突出長」と言った場合、「筒部54に対する支持部55の突出長」を意味するものとする。
【0030】
それぞれの支持部55の上端には板状の当接部55aが設けられており、各当接部55aは、第1支持部材21又は第2支持部材22の下側フランジ23bに宛がわれている。より具体的には、第1連結具51の支持部55に設けられている当接部55aは、第1支持部材21の下側フランジ23bの外面、つまり第1支持部材21の下面に宛がわれている。また、第2連結具52の支持部55に設けられている当接部55aは、第2支持部材22の下側フランジ23bの外面、つまり第2支持部材22の下面に宛がわれている。それぞれの当接部55aと下側フランジ23bとは、クランプ57(図1)によって固定されている。
【0031】
再び図1を参照する。上記のように、第1支持部材21は、その前後二箇所が2つの第1連結具51の支持部55によって下方から支持されている。また、第2支持部材22は、その前後二箇所が2つの第2連結具52の支持部55によって下方から支持されている。よって、それぞれの第1連結具51が備える支持部55の突出長を変更することにより、第1支持部材21の長手方向における異なる二箇所からケーシング10の上端までの鉛直距離をそれぞれ調節可能である。また、それぞれの第2連結具52が備える支持部55の突出長を変更することにより、第2支持部材22の長手方向における異なる二箇所からケーシング10の上端までの鉛直距離をそれぞれ調節可能である。そして、第1支持部材21の長手方向における異なる二箇所からケーシング10の上端までの鉛直距離をそれぞれ調節すれば、第1支持部材21の高さや傾きが調節される(変更される。)。また、第2支持部材22の長手方向における異なる二箇所からケーシング10の上端までの鉛直距離をそれぞれ調節すれば、第2支持部材22の高さや傾きが調節される(変更される。)。つまり、各連結具50における支持部55の突出長を調節することにより、第1支持部材21及び第2支持部材22をケーシング10の上端開口部11の上方において、任意の高さで水平に保持することができる。もちろん、第1支持部材21と第2支持部材22の一方または双方を任意の角度で傾けることもできる。
【0032】
<プレート部材>
図1に示されるように、プレート部材30は、第1支持部材21及び第2支持部材22の上に、これら第1支持部材21及び第2支持部材22に跨って配置される。プレート部材30は、一対の縦板31,32と、それら縦板31,32を挟んで対向する上板33及び下板34と、を有する。上板33及び下板34は、長方形又は略長方形であり、互いに同一の形状及び寸法を有する。上板33及び下板34の幅は、縦板31,32の対向間隔よりも広い。よって、上板33及び下板34の幅方向一側は、縦板31の外側に突出しており、上板33及び下板34の幅方向他側は、縦板32の外側に突出している。
【0033】
プレート部材30は、その下板34が第1支持部材21及び第2支持部材22の上面と対向する向きで第1支持部材21及び第2支持部材22の上に配置される。そして、縦板31,32の外側に突出している下板34の突出部分が、固定具としてのクランプ35によって第1支持部材21及び第2支持部材22の上側フランジ23aに固定される。もっとも、クランプ35による固定を解除すれば、プレート部材30を支持部材20の上で移動させることができる。具体的には、プレート部材30を支持部材20の長手方向と平行な方向及び長手方向と直交する方向の少なくとも2方向に移動させることができる。以下の説明では、支持部材20の長手方向と直交する方向を「X方向」、支持部材20の長手方向と平行な方向を「Y方向」と定義する。また、X方向及びY方向の双方と直交する方向を「Z方向」と定義する。
【0034】
上記のように、プレート部材30は、支持部材20の上で、少なくともX方向及びY方向に移動可能であり、また、X方向及びY方向における任意の位置に移動させたプレート部材30は、クランプ35により当該位置に固定可能である。つまり、第1支持部材21及び第2支持部材22に対するプレート部材30の位置を調節可能である。
【0035】
プレート部材30には、逆打支柱Aを挿入可能な矩形の開口部36が設けられている。プレート部材30が上板33及び下板を34有する本実施形態における開口部36は、上板33に設けられた上側開口部と、下板34に設けられた下側開口部と、を含む。尚、図示は省略されているが、プレート部材30の上板33の表面には、滑り止めのための凹凸が形成されている。
【0036】
上板33の長手方向両側には、係止部としての吊りプレート37が複数設けられている。各吊りプレート37には、プレート部材30を含む当該位置決め冶具1の全部又は一部を吊り上げるための係止具(フック,ワイヤー,シャックル等)を係止可能な係止穴が形成されている。
【0037】
<ガイド部材>
図1に示されるガイド部材40は、プレート部材30に溶接されており、開口部36の周縁から逆打支柱Aの挿入方向(=Z方向)に沿って延在している。また、ガイド部材40は、開口部36に開口面に対して垂直に延在している。本実施形態では、2本のガイド部材40が開口部36の周縁からプレート部材30の下方に向かって延在している。
【0038】
それぞれのガイド部材40の全長は、逆打支柱Aの全長よりも短く、かつ、逆打支柱Aの全長の1/2よりも長い。本実施形態におけるガイド部材40の全長は、約6000mm(=約6m)である。また、それぞれのガイド部材40は、略コ字形の断面形状を有しており、互いに対向する向きで配置されている。この結果、開口部36を通過してケーシング10内(縦穴内)に降ろされる逆打支柱Aは、その全長の1/2以上が2つのガイド部材40によって四方から取り囲まれることになる。
【0039】
ここで、逆打支柱Aとこれを取り囲むガイド部材40との間に数mmの隙間が生じるように、2つのガイド部材40の間隔が設定されている。位置決め精度の観点からは、かかる隙間は存在しないか、なるべく狭い方が好ましい。一方、隙間が全く存在しなかったり、隙間が狭すぎたりすると、逆打支柱Aとガイド部材40とが干渉し、逆打支柱Aの円滑な挿入が阻害される虞がある。そこで、本実施形態では、求められる位置決め精度を確保しつつ、逆打支柱Aの円滑な挿入を実現することを目的として、逆打支柱Aとこれを取り囲むガイド部材40との間に数mmの隙間が生じるように、対向するガイド部材40の間隔が設定されている。
【0040】
<位置決め手順>
次に、主に図3図6を参照しつつ、本実施形態に係る位置決め冶具1を用いて逆打支柱Aを位置決めする手順の一例について説明する。
【0041】
図3に示されるように、アースオーガー等を用いて掘削した縦穴H内にケーシング10を設置する。例えば、ケーシング10をクレーン等で吊り上げて縦穴H内に降ろす。ここで、ケーシング10の全長は縦穴Hの深さよりも長いので、ケーシング10の下端が縦穴Hの底に到達すると、ケーシング10の上端部10aが地面から突出する。例えば、ケーシング10の上部が地面Gから50cm程度突出する。言い換えれば、縦穴H内にケーシング10を設置したときに、地面Gから突出するケーシング10の一部が上端部10aである。
【0042】
次に、図4に示されるように、ケーシング10の上端部10aの上方に支持部材20を配置する。具体的には、ケーシング10の管壁に、その周方向に沿って第1連結具51及び第2連結具52をそれぞれ固定し、それら第1連結具51及び第2連結具52が備える支持部55の上に支持部材20を搭載する。より具体的には、各連結具50の上端に設けられている当接部55a(図2)の上に各支持部材20の下側フランジ23bを載せ、当接部55aと下側フランジ23bとをクランプ57(図1)によって固定する。尚、図4では当接部55a及びクランプ57の図示を省略してある。
【0043】
その後、各連結具50が備える支持部55の突出長を調節し、第1支持部材21及び第2支持部材22のZ方向における位置(高さ)及び傾きを調節する。通常、第1支持部材21及び第2支持部材22の高さは、基準面(通常は水平面)に対して同一の高さに調節される。また、第1支持部材21及び第2支持部材22の傾きは、基準面に対して平行に調節される。尚、支持部55の突出長の変更に伴って支持部材20の高さ及び傾きが変更される原理については既述のとおりである。
【0044】
次に、図5に示されるように、支持部材20の上にプレート部材30を載せる。例えば、プレート部材30をクレーン等で吊り上げ、支持部材20の上側フランジ23aの上に降ろす。プレート部材30をクレーン等で吊り上げる際には、プレート部材30に設けられている吊りプレート37を利用することができる。例えば、それぞれの吊りプレート37に設けられている係止穴に係止させたシャックルにワイヤーの一端に設けられている係止環を係止させ、当該ワイヤーの他端に設けられている係止環にクレーンのフックを引っ掛けてプレート部材30を吊り上げることができる。
【0045】
次に、支持部材20の上に載せられたプレート部材30を支持部材20の上でX方向やY方向に移動させて、プレート部材30を任意の位置に配置し、支持部材20に固定する。つまり、第1支持部材21及び第2支持部材22に対するプレート部材30の位置を任意の位置に合わせ、当該位置に固定する。
【0046】
ここまでの工程により、プレート部材30に設けられている開口部36の高さ,位置及び傾きが調節される。つまり、開口部36はプレート部材30に設けられており、そのプレート部材30は、Z方向における位置(高さ)及び傾きが予め調節された支持部材20の上に配置され、その後、X方向及びY方向の位置が調節される。よって、最終的には、開口部36の高さ,位置及び傾きが任意の高さ,位置及び傾きに調節される。
【0047】
もっとも、支持部材20及びプレート部材30を同時にケーシング10の上端部10aの上方に設置してもよい。つまり、第1支持部材21及び第2支持部材22に対するプレート部材30の位置合わせ及び固定を先行して行い、その後、プレート部材30が既に固定されている第1支持部材21及び第2支持部材22をケーシング10の上端部10aに固定してもよい。
【0048】
次に、図6に示されるように、逆打支柱Aをクレーン等で吊り上げる。例えば、逆打支柱Aの上端に係止させたワイヤーにクレーンのフックを引っ掛けて逆打支柱Aを吊り上げる。その後、吊り上げた逆打支柱Aをプレート部材30に設けられている開口部36に挿入し、ガイド部材40の内側を通し、当該ガイド部材40に沿ってケーシング10内に降ろす。ここで、開口部36のX方向及びY方向の位置やX-Y平面に対する高さ及び傾きは調節済である。また、ガイド部材40は、開口部36の開口面に対して垂直に延在している。よって、逆打支柱Aを開口部36に挿入し、開口部36に挿入された逆打支柱Aをガイド部材40の内側を通してケーシング10(縦穴H)内に降ろせば、当該逆打支柱Aの位置及び傾きは、調節済の開口部36の位置及び傾きと一致又は略一致する。つまり、逆打支柱Aの位置決めが行われる。さらに、ガイド部材40の全長は、逆打支柱Aの全長の1/2よりも長いので、挿入中の逆打支柱Aの揺れが防止又は抑制され、逆打支柱Aがより高精度に位置決めされる。
【0049】
次に、縦穴Hの底部(ケーシング10の底部)にコンクリートを打設し、逆打支柱Aの下部を固定する。尚、逆打支柱Aの挿入前に縦穴Hの底部にコンクリートが打設されることもあることは既述のとおりである。その後、位置決め冶具1を撤去し、逆打支柱Aの埋め込み作業を完了する。例えば、ケーシング10と支持部材20との固定を解除し、支持部材20及びプレート部材30をまとめてクレーン等で吊り上げて撤去する。このとき、ケーシング10と支持部材20との固定は、クランプ57(図1)を取り外すだけで解除することができる。また、支持部材20とプレート部材30との固定も、クランプ35(図1)を取り外すだけで解除することができる。然る後、ジャッキ等を用いてケーシング10を縦穴Hから抜去する。
【0050】
以上は、位置決め冶具1を用いて逆打支柱Aを位置決めする手順の一例であり、現場の状況等に応じて上記手順の一部を適宜することができる。例えば、上記手順では、連結具50の上に支持部材20を載せた後に支持部55の突出長を調節した。しかし、支持部55の突出長を調節した後に連結具50の上に支持部材20を載せてもよい。この場合、連結具50に載せられる支持部材20にプレート部材30が予め固定されていてもよい。かかる手順による場合には、連結具50の上で支持部材20をX方向やY方向に移動させることで、プレート部材30に設けられている開口部36及びガイド部材40の同方向の位置合わせが行われる。
【0051】
また、ケーシング10以外の位置決め冶具1の構成要素(支持部材20,プレート部材30及びガイド部材40)を予め一体化し、かつ、支持部材20に連結具50を取り付けた上で、これらをケーシング10に固定してもよい。かかる手順による場合には、一体化された支持部材20,プレート部材30及びガイド部材40をケーシング10に固定した後、必要に応じて支持部55の突出長を調節したり、クランプ35を緩めてプレート部材30の位置を調節したりする。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る位置決め冶具1は、簡易な構造でありながら、逆打支柱Aを必要十分な精度で位置決めすることができる。また、本実施形態に係る位置決め冶具1は、短時間で容易に組立て及び設置することができ、かつ、短時間で容易に解体及び撤去することもできる。
【0053】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…逆打支柱位置決め冶具(位置決め冶具)、10…ケーシング、10a…上端部、11…上端開口部、20…支持部材、21…第1支持部材、22…第2支持部材、23a…フランジ(上側フランジ)、23b…フランジ(下側フランジ)、24…ウェブ、30…プレート部材、31,32…縦板、33…上板、34…下板、35…クランプ、36…開口部、37…吊りプレート、40…ガイド部材、50…連結具、51…第1連結具、52…第2連結具、53…固定部、53a…アングル、53b…ボルト、54…筒部、55…支持部、55a…当接部、56…カラー、56a…操作ピン、57…クランプ、A…逆打支柱、G…地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6