(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H02M7/06 H
H02M7/06 S
(21)【出願番号】P 2018235605
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 貴之
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-68688(JP,A)
【文献】特開平7-303332(JP,A)
【文献】特開2017-38841(JP,A)
【文献】特開2009-60722(JP,A)
【文献】特開平4-312362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00-7/40
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧が入力される3つの入力端子と、
前記3つの入力端子のそれぞれに接続され、前記交流電圧の全波整流電圧を出力する全波整流回路と、
前記全波整流電圧
を分圧した検出レベル信号を出力するレベル調整回路と、
前記検出レベル信号を受信し、前記検出レベル信号に基づき制御信号を出力する第1の判定回路と、
前記全波整流電圧に基いて、駆動信号を出力する第2の判定回路と、を備え、
前記レベル調整回路が、前記駆動信号に応じて、前記検出レベル信号の値を調節
し、
前記第2の判定回路は、前記全波整流電圧を用いて、前記3つの入力端子に入力された交流電圧が、単相交流であるか、又は三相交流であるかを判定する、電源装置。
【請求項2】
前記レベル調整回路は、その一端が接地電位に接続されたレベル調節部を含み、
前記レベル調節部は、前記全波整流回路と前記接地電位との間で前記全波整流電圧を分圧し、当該分圧された電圧を
前記検出レベル信号として出力する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記レベル調整回路は、前記第2の判定回路から供給される前記駆動信号に応じて抵抗値が変化する可変抵抗素子を有し、前記駆動信号により前記可変抵抗素子の抵抗値を変化させて、前記検出レベル信号の値を調節する、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記レベル調節部は、前記全波整流回路と前記接地電位との間に直列に接続された第1の抵抗素子と、当該第1の抵抗素子に並列に接続された調整素子と、を有し、当該調整素子は、直列に接続された第2の抵抗素子及びスイッチング素子からなる、請求項2
又は3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記レベル調節部の前記スイッチング素子は、前記第2の判定回路から供給される前記駆動信号により、オン状態又はオフ状態とされる、請求項
4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記駆動信号は、前記3つの入力端子に入力された交流電圧が三相交流のときは前記レベル調節部の前記スイッチング素子をオン状態とし、前記3つの入力端子うちのいずれかの2端子に入力された単相交流のときは前記レベル調節部の前記スイッチング素子をオフ状態とする、請求項
4又は5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記3つの入力端子に入力された交流電圧が、三相交流であって、いずれか1相が欠相するときは、前記レベル調節部の前記スイッチング素子をオフ状態とする、請求項
6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記レベル調節部の前記スイッチング素子がオン状態のときは、前記スイッチング素子がオフ状態のときよりも前記検出レベル信号の値が低くなる、請求項
5乃至7のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記レベル調整回路は、入力される交流電圧が三相交流又は単相交流のいずれの場合であっても、同じ交流電圧に対して同じ値の前記検出レベル信号を出力する、請求項2乃至
8のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項10】
前記第1の判定回路が出力する前記制御信号は、起動信号又は停止信号のいずれかであり、前記検出レベル信号が第1の基準電圧を上回る場合は前記起動信号を出力し、前記検出レベル信号が前記第1の基準電圧を下回る場合は前記停止信号を出力する、請求項2乃至
9のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項11】
前記レベル調整回路は、前記全波整流回路と前記レベル調節部との間に、直列に接続される分圧部を更に含む、請求項2乃至
10のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項12】
前記第1の判定回路は、前記検出レベル信号と前記第1の基準電圧とを比較する第1の比較器と、前記第1の比較器の出力を前記制御信号に変換する出力回路と、を含む、請求項
10に記載の電源装置。
【請求項13】
前記第2の判定回路は、前記全波整流電圧を分圧する分圧回路と、分圧された前記全波整流電圧と第2の基準電圧とを比較する第2の比較器と、前記第2の比較器の出力を受信する時定数回路と、前記時定数回路の出力と第3の基準電圧を比較する第3の比較器と、前記第3の比較器の出力を受信して駆動信号を出力する駆動回路と、を含む、請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項14】
前記第1の判定回路及び前記第2の判定回路のそれぞれは、共通の動作電源電圧で駆動される、請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特に、交流電圧が入力される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、単相交流及び三相交流のいずれかを入力し直流電圧を出力する3線入力の電源装置、例えばAC/DCコンバータ、が幅広く使用されている。この種の電源装置では、停電検出回路のように、入力された交流電圧の値を検出して、電源装置の起動又は停止を自動的に行う機能を備えるものがある。
【0003】
上記の停電検出回路では、一般に、入力される交流電圧を全波整流し、その整流電圧を平滑化した後、更に分圧して検出電圧を設定する。そして、この設定電圧と所定の閾値(基準電圧)と、コンパレータ等の比較回路で比較して、所定の閾値に達したときに、電源装置の起動又は停止の手順を開始する。なお、停止判断においては、コンパレータに設けたヒステリシス回路により、起動時よりも低い閾値電圧で電源装置を停止させる構成が採用されている。
【0004】
又、この種の電源装置では、更に、停電検出回路自体を駆動するための内部補助電源が装備され、その内部補助電源の起動及び停止のそれぞれは、電源装置本体の起動及び停止よりも低い電圧で行う必要がある。
【0005】
例えば、起動時には、まず所定の入力電圧で内部補助電源が起動し、所定の補助電源電圧が供給され、その後、更に入力電圧が上昇した時点で電源装置本体の起動手順が開始される。一方、停止時には、所定の入力電圧において、まず電源装置本体が停止して直流電圧の出力を止め、その後、更に入力電圧が低下した時点で内部補助電源を停止させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、上記の停電検出回路では、入力された交流電圧の全波整流電圧を平滑化した後、更に分圧して検出電圧を設定する。そして、この設定電圧と所定の閾値電圧とを比較する構成となっている。しかし、この全波整流電圧を平滑化した電圧は、入力された交流電圧の値が同一のとき、単相交流よりも三相交流の方がかなり高くなる。それ故、単相交流よりも三相交流の方が、入力電圧の値がより低い状態で、起動及び停止を判定する閾値電圧に達してしまい、問題である。
【0007】
このように、三相交流を入力したときの起動及び停止電圧の判定電圧が低すぎることは、内部補助電源の起動及び停止との順序の逆転を引き起こし、電源装置の誤動作を誘発する要因となる。
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、単相交流及び三相交流のいずれが入力された場合でも、同じ入力電圧の値に対して起動及び停止の判定がなされる構成とし、内部補助電源の起動及び停止と、電源装置本体の起動及び停止との順序を守り、単相交流及び三相交流において、それぞれの全波整流電圧が異なることに起因する誤動作を回避した電源装置を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様の電源装置は、交流電圧が入力される3つの入力端子と、3つの入力端子のそれぞれに接続され、交流電圧の全波整流電圧を出力する全波整流回路と、全波整流電圧に基いて、検出レベル信号を出力するレベル調整回路と、検出レベル信号を受信し、検出レベル信号に基づき制御信号を出力する第1の判定回路と、全波整流電圧に基いて、駆動信号を出力する第2の判定回路と、を備え、レベル調整回路が、前記駆動信号に応じて、前記検出レベル信号の値を調節する。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様において、レベル調整回路は、その一端が接地電位に接続されたレベル調節部を含み、レベル調節部は、全波整流回路と接地電位との間で全波整流電圧を分圧し、当該分圧された電圧を検出レベル信号として出力する。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、上記第2の態様において、レベル調整回路は、第2の判定回路から供給される駆動信号に応じて抵抗値が変化する可変抵抗素子を有し、駆動信号により可変抵抗素子の抵抗値を変化させて、検出レベル信号の値を調節する。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、上記第3の態様において、第2の判定回路は、全波整流電圧を用いて、3つの入力端子に入力された交流電圧が、単相交流であるか、又は三相交流であるかを判定する。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、上記第2乃至第4のいずれか1つの態様において、レベル調節部は、全波整流回路と接地電位との間に直列に接続された第1の抵抗素子と、当該第1の抵抗素子に並列に接続された調整素子と、を有し、当該調整素子は、直列に接続された第2の抵抗素子及びスイッチング素子からなる。
【0014】
本発明の第6の態様によれば、上記第5の態様において、レベル調節部のスイッチング素子は、第2の判定回路から供給される駆動信号により、オン状態又はオフ状態とされる。
【0015】
本発明の第7の態様によれば、上記第5又は第6の態様おいて、駆動信号は、3つの入力端子に入力された交流電圧が三相交流のときはレベル調節部のスイッチング素子をオン状態とし、3つの入力端子うちのいずれかの2端子に入力された単相交流のときはレベル調節部のスイッチング素子をオフ状態とする。
【0016】
本発明の第8の態様によれば、上記第7の態様おいて、3つの入力端子に入力された交流電圧が、三相交流であって、いずれか1相が欠相するときは、レベル調節部のスイッチング素子をオフ状態とする。
【0017】
本発明の第9の態様によれば、上記第6乃至第8のいずれか1つの態様において、レベル調節部のスイッチング素子がオン状態のときは、スイッチング素子がオフ状態のときよりも検出レベル信号の値が低くなる。
【0018】
本発明の第10の態様によれば、上記第2乃至第9のいずれか1つの態様において、レベル調整回路は、入力される交流電圧が三相交流又は単相交流のいずれの場合であっても、同じ交流電圧に対して同じ値の検出レベル信号を出力する。
【0019】
本発明の第11の態様によれば、上記第2乃至第10のいずれか1つの態様において、第1の判定回路が出力する制御信号は、起動信号又は停止信号のいずれかであり、検出レベル信号が第1の基準電圧を上回る場合は起動信号を出力し、検出レベル信号が第1の基準電圧を下回る場合は前記停止信号を出力する。
【0020】
本発明の第12の態様によれば、上記第2乃至第11のいずれか1つの態様において、レベル調整回路は、全波整流回路とレベル調節部との間に、直列に接続される分圧部を更に含む。
【0021】
本発明の第13の態様によれば、上記第11の態様おいて、第1の判定回路は、検出レベル信号と第1の基準電圧とを比較する第1の比較器と、第1の比較器の出力を制御信号に変換する出力回路と、を含む。
【0022】
本発明の第14の態様によれば、上記第1乃至第13のいずれか1つの態様において、第2の判定回路は、全波整流電圧を分圧する分圧回路と、分圧された全波整流電圧と第2の基準電圧とを比較する第2の比較器と、第2の比較器の出力を受信する時定数回路と、時定数回路の出力と第3の基準電圧を比較する第3の比較器と、前記第3の比較器の出力を受信して駆動信号を出力する駆動回路と、を含む。
【0023】
本発明の第15の態様によれば、上記第1乃至第14のいずれか1つの態様において、第1の判定回路及び第2の判定回路のそれぞれは、共通の動作電源電圧で駆動される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電源装置によれば、単相交流及び三相交流のいずれが入力された場合でも、同じ入力電圧の値に対して起動及び停止の判定がなされる構成とし、内部補助電源の起動及び停止と、電源装置本体の起動及び停止との順序を守り、単相及び三相の全波整流電圧が異なることに起因する誤動作を回避した電源装置を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態の回路ブロック図を示す図面である。
【
図2】本発明の実施形態の単相交流の入力電圧が上昇するときの起動検出時の各接点の波形を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態の三相交流の入力電圧が上昇するときの起動検出時の各接点の波形を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態の単相交流の入力電圧が下降するときの停止検出時の各接点の波形を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態の三相交流の入力電圧が下降するときの停止検出時の各接点の波形を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態の三相交流の入力において、ひとつの相が欠相したときの各接点の波形の変化を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態の三相交流の入力において、欠相していた相が復相したときの各接点の波形の変化を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態の回路に適用可能なヒステリシス特性を有する比較器を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態の回路に適用可能なヒステリシス特性を有する比較器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は本発明の電源装置の実施形態の回路ブロック図を示す図面である。本回路ブロックは、交流電圧が入力される3つの入力端子U、V、Wを備え、直流電圧を出力可能な入力整流部3を有する。3つの入力端子U、V、Wには、三相交流電圧、又は任意の2端子に単相交流電圧を入力することができ、これら3つの入力端子U、V、Wには、入力された交流電圧の全波整流電圧を出力する全波整流回路5が接続されている。
【0028】
全波整流回路5にはレベル調整回路10が接続され、このレベル調整回路10は、受信した全波整流電圧に基いて検出レベル信号を出力する。レベル調整回路10は、検出レベル信号供給線14を介して第1の判定回路20に接続され、第1の判定回路は検出レベル信号を受信する。この第1の判定回路20は信号出力端子22を有し、受信した検出レベル信号に基いて判定された制御信号である、電源装置の起動又は停止信号をその信号出力端子22に出力する。
【0029】
一方、全波整流回路5には、更に第2の判定回路30が接続されている。この第2の判定回路30は、全波整流回路5から受信した全波整流電圧に基いて、駆動信号(Q1_Vgs)を出力する。この駆動信号(Q1_Vgs)は、レベル調整回路10に入力され、レベル調整回路10は、この駆動信号(Q1_Vgs)の受信に応答して、全波整流電圧に基いて出力する検出レベル信号の電圧値を調節することができる。
【0030】
レベル調整回路10は、その一端が接地電位に接続されたレベル調節部11を含むことができる。このレベル調節部11は、全波整流回路5と接地電位との間で直列に接続されており、全波整流電圧を、例えばキャパシタ素子等で平滑化し、この平滑化した電圧を更に分圧して、検出レベル信号として出力することができる。
【0031】
又、レベル調節部11は、第2の判定回路30から受信する駆動信号(Q1_Vgs)に応答して、電気抵抗値が変化する可変抵抗素子を有することができる。この可変抵抗素子の電気抵抗値が変化するとレベル調節部11における分圧電圧の値が変わるので、これによりレベル調整回路10が出力する検出レベル信号の電圧値を変化させることができる。
【0032】
第2の判定回路30は、全波整流回路5から出力される全波整流電圧に基いて、3つの入力端子U、V、Wに入力された交流電圧が、単相交流であるか、又は三相交流であるかを判別することができる。又、この第2の判定回路30は、第1の判定回路20とともに、共通の動作電源電圧で駆動することができる。
【0033】
全波整流回路5は、3つの入力端子U、V、WのそれぞれにダイオードD1、D2、D3を接続した構成である。従って、3つの入力端子U、V、Wのうちのいずれかの2端子に単相交流電圧が入力されたときの、全波整流回路5が出力する全波整流電圧は、
図2の分圧電圧(V_R9)の波形に示されたとおり、単相交流電圧の半周期毎に、電圧が0Vとなる点を有する。一方、3つの入力端子U、V、Wに三相交流電圧が入力されたときの全波整流電圧は、
図3の分圧電圧(V_R9)の波形に示されるように、一定レベル以上の電圧値を維持しながら小振幅で振動する波形となる。
【0034】
これらの分圧電圧(V_R9)の波形の差を利用して、例えば、
図2及び
図3の分圧電圧(V_R9)波形に示した通り、所定の電圧Vref2を設定して、分圧電圧(V_R9)の波形と比較することにより、3つの入力端子U、V、Wに入力された電圧が、単相交流であるか、三相交流であるかを判別することができる。
【0035】
上述のレベル調節部11の可変抵抗素子は、全波整流回路5と接地電位との間に直列に接続された第1の抵抗素子R3と、この第1の抵抗素子R3と並列に接続された調整素子と、を有し、この調整素子は、直列に接続された第2の抵抗素子R4及びスイッチング素子Q1で構成されてよい。
【0036】
このスイッチング素子Q1は、例えば絶縁ゲート型の電界効果トランジスタとすることができる。スイッチング素子Q1のゲート電極には、第2の判定回路30が出力する駆動信号(Q1_Vgs)が接続され、この駆動信号の電圧値により、スイッチング素子Q1をオン状態又はオフ状態に切換を行うことができる。
【0037】
レベル調整回路10は、全波整流回路5とレベル調節部11との間に、直列に接続された分圧部12を更に備える。そして、検出レベル信号の電圧値は、この分圧部12とレベル調節部11の抵抗比によって確定することができる。
【0038】
スイッチング素子Q1がオフ状態のときは、第2の抵抗素子R4は開放状態となるので、レベル調節部11の電気抵抗値は、第1の抵抗素子R3の抵抗値と同一となる。一方、スイッチング素子Q1がオン状態のときは、第2の抵抗素子R4は第1の抵抗素子R3と並列に接続されることになるので、レベル調節部11の電気抵抗値は、第1の抵抗素子R3及び第2の抵抗素子R4を並列接続した場合の合成抵抗値となり、第1の抵抗素子R3単独の抵抗値よりも低下する。
【0039】
従って、スイッチング素子Q1がオン状態のときが、オフ状態のときに比べてレベル調節部11の電気抵抗値が低くなるため、分圧部12及びレベル調節部11で抵抗分圧して発生させる検出レベル信号の電圧も、スイッチング素子Q1がオフ状態の時よりオン状態のときに、より低くなる。
【0040】
次に、第1の判定回路20について説明する。
【0041】
第1の判定回路20は、第1の比較器26及び出力回路28を含む。第1の比較器26は、検出レベル信号供給線から受信する検出レベル信号の電圧と、あらかじめ決められた第1の基準電圧25とを比較する。そして、検出レベル信号の電圧が第1の基準電圧25を上回る場合は、低レベル(
図2及び
図3のCMP1_V0の波形を参照)の電圧を出力し、下回る場合は、高レベル(
図4及び
図5のCMP1_V0の波形を参照)の電圧を出力する。
【0042】
この検出レベル信号の電圧は、入力交流電圧の上昇とともに増加し、入力交流電圧の下降とともに低下する特性である。従って、レベル調整回路10の分圧特性及び第1の基準電圧25を調整することにより、交流電圧印加開始時には、入力交流電圧が所定の電圧に達したときに、第1の判定回路20から起動信号を出力させることができる。又、入力交流電圧が低下傾向の場合は、入力交流電圧が所定の電圧を下回ったときに、第1の判定回路20から停止信号を出力させることができる。
【0043】
しかしながら、起動信号を出力する入力交流電圧の値と、停止信号を出力する入力交流電圧の値が同じであると、起動/停止信号の出力判定電圧近傍で入力交流電圧が振動したときに、短時間内に起動/停止信号を連続して出力することになり、第1の比較器26の動作が不安定になる恐れがある。それを回避するために、
図8に示すように第1の比較器26に抵抗素子R5、R6及びダイオード素子D4を追加して、入力電圧が上昇するときと、下降するときでヒステリシス特性を持たせることができる。
【0044】
このヒステリシス特性を有する比較器を、第1の比較器26として
図1に記載の回路に適用した場合、例えば、入力交流電圧上昇時には電圧が80Vに達したときに起動信号が出力され、入力電圧下降時には電圧が70Vまで低下してから、停止信号が出力されるように、回路定数を設定することができる。
【0045】
又、出力回路28は、この第1の比較器26の出力に基いて、その出力が低レベルの場合は、電源装置の起動信号を出力し、高レベルの場合は、電源装置の停止信号を出力することができる。特に図示はしないが、これらの起動信号又は停止信号を受信して、入力整流部3を含む電源装置を起動又は停止させる動作を行う回路ブロックを更に備えることができる。
【0046】
このように、本実施形態では、電源投入時には入力交流電圧の上昇を検出して電源装置の起動信号を出力することができる。又、電源切断時には入力交流電圧の下降を検出して電源装置の停止信号を出力することができる。
【0047】
更に、入力交流電圧の値を常時監視することにより、停電時に、所定の電圧以下に電圧が降下することに応じて電源装置を停止し、復旧時に、所定の電圧以上に電圧が上昇したことに応じて電源装置を起動することが可能となる。
【0048】
続いて、第2の判定回路30について説明する。
【0049】
第2の判定回路30は、全波整流回路5から出力された全波整流電圧を分圧して、所定の分圧電圧(V_R9)を出力する分圧回路31と、この分圧回路31の出力の電圧値を、第2の基準電圧37と比較する第2の比較器33と、第2の比較器33からの出力を遅延させ、出力電圧(V_C3)を出力する。更に、出力電圧(V_C3)は、第3の比較器35により第3の基準電圧38と比較される。この第3の比較器35の出力は、駆動回路36に入力され駆動信号Q1_Vgsに変換される。
【0050】
ここで、単相交流電圧入力時の第2の判定回路30の各節点の電圧を
図2及び
図4に示す。単相交流電圧を全波整流回路5により整流した全波整流電圧は、位相が0°及び180°でほぼ0となる脈流となる。この電圧を、抵抗素子からなる分圧回路31で分圧した信号も
図2及び
図4の分圧電圧(V_R9)に示すとおり脈流となる。
【0051】
全波整流電圧に対して、適切に第2の基準電圧37を設定することにより、分圧電圧(V_R9)が第2の基準電圧37を上回るときに、第2の比較器33の出力(CMP2_V0)がハイレベル、分圧電圧(V_R9)が第2の基準電圧37を下回るときに、第2の比較器33の出力(CMP2_V0)がローレベルとすることができる。
【0052】
ここで、次段の時定数回路34の時定数を十分に大きくすることにより、第2の比較器33の出力電圧(CMP2_V0)が、ハイレベルである期間内では、時定数回路34が十分に充電されない、すなわち出力電圧が上昇しない、ようにすることができる。この時定数の設定により、時定数回路34の出力電圧は、第3の基準電圧38まで上昇しない範囲で充放電を繰り返すことになる。従って、出力電圧(V_C3)と第3の基準電圧38とを比較する第3の比較器35の出力(CMP3_V0)は、ローレベルで保持されることになる。
【0053】
このように、第3の比較器35の出力(CMP3_V0)がローレベルの間は、抵抗分圧回路からなる駆動回路36から出力される駆動信号(Q1_Vgs)もローレベルに保持される。従って、レベル調整回路10のレベル調節部11に配置されたスイッチング素子Q1は常時オフ状態、すなわち第2の抵抗素子R4は開放状態であるから、検出レベル信号(V_R3)は第1の抵抗素子R3だけで決定される。
【0054】
一方、三相交流電圧が入力されるときの、第2の判定回路30の各節点の電圧を、
図3及び
図5に示す。三相交流電圧を全波整流回路5により整流した全波整流電圧は、概ね直流電圧に近い波形となるが、位相が180°変化する間に小振幅で3回振動する現象は残っている。この電圧を、抵抗素子からなる分圧回路31で分圧した信号も
図3及び
図5の分圧電圧(V_R9)に示すとおり、小振幅の振動が残存するものの、概ね直流電圧に近い波形となる。
【0055】
ここで、内部補助電源の起動後の第2の基準電圧37は、三相交流電圧を入力したときの分圧電圧(V_R9)を常時下回るように設定することが必須である。言い換えれば、分圧電圧(V_R9)は、第2の基準電圧37を常時上回るので、第2の比較器33の出力(CMP2_V0)を常時ハイレベルに固定することができる。
【0056】
そして、次段の時定数回路34の時定数は、単相交流電圧の入力に対応するために十分に大きく設定されているから、その出力電圧(V_C3)は常時ハイレベルに維持される。このことにより、出力電圧(V_C3)と第3の基準電圧38を比較する第3の比較器35の出力(CMP3_V0)も常時ハイレベルとすることができる。
【0057】
第3の比較器35の出力(CMP3_V0)が常時ハイレベルであるから、抵抗分圧回路からなる駆動回路36の出力である駆動信号(Q1_Vgs)もハイレベルに維持される。従って、レベル調整回路10のレベル調節部11に配置されたスイッチング素子Q1は常時オン状態となり、第2の抵抗素子R4が第1の抵抗素子R3と並列接続された状態となるから、検出レベル信号は、第1の抵抗素子R3及び第2の抵抗素子R4の合成抵抗値により決定される。
【0058】
このようにして、第2の判定回路30は、単相交流電圧が入力されるときには、スイッチング素子Q1をオフ状態とするローレベルの電圧を出力し、三相交流電圧が入力されるときには、スイッチング素子Q1をオン状態とするハイレベルの電圧を出力することで、入力電圧が、単相であるか、三相であるかを判別することができる。
【0059】
一方、第1の判定回路による起動又は停止の判定は、レベル調整回路10から出力される検出レベル信号の電圧値により決定される。又、レベル調整回路10は、交流の入力電圧を全波整流し、その整流電圧を概ね直流電圧として扱えるように、更に平滑化した後、抵抗分圧して検出レベル信号として出力する。
【0060】
これら、単相交流電圧を全波整流し、更に平滑化して概ね直流となった電圧値と、当該単相交流電圧と同じ電圧値を有する三相交流電圧を全波整流し、更に平滑化して概ね直流となった電圧値と、の比は自明である。従って、これらの直流電圧値の比を相殺するように、第1の抵抗素子R3及び第2の抵抗素子R4の電気抵抗値を設定することで、単相交流又は三相交流のいずれの電圧が入力された場合でも、同一の実効値に対して、同一の検出レベル信号の電圧を出力することができる。
【0061】
故に、単相交流又は三相交流のいずれの電圧が入力された場合でも、同一の実効値に対して、起動信号又は停止信号を出力することが可能となる。
【0062】
以上説明したとおり、本発明の実施形態によれば、単相交流及び三相交流のいずれが入力された場合でも、同じ入力電圧の値に対して起動及び停止の判定がなされる構成とし、内部補助電源の起動及び停止と、電源装置本体の起動及び停止との順序を守り、単相交流及び三相交流において、それぞれの全波整流電圧が異なることに起因する誤動作を回避した電源装置を実現するものである。
【0063】
なお、
図2は実効値82Vの単相交流電圧が、3つの入力端子U、V、Wのうち任意のいずれかの2端子に入力され、起動信号を出力する際の各節点の信号波形を示す。
図3は実効値81Vの三相交流電圧が、3つの入力端子U、V、Wに入力され、起動信号を出力する際の各節点の信号波形を示す。このように、単相交流及び三相交流のいずれが入力された場合においても、同一の実効値を有する電圧が入力されたときに起動信号が出力されている。
【0064】
また、
図4は実効値70Vの単相交流電圧が、3つの入力端子U、V、Wのうち任意のいずれかの2端子に入力され、停止信号を出力する際の各節点の信号波形を示す。
図5は実効値69Vの三相交流電圧が、3つの入力端子U、V、Wに入力され、停止信号を出力する際の各節点の信号波形を示す。このように、単相交流及び三相交流のいずれが入力された場合においても、同一の実効値を有する電圧が入力されたときに停止信号が出力されている。
【0065】
加えて、
図8に示すヒステリシス回路を、第1の比較器26に適用し、
図9に示すヒステリシス回路を、第2の比較器33及び第3の比較器に適用することにより、単相交流又は三相交流のいずれが入力された場合であっても、起動信号を出力するときの入力電圧の実効値(約80V)と、停止信号を出力するときの入力電圧の実効値(約70V)と、の差分も同程度とすることができる。
【0066】
更に、
図6には、三相交流電圧が入力されて、電源装置動作しているときに、三相のうちの任意の1相が欠相した場合の各節点の波形を示す。欠相したことが第2の判定回路30により検出され、検出レベル信号(V_R3)の電圧が上昇するが、電源装置の動作は継続することができる。
【0067】
又、上記の欠相していた相が複相したときの各節点の波形を
図7に示す。複相したことが第2の判定回路30により検出され、検出レベル信号(V_R3)の電圧が所定の値に復帰する。この動作についても、電源装置の稼働を継続したまま行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 電源装置
3 入力整流部
5 全波整流回路
10 レベル調整回路
11 レベル調節部
12 分圧部
14 検出レベル信号供給線
20 第1の判定回路
22 信号出力端子
25 第1の基準電圧
26 第1の比較器
28 出力回路
30 第2の判定回路
31 分圧回路
32 駆動信号供給線
33 第2の比較器
34 時定数回路
35 第3の比較器
36 駆動回路
37 第2の基準電圧
38 第3の基準電圧
40 動作電源
41 動作電圧供給線
U、V、W 入力端子