(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】燃料電池システム及びアノードオフガスの再生方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0662 20160101AFI20221122BHJP
H01M 8/0668 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/04828 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/0637 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221122BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221122BHJP
H01M 8/14 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
H01M8/0662
H01M8/0668
H01M8/04791
H01M8/04828
H01M8/04701
H01M8/249
H01M8/0612
H01M8/0637
H01M8/04 J
H01M8/12 101
H01M8/14
(21)【出願番号】P 2019009433
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道幸 立樹
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137080(JP,A)
【文献】特開2010-113867(JP,A)
【文献】特開2017-091630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池の下流に設けられ、前記燃料電池から排出されたアノードオフガス中の水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の少なくとも一部を除去するオフガス再生手段と、
前記オフガス再生手段の下流に設けられ、前記オフガス再生手段から排出された再生オフガスを流通させる流通経路と、
前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度
を導出し、前記析出上限温度が一定値以下となるように調節する制御部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記オフガス再生手段における水蒸気の除去率及びに二酸化炭素の除去率の少なくとも一方を調節することにより、前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池は第1の燃料電池であり、
前記流通経路内を流通する前記再生オフガスが供給される第2の燃料電池を更に備える請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記流通経路内を流通する前記再生オフガスが前記燃料電池に供給される請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器を更に備える、あるいは、前記燃料電池内にて前記原料ガスを改質して燃料ガスを生成する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池と、
前記燃料電池の下流に設けられ、前記燃料電池から排出されたアノードオフガス中の水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の少なくとも一部を除去するオフガス再生手段と、
前記オフガス再生手段の下流に設けられ、前記オフガス再生手段から排出された再生オフガスを流通させる流通経路と、を備える燃料電池システムを用い、
前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度
を導出し、前記析出上限温度が一定値以下となるように調節するアノードオフガスの再生方法。
【請求項7】
前記オフガス再生手段における水蒸気の除去率及びに二酸化炭素の除去率の少なくとも一方を調節することにより、前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する請求項6に記載のアノードオフガスの再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及びオフガスの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常600℃以上の温度で作動する固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池等の高温作動形燃料電池のシステムでは、高効率化を図るため、高温作動形燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスを再利用することが検討されている。例えば、燃料電池の運転時に発電に使用されずに排出される未利用燃料ガスを、その中のCO2を吸収剤により吸収除去した後、発電用燃料として再利用する燃料電池の発電効率向上方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、多段式又は循環式の燃料電池システムにて、固体酸化物形燃料電池におけるアノードオフガス中の水蒸気又は二酸化炭素を除去し、そのガスを再利用することで、システム全体の燃料利用率を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-313402号公報
【文献】特開2006-31989号公報
【文献】特開2015-201266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3には、アノードオフガス中の水蒸気又は二酸化炭素を除去して燃料再生を行うことが開示されている。しかし、アノードオフガス中の水蒸気又は二酸化炭素を除去した場合、アノードオフガス中の一酸化炭素が下記のように反応してアノードオフガスが流通する配管内に炭素析出が生じるおそれがあるが、特許文献1~3では炭素析出という問題について検討されていない。
【0005】
【0006】
例えば、アノードオフガスを燃料再生して再利用する燃料電池システムにてアノードオフガスから炭素析出が生じると、燃料成分である一酸化炭素及び水素が減少することによる出力の低下が生じたり、熱交換器内に炭素析出が生じた場合に熱交換性能が低下して圧力損失が高くなったりするおそれがある。これにより、燃料電池システムの発電効率の低下を招くおそれがある。更に、アノードオフガスが流通する配管内に炭素が多く析出すると、析出した炭素が配管内を塞ぐことにより燃料電池システムが破損するおそれがある。
【0007】
以上により、燃料電池システムにおいて、アノードオフガス再生後の炭素析出を抑制することが望まれる。
【0008】
本発明は、アノードオフガス再生後の炭素析出を抑制可能である、燃料電池システム及びアノードオフガスの再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、例えば以下の手段により解決される。
<1> 燃料電池と、前記燃料電池の下流に設けられ、前記燃料電池から排出されたアノードオフガス中の水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の少なくとも一部を除去するオフガス再生手段と、前記オフガス再生手段の下流に設けられ、前記オフガス再生手段から排出された再生オフガスを流通させる流通経路と、前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する制御部と、を備える燃料電池システム。
<2> 前記制御部は、前記オフガス再生手段における水蒸気の除去率及びに二酸化炭素の除去率の少なくとも一方を調節することにより、前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する<1>に記載の燃料電池システム。
<3> 前記燃料電池は第1の燃料電池であり、前記流通経路内を流通する前記再生オフガスが供給される第2の燃料電池を更に備える<1>又は<2>に記載の燃料電池システム。
<4> 前記流通経路内を流通する前記再生オフガスが前記燃料電池に供給される<1>又は<2>に記載の燃料電池システム。
<5> 原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器を更に備える、あるいは、前記燃料電池内にて前記原料ガスを改質して燃料ガスを生成する<1>~<4>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0010】
<6> 燃料電池と、前記燃料電池の下流に設けられ、前記燃料電池から排出されたアノードオフガス中の水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の少なくとも一部を除去するオフガス再生手段と、前記オフガス再生手段の下流に設けられ、前記オフガス再生手段から排出された再生オフガスを流通させる流通経路と、を備える燃料電池システムを用い、前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節するアノードオフガスの再生方法。
<7> 前記オフガス再生手段における水蒸気の除去率及びに二酸化炭素の除去率の少なくとも一方を調節することにより、前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する<6>に記載のアノードオフガスの再生方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オフガス再生後の炭素析出を抑制可能である、燃料電池システム及びアノードオフガスの再生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【
図2】第2実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【
図3】アノードオフガスに含まれる水蒸気及び二酸化炭素をオフガス再生手段にてそれぞれ除去した場合の再生オフガスにおける炭素の析出上限温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
【0014】
<燃料電池システム>
[第1実施形態]
以下、本発明の燃料電池システムの一実施形態について
図1を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。第1実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池11と、第1燃料電池11から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を少なくとも一部除去するアノードオフガス再生手段16(オフガス再生手段)と、アノードオフガス再生手段16の下流に設けられ、アノードオフガス再生手段から排出された再生オフガスを流通させる再生オフガス経路54(流通経路)と、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する制御部22と、を備える。
【0015】
本実施形態に係る燃料電池システム10では、アノードオフガス再生手段16にてアノードオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を少なくとも一部除去して再生オフガスを生成している。ここで、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が除去されると、以下の反応において炭素析出が生じる方向に平衡が移動する。そのため、一般的には再生オフガスではアノードオフガスと比較して炭素析出が生じやすくなると考えられる。
【0016】
【0017】
更に、再生オフガスが流通する流通経路が鉄、コバルト、ニッケル等を含んで構成されている場合、前述の反応等により生成された炭素が鉄、コバルト、ニッケル等に入りこみ、固溶体を形成しやすくなり、特に再生オフガスが高温である場合に固溶体をより形成しやすくなる。そのため、流通経路の表面にて炭素が成長しやすく、その結果、流通経路の表面にて炭素が析出しやすいという問題がある。
【0018】
一方、本実施形態に係る燃料電池システム10では、再生オフガス経路54内を流通する再生オフガスにおいて、炭素の析出上限温度が一定値以下となるように制御部22により調節される。再生オフガスにおける炭素の析出上限温度を低減して一定値以下とすることにより、再生オフガス経路54内での炭素析出のリスクを低減することができ、オフガス再生後の炭素析出を抑制することができる。また、再生オフガスが高温である場合(例えば、400℃~700℃)に炭素析出がより生じやすくなる傾向にあるが、この場合であっても再生オフガス経路54内での炭素析出を抑制することができる。更に、再生オフガス経路54が鉄、コバルト、ニッケル等を含んで構成され、炭素が析出しやすい場合であっても再生オフガス経路54内における炭素析出を抑制することができる。
【0019】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池11と第2燃料電池12とを備える多段式の燃料電池システムである。循環式の燃料電池システムでは、循環系内での二酸化炭素濃度の増加を抑制するため、アノードから排出されるアノードオフガスを循環系外に一部排出する必要があるが、そのときに未反応の燃料ガスも循環系外に一部排出されてしまう。一方、多段式の燃料電池システムでは、前段の燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスに含まれる燃料ガスを系外に一部排出することなく、後段の燃料電池のアノードに供給される。そのため、多段式の燃料電池システムは、循環式の燃料電池システムと比較して燃料利用率が向上しており、高い発電効率を得ることができる。
【0020】
本実施形態に係る燃料電池システム10では、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度を600℃以下に調節することが好ましく、500℃以下に調節することがより好ましく、400℃以下に調節することが更に好ましい。
【0021】
燃料電池システム10では、再生オフガスに含まれる各ガスの比率を調節することにより、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度を所定の数値に調節することができる。再生オフガスに含まれる各ガスの比率は、後述するように改質器14、第1燃料電池11、アノードオフガス再生手段16等の作動条件を制御したり、改質器14における改質に用いる水蒸気及びメタン等の原料ガスの量を調節したりすることにより、適宜調節できる。
【0022】
以下、本実施形態に係る燃料電池システム10の各構成について説明する。
【0023】
(原料ガス供給経路)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを改質器14の改質部19に供給する原料ガス供給経路24を備えており、原料ガス供給経路24は、原料ガスを流通させるためのブロワ25が設置されている。
【0024】
原料ガス供給経路24内を流通する原料ガスとしては、改質可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料が挙げられる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガス、バイオガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、特にメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスを天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスと混合したガスであってもよい。
【0025】
(水蒸気供給経路)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、水蒸気を改質器14の改質部19に供給する水蒸気供給経路26を備えている。水蒸気供給経路26内を流通する水蒸気は、後述のアノードオフガス再生手段16にて除去された水蒸気由来であってもよく、後述の排ガスに含まれる水蒸気由来であってもよい。
【0026】
(改質器)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器14を備えている。改質器14は、例えば、バーナ又は燃焼触媒を配置した燃焼部18と、改質用触媒を備える改質部19とにより構成される。
【0027】
改質部19は、上流側にて原料ガス供給経路24と接続しており、下流側にて燃料ガス供給経路42と接続している。そのため、原料ガス供給経路24を通じてメタンなどの原料ガスが改質部19に供給され、改質部19にて原料ガスを水蒸気改質した後に、生成された燃料ガスが燃料ガス供給経路42を通じて第1燃料電池11に供給される。
【0028】
燃焼部18は、上流側にて空気供給経路44及びオフガス経路46と接続しており、下流側にて排気経路48と接続している。燃焼部18は、第2燃料電池12のカソード側から排出され、空気供給経路44を通じて供給された未反応の酸素を含むガス(カソードオフガス)と、オフガス経路46を通じて供給されたアノードオフガスとの混合ガスを燃焼させ、改質部19内の改質用触媒を加熱する。燃焼部18からの排ガスは、排気経路48内を流通する。
【0029】
改質部19で起こる水蒸気改質は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部から熱の供給が必要であり、そのため、燃焼部18で発生する燃焼熱により改質部19を加熱することが好ましい。あるいは、燃焼部18を設置せずに各燃料電池から放出される熱を用いて改質部19を加熱してもよい。
【0030】
原料ガスとしてCnHm(n、mはともに正の実数)で表される炭化水素ガスを水蒸気改質させた場合、改質部19にて、以下の式(a)の反応により一酸化炭素及び水素が生成される。
CnHm+nH2O→nCO+[(m/2)+n]H2・・・・(a)
【0031】
また、原料ガスの一例であるメタンを水蒸気改質させた場合、改質部19にて、以下の式(b)の反応により一酸化炭素及び水素が生成される。
CH4+H2O→CO+3H2・・・・(b)
【0032】
改質部19内に設置される改質用触媒としては、水蒸気改質反応の触媒となるものであれば特に限定されないが、Ni、Rh、Ru、Ir、Pd、Pt、Re、Co、Fe及びMoの少なくとも一つを触媒金属として含む水蒸気改質用触媒が好ましい。
【0033】
改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの水蒸気の分子数Sと、改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの原料ガスの炭素原子数Cとの比であるスチームカーボン比S/Cは、1.5~3.5であることが好ましく、2.0~3.0であることがより好ましく、2.0~2.5であることがさらに好ましい。スチームカーボン比S/Cがこの範囲にあることにより、原料ガスが効率よく水蒸気改質され、水素及び一酸化炭素を含む燃料ガスが生成される。さらに、燃料電池システム10内での炭素析出を抑制することができ、燃料電池システム10の信頼性を高めることができる。
【0034】
また、燃焼部18は、水蒸気改質を効率よく行う観点から、改質部19を、600℃~800℃に加熱することが好ましく、600℃~700℃に加熱することがより好ましい。
【0035】
本発明に係る燃料電池システム(特に、高温型の燃料電池を備える燃料電池システム)では、改質器が第1燃料電池の外部に取り付けられている必要はなく、第1燃料電池に原料ガス及び水蒸気を直接供給し、第1燃料電池の内部で水蒸気改質(内部改質)を行い、生成された燃料ガスを第1燃料電池での発電に用いる構成であってもよい。特に第1燃料電池が高温型の燃料電池である場合、内部での反応温度は600℃~800℃と高温であるため、第1燃料電池内で水蒸気改質を行うことが可能である。
【0036】
排気経路48内を流通する排ガスは、熱交換器41により冷却されるため、凝縮により発生した水を回収し、前述の水蒸気改質に用いてもよい。
【0037】
空気供給経路44は、空気などの酸素を含むガス(カソードガス)及び未反応の酸素を含むガス(カソードオフガス)が流通する経路であり、空気供給経路44には熱交換器41が設置されている。熱交換器41は、第1燃料電池11の上流側の空気供給経路44内を流通するカソードガスと、排気経路48内を流通する排ガスと、の間で熱交換を行う。これにより、排気経路48内を流通するする排ガスは冷却され、第1燃料電池11の上流側の空気供給経路44内を流通する空気は、第1燃料電池11の作動温度に適した温度に加熱された後に第1燃料電池11のカソードに供給される。
【0038】
(第1燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料ガス供給経路42を通じて改質器14から供給された燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池11を備えている。第1燃料電池11としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。また、第1燃料電池としては、600℃~1000℃程度で作動する高温型の燃料電池、例えば、650℃~1000℃程度で作動する固体酸化物形燃料電池、600℃~700℃程度で作動する溶融炭酸塩形燃料電池が挙げられる。
【0039】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、空気供給経路44を通じて空気が供給される。空気がカソードに供給されることにより、以下の式(c)に示す反応が起こり、その際、酸素イオンが固体酸化物電解質(図示せず)の内部を移動する。
O2+4e-→2O2-・・・・(c)
【0040】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、燃料ガス供給経路42を通じて水素及び一酸化炭素を含む燃料ガスが供給される。固体酸化物電解質の内部を酸素イオンが移動し、アノードと固体酸化物電解質との界面にて、以下の式(d)、式(e)に示す反応が起こる。
H2+O2-→H2O+2e-・・・・(d)
CO+O2-→CO2+2e-・・・・(e)
【0041】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、空気供給経路44を通じて酸素及び二酸化炭素を含むガスが供給される。酸素及び二酸化炭素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(f)に示す反応が起こり、その際、炭酸イオンが電解質(図示せず)の内部を移動する。
O2+2CO2+4e-→2CO3
2-・・・・(f)
【0042】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、燃料ガス供給経路42を通じて水素を含む燃料ガスが供給される。電解質の内部を移動する炭酸イオンからアノードと電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(g)に示す反応が起こる。
H2+CO3
2-→H2O+CO2+2e-・・・・(g)
【0043】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、発生した水蒸気と、燃料ガス供給経路42を通じて供給された一酸化炭素と、が反応して以下の式(h)に示す反応が起こり、水素及び二酸化炭素が発生する。そして、発生した水素は、前述の式(g)の反応に消費される。
CO+H2O→H2+CO2・・・・(h)
【0044】
上記式(d)、式(e)、式(g)及び式(h)に示すように、第1燃料電池11での燃料ガスの電気化学的な反応により、固体酸化物形燃料電池及び溶融炭酸塩形燃料電池では主に水蒸気及び二酸化炭素が生成される。また、アノードで生成された電子は、外部回路を通じてカソードに移動する。このようにして電子がアノードからカソードに移動することにより、第1燃料電池11にて発電が行われる。
【0045】
カソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて、第2燃料電池12のカソード(図示せず)に供給される。
【0046】
一方、アノードから排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスは、オフガス経路52を通じてアノードオフガス再生手段16へ供給される。ここで、未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気などを含む混合ガスである。
【0047】
オフガス経路52及び再生オフガス経路54には熱交換器21が設置されており、熱交換器21により、オフガス経路52内を流通するアノードオフガスと、再生オフガス経路54内を流通する再生オフガスと、の間で熱交換を行う。これにより、オフガス経路52内を流通するアノードオフガスは、アノードオフガス再生手段16により二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の少なくとも一部を除去する際に好ましい温度まで冷却され、再生オフガス経路54内を流通する再生オフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。そのため、システム全体の発電効率及び熱効率がより向上する。
【0048】
(アノードオフガス再生手段)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池11から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスから、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の少なくとも一部を分離するアノードオフガス再生手段16を備えている。アノードオフガスがアノードオフガス再生手段16に供給され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方の少なくとも一部が分離されることにより、再生オフガスが生成される。
【0049】
アノードオフガス再生手段16としては、吸収材、吸着剤、分離膜、凝縮器等が挙げられる。
【0050】
吸収材としては、アノードオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を吸収できるものであればよく、水吸収材、二酸化炭素吸収材等が挙げられる。
【0051】
吸着剤としては、アノードオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を吸着できるものであればよく、水吸着剤、二酸化炭素吸着剤等が挙げられる。
【0052】
分離膜としては、アノードオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離できるものであればよく、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子-無機材料複合膜、液体膜等が挙げられる。また、分離膜は、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることが好ましい。また、分離膜は、多孔質性の支持体に支持されていてもよい。
【0053】
吸収材、吸着剤及び分離膜におけるアノードオフガス中の二酸化炭素の除去率及び水蒸気の除去率は、アノードオフガスの流量、アノードオフガスの温度、吸収材、吸着剤及び分離膜の温度等を調節することにより、適宜調節することができる。
分離膜を用いる場合、分離効率を向上させるため、透過側にスイープガスを供給してもよく、アノードオフガスの供給側と透過側とに圧力差を設けてもよい。分離膜を用いる場合、前述の原料ガスが流通する原料ガス供給経路24、前述の第2燃料電池12から排出されたカソードオフガスが流通する空気供給経路44、前述の第2燃料電池12から排出されたアノードオフガスが流通するオフガス経路46、前述の排ガスが流通する排気経路48等を分離膜の透過側に配置し、これらのガスをスイープガスとして用いてもよい。分離膜を用いる場合、アノードオフガス中の二酸化炭素の除去率及び水蒸気の除去率については、前述した方法の他に、スイープガスの流量、スイープガスの温度、供給側と透過側の圧力差を調節することにより、適宜調節することができる。
【0054】
凝縮器としては、アノードオフガス中の水蒸気を凝縮により除去できるものであればよい。凝縮器におけるアノードオフガス中の水蒸気の除去率は、凝縮温度を調節することにより、適宜調節することができる。
【0055】
吸収材、吸着剤、分離膜、凝縮器等を適宜組み合わせてアノードオフガスから、二酸化炭素の少なくとも一部及び水蒸気の少なくとも一部を除去してもよい。例えば、アノードオフガス再生手段16として、二酸化炭素を少なくとも分離する分離膜と、凝縮器とを組み合わせてもよい。また、アノードオフガス再生手段16として、二酸化炭素を少なくとも分離する分離膜と、凝縮器とをアノードオフガスの流通方向上流から見てこの順に配置してもよい。
【0056】
吸収材、吸着剤、分離膜、凝縮器等を用いて除去した水蒸気は、前述の水蒸気改質に用いてもよい。
【0057】
例えば、アノードオフガス再生手段16における二酸化炭素の除去率及び水蒸気の除去率を調節することにより、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度を所定の数値に調節することができる。具体的には、二酸化炭素の除去率を増加させることにより析出上限温度を低減させることができる傾向にあり、水蒸気の除去率を低下させることにより析出上限温度を増加させることができる傾向にある。
【0058】
(再生オフガス経路)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、アノードオフガス再生手段16の下流に設けられ、アノードオフガス再生手段16から排出された再生オフガスを流通させる再生オフガス経路54を備える。再生オフガス経路54内を流通する再生オフガスは、後述の第2燃料電池12に供給される。
【0059】
再生オフガス経路54を構成する材料としては特に限定されず、例えば、Fe、Ni、Co等を含んでいてもよい。また、再生オフガス経路54におけるFe、Ni及びCoの合計含有率は、50質量%超であってもよい。炭素と固溶体を形成しやすいFe、Ni及びCoが一定量を超えている場合であっても、流通経路の表面にて炭素が成長しにくく、その結果、流通経路の表面での炭素析出を抑制できる傾向にある。
【0060】
(制御部)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する制御部22を備える。
【0061】
制御部22は、改質器14、第1燃料電池11、アノードオフガス再生手段16、第2燃料電池12等の作動条件を制御する構成であり、これらを制御することにより、前述の再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節可能となる。より具体的には、制御部22が、改質器14の改質温度、第1燃料電池11の燃料利用率、アノードオフガス再生手段16における水蒸気の除去率及び二酸化炭素の除去率等を調節することにより、再生オフガスにおける各ガスの比率を調節することができるため、前述の再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節可能となる。
【0062】
(第2燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、アノードオフガス再生手段16及び再生オフガス経路54の下流に配置され、再生オフガスを用いて発電を行う第2燃料電池12を備えている。第2燃料電池12としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。なお、第2燃料電池12は、上述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、共通する事項に関する説明は省略する。
【0063】
燃料電池システム10では、第2燃料電池12は、再生オフガスを用いて発電を行う。そのため、第2燃料電池12では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、ガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方に起因する濃度過電圧が低減され、特に高電流密度時に高い性能を発揮することができる。よって、燃料電池システム10は、後段の燃料電池にて水蒸気及び二酸化炭素が分離されていないアノードオフガスを用いて発電を行う多段式の燃料電池システムと比較して、高い発電効率を得ることができる。
【0064】
第2燃料電池12のアノードから排出されたアノードオフガスは、オフガス経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給され、第2燃料電池12のカソードから排出されたカソードオフガスは、下流側の空気供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。
【0065】
(変形例)
本実施形態では、空気供給経路44が直列となっているため、第1燃料電池11に空気を供給した後、第2燃料電池12に第1燃料電池11から排出されたカソードオフガスが供給されるが、空気供給経路44は並列であってもよい。つまり、空気が流通する空気供給経路44が分岐し、第1燃料電池11及び第2燃料電池12のカソードに空気をそれぞれ供給する構成であってもよい。
【0066】
本実施形態では、2つの燃料電池(第1燃料電池11及び第2燃料電池12)を備える燃料電池システムについて説明したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の燃料電池を備える燃料電池システムであってもよく、例えば、第2燃料電池12の下流に第3燃料電池を備える構成であってもよい。このとき、第3燃料電池のアノードから排出されたアノードオフガスが、オフガス経路を通じて改質器の燃焼部へ供給される構成であってもよく、第3燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスが、下流側の空気供給経路を通じて改質器の燃焼部へ供給される構成であってもよい。
【0067】
本実施形態では、原料ガスを水蒸気改質する構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、二酸化炭素改質、部分酸化改質、シフト反応改質等により原料ガスを改質する構成であってもよい。例えば、改質器は、原料ガスの二酸化炭素改質及び水蒸気改質の少なくとも一方を行う構成であってもよく、また、部分酸化改質により燃料ガスを生成する構成であってもよく、改質時にシフト反応を伴うものであってもよい。また、第1燃料電池に原料ガス及び二酸化炭素を直接供給し、第1燃料電池の内部で二酸化炭素改質(内部改質)を行い、生成された燃料ガスを第1燃料電池での発電に用いる構成であってもよい。
【0068】
[第2実施形態]
前述した第1実施形態は、多段式の燃料電池システムであるが、本発明はこれに限定されず、循環式の燃料電池システムであってもよい。以下、本発明の一実施形態に係る循環式の燃料電池システム20について、
図2を用いて説明する。
図2は、第2実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【0069】
図2に示すように、第2実施形態に係る燃料電池システム20は、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の少なくとも一部が除去されたアノードオフガスを燃料電池61に再度供給するオフガス循環経路56及び再生オフガス循環経路57を備える循環式の燃料電池システムである。なお、燃料電池61は前述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、その説明を省略し、第1実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0070】
燃料電池システム20では、燃料電池61から排出された未反応の燃料ガスを含むアノードオフガスについて、その一部がオフガス経路46内を流通して燃焼部18に供給され、残りがオフガス循環経路56内を流通してアノードオフガス再生手段16に供給される。アノードオフガス再生手段16は供給されたアノードオフガスから水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の少なくとも一部を除去して再生オフガスを生成し、再生オフガスは再生オフガス循環経路57内を流通する。再生オフガス循環経路57内を流通する再生オフガスは、燃料ガス供給経路42内に供給され、かつ燃料ガス供給経路42内を流通する燃料ガスと混合された後、混合ガスが燃料電池61のアノードに供給されて発電が行われる。
【0071】
本実施形態に係る燃料電池システム20は、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する制御部22を備える。これにより、再生オフガス循環経路57内での炭素析出のリスクを低減することができ、オフガス再生後の炭素析出を抑制することができる。
【0072】
また、燃料電池システム20では、水蒸気及び二酸化炭素を分離せずにアノードオフガスを再利用する循環式の燃料電池システムよりも高い発電効率を得ることができる。なお、再生オフガス循環経路57内を流通する再生オフガスは、燃料ガス供給経路42内に供給される構成の代わりに、改質部19に供給される構成であってもよい。
【0073】
再生オフガス循環経路57には、アノードオフガスを流通させるためのリサイクルブロワ28が配置されている。なお、リサイクルブロワの配置は、特に限定されず、アノードオフガス再生手段16の上流であってもよく、アノードオフガス再生手段16の下流であってもよいが、アノードオフガス再生手段16の上流に設ける場合には、熱交換器21とアノードオフガス再生手段16との間に配置することが好ましく、アノードオフガス再生手段16の下流に設ける場合には、アノードオフガス再生手段16と熱交換器21との間に配置することが好ましい。
【0074】
[第3実施形態]
前述の第1実施形態及び第2実施形態に係る燃料電池システムでは、再生オフガスが燃料電池に供給されて発電に利用される構成であるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、本発明の燃料電池システムは、流通経路内を流通する再生オフガスが燃料電池システムの燃焼部に供給される構成であってもよく、あるいは、別の燃焼装置に供給される構成であってもよい。これにより、水蒸気及び二酸化炭素を分離せずにアノードオフガスを燃焼部又は燃焼装置に供給した場合と比較して、ガスの燃焼効率を高めることができる。
【0075】
[第4実施形態]
本発明の燃料電池システムは、再生オフガスに含まれる水素、一酸化炭素等を原料とする合成装置、合成プラント等に流通経路内を流通する再生オフガスが供給される構成であってもよい。これにより、水蒸気及び二酸化炭素を分離せずにアノードオフガスを合成装置、合成プラント等に供給した場合と比較して、合成効率を高めることができる場合がある。
【0076】
本発明の燃料電池システムは、前述の第1実施形態~第4実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で、当業者によって、前述の各実施形態を組み合わせて実施される。また、熱交換器の設置場所、組み合わせなどについてもこれら実施形態に限定されない。
【0077】
<アノードオフガスの再生方法>
本発明の一実施形態に係るアノードオフガスの再生方法は、燃料電池と、前記燃料電池の下流に設けられ、前記燃料電池から排出されたアノードオフガス中の水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の少なくとも一部を除去するオフガス再生手段と、前記オフガス再生手段の下流に設けられ、前記オフガス再生手段から排出された再生オフガスを流通させる流通経路と、を備える燃料電池システムを用い、前記再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節する。本実施形態の再生方法では、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度を低減して一定値以下とすることにより、流通経路内での炭素析出のリスクを低減することができ、アノードオフガス再生後の炭素析出を抑制することができる。また、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度の調節は、前述のように制御部を備える燃料電池システムを用いて行ってもよく、制御部を用いずに前述のように燃料電池システムの各条件を適宜調節することにより行ってもよい。なお、本実施形態の再生方法にて用いる燃料電池システムの好ましい各構成は、前述の燃料電池システムの好ましい各構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0078】
本実施形態の再生方法では、オフガス再生手段における水蒸気の除去率及びに二酸化炭素の除去率の少なくとも一方を調節することにより、再生オフガスにおける炭素の析出上限温度が一定値以下となるように調節してもよい。アノードオフガス中の二酸化炭素の除去率及び水蒸気の除去率は、前述のようにして調節することができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、水蒸気の除去率及び二酸化炭素の除去率はともに体積基準である。
【0080】
[実験]
燃料電池(固体酸化物形燃料電池)を有し、かつ水蒸気を除去するオフガス再生手段又は水蒸気及び二酸化炭素を除去するオフガス再生手段を有する燃料電池システムを用い、オフガス再生手段における水蒸気の除去率及び二酸化炭素の除去率を調節したときの再生オフガスにおける炭素の析出上限温度を以下の条件にて実験して求めた。
(条件)
燃料ガス・・・メタンガス(メタン100体積%)
S/C・・・2.5
燃料電池の燃料利用率・・・85%
ガス圧力・・・101.3kPa
温度範囲・・・100℃~650℃
【0081】
(炭素の析出上限温度の算出)
再生オフガスにおける炭素の析出上限温度は、HSC Chemistry7 ver.7.11を用い、上記の条件に従い平衡計算を行って算出した。
【0082】
燃料電池より排出されるアノードオフガスに含まれる水蒸気をオフガス再生手段にて85%(体積%)除去した場合の再生オフガスにおける炭素の析出上限温度は、430℃であった。また、燃料電池より排出されるアノードオフガスに含まれる水蒸気及び二酸化炭素をオフガス再生手段にてそれぞれ85%及び20%除去した場合の再生オフガスにおける炭素の析出上限温度は、375℃であった。
【0083】
アノードオフガスに含まれる水蒸気及び二酸化炭素をオフガス再生手段にてそれぞれ除去した場合の再生オフガスにおける炭素の析出上限温度のグラフを
図3に示す。例えば、炭素析出のリスクを低減する点から、炭素の析出上限温度を500℃以下となるように水蒸気の除去率及び二酸化炭素の除去率を調節することが好ましく、400℃以下となるように水蒸気の除去率及び二酸化炭素の除去率を調節することがより好ましい。また、炭素析出のリスクを低減することにより、燃料電池システムの破損リスクを低減でき、信頼性の向上及びメンテナンスコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0084】
10、20…燃料電池システム、11…第1燃料電池、12…第2燃料電池、14…改質器、16…アノードオフガス再生手段、18…燃焼部、19…改質部、21、41…熱交換器、22…制御部、24…原料ガス供給経路、25…ブロワ、26…水蒸気供給経路、28…リサイクルブロワ、42…燃料ガス供給経路、44…空気供給経路、46、52…オフガス経路、54…再生オフガス経路、48…排気経路、56…オフガス循環経路、57…再生オフガス循環経路、61…燃料電池