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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】コイルパイプの接合構造
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/008 20060101AFI20221122BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20221122BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61B1/008 511
A61B1/00 717
G02B23/24 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019044027
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020146124
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晴崇
【審査官】佐藤 秀樹
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲自在な湾曲部と、該湾曲部の基端側に接続された環状部材とによって構成される湾曲管において前記環状部材に、前記湾曲部を操作する操作ワイヤを案内する可撓性のコイルパイプを溶接してなるコイルパイプの接合構造であって、
前記環状部材の一部、および前記コイルパイプを構成する線材の一部が溶融固化してなり、前記環状部材と前記コイルパイプとを接合する溶接部と、
前記溶接部の周囲に形成される熱影響残存領域と、
前記コイルパイプの融点よりも低い融点の材料を前記コイルパイプに被着し、該被着した前記材料を硬化してなり、前記溶接部から前記コイルパイプの長手方向に離れる向きの少なくとも前記コイルパイプが湾曲する側に、前記溶接部の一部を含み、前記熱影響残存領域を経て前記溶接部よりも遠い位置まで延びる硬化部と、
を備えるコイルパイプの接合構造。
【請求項2】
前記硬化部は、前記コイルパイプの条間を固定する
請求項1に記載のコイルパイプの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルパイプの端末がリング部材に固定されているコイルパイプの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡の先端部や、マニピュレータの先端部には、湾曲することによって各々の先端の向きを変更可能な湾曲部が設けられている。図10は、従来の内視鏡の構成例を示す模式図である。同図に示す内視鏡100は、細長形状をなす挿入部110と、挿入部110の基端側に接続され、各種の操作信号の入力を受け付ける操作部120と、を備える。挿入部110は、光を受光して光電変換を行うことにより画像信号を生成する撮像部を内蔵した先端部111と、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部112と、湾曲部112の基端側に接続されるリング部材113と、リング部材113の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の可撓管部114と、を有する。
【0003】
挿入部110の湾曲部112と操作部120との間には、湾曲部112と操作部120とを接続し、湾曲部112を操作する操作ワイヤが設けられている。この操作ワイヤは、リング部材113の内周側に固定されたコイルパイプを介して操作部120から湾曲部112へ案内されている(例えば、特許文献1を参照)。図11は、従来の内視鏡のリング部材の内周側の構成例を説明する部分断面図である。コイルパイプ130は、線材を巻回してなり、操作ワイヤ(図示せず)が挿通される。コイルパイプ130の一部は、複数箇所溶接されてリング部材113の内周側に固定される。図11に示す例では、三つの溶接部(溶接部140~142)が形成され、該溶接部140~142がコイルパイプ130をリング部材113に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3793416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、溶接部を形成すると、溶接時に発生する熱によって、溶接部近傍のコイルパイプ130も高温状態となる。コイルパイプ130が高温状態になると、線材がなまされたり、脆くなったりすることがある。例えば、図11では、溶接部140の周囲に熱影響残存領域140aが形成される。同様に、溶接部141の周囲には熱影響残存領域141aが形成され、溶接部142の周囲には熱影響残存領域142aが形成される。
【0006】
また、内視鏡では、操作部120の操作によって湾曲部112が湾曲した際、コイルパイプ130も湾曲部112の湾曲態様に応じて湾曲する。コイルパイプ130が湾曲した際、例えば、コイルパイプ130の基端側(図11の右側)が湾曲すると、溶接部142の端部131に、湾曲にかかる応力が集中する。端部131は、熱影響残存領域142aに位置しており、湾曲に対する強度が低下しているおそれがある。この端部131に応力が繰り返し加わると、溶接部142が破壊されたり、コイルパイプ130が破断したりする場合があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、湾曲動作に対する高い耐久性を有するコイルパイプの接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコイルパイプの接合構造は、湾曲管を構成する環状部材に、可撓性のコイルパイプを溶接してなるコイルパイプの接合構造であって、前記環状部材の一部、および前記コイルパイプを構成する線材の一部が溶融固化してなり、前記環状部材と前記コイルパイプとを接合する溶接部と、前記溶接部の周囲に形成される熱影響残存領域と、前記コイルパイプの融点よりも低い融点の材料を前記コイルパイプに被着し、該被着した前記材料を硬化してなり、前記溶接部から前記コイルパイプの長手方向に離れる向きの少なくとも一方に、前記溶接部の一部を含み、前記熱影響残存領域を経て前記溶接部よりも遠い位置まで延びる硬化部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るコイルパイプの接合構造は、上記発明において、前記硬化部は、前記コイルパイプの条間を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湾曲動作に対する高い耐久性を有するコイルパイプの接合構造を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る内視鏡の構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図である。
図3図3は、図2の一部を拡大した図である。
図4図4は、図1に示すA-A線断面図である。
図5図5は、接合前のコイルパイプを示す図である。
図6図6は、コイルパイプが湾曲した状態を示す図である。
図7図7は、本発明の実施の形態の変形例1に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態の変形例1に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図である。
図9図9は、本発明の実施の形態の変形例2に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図である。
図10図10は、従来の内視鏡の構成例を示す模式図である。
図11図11は、従来の内視鏡のリング部材の内周側の構成例を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は模式的なものであり、各部の寸法の関係や比率は、現実と異なる。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0013】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る内視鏡の構成を示す模式図である。同図に示す内視鏡1は、細長形状をなし、被検体内に挿入される挿入部2と、挿入部2の基端側に接続され、各種の操作信号の入力を受け付ける操作部3と、を備える。操作部3には、該操作部3から挿入部2が延びる方向と異なる方向に延び、処理装置に接続する各種ケーブルを内蔵するユニバーサルコードが設けられる。内視鏡1が取得した画像信号は、ユニバーサルコードを介して処理装置に送信され、処理装置において表示用の画像が生成される。
【0014】
挿入部2は、光を受光して光電変換を行うことにより画像信号を生成する撮像部を内蔵した先端部21と、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部22と、板状部材が環状をなして湾曲部22の基端側に接続されるリング部材23と、リング部材23の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の可撓管部24と、を有する。本実施の形態では、湾曲部22とリング部材23とによって湾曲管を構成する。
【0015】
操作部3には、例えば、湾曲部22を上下方向および左右方向に湾曲させる湾曲ノブ、被検体内に生検鉗子、電気メスおよび検査プローブ等の処置具を挿入する処置具挿入部、送気手段、送水手段、ならびに画面表示制御等の周辺機器の操作指示信号を入力する操作入力部である複数のスイッチが設けられている。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図であって、リング部材23を含む内視鏡1の一部の構成を示す断面図である。図3は、図2の一部を拡大した図である。図4は、図1に示すA-A線断面図である。なお、図3は、説明のため、操作ワイヤが挿通されていない構成を示している。
【0017】
挿入部2には、操作部3と湾曲部22とを接続し、湾曲部22を操作する操作ワイヤ27が挿通されている。挿入部2では、ワイヤガイド25およびコイルパイプ26によって操作ワイヤ27が案内されている。本実施の形態において、リング部材23の中心軸NRと、コイルパイプ26の中心軸NCとは、平行である。ワイヤガイド25およびコイルパイプ26は、リング部材23の周方向においてそれぞれ四つずつ設けられる(図4参照)。本明細書において、周方向とは、中心軸のまわりを周回する方向をさす。
【0018】
ワイヤガイド25は、湾曲部22の基端側に設けられ、操作ワイヤ27を挿通可能な筒状をなしている。
【0019】
コイルパイプ26は、線材を巻回してなる。コイルパイプ26には、操作ワイヤ27が挿通されている。また、コイルパイプ26は、先端部21側の端部が、リング部材23の内周側で固定されている。具体的には、コイルパイプ26の端部には、線材の端部が溶接により溶融固化してなる溶接部28が形成されている。具体的に、溶接部28は、コイルパイプ26を構成する線材の一部と、リング部材23の一部が溶融してなる。溶接部28は、例えばレーザ光によるスポット溶接によって形成される。
【0020】
溶接部28の形成時(溶接時)に発生する熱によって、溶接部28の周囲のコイルパイプ26も高温状態となる。コイルパイプ26が高温状態になると、線材がなまされたり、脆くなったりする熱影響残存領域29が形成される。
【0021】
コイルパイプ26には、先端部21側の端部における線材の外表面を被覆する硬化部30が設けられている。硬化部30は、スズを主成分とする半田や、銀ロウ、銅ロウ、リン銅ロウ等のロウをコイルパイプ26に被着してなる。硬化部30は、コイルパイプ26の線材の隙間(条間)を経て内周側も被覆している。本実施の形態において、硬化部30は、溶接部28の形成部分を除き、配設位置におけるコイルパイプ26の表面を覆っている。硬化部30によって、コイルパイプ26の条間が固定される。
【0022】
硬化部30は、中心軸NC方向において、溶接部28から熱影響残存領域29を経て遠い位置まで延びる。具体的に、硬化部30は、図3では、熱影響残存領域29の端部P11から中心軸NC方向の可撓管部24側に、長さL1離れた位置P12まで延びている。熱影響残存領域29の端部P11は、溶接部28との境界をなす位置P13とは反対側の、中心軸NC方向における熱影響残存領域29の端部である。
【0023】
操作ワイヤ27は、線状をなしている。操作ワイヤ27は、ワイヤガイド25およびコイルパイプ26を挿通するとともに、一端が湾曲部22の先端側の湾曲駒に固定され、他端が操作部3に固定されている。操作ワイヤ27は、複数の素線を束ねてなる撚り線や、一つの素線を用いて構成される。ユーザが操作部3(例えば上述した湾曲ノブ)を操作すると、操作ワイヤ27が進退動作し、この進退動作に連動して湾曲部22が湾曲する(図1の破線参照)。
【0024】
次に、上述したコイルパイプ26のリング部材23への接合方法について説明する。図5は、接合前のコイルパイプを示す図である。コイルパイプ26の一端には、硬化部30が設けられる。硬化部30には、コイルパイプ26の溶接部28形成領域R28を露出する孔部30aが形成される。
【0025】
具体的に、コイルパイプ26の一端を、上述した半田やロウなどの硬化部形成材料を加熱溶融した液状体中に、予め定めた深さまで浸す。硬化部形成材料は、例えば、レーザ、電子ビーム、抵抗炉、ガス、放電を用いて液体化される。その後、液状体からコイルパイプ26を抜き出して冷却することによって、硬化部形成材料が固化する。その後、硬化部形成材料を洗浄して、フラックス等の硬化部30形成に用いた補助剤を除去する。洗浄後、ヤスリによって研磨したり、砥石によって研削したりして、孔部30aの形成位置に応じた領域の硬化部形成材料を除去する。以上説明した処理によって、孔部30aを有する硬化部30が形成される(図5参照)。
【0026】
なお、マスクを用いて孔部30aを形成してもよい。この場合、コイルパイプ26の一端を、硬化部形成材料を加熱溶融した液状体中に浸す際に、コイルパイプ26に、上述した孔部30aの形状に応じたマスクを取り付ける。その後、液状体からコイルパイプ26を抜き出して冷却することによって、硬化部形成材料が固化する。その後、硬化部形成材料を洗浄して、フラックス等の硬化部30の形成に用いた補助剤を除去する。洗浄後、マスクを取り外すことによって、孔部30aを有する硬化部30が形成される。
【0027】
硬化部30が形成されたコイルパイプ26を、リング部材23の内部に挿入する。この際、コイルパイプ26は、使用する操作ワイヤ2の数だけ設けられる。例えば、挿入部2に挿通される操作ワイヤ27が四本の場合は、コイルパイプ26も四本設けられる。コイルパイプ26をリング部材23の内部に挿入後、硬化部30の孔部30aを溶接位置に配置する。その後、リング部材23に対してコイルパイプ26を位置決めする。コイルパイプ26の位置決めには、治具(図示せず)等を用いる。
【0028】
コイルパイプ26をリング部材23に対して位置決めした後、レーザ光を照射して、コイルパイプ26をリング部材23に固定する。この際、レーザ光は、リング部材23のコイルパイプ26が配設されている側と反対側、すなわちリング部材23の外表面に照射される。レーザ光を照射すると、リング部材23の一部と、コイルパイプ26の一部とが溶融する。レーザ光の照射を停止して溶融部分が冷めると、溶融したリング部材23の一部、およびコイルパイプ26の一部は、溶けて広がった後に固化する。これにより、上述した溶接部28が形成され、リング部材23とコイルパイプ26とが接合される(図2、3参照)。この際、溶接部28の周囲には、熱影響残存領域29が形成される。
【0029】
ここで、レーザ光は、発振周期をナノ秒から数秒単位で制御可能であり、一回のレーザ照射により溶接部28を形成してもよいし、複数回照射することによって溶接部28を形成してもよい。複数回レーザ光を照射する場合は、レーザ光の照射位置を、コイルパイプ26の中心軸NC方向に沿って移動させながらレーザ光を照射してもよい。また、レーザ光は、溶接位置および溶接領域を制御するという観点で、ファイバレーザなど、照射領域を制御可能な装置を用いて生成されることが好ましい。
【0030】
上述した硬化部30の配設によって、コイルパイプ26の湾曲に対する耐久性が、硬化部30が配設されていない構成に対して高くなる。図6は、コイルパイプが湾曲した状態を示す図である。図6に示す領域R29は、熱影響残存領域の位置を示している。コイルパイプ26が湾曲した際、湾曲によってかかる応力は、硬化部30の端部30bに集中する。この端部30bは、熱影響残存領域29の端部(図3に示す位置P11)から中心軸NC方向に長さL1離間している。このため、応力が溶接部28に集中することが抑制される。硬化部30を設けることによって、従来の問題となっていた、端部131(図10参照)への応力集中によって溶接部142が破壊されたり、コイルパイプ130が破断したりするという現象を防ぐことができる。特に、熱影響領域29への応力集中を防げるため、湾曲動作に対する耐久性を高くできる。
【0031】
また、本実施の形態では、硬化部30に孔部30aを形成することによって、溶接部28形成時に、硬化部30の成分が溶接部28に混入することが抑制される。溶接部28の成分中に半田やロウ等の異材が含まれると、溶接部28の割れ等によって強度が低下する場合があるが、硬化部30の成分の混入を抑制することで、溶接部28の強度を確保することができる。
【0032】
なお、上述した実施の形態では、リング部材23において中心軸NR方向の一部の領域に溶接部28を形成する例を説明したが、リング部材23において中心軸NR方向の全体に溶接部を形成してもよいし、リング部材23よりも狭い領域に溶接部28を形成してもよい。
【0033】
(実施の形態の変形例1)
図7は、本発明の実施の形態の変形例1に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図である。図8は、本発明の実施の形態の変形例1に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図である。図8は、上述した図1のA-A線断面に対応する。本変形例1では、上述した実施の形態の構成において、硬化部30に代えて硬化部31を備える。硬化部31以外の構成は、実施の形態と同じである。以下、上述した実施の形態とは異なる硬化部31について説明する。
【0034】
硬化部31は、コイルパイプ26の周方向の一部を覆う。具体的に、硬化部31は、コイルパイプ26のリング部材23に接する部分を含む領域以外の一部を覆っている。硬化部31の中心軸NC方向の長さは、上述した硬化部30と同じである。
【0035】
以上説明した本変形例1では、硬化部31がコイルパイプ26の周方向の一部を覆うことによってコイルパイプ26の湾曲動作を規制する。硬化部31においても、硬化部31の端部が、溶接部28や熱影響残存領域29から離間しているため、応力が溶接部28に集中することが抑制され、挿入部2としての耐久性を確保することができる。
【0036】
上述した実施の形態や変形例1では、硬化部30が、コイルパイプ26の中心軸NC方向において、溶接部28(熱影響残存領域29)の両端からそれぞれ延びている例を説明したが、これに限らない。例えば、コイルパイプ26が湾曲する側(可撓管部24側)のみに硬化部を設けてもよい。また、硬化部の中心軸NC方向の長さは、溶接部28の一部を含んで、熱影響残存領域29を経て溶接部28から遠い位置まで延びていれば上述した効果を得ることができる。
【0037】
(実施の形態の変形例2)
図9は、本発明の実施の形態の変形例2に係る内視鏡の要部の構成を示す断面図である。本変形例2では、上述した実施の形態の構成において、硬化部30に代えて硬化部32を備える。硬化部32以外の構成は、実施の形態と同じである。以下、上述した実施の形態とは異なる硬化部32について説明する。
【0038】
硬化部32は、コイルパイプ26の周方向の一部を覆う。具体的に、硬化部32は、コイルパイプ26において、溶接部28の中心軸NC方向の一方の端部を含み、溶接部28から熱影響残存領域29を経て、溶接部28よりも遠い位置まで延びている。具体的に、硬化部32は、熱影響残存領域29の端部P11から中心軸NC方向の可撓管部24側に、長さL3離れた位置P14まで延びている。
【0039】
以上説明した本変形例2では、硬化部32がコイルパイプ26の一部、かつ中心軸NC方向において溶接部28の一部を覆う。硬化部32においても、硬化部32の端部が、溶接部28や熱影響残存領域29から離間しているため、応力が溶接部28に集中することが抑制され、挿入部2としての耐久性を確保することができる。
【0040】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態では、内視鏡の構成を例に説明したが、マニピュレータ等、湾曲部を有する装置であれば適用可能である。マニピュレータの場合、先端部には、鉗子等の処置具を着脱自在に取り付ける取付部として、穴部や係合部等が設けられる。
【0041】
なお、上述した実施の形態および変形例では、レーザ光によるレーザ溶接を行うものとして説明したが、接合方法はこれに限らない。例えば、アーク溶接やスポット溶接、電子ビーム溶接等の公知の溶接技術を用いることも可能である。
【0042】
また、上述した実施の形態および変形例のほか、コイルパイプ26に対して部分的に材料を硬化させて硬化部を形成してもよい。例えば、条間に複数箇所、材料を添加して硬化部を形成してもよいし、条間に倣って螺旋状に材料を塗布して硬化部を形成してもよい。
【0043】
また、上述した実施の形態および変形例において、コイルパイプ26は、密着して巻回されるものでもよいし、予め設定されたピッチで離間して巻回される(粗巻き)ものであってもよい。この際、密着巻きの場合は隣接する線材同士が形成する溝部が条間となり、粗巻きの場合は中心軸NC方向で隣り合う線材間の隙間が条間となる。硬化部30は、この条間を埋めて固定する。
【0044】
このように、本発明は、特許請求の範囲に記載した技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な実施の形態を含みうるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 内視鏡
2 挿入部
3 操作部
21 先端部
22 湾曲部
23 リング部材
24 可撓管部
25 ワイヤガイド
26 コイルパイプ
27 操作ワイヤ
28 溶接部
29 熱影響残存領域
30、31、32 硬化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11