IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プレス工業株式会社の特許一覧

特許7181076建設機械のキャビン構造及びその製造方法
<>
  • 特許-建設機械のキャビン構造及びその製造方法 図1
  • 特許-建設機械のキャビン構造及びその製造方法 図2
  • 特許-建設機械のキャビン構造及びその製造方法 図3
  • 特許-建設機械のキャビン構造及びその製造方法 図4
  • 特許-建設機械のキャビン構造及びその製造方法 図5
  • 特許-建設機械のキャビン構造及びその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】建設機械のキャビン構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20221122BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20221122BHJP
   B62D 65/14 20060101ALI20221122BHJP
   B62D 33/06 20060101ALI20221122BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B62D25/08 A
B62D65/00 A
B62D65/14
B62D33/06 A
E02F9/16 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018238667
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100217
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】有地 毅成
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261064(JP,A)
【文献】特開2006-036002(JP,A)
【文献】特開2013-184535(JP,A)
【文献】特開平08-302741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0104589(US,A1)
【文献】特開2007-154453(JP,A)
【文献】特開2002-161551(JP,A)
【文献】特開2006-256486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0354010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
E02F 9/16
B62D 33/06
B62D 65/00
B62D 65/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの前部の左右にフロントピラーが立設され、前記フロアパネルの後部の左右にリヤピラーが立設され、左右何れか一方のフロントピラーとリヤピラーとの間にドア用のセンターピラーが配設され、左右他方のフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が形成された、塗装済みのキャブフレーム本体と、
該塗装済みのキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の前記大型開口を通じて前記キャブフレーム本体内に運び入れて組み付けられたインパネ、シート、エアコン等の内装品と、
前記塗装済みのキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の前記大型開口に装着される塗装済みのサイドパネルとを備え、
塗装済みのサイドパネルが、ボルト、リベットまたは接着剤によって、前記塗装済みのキャブフレーム本体の前記大型開口に装着されている、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のキャビン構造を製造する方法であって、
フロアパネルの前部の左右にフロントピラーが立設され、前記フロアパネルの後部の左右にリヤピラーが立設され、左右何れか一方のフロントピラーとリヤピラーとの間にドア用のセンターピラーが配設され、左右他方のフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が形成された、塗装済みのキャブフレーム本体を製造しておき、
この塗装済みのキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の前記大型開口を通じて、インパネ、シート、エアコン等の内装品を、キャブフレーム本体内に運び入れて組み付けた後、
前記内装品が組み付けられた塗装済みのキャブフレーム本体の大型開口に、塗装済みのサイドパネルを、ボルト、リベットまたは接着剤によって、装着するようにした、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械のキャビン構造を製造する方法であって、
フロアパネルの前部の左右にフロントピラーが立設され、前記フロアパネルの後部の左右にリヤピラーが立設され、左右何れか一方のフロントピラーとリヤピラーとの間にドア用のセンターピラーが配設され、左右他方のフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が形成されたキャブフレーム本体を製造しておき、
このキャブフレーム本体を電着塗装用の塗料水溶液また洗浄液に沈めて引き上げる際、前記大型開口が下方となるように前記キャブフレーム本体の姿勢を傾斜した状態として、引き上げたキャブフレームのフロアパネルに貯まった塗料水溶液または洗浄液を前記大型開口から落滴させ、
こうして塗装されたキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の前記大型開口を通じて、インパネ、シート、エアコン等の内装品を、キャブフレーム本体内に運び入れて組み付けた後、
前記内装品が組み付けられた塗装済みのキャブフレーム本体の大型開口に、塗装済みのサイドパネルを、ボルト、リベットまたは接着剤によって、装着するようにした、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のキャビン構造及びその製造方法に係り、特に、インパネ、シート、エアコン等の内装品の組み付け性を向上できる建設機械のキャビン構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(a)、図1(b)に示すように、建設機械(油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、ダンプトラック、アーティキュレートダンプトラック等)のキャビン構造1においては、キャブの車幅方向の左右何れか一方のみにドア2が設けられているタイプが多い。このため、図2(a)に示すように、キャブフレーム本体3Jのドア2が設けられる側(図2(a)においては進行方向左側)には、フロントピラー4Lとリヤピラー5Lとの間にドア用のセンターピラー6が設けられ、キャブフレーム本体3Jの反ドア側には、センターピラー6が設けられていない。
【0003】
従来、建設機械のキャビン構造を製造する際には、図2(a)に示すように、キャブフレーム本体3Jの反ドア側(進行方向右側)のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間に、強度・剛性用の構造部材としてサイドパネル7Jを溶接し、サイドパネル7Jが溶接されたキャブフレーム本体3Jを電着塗装した後、ドア側のフロントピラー4Lとセンターピラー6との間から、矢印Xで示すように、インパネ、シート、エアコン等の内装品をキャブフレーム本体3Jに運び入れて組み付けるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-36002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図2(a)に矢印Xで示すように、インパネ等の内装品をキャブフレーム本体3J内に運び入れるための搬入用の開口となる、ドア用のセンターピラー6とフロントピラー4Lとの間隔は、内装品のサイズに対して狭く、搬入性が良いとは言えなかった。また、搬入用の開口となるセンターピラー6とフロントピラー4Lとの間隔が、マテリアルハンドリング機器(荷役機器、以下マテハン機器)を使用できるほど広くないため、一定の重量を有するインパネ、シート、エアコン等の内装品を複数の作業員で持ち上げて搬入する必要があり、作業性が良いとは言えなかった。
【0006】
なお、特許文献1には、建機キャブを前部構造体と主構造体とに分割し、これら前部構造体と主構造体とをボルトで締結するようにした建機キャブ構造が開示されている。しかし、文献1の主構造体には、車幅方向の左右ともにフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが配設されている。よって、文献1の建機キャブ構造は、左右何れか一方のセンターピラーが存在しないことを利用してインパネ、シート、エアコン等の内装品をキャブ内に搬入する開口の面積拡大を図った本発明とは、技術前提が相違する。
【0007】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、インパネ、シート、エアコン等の内装品の組み付け性を向上できる建設機械のキャビン構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成すべく創案された本発明に係る建設機械のキャビン構造によれば、フロアパネルの前部の左右にフロントピラーが立設され、フロアパネルの後部の左右にリヤピラーが立設され、左右何れか一方のフロントピラーとリヤピラーとの間にドア用のセンターピラーが配設され、左右他方のフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が形成された、塗装済みのキャブフレーム本体と、塗装済みのキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の大型開口を通じてキャブフレーム本体内に運び入れて組み付けられたインパネ、シート、エアコン等の内装品と、塗装済みのキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の大型開口に装着される塗装済みのサイドパネルとを備え、塗装済みのサイドパネルが、ボルト、リベットまたは接着剤によって、塗装済みのキャブフレーム本体の大型開口に装着されている、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造が提供される。
【0009】
また、本発明に係る建設機械のキャビン構造の製造方法によれば、フロアパネルの前部の左右にフロントピラーが立設され、フロアパネルの後部の左右にリヤピラーが立設され、左右何れか一方のフロントピラーとリヤピラーとの間にドア用のセンターピラーが配設され、左右他方のフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が形成された、塗装済みのキャブフレーム本体を製造しておき、この塗装済みのキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の大型開口を通じて、インパネ、シート、エアコン等の内装品を、キャブフレーム本体内に運び入れて組み付けた後、内装品が組み付けられた塗装済みのキャブフレーム本体の大型開口に、塗装済みのサイドパネルを、ボルト、リベットまたは接着剤によって、装着するようにした、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明に係る建設機械のキャビン構造の製造方法によれば、フロアパネルの前部の左右にフロントピラーが立設され、フロアパネルの後部の左右にリヤピラーが立設され、左右何れか一方のフロントピラーとリヤピラーとの間にドア用のセンターピラーが配設され、左右他方のフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が形成されたキャブフレーム本体を製造しておき、このキャブフレーム本体を電着塗装用の塗料水溶液また洗浄液に沈めて引き上げる際、大型開口が下方となるようにキャブフレーム本体の姿勢を傾斜した状態として、引き上げたキャブフレームのフロアパネルに貯まった塗料水溶液または洗浄液を大型開口から落滴させ、こうして塗装されたキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の大型開口を通じて、インパネ、シート、エアコン等の内装品を、キャブフレーム本体内に運び入れて組み付けた後、内装品が組み付けられた塗装済みのキャブフレーム本体の大型開口に、塗装済みのサイドパネルを、ボルト、リベットまたは接着剤によって、装着するようにした、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)塗装済みのキャブフレーム本体の反ドア側のフロントピラーとリヤピラーとの間の大型開口に、塗装済みのサイドパネルをボルト、リベットまたは接着剤によって装着する前に、キャブフレーム本体内に組み付けられるインパネ、シート、エアコン等の内装品を大型開口を通じてキャブフレーム本体内に搬入できるので、インパネ等の内装品の搬入性が向上し、搬入時間を短縮できる。
(2)インパネ等の内装品の搬入用の開口となるフロントピラーとリヤピラーとの間隔が、従来搬入用の開口となっていたフロントピラーとセンターピラーと間隔よりも広いため、所謂マテハン機器を使用してインパネ等の内装品をキャブフレーム内に搬入できるので、一定の重量を有するインパネ等の内装品をキャブフレーム本体内に搬入する際の作業性が向上し、作業時間を短縮できる。
(3)インパネ、シート、エアコン等の内装品をキャブフレーム本体の外部において適宜纏めるように組み立てて、大型開口を通過できる大きさのサブアッセンブリ品とした後、そのサブアッセンブリー品を所謂マテハン機器を使用する等して大型開口を通じてキャブフレーム本体の内部に搬入できるので、作業性が向上する。
(4)塗装済みのキャブフレーム本体の大型化開口に、塗装済みのサイドパネルを、溶接ではなく、ボルト、リベットまたは接着剤によって装着しているので、装着後のキャビン構造において、キャブフレーム本体とサイドパネルとの接合部分における塗装面が溶接熱で傷んでしまうことはなく、完成したキャビン構造の品質と組立性とを両立できる。
(5)サイドパネルを装着する前のキャブフレーム本体を電着塗装する際、キャブフレームをフロントピラーとリヤピラーとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が形成された側が下方となるように傾斜した姿勢として電着塗装用の塗料水溶液また洗浄液に沈めて引き上げることで、引き上げたキャブフレームのフロアパネルに貯まった塗料水溶液または洗浄液を大型開口から容易に液抜きできる。よって、液切れの時間を短縮でき、所謂タクトタイムを短縮できる。また、電着塗装の各工程において、前槽から今槽、今槽から次槽への液の持ち込み量を低減でき、塗装の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】建設機械のキャビン構造の外観図であり、(a)はキャビン構造の斜視図、(b)はキャビン構造を反対方向から見た斜視図である。
図2】(a)は従来例に係る建設機械のキャビン構造及びその製造方法を示す説明図、(b)は本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造及びその製造方法を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造及びその製造方法を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造及びその製造方法を示す別の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造のキャブフレーム本体を塗装する様子を示す説明図であり、(a)はキャブフレーム本体を電着塗装用の塗料水溶液または洗浄液に沈めた様子を示す説明図、(b)はキャブフレーム本体を電着塗装用の塗料水溶液または洗浄液から引き上げた様子を示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造のキャブフレーム本体を電着塗装する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(建設機械のキャビン構造)
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造1においては、フロアパネル8の前部の左右にフロントピラー4L、4Rが立設され、フロアパネル8の後部の左右にリヤピラー5L、5Rが立設され、左右何れか一方(図3においては進行方向左側)のフロントピラー4Lとリヤピラー5Lとの間にドア用のセンターピラー6が配設され、左右他方(進行方向右側)のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間にセンターピラーが存在せず大型開口9が形成された、塗装済みのキャブフレーム本体3と、塗装済みのキャブフレーム本体3の反ドア側のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間の大型開口9に装着される塗装済みのサイドパネル7とを備えており、塗装済みのサイドパネル7が、ボルト、リベットまたは接着剤によって、塗装済みのキャブフレーム本体3の大型開口に装着されている。以下、各構成要素について説明する。
【0015】
(キャブフレーム本体3)
図2(b)、図3に示すように、キャブフレーム本体は3、長方形の板体8aの四辺にフロアレール8bが取り付けられたフロアパネル8と、フロアパネル8の前部の左右に立設されたフロントピラー4L、4Rと、フロアパネル8の後部の左右に立設されたリヤピラー5L、5Rと、フロントピラー4L、4Rとリヤピラー5L、5Rとを接続するルーフレール10L、10Rと、左右のルーフレール10L、10Rの間に取り付けられた天井板11と、左右のフロントピラー4L、4Rの間の下部に取り付けられたフロントパネル12と、左右のリヤピラー5L、5Rの間の下部に取り付けられたリヤパネル13とを備えている。
【0016】
また、キャブフレーム本体3は、フロアパネル8に左右何れか一方(図3においては進行方向の左方)のフロントピラー4Lとリヤピラー5Lとの間に位置して立設されたドア用のセンターピラー6と、左右他方(反ドア側)のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとルーフレール10Rとフロアレール8bとによって区画された大型開口9とを有し、ドア側のセンターピラー6とリヤピラー5Lとの間にはリヤサイドパネル14が取り付けられている。このキャブフレーム本体3は、フロアパネル8、フロントピラー4L、4Rおよびリヤピラー5L、5R等の構成部品が溶接されて構成されており、後述する電着塗装によって塗装された状態となっている。
【0017】
かかるキャブフレーム本体3は、図3に示すサイドパネル7を大型開口9に装着せず、ドア2をフロントピラー4Lとセンターピラー6との間に装着しない状態で、必要な強度および剛性(例えば、ROPS規格、FOPS規格)が確保されている。ROPS(Roll Over Protective Struture)とは、建設機械のキャビン構造に関して国際標準化機構(ISO)で定められた転倒時運転者保護構造に関する規格であり、FOPS(Falling Object Protective Structure)とは、同様にISOで定められた落下物保護構造に関する規格である。
【0018】
これらの規格(ROPS、FOPS等)を満足するため、図2(b)、図3に示すように、キャブフレーム本体3のフロアパネル8の左右のフロアレール8bとリヤピラー5R、5Lとの接続部、左右のフロアレール8bとフロントピラー4R、4Lとの接続部、左右のリヤピラー5R、5Lとルーフレールとの接続部には、夫々、三角形状の補強用ガセット16が装着されており、大型開口9にサイドパネル7を装着しない状態で、必要な強度および剛性を確保している。
【0019】
(サイドパネル7)
図3に示すように、塗装済みのキャブフレーム本体3の大型開口9の下部には、塗装済みのサイドパネル7が、ボルト、リベットまたは接着剤によって、装着されている。サイドパネル7は、その下縁部がフロアパネル8のフロアレール8bに、前縁部がキャブフレーム本体3のフロントピラー4Rの下部に、後縁部がリヤピラー5Rの下部に、夫々、ボルト、リベットまたは接着剤によって固定される。ここで、キャブフレーム本体3が既に塗装されており、サイドパネル7も既に塗装されているものの、これらを溶接ではなく、ボルト、リベットまたは接着剤によって接合しているので、キャブフレーム本体3とサイドパネル7との接合部分における塗装面が溶接熱で傷んでしまうことはない。なお、サイドパネル7は、電着塗装等によって塗装される。
【0020】
また、図3に破線で示すように、サイドパネル7の内面(運転室側の面)に、建設機械の作業、運転に用いるコントローラーやリレー等が収容されたコントロールボックス26やリレーボックス27等を、予め装着しておいてもよい。このようにサブアッセンブリ品とすることで、後工程でコントロールボックス26等を運転室内からサイドパネル7に取り付ける工程が不要となり、組み立て時間の短縮化が図れる。また、サイドパネル7の内面に取り付けられたコントロールボックス26等は、中空体であるため、運転室外の騒音が運転室内に侵入する際の防音ボックスとしても機能する。ここで、運転手用のシート19bは、補助シートによってサイドパネル7側に片寄って配置されているところ、その運転手用シート19aに隣接して配置されたコントロールボックス26等が防音ボックスとして機能することで、シート19aに着座する運転手への騒音を的確に減衰できる。
【0021】
また、図3に示すように、塗装済みのキャブフレーム本体3の大型開口9の上部(サイドパネル7によって塞がれない部分)には、窓枠17を有するサイドウインド18が接着剤によって装着されている。サイドウインド18は、その窓枠17の上縁部がキャブフレーム本体3のルーフレール10Rに、窓枠17の前縁部がキャブフレーム本体3のフロントピラー4Rの上部に、窓枠17の後縁部がキャブフレーム本体3のリヤピラー5Rの上部に、窓枠17の下縁部がサイドパネル7の上縁部に、夫々、接着剤によって固定されることで、大型開口9の上部に装着されている。なお、サイドウインド18は、その窓枠17をボルトまたはリベットによってキャブフレーム本体3やサイドパネル7に固定するようにしてもよい。
【0022】
上述した建設機械のキャビン構造1は、次のようにして製造される。
【0023】
(建設機械のキャビン構造1の製造方法)
本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造1の製造方法においては、図3に示すように、上述した塗装済みのキャブフレーム本体3を予め製造しておき、所謂艤装工程において、この塗装済みのキャブフレーム本体3の反ドア側のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間の大型開口9を通じて、インパネ19a、シート(サスペンションシート等)19b、エアコン19c等の内装品19をキャブフレーム本体3内に運び入れて組み付けた後、図4に示すように、塗装済みのサイドパネル7を、内装品19が組み付けられた塗装済みのキャブフレーム本体3の大型開口に、溶接ではなく、ボルト、リベットまたは接着剤によって、装着するようにしている。
【0024】
塗装済みのキャブフレーム本体3は、図3に示すように、フロアパネル8の前部の左右にフロントピラー4L、4Rが立設され、フロアパネル8の後部の左右にリヤピラー5L、5Rが立設され、左右何れか一方のフロントピラー4Lとリヤピラー5Lとの間にドア用のセンターピラー6が配設され、左右他方のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間にセンターピラーが存在せず大型開口が9形成されて構成されている。本発明に係る建設機械のキャビン構造1の製造方法は、キャブフレーム本体3の左右何れか一方にセンターピラー6が存在しないことを利用して、インパネ19a、シート19b、エアコン19c等の内装品19をキャブフレーム本体3内に搬入する開口の面積拡大を図ったものである。
【0025】
図4に示すように、キャブフレーム本体3内に組み付けられるインパネ19a、シート19b、エアコン19c等の内装品19は、図3に示すように、内装品19を全てアッセンブリしたアッセンブリ品が大型開口9を通じてキャブフレーム本体3内に搬入する方式に限られるものではなく、内装品19を構成要素毎に個別に搬入してもよく、内装品19を、大型開口9を通過できる大きさのサブアッセンブリ品とし、そのサブアッセンブリ品を搬入するようにしてもよい。また、搬入する内装品19の構成要素、サブアッセンブリ品、アッセンブリ品は、キャブフレーム本体3外において所謂マテハン機器に把持され、大型開口9を通じてキャブフレーム本体3内に搬入され、組み付けられる。
【0026】
(電着塗装)
図5(a)、図5(b)に、キャブフレーム本体3を電着塗装する様子を示す。図3に示すサイドパネル7およびドア2が装着されていない状態のキャブフレーム本体3を予め製造しておき、このキャブフレーム本体3を図5(a)および図5(b)に示すように電着塗装用の塗料水溶液また洗浄液20に沈めて引き上げる際、大型開口9が下方となるようにキャブフレーム本体3の姿勢を傾斜した状態として、引き上げたキャブフレーム3のフロアパネル8に貯まった塗料水溶液または洗浄液20を大型開口9から落滴させるようにしている。
【0027】
すなわち、図2(b)に示すように、フロアパネル8の前部の左右にフロントピラー4R、4Lが立設され、フロアパネル8の後部の左右にリヤピラー5R、5Lが立設され、左右何れか一方のフロントピラー4Lとリヤピラー5Lとの間にドア用のセンターピラー6が配設され、左右他方のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間にセンターピラーが存在せず大型開口9が形成されたキャブフレーム本体3を製造しておき、このキャブフレーム本体3を電着塗装用の移動台車21から複数の吊下ワイヤ22を介して吊り下げ、各吊下ワイヤ22の長さを調節して、大型開口9が下方となるようにキャブフレーム本体3の姿勢を傾斜した状態としておく。
【0028】
図6に示すように、移動台車21は、レール23に沿って移動する移動部21aと、移動部21aから昇降ワイヤ24を介して昇降される昇降部21bとから構成され、この昇降部21bにキャブフレーム本体3が吊下ワイヤ22を介して吊り下げられている。レール23は、電着塗装するために並設された複数の貯留槽25の上方に沿って配設されている。各貯留槽25には、脱脂用の溶液、水洗用の洗浄水、表面調整用の液体、化成処理用の液体、電着塗装用の塗料水溶液などが貯留されている。なお、図6においては、作図の都合上、キャブフレーム本体3は傾斜していない表記となっているが、実際には図5(a)、図5(b)に示すように、傾斜した状態となっている。
【0029】
こうして、キャブフレーム本体3を大型開口9が下方となる傾斜した姿勢で塗料水溶液または洗浄液20から引き上げることで、図6に示す電着塗装の工程の各貯留槽25について、槽25から引き上げたキャブフレーム本体3のフロアパネル8に貯まった塗料水溶液または洗浄液20を大型開口9から落滴させる(図5(a)、図5(b)参照)。その後、焼き付け工程および乾燥工程(図示省略)を経てキャブフレーム本体3の電着塗装が完了する。
【0030】
電着塗装完了後、図3に示すように、塗装されたキャブフレーム本体3のフロントピラーと4Lセンターピラー6との間にドア2を装着し、キャブフレーム本体3の反ドア側のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間の大型開口9を通じて、インパネ19a、シート19b、エアコン19c等の内装品をキャブフレーム本体3内に運び入れて組み付ける。その後、図4に示すように、内装品19が組み付けられた塗装済みのキャブフレーム本体3の大型開口9に、塗装済みのサイドパネル7を、溶接ではなく、ボルト、リベットまたは接着剤によって、装着する。
【0031】
(作用・効果)
本実施形態によれば、次のような作用・効果を発揮できる。
【0032】
図3図4に示すように、塗装済みのキャブフレーム本体3の反ドア側のフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間の大型開口9に、塗装済みのサイドパネル7をボルト、リベットまたは接着剤によって装着する前に、キャブフレーム本体3内に組み付けられるインパネ19a、シート19b、エアコン19c等の内装品19を大型開口9を通じてキャブフレーム本体3内に搬入できる。よって、インパネ19a等の内装品19の搬入性が向上し、搬入時間を短縮できる。
【0033】
図2(b)に示すように、インパネ19a等の内装品19の搬入用の開口となるフロントピラー4Rとリヤピラー5Rとの間隔が、図2(a)に示すように、従来搬入用の開口となっていたフロントピラー4Lとセンターピラー6と間隔よりも広いため、図2(b)に矢印Yで示すようにインパネ19a等の内装品19をキャブフレーム3内に搬入する際、人力のみに頼ることなく所謂マテハン機器を使用して搬入できる。よって、一定の重量を有するインパネ19a等の内装品19をキャブフレーム本体3内に搬入する際の作業性が向上し、作業時間を短縮できる。
【0034】
図3に示すように、インパネ19a、シート19b、エアコン19c等の内装品19をキャブフレーム本体3の外部において適宜纏めるように組み立てて、大型開口9を通過できる大きさのサブアッセンブリ品とした後、そのサブアッセンブリ品を所謂マテハン機器を使用する等して大型開口9を通じてキャブフレーム本体3の内部に搬入できるので、作業性が向上し、組み立て時間を短縮できる。
【0035】
図4に示すように、塗装済みのキャブフレーム本体3の大型化開口9に、塗装済みのサイドパネル7を、溶接ではなく、ボルト、リベットまたは接着剤によって装着しているので、装着後のキャビン構造1において、キャブフレーム本体3とサイドパネル7との接合部分における塗装面が溶接熱で傷んでしまうことはなく、完成した建設機械のキャビン構造1の品質と組立性とを両立できる。
【0036】
図5(a)、図5(b)に示すように、サイドパネル7を装着する前のキャブフレーム本体3を電着塗装する際、キャブフレーム本体3を大型開口9が形成された側が下方となるように傾斜した姿勢として電着塗装用の塗料水溶液また洗浄液20に沈めて引き上げることで、引き上げたキャブフレーム本体3のフロアパネル8に貯まった塗料水溶液または洗浄液20を大型開口9から容易に液抜きできる。よって、液切れの時間を短縮でき、所謂タクトタイムを短縮できる。また、図6に示す電着塗装の各工程において、前槽から今槽、今槽から次槽への液の持ち込み量を低減でき、塗装の品質が向上する。
【0037】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0038】
例えば、図4において、塗装済みのサイドパネル7を塗装済みのキャブフレーム本体3の大型開口9に止水シール(図示せず)を介してボルトによって着脱可能に装着すれば、サイドパネル7を取り外すことで、その開口をメンテナンス時のサービスホールとして利用することができる。また、塗装済みのサイドパネル7と窓枠17が塗装されたサイドウインド18とを一体とし、この一体としたサイドウインド付きサイドパネルをサイドパネルとして扱ってキャブフレーム本体3の大型開口9にボルト、リベットまたは接着剤によって装着するようにしてもよい。このサイドウインド付きサイドパネルは、サイドウインド(ガラス部分)を上部ではなく前部に備えたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、インパネ、シート、エアコン等の内装品の組み付け性を向上した建設機械のキャビン構造及びその製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 建設機械のキャビン構造
2 ドア
3 キャブフレーム本体
4R フロントピラー
4L フロントピラー
5R リヤピラー
5L リヤピラー
6 センターピラー
7 サイドパネル
8 フロアパネル
9 大型開口
19 内装品
19a インパネ
19b シート
19c エアコン
20 塗料水溶液または洗浄液
図1
図2
図3
図4
図5
図6