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特許7181086半導体保護用粘着テープ及び半導体を処理する方法
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  • 特許-半導体保護用粘着テープ及び半導体を処理する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】半導体保護用粘着テープ及び半導体を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221122BHJP
   C09J 7/28 20180101ALI20221122BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/28
C09J201/00
H01L21/68 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018545526
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(86)【国際出願番号】 JP2018027627
(87)【国際公開番号】W WO2019022050
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2017143616
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】利根川 亨
(72)【発明者】
【氏名】増澤 健二
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-245932(JP,A)
【文献】特開2002-069395(JP,A)
【文献】特開2011-210944(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110202(WO,A1)
【文献】特開平04-204446(JP,A)
【文献】特開2014-189787(JP,A)
【文献】特開2018-177235(JP,A)
【文献】特開2018-154737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、該粘着剤層の一方の面に積層された導電層とを有し、
前記粘着剤層側の表面抵抗率が、180℃、6時間の加熱の前と後の両方において1.0×10Ω/□以上9.9×1013Ω/□以下であり、かつ、前記導電層側から測定した可視光線透過率が30%以上であり、
前記導電層は、金属、合金又は金属化合物からなる
ことを特徴とする半導体保護用粘着テープ。
【請求項2】
導電層は、厚さが2nm以上300nm以下である、請求項に記載の半導体保護用粘着テープ。
【請求項3】
導電層は、粘着剤層の一方の面の全面に積層されているか、又は、粘着剤層の一方の面に均一のパターン形状を形成して部分的に積層されている、請求項1又は2に記載の半導体保護用粘着テープ。
【請求項4】
導電層の粘着剤層とは反対側の面に基材が積層されている、請求項1、2又は3に記載の半導体保護用粘着テープ。
【請求項5】
220℃における熱分解量が10重量%以下である、請求項1、2、3又は4に記載の半導体保護用粘着テープ。
【請求項6】
半導体の回路面に粘着テープを貼付する工程、及び180℃以上の高温処理を半導体に行う工程を含む半導体を製造するために用いられる、請求項1、2、3、4又は5に記載の半導体保護用粘着テープ。
【請求項7】
半導体の回路面に半導体保護用粘着テープを貼付する工程、及び180℃以上の高温処理を半導体に行う工程を含む、半導体を処理する方法であって、
前記半導体保護用粘着テープは、粘着剤層と、該粘着剤層の一方の面に積層された導電層とを有し、前記半導体保護用粘着テープの前記粘着剤層側の表面抵抗率が、180℃、6時間の加熱の前と後の両方において1.0×10Ω/□以上9.9×1013Ω/□以下であり、かつ、前記導電層側から測定した可視光線透過率が30%以上であり、
前記導電層は、金属、合金又は金属化合物からなる
ことを特徴とする半導体を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスにおいて半導体デバイスの回路面に貼付したときに、テープを通して半導体デバイス上の回路パターンを認識することができ、かつ、180℃以上の高温処理に供したときにでも高い帯電抑制性能を発揮することができる半導体保護用粘着テープ、及び該半導体保護用粘着テープを用いた半導体を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、加工時に取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、半導体デバイスの回路面に粘着テープを貼付して保護することが行われる。このような粘着テープには、静電気によって回路が破損したりすることがないように、優れた帯電抑制性能が求められる。
帯電防止性能に優れた粘着テープとしては、例えば、粘着剤層中に導電性フィラーを分散させた帯電防止粘着テープが知られている(例えば、特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-007093号公報
【文献】特開平9-207259号公報
【文献】特開2016-089021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイスの製造工程においては、粘着テープ側から半導体デバイスの回路パターンを認識して加工時の位置決め等を行うことがあることから、粘着テープには優れた透明性も要求される。しかしながら、従来の帯電防止粘着テープは、充分な帯電防止性能を付与するほどに導電性フィラーを配合すると、透明性が低くなってしまう。このような透明性の低い粘着テープを半導体デバイスに貼付した場合、粘着テープを通して半導体デバイス上の回路パターンを認識できず、工程管理が困難となってしまうという問題がある。
【0005】
また、近年の半導体デバイスの高性能化に伴い、半導体デバイスの表面に180℃以上の高温処理が行われるようになってきた。例えば、次世代の技術として、複数の半導体チップを積層させてデバイスを飛躍的に高性能化、小型化したTSV(Si貫通ビヤ/Through Si via)を使った3次元積層技術が注目されている。TSVは、半導体実装の高密度化ができるほか、接続距離が短くできることにより低ノイズ化、低抵抗化が可能であり、アクセススピードが飛躍的に速く、使用中に発生する熱の放出にも優れる。このようなTSVの製造では、研削して得た薄膜ウエハをバンピングしたり、裏面にバンプ形成したり、3次元積層時にリフローを行ったりする等の180℃以上の高温処理プロセスを行うことが必要となる。
しかしながら、従来の帯電防止粘着テープでは、180℃以上の高温処理に供すると、帯電防止性能が著しく低下してしまうことがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、半導体製造プロセスにおいて半導体デバイスの回路面に貼付したときに、テープを通して半導体デバイス上の回路パターンを認識することができ、かつ、180℃以上の高温処理に供したときにでも高い帯電抑制性能を発揮することができる半導体保護用粘着テープ、及び該半導体保護用粘着テープを用いた半導体を処理する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様は、粘着剤層と、該粘着剤層の一方の面に積層された導電層とを有し、前記粘着剤層側の表面抵抗率が、180℃、6時間の加熱の前と後の両方において1.0×10Ω/□以上9.9×1013Ω/□以下であり、かつ、前記導電層側から測定した可視光線透過率が30%以上である半導体保護用粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、粘着剤層の一方の面にナノメートルオーダーの厚みの導電層を直接積層することにより、180℃以上の高温処理の前後であっても粘着剤層側の表面抵抗率を一定の範囲内に調整して高い帯電抑制性能を発揮できることを見出した。また、半導体デバイスの回路面に貼着したときにテープを通して回路パターンを認識できる程度の優れた透明性を発揮できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の一実施態様である半導体保護用粘着テープ(以下、単に「粘着テープ」ともいう。)は、粘着剤層を有する。
上記粘着剤層を構成する粘着剤成分は特に限定されず、非硬化型の粘着剤、硬化型の粘着剤のいずれを含有するものであってもよい。なかでも、回路が形成された半導体デバイスの回路が形成された面に貼付して剥離したときに糊残りを抑制できることから、硬化型粘着剤を含有することが好ましい。
【0010】
上記硬化型粘着剤としては、光照射により架橋、硬化する光硬化型粘着剤や、加熱により架橋、硬化する熱硬化型粘着剤が挙げられる。
上記光硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分とし、重合開始剤として光重合開始剤を用いた光硬化型粘着剤が挙げられる。
上記熱硬化型粘着剤としては、例えば、重合性ポリマーを主成分とし、重合開始剤として熱重合開始剤を用いた熱硬化型粘着剤が挙げられる。
【0011】
上記重合性ポリマーは、例えば、以下の方法により得ることができる。即ち、まず、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、「官能基含有(メタ)アクリル系ポリマー」ともいう。)をあらかじめ合成する。次いで、該官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、「官能基含有不飽和化合物」ともいう。)を反応させることにより、重合性ポリマーを得ることができる。
【0012】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様の方法により得ることができる。即ち、アルキル基の炭素数が通常2~18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られる。
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万~200万程度である。
【0013】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーや、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマーや、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマーや、アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマーや、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0014】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0015】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられる。また、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられる。また、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられる。更に、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0016】
上記光重合開始剤は、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物等が挙げられる。上記アセトフェノン誘導体化合物としては、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。上記ベンゾインエーテル系化合物としては、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。上記ケタール誘導体化合物としては、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等が挙げられる。上記光重合開始剤としては、例えば、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられる。具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエール、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
ただし、上記硬化型粘着剤が高い耐熱性を発揮するためには、上記熱重合開始剤は、熱分解温度が200℃以上である熱重合開始剤を用いることが好ましい。このような熱分解温度が高い熱重合開始剤は、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーペンタH(以上いずれも日油社製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
上記硬化型粘着剤は、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することが好ましい。ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、光硬化性、熱硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による硬化型粘着剤の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2~20個のものである。
【0019】
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。また、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記粘着剤層は、更に、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有してもよい。上記気体発生剤を含有する場合には、被着体から粘着テープを剥離する際に、刺激を与えて上記気体発生剤から気体を発生させることにより、より容易に、かつ、糊残りすることなく粘着テープを剥離することができる。
【0021】
上記気体発生剤は特に限定されないが、加熱を伴う処理に対する耐性に優れることから、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸等のカルボン酸化合物又はその塩や、1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5,5-アゾビス-1H-テトラゾール等のテトラゾール化合物又はその塩等が好適である。このような気体発生剤は、紫外線等の光を照射することにより気体を発生する一方、200℃程度の高温下でも分解しない高い耐熱性を有する。
【0022】
上記粘着剤層が上記気体発生剤を含有する場合には、更に、光増感剤を含有してもよい。上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができる。
【0023】
上記粘着剤層が粘着剤成分として上記硬化型粘着剤を含有する場合、上記硬化型粘着剤と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物を含有してもよい。シリコーン化合物は、耐熱性に優れることから、200℃以上の加熱を伴う処理を経ても粘着剤の焦げ付き等を抑制し、剥離時には被着体界面にブリードアウトして、剥離を容易にする。シリコーン化合物が上記硬化型粘着剤と架橋可能な官能基を有することにより、光照射又は加熱することにより上記硬化型粘着剤と化学反応して上記硬化型粘着剤中に取り込まれることから、被着体にシリコーン化合物が付着して汚染することがない。また、シリコーン化合物を配合することにより、被着体上への糊残りを抑制する効果も発揮される。なお、シリコーン化合物が有する、上記硬化型粘着剤と架橋可能な官能基としては、例えば二重結合等の重合性官能基が挙げられる。
【0024】
本発明の一実施態様において、上記粘着剤層は導電性フィラーや導電性化合物等の導電性物質を含まないことが好ましい。粘着剤層が導電性フィラーを含有しない場合、導電性フィラーの存在による粘着力の低下や、導電性化合物のブリードによる経時的な粘着力の低下を抑制することができる。また、粘着剤層が導電性化合物を含有しない場合、高温処理による導電性化合物の副反応を抑制することができ、粘着力の低下及び半導体への汚染を抑制することができる。
【0025】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記粘着剤層の厚みが上記範囲であると充分な粘着力で被着体を保護することができ、更に剥離時の糊残りを抑制することもできる。粘着力を更に向上させると共に、剥離時の糊残りを更に抑制する観点から、上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は60μmである。
【0026】
上記粘着テープでは、上記粘着剤層の一方の面に導電層が積層されている。このような導電層を設けることにより、透明性を確保しながら粘着剤層側の表面抵抗率を一定の範囲に調整することができる。また、180℃以上の高温処理に供したときにでも、高い帯電抑制性能を発揮することができる。
上記粘着テープの透明性や表面抵抗率は、上記導電層を構成する金属等の種類、上記導電層の厚み、上記導電層の面積等を調整することにより、自在に調整可能である。
【0027】
上記導電層は、特に限定されないが、導電層の厚みの調整が行い易く、粘着テープの透明性及び表面抵抗の向上の両立を達成し易い観点から、金属、合金又は金属化合物からなることが好ましい。金、合金、金属化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記導電層を構成し得る金属としては、例えば、例えば、金、銀、銅、白金、チタン、アルミニウム、スズ等の金属が挙げられる。
上記導電層が金属からなる場合、導電層は上記金属からなる単層又は複層からなってもよい。
【0029】
上記導電層を構成し得る合金としては、例えば、鉄を含む合金、及びモリブデンを含む合金が挙げられる。
上記鉄を含む合金としては、クロム及び鉄を含む合金、並びにクロム、ニッケル及び鉄を含む合金が挙げられ、具体的にはステンレス鋼(SUS)が挙げられる。
上記ステンレス鋼(SUS)としては、具体的には例えば、ステンレス鋼(SUS201)、ステンレス鋼(SUS202)、ステンレス鋼(SUS301)、ステンレス鋼(SUS302)、ステンレス鋼(SU303)、ステンレス鋼(SUS304)、ステンレス鋼(SUS306)、ステンレス鋼(SUS310s)、ステンレス鋼(SUS316)、ステンレス鋼(SUS317)、ステンレス鋼(SUS329J11)、ステンレス鋼(SUS403)、ステンレス鋼(SUS405)、ステンレス鋼(SUS420)、ステンレス鋼(SUS430)、ステンレス鋼(SUS430LX)、ステンレス鋼(SUS6330)等が挙げられる。
【0030】
上記モリブデンを含む合金は、モリブデンを含有していれば特に限定されないが、ニッケル及びクロムを更に含有することが好ましい。
上記モリブデンを含む合金におけるモリブデンの含有量の下限は特に限定されないが、表面抵抗及び透明性を両立させる観点から、5重量%が好ましく、7重量%がより好ましく、9重量%が更に好ましく、11重量%がより更に好ましく、13重量%が特に好ましく、15重量%が非常に好ましく、16重量%が最も好ましい。また、上記モリブデンを含む合金におけるモリブデンの含有量の上限は、表面抵抗率の調整の容易化の観点から、30重量%が好ましく、25重量%がより好ましく、20重量%が更に好ましい。
上記モリブデンを含む合金がニッケル及びクロムを含有する場合、モリブデン含有量が5重量%以上、ニッケル含有量が40重量%以上、クロム含有量が1重量%以上であることが好ましい。上記モリブデンを含む合金としては、具体的にはハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)、カーペンター(登録商標)、インコロイ(登録商標)等の合金が挙げられる。
【0031】
上記ハステロイ(登録商標)としては、具体的には例えば、ハステロイ(HASTELLOY B-2)、ハステロイ(HASTELLOY B-3)、ハステロイ(HASTELLOY C-4)、ハステロイ(HASTELLOY C-2000)、ハステロイ(HASTELLOY C-22)、ハステロイ(HASTELLOY C-276)、ハステロイ(HASTELLOY G-30)、ハステロイ(HASTELLOY N)、ハステロイ(HASTELLOY W)、ハステロイ(HASTELLOY X)等が挙げられる。
【0032】
上記インコネル(登録商標)としては、具体的には例えば、インコネル(Inconel 600)、インコネル(Inconel 625)、インコネル(Inconel 690)、インコネル(Inconel 718)、インコネル(Inconel X750)等が挙げられる。
上記カーペンター(登録商標)としては、具体的には例えば、カーペンター(Carpenter 20Cb3)等が挙げられる。
【0033】
上記導電層を構成し得る合金としては、例えば、モネル等のニッケルと銅を含有する合金も用いることができる。
上記モネルとしては、具体的には例えば、モネル(Monel 400)、モネル(Monel K500)、モネル(Monel R)、モネル(Monel S)等が挙げられる。
上記導電層が合金からなる場合、導電層は上記合金からなる単層又は複層からなってもよい。
【0034】
上記導電層を構成し得る金属化合物としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化チタン(TiO)等の金属酸化物が挙げられる。
上記導電層が金属化合物からなる場合、導電層は単層又は複層からなってもよい。
【0035】
また、上記導電層は、金属からなる層、合金からなる層、及び/又は金属化合物からなる層の、複層であってもよい。
【0036】
上記導電層は、導電層にクラックが入り難く、導電性を安定して維持し易い観点から、金、銀、銅、白金、チタン、スズ、ステンレス鋼(SUS)、モリブデン含有合金(ハステロイ等)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、又は酸化チタン(TiO)からなることが好ましい。また、上記導電層は、耐熱性を更に高める観点から、金、銀、銅、白金、チタン、スズ、ステンレス鋼(SUS)からなることがより好ましく、さらに、表面の反射を抑え、視認性を高める観点から、ステンレス鋼(SUS)からなることが更に好ましい。
【0037】
上記導電層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は2nm、好ましい上限は300nmである。上記導電層の厚みが上記範囲であると、上記粘着テープの透明性や表面抵抗率を所期の範囲に調整することが容易にすることができる。上記導電層の厚みが2nm以上であると、熱を加えた際における導電層の酸化が抑制され、帯電抑制性能を維持できる。帯電抑制性能及び透明性を更に高める観点から、上記導電層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は100nmであり、更に好ましい上限は50nm、特に好ましい上限は30nm、最も好ましい上限は20nmである。
【0038】
上記導電層の厚みは特に限定されないが、上記導電層が金属からなる場合においては好ましい下限は2nm、好ましい上限は50nmである。上記金属からなる導電層の厚みがこの範囲内であると、上記粘着テープの透明性や表面抵抗率を所期の範囲に調整することが容易になる。上記導電層の厚みが2nm以上であると、熱を加えた際に導電層の酸化が抑制されて、帯電抑制性能を保つことができる。なお、酸素は特に粘着剤層側から侵入する。帯電抑制性能及び透明性を更に高める観点から、上記導電層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は30nmであり、更に好ましい上限は20nm、特に好ましい上限は15nmである。
上記導電性が合金からなる場合において、上記導電層の厚みの好ましい下限は2nm、好ましい上限は10nmである。上記合金からなる導電層の厚みがこの範囲内であると、上記粘着テープの透明性や表面抵抗率を所期の範囲に調整することが容易になる。上記導電層の厚みが2nm以上であると、熱を加えた際に導電層の酸化が抑制されて、帯電抑制性能を保つことができる。なお、酸素は特に粘着剤層側から侵入する。帯電抑制性能及び透明性を更に高める観点から、上記導電層の厚みのより好ましい上限は7.5nm、更に好ましい上限は5nmである。
上記導電層が金属酸化物からなる場合において、上記導電層の厚みの好ましい下限は2nm、好ましい上限は300nmである。上記金属酸化物からなる導電層の厚みがこの範囲内であると、上記粘着テープの透明性や表面抵抗率を所期の範囲に調整することが容易になる。上記導電層の厚みが2nm以上であると、熱を加えた際に導電層の酸化が抑制されて、帯電抑制性能を保つことができる。なお、酸素は特に粘着剤層側から侵入する。帯電抑制性能及び透明性を更に高める観点から、上記導電層の厚みのより好ましい上限は100nm、更に好ましい上限は30nmである。
【0039】
上述のように、上記粘着テープの透明性や表面抵抗率は、上記導電層を構成する金属等の種類や導電層の厚みにより調整される。従って、上記導電層を構成する金属等の種類ごとに最適な導電層の厚みを選択することが好ましい。
<単金属>
例えば、上記導電層が金、銀、銅、白金、チタン、アルミニウム、スズのいずれかの金属からなる単層構造である場合、抵抗値を調整し易く、帯電抑制機能を制御し易い観点から、上記導電層の厚みの好ましい下限は2nm、好ましい上限は50nmである。上記導電層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は30nmであり、更に好ましい上限は15nmである。
<合金>
例えば、上記導電層がステンレス鋼(SUS)、モリブデン含有合金(ハステロイ等)のいずれかの合金からなる単層構造である場合、抵抗値を調整し易く、帯電抑制機能を制御し易い観点から、上記導電層の厚みの好ましい下限は2nm、好ましい上限は10nmである。上記導電層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は7.5nmであり、更に好ましい上限は5nmである。
<金属酸化物>
例えば、上記導電層がITO、FTO、ATO、AZO、GZO、TiOのいずれかの金属酸化物からなる単層構造である場合、抵抗値を調整し易く、帯電抑制機能を制御し易い観点から、上記導電層の厚みの好ましい下限は2nm、好ましい上限は300nmである。上記導電層の厚みのより好ましい上限は100nmであり、更に好ましい上限は30nmである。
【0040】
上記導電層は、上記粘着剤層の一方の面の全面に積層されていてもよく、一部に部分的に積層されていてもよい。上記導電層が上記粘着剤層の一方の面の全面に積層される場合には、上記粘着テープは均一な帯電抑制性能を発揮することができる。上記導電層が上記粘着剤層の一方の面の一部に部分的に積層される場合、均一な帯電抑制性能を付与するために、上記導電層は均一のパターン形状を形成していることが好ましい。上記導電層は均一のパターン形状を形成している場合、均一な帯電抑制性能を発現しつつ、高い透明性を発揮することもできる。
【0041】
本発明の好適な実施態様において、上記導電層は、厚さが2~50nmの金、銀、銅、白金、チタン、又はスズからなる金属からなる。また、上記導電層は、厚さが2~10nmのステンレス鋼、モリブデン含有合金(ハステロイ(登録商標)合金、インコネル(登録商標)合金、カーペンター(登録商標)合金、インコロイ(登録商標)合金等)からなる合金からなる。また、上記導電層は、厚さが2~300nmのスズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化錫、アルミドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛及び酸化チタンからなる金属酸化物からなる。この場合、粘着テープの透明性や表面抵抗率を所期の範囲に調整することが容易になると同時に、熱を加えた際に導電層の酸化が抑制されて帯電抑制性能を高く維持し易くすることができる。これらの単金属、合金、金属酸化物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記粘着剤層上に上記導電層を形成する方法は特に限定されず、例えば、スパッタプロセス、イオンプレーティング、プラズマCVDプロセス、蒸着プロセス、塗布プロセス、ディッププロセス等の従来公知の方法を用いることができる。なかでも、均一な導電層を形成できることから、スパッタプロセスが好適である。
なお、上記粘着テープが基材を有する場合には、上記基材上に上記導電層を形成した後、該導電層上に上記粘着剤層を形成してもよい。
【0043】
上記粘着テープは、上記導電層の上記粘着剤層とは反対側の面に基材が積層されていてもよい。本発明の好適な実施態様において、半導体デバイスを製造する際に安定して搬送を行うことができる観点から、上記基材は、孔を有さないフィルム形状であることが好ましい。上記基材としては、上記粘着テープの透明性を低下させるものでなければ特に限定されない。例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
基材の厚みは、特に限定されないが、半導体デバイスを製造する際に安定して搬送を行うことができる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
【0044】
上記粘着テープは、180℃、6時間の加熱の前と後の両方において、上記粘着剤層側の表面抵抗率の下限が1.0×10Ω/□、上限が9.9×1013Ω/□である。上記表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上であると、半導体デバイスの保護に用いたときに回路の短絡(ショート)が抑制することができ、9.9×1013Ω/□以下であると、高い帯電抑制性能を発揮することができる。同様の観点から、上記粘着剤層側の表面抵抗率の好ましい下限は1.0×10Ω/□、好ましい上限は9.9×1012Ω/□である。より好ましい上限は9.9×1011Ω/□である。
また、180℃、6時間の加熱の前と後の両方において表面抵抗率が上記範囲内であることにより、上記粘着テープを180℃以上の高温処理を含む半導体製造プロセスに供することができる。
なお、上記表面抵抗率は、JIS K7194に準ずる方法により測定することができる。
上記粘着テープの、180℃、6時間の加熱の前と後の両方における、上記粘着剤層側の表面抵抗率は、導電層の酸化量を調整することにより制御することができる。
【0045】
上記粘着テープは、180℃、6時間の加熱の前と後において、上記粘着剤層側の表面抵抗率の変化率(加熱後の表面抵抗率/加熱前の表面抵抗率)が、好ましくは1×10以上、より好ましくは5×10以上、更に好ましくは1×10以上である。また、上記粘着剤層側の表面抵抗率の変化率(加熱後の表面抵抗率/加熱前の表面抵抗率)は、好ましくは1×10以下、より好ましくは1×10以下、更に好ましくは1×10以下、特に好ましくは1×10以下である。上記変化率が上記範囲内であると、半導体を製造する方法が熱処理工程(例えば、180℃、6時間)を含む場合であっても、安定して帯電抑制機能を発現することができる。上記粘着剤層側の表面抵抗率の変化率(加熱後の表面抵抗率/加熱前の表面抵抗率)は、例えば、導電層の酸化量を調整することによって制御することができる。
【0046】
上記粘着テープは、上記導電層側から測定した可視光線透過率が30%以上である。上記可視光線透過率が30%以上であると、半導体デバイスの保護に用いたときに、粘着テープ側から半導体デバイスの回路パターンを認識して、加工時の位置決め等を行うことができる。上記可視光線透過率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることが更に好ましく、通常100%以下である。
なお、上記可視光線透過率は、ヘーズメーター(例えば、日本電飾社製「NDH-2000」、又は、その同等品)を用いて、JIS K7105に基づいて測定することができる。
上記粘着テープの、導電層側から測定した可視光線透過率を調整するためには、上記導電層を構成する金属等の種類や導電層の厚みにより調整することができる。例えば、上記好適な実施態様における金属種及び厚さであると、可視光透過率の調整が容易となる。
【0047】
上記粘着テープは、220℃における熱分解量が10重量%以下であることが好ましい。220℃における熱分解量が10重量%以下であると、上記粘着テープを180℃以上の高温処理を含む半導体製造プロセスにより好適に供することができる。上記熱分解量は8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましい。
なお、上記熱分解量は、熱天秤(例えば、SII社製「TG/DTA6200」等)のアルミパンに5~10mgのテープを秤量し、空気雰囲気中(流量200mL/分)、昇温速度5℃/分の条件で常温(30℃)から400℃まで昇温した時の、220℃における分解量から求めることができる。上記熱分解量は、粘着剤の高分子量化、狭分子量分布化(低分子量成分を減らす)することにより制御することができる。
【0048】
上記粘着テープは、半導体製造プロセスにおいて、半導体デバイスの回路面に貼付して回路を保護するとともに、静電気によって回路が破損するのを抑制するために用いられる。上記粘着テープは、優れた帯電抑制性能と透明性とを両立していることから、半導体製造プロセスにおいて半導体デバイスの回路面に貼付したときに、テープを通して半導体デバイス上の回路パターンを認識することができ、かつ、180℃以上の高温処理に供したときにでも高い帯電抑制性能を発揮することができる。
上記粘着テープにより、半導体デバイスの回路が形成された面が保護された状態を模式的に示した断面図を図1に示した。半導体デバイス1は、一方の面にバンプ12が形成されており、該バンプ12側の面に、粘着テープ2が貼付されている。粘着テープ2は、粘着剤層21の半導体デバイス1に貼付した側とは反対側の面に導電層22と基材23が積層されている。
【0049】
本発明の別の実施態様においては、半導体の回路面に半導体保護用粘着テープを貼付する工程、及び180℃以上の高温処理を半導体に行う工程を含む、半導体を処理する方法であって、前記半導体保護用粘着テープは、粘着剤層と、該粘着剤層の一方の面に積層された導電層とを有し、前記半導体保護用粘着テープの前記粘着剤層側の表面抵抗率が、180℃、6時間の加熱の前と後の両方において1.0×10Ω/□以上9.9×1013Ω/□以下であり、かつ、前記導電層側から測定した可視光線透過率が30%以上である、半導体を処理する方法も提供される。
この半導体を処理する方法によれば、半導体デバイスの回路面に貼付して回路を保護するとともに、静電気によって回路が破損するのを抑制することができる。上記粘着テープは、優れた帯電抑制性能と透明性とを両立していることから、半導体製造プロセスにおいて半導体デバイスの回路面に貼付したときに、テープを通して半導体デバイス上の回路パターンを認識することができ、かつ、180℃以上の高温処理に供したときにでも高い帯電抑制性能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、半導体製造プロセスにおいて半導体デバイスの回路面に貼付したときに、テープを通して半導体デバイス上の回路パターンを認識することができ、かつ、180℃以上の高温処理に供したときにでも高い帯電抑制性能を発揮することができる半導体保護用粘着テープ、及び該半導体保護用粘着テープを用いた半導体を処理する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の一実施態様である粘着テープにより、半導体デバイスの回路が形成された面が保護された状態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
(1)導電層の形成
ポリエチレンナフタレート(PEN)基材上に、Agのターゲット材として、DCマグネトロンスパッタリング法により、導電層を形成した。具体的には、チャンバー内を5×10-4Pa以下となるまで真空排気した後に、チャンバー内のAr占有率が98%以上となるようにArガスを導入し、厚さ15nmの導電層を形成した。
【0054】
得られた導電層の厚さ(光学膜厚)を、透過率を測定し、測定値から光学シュミレーションすることで算出した。具体的には、分光光度計(日立製作所社製「U4100」)を用いて、波長200~800nm(測定範囲)における透過スペクトルを測定することにより、透過率を測定した。次いで、光学シミュレーションソフト(J.A.Woollam社製「WVASE32」)を用いて、得られた透過スペクトルの形状、及び、ピーク・バレーの位置のフィッティングを行い、導電層の厚さを算出した。
【0055】
(2)粘着テープの製造
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート90重量部、官能基含有モノマーとしてメタクリル酸ヒドロキシエチル10重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させて重合性ポリマーを得た。
その後、得られた重合性ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、光重合開始剤(エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製)1重量部およびイソシアネート硬化剤(コロネートL)0.15重量部を混合し、硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
【0056】
得られた硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を、片面に離型処理を施した50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に乾燥皮膜の厚さが40μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させて、粘着剤層を得た。
得られた粘着剤層を、導電層が形成されたポリエチレンナフタレート(PEN)基材の導電層側に貼り合わせ、粘着テープを得た。
【0057】
(3)表面抵抗率の測定
JIS K7194に準ずる方法により粘着テープの粘着剤層側の表面抵抗率を測定した。即ち、得られた粘着テープの粘着剤層を、一直線状に等間隔に配列した探針間隔5mmのプローブにて9点の表面抵抗率を測定し、その平均値を表面抵抗率として求めた。
表面抵抗率は、オーブンを用いて180℃、6時間の加熱を行った前後において測定した。
【0058】
(4)可視光線透過率の測定
粘着テープの可視光線透過率を、ヘーズメーター(日本電飾社製「NDH-2000」)を用いて、JIS K7105に基づいて測定した。
【0059】
(5)熱分解量の測定
熱天秤(SII社製、TG/DTA6200)のアルミパンに、5~10mgの粘着テープを秤量し、空気雰囲気中(流量200mL/分)、昇温速度5℃/分の条件で常温(30℃)から400℃まで昇温した。このときの、220℃における熱分解量を求めた。
【0060】
(実施例2~8、比較例1~3)
導電層の種類や厚みを表1のようにした以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、表面抵抗率、可視光線透過率及び熱分解量を測定した。
なお、表1中、SUSは、ステンレス鋼(SUS310s)を意味し、ハステロイは、ハステロイ(HASTELLOY C-276)を意味する。
【0061】
(評価)
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0062】
(1)アライメントマークの認識性の評価
得られた粘着テープを、回路面にアライメントマークを付した半導体デバイスの回路面に貼付して、図1に示したような状態とした。アライメントマークとしては、縦100μm、横100μmの「+」マークを用いた。この状態で、粘着テープ側(図1において基材23側)からカメラにより半導体デバイスの回路面を観察した。この操作を100回行った。100回中、98回以上でカメラによりアライメントマークを認識できた場合を「◎」、95回以上97回以下でカメラによりアライメントマークを認識できた場合を「○」、94回以下しか認識できなかった場合を「×」と評価した。
なお、観察は、ダイシング装置(ディスコ社製、DFD6361)のアライメントマーク認識機能を用いて行った。この際、落射照明出力20~80%、斜光照明出力20~80%の条件でアライメントマークの認識性を確認した。
【0063】
(2)半導体デバイスの歩留りの評価
得られた粘着テープを、半導体デバイスの回路面に貼付して、図1に示したような状態とした。この状態で、プラズマアッシング処理(SUMCO社製、PC-300、RF出力250W、真空度10~50Pa、ガス流量(O)10~20sccm)を施し半導体デバイスの歩留まりを評価した。得られた半導体デバイスについて、電気的特性及び回路動作の測定により良品、不良品の判定を行った。
この方法により100個の半導体デバイスを処理したときに、歩留り(良品の比率)が98%以上であった場合を「◎」、歩留り(良品の比率)が98%未満95%以上であった場合を「○」、歩留り(良品の比率)が95%未満90%以上であった場合を「△」、歩留り(良品の比率)が90%未満の場合を「×」と評価した。
なお、アライメントマークの認識ができなかった比較例3については歩留りの評価を行わなかった。
【0064】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、半導体製造プロセスにおいて半導体デバイスの回路面に貼付したときに、テープを通して半導体デバイス上の回路パターンを認識することができ、かつ、180℃以上の高温処理に供したときにでも高い帯電抑制性能を発揮することができる半導体保護用粘着テープ、及び該半導体保護用粘着テープを用いた半導体を処理する方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 半導体デバイス
12 バンプ
2 粘着テープ
21 粘着剤層
22 導電層
23 基材
図1