(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】熱コンダクタンス分布データ生成装置、熱コンダクタンス分布データ生成方法及び熱コンダクタンス分布データ生成用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
G01N25/18 L
G01N25/18 E
(21)【出願番号】P 2019008653
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 洋稔
(72)【発明者】
【氏名】平沢 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中島 大誠
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003069(JP,A)
【文献】特開2018-189626(JP,A)
【文献】特開2008-082901(JP,A)
【文献】特開2016-011950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0222043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00 - 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの部品が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
前記接触面の圧力分布データを取得する圧力分布データ取得手段と、
前記圧力分布データ取得手段により取得された前記圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化する圧力分布データ平滑化手段と、
前記圧力分布データ平滑化手段により平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、前記熱コンダクタンス分布データを生成するデータ生成手段と、
を備える、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
複数の前記セルは、同一サイズを有する、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
各セルは、その両辺のいずれも1.5mm以下である、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
前記接触面の歪み情報を取得する歪み取得手段と、
前記歪み取得手段により取得された前記接触面の歪み情報に基づき、前記圧力分布データを複数のセルに分割するセル分割数を決定する分割数決定手段と、
を更に備え、
前記圧力分布データ平滑化手段は、前記分割数決定手段により決定されたセル分割数に基づき、前記圧力分布データを複数のセルに分割する、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
前記分割数決定手段は、前記接触面の歪みが大きいほど、前記セル分割数が大きくなるように前記セル分割数を決定する、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
前記圧力分布データ平滑化手段は、分割された各セル内の圧力の最大値を当該セルの圧力として算出する、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
前記圧力分布データ平滑化手段は、分割された各セル内の圧力の平均値を当該セルの圧力として算出する、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
接触面の歪みがない状態を基に算出した圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式を記憶するメモリーを更に備え、
前記データ生成手段は、前記メモリーに記憶された前記所定関係式に基づき、各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換する、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、
前記部品の材質に応じた、材質毎に接触面の歪みがない状態を基に算出した圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式を記憶するメモリーと、
前記部品の材質に基づき、前記メモリーに記憶された複数の所定関係式から一つの所定関係式を決定する関係式決定手段と、を更に備え、
前記データ生成手段は、前記関係式決定手段により決定された前記所定関係式に基づき、各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換する、
熱コンダクタンス分布データ生成装置。
【請求項10】
二つの部品が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する熱コンダクタンス分布データ生成方法であって、
前記接触面の圧力分布データを取得するステップと、
取得された前記圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化するステップと、
平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、前記熱コンダクタンス分布データを生成するステップと、
を含む、
熱コンダクタンス分布データ生成方法。
【請求項11】
熱コンダクタンス分布データ生成用プログラムであって、
コンピュータに、
二つの部品が接触する接触面の圧力分布データを取得するステップと、
取得された前記圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化するステップと、
平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成するステップと、
を実行させる、
熱コンダクタンス分布データ生成用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱コンダクタンス分布データ生成装置、熱コンダクタンス分布データ生成方法及び熱コンダクタンス分布データ生成用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二つの部品が接する接触面の接触状態に応じた、熱抵抗を得るための熱抵抗情報を保持する保持部を備え、接触状態を設定し、設定された接触状態に対応する熱抵抗情報に基づき、熱伝導率を算出し、算出された熱伝導率を含むデータを生成するデータ生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のデータ生成装置では、二つの部品が接触する接触面の歪み(うねり)による接触圧力の偏り又は、二つの部品の接触による部品の表面形状の変形等を考慮せずに、接触面の全体の熱抵抗(すなわち、熱コンダクタンスの逆数)データを生成する。このため、接触面の全体の熱抵抗分布ではなく、平均値に過ぎない接触面の熱抵抗しか得られないという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、温度測定又は熱シミュレーションを行うことなく、二つの部品が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる熱コンダクタンス分布データ生成装置、熱コンダクタンス分布データ生成方法及び熱コンダクタンス分布データ生成用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある一つの態様によれば、二つの部品が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する熱コンダクタンス分布データ生成装置であって、前記接触面の圧力分布データを取得する圧力分布データ取得手段と、前記圧力分布データ取得手段により取得された前記圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化する圧力分布データ平滑化手段と、前記圧力分布データ平滑化手段により平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、前記熱コンダクタンス分布データを生成するデータ生成手段と、を備える、熱コンダクタンス分布データ生成装置が提供される。
【0007】
本発明のある他の態様によれば、二つの部品が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する熱コンダクタンス分布データ生成方法であって、前記接触面の圧力分布データを取得するステップと、取得された前記圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化するステップと、平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、前記熱コンダクタンス分布データを生成するステップと、を含む、熱コンダクタンス分布データ生成方法が提供される。
【0008】
本発明のあるその他の態様によれば、熱コンダクタンス分布データ生成用プログラムであって、コンピュータに、二つの部品が接触する接触面の圧力分布データを取得する処理と、取得された前記圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化する処理と、平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成する処理と、を実行させる、熱コンダクタンス分布データ生成用プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
これらによれば、温度測定又は熱シミュレーションを行うことなく、二つの部品が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るデータ解析システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、二つの部品がねじ締めにより接触する状態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、ねじ締めにより二つの部品間に挟み込まれた感圧シートの一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、メモリーに記憶された歪み・セル分割数テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、接触面の歪みがない状態において測定した実測値を基に算出した圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式の一例を示すグラフである。
【
図6A】
図6Aは、複数のセルに分割された接触面の圧力分布データ(平滑化前)の一例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aにおいて一点鎖線で囲まれた一行セルの圧力分布を示すグラフである。
【
図7A】
図7Aは、複数のセルに分割された接触面の圧力分布データ(平滑化後)の一例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aにおいて一点鎖線で囲まれた一行セルの圧力分布を示すグラフである。
【
図8A】
図8Aは、接触面の熱コンダクタンス分布データの一例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aにおいて一点鎖線で囲まれた一行セルの熱コンダクタンス分布を示すグラフである。
【
図9】
図9は、データ生成装置が接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、
図9の熱コンダクタンス分布データの生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。本明細書においては、全体を通じて、同一の要素には同一の符号を付する。
【0012】
[データ解析システム]
まず、
図1から
図3を参照しながら本実施形態に係るデータ解析システム100について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るデータ解析システム100を示すブロック図である。
図2は、二つの部品7,8がねじ締めにより接触する状態を示す概略図である。
図3は、ねじ締めにより二つの部品7,8間に挟み込まれた感圧シート9の一例を示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るデータ解析システム100は、熱コンダクタンス分布データ生成装置1、圧力分布データ出力部2、歪み検出部3、材質選択部4、データ解析部5及び表示部6を備える。以下、熱コンダクタンス分布データ生成装置1は、単にデータ生成装置1と称する。データ解析システム100は、データ生成装置1により生成されたデータを解析してその解析結果等を表示部6に表示するシステムである。
【0015】
データ生成装置1は、
図2に示す二つの部品7,8が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する装置である。なお、データ生成装置1の詳細については後述する。
【0016】
圧力分布データ出力部2は、二つの部品7,8がねじ締めにより接触する接触面の圧力分布データを生成する圧力分布データ生成手段である。本実施形態では、圧力分布データ出力部2は、
図3に示す二つの部品7,8間に挟み込まれた感圧シート9を用いて二つの部品7,8が接触する接触面の圧力分布データを生成してデータ生成装置1に出力する。
【0017】
接触面の圧力分布データの生成に用いられる感圧シート9は、圧力を受けると、不可逆的な色変化を起こす(色が濃くなる)感圧変色性材料からなる。感圧シート9は、受ける圧力が大きければ、その変色が濃くなり、受ける圧力が小さければ、その変色が薄くなるように形成される。
【0018】
なお、本実施形態では、感圧シート9は、二つの部品7,8が接触する接触面に対応するように、その寸法が20mm×18mmである正方形状のものから構成されるが、これに限定されるものではなく、上記寸法と異なる接触面に対応する寸法を有するものから構成されてもよい。
【0019】
圧力分布データ出力部2は、感圧シート9の画像データを読み取る画像データ読取部21と、画像データ読取部21により読み取られた感圧シート9の画像データを接触面の圧力分布データに変換する画像・圧力データ変換部22と、を有する。なお、画像データ読取部21は、撮像装置(カメラ)から構成されてもよいし、スキャナーから構成されてもよい。
【0020】
部品7は、作動時において熱を発する発熱部品であり、例えば、抵抗体、電極及びセラミックス基板を有する一般的な長方体形状の抵抗器である。抵抗器には、抵抗体及び電極と干渉しないように上下方向に沿って貫通する貫通孔71が形成される。貫通孔71には、ねじ締め用のねじ10が挿通される。また、本実施形態では、部品7は、抵抗器から構成されるが、これに限定されるものではなく、作動時において熱を発する半導体部品から構成されてもよい。
【0021】
部品8は、作動時の部品7を冷却する放熱部品であり、例えば、平板形状の冷却プレートである。冷却プレートには、貫通孔71に対応するようにねじ10がねじ込むことが可能なねじ穴81が形成される。また、本実施形態では、部品7は、冷却プレートから構成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、回路基板又はケース等から構成されてもよい。
【0022】
二つの部品7,8は、部品7の部品8に対向する片面(下面/接触面)と部品8の部品7に対向する片面(上面/接触面)とが接触するようにねじ10の締めにより連結される。ここで、説明の便宜上、部品7の部品8に対向する片面(下面/接触面)を歪みのある接触面とし、部品8の部品7に対向する片面(上面/接触面)を歪みのない接触面とする。
図3から分かるように、感圧シート9は、ねじ10に近ければ接触面の圧力が大きくなってその領域の変色が濃くなり、ねじ10に遠ければ接触面の圧力が小さくなってその領域の変色が薄くなる。すなわち、二つの部品がねじ締めにより接触する接触面の圧力がねじ寄り側に偏ってしまう傾向がある。
【0023】
歪み検出部3は、接触面の歪み(具体的には、部品7の下面の歪み)情報を検出する歪み検出手段である。歪み検出部3は、複数のレーザ変位センサからなる。本実施形態では、歪み検出部3が検出した接触面の歪み情報は、10.0μmである。また、本実施形態では、歪み検出部3は、複数のレーザ変位センサから構成されるが、これに限定されるものではなく、光センサ等から構成されてもよい。
【0024】
材質選択部4は、部品7の材質と同一材質を選択する材質選択手段としての操作部である。また、本実施形態では、材質選択部4は、例えば、タッチパネル式の表示部6、マウス、或いは選択ボタン等から構成されるが、これらに限定されるものではなく、材質の選択を行えるものであれば足りる。上述のように、本実施形態では、部品7(基板)の材質は、セラミックスであるので、ユーザは、セラミックスを選択し、材質選択部4は、部品7の材質として、セラミックスを示す材質情報をデータ生成装置1に出力する。
【0025】
データ解析部5は、データ生成装置1により生成された二つの部品7,8が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データに基づき、様々な解析を行うデータ解析手段である。例えば、接触面の熱コンダクタンス分布データを用いて抵抗器のレイアウトを設計すること等が考えられる。
【0026】
表示部6は、データ解析部5により解析された解析結果を表示する表示手段としてのモニタである。なお、表示部60は、解析結果のみならず、例えば、接触面の圧力分布データ又は接触面の熱コンダクタンス分布データ等を表示してもよい。
【0027】
本実施形態では、データ生成装置1、材質選択部4、データ解析部5及び表示部6は、一体に構成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、別体に構成されてもよい。
【0028】
[データ生成装置]
次に、
図1から
図8を参照しながら本実施形態に係るデータ生成装置1について説明する。
【0029】
図4は、メモリー16に記憶された歪み・セル分割数テーブルの一例を示す図である。
図5は、接触面の歪みがない状態において測定した実測値を基に算出した圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式の一例を示すグラフである。
図6Aは、複数のセルに分割された接触面の圧力分布データ(平滑化前)の一例を示す図である。
図6Bは、
図6Aにおいて一点鎖線で囲まれた一行セルの圧力分布を示すグラフである。
図7Aは、複数のセルに分割された接触面の圧力分布データ(平滑化後)の一例を示す図である。
図7Bは、
図7Aにおいて一点鎖線で囲まれた一行セルの圧力分布を示すグラフである。
図8Aは、接触面の熱コンダクタンス分布データの一例を示す図である。
図8Bは、
図8Aにおいて一点鎖線で囲まれた一行セルの熱コンダクタンス分布を示すグラフである。
【0030】
図1に示すように、データ生成装置1は、コンピュータとしてのCPU(Central Processing Unit)から構成される装置である。データ生成装置1は、圧力分布データ取得部11、圧力分布データ平滑化部12、熱コンダクタンス分布データ生成部13、歪み取得部14、分割数決定部15、メモリー16及び関係式決定部17を備える。以下、圧力分布データ取得部11、圧力分布データ平滑化部12及び熱コンダクタンス分布データ生成部13は、それぞれ、単に取得部11、平滑化部12、データ生成部13と称する。
【0031】
取得部11は、有線通信又は無線通信を介して、圧力分布データ出力部2により生成された接触面の圧力分布データを取得する圧力分布データ取得手段である。
【0032】
歪み取得部14は、有線通信又は無線通信を介して、歪み検出部3により検出された接触面の歪み(部品7の下面の歪み)情報を取得する歪み取得手段である。本実施形態では、歪み取得部14が取得した接触面の歪み情報は、1.0μmである。
【0033】
分割数決定部15は、歪み取得部14により取得された接触面の歪み情報に基づき、圧力分布データを複数のセルに分割するセル分割数を決定する分割数決定手段である。具体的には、分割数決定部15は、あらかじめメモリー16に記憶された歪み・セル分割数テーブル(
図4参照)を参照し、取得された接触面の歪み情報に対応するセル分割数を選択する。
【0034】
図4から分かるように、セル分割数は、接触面の歪みが大きいほど、大きくなるように設定される。本実施形態では、接触面の歪み情報は、1.0μmであるため、1.0μmの接触面の歪みに対応するセル分割数は、360(20×18)に決定される。これにより、分割された各セル内の圧力の精度が接触面の歪み増大によって低下することが抑制される。
【0035】
メモリー16は、部品7の材質毎に、
図5に示すような接触面の歪みがない状態において測定した実測値を基に算出した圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式を記憶するコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。メモリー16は、歪み・セル分割数テーブル、データ生成装置1において処理プログラムやアルゴリズムプログラムを実行する際に生成される各データ、及び表示部6に表示させる各データ等を記憶している。また、メモリー16は、データ生成装置1において実行される処理プログラムやアルゴリズムプログラムを記憶するものであってもよい。
【0036】
関係式決定部17は、材質選択部4により選択された部品7の材質(セラミックス)に基づき、メモリー16に記憶された複数の所定関係式の中から一つの所定関係式(
図5参照)を決定(選択)する関係式決定手段である。すなわち、関係式決定部17は、材質選択部4から出力されたセラミックスを示す材質情報に基づき、メモリー16に記憶された複数の所定関係式の中から一つの所定関係式(
図5参照)を決定(選択)する関係式決定手段である。
【0037】
図5に示す所定関係式は、セミラックスに適したものである。具体的には、一つの所定関係式は、接触面の歪みがない状態において測定した実測値を基に算出した複数の圧力と熱コンダクタンスとの関係を示す関係式である。なお、所定関係式において、接触面の熱コンダクタンスは、接触面の圧力の約2/3である。
【0038】
平滑化部12は、取得部11により取得された圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化する圧力分布データ平滑化手段である。
【0039】
セル分割部121は、セル分割決定部15により決定されたセル分割数に基づき、取得部11により取得された圧力分布データを、同一サイズを有する複数のセルに分割するセル分割手段である。セル分割部121は、圧力分布データを複数のセルに分割することにより、平滑化された圧力分布データの精度がセルサイズの差異によって低下することが抑制される。本実施形態では、平滑化される前の圧力分布データは、360のセルに分割されている(
図6A参照)。
【0040】
平滑化された圧力分布データの精度がセルサイズの増大によって低下することを抑制する観点から、各セルを、その両辺のいずれも1.5mm以下となるように微小化にすることが好ましい。各セルの両辺のうちのいずれか一つが1.5mmを超える場合、セルのサイズが大きすぎるので、平滑化された圧力分布データの精度が低下してしまうことを抑制しにくくなる。また、各セルは、その両辺のいずれも1.0mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることが更に好ましい。なお、本実施形態では、
図6Aに示すように、各セルは、その両辺のいずれも1.0mmである。
【0041】
図6Bに示すグラフでは、
図6Aの横方向に沿って配列される一行セルを横軸とし、圧力を縦軸とする。
図6Bに示すように、各セル内の圧力は、一つの値ではないため、各セル内の圧力を数値化にすることができない。よって、数値化されていない各セル内の圧力をそのまま用いて熱コンダクタンスに変換することができない。
【0042】
そこで、各セル内の圧力の値を用いて熱コンダクタンスの値に変換するために、圧力平滑化部122は、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化し、平滑化された圧力分布データを生成する圧力平滑化手段である(
図7A参照)。具体的には、圧力平滑化部122は、分割された各セル内の圧力の最大値を当該セルの圧力として算出し、算出された圧力の集合を平滑化された圧力分布データとして生成する。これにより、各セル内の圧力の精度をある程度維持しつつ各セル内の圧力を簡易に数値化にすることができる。
【0043】
図7Bに示すグラフでは、
図6Bと同様に、
図7Aの横方向に沿って配列される一行セルを横軸とし、圧力を縦軸とする。
図7Bに示すように、各セル内の圧力は、一つの値に数値化されている。よって、数値化されている各セル内の圧力をそのまま用いて熱コンダクタンスに変換することができる。
【0044】
データ生成部13は、平滑化部12により平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成するデータ生成手段である。すなわち、データ生成部13は、平滑化部12により平滑化された圧力分布データを熱コンダクタンス分布データに変換する変換部である。
【0045】
具体的には、データ生成部13は、関係式決定部17により決定された所定関係式(
図5参照)に基づき、各セル内の圧力を一つの値となる熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データ(
図8A参照)を生成してデータ解析部5に出力する。
【0046】
図8Bに示すグラフでは、
図8Aの横方向に沿って配列される一行セルを横軸とし、熱コンダクタンスを縦軸とする。
図8Bに示すように、各セル内の熱コンダクタンスは、一つの値となる圧力から変換されるため、一つの値となる。このように、熱コンダクタンス分布データは、平滑化部12により平滑化された圧力分布データから変換される。
【0047】
上述のように、圧力・熱コンダクタンスの変換に用いられる、複数の圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式は、接触面の歪みがない状態において測定した実測値を基に算出したものであるため、理論関係式に基づき各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換する方式に比べ、より精度の高い接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【0048】
[熱コンダクタンス分布データ生成の処理]
次に、
図9から
図11を参照しながら、データ生成装置1が接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する処理について説明する。
【0049】
図9は、データ生成装置1が接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する処理手順を示すフローチャートである。
【0050】
[メイン処理]
まず、
図9を参照しながら熱コンダクタンス分布データ生成のメイン処理について説明する。
【0051】
図9に示すように、スタートにおいて、データ生成装置1の電源をオンにして、ステップS1に進む。
【0052】
ステップS1において、取得部11は、有線通信又は無線通信により、圧力分布データ出力部2により生成された圧力分布データ(平滑化前)を取得し、ステップS2に進む。
【0053】
ステップS2において、データ生成装置1は、圧力分布データの分割処理を行い、ステップS3に進む。なお、圧力分布データの分割処理の詳細については後述する。
【0054】
ステップS3において、圧力平滑化部122は、分割されたセル内の圧力を一つの値となるように平滑化し、平滑化された圧力分布データを生成し、ステップS4に進む。具体的には、ステップS3において、圧力平滑化部122は、分割された各セル内の圧力の最大値を当該セルの圧力として算出し、算出された圧力の集合を平滑化された圧力分布データとして生成し、ステップS4に進む。
【0055】
ステップS4において、データ生成部13は、平滑化部12により平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成する。その後、データ生成装置1が接触面の熱コンダクタンス分布データを生成する処理を終了させる。なお、熱コンダクタンス分布データの生成処理の詳細については後述する。
【0056】
[圧力分布データの分割処理]
次に、
図10を参照しながらメイン処理における圧力分布データの分割処理について説明する。
【0057】
図10は、
図9の圧力分布データの分割処理を示すフローチャートである。
【0058】
まず、ステップS21において、歪み取得部14は、有線通信又は無線通信により、歪み検出部3により検出された接触面の歪み情報を取得し、ステップS22に進む。
【0059】
ステップS22において、分割数決定部15は、歪み取得部14により取得された接触面の歪み情報に基づき、圧力分布データを複数のセルに分割するセル分割数を決定し、ステップS23に進む。具体的には、ステップS22において、分割数決定部15は、あらかじめメモリー16に記憶された歪み・セル分割数テーブルに基づき、取得された接触面の歪みに対応するセル分割数を選択し、ステップS23に進む。
【0060】
ステップS23において、セル分割部121は、セル分割決定部15により決定されたセル分割数に基づき、圧力分布データを、同一サイズを有する複数のセルに分割し、メイン処理に戻る。
【0061】
[熱コンダクタンス分布データの生成処理]
次に、
図11を参照しながらメイン処理における熱コンダクタンス分布データの生成処理について説明する。
【0062】
図11は、
図9の熱コンダクタンス分布データの生成処理を示すフローチャートである。
【0063】
まず、ステップS41において、関係式決定部17は、材質選択部4により選択された部品7の材質に基づき、メモリー16に記憶された複数の所定関係式から一つの所定関係式を決定(選択)し、ステップS42に進む。
【0064】
ステップS42において、データ生成部13は、関係式決定部17により決定された所定関係式に基づき、各セル内の圧力を一つの値となる熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成し、メイン処理に戻る。
【0065】
このように、データ生成装置1は、ステップS1からステップS4までの処理手順を実行することにより、温度測定又は熱シミュレーションを行うことなく、接触面の圧力分布データに対応する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【0066】
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0067】
以上述べたように、本実施形態に係るデータ生成装置1は、二つの部品7,8が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成するものである。このデータ生成装置1は、接触面の圧力分布データを取得する取得部11と、取得部11により取得された圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化する平滑化部12と、平滑化部12により平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成するデータ生成部13と、を備える。
【0068】
これによれば、平滑化部12は、取得部11により取得された接触面の圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化するので、分割された各セル内の圧力を数値化にすることができる。また、データ生成部13は、平滑化部12により平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成するので、数値化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換することができ、温度測定又は熱シミュレーションを行うことなく、接触面の圧力分布データに対応する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【0069】
また、本実施形態において、複数のセルは、同一サイズを有する。
【0070】
これによれば、複数のセルは、同一サイズを有するので、平滑化された圧力分布データの精度がセルサイズの差異によって低下することが抑制され、平滑化された圧力分布データから変換された熱コンダクタンス分布データの精度を高めることができる。
【0071】
また、本実施形態において、各セルは、その両辺のいずれも1.5mm以下である。
【0072】
これによれば、各セルをその両辺のいずれも1.5mm以下となるように微小化にすることで、平滑化された圧力分布データの精度がセルサイズの増大によって低下することが抑制されるので、圧力分布データから変換された熱コンダクタンス分布データの精度をより高めることができる。
【0073】
また、本実施形態において、データ生成装置1は、接触面の歪み情報を取得する歪み取得部14と、歪み取得部14により取得された接触面の歪み情報に基づき、圧力分布データを複数のセルに分割するセル分割数を決定する分割数決定部15と、を更に備える。そして、平滑化部12は、分割数決定部15により決定されたセル分割数に基づき、圧力分布データを複数のセルに分割する。
【0074】
これによれば、分割数決定部15は、歪み取得部14により取得された接触面の歪み情報に基づき、圧力分布データを複数のセルに分割するセル分割数を決定するので、当該セル分割数により分割された各セル内の圧力の精度が接触面の歪みによって低下することが抑制される。したがって、各セル内の圧力から変換された各セル内の熱コンダクタンスの精度を高めることができる。これにより、精度の高い接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【0075】
また、本実施形態において、分割数決定部15は、接触面の歪みが大きいほど、セル分割数が大きくなるようにセル分割数を決定する。
【0076】
これによれば、分割数決定部15は、接触面の歪みが大きいほど、セル分割数が大きくなるようにセル分割数を決定するので、分割された各セル内の圧力の精度が接触面の歪み増大によって低下することが抑制され、各セル内の圧力から変換された各セル内の熱コンダクタンスの精度を高めることができる。これにより、精度の高い接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【0077】
また、本実施形態において、平滑化部12は、分割された各セル内の圧力の最大値を当該セルの圧力として算出する。
【0078】
これによれば、平滑化部12は、分割された各セル内の圧力の最大値を当該セルの圧力として算出するので、各セル内の圧力の精度をある程度維持しつつ各セル内の圧力を簡易に数値化にすることができる。
【0079】
また、本実施形態において、材質毎に接触面の歪みがない状態を基に算出した、圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式を記憶するメモリー16と、部品7の材質に基づき、メモリー16に記憶された複数の所定関係式から一つの所定関係式を決定する関係式決定部17と、を更に備え、データ生成部13は、関係式決定部17により決定された所定関係式に基づき、各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換する。
【0080】
これによれば、データ生成部13は、接触面の歪みがない状態を基に算出した圧力と熱コンダクタンスとの所定関係式に基づき、各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換するので、接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。また、上記変換に用いられる所定関係式は、関係式決定部17により、部品7の材質に基づきメモリー16に記憶された複数の所定関係式から決定されるので、部品7の材質に適した所定関係式を上記変換に用いることができ、精度の高い接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【0081】
本実施形態に係る熱コンダクタンス分布データ生成方法は、二つの部品7,8が接触する接触面の熱コンダクタンス分布データを生成するものであって、接触面の圧力分布データを取得するステップと、取得された圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化するステップと、平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成するステップと、を含むものである。
【0082】
本実施形態に係る熱コンダクタンス分布データ生成用プログラムは、コンピュータに、二つの部品が接触する接触面の圧力分布データを取得するステップと、取得された圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化するステップと、平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成するステップと、を実行させるものである。
【0083】
これらによれば、取得された接触面の圧力分布データを複数のセルに分割し、分割された各セル内の圧力を一つの値となるように平滑化するので、分割された各セル内の圧力を数値化にすることができる。また、平滑化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換し、熱コンダクタンス分布データを生成するので、数値化された各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換することができ、温度測定又は熱シミュレーションを行うことなく、接触面の圧力分布データに対応する、精度の高い接触面の熱コンダクタンス分布データを生成することができる。
【0084】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0085】
[変形例]
上記実施形態では、圧力分布データ出力部2は、感圧シート9を用いて接触面の圧力分布データを生成したが、これに限定されるものではなく、例えば、圧力センサ(実測)又は応力シミュレーション(数値解析)等を用いて接触面の圧力分布データを生成してもよい。この場合、圧力分布データ出力部2は、必ずしも画像データ読取部21及び画像・圧力データ変換部22を設ける必要がない。
【0086】
また、上記実施形態では、圧力分布データを複数のセルに分割するセル分割数は、歪み検出部3により検出された接触面の歪み情報に基づき、分割数決定部15により決定されたが、これに限定されるものではなく、例えば、接触面の歪み情報によらず、ユーザ自身に設定自由に構成されてもよい。この場合、分割数決定部15を設けずに、セル分割数選択部をデータ解析システム100に設ける必要がある。
【0087】
また、上記実施形態では、分割数決定部15は、接触面の歪み情報に基づき、セル分割数を決定したが、これに限定されるものではなく、例えば、接触面の歪み情報及び接触面の面積の両方に基づき、セル分割数を決定してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、メモリー16は、データ生成装置1に内蔵されたが、これに限定されるものではなく、例えば、データ生成装置1とは別体に設けられてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、圧力平滑化部122は、分割された各セル内の圧力の最大値を当該セルの圧力として算出したが、これに限定されるものではなく、分割された各セル内の圧力の平均値を当該セルの圧力として算出してもよい。この場合、変換に用いられる各セル内の圧力の精度を高めることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、データ解析システム100及びデータ生成装置1は、それぞれ、材質選択部4及び関係式決定部17を備えたが、これに限定されるものではなく、材質選択部4及び関係式決定部17を備えなくてもよい。この場合、メモリー16には、接触面の圧力と熱コンダクタンスとの関係を示す一つの所定関係式のみがあらかじめ記憶されており、データ生成部13は、メモリー16に記憶された1つの所定関係式に基づき、各セル内の圧力を熱コンダクタンスに変換する。
【0091】
また、上記実施形態では、所定関係式は、接触面の歪みがない状態において測定した実測値を基に算出したものであったが、これに限定されるものではなく、理論関係式であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 データ生成装置
2 圧力分布データ出力部
3 歪み検出部
4 材質選択部
5 データ解析部
6 表示部
7 部品(抵抗器)
8 部品(冷却プレート)
9 感圧シート
11 圧力分布データ取得部
12 圧力分布データ平滑化部
13 熱コンダクタンス分布データ生成部
14 歪み取得部
15 分割数決定部
16 メモリー
17 関係式決定部
100 データ解析システム