(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20221122BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20221122BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20221122BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20221122BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20221122BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221122BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20221122BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20221122BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221122BHJP
B60L 1/00 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
B60W30/08
F02D29/02 K
F02D29/02 L
F02D29/02 321B
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/18 900
B60W20/13
G08G1/16 C
B60L1/00 L
(21)【出願番号】P 2019008175
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内村 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大堀 勇二
(72)【発明者】
【氏名】夏目 侑紀
(72)【発明者】
【氏名】犬童 翔太
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002228(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141196(WO,A1)
【文献】特開2008-121583(JP,A)
【文献】特開2016-213966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/08
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/18
B60W 20/13
G08G 1/16
B60L 50/16
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と対象物との衝突を予測して運転支援デバイスを作動させる車両用制御装置であって、
自車両と対象物との衝突リスクが閾値を上回る場合に、衝突警告信号を出力する衝突予測部と、
前記衝突予測部から前記衝突警告信号が出力された場合に、前記運転支援デバイスの電動アクチュエータを作動させる運転支援制御部と、
停止条件が成立した場合にエンジンを停止させ、始動条件が成立した場合にスタータモータを駆動して前記エンジンを始動させるエンジン制御部と、
第1蓄電体が設けられる第1電源部と、前記第1電源部に接続される前記電動アクチュエータと、を備える第1電源系と、
第2蓄電体が設けられる第2電源部と、前記第2電源部に接続される前記スタータモータと、を備える第2電源系と、
前記第1電源系と前記第2電源系との間に設けられ、オン状態とオフ状態とに制御されるスイッチと、
前記スタータモータを駆動して前記エンジンを始動させる場合に、前記スイッチをオフ状態に制御するスイッチ制御部と、
を有し、
前記スタータモータの駆動中に前記衝突警告信号が出力された場合に、前記エンジン制御部は、前記スタータモータを停止させて前記第2電源系の電位を上昇させ、前記スイッチ制御部は、
前記第2電源系の電位が前記第1電源系の電位を超えた後に前記スイッチをオン状態に制御する、
車両用制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用制御装置において、
前記衝突予測部は、
自車両と対象物との衝突リスクが第1閾値を上回る場合に、第1警告信号を出力し、
自車両と対象物との衝突リスクが第1閾値よりも高い第2閾値を上回る場合に、前記衝突警告信号としての第2警告信号を出力し、
前記エンジン制御部は、
前記エンジンの停止中に前記第1警告信号が出力された場合に、前記始動条件の成立を待たずに前記スタータモータを駆動し、
前記エンジンの停止中に前記第2警告信号が出力された場合に、前記始動条件が成立しても前記スタータモータの駆動を禁止する、
車両用制御装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両用制御装置において、
前記運転支援制御部は、前記衝突予測部から前記第1警告信号が出力された場合に、自車両と対象物との接近を乗員に通知する、
車両用制御装置。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1項に記載の車両用制御装置において、
前記第1蓄電体の電圧は、前記第2蓄電体の電圧よりも高く、
前記第1電源部には、電圧を変換するコンバータが設けられる、
車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両と対象物との衝突を予測して運転支援デバイスを作動させる車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波レーダ、赤外線レーザ、ステレオカメラ、単眼カメラ等を用いて自車両の周囲を監視し、車両衝突の虞がある場合に自動制動や自動操舵等を行う運転支援システムが開発されている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-219023号公報
【文献】特開2013-53559号公報
【文献】特開2008-121583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転支援システムを構成する電動アクチュエータとして、ブレーキキャリパの液圧を制御するブレーキアクチュエータや、操舵機構を操作するステアリングアクチュエータ等がある。このような電動アクチュエータを作動させることにより、緊急時に自動制動や自動操舵等を行うためには、電動アクチュエータに対して十分な電力を供給することが必要である。すなわち、自動制動や自動操舵等によって車両衝突を回避する際には、電動アクチュエータが急速に駆動されるため、電動アクチュエータの消費電力が急増することになる。ここで電動アクチュエータに対する供給電力が不足した場合には、運転支援デバイスの適切な動作が困難になるため、電動アクチュエータに対して十分な電力を供給することにより、運転支援デバイスを適切に動作させることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、電動アクチュエータに十分な電力を供給し、運転支援デバイスを適切に動作させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用制御装置は、自車両と対象物との衝突を予測して運転支援デバイスを作動させる車両用制御装置であって、自車両と対象物との衝突リスクが閾値を上回る場合に、衝突警告信号を出力する衝突予測部と、前記衝突予測部から前記衝突警告信号が出力された場合に、前記運転支援デバイスの電動アクチュエータを作動させる運転支援制御部と、停止条件が成立した場合にエンジンを停止させ、始動条件が成立した場合にスタータモータを駆動して前記エンジンを始動させるエンジン制御部と、第1蓄電体が設けられる第1電源部と、前記第1電源部に接続される前記電動アクチュエータと、を備える第1電源系と、第2蓄電体が設けられる第2電源部と、前記第2電源部に接続される前記スタータモータと、を備える第2電源系と、前記第1電源系と前記第2電源系との間に設けられ、オン状態とオフ状態とに制御されるスイッチと、前記スタータモータを駆動して前記エンジンを始動させる場合に、前記スイッチをオフ状態に制御するスイッチ制御部と、を有し、前記スタータモータの駆動中に前記衝突警告信号が出力された場合に、前記エンジン制御部は、前記スタータモータを停止させて前記第2電源系の電位を上昇させ、前記スイッチ制御部は、前記第2電源系の電位が前記第1電源系の電位を超えた後に前記スイッチをオン状態に制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スタータモータの駆動中に衝突警告信号が出力された場合に、エンジン制御部は、スタータモータを停止させて第2電源系の電位を上昇させ、スイッチ制御部は、第1電源系と第2電源系との電位差に基づいてスイッチをオン状態に制御する。これにより、電動アクチュエータに十分な電力を供給し、運転支援デバイスを適切に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態である車両用制御装置を備えた車両の構成例を示す概略図である。
【
図2】車両用制御装置が備える電源回路および制御系の一例を示す図である。
【
図3】モータモードおよびパラレルモードの設定領域の一例を示すモードマップである。
【
図4】通常モードにおける電力供給状況の一例を示す図である。
【
図5】エンジン始動モードにおける電力供給状況の一例を示す図である。
【
図6】自動ブレーキ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】先行車両に対して自車両が接近する状況を示す説明図である。
【
図8】協調制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。
【
図9】協調制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。
【
図10】協調制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。
【
図11】
図10の時刻t3における電力供給状況の一例を示す図である。
【
図12】協調制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】協調制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を備えた車両11の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン12、モータジェネレータ13およびトランスミッション14を備えたパワートレイン15が搭載されている。エンジン12が備えるクランク軸16の一端側には、ベルト機構17を介してスタータジェネレータ18が連結されており、クランク軸16の他端側には、クラッチ機構19を介してモータジェネレータ13が連結されている。また、モータジェネレータ13にはトランスミッション14内の変速機構20が連結されており、変速機構20にはデファレンシャル機構21等を介して車輪22が連結されている。なお、内燃機関であるエンジン12には、インジェクタや点火装置等のエンジン補機23が設けられている。
【0011】
パワートレイン15に設けられるモータジェネレータ13には、インバータ30を介して高電圧バッテリ31が接続されている。この高電圧バッテリ31として、例えば、端子電圧が約100Vのリチウムイオンバッテリや鉛バッテリを用いることが可能である。また、高電圧バッテリ31からモータジェネレータ13に電力を供給し、モータジェネレータ13を力行状態に制御することにより、モータ動力によって車輪22を駆動することができる。さらに、車両11減速時には、モータジェネレータ13を発電状態に制御することにより、モータジェネレータ13から高電圧バッテリ31に電力を供給し、高電圧バッテリ31を充電することができる。
【0012】
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ18には、低電圧バッテリ32が接続されている。この低電圧バッテリ32として、例えば、端子電圧が約12Vのリチウムイオンバッテリや鉛バッテリを用いることが可能である。また、スタータジェネレータ18は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。例えば、低電圧バッテリ32の蓄電残量であるSOCが低下した場合には、スタータジェネレータ18が発電状態に制御される。また、エンジン12を始動回転させる場合や、発進時や加速時においてエンジン12を補助する場合には、スタータジェネレータ18が力行状態に制御される。なお、スタータジェネレータ18には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ、レギュレータ、マイコンおよび各種センサ等からなるISGコントローラ33が設けられている。
【0013】
前述したように、エンジン12とモータジェネレータ13との間には、クラッチ機構19が設けられている。このクラッチ機構19を解放することにより、モータジェネレータ13からエンジン12を切り離すことができる。これにより、モータジェネレータ13のみを用いて車両11を走行させることができ、走行モードとしてモータモードを実行することができる。一方、クラッチ機構19を締結することにより、モータジェネレータ13にエンジン12を接続することができる。これにより、エンジン12およびモータジェネレータ13の双方を用いて車両11を走行させることができ、走行モードとしてパラレルモードを実行することができる。このように、車両用制御装置10には、走行モードとして、モータモードおよびパラレルモードが設定されている。なお、パラレルモードにおいて、モータジェネレータ13を空転させることにより、エンジン動力のみを用いて車両11を走行させても良い。
【0014】
また、車両11には、車輪22を制動するブレーキ装置40が設けられている。ブレーキ装置40は、乗員に操作されるブレーキペダル41と、ブレーキペダル41の操作量に応じてブレーキ液圧を発生させるマスターシリンダ42と、を有している。また、ブレーキ装置40は、車輪22に固定されるディスクロータ43と、ディスクロータ43にブレーキパッドを押し付けて制動するキャリパ44と、を有している。さらに、マスターシリンダ42とキャリパ44とは、ブレーキ液圧を調整するブレーキアクチュエータ45を介して接続されている。また、ブレーキ装置40は、車両衝突の虞がある場合に実行される自動ブレーキ機能を有している。つまり、車両衝突の虞がある場合には、後述するメインコントローラ70によってブレーキアクチュエータ45が制御され、ブレーキペダル41が踏み込まれていない状況であっても、キャリパ44に供給するブレーキ液圧を高めることによって車両11が自動的に急制動される。なお、ブレーキアクチュエータ45は、図示しない電動ポンプ、アキュムレータおよび電磁バルブ等によって構成される。
【0015】
[電源回路]
図1に示すように、モータジェネレータ13には、インバータ30を介して高電圧バッテリ31が接続されている。また、高電圧バッテリ31には、電圧を変換するコンバータ34が接続されている。コンバータ34の正極端子34aには正極ライン35が接続されており、この正極ライン35には正極ライン36が接続されている。さらに、正極ライン36には、各種アクチュエータや各種コントローラ等の電気機器37からなる電気機器群38が接続されている。なお、電気機器群38を構成する電気機器37の1つとして、ブレーキ装置40のブレーキアクチュエータ45が設けられている。
【0016】
このように、車両用制御装置10が備える電源回路50には、モータジェネレータ13、インバータ30、高電圧バッテリ31、コンバータ34、ブレーキアクチュエータ45および電気機器37等からなる第1電源系61が設けられている。つまり、電源回路50には、高電圧バッテリ(第1蓄電体)31を備える第1電源部51と、この第1電源部51に接続されるブレーキアクチュエータ(電動アクチュエータ)45と、を備える第1電源系61が設けられている。なお、図示する例では、第1電源部51にコンバータ34が含まれている。
【0017】
また、スタータジェネレータ18の正極端子18aには正極ライン53が接続されており、低電圧バッテリ32の正極端子32aには正極ライン54が接続されている。さらに、正極ライン53と正極ライン54とは互いに接続されている。このように、車両用制御装置10が備える電源回路50には、低電圧バッテリ(第2蓄電体)32を備える第2電源部52と、第2電源部52に接続されるスタータジェネレータ(スタータモータ)18と、を備える第2電源系62が設けられている。
【0018】
前述した第1電源系61と第2電源系62との間には、第1電源系61と第2電源系62とを互いに並列接続する通電ライン55が設けられている。また、通電ライン55には、オン状態とオフ状態とに切り替えられるスイッチSWが設けられている。このスイッチSWをオン状態に制御することにより、第1電源系61と第2電源系62とを互いに接続することができ、スイッチSWをオフ状態に制御することにより、第1電源系61と第2電源系62とを互いに切り離すことができる。
【0019】
なお、スイッチSWは、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであっても良く、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。また、スイッチSWのオン状態とは、電気的に接続される通電状態や導通状態を意味しており、スイッチSWのオフ状態とは、電気的に切断される非通電状態や遮断状態を意味している。また、スイッチSWは、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
【0020】
[制御系]
図2は車両用制御装置10が備える電源回路50および制御系の一例を示す図である。
図2に示すように、車両用制御装置10は、パワートレイン15や電源回路50等を互いに協調させて制御するため、マイコン等からなるメインコントローラ70を有している。このメインコントローラ70は、走行状況に基づき走行モードを設定するモード設定部71、エンジン12を制御するエンジン制御部72、モータジェネレータ13を制御するモータ制御部73、スタータジェネレータ18を制御するISG制御部74、コンバータ34を制御するコンバータ制御部75、スイッチSWを制御するスイッチ制御部76、およびクラッチ機構19を制御するクラッチ制御部77を有している。
【0021】
また、車両用制御装置10は、運転支援デバイスとして、自動ブレーキ機能を備えたブレーキ装置40を有している。前述したように、ブレーキ装置40を制御するメインコントローラ70は、先行車両100等に対する車両衝突が予測される場合に、ブレーキアクチュエータ45を作動させて車両11を自動的に制動する。このため、メインコントローラ70は、先行車両100等に対する自車両11の衝突を予測する衝突予測部78、衝突予測に基づいて乗員に警告を行う警告制御部(運転支援制御部)79、および衝突予測に基づいてブレーキアクチュエータ45を制御するブレーキ制御部(運転支援制御部)80を有している。
【0022】
メインコントローラ70、ISGコントローラ33、インバータ30、コンバータ34、エンジン補機23およびブレーキアクチュエータ45等は、CANやLIN等の車載ネットワークを介して互いに通信自在に接続されている。また、メインコントローラ70に接続されるセンサとして、車速を検出する車速センサ81、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ82、ブレーキペダル41の操作量を検出するブレーキセンサ83、車両前方を撮像するカメラユニット84、および車両前方の先行車両100等を検出するレーダユニット85がある。さらに、メインコントローラ70に接続されるセンサとして、スイッチSWの両端に印加される電圧を検出するスイッチセンサ86、高電圧バッテリ31の充放電電流、端子電圧、SOC等を検出するバッテリセンサ87、および低電圧バッテリ32の充放電電流、端子電圧、SOC等を検出するバッテリセンサ88がある。なお、バッテリの充電状態であるSOC(State of Charge)とは、バッテリの蓄電残量を示す比率であり、バッテリの満充電容量に対する蓄電量の比率である。
【0023】
[モータモードおよびパラレルモード]
前述したように、車両11の走行モードとして、モータジェネレータ13を用いて車両11を走行させるモータモードと、エンジン12およびモータジェネレータ13を用いて車両11を走行させるパラレルモードと、が設定されている。ここで、
図3はモータモードおよびパラレルモードの設定領域の一例を示すモードマップである。このモードマップには、車速に応じて切替閾値αが設定されている。
【0024】
図3に矢印Aで示すように、切替閾値αを上回るように要求駆動力や車速が上昇すると、エンジン12が始動されてクラッチ機構19が締結され、走行モードがモータモードからパラレルモードに切り替えられる。つまり、要求駆動力や車速が切替閾値αを上回る場合には、エンジン12の始動条件が成立してエンジン12が運転状態に制御される。一方、矢印Bで示すように、切替閾値αを下回るように要求駆動力や車速が低下すると、クラッチ機構19が解放されてエンジン12が停止され、走行モードがパラレルモードからモータモードに切り替えられる。つまり、要求駆動力や車速が切替閾値αを下回る場合には、エンジン12の停止条件が成立してエンジン12が停止状態に制御される。
【0025】
なお、車両11に対する要求駆動力つまり車両11の目標駆動力は、アクセルペダルの操作量や操作速度に基づき設定される。例えば、アクセルペダルの操作量が増加すると要求駆動力は大きく設定され、アクセルペダルの操作量が減少すると要求駆動力は小さく設定される。また、例えば、アクセルペダルが素早く踏み込まれた場合には、操作速度が高いことから要求駆動力は大きく設定され、アクセルペダルが緩やかに踏み込まれた場合には、操作速度が低いことから要求駆動力は小さく設定される。
【0026】
また、メインコントローラ70のモード設定部71が、
図3に示すモードマップ等を参照して走行モードを決定すると、モード設定部71から、エンジン制御部72、モータ制御部73、ISG制御部74、およびクラッチ制御部77に対し、モータモードまたはパラレルモードに応じた制御信号が出力される。そして、メインコントローラ70の各制御部71~84,77によって、エンジン12、モータジェネレータ13、スタータジェネレータ18およびクラッチ機構19が制御され、モータモードやパラレルモードが実行される。
【0027】
[電気機器に対する電力供給状況]
続いて、電気機器37に対する電力供給状況について説明する。電気機器37に対する電力供給モードとして、スイッチSWをオン状態に制御することにより、第1電源系61と第2電源系62とを接続する通常モードがある。また、電気機器37に対する電力供給モードとして、スイッチSWをオフ状態に制御することにより、第1電源系61と第2電源系62とを分離するエンジン始動モードがある。ここで、
図4は通常モードにおける電力供給状況の一例を示す図であり、
図5はエンジン始動モードにおける電力供給状況の一例を示す図である。
図4および
図5には黒塗り矢印を用いて電力の供給状況が示されている。
【0028】
図4に示すように、通常モードにおいては、メインコントローラ70からコンバータ34に放電指令が出力される。そして、放電指令を受けたコンバータ34は、所定の目標電圧に向けて放電電圧を制御しながら、高電圧バッテリ31から電気機器37に向けて電力を供給する。また、通常モードにおいては、メインコントローラ70からスタータジェネレータ18に発電停止指令が出力される。このように、通常モードは、第1電源部51から電気機器37に電力を供給する電力供給モードとなっている。また、通常モードにおいてはメインコントローラ70からスイッチSWにオン指令が出力されており、スイッチSWを介して第1電源系61と第2電源系62とは互いに接続されている。これにより、電気機器37の消費電力が一時的に急増した場合であっても、低電圧バッテリ32から電気機器37に電力を供給することができ、電気機器37の電源電圧を安定させることができる。
【0029】
なお、
図4に示した例では、通常モードにおいて、第1電源部51から電気機器37に電力を供給しているが、これに限られることはなく、第2電源部52から電気機器37に電力を供給しても良い。例えば、
図4に点線の矢印P1で示すように、低電圧バッテリ32から電気機器37に電力を供給しても良い。この場合には、コンバータ34は放電停止状態に制御され、スタータジェネレータ18は発電停止状態に制御される。また、
図4に点線の矢印P2で示すように、スタータジェネレータ18から電気機器37に電力を供給しても良い。この場合には、スタータジェネレータ18は発電状態に制御され、コンバータ34は放電停止状態に制御される。
【0030】
次いで、エンジン始動モードについて説明する。このエンジン始動モードは、スタータジェネレータ18が力行状態に制御されるエンジン始動時に実行される電力供給モード、つまりモータモードからパラレルモードに切り替える際に実行される電力供給モードである。
図5に示すように、エンジン始動モードにおいては、メインコントローラ70からコンバータ34に放電指令が出力され、メインコントローラ70からスイッチSWにオフ指令が出力され、メインコントローラ70からスタータジェネレータ18に力行指令が出力される。このように、スタータジェネレータ18が駆動されるエンジン始動時には、スイッチSWがオフ状態に切り替えられ、第1電源系61と第2電源系62とが互いに切り離される。これにより、クランキングに伴ってスタータジェネレータ18の消費電力が急増する場合であっても、第1電源系61からスタータジェネレータ18に電力が流れることはなく、第1電源系61の電気機器37に対する瞬間的な電圧低下を防止することができ、電気機器37を正常に機能させることができる。
【0031】
[自動ブレーキ制御]
続いて、メインコントローラ70によって実行される自動ブレーキ制御について説明する。
図6は自動ブレーキ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図7は先行車両100に対して自車両11が接近する状況を示す説明図である。
【0032】
図6に示すように、ステップS10では、カメラユニット84やレーダユニット85からの送信情報に基づき、衝突リスクの指標である衝突余裕時間(Time to Collision)TTCが算出される。この衝突余裕時間TTCとは、自車両11と先行車両(対象物)100等との車間距離を相対速度で除した時間であり、現在の相対速度が維持された場合に車両11が衝突する迄の時間である。つまり、衝突余裕時間TTCが短いほど、衝突リスクが上昇することを意味しており、衝突余裕時間TTCが長いほど、衝突リスクが低下することを意味している。なお、自車両11の衝突対象である対象物とは、車両に限られることはなく、自転車、歩行者、構造物であっても良い。
【0033】
続くステップS11では、衝突余裕時間TTCが所定の第1時間T1を下回るか否かが判定される。ステップS11において、衝突余裕時間TTCが第1時間T1を下回ると判定された場合には、ステップS12に進み、衝突余裕時間TTCが第1時間T1よりも小さな所定の第2時間T2を下回るか否かが判定される。ステップS12において、衝突余裕時間TTCが第2時間T2を上回ると判定された場合、つまり衝突余裕時間TTCが第1時間T1を下回るものの第2時間T2を上回る場合には、ステップS13に進み、警告フラグが設定され、ステップS14に進み、乗員に向けて警告音が発せられる。このように、警告音が発せられる状況とは、
図7に符号C1で示すように、自車両11と先行車両100との車間距離D1が確保されているが、車間距離が縮小傾向であり衝突リスクが高まっている状況であるため、乗員に向けて警告音が発せられる。すなわち、衝突余裕時間TTCが第1時間T1を下回る場合、つまり自車両11と先行車両100との衝突リスクが第1閾値を上回る場合には、警告フラグ(第1警告信号)に基づいて警告音が発せられ、自車両11と先行車両100との接近が乗員に通知される。なお、車両接近を乗員に通知する手段としては、警告音の出力に限られることはなく、例えば、警告ランプの点灯や点滅であっても良い。
【0034】
図6に示すように、ステップS12において、衝突余裕時間TTCが第2時間T2を下回ると判定された場合には、ステップS15に進み、ブレーキフラグが設定され、ステップS16に進み、ブレーキアクチュエータ45を急速に作動させて車両11を制動する自動ブレーキが実行される。このように、自動ブレーキが実行される状況とは、
図7に符号C2で示すように、自車両11と先行車両100との車間距離D2が短いため、自車両11と先行車両100との衝突を回避する観点から自動ブレーキが実行される。すなわち、衝突余裕時間TTCが第2時間T2を下回る場合、つまり自車両11と先行車両100との衝突リスクが第1閾値よりも高い第2閾値を上回る場合には、ブレーキフラグ(衝突警告信号,第2警告信号)に基づいて自動ブレーキが実行される。
【0035】
なお、前述の説明では、衝突リスクの指標として衝突余裕時間TTCを用いているが、これに限られることはない。例えば、衝突リスクの指標として、自車両11と対象物との距離を用いても良い。この場合には、自車両11と対象物との距離が短いほど、衝突リスクが上昇することを意味し、自車両11と対象物との距離が長いほど、衝突リスクが低下することを意味する。
【0036】
[協調制御:タイミングチャート]
前述した自動ブレーキ制御で説明したように、自車両11が先行車両100等に接近することにより、ブレーキフラグが設定された場合には、車両衝突を回避する観点からブレーキアクチュエータ45が急速に駆動される。このとき、自動ブレーキを適切に実行するためには、消費電力が急増するブレーキアクチュエータ45に対して、電源部から十分な電力を供給することが必要である。
【0037】
しかしながら、走行モードがモータモードからパラレルモードに切り替えられる状況、つまりスタータジェネレータ18によってエンジン12が始動される状況においては、スイッチSWがオフ状態に制御されることから、第1電源系61と第2電源系62とが互いに切り離される。このため、自動ブレーキとエンジン始動との実行タイミングが重なった場合には、ブレーキアクチュエータ45から第2電源部52が切り離された状態のもとで、ブレーキアクチュエータ45が急速に駆動されるため、ブレーキアクチュエータ45に対する供給電力が不足してしまう虞がある。そこで、車両用制御装置10は、後述する協調制御を実行することにより、ブレーキアクチュエータ45に対して十分な電力を供給するように制御している。
【0038】
以下、メインコントローラ70による協調制御の実行状況をタイミングチャートに沿って説明する。
図8~
図10は協調制御の実行状況の一例を示すタイミングチャートである。
図8には、パターン1として、エンジン停止中に警告フラグが設定される状況が示されている。また、
図9には、パターン2として、エンジン停止中にブレーキフラグが設定される状況が示されている。さらに、
図10には、パターン3として、エンジン始動中にブレーキフラグが設定される状況が示されている。なお、
図8~
図10において、再始動フラグが設定される状況とは、スタータジェネレータ18によるエンジン始動が決定される状況である。また、再始動フラグが解除される状況とは、スタータジェネレータ18によるエンジン始動が完了した状況や、スタータジェネレータ18によるエンジン始動が中止される状況である。
【0039】
(パターン1)
パターン1の協調制御について説明する。このパターン1とは、エンジン停止中に警告フラグが設定される状況であり、エンジン12が停止するモータモードにおいて自車両11が先行車両100等に徐々に接近する状況である。
【0040】
図8に時刻t1で示すように、自車両11が先行車両100等に接近して警告フラグが設定されると(符号a1)、エンジン12の始動条件が不成立であっても(符号b1)、エンジン始動を決定する再始動フラグが設定される(符号c1)。このように、再始動フラグが設定されると、スイッチSWがオフ状態に制御され(符号d1)、スタータジェネレータ18が力行状態に制御されてエンジン始動中になり(符号e1)、スタータジェネレータ18の消費電力が急増する(符号f1)。
【0041】
続いて、エンジン始動が完了してエンジン12が運転状態に移行すると(符号e2)、再始動フラグが解除され(符号c2)、スイッチSWがオン状態に制御される(符号d2)。また、エンジン始動が完了してエンジン12が運転状態に移行すると(符号e2)、スタータジェネレータ18の力行トルクが引き下げられ、スタータジェネレータ18の消費電力はゼロまで低下する(符号f2)。なお、自車両11が先行車両100等に接近して警告フラグが設定されると(符号a1)、後の自動ブレーキに備えてブレーキアクチュエータ45の準備動作が行われるため、ブレーキアクチュエータ45の消費電力が若干増加する(符号g1)。
【0042】
その後、時刻t2で示すように、自車両11が先行車両100等に接近することでブレーキフラグが設定されると(符号h1)、自動ブレーキを実行するためにブレーキアクチュエータ45が駆動され、ブレーキアクチュエータ45の消費電力が急増する(符号g2)。このように、自動ブレーキ制御によってブレーキアクチュエータ45が駆動される際には、既にエンジン始動が完了してスイッチSWがオン状態に制御されるため(符号d3)、ブレーキアクチュエータ45に対して双方の電源部51,52が接続される。これにより、ブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができ、自動ブレーキ制御を適切に実行することができる。
【0043】
このように、エンジン停止中に警告フラグが設定された場合には、エンジン12の始動条件の成立を待たずにスタータジェネレータ18が駆動される。すなわち、エンジン停止中に警告フラグが設定された場合には、モータモードを維持する走行状況であったとしても、スタータジェネレータ18が駆動されてエンジン12が始動される。これにより、ブレーキフラグが設定される前にエンジン始動を完了させることができるため、自動ブレーキとエンジン始動との実行タイミングを互いにずらすことができ、自動ブレーキの実行時にはブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができる。
【0044】
(パターン2)
パターン2の協調制御について説明する。このパターン2とは、エンジン停止中にブレーキフラグが設定される状況であり、エンジン12が停止するモータモードにおいて自車両11の直前に歩行者等が飛び出してくる状況である。
【0045】
図9に時刻t1で示すように、警告フラグが解除された状態のもとでブレーキフラグが設定されると(符号a1)、自動ブレーキを実行するためにブレーキアクチュエータ45が駆動され、ブレーキアクチュエータ45の消費電力が急増する(符号b1)。このように、自動ブレーキ制御によってブレーキアクチュエータ45が駆動される際には、スイッチSWがオン状態に制御されており(符号c1)、ブレーキアクチュエータ45には双方の電源部51,52が接続される。これにより、ブレーキアクチュエータ45に対して十分な電力を供給することができ、ブレーキアクチュエータ45を適切に作動させることができる。
【0046】
また、エンジン停止中にブレーキフラグが設定された場合には、メインコントローラ70によってスタータジェネレータ18の駆動が禁止される。このため、時刻t2で示すように、エンジン12の始動条件が成立したとしても(符号d1)、再始動フラグは解除され続け(符号e1)、エンジン12は停止状態に維持される(符号f1)。このように、エンジン停止中にブレーキフラグが設定された場合には、始動条件が成立してもスタータジェネレータ18の駆動が禁止されるため、スタータジェネレータ18の消費電力をゼロに制御することができる(符号g1)。これにより、ブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができ、自動ブレーキ制御を適切に実行することができる。
【0047】
(パターン3)
パターン3の協調制御について説明する。このパターン3とは、エンジン始動中にブレーキフラグが設定される状況であり、モータモードからパラレルモードに移行するエンジン始動中において自車両11の直前に歩行者等が飛び出してくる状況である。
【0048】
図10に時刻t1で示すように、エンジン12の始動条件が成立すると(符号a1)、エンジン始動を決定する再始動フラグが設定される(符号b1)。このように、再始動フラグが設定されると、スイッチSWがオフ状態に制御され(符号c1)、スタータジェネレータ18が力行状態に制御されてエンジン始動中になり(符号d1)、スタータジェネレータ18の消費電力が急増する(符号e1)。続いて、時刻t2で示すように、エンジン始動中にブレーキフラグが設定されると(符号f1)、自動ブレーキを実行するためにブレーキアクチュエータ45が駆動され、ブレーキアクチュエータ45の消費電力が急増する(符号g1)。
【0049】
このように、自動ブレーキとエンジン始動との実行タイミングが重なった場合には、スタータジェネレータ18によって多くの電力が消費されるため、ブレーキアクチュエータ45に対する電力供給不足が発生する虞がある。そこで、メインコントローラ70は、エンジン始動中にブレーキフラグが設定された場合には(符号f1)、スタータジェネレータ18を停止させる観点から再始動フラグを解除する(符号b2)。これにより、スタータジェネレータ18の力行トルクが引き下げられ、スタータジェネレータ18の消費電力はゼロまで低下する(符号e2)。
【0050】
ここで、スタータジェネレータ18を備える第2電源系62の電位V2は、スタータジェネレータ18の駆動によって低下し(符号h1)、スタータジェネレータ18の停止によって上昇することになる(符号h2)。そして、時刻t3で示すように、上昇に転じた第2電源系62の電位V2が第1電源系61の電位V1に到達すると(符号h3)、スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替えられる(符号c2)。このように、第2電源系62の電位V2が第1電源系61の電位V1を超えた後に、スイッチSWをオン状態に切り替えることにより、第1電源系61から第2電源系62に電力が放出されることがなく、ブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができる。
【0051】
ここで、
図11は
図10の時刻t3における電力供給状況の一例を示す図である。
図11に示すように、エンジン始動中つまりスタータジェネレータ18の駆動中にブレーキフラグが設定されると、メインコントローラ70からブレーキアクチュエータ45には緊急制動指令が出力され、メインコントローラ70からスタータジェネレータ18には力行停止指令が出力される。そして、メインコントローラ70は、第2電源系62の電位V2が第1電源系61の電位V1を超えると、スイッチSWをオフ状態からオン状態に切り替える。このように、第1電源系61と第2電源系62との電位差に基づきスイッチSWをオン状態に切り替えることにより、破線の矢印Xで示すように、スイッチSWをオン状態に切り替えたタイミングで第1電源系61から第2電源系62に電力が放出されることがなく、ブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができる。なお、ブレーキアクチュエータ45の作動状況によっては、低電圧バッテリ32からスイッチSWを介してブレーキアクチュエータ45に電力が供給されることはいうまでもない。
【0052】
また、前述の説明では、第2電源系62の電位V2が第1電源系61の電位V1を超えた後にスイッチSWをオン状態に切り替えているが、これに限られることはなく、第1電源系61から大きな電力が放電されない状況であれば、他の状況下でスイッチSWをオン状態に切り替えても良い。例えば、電位V1と電位V2とが互いに一致した場合にスイッチSWをオン状態に切り替えても良く、電位V1と電位V2との電位差が所定範囲内に収束した場合にスイッチSWをオン状態に切り替えても良い。すなわち、第1電源系61と第2電源系62との電位差に基づいて、第1電源系61から大きな電力が放電されない状況であると判定されていれば、如何なる状況下でスイッチSWをオン状態に切り替えても良い。
【0053】
なお、第1電源系61の電位V1および第2電源系62の電位V2については、スイッチセンサ86を用いて検出することが可能であるが、他のセンサやコントローラ等を用いて電位V1,V2を検出しても良い。例えば、コンバータ34からメインコントローラ70に送信されるコンバータ34の放電電圧を、第1電源系61の電位V1として用いても良い。また、バッテリセンサ88からメインコントローラ70に送信される低電圧バッテリ32の端子電圧を、第2電源系62の電位V2として用いても良い。
【0054】
[協調制御:フローチャート]
図8~
図10に示した協調制御をフローチャートに沿って説明する。
図12および
図13は協調制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図12および
図13に示すフローチャートは符号Aの箇所で互いに接続されている。
【0055】
図12および
図13に示すように、ステップS20では、自動ブレーキ制御の警告フラグが設定されているか否かが判定される。ステップS20において、警告フラグが設定されていると判定された場合には、ステップS21に進み、エンジン停止中であるか否かが判定される。ステップS21において、エンジン停止中であると判定された場合には、ステップS22に進み、スタータジェネレータ18によるエンジン始動が実行される。このように、エンジン停止中に警告フラグが設定された場合には、始動条件の成立を待たずにスタータジェネレータ18が駆動される。これにより、エンジン始動と自動ブレーキとの実行タイミングを互いにずらすことができるため、ブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができ、ブレーキ装置40を適切に動作させることができる。
【0056】
また、ステップS20において、警告フラグが解除されていると判定された場合には、ステップS23に進み、ブレーキフラグが設定されているか否かが判定される。ステップS23において、ブレーキフラグが設定されていると判定された場合には、ステップS24に進み、エンジン停止中であるか否かが判定される。ステップS24において、エンジン停止中であると判定された場合には、ステップS25に進み、スタータジェネレータ18によるエンジン始動が禁止される。このように、エンジン停止中にブレーキフラグが設定された場合には、始動条件が成立してもスタータジェネレータ18の駆動が禁止される。これにより、スタータジェネレータ18の消費電力を抑えることができるため、ブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができ、ブレーキ装置40を適切に動作させることができる。
【0057】
また、ステップS25において、エンジン停止中ではないと判定された場合には、
図13に示すステップS26に進み、エンジン始動中であるか否かが判定される。このステップS26において、エンジン始動中であると判定された場合、つまりエンジン始動中にブレーキフラグが設定された場合には、ステップS27に進み、スイッチSWをオフ状態に保持したまま、スタータジェネレータ18の駆動を停止することにより、エンジン始動が停止される。続くステップS28では、第2電源系62の電位V2が第1電源系61の電位V1を上回るか否かが判定される。ステップS28において、電位V2が電位V1を上回ると判定された場合には、ステップS29に進み、スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替えられる。このように、第2電源系62の電位V2が第1電源系61の電位V1を超えた後に、スイッチSWをオフ状態からオン状態に切り替えることにより、スイッチSWが接続されたタイミングで第1電源系61から第2電源系62に電流が流れることを防止することができる。これにより、ブレーキアクチュエータ45に十分な電力を供給することができ、ブレーキ装置40を適切に動作させることができる。
【0058】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
図1に示した車両11は、動力源としてエンジン12およびモータジェネレータ13を備えたハイブリッド車両であるが、これに限られることはない。例えば、動力源としてエンジン12のみを備えた車両であっても、エンジン12を自動的に停止させて始動するアイドリングストップ機能を備えた車両であれば、本発明を有効に適用することが可能である。
【0059】
前述の説明では、運転支援デバイスの電動アクチュエータとして、自動ブレーキを実行するブレーキアクチュエータ45を用いているが、これに限られることはない。例えば、運転支援デバイスの電動アクチュエータとして、車両衝突を回避する観点からステアリングラック等を自動的に操舵するステアリングアクチュエータを用いても良い。また、前述の説明では、エンジン12を始動回転させるスタータモータとして、発電機としても機能するスタータジェネレータ18を用いているが、これに限られることはなく、スタータモータとして、電動機としてのみ機能するスタータモータを用いても良い。
【0060】
図示する例では、第1蓄電体の電圧が第2蓄電体の電圧よりも高いことから、第1電源部51に直流電力を降圧するコンバータ34を設けているが、これに限られることはなく、第1電源部51にコンバータ34が含まれていない場合であっても、本発明を有効に適用することができる。この場合には、第1蓄電体と第2蓄電体とが直接的に並列接続されるため、第1蓄電体と第2蓄電体との電圧差が所定範囲に収まるように設計される。
【0061】
前述の説明では、第1蓄電体として、端子電圧が約100Vのリチウムイオンバッテリや鉛バッテリを用いているが、これに限られることはない。例えば、第1蓄電体として、端子電圧が100V以外の蓄電体を用いても良く、第1蓄電体として、キャパシタや他形式のバッテリを用いても良い。同様に、第2蓄電体として、端子電圧が約12Vのリチウムイオンバッテリや鉛バッテリを用いているが、これに限られることはない。例えば、第2蓄電体として、端子電圧が12V以外の蓄電体を用いても良く、第2蓄電体として、キャパシタや他形式のバッテリを用いても良い。
【0062】
前述の説明では、メインコントローラ70に、モード設定部71、エンジン制御部72、モータ制御部73、ISG制御部74、コンバータ制御部75、スイッチ制御部76、クラッチ制御部77、衝突予測部78、警告制御部79およびブレーキ制御部80を設けているが、これに限られることはない。例えば、制御部等の各部70~80を他のコントローラに設けても良く、各部70~80を複数のコントローラに分けて設けても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 車両用制御装置
11 車両(自車両)
12 エンジン
18 スタータジェネレータ(スタータモータ)
31 高電圧バッテリ(第1蓄電体)
32 低電圧バッテリ(第2蓄電体)
40 ブレーキ装置(運転支援デバイス)
45 ブレーキアクチュエータ(電動アクチュエータ)
51 第1電源部
52 第2電源部
61 第1電源系
62 第2電源系
72 エンジン制御部
76 スイッチ制御部
78 衝突予測部
79 警告制御部(運転支援制御部)
80 ブレーキ制御部(運転支援制御部)
100 先行車両(対象物)
SW スイッチ