(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】コンクリート製造用プラント
(51)【国際特許分類】
B28C 7/06 20060101AFI20221122BHJP
B28C 9/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B28C7/06
B28C9/00
(21)【出願番号】P 2019011254
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝端 勉
(72)【発明者】
【氏名】中村 教一
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-256867(JP,A)
【文献】特開2013-019245(JP,A)
【文献】特開平04-038359(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103552155(CN,A)
【文献】中国実用新案第201661082(CN,U)
【文献】特開平03-047319(JP,A)
【文献】特開平09-071918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/00-9/04
E04H 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材貯留槽と、骨材ホッパーと、骨材搬送手段と、混合ミキサーとが建屋内に設けられたコンクリート又はモルタルを製造するためのコンクリート製造用プラントであって、
前記骨材貯留槽が、地盤面を掘削して所定の深さに設置された面状流体流通部を構成する上板部材の上面に載置されて、上端開口面を建屋内に開口させた状態で地中に埋設されており、前記面状流体流通部と連通する供給管を介して加熱流体又は冷却流体を前記面状流体流通部の流体流通路に送り込んで流通させることにより、前記骨材貯留槽に貯留された骨材を加熱又は冷却するようになっており、
前記面状流体流通部には、地盤面を掘削した際の掘削底盤との間にスペーサ部材を介在させて前記上板部材を敷設することによって、前記掘削底盤と前記上板部材との間に前記流体流通路が形成されており、
前記上板部材が、平面視矩形形状となっており、前記供給管との連通箇所の近傍に位置する第1辺部及びこれと連続する一対の第2辺部に沿って、前記流体流通路の周囲を仕切る土留矢板部材が設置されており、
前記上板部材の前記第
1辺部と対向する辺部側に、砕石層が敷設されていて、前記流体流通路の一部を形成していると共に、該砕石層から地上に向けて有孔管が立設されており、該砕石層の粒子間の隙間及び前記有孔管を介して、前記流体流通路を流通した加熱流体又は冷却流体を前記流体流通路から地上に排出できるようになっており、
加熱又は冷却された骨材を、前記骨材ホッパー及び前記骨材搬送手段を介して前記混合ミキサーに送り込んで、セメント及び水と混合することによりコンクリート又はモルタルを製造するようになっているコンクリート製造用プラント。
【請求項2】
前記スペーサ部材が、前記上板部材の前記第1辺部の長さよりも短い、所定の高さの直線状部材となっており、前記第2辺部の延設方向に間隔をおいて、前記第1辺部の延設方向に延設して複数本設置されており、複数本の前記スペーサ部材は、隣接する前記スペーサ部材の一端部が異なる前記第2辺部の前記土留矢板部材に当接又は近接して配置されていることにより、ジグザク状の前記流体流通路を形成している請求項1記載のコンクリート製造用プラント。
【請求項3】
前記スペーサ部材が、H形鋼からなり、フランジ部を上下に位置させた状態で設置されている請求項2記載のコンクリート製造用プラント。
【請求項4】
前記有孔管は、水抜き用として底部に水中ポンプが設置されている請求項1~3のいずれか1項記載のコンクリート製造用プラント。
【請求項5】
前記水中ポンプは、地下水の水位が掘削底盤よりも上方に上昇にしないように地下水を排除できる深さに設置されている請求項4記載のコンクリート製造用プラント。
【請求項6】
前記骨材貯留槽は、前記第2辺部の延設方向に複数体設けられている請求項1~5のいずれか1項記載のコンクリート製造用プラント。
【請求項7】
前記骨材貯留槽は、その底面が前記上板部材によって形成されていると共に、その側面がライナープレートによって形成されている請求項1~6のいずれか1項記載のコンクリート製造用プラント。
【請求項8】
前記加熱流体又は冷却流体が、熱風又は冷風である請求項1~7のいずれか1項記載のコンクリート製造用プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製造用プラントに関し、特に、骨材貯留槽と、骨材ホッパーと、骨材搬送手段と、混合ミキサーとが建屋内に設けられたコンクリート又はモルタルを製造するためのコンクリート製造用プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM工法等の山岳トンネル工法においては、地山の緩みや剥落を抑えるために、掘削したトンネルの内周壁面を早期に覆うことを目的として、吹付けコンクリートが所定の厚さで吹き付けられることになるが、このような吹付けコンクリートとして用いるコンクリートやモルタルは、好ましくは山岳トンネル工法等の土木工事現場に併設して設けられた、コンクリート製造用の好ましくは仮設のプラントにおいて製造されることになる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
コンクリート製造用のプラントには、建屋内に例えば骨材ビンと呼ばれる骨材をストックしておくための骨材貯留槽や、吊りクレーン及びクラムバケットや、骨材ホッパー及び搬送装置としての骨材コンベアーや、混合ミキサー等が設置されており、混合ミキサーに投入された砂や砂利等の骨材を、水やセメント等と混合してコンクリートやモルタルを製造し、製造されたコンクリートやモルタルを、例えばコンクリ-トミキサー車に積み込んで、吹付け作業現場まで搬送させるようになっているが、このようなコンクリート製造用のプラントは、例えば仮設のプラントとして、工事の終了後には撤去される場合もあることから、できるだけ簡易に設けておくことが望ましい。
【0004】
一方、このようなコンクリート製造用のプラントを、例えば寒冷地の土木工事現場に併設して設けた場合に、特に厳冬期においては、寒中コンクートとしての施工を行う必要があることから、例えばコンクリートの製造箇所の最低気温が0℃以下の期間では、骨材の加熱を行う必要がある。また、例えば日平均気温が4℃より低い場合には、コンクリートの硬化が著しく遅くなるばかりか、気温が急激に低下すると、コンクリートが凍結するおそれがあるので、構築される構造物の種類、大きさ、気温、養生方法等に応じたコンクリートの適切な温度を確保する必要があることから、コンクリート製造用のプラントにストックされた骨材を、適宜加熱して温めることにより、設定された所望の温度に保持されるようにしておくことが望ましい。
【0005】
これに対して、内部に攪拌羽根を有する回転容器内にコンクリート用骨材を投入すると共に、回転容器を回転させながら内部に熱風を送風して、投入されたコンクリート用骨材を加熱し、さらに骨材の表面温度に基づいて、熱風の温度を加減できるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-173998号公報
【文献】特開平7-4844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のコンクリート用骨材を加熱する方法によれば、コンクリートの物理的、化学的安定性、あるいは未硬化のコンクリートと骨材との適切な配合設計やその他の条件を決定するための試験を事前に行なう際に、試験に用いるコンクリート用骨材が表乾状態となるように、骨材を加熱乾燥させるものであり、これをコンクリート製造用のプラントに多量にストックされている骨材を、所定の温度となるように加熱しておくために用いるには、設備が大掛かりになると共に、多量の骨材を効率良く加熱して所定の温度に保持しておくことは困難である。
【0008】
また、コンクリート製造用のプラントを、例えば温暖な地域の土木工事現場に併設して設けた場合に、特に日平均気温が25℃を超える高温期においては、製造されるコンクリートやモルタルの凝結が早くなると共に、運搬中の水分蒸発が多くなるため、スランプの低下が大きくなり、ポンプによる圧送性(ポンパビリティ)や一連の打設作業のし易さ(ワーカビリティ)が低下したり、初期乾燥ひび割れが発生し易くなるといった弊害が生じ易くなることから、製造されるコンクリートやモルタルが温度の高過ぎる暑中コンクリートとならないように、コンクリート製造用のプラントにストックされた骨材を冷却して、設定された低い温度に保持しておくことが望ましい。
【0009】
本発明は、特に厳冬期や高温期においても、簡易な構成によって、骨材貯留槽にストックされた骨材が設定された所定の温度に保持されるようにして、品質の良好なコンクリートやモルタルを製造することのできるコンクリート製造用プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、骨材貯留槽と、骨材ホッパーと、骨材搬送手段と、混合ミキサーとが建屋内に設けられたコンクリート又はモルタルを製造するためのコンクリート製造用プラントであって、前記骨材貯留槽が、地盤面を掘削して所定の深さに設置された面状流体流通部を構成する上板部材の上面に載置されて、上端開口面を建屋内に開口させた状態で地中に埋設されており、前記面状流体流通部と連通する供給管を介して加熱流体又は冷却流体を前記面状流体流通部の流体流通路に送り込んで流通させることにより、前記骨材貯留槽に貯留された骨材を加熱又は冷却するようになっており、前記面状流体流通部には、地盤面を掘削した際の掘削底盤との間にスペーサ部材を介在させて前記上板部材を敷設することによって、前記掘削底盤と前記上板部材との間に前記流体流通路が形成されており、前記上板部材が、平面視矩形形状となっており、前記供給管との連通箇所の近傍に位置する第1辺部及びこれと連続する一対の第2辺部に沿って、前記流体流通路の周囲を仕切る土留矢板部材が設置されており、前記上板部材の前記第1辺部と対向する辺部側に、砕石層が敷設されていて、前記流体流通路の一部を形成していると共に、該砕石層から地上に向けて有孔管が立設されており、該砕石層の粒子間の隙間及び前記有孔管を介して、前記流体流通路を流通した加熱流体又は冷却流体を前記流体流通路から地上に排出できるようになっており、加熱又は冷却された骨材を、前記骨材ホッパー及び前記骨材搬送手段を介して前記混合ミキサーに送り込んで、セメント及び水と混合することによりコンクリート又はモルタルを製造するようになっているコンクリート製造用プラントを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
さらに、本発明のコンクリート製造用プラントは、前記スペーサ部材が、前記上板部材の前記第1辺部の長さよりも短い、所定の高さの直線状部材となっており、前記第2辺部の延設方向に間隔をおいて、前記第1辺部の延設方向に延設して複数本設置されており、複数本の前記スペーサ部材は、隣接する前記スペーサ部材の一端部が異なる前記第2辺部の前記土留矢板部材に当接又は近接して配置されていることにより、ジグザク状の前記流体流通路を形成していることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明のコンクリート製造用プラントは、前記スペーサ部材が、H形鋼からなり、フランジ部を上下に位置させた状態で設置されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明のコンクリート製造用プラントは、前記有孔管に、水抜き用として底部に水中ポンプが設置されていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明のコンクリート製造用プラントは、前記水中ポンプが、地下水の水位が掘削底盤よりも上方に上昇にしないように地下水を排除できる深さに設置されていることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明のコンクリート製造用プラントは、前記骨材貯留槽が、前記第2辺部の延設方向に複数体設けられていることが好ましい。
【0018】
また、本発明のコンクリート製造用プラントは、前記骨材貯留槽の底面が前記上板部材によって形成されていると共に、前記骨材貯留槽の側面がライナープレートによって形成されていることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明のコンクリート製造用プラントは、前記加熱流体又は冷却流体が、熱風又は冷風であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のコンクリート製造用プラントによれば、特に厳冬期や高温期においても、簡易な構成によって、骨材貯留槽にストックされた骨材が設定された所定の温度に保持されるようにして、品質の良好なコンクリートやモルタルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート製造用仮設プラントの建屋の内部構造を説明する、正面側略示断面図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート製造用仮設プラントの建屋の内部構造を説明する、
図1のA-Aに沿った略示平断面図である。
【
図3】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート製造用仮設プラントの建屋の内部構造を説明する、
図1のB-Bに沿った略示側断面図である。
【
図4】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート製造用仮設プラントの建屋の内部構造を説明する、
図1のC-Cに沿った略示側断面図である。
【
図5】上板部材の上面に骨材貯留槽が載置された面状流体流通部の構成を説明する、建屋が設けられる前の状態の要部透視略示平断面図である。
【
図6】上板部材の上面に骨材貯留槽が載置された面状流体流通部の構成を説明する、
図5のD-Dに沿った略示側断面図である。
【
図7】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート製造用仮設プラントの建屋の外観形状を説明する、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~
図7に示す本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート製造用プラント10は、土木工事現場として、例えば寒冷地においてNATM工法等によって構築される山岳トンネルの施工現場に併設されて、好ましくは掘削したトンネルの内周壁面の地山を早期に覆うことを目的として所定の厚さで吹き付けられる、吹付け用の湿式のコンクリート(以下、吹付けコンクリートとする)を製造するための仮設のプラントとして用いられる。本実施形態のコンクリート製造用プラント10は、簡易な構成によって、骨材貯留槽11a,11bにストックされた骨材が設定された所定の温度に保持されるようにして、特に厳冬期においても品質の良好な寒中コンクリート(寒中モルタルを含む)を製造できるようにする機能を備えている。
【0023】
そして、本実施形態のコンクリート製造用プラント10は、土木工事現場として、例えば寒冷地における山岳トンネルの施工現場に併設して設けられて、好ましくは工事の終了後には撤去される、骨材貯留槽11a,11b、11cと、骨材ホッパー12a,12bと、骨材搬送手段である搬送コンベア13a,13bと、混合ミキサー14aとが建屋20内に設けられた、1次覆工用の吹付けコンクリートを製造するため好ましくは仮設のプラントであって(
図1~
図4参照)、
図5及び
図6に示すように、骨材貯留槽11a,11b,11cが、地盤面30を掘削して所定の深さに設置された面状流体流通部15を構成する上板部材16の上面に載置されて、上端開口面11dを建屋20内に開口させた状態(
図1、
図2参照)で地中に埋設されている。面状流体流通部15と連通する供給管17を介して例えば地上から加熱流体として熱風を面状流体流通部15の流体流通路15aに送り込んで流通させることにより、骨材貯留槽11a,11b、11cに貯留された骨材を加熱するようになっている。所定の温度に加熱された骨材を、骨材ホッパー12a,12b及び搬送コンベア13a,13bを介してバッチャーユニット14内の混合ミキサー14aに送り込んで、セメント及び水と混合することにより吹付けコンクリートを製造するようになっている(
図1、
図2参照)。
【0024】
また、本実施形態では、面状流体流通部15には、地盤面30を掘削した際の、好ましくは砕石層による掘削底盤31との間に、好ましくはH形鋼からなるスペーサ部材18を介在させて上板部材16を敷設することによって、掘削底盤31と上板部材16との間に流体流通路15aが形成されている。
【0025】
さらに、本実施形態では、上板部材16が、平面視矩形形状となっており(
図5参照)、供給管17との連通箇所17aの近傍に位置する短辺部である第1辺部16a及びこれと連続する長辺部である一対の第2辺部16bに沿って、流体流通路15aの周囲を仕切る土留矢板部材19が設置されている。
【0026】
さらにまた、本実施形態では、好ましくはH形鋼からなるスペーサ部材18が、上板部材16の第1辺部16aの長さよりも短い、所定の高さの直線状部材となっており(
図5参照)、第2辺部16bの延設方向に間隔をおいて、第1辺部の延設方向に延設して複数本(本実施形態では、10本)設置されており、複数本のスペーサ部材18は、隣接するスペーサ部材18の一端部が異なる第2辺部16bの土留矢板部材19に当接又は近接して配置されていることにより、ジグザク状の流体流通路15aを形成している。
【0027】
本実施形態のコンクリート製造用プラント10を形成する建屋20は、
図7(a)~(c)に示すように、例えばコンクリート基礎20aから立設して設けられたH形鋼やその他の鋼製部材による骨組構造20bに支持させて、公知の各種の壁パネルやカラー鋼板等を取り付けることにより、屋根部20cと4方の側壁部20dとによって周囲を囲まれる、長さが18m程度、高さが10m程度、奥行きが6m程度の大きさの、簡易な中空の建物として形成されている。建屋20の一方の側部には、上部が側方に張り出した、オーバーハング部21が設けられている。オーバーハング部21の床部21aの上には、混合ミキサー14aを備えるバッチャーユニット14が設置されている(
図1参照)。バッチャーユニット14の混合ミキサー14aおいて骨材とセメントと水とを混合して形成された吹付け用のコンクリートは、オーバーハング部21の床部21aの下方を積込みスペース21bとして、この積込みスペース21bに停車させたコンクリ-トミキサー車37に積み込んで、搬出できるようになっている(
図3参照)。
【0028】
また、本実施形態では、建屋20の正面側の側壁部20dの下半部分には、当該側壁部20dに沿って横方向にスライド移動可能な複数枚の鋼製スライドドア22が取り付けられている(
図7(a)参照)。選択された1又は複数枚の鋼製スライドドア22を適宜横方向にスライド移動させることにより、建屋20の正面側の側壁部20dの下半部分の必要箇所を開放して、開放した側壁部20dの下半部分から、ダンプトラック等によって搬入された砂や砂利等の骨材を、骨材貯留槽11a,11b,11cに投入して貯留できるようになっている(
図1、
図2参照)。
【0029】
本実施形態では、建屋20の内部には、後述するように、3体の骨材貯留槽11a,11b,11cが、建屋20内の地中に埋設された状態で設けられている。また、
図1~
図4に示すように、建屋20の内部には、従来のコンクリート用プラントと同様に、骨材ホッパー12a,12b、骨材搬送手段である搬送コンベア13a,13b、混合ミキサー14aを備えるバッチャーユニット14が設けられている他、天井クレーン23、クラムバケット24、水槽25、ボイラー26、熱風発生機27等(
図4参照)や、作業員が各種の作業、点検を行うための作業架台28や、各種の照明設備等が設けられている。
【0030】
天井クレーン23は、建屋20内の上部に設けられた走行レール23aや横行レール23bに案内されて走行することにより、建屋20内の略全域に亘って任意の位置に移動できるようになっており、また吊り下げたクラムバケット24を昇降させて、骨材貯留槽11a,11b,11cから骨材を掴み取ったり、掴み取った骨材を骨材ホッパー12a,12bに投入したりできるようになっている。クラムバケット24は、例えば0.6m3程度の容量の公知の油圧式バケットとなっており、一対のバケット部を油圧の作用によって開閉することにより、骨材を掴み取ったり落下させたりできるようになっている。
【0031】
骨材ホッパー12a,12bは、クラムバケット24から投入された骨材の量を調整して、骨材搬送手段である搬送コンベア13a,13bに送り出すための公知の供給設備であって、本実施形態では、例えば容量が8m
3程度の砂ホッパー12aと、容量が6m
3程度の砂利ホッパー12bとが設けられている。砂ホッパー12aには、バイブレータが取付けられていて、投入された砂を解した状態で、搬送コンベア13a,13bにスムーズに送り出すことができるようになっている。骨材搬送手段である搬送コンベア13a,13bは、例えば公知のベルトコンベアからなり、骨材ホッパー12a,12bから供給された骨材を、建屋20のオーバーハング部21の床部21aの上に設置された、混合ミキサー14aを備える公知のバッチャーユニット14に搬送して、混合ミキサー14aにおいて、搬送された骨材を、建屋20の外部に設けられたセメントサイロ(図示せず)から例えばスクリューコンベア29(
図1参照)を介して送られてくるセメントや、作業架台28の下方に設置された水槽25(
図4参照)から水中ポンプやホース(図示せず)を介して送られている水等と共に混合して、吹付けコンクリートを製造できるようになっている。
【0032】
また、本実施形態では、作業架台28の下方に設置されたボイラー26は、建屋20内の暖房設備として用いられるようになっており、熱風発生機27は、骨材貯留槽11a,11b、11cが載置される面状流体流通部15の流体流通路15aに、供給管17を介して加熱流体である熱風を送り込むための設備として用いられるようになっている(
図5、
図6参照)。
【0033】
そして、本実施形態では、コンクリート製造用プラント10は、
図5及び
図6に示すように、骨材貯留槽11a,11b,11cが、地盤面30を掘削して所定の深さに設置された面状流体流通部15を構成する上板部材16の上面に載置されて、上端開口面11dを建屋20内のコンクリート基礎20aの上方に開口させた状態(
図1参照)で地中に埋設されている。面状流体流通部15を形成する作業、及び骨材貯留槽11a,11b,11cを設置する作業は、建屋20を組み立てるのに先立って、コンクリート製造用プラント10が設けられる領域の地盤面30を所定の深さに掘削することにより行われる。
【0034】
面状流体流通部15を形成するには、コンクリート製造用プラント10が設けられる領域の地盤面30を例えば3300mm程度の深さで掘削した後に、好ましくは掘削底面に砕石を敷き均し転圧することによって、200mm程度の厚さの砕石層による掘削底盤31を形成する。次に、形成した掘削底盤31の上に、例えばH-150×150の2500mm程度の長さの複数本のH形鋼を、所定の高さの直線状部材によるスペーサ部材18として、フランジ部を上下に位置させた状態で設置する。複数本のH形鋼18は、上板部材16が敷設される領域において、敷設される平面視矩形形状の上板部材16の一方の短辺部である第1辺部16aの方向に延設すると共に、長辺部である第2辺部16bの方向に例えば1000mm程度の中心間ピッチとなる間隔をおいて、並べて配置される。複数本のH形鋼18は、敷設される平面視矩形形状の上板部材16の第1辺部16aの長さよりも、例えば500mm程度短くなっており、隣接するH形鋼18の一端部が異なる第2辺部16bの位置に、又はこれに近接する位置に配置されることで、互い違いに並べて設置される。
【0035】
また、本実施形態では、敷設される平面視矩形形状の上板部材16の第1辺部16aに沿って配置された、第1辺部16a側の端部のH形鋼18の外側に、土留矢板部材19が取り付けられると共に、第1辺部16aと連続する長辺部である一対の第2辺部16bに沿った部分に、土留矢板部材19が、第1辺部16aと対向する辺部16c側の端部に設置されたH形鋼18を超える位置まで延設して取り付けられる。土留矢板部材19は、厚さが30mm程度、縦幅が300mm程度の大きさの断面形状を有する帯板形状の部材となっており、下部の150mm幅の部分を砕石層による掘削底盤31に埋設すると共に、上端面をH形鋼18によるスペーサ部材の上面と合わせた状態で、平面視矩形形状の上板部材16の第1辺部16a及び一対の第2辺部16bに沿わせるようにして、連続して取り付けることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、敷設される平面視矩形形状の上板部材16の、第1辺部16aと対向する辺部16c側の端部に設置されたH形鋼18よりも、さらに対向する辺部16c側の部分に、好ましくは単流砕石による空気抜き用の砕石層32を、上面がH形鋼によるスペーサ部材18の上面と同様の高さとなるように敷設して転圧することにより形成する。空気抜き用の砕石層32は、上板部材16が設置されて面状流体流通部15が形成された際に、掘削底盤31と上板部材16との間にスペーサ部材18を介在させて形成された流体流通路15aを流通した後の、加熱流体である熱風を、通過させて排出できるようにする機能を備えると共に、熱風が流通することにより、砕石層32自体が、掘削底盤31と上板部材16との間に形成された流体流通路15a’として機能することが可能になる。
【0037】
本実施形態では、掘削底盤31の上にH形鋼によるスペーサ部材18を設置すると共に、好ましくは単流砕石を敷設して砕石層32を形成したら、これらの上面を覆うようにして、短辺部の長さが3000mm程度、長辺部の長さが12000mm程度の大きさの平面視矩形形状の上板部材16を設置することによって、面状流体流通部15を形成する。上板部材16は、これを例えば縦横に4分割した、短辺部の長さが1500mm程度、長辺部の長さが6000mm程度の大きさの敷き鉄板16dを、縦横に連接して敷き並べることによって、これらの4枚の敷き鉄板16dが一体となった状態で設置することができる。
【0038】
これによって、面状流体流通部15には、掘削底盤31の上にスペーサ部材18が介在することによって、流体流通路15aが、掘削底盤31と上板部材16との間に形成されることになる。また、スペーサ部材18が、上板部材16の第1辺部16aの長さよりも短い直線状部材となっており、複数本のスペーサ部材18は、隣接するスペーサ部材18の一端部が異なる第2辺部16bの土留矢板部材19に当接又は近接して配置されることになるので、ジグザク状の流体流通路15aが形成されることになる。
【0039】
さらに、上板部材16の第1辺部16aと対向する辺部16c側に、スペーサ部材18による流体流通路15aと共に流体流通路の一部を形成する、流体流通路15a’として機能する空気抜き用の砕石層32が敷設されていると共に、敷設された砕石層32における上板部材16から外れた位置に、好ましくは砕石層32から地上に向けて有孔管33を立設させることにより、砕石層32の粒子間の隙間、及び有孔管33を介して、流体流通路15a,15a’を流通した加熱流体である熱風を、流体流通路15a,15a’から地上に排出することが可能になる。
【0040】
砕石層32から立設する有孔管33には、砕石層32及び掘削底盤31に埋設された部分である底部33aに、水抜き用の水中ポンプ34を設置して、有孔管33を介して地下水を排除できるようにすることが好ましい。これによって、地下水の水位が、掘削底盤31よりも上方に上昇しないようにして、流体流通路15a,15a’において、加熱流体である熱風を流通させる機能が損なわれないようにすることが可能になる。
【0041】
上板部材16を設置して面状流体流通部15を形成したら、面状流体流通部15の周囲を、好ましくは上板部材16の上面と同様の高さまで埋め戻すと共に、面状流体流通部15を構成する上板部材16の上面に骨材貯留槽11a,11b,11cを載置する。本実施形態は、骨材貯留槽として、細骨材である砂用の2体の骨材貯留槽11a,11cと、粗骨材である砂利用の1体の骨材貯留槽11bの、合計3体の複数の骨材貯留槽が、上板部材16の第2辺部16bの延設方向に、例えば4500mm程度の中心間間隔をおいて並べて設置される。すなわち、砂用の骨材貯留槽11aが、平面視矩形形状の上板部材16の、面状流体流通部15と供給管17との連通箇所17aの近傍に位置する第1辺部16a側に、スペーサ部材18による流体流通路15aの上方に配置されて設置されると共に、砂利用の骨材貯留槽11bが、上板部材16の中央部分に、スペーサ部材18による流体流通路15aの上方に配置されて設置される。さらに、砂用の骨材貯留槽11cが、第1辺部16aと対向する辺部16c側に、砕石層32による流体流通路15a’の上方に配置されて設置される。
【0042】
本実施形態では、骨材貯留槽11a,11b,11cは、波形断面を備える公知の円弧形状のライナープレート35を、例えば外径が3500mm程度、高さが3000mm程度の大きさの円筒形状となるように組み付けることによって形成されており、上板部材16の上面に載置されることにより、各々の骨材貯留槽11a,11b,11cは、その底面が上板部材16によって形成されると共に、その側面がライナープレート35によって形成されることになる。
【0043】
骨材貯留槽11a,11b,11cを面状流体流通部15の上に設置すると共に、上板部材16の外側に外れた、好ましくはスペーサ部材18による流体流通路15aから砕石層32による流体流通路15a’への流出口と対角方向に位置する部分に、砕石層32から立設させて有孔管33を設置し、さらに上板部材16の第1辺部16aと第2辺部16bとの一方の角部分において、面状流体流通部15の流体流通路15aに接続した加熱流体を供給するための供給管17を、地盤面30の上方まで立ち上げたら、掘削した地盤を、好ましくは地盤面30の高さ位置まで埋め戻す。また、埋め戻した地盤の上端部に適宜砕石を敷き均して、基盤層36を形成した後に、基盤層36の上にコンクリートを打設することで、コンクリート基礎20aを、各々の骨材貯留槽11a,11b,11cの上端開口面11dを上方に開口させた状態で形成する。
【0044】
コンクリート基礎20aを形成したら、上述のように、コンクリート基礎20aから立設させて骨組構造20bを組み付けると共に、組み付けられた骨組構造20bに支持させて、各種の壁パネルやカラー鋼板等を取り付けることによって、建屋20を形成する。また形成した建屋20の内部に、骨材ホッパー12a,12b、骨材搬送手段であるコンベア13a,13b、混合ミキサー14aを備えるバッチャーユニット14、天井クレーン23、クラムバケット24、水槽25、ボイラー26、熱風発生機27、作業架台28、各種の照明設備等を設置する。さらに、設置された熱風発生機27に、面状流体流通部15の流体流通路15aに接続された供給管17を接続し、加熱流体である熱風を、流体流通路15a、15a’に送り込んで流通させることができるようにして、本実施形態のコンクリート製造用プラント10が形成される。
【0045】
ここで、熱風を発生させる熱風発生機27として、例えば電子制御熱風機として知られる、好ましくは例えば商品名「ホットドライヤ」(株式会社スイデン製)等の、公知の種々の熱風発生機を用いることができる。また、コンクリート製造用プラント10の建屋20の内部に上端開口面11dを開口させて設置された骨材貯留槽11a,11b,11cには、ダンプトラック等によって搬入された骨材として、砂や砂利が適宜投入されて、ストックされる。
【0046】
そして、上述の構成を備える本実施形態のコンクリート製造用プラント10によれば、特に厳冬期においても、簡易な構成によって、骨材貯留槽11a,11b,11cにストックされた骨材が、加熱された所定の設定温度に保持されるようにして、品質の良好な吹付けコンクリートを製造することが可能になる。
【0047】
すなわち、本実施形態によれば、骨材貯留槽11a,11b,11cが、地盤面30を掘削して所定の深さに設置された面状流体流通部15を構成する上板部材16の上面に載置されて、上端開口面11dを建屋20内に開口させた状態で地中に埋設されており、面状流体流通部15と連通する供給管17を介して、例えば地上から加熱流体である熱風を、面状流体流通部15の流体流通路15a,15a’に送り込んで流通させることにより、骨材貯留槽11a,11b、11cに貯留された骨材を加熱するようになっており、加熱された骨材を、骨材ホッパー12a,12b及びコンベア13a,13bを介してバッチャーユニット14内の混合ミキサー14aに送り込んで、セメント及び水と混合することにより吹付けコンクリートを製造するようになっている。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、例えば建屋20内に設置した熱風発生機27に、面状流体流通部15の流体流通路15aに接続された供給管17を接続し、熱風発生機27で発生させた熱風を、地中に埋設された骨材貯留槽11a,11b,11cが載置された上板部材16の下面側の流体流通路15a,15a’に送り込んで流通させるだけの簡易な構成によって、骨材貯留槽11a,11b,11cにストックされた砂や砂利等の骨材を加熱することができると共に、骨材がストックされた骨材貯留槽11a,11b,11cが地中に埋設されていることで、地中の断熱効果によって、加熱された骨材の温度を容易に保持することができるので、設定された所定の温度に加温された骨材を用いて、セメントや水と混合することにより、厳冬期においても、品質の良好な寒中コンクリートによる吹付けコンクリートを、容易に且つ効率良く製造することが可能になる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明のコンクリート製造用プラントは、仮設のプラントである必要は必ずしもなく、またトンネルの内周壁面を覆う吹付けコンクリート以外の、その他の種々のコンクリート構造物を構築する現場において使用する、コンクリートやモルタルを製造するためのプラントであっても良い。また、本発明のコンクリート製造用プラントは、面状流体流通部の流体流通路に、加熱流体として例えば熱風を送り込んで流通させることにより骨材を加熱して、寒冷地において品質の良好な寒中コンクリートを得るためのプラントとして用いる必要は必ずしも無く、面状流体流通部の流体流通路に、冷却流体として例えば冷風を送り込んで流通させることにより骨材を冷却して、例えば温暖な地域の土木工事現場において、高温期に打設される品質の良好な暑中コンクリートを得るためのプラントとして用いることもきる。さらに、面状流体流通部の流体流通路に送り込まれる加熱流体や冷却流体は、熱風や冷風である必要は必ずしもなく、例えば流体流通路の周囲を止水性シートで囲むなどして流体流通路に止水性を付与すると共に、温水や冷水を送り込んで、骨材を加温したり冷却したりすることもできる。温水として、例えば自然由来としての温泉水を用いることもできる。骨材貯留槽は、面状流体流通部の上に複数体設けられている必要は必ずしもなく、1体のみ設けられていても良い。
【符号の説明】
【0050】
10 コンクリート製造用プラント
11a,11b,11c 骨材貯留槽
11d 上端開口面
12a 砂ホッパー(骨材ホッパー)
12b 砂利ホッパー(骨材ホッパー)
13a,13b 搬送コンベア
14 バッチャーユニット
14a 混合ミキサー
15 面状流体流通部
15a,15a’ 流体流通路
16 上板部材
16a 第1辺部
16b 第2辺部
16c 対向する辺部
16d 敷き鉄板
17 供給管
18 H形鋼(スペーサ部材)
19 土留矢板部材
20 建屋
20a コンクリート基礎
21 オーバーハング部
22 鋼製スライドドア
23 天井クレーン
24 クラムバケット
27 熱風発生機
30 地盤面
31 掘削底盤
32 砕石層
33 有孔管
35 ライナープレート
37 コンクリ-トミキサー車