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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 35/10 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
D05B35/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019025130
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020130412
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高岩 敬介
(72)【発明者】
【氏名】本澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】森島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】都田 実
(72)【発明者】
【氏名】安部 好晃
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-25898(JP,A)
【文献】特開平3-198896(JP,A)
【文献】特開2010-263976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンモーターにより縫い針の上下動を行う針上下動機構と、
前記ミシンモーターの回転数を検出する回転数検出部と、
被縫製物を一定の送り方向に送る送り機構と、
前記被縫製物の端縁部を突き当てて当該被縫製物を前記送り方向に案内するガイドとを備えるミシンにおいて、
前記縫い針の針落ち位置よりも前記送り方向の上流側において、前記被縫製物の終端部の位置を検出する終端検出部と、
縫製動作の実行と停止を操作入力する操作部と、
前記ガイドを前記針落ち位置から離隔させるガイド用アクチュエーターと、
縫製動作の制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記操作部の操作に拘わらず、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点の前記針落ち位置への到達を検出して、自動的に縫製を停止すると共に前記ガイドを前記ガイド用アクチュエーターにより退避させる第一の縫製モードと、
前記操作部の操作に従って縫製動作を行い、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点の前記針落ち位置への到達を検出すると共に前記操作部から停止が入力されると、縫製を停止すると共に前記ガイドを前記ガイド用アクチュエーターにより退避させる第二の縫製モードと、
を含む複数の縫製モードを選択して実行することを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記制御装置は、前記操作部の操作に従って縫製動作を行い、前記ガイド用アクチュエーターによる前記ガイドの退避動作を伴わない第三の縫製モードも含む複数の縫製モードを選択して実行することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記被縫製物の縫いピッチを設定するピッチ設定部を備え、
前記送り機構は、前記被縫製物の縫いピッチを変更する調節用アクチュエーターを有し、
前記制御装置は、前記第一の縫製モードにおいて、前記調節用アクチュエーターを制御して、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点が前記針落ち位置に到達する前に、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点で針落ちが行われるように前記縫いピッチを調整するピッチ調整制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ピッチ調整制御の前に、前記回転数検出部による前記ミシンモーターの検出回転数と前記終端検出部による前記被縫製物の終端部の検出位置の変化とに基づいて、実際の被縫製物の縫いピッチを検出するピッチ検出処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ピッチ検出処理を行うための前記回転数検出部による前記ミシンモーターの回転数の検出と前記終端検出部による前記被縫製物の終端部の位置検出とを実行する際に、前記ミシンモーターを制御して、縫製速度を制限することを特徴とする請求項4に記載のミシン。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ピッチ検出処理を行うための前記回転数検出部による前記ミシンモーターの回転数の検出と前記終端検出部による前記被縫製物の終端部の位置検出とを実行する際の前記縫製速度の制限速度を、前記ピッチ設定部で設定された縫いピッチの大きさに応じて決定することを特徴とする請求項5に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバ幅を揃えて縫製を行うミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
生地の端縁部に沿ってコバ幅(生地の端縁部からの距離)を一定に維持して縫製を行う場合、生地の端縁部を突き当てるガイドを針落ち位置の近傍に設け、当該ガイドに生地の端縁部を沿わせながら縫製が行われていた(例えば、特許文献1の図21参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-192530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生地の中には角部を有するものがあり、この場合、角部の近傍で縫製を一時停止して、生地を旋回させて縫製の進行方向を大きく変更する必要があった。
しかしながら、ガイドが存在すると、ガイドが生地に干渉して旋回させることができなくなる場合があった。
【0005】
本発明は、作業性の向上を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ミシンにおいて、
ミシンモーターにより縫い針の上下動を行う針上下動機構と、
前記ミシンモーターの回転数を検出する回転数検出部と、
被縫製物を一定の送り方向に送る送り機構と、
前記被縫製物の端縁部を突き当てて当該被縫製物を前記送り方向に案内するガイドとを備えるミシンにおいて、
前記縫い針の針落ち位置よりも前記送り方向の上流側において、前記被縫製物の終端部の位置を検出する終端検出部と、
縫製動作の実行と停止を操作入力する操作部と、
前記ガイドを前記針落ち位置から離隔させるガイド用アクチュエーターと、
縫製動作の制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記操作部の操作に拘わらず、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点の前記針落ち位置への到達を検出して、自動的に縫製を停止すると共に前記ガイドを前記ガイド用アクチュエーターにより退避させる第一の縫製モードと、
前記操作部の操作に従って縫製動作を行い、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点の前記針落ち位置への到達を検出すると共に前記操作部から停止が入力されると、縫製を停止すると共に前記ガイドを前記ガイド用アクチュエーターにより退避させる第二の縫製モードと、
を含む複数の縫製モードを選択して実行することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のミシンにおいて、
前記制御装置は、前記操作部の操作に従って縫製動作を行い、前記ガイド用アクチュエーターによる前記ガイドの退避動作を伴わない第三の縫製モードも含む複数の縫製モードを選択して実行することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のミシンにおいて、
前記被縫製物の縫いピッチを設定するピッチ設定部を備え、
前記送り機構は、前記被縫製物の縫いピッチを変更する調節用アクチュエーターを有し、
前記制御装置は、前記第一の縫製モードにおいて、前記調節用アクチュエーターを制御して、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点が前記針落ち位置に到達する前に、前記被縫製物の角部における縫い目の進路変更点で針落ちが行われるように前記縫いピッチを調整するピッチ調整制御を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のミシンにおいて、
前記制御装置は、前記ピッチ調整制御の前に、前記回転数検出部による前記ミシンモーターの検出回転数と前記終端検出部による前記被縫製物の終端部の検出位置の変化とに基づいて、実際の被縫製物の縫いピッチを検出するピッチ検出処理を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載のミシンにおいて、
前記制御装置は、前記ピッチ検出処理を行うための前記回転数検出部による前記ミシンモーターの回転数の検出と前記終端検出部による前記被縫製物の終端部の位置検出とを実行する際に、前記ミシンモーターを制御して、縫製速度を制限する。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載のミシンにおいて、
前記制御装置は、前記ピッチ検出処理を行うための前記回転数検出部による前記ミシンモーターの回転数の検出と前記終端検出部による前記被縫製物の終端部の位置検出とを実行する際の前記縫製速度の制限速度を、前記ピッチ設定部で設定された縫いピッチの大きさに応じて決定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、第一の縫製モードでも第二の縫製モードでもガイドが退避するので、作業性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態であるミシンの針板周辺の斜視図である。
図2】ミシンの制御系のブロック図である。
図3】針板上の生地の平面図である。
図4】第一の縫製モードの動作制御のフローチャートである。
図5図5(A)~図5(D)は第一の縫製モードの動作説明図である。
図6図6(A)~図6(C)は図5(D)に続く第一の縫製モードの動作説明図である。
図7】第二の縫製モードの動作制御のフローチャートである。
図8図8(A)~図8(C)は第三の縫製モードの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の実施形態の概略構成]
以下、本発明の実施形態であるミシンを図1乃至図8に基づいて詳細に説明する。図1はミシン10の針板周辺の斜視図、図2は制御系のブロック図である。
本実施形態では、一端部に鋭角の尖鋭形状部分を有するシャツの衿の端縁部に沿って当該端縁部から一定のコバ幅を維持して縫製を行う場合を例示する。なお、以下の説明では、シャツの衿を生地K(被縫製物)と記載する。
【0015】
ミシン10は、ミシンフレーム20と、縫い針11を保持する針棒を上下動させる針上下動機構30と、ミシンフレーム20のミシンベッド部21の針落ち位置に設けられた針板16と、被縫製物である生地Kを一定の送り方向に沿って送る送り機構40と、針板16上で生地Kに対して上から押さえ圧を付与する布押さえ機構85と、生地Kを送り方向に沿って案内するガイド機構50と、縫製の区切りで上糸及び下糸を切断する糸切り装置80と、縫い針11の針落ち位置である針穴よりも送り方向の上流側で生地Kの終端部の位置を検出する終端検出部としての第一~第三の布端センサー61,62,63と、上記各構成の動作制御を行う制御装置90とを備えている。
なお、釜機構、糸調子装置13及び天秤等についてはミシンに搭載されている周知の機構であるため図示又は説明を省略する。
【0016】
[ミシンフレーム]
ミシンフレーム20は、図1に示すように、下部に位置するミシンベッド部21と、ミシンベッド部21の一端部から上方に立ち上げられたミシン立胴部(図示略)と、ミシン立胴部の上部からミシンベッド部21に沿うように延設されたミシンアーム部23とからなる。
【0017】
ここで、ミシン10の構成を説明するにあたって、後述する針棒の上下動方向をZ軸方向とし、これと直交する方向であってミシンベッド部21及びミシンアーム部23の長手方向に平行な方向をY軸方向とし、Z軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をX軸方向とする。
なお、ミシン10を水平面上に設置した場合に、Z軸方向は鉛直上下方向となり、X軸方向及びY軸方向は水平方向となる。また、このミシン10は、X軸方向を送り方向とし、生地KをX軸方向に沿って送る。
また、X軸方向の一方であって送り方向の下流側を「前」、上流側を「後」とし、Y軸方向の一方であって前方を向いた状態で左手側を「左」、右手側を「右」とし、Z軸方向の一方の鉛直上方を「上」、その逆側を「下」とする。
【0018】
ミシンベッド部21の左端上部には、針穴161が形成された針板16が水平に設けられている。
ミシンアーム部23の内側では、その長手方向(Y軸方向)に平行に向けられた上軸(主軸)が回転可能に支持されている。
また、ミシンベッド部21の内側では、その長手方向(Y軸方向)に平行に向けられた下軸が回動可能に支持されている。
【0019】
[針上下動機構]
針上下動機構30は、ミシン立胴部の上部に設けられたサーボモーターからなるミシンモーター31と、このミシンモーター31の出力軸に接続されて回転を行う上軸と、当該上軸のミシン面部側の端部に固定装備された針棒クランクと、針棒クランクにおいて上軸による回転中心から偏心した位置に一端部が連結されたクランクロッドと、針棒抱きを介してクランクロッドの他端部に連結された針棒とを備えている。
上軸、針棒クランク、クランクロッド、針棒抱き及び針棒は、周知の構成なので図示及び詳細な説明は省略する。
【0020】
針棒は、その下端部に縫い針11を保持すると共に、Z軸方向に沿った往復上下動が可能となるようにミシンアーム部23に支持されている。
ミシンモーター31はサーボモーターであり、ミシンモーターの回転数を検出する回転数検出部としてのエンコーダー32が併設されている。そして、制御装置90がエンコーダー32からミシンモーター31の回転数(回転速度)、上軸角度等の検出を行い、ミシンモーター31に対する動作制御を実施するようになっている。
なお、針棒クランク、クランクロッド、針棒抱き等の構成は、周知のものと同じであるため詳細な説明は省略する。
【0021】
[布押さえ機構]
布押さえ機構85は、針板16において、針落ちが行われる針穴の上に配置された布押さえ87と、布押さえ87を上下動可能に支持する押さえ棒と、押さえ棒を下方に押圧して布押さえ87に下方への押さえ圧を付与する押圧バネと、押さえ棒を介して押さえバネの押さえ圧に抗して布押さえ87を上方に退避させるアクチュエーターとしての押さえ上げモーター86とを備えている。
押さえ上げモーター86は、制御装置90の制御により、布押さえ87による生地Kの押さえ状態と解放状態とを切り替えることができる。
【0022】
[送り機構]
送り機構40は、針板16に形成された開口部から歯先を出没させて生地Kを前方に送る送り歯と、ミシンモーター31を駆動源として回転駆動を行う下軸と、下軸の回転を前後の往復動作に変換して送り歯に伝達する第一の伝達機構と、下軸の回転を上下の往復動作に変換して送り歯に伝達する第二の伝達機構とを備えている。
これら送り歯、下軸、第一の伝達機構及び第二の伝達機構は、周知の構成なので図示及び詳細な説明は省略する。
上記構成により、送り機構40は、送り歯に前後の往復動作と上下の往復動作とを合成して伝達し、前後方向に沿った長円軌跡の周回運動を付与する。これにより、送り歯が長円軌跡の上部区間を通過する際に、その歯先が針板16の開口部から前方に移動しつつ上方に突出して、生地Kを所定の送りピッチで送ることができる。
【0023】
また、第一の伝達機構は、動作伝達を行いつつもその姿勢を変えることで動作伝達量が変動する送り調節体を含んでおり、当該送り調節体には、その姿勢を変動させる送り調節モーター41が接続されている。
この送り調節モーター41が生地Kの縫いピッチを任意に変更する調節用アクチュエーターとして機能する。
【0024】
[糸切り装置]
糸切り装置80は、Z軸回りに回動を行う動メスと、動メスと協働して上糸及び下糸を切断する固定メスと、動メスの回動動作の駆動源となるアクチュエーターとしての糸切りモーター81と、糸切りモーター81から動メスに往復回動を伝達する複数のリンク体とを備えている。
動メスは、前進と後退による往復回動を行い、前進回動時に下糸及び上糸の切断部位を選択的に捕捉し、後退回動時に捕捉した上糸及び下糸を切断する。
【0025】
[ガイド機構]
ガイド機構50は、生地Kの端縁部を突き当てて生地Kを送り方向に案内するガイド51と、ガイド51をY軸方向に沿って往動可能に支持するボールネジ機構52と、ガイド51のY軸方向の往動動作の駆動源となるガイドモーター53と、これらを支持するケーシング54とを備えている。
【0026】
ガイド51は、左端に位置する先端部にX-Z平面に沿った当接面511を備え、生地Kの右側の端縁部を当接させることにより、X軸方向に沿った前後移動をガイドする。ガイド51は、針落ち位置近傍に位置するガイド位置と、最も右側に位置する退避位置とに切り替え可能であり、ガイド位置にある状態で、当接面511が針落ち位置である針穴よりも幾分右側であって、幾分後方となるように配置されている。
ガイド51のガイド位置は、ガイドモーター53の制御により調節可能であり、針穴から当接面511までのY軸方向の距離に応じてコバ幅を任意に設定することが可能である。
【0027】
ボールネジ機構52は、Y軸方向に沿ったボールネジ軸521と、ガイドモーター53のローターと一体化されたボールネジナット522と、ボールネジ軸521に連結されたスライドブロック523とを備えている。
ボールネジ軸521は、その左端部においてガイド51を支持し、右端部はスライドブロック523に連結されている。
スライドブロック523は、ケーシング54に上下に形成されたY軸方向に沿った長穴541によってY軸方向に滑動可能に支持されている。
この構成により、ガイドモーター53が回転駆動を行うことにより、ボールネジ軸521を介してガイド51をY軸方向に沿って搬送し、前述したガイド位置と退避位置とに移動することができる。
【0028】
[終端検出部]
終端検出部としての第一~第三の布端センサー61,62,63は、いずれも光学式であって、針板16上の生地Kの終端部のX軸方向(送り方向)の位置を検出する。
生地Kの終端部とは、生地Kの直線状の端縁部がガイド51によってX軸方向に沿った状態とされ、その状態における端縁部の後端を終端部とする。例えば、生地Kの端縁部の後端に鈍角又は鋭角の角部を有する形状の場合には当該角部が終端部となる。
【0029】
第一~第三の布端センサー61,62,63は、それぞれ、針落ち位置である針穴を通過するX軸方向に沿った通過線上を検出位置とするように配置されており、各々の検出位置は、いずれも針穴よりも送り方向上流側に設定されている。
そして、第一の布端センサー61の検出位置は最も送り方向上流側であり、第二の布端センサー62の検出位置は二番目に上流側であり、第三の布端センサー63の検出位置は最も送り方向下流側であって針穴より上流側となっている。
各布端センサー61,62,63の検出位置の意義については後述する。
【0030】
第一の布端センサー61は、ミシンアーム部23に設けられた支持ブラケット64に支持された反射型光電センサーであり、針板16の上面に装備された反射面に検出光を照射し、反射面からの反射光を受光する。第一の布端センサー61は、生地Kの終端部の通過により反射光の受光量が変化し、これにより検出位置における生地Kの終端部の到達又は通過を検出することができる。
第二及び第三の布端センサー62,63は、透過型光電センサーであり、支持ブラケット64に支持された発光素子と、針板16の検出位置に設けられた受光素子とからなる。第二及び第三の布端センサー62,63は、生地Kの終端部の通過により検出光の受光量が変化し、これにより検出位置における生地Kの終端部の到達又は通過を検出することができる。
【0031】
なお、第一~第三の布端センサー61,62,63は、それぞれ、透過型と反射型のいずれの光電センサーを使用しても良い。
また、第一~第三の布端センサー61,62,63の三つの検出位置611,621,631(図5(A)参照)を一基で全て検出可能なラインセンサーを使用しても良い。
【0032】
[ミシンの制御系]
図2に示すように、制御装置90は、制御用の各種プログラムが記憶、格納されたプログラムメモリ92と、これらの各種プログラムに従って各種演算処理を行うCPU91と、各種処理におけるワークメモリとして使用されるRAM93と、各種の設定データを格納したデータメモリ94とで概略構成されている。
そして、制御装置90には、図示しないシステムバス、インターフェイス又は駆動回路等を介して、針上下動機構30のミシンモーター31、エンコーダー32、送り機構40の送り調節モーター41、糸切り装置80の糸切りモーター81、布押さえ機構85の押さえ上げモーター86、ガイド機構50のガイドモーター53等が接続されている。
【0033】
また、制御装置90には、縫製に関する各種の設定を入力するための設定入力部としての操作パネル95と縫製の実行等の指示入力手段としてのペダル96と、縫製の縫いピッチを設定する図示しないピッチ設定部としての調節ダイヤルに設けられたピッチセンサー97とが接続されている。
【0034】
操作パネル95は、縫製の動作制御に関する各種のパラメータが設定入力される。
図3は針板16上の生地Kの平面図である。前述したように、生地Kはシャツの衿であり、図3ではその一端部のみを図示している。また、図中の符号161は針落ち位置である針穴を示し、符号631は第三の布端センサー63の検出位置を示す。
シャツの衿は、長尺であってその両端部に鋭角の角部が存在するので、長手方向に沿った端縁部K1と角部K2で曲折されて長手方向に対して傾斜した端縁部K3とを有する。なお、図示を省略しているが、角部K2と傾斜した端縁部K3は、長手方向の両端部に存在する。
このような生地Kに対して縫製を行う場合には、コバ幅w、角部K2の角度θ、端縁部K1、K3の長さL1,L3がパラメータとして設定入力される。
また、図中の符号Pは、コバ幅w及び角度θの設定値に応じて決定される角部K2における縫い目の進路変更点である。
【0035】
ペダル96は、縫製の実行を入力する操作部である。このペダル96は、中立位置を中心に前踏みと後踏みとが可能であり、ミシン使用者は、前踏みは踏み込み角度に応じて縫い速度の増減指令を入力することができる。中立位置は縫製の一時的な停止を入力する。
また、後踏みは、二段階で踏み込みが可能であり、ミシン使用者は、一段目の踏み込みにより、布押さえ87の上昇の指令、二段目の踏み込みにより、縫い針上方退避状態での糸切り実行の指令を入力することができる。
【0036】
ピッチセンサー97は、縫いピッチを設定する調節ダイヤルの回転角度を検出する回転式のポテンショメータであり、ミシン使用者が回転操作する調節ダイヤルの回転角度を検出して、ミシン使用者が入力した縫いピッチの設定値を検出することができる。
【0037】
[制御装置による縫製制御]
制御装置90のCPU91は、プログラムメモリ92内に格納された制御プログラムに従って、第一~第四の縫製モードからなる四種類の縫製動作制御を実行する。第一~第四の縫製モードは、操作パネル95からミシンの使用者により選択することができ、CPU91は、選択された縫製モードを実行する。
【0038】
第一の縫製モードでは、CPU91により、ペダル96の操作に拘わらず、生地Kの角部K2における縫い目の進路変更点Pの針落ち位置である針穴161への到達を検出して、自動的に縫製を停止すると共にガイド51をガイドモーター53によりガイド位置から退避位置へ移動させる制御が行われる。
第二の縫製モードでは、CPU91により、ペダル96の操作に従って縫製動作を行い、生地Kの角部K2における縫い目の進路変更点Pの針落ち位置である針穴161への到達を検出すると共にペダル96から停止が入力されると、縫製を停止すると共にガイド51をガイドモーター53によりガイド位置から退避位置へ移動させる制御が行われる。
第三の縫製モードでは、CPU91により、ペダル96の操作に従って縫製動作を行い、生地Kの角部K2における縫い目の進路変更点Pが針落ち位置に到達しても、ガイド51はガイド位置を維持し、ガイドモーター53によるガイド51の退避動作を伴わない制御が行われる。
第四の縫製モードでは、CPU91により、ペダル96の操作に従って縫製動作を行い、第一~第三の布端センサー61,62,63による出力結果に関わらず、常にガイドは退避位置を維持し、ガイドモーター53によるガイド51のガイド位置への移動動作を伴わない制御が行われる。
【0039】
[第一の縫製モード]
上記第一の縫製モードに基づく縫製動作の制御について、図4のフローチャート及び図5(A)~図6(C)の動作説明図に基づいて説明する。ここでは、シャツの衿を縫製する場合には、一方の端部の端縁部K3、長尺の端縁部K1、他方の端部の端縁部K3の順番で縫製が行われるが、各端縁部については第一の縫製モードの縫製の繰り返しなので、長尺の端縁部K1を縫製する場合を例示する。
【0040】
図5(A)は生地Kが載置される前の状態における針板16の上面の針落ち位置である針穴161と第一~第三の布端センサー61,62,63の検出位置611,621,631の配置を示している。針穴161と各検出位置611,621,631はX軸方向に沿って一列に並んで配置されているが、針穴161に対して左右に幾分ずれて配置しても良い。
また、説明を分かりやすくするために、図5(B)~図6(C)において生地Kのサイズに対して、針穴161と各検出位置611,621,631のそれぞれの間隔d1,d2,d3を実際よりも大きく図示している。例えば、生地Kの左右方向の幅と同じ長さの範囲内に針穴161から検出位置631までが概ね収まる程度の間隔で配置されている。なお、針穴161と各検出位置611,621,631のそれぞれの間隔d1,d2,d3の大きさは、データメモリ94内に初期設定値として登録されている。
【0041】
まず、生地Kの端縁部K1の前端部が針落ち位置に配置された状態において、ミシンの使用者によりペダル96の前踏みが行われると、ガイド51がガイドモーター53により左方に進出してガイド位置に位置決めされ(ステップS1)、押さえ上げモーター86により布押さえ87が下降して生地Kが押さえられる(ステップS3)。
さらに、ミシンモーター31が起動して、縫製が開始され(ステップS5)、端縁部K1に沿ってコバ幅wを設定値に維持しつつ縫製が行われる。
縫製開始から後述する制限速度に規制されるまでの間は、ペダル96の前踏みの踏み込み量に応じた縫い速度で縫製が行われる。
【0042】
次いで、CPU91は、第一の布端センサー61の出力を監視して、第一の布端センサー61の検出位置611に生地Kの終端部が到達するまでその検出を繰り返し実行する(ステップS7)。
そして、第一の布端センサー61の検出位置611への生地Kの終端部の到達が検出されると(図5(B))、CPU91は、制限速度を算出すると共に(ステップS9)、縫い速度が制限速度となるように、ミシンモーター31の回転数を制御する(ステップS11)。
【0043】
このミシン10では、第一の布端センサー61よりも下流側の第二の布端センサー62及び第三の布端センサー63の布端検出により、正確な縫いピッチを検出し、これに基づいて目標位置である進路変更点Pに精度良く針落ちを行うよう縫いピッチを調整するピッチ調整制御(後述)が行われる。その場合、第二の布端センサー62及び第三の布端センサー63に対する生地Kの通過速度が速すぎると、布端の検出精度に低下が生じるおそれがある。
通過速度を、説明の簡略化のために、縫いピッチ[mm]にミシンモーター31の回転数(回転速度[spm])を乗じた値と仮定する。そして、例えば、各布端センサー62,63が一定の検出精度を維持することが可能な通過速度の上限がvmaxである場合、制限速度は、通過速度の上限vmaxを超えない範囲で、ミシンモーター31の回転数は極力高い値とすることが作業効率の観点からは望ましい。
従って、通過速度の上限vmaxを記憶している場合には、CPU91は、次式によって、制限速度であるミシンモーター31の回転数を算出する。
(制限速度)=(通過速度の上限vmax)÷(現在設定されている縫いピッチ)
【0044】
制限速度で縫製が行われている状態で、CPU91は、第二の布端センサー62の出力を監視して、第二の布端センサー62の検出位置621に生地Kの終端部が到達するまでその検出を繰り返し実行する(ステップS13)。
そして、第二の布端センサー62の検出位置621への生地Kの終端部の到達が検出されると(図5(C))、CPU91は、これ以降のミシンモーターの回転数の積算を開始する(ステップS15)。
【0045】
次いで、CPU91は、第三の布端センサー63の出力を監視して、第三の布端センサー63の検出位置631に生地Kの終端部が到達するまでその検出を繰り返し実行する(ステップS17)。
そして、第三の布端センサー63の検出位置631への生地Kの終端部の到達が検出されると(図5(D))、CPU91は、これまでの針数のカウント数から、実際の縫いピッチをより正確に算出する(ステップS19)。
即ち、ミシン10は、調節ダイヤルにより設定された縫いピッチとなるように送り調節モーター41の制御が行われているが、実際の縫いピッチは、生地Kの材質や厚さ、重量等に応じて変動を生じるため、設定縫いピッチに対して、多少の誤差が発生する。
ここでは、第二の布端センサー62の検出位置621と第三の布端センサー63の検出位置631の間隔d2は既知であり、データメモリ94内に記録されていることから、検出位置621から検出位置631までの間隔d2をステップS19で取得したミシンモーターの積算回転数で除算することにより、ミシン10が現在行っている縫製の実際の縫いピッチをより正確に算出することができる。
【0046】
また、第三の布端センサー63の検出位置631への生地Kの終端部の到達が検出されると、CPU91は、端縁部K1に沿った残りの縫製長さを算出する。
図3を参照すると分かるように、コバ幅wで生地Kの端縁部K1に沿って縫製を行う場合、隣の端縁部K3に到達するまで縫製を行ってしまうと、次の端縁部K3に沿って縫製を行う場合にコバ幅wを確保することができなくなる。
従って、適切な進路変更点Pで端縁部K1に沿った縫製を停止する必要がある。CPU91は、第三の布端センサー63の検出位置631への生地Kの終端部の到達の検出から進路変更点Pが針穴に到達するまでの距離、即ち、残りの縫製長さを算出する。
【0047】
残りの縫製長さは、次式により算出される。
(残りの縫製長さ)=(第三の布端センサー63から針穴161までの間隔d3)-(補正値L0)
上記補正値L0は、図3に示すように、コバ幅wと角部K2の角度θとによって算出可能である。即ち、L0=w÷sinθ となる。
【0048】
一方、上記形状の生地Kに対して縫製を行う場合、端縁部K1に沿った縫製の最終針は、進路変更点Pに針落ちを行う必要がある。上記計算により算出された残りの縫製長さが、ステップS19で検出された実際の縫いピッチの整数倍である場合には、そのまま縫製を継続すればちょうど進路変更点Pに針落ちを行うことができるので調整は行われないが、整数倍とならない場合には、縫いピッチを調整するピッチ調整制御が行われる(ステップS21)。
【0049】
ピッチ調整制御の例を以下に示す。
(1)残りの縫製長さを整数で分割し、ステップS19で検出された実際の縫いピッチよりも幾分小さい縫い均等な縫いピッチで進路変更点Pまで縫製を行う。
(2)ステップS19で検出した実際の縫いピッチから均一な減少幅又は減少率で縫いピッチを漸減させて、最終針がちょうど進路変更点Pに針落ちを行うように減少幅又は減少率を設定する。
(3)現在の縫いピッチを維持して縫製を継続し、最後の一針だけ現在の縫いピッチよりも小さい縫いピッチに変更して最終針がちょうど進路変更点Pに針落ちを行うように縫製する。
【0050】
なお、(1)~(3)のピッチ調整制御の一部の例に過ぎず、これら以外の方法で最終針がちょうど進路変更点Pに針落ちを行うように調整しても良い。また、上記のように複数の方法で縫いピッチを調整可能である場合には、操作パネル95で予めいずれの方法で縫いピッチを調整するかを選択設定可能としても良い。
【0051】
次いで、CPU91は、進路変更点Pの針穴161への到達の有無を判定する(ステップS23)。進路変更点Pの針穴161への到達の有無は、ピッチ調整制御で定めた針数の針落ち回数に達したか否かによって判定する。
CPU91は、進路変更点Pが針穴161に到達するまでその判定を繰り返し実行する。
そして、進路変更点Pの針穴161への到達が検出されると(図6(A))、CPU91は、ペダル96の操作状態の有無に拘らず、ミシンモーター31を縫い針が下降した状態で停止させ(ステップS25)、押さえ上げモーター86により布押さえ87を退避位置に上昇させて生地Kを解放すると共に(ステップS27)、ガイドモーター53によりガイド51を退避位置へ退避移動させる(ステップS29)。
これにより、端縁部K1に対する縫製が完了する。
【0052】
その後、ミシンの使用者は、端縁部K3の縫製作業に移行する。即ち、縫い針11が進路変更点Pに針落ちしたままの状態で停止しているので、端縁部K3がX軸方向に平行になるように縫い針11を支点として生地Kを回動させる(図6(B))。
そして、ミシンの使用者によりペダル96の前踏みが行われると、ガイド51がガイド位置に移動し、布押さえ87が下降して生地Kを押さえ、ミシンモーター31が起動して、縫製が再開される。
なお、端縁部K3の次に縫製が行われる端縁部が存在する場合には、端縁部K3については、前述したステップS1~S29まで同じ動作制御が行われるが、端縁部K3で生地Kの縫製が終了の場合には、ペダル96の操作に従って縫製が行われる(図6(C)参照)。
【0053】
[第二の縫製モード]
第二の縫製モードに基づく縫製動作の制御について、図7のフローチャートに基づいて説明する。また、第一の縫製モードと共通する動作については前述した図5(D)~図6(C)の図面を参照する。
【0054】
まず、生地Kの端縁部K1の前端部が針落ち位置に配置された状態において、ミシンの使用者によりペダル96の前踏みが行われると、ガイド51がガイドモーター53により左方に進出してガイド位置に位置決めされ(ステップT1)、押さえ上げモーター86により布押さえ87が下降して生地Kが押さえられる(ステップT3)。
さらに、ミシンモーター31が起動して、縫製が開始され(ステップT5)、端縁部K1に沿ってコバ幅wを設定値に維持しつつ縫製が行われる。
これ以降、ペダル96の前踏みの踏み込み量に応じた縫い速度で縫製が行われる。
【0055】
次いで、CPU91は、第三の布端センサー63の出力を監視して、第三の布端センサー63の検出位置631に生地Kの終端部が到達するまでその検出を繰り返し実行する(ステップT7)。
そして、第三の布端センサー63の検出位置631への生地Kの終端部の到達が検出されると(図5(D)参照)、CPU91は、ペダル96からの後一段踏み込み(布押さえ上昇指令入力)の操作の有無を判定する(ステップT9)。
【0056】
CPU91は、ペダル96からの後一段踏み込みが行われるまで当該判定を繰り返し実行し、ペダル96からの後一段踏み込みが検出されると、ミシンモーター31を縫い針が下降した状態で停止させ(ステップT11)、押さえ上げモーター86により布押さえ87を退避位置に上昇させて生地Kを解放すると共に(ステップT13)、ガイドモーター53によりガイド51を退避位置へ移動させる(ステップT15:(図6(A)参照))。
これにより、端縁部K1に対する縫製が完了する。
【0057】
その後、ミシンの使用者は、端縁部K3の縫製作業に移行する。即ち、縫い針11がミシンの使用者の操作によって進路変更点Pに針落ちした状態で停止しているので、端縁部K3がX軸方向に平行になるように縫い針11を支点として生地Kを回動させる(図6(B)参照)。
そして、ミシンの使用者によりペダル96の前踏みが行われると、これ以降は、前述したステップT1~T15と同じ制御が行われる。
【0058】
[第三の縫製モード]
第三の縫製モードに基づく縫製動作の制御について図8(A)~図8(C)に基づいて説明する。
このモードでは、生地Kの端縁部K1の前端部が針落ち位置に配置された状態において、ミシンの使用者によりペダル96の前踏みが行われると、ガイド51がガイドモーター53により左方に進出してガイド位置に位置決めされ、押さえ上げモーター86により布押さえ87が下降して生地Kが押さえられ、ミシンモーター31が起動して、縫製が開始される。
そして、ペダル96の前踏みの踏み込み量に応じた縫い速度で縫製が行われる。
【0059】
そして、CPU91は、ペダル96からの後一段踏み込み(布押さえ上昇指令入力)の操作の有無を監視し、ペダル96からの後一段踏み込みが検出されると、ミシンモーター31を縫い針が下降した状態で停止させ、押さえ上げモーター86により布押さえ87を退避位置に上昇させて生地Kを解放する。このとき、ガイドモーター53によりガイド51の退避動作は行われない(図8(A))。
これにより、端縁部K1に対する縫製が完了する。
【0060】
その後、ミシンの使用者は、端縁部K3の縫製作業に移行する。即ち、縫い針11がミシンの使用者の操作によって進路変更点Pに針落ちした状態で停止しているので、端縁部K3がX軸方向に平行になるように縫い針11を支点として生地Kを回動させる(図8(B))。
そして、ミシンの使用者によりペダル96の前踏みが行われると、これ以降は、端縁部K1と同じ制御が行われる(図8(C))。
【0061】
[第四の縫製モード]
このモードでは、第一~第三の布端センサー61,62,63による検出結果に関わらず、ガイド51は退避位置を維持し、ガイドモーター53によりガイド位置への移動動作は行われない。そして、ミシンの使用者によりペダル96の前踏みが行われると、ペダル96の前踏みの踏み込み量に応じた縫い速度で縫製が行われる。
ガイド51を退避位置へ維持することで針落ち161付近のスペースを確保することができ、コパ縫い以外の、通常の縫製を行うことが可能となる。
【0062】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記ミシン10の制御装置90は、ペダル96の操作に拘わらず、生地Kの角部における縫い目の進路変更点Pの針穴161への到達を検出して、自動的に縫製を停止すると共にガイド51をガイドモーター53により退避させる第一の縫製モードと、ペダル96の操作に従って縫製動作を行い、ペダル96からの布押さえ87の解放(後一段踏み込み)が入力され、生地Kの角部における縫い目の進路変更点Pの針穴161への到達又は規定の距離内への接近を検出した場合に、縫製を停止すると共にガイド51をガイドモーター53により退避させる第二の縫製モードと、を含む複数の縫製モードを選択して実行する。
従って、第一の縫製モードと第二の縫製モードのいずれを選択して縫製する場合でも、進路変更点Pにおいて、生地Kを回して縫製進路を変更する際に、生地Kとガイド51との干渉を回避することができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
例えば、第一の縫製モードにおいて、各布端センサー61,62,63の検出精度を確保するために縫製速度の低下が生じるような場合に、効率を優先して、第二の縫製モードで縫製を行う場合であっても、生地Kとガイド51との干渉を回避することができるので、作業効率を高く維持しつつも高い作業性を得ることが可能となる。
【0063】
また、制御装置90は、ペダル96の操作に従って縫製動作を行い、ガイドモーター53によるガイド51の退避動作を伴わない第三の縫製モードも含む複数の縫製モードを選択して実行するので、生地Kの形状によってはガイド51と干渉を生じないような場合に、不要なガイド退避動作を解消して効率的な動作制御が可能となる。
【0064】
また、ミシン10は、生地Kの縫いピッチを設定する調節ダイヤルを備え、送り機構40は、生地Kの縫いピッチを変更する送り調節モーター41を有し、制御装置90は、第一の縫製モードにおいて、送り調節モーター41を制御して、生地Kの角部における縫い目の進路変更点Pが針落ち位置に到達する前に、生地Kの角部における縫い目の進路変更点Pで針落ちが行われるように縫いピッチを調整するピッチ調整制御を行う。
従って、ミシンの使用者の技量に拘わらずに正確に縫い目の進路変更点Pに針落ちを行うことができ、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0065】
また、制御装置90は、ピッチ調整制御の前に、エンコーダー32によるミシンモーター31の検出による積算回転数と第二及び第三の布端センサー62,63による生地Kの終端部の検出位置の変化とに基づいて、実際の生地Kの縫いピッチを検出するピッチ検出処理(図4のステップS13~S19の処理)を行っている。
このため、縫いピッチ調節の前提となる調整前の縫いピッチをより正確に検出することができ、ピッチ調整制御を効果的に行うことができるので、より正確に縫い目の進路変更点Pに針落ちを行うことが可能となる。
【0066】
また、制御装置90は、ピッチ検出処理を行うためのエンコーダー32によるミシンモーター31の回転数の検出と第二及び第三の布端センサー62,63による生地Kの終端部の位置検出とを実行する際に、ミシンモーター31を制御して、縫製速度を制限している。
このため、第二及び第三の布端センサー62,63による生地Kの終端部をより正確に検出することができ、縫いピッチの検出精度を高めることができ、より正確に縫い目の進路変更点Pに針落ちを行うことが可能となる。
【0067】
また、制御装置90は、ピッチ検出処理を行うためのエンコーダー32によるミシンモーター31の回転数の検出と第二及び第三の布端センサー62,63による生地Kの終端部の位置検出とを実行する際の縫製速度の制限速度を、調節ダイヤルで設定された縫いピッチの大きさに応じて決定するので、設定縫いピッチに応じた制限速度で縫製速度の制限をかけることができ、過剰な速度制限による作業時間の遅延を回避し、作業効率を高く維持しつつ高い精度で縫い目の進路変更点Pに針落ちを行うことが可能となる。
【0068】
[その他]
上述した実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、被縫製物は、シャツの衿に限られず、また、被縫製物の形状も矩形や多角形等の多用に形状に対応可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 ミシン
11 縫い針
16 針板
161 針穴(針落ち位置)
30 針上下動機構
31 ミシンモーター
32 エンコーダー(回転数検出部)
40 送り機構
41 送り調節モーター(調節用アクチュエーター)
50 ガイド機構
51 ガイド
511 当接面
53 ガイドモーター(ガイド用アクチュエーター)
61 第一の布端センサー(終端検出部)
62 第二の布端センサー(終端検出部)
63 第三の布端センサー(終端検出部)
611,621,631 検出位置
85 布押さえ機構
86 押さえ上げモーター(アクチュエーター)
87 布押さえ
90 制御装置
91 CPU
95 操作パネル
96 ペダル(操作部)
97 ピッチセンサー
K 生地(被縫製物)
K1、K3 端縁部
K2 角部
P 進路変更点
w コバ幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8