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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H02J3/38 110
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019060648
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162342
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 喜代実
(72)【発明者】
【氏名】伴野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 治良
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】山下 聡史
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179787(JP,A)
【文献】特開2015-173592(JP,A)
【文献】特開2002-286785(JP,A)
【文献】特開2010-283936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相3線式の電力系統が接続された主幹ブレーカと、該主幹ブレーカのU相,V相およびN相の二次側端子のうちいずれか2つに接続された複数の分岐ブレーカと、を備える受電設備における前記分岐ブレーカの二次側の電気経路に連系される分散型電源システムであって、
分散型電源と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち一方の相の二次側端子と前記N相の二次側端子とに接続された特定の分岐ブレーカである特定分岐ブレーカの二次側の電気経路に出力端子が接続され、前記分散型電源からの電力を変換して出力する電力変換装置と、
該電力変換装置の出力線間に接続された補機と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されている前記一方の相に流れる電流を検出する第1電流センサと、前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されていない他方の相に流れる電流を検出する第2電流センサと、前記特定分岐ブレーカに流れる電流を検出する第3電流センサのいずれかとして機能するように取り付けられる3つの電流センサと、
前記電力変換装置の出力線間に取り付けられる電圧センサと、
前記電力変換装置と前記補機とを駆動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記補機を駆動制御した状態で前記3つの電流センサのうち2つの電流センサに前記補機の電力消費に応じた電流変動が検出された場合、前記2つの電流センサによりそれぞれ検出された電流値の偏差が所定値以上のときには前記電流値が大きい方の電流センサが前記第1電流センサであると判定すると共に前記電流値が小さい方の電流センサが前記第3電流センサであると判定し、前記第1電流センサまたは前記第2電流センサにより検出された電流が前記電圧センサにより検出された電圧と逆位相であるときには更に該当する電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させ、前記3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定し、前記第2電流センサにより電流が検出され且つ該検出された電流が前記電圧センサにより検出された電圧と同位相であるときには更に前記第2電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させ、前記第1電流センサと前記第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流との和の電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記第3電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう
分散型電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分散型電源システムであって、
前記制御装置は、前記残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定した際に前記第2電流センサにより電流が検出されなかったときには、前記第2電流センサにより電流が検出されるまでの間、前記第1電流センサにより検出される電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記第3電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が前記上限電流を超えないように給電制御を行なう
分散型電源システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分散型電源システムであって、
前記制御装置は、前記補機を駆動制御した状態で前記3つの電流センサのうち2つの電流センサに前記補機の電力消費に応じた電流変動が検出された場合、前記2つの電流センサによりそれぞれ検出された電流値の偏差が前記所定値未満のときには、前記3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定し、前記第2電流センサにより電流が検出され且つ該検出された電流が前記電圧センサにより検出された電圧と同位相であるときには更に前記第2電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させ、前記2つの電流センサのうち一方の電流センサと前記第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流の和が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記2つの電流センサのうち他方の電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が前記上限電流を超えないように給電制御を行なう
分散型電源システム。
【請求項4】
請求項3に記載の分散型電源システムであって、
前記制御装置は、前記残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定した際に前記第2電流センサにより電流が検出されなかったときには、前記第2電流センサにより電流が検出されるまでの間、前記2つの電流センサのうち一方の電流センサにより検出される電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記2つの電流センサのうち他方の電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が前記上限電流を超えないように給電制御を行なう、
分散型電源システム。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の分散型電源システムであって、
前記制御装置は、前記補機を駆動制御した状態で前記3つの電流センサのうち2つの電流センサに前記補機の電力消費に応じた電流変動が生じなかった場合には、エラーを出力する、
分散型電源システム。
【請求項6】
単相3線式の電力系統が接続された主幹ブレーカと、該主幹ブレーカのU相,V相およびN相の二次側端子のうちいずれか2つに接続された複数の分岐ブレーカと、を備える受電設備における前記分岐ブレーカの二次側の電気経路に連系される分散型電源システムであって、
分散型電源と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち一方の相の二次側端子と前記N相の二次側端子とに接続された特定の分岐ブレーカである特定分岐ブレーカの二次側の電気経路に出力端子が接続され、前記分散型電源からの電力を変換して出力する電力変換装置と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されている前記一方の相に流れる電流を検出する第1電流センサと、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されていない他方の相に流れる電流を検出する第2電流センサと、
前記特定分岐ブレーカに流れる電流を検出する第3電流センサと、
前記第1電流センサと前記第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流との和の電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記第3電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう制御装置と、
を備える分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電設備における分岐ブレーカの二次側の電気経路に連系される分散型電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の分散型電源システムとしては、単相3線式の電力系統の3つの電線であるU相(電圧線),V相(電圧線)およびN相(中性線)に連系するインバータ回路を備えるものにおいて、連系点よりも電力系統側に取り付けられる2つの電流センサの取付状態を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムは、U相-N相間の電圧とV相-N相間の電圧を検出する電圧検出器や、ヒータなどの内部電力負荷、内部電力負荷の電力系統への接続をU相-N相間とV相-N相間とに切り替える接続機構(スイッチ)などを備える。そして、接続機構により内部電力負荷をU相-N相間またはV相-N相間に接続したときに2つの電流センサによりそれぞれ検出される電流の変化量に基づいて、2つの電流センサの取付位置と取付方向とを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5134145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分散型電源システムを単相3線式の電力系統の3つの電線(U相,V相およびN相)に連系する場合、潮流監視のための電圧線であるU相,V相にそれぞれ電流センサを連系点よりも電力系統側に取り付けると共に、単相3線を分散型電源システムに引き込み、システム内でU相-N相間の電圧とV相-N相間の電圧とをそれぞれ検出し、検出した電流および電圧から電力を演算して潮流方向を判断していた。このため、分散型電源システムが屋外設置の場合、システムに単相3線を引き込むために設置宅の壁に穴を空けて専用配線を貫通させる等の工事が必要となり、施工費が高くなるという問題があった。そこで、屋外コンセントを利用し、単相3線のうち2つの電圧線(U相,V相)のいずれかと中性線(N相)とに分散型電源システムを連系する方式が提案されている。この方式では、分散型電源システムが連系していない電圧線を引き込んでいないため、引き込んでいない電圧線に内部負荷を接続することができない。このため、単相3線のうち2つの電圧線のいずれかと中性線とに分散型電源システムを連系する方式では、特許文献1記載の手法によって、電流センサの取付位置や取付方向を判定することができない。また、この方式では、分散型電源システムが連系している電線がU相-N相間か、V相-N相間かを認識できないだけでなく、連系している電線(2つの電圧線のいずれかと中性線)が分散型電源システム(インバータの両出力端子)に対して正接続か逆接続かも判断できないため、こうした状況でも、電流センサの取付位置や取付方向を適切に判定できるようにする必要がある。
【0005】
また、単相3線式の電力系統が接続された主幹ブレーカと、主幹ブレーカのU相,V相およびN相の二次側端子のうちいずれか2つに接続された複数の分岐ブレーカと、を備える受電設備において、複数の分岐ブレーカのうち特定の1つの分岐ブレーカ(特定分岐ブレーカ)の二次側の電線に分散型電源システムを連系する場合、特定分岐ブレーカの二次側の電線には、特定分岐ブレーカを流れる電流に分散型電源システムから出力される電流が加算された電流が流れるため、特定分岐ブレーカに定められる上限電流を超える電流が流れてしまう場合がある。
【0006】
本発明の分散型電源システムは、単相3線式の電力系統が接続された主幹ブレーカと、主幹ブレーカのU相,V相およびN相の二次側端子のうちいずれか2つに接続された複数の分岐ブレーカと、を備える受電設備の特定分岐ブレーカの二次側の電気経路に分散型電源システムを連系するものにおいて、潮流監視用の電流センサの取付状態を適切に判定すると共に、分散型電源からの電力を受電設備側に適切に供給することが可能な分散型電源システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分散型電源システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の第1の分散型電源システムは、
単相3線式の電力系統が接続された主幹ブレーカと、該主幹ブレーカのU相,V相およびN相の二次側端子のうちいずれか2つに接続された複数の分岐ブレーカと、を備える受電設備における前記分岐ブレーカの二次側の電気経路に連系される分散型電源システムであって、
分散型電源と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち一方の相の二次側端子と前記N相の二次側端子とに接続された特定の分岐ブレーカである特定分岐ブレーカの二次側の電気経路に出力端子が接続され、前記分散型電源からの電力を変換して出力する電力変換装置と、
該電力変換装置の出力線間に接続された補機と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されている前記一方の相に流れる電流を検出する第1電流センサと、前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されていない他方の相に流れる電流を検出する第2電流センサと、前記特定分岐ブレーカに流れる電流を検出する第3電流センサのいずれかとして機能するように取り付けられる3つの電流センサと、
前記電力変換装置の出力線間に取り付けられる電圧センサと、
前記電力変換装置と前記補機とを駆動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記補機を駆動制御した状態で前記3つの電流センサのうち2つの電流センサに前記補機の電力消費に応じた電流変動が検出された場合、前記2つの電流センサによりそれぞれ検出された電流値の偏差が所定値以上のときには前記電流値が大きい方の電流センサが前記第1電流センサであると判定すると共に前記電流値が小さい方の電流センサが前記第3電流センサであると判定し、前記第1電流センサまたは前記第2電流センサにより検出された電流が前記電圧センサにより検出された電圧と逆位相であるときには更に該当する電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させ、前記3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定し、前記第2電流センサにより電流が検出され且つ該検出された電流が前記電圧センサにより検出された電圧と同位相であるときには更に前記第2電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させ、前記第1電流センサと前記第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流との和の電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記第3電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう
ことを要旨とする。
【0009】
この本発明の第1の分散型電源システムでは、主幹ブレーカのU相およびV相のうち分散型電源が接続されている一方の相に流れる電流を検出する第1電流センサと、主幹ブレーカのU相およびV相のうち分散型電源が接続されていない他方の相に流れる電流を検出する第2電流センサと、特定分岐ブレーカに流れる電流を検出する第3電流センサのいずれかとして機能するように取り付けられる3つの電流センサを備える。そして、補機を駆動制御した状態で3つの電流センサのうち2つの電流センサに補機の電力消費に応じた電流変動が検出された場合、2つの電流センサによりそれぞれ検出された電流値の偏差が所定値以上のときには電流値が大きい方の電流センサが第1電流センサであると判定すると共に電流値が小さい方の電流センサが第3電流センサであると判定する。更に、第1電流センサまたは第2電流センサにより検出された電流が電圧センサにより検出された電圧と逆位相であるときには該当する電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させる。また、3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサが第2電流センサであると判定し、更に第2電流センサにより電流が検出され且つその検出された電流が電圧センサにより検出された電圧と同位相であるときには第2電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させる。そして、第1電流センサと第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流との和の電流が電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ第3電流センサにより検出される電流と電力変換装置から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう。これにより、3つの電流センサの取付状態(取付位置および取付方向)を適切に判定して分散型電源からの給電を適切に行なうことができる分散型電源システムとすることができる。
【0010】
こうした本発明の第1の分散型電源システムにおいて、前記制御装置は、前記残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定した際に前記第2電流センサにより電流が検出されなかったときには、前記第2電流センサにより電流が検出されるまでの間、前記第1電流センサにより検出される電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記第3電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が前記上限電流を超えないように給電制御を行なうものとしてもよい。こうすれば、第2電流センサの取付方向を判定できない状況においても、分散型電源システムを稼働しつつ、電力系統への逆潮流を防止すると共に特定分岐ブレーカの二次側に上限電流を超える電流が流れるのを防止することができる。
【0011】
また、本発明の第1の分散型電源システムにおいて、前記制御装置は、前記補機を駆動制御した状態で前記3つの電流センサのうち2つの電流センサに前記補機の電力消費に応じた電流変動が検出された場合、前記2つの電流センサによりそれぞれ検出された電流値の偏差が前記所定値未満のときには、前記3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定し、前記第2電流センサにより電流が検出され且つ該検出された電流が前記電圧センサにより検出された電圧と同位相であるときには更に前記第2電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させ、前記2つの電流センサのうち一方の電流センサと前記第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流の和が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記2つの電流センサのうち他方の電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が前記上限電流を超えないように給電制御を行なうものとしてもよい。こうすれば、2つの電流センサが第1電流センサであるか第3電流センサであるかを区別することができない状況においても、分散型電源システムを稼働しつつ、電力系統への逆潮流を防止すると共に特定分岐ブレーカの二次側に上限電流を超える電流が流れるのを防止することができる。
【0012】
この態様の本発明の第1の分散型電源システムにおいて、前記制御装置は、前記残りの1つの電流センサが前記第2電流センサであると判定した際に前記第2電流センサにより電流が検出されなかったときには、前記第2電流センサにより電流が検出されるまでの間、前記2つの電流センサのうち一方の電流センサにより検出される電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記2つの電流センサのうち他方の電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が前記上限電流を超えないように給電制御を行なうものとしてもよい。こうすれば、第2電流センサの取付方向を判定できない状況においても、分散型電源システムを稼働しつつ、電力系統への逆潮流を防止すると共に特定分岐ブレーカの二次側に上限電流を超える電流が流れるのを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の第1の分散型電源システムにおいて、前記制御装置は、前記補機を駆動制御した状態で前記3つの電流センサのうち2つの電流センサに前記補機の電力消費に応じた電流変動が生じなかった場合には、エラーを出力するものとしてもよい。これは、2つの電流センサのいずれかがN相に取り付けられているか故障していると判断できることに基づく。
【0014】
本発明の第2の分散型電源システムは、
単相3線式の電力系統が接続された主幹ブレーカと、該主幹ブレーカのU相,V相およびN相の二次側端子のうちいずれか2つに接続された複数の分岐ブレーカと、を備える受電設備における前記分岐ブレーカの二次側の電気経路に連系される分散型電源システムであって、
分散型電源と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち一方の相の二次側端子と前記N相の二次側端子とに接続された特定の分岐ブレーカである特定分岐ブレーカの二次側の電気経路に出力端子が接続され、前記分散型電源からの電力を変換して出力する電力変換装置と、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されている前記一方の相に流れる電流を検出する第1電流センサと、
前記主幹ブレーカの前記U相および前記V相のうち前記分散型電源が接続されていない他方の相に流れる電流を検出する第2電流センサと、
前記特定分岐ブレーカに流れる電流を検出する第3電流センサと、
前記第1電流センサと前記第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流との和の電流が前記電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ前記第3電流センサにより検出される電流と前記電力変換装置から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0015】
この本発明の第2の分散型電源システムでは、主幹ブレーカのU相およびV相のうち分散型電源が接続されている一方の相に流れる電流を検出する第1電流センサと、主幹ブレーカのU相およびV相のうち分散型電源が接続されていない他方の相に流れる電流を検出する第2電流センサと、特定分岐ブレーカに流れる電流を検出する第3電流センサと、を備える。そして、第1電流センサと第2電流センサとによりそれぞれ検出される電流との和の電流が電力系統への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ第3電流センサにより検出される電流と電力変換装置から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう。これにより、単相3線式の電力系統が接続された主幹ブレーカと、主幹ブレーカのU相,V相およびN相の二次側端子のうちいずれか2つに接続された複数の分岐ブレーカと、を備える受電設備の特定分岐ブレーカの二次側の電気経路に連系するものにおいて、分散型電源からの給電を適切に行なうことができる分散型電源システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態としての分散型電源システム20の構成の概略を示す構成図である。
図2】制御装置40により実行されるCT補正処理の一例を示すフローチャートである。
図3】制御装置40により実行されるCT補正処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態としての分散型電源システム20の構成の概略を示す構成図である。実施形態の分散型電源システム20は、単相3線式の商用電力系統1の2つの電圧線であるU相2uおよびV相2vのうち一方の相と中性線であるN相2nとに連系されるものであり、商用電力系統1に対する逆潮流が許容されていないシステムとして構成されている。
【0019】
実施形態の分散型電源システム20は、住宅等の受電設備10に接続される。受電設備10は、一次側が商用電力系統1のU相2u,V相2vおよびN相2nに接続される主幹ブレーカ11と、主幹ブレーカ11の二次側のU相12u,N相12nおよびN相12nのうちいずれか2つの相の電線に接続される複数の分岐ブレーカ14A~14C(子ブレーカ)と、を備える。各分岐ブレーカ14A~14Cの二次側の電線15A~15Cにはそれぞれ負荷(家庭負荷A~C)が接続される。また、分岐ブレーカ14Cの二次側の電線15Cには、屋外コンセント16につながる配線17が接続されている。
【0020】
実施形態の分散型電源システム20は、図1に示すように、屋外に設置され、直流電力を供給する分散型電源22と、分散型電源22からの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路24と、インバータ回路24の出力端子と給電コネクタ28とを接続する電力ライン25に設けられた解列リレー26と、分散型電源22の補機32と、電力ライン25の解列リレー26と給電コネクタ28との間に接続され電力ライン25の電力を用いて補機32を駆動する補機用駆動装置34と、第1~第3電流センサCT1~CT3と、電圧センサ44と、を備える。
【0021】
分散型電源システム20は、給電コネクタ28を屋外コンセント16に接続することにより、受電設備10に接続される。本実施形態では、分散型電源システム20は、図1に示すように、主幹ブレーカ11の二次側のU相12uとN相12nとに接続された分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の二次側の電線15Cに屋外コンセント16を介して接続される。分散型電源システムを単相3線式の商用電力系統1の3つの相に連系する場合、屋外に設置された分散型電源システムを屋内の受電設備10に接続するために、設置宅の屋外へ単相3線を引き込むための工事が必要となる。これに対して、本実施形態の分散型電源システム20では、単相3線のうちの2つの相に連系するから、既設の屋外コンセント16を利用して分散型電源システム20を受電設備10に接続することができ、設置が容易となるメリットがある。
【0022】
分散型電源22としては、例えば、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給を受けて水素と酸素との化学反応により発電する燃料電池や、原動機(ガスエンジンやガスタービンなど)からの動力により発電する原動機付き発電機、蓄電池などを挙げることができる。
【0023】
インバータ回路24は、分散型電源22からの直流電力を交流電力に変換して商用電力系統1の2つの相に連系する単相2線式出力のインバータとして構成される。インバータ回路24の出力線である電力ライン25の解列リレー26と給電コネクタ28との間のライン間には、電圧センサ44が取り付けられている。
【0024】
分散型電源システム20では、上述したように給電コネクタ28を既設の屋外コンセント16に接続することにより、単相3線式の商用電力系統1の3つの相のうちの2つの相に連系される。図1では、インバータ回路24の一方の出力端子がU相12uに接続され、インバータ回路24の他方の出力端子がN相12nに接続される例を示している。しかし、実際には、インバータ回路24の一方の出力端子がN相12nに接続されると共にインバータ回路24の他方の出力端子がU相12uに接続される場合や、インバータ回路24の一方の出力端子がV相12vに接続されると共にインバータ回路24の他方の出力端子がN相12nに接続される場合、インバータ回路24の一方の出力端子がN相12nに接続されると共にインバータ回路24の他方の出力端子がV相12vに接続される場合がある。すなわち、既設の屋外コンセント16を利用して分散型電源システム20を屋内の受電設備10に接続する場合、分散型電源システム20が接続されている電線がU相-N相間であるか、V相-N相間かを認識することはできず、接続している電線が分散型電源システム20(インバータ回路24の2つの出力端子)に対して正接続か逆接続かも認識することはできない。
【0025】
補機32は、分散型電源22の周辺機器であり、例えば、分散型電源システム20が燃料電池とその排熱を用いて貯湯する貯湯装置とを備えるコージェネレーションシステムに適用される場合、燃料電池に燃料ガスを供給するポンプや酸化剤ガスとしての空気を供給するブロワ、燃料ガスの流量を検出する流量センサ、空気の流量を検出する流量センサ、貯湯装置の貯湯水を燃料電池の排熱と熱交換するために貯湯水を循環させるポンプ、貯湯装置の配管内の凍結を予防するための凍結予防ヒータ等を挙げることができる。
【0026】
第1電流センサCT1および第2電流センサCT2は、商用電力系統1のU相12uおよびV相12vに取り付けられる潮流監視用のセンサである。第3電流センサCT3は、分散型電源システム20が接続される分岐ブレーカ14Cを流れる電流を監視する電流監視用のセンサであり、主幹ブレーカ11の二次側のU相12uから分岐すると共に分岐ブレーカ14Cの一次側に接続される分岐線13uに取り付けられる。なお、第3電流センサCT3は、分岐ブレーカ14Cの二次側に取り付けられてもよい。第1~第3電流センサCT1~CT3は、本実施形態では、カレントトランスとして構成され、第1~第3電流センサCT1~CT3により検出された信号は、第1~第3のCT計測回路41~43を介して制御装置40へ出力される。
【0027】
制御装置40は、図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,ワークメモリとしてのRAM、入出力ポートなどを備える。この制御装置40には、電圧センサ44からの電圧(連系電圧)Vや、第1~第3CT計測回路41~43からの第1~第3電流センサCT1~CT3の検出信号である電流Ict1~Ict3などが入力ポートを介して入力されている。一方、制御装置40からは、インバータ回路24の図示しないスイッチング素子への駆動信号や、解列リレー26への駆動信号、補機用駆動装置34への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0028】
制御装置40は、第1および第2電流センサCT1,CT2により商用電力系統1の2つの電圧線(U相2u,V相2v)を流れる電流を検出し、検出した電流と電圧センサ44により検出される連系電圧Vとに基づいて潮流方向を監視する。そして、逆潮流(分散型電源システム20から商用電力系統1へ向かう有効電力の流れ)が発生したと判定すると、解列リレー26をオフして分散型電源システム20を商用電力系統1から切り離したり、分散型電源システム20の出力を低下させたりする。これにより、逆潮流が許容されていない分散型電源システム20において、逆潮流を防止することができる。
【0029】
分散型電源システム20は、分岐ブレーカ14Cの二次側の電線15Cに接続されるから、当該電線15Cには、商用電力系統1から分岐ブレーカ14Cを介して流れる電流に分散型電源システム20から出力される電流が加算された電流が印加される。この場合、分岐ブレーカ14Cには当該分岐ブレーカ14Cに定められる上限電流が流れなくても、電線15Cにその上限電流を超える過電流が流れる場合が生じうる。そこで、本実施形態の分散型電源システム20では、分散型電源システム20が接続される分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の一次側の分岐線13uに第3電流センサCT3を設け、第3電流センサCT3からの電流と分散型電源システム20から出力される電流との和の電流が上限電流を超えないように分散型電源システム20の出力を制御している。
【0030】
このように、第1および第2電流センサCT1,CT2は、潮流方向の監視に用いられ、第3電流センサCT3は、分岐ブレーカ14Cの二次側の電流監視に用いられるため、それらの取付位置や取付方向が誤っていると、監視を正しく行なうことができない。このため、本実施形態の分散型電源システム20は、その設置後に、取り付けられた3つの電流センサの取付位置(3つの電流センサがそれぞれ第1~第3電流センサCT1~CT3のいずれに該当するか)とその取付方向とを判定する。
【0031】
図2は、制御装置40により実行されるCT補正処理の一例を示すフローチャートである。このルーチンは、オペレータにより取付状態の判定が指示されたときに実行される。
【0032】
CT補正処理が実行されると、制御装置40のCPUは、まず、商用電力系統1からの電力により補機32が駆動されるように補機用駆動装置34を制御する(ステップS100)。なお、駆動する補機32として例えば凍結予防ヒータを用いることができる。続いて、3つの電流センサのうちいずれか2つの電流センサに補機32の電力消費に相当する電流変動が検出されたか否かを判定する(ステップS110)。この判定は、例えば、補機32の消費電力が300Wであり、電圧センサ44により検出される連系電圧Vが100Vであった場合、いずれか2つの電流センサにより3[A]分の電流変動が検出されたか否かを判定するものとなる。ここで、図1に示すように、主幹ブレーカ11の一次側のU相2uに第1電流センサCT1が接続され、主幹ブレーカ11の一次側のV相2vに第2電流センサCT2が接続され、主幹ブレーカ11の二次側のU相12uから分岐すると共に分散型電源システム20が接続された分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の一次側に第3電流センサCT3が取り付けられている場合を考える。この場合、3つの電流センサのうち2つの電流センサは、商用電力系統1のU相2uから分散型電源システム20の補機32に至る共通の電気経路上(U相)に位置するから、補機32を駆動した際、2つの電流センサには補機32の電力消費に応じた電流変動が検出される。したがって、電流変動を検出した2つの電流センサは、第1電流センサCT1か第3電流センサCT3かのいずれかであると判断することができる。一方、3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサは、分散型電源システム20が接続していない電気経路(V相)上に位置するから、補機32を駆動しても、残りの1つの電流センサには電流変動が検出されない。したがって、電流変動を検出しなかった1つの電流センサは、第2電流センサCT2であると判断することができる。
【0033】
ステップS110において、いずれか2つの電流センサに補機32の電力消費に相当する電流変動が検出されなかったと判定すると、3つの電流センサのいずれかが誤った位置に取り付けられていると判断し、図示しない表示器に取付異常を報知し(ステップS120)、分散型電源システム20からの電力の供給を行なうことなく、CT補正処理を終了する。
【0034】
ステップS110において3つの電流センサのうちいずれか2つの電流センサに補機32の電力消費に相当する電流変動が検出されたと判定すると、該当する2つの電流センサにより検出される電流の電流差が所定値(例えば1A)以上であり且つその状態が所定時間(例えば5秒)以上継続しているか否かを判定する(ステップS130)。該当する2つの電流センサからの電流に電流差がある場合は、主幹ブレーカ11の共通のU相12uから、分散型電源システム20が接続されている分岐ブレーカ14C以外に、分散型電源システム20が接続されていない他の分岐ブレーカ14Aへ電力が供給されている場合が該当する。この場合、ステップS130において肯定的な判定がなされ、該当する2つの電流センサのうち検出された電流が大きい方の電流センサが第1電流センサCT1であると判定すると共に検出された電流が小さい方の電流センサが第3電流センサCT3であると判定する(ステップS140)。また、残りの1つの電流センサが第2電流センサCT2であると判定する(ステップS150)。そして、第1電流センサCT1または第3電流センサCT3により検出された電流Ict1,Ict3の位相が連系電圧Vの位相と逆位相であるか否かを判定する(ステップS160)。電流Ict1,Ict3のいずれかの位相と連系電圧Vの位相とが逆位相であると判定すると、該当する電流センサは逆方向に取り付けられていると判断し、該当する電流センサにより以降に検出される電流の符号(位相)を反転させる符号反転の設定を行なう(ステップS170)。一方、電流Ict1,Ict3のいずれの位相も連系電圧Vの位相と同位相であると判定すると、第1電流センサCT1および第3電流センサCT3は、いずれも順方向に取り付けられていると判断して、ステップS170の処理をスキップする。いま、分散型電源システム20から受電設備10へ給電していない状況で商用電力系統1からの電力により分散型電源システム20の補機32を駆動している場合を考えているから、商用電力系統1から補機32に至る電気経路上に取り付けられる第1電流センサCT1および第3電流センサCT3を流れる電流は必ず順潮流側となる。したがって、第1電流センサCT1または第3電流センサCT3を流れる電流が連系電圧Vと同位相であれば、該当する電流センサの取付方向は順方向であり、第1または第3電流センサCT1,CT3を流れる電流が連系電圧Vと逆位相であれば、該当する電流センサの取付方向は逆方向であると判断することができる。
【0035】
次に、第2電流センサCT2により検出される電流Ict2が所定値(例えば1A)以上であり且つその状態が所定時間(例えば5秒)以上継続しているか否かを判定する(ステップS180)。この場合、第2電流センサCT2により電流が検出される場合は、主幹ブレーカ11の分散型電源システム20が接続されていない二次側のV相12vから分岐ブレーカ14Bへ電力が供給されている場合が該当する。この場合、ステップS180において肯定的な判定がなされ、第2電流センサCT2により検出された電流Ict2の位相と電圧センサ44により検出された連系電圧Vの位相とが同位相であるか否かを判定する(ステップS190)。電流Ict2の位相と連系電圧Vとの位相とが同位相であると判定すると、第2電流センサCT2は逆方向に取り付けられていると判断し、第2電流センサCT2により以降に検出される電流の符号(位相)を反転させる位相反転の設定を行なう(ステップS200)。一方、電流Ict2の位相が連系電圧Vの位相と逆位相であると判定すると、第2電流センサCT2は、順方向に取り付けられていると判断して、ステップS200の処理をスキップする。ここで、商用電力系統1の2つの電圧線(U相2uおよびV相2v)のうち分散型電源システム20が連系されていない他方の電圧線(V相2v)を流れる電流は必ず順潮流側となり、分散型電源システム20が連系されている一方の電圧線(U相2u)を流れる電流の位相と他方の電圧線(V相2v)を流れる電流の位相は逆位相となる。したがって、第2電流センサCT2を流れる電流が連系電圧Vと逆位相であれば、第2電流センサCT2の取付方向は順方向であり、第2電流センサCT2を流れる電流が連系電圧Vと同位相であれば、第2電流センサCT2の取付方向は逆方向であると判断することができる。
【0036】
こうして3つの電流センサ(第1~第3電流センサCT1~CT3)についてその取付位置および取付方向の判定と取付方向に応じた符号の設定とを行なうと、解列リレー26をオンし、第1電流センサCT1からの電流Ict1と第2電流センサCT2からの電流Ict2との和の電流が商用電力系統1への逆潮流が生じない範囲内となり且つ第3電流センサCT3からの電流Ict3と分散型電源システム20から出力される電流との和の電流が分散型電源システム20が接続されている分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)に予め定められる上限電流を超えないようにインバータ回路24を制御することにより給電制御(発電制御)を開始して(ステップS210)、CT補正処理を終了する。
【0037】
ステップS180において、第2電流センサCT2により検出される電流Ict2が所定値未満であると判定したり、電流Ict2が所定値以上であってもその状態が所定時間以上継続していないと判定すると、解列リレー26をオンし、第1電流センサCT1からの電流Ict1が商用電力系統1への逆潮流が生じない範囲内となり且つ第3電流センサCT3からの電流Ict3と分散型電源システム20から出力される電流との和の電流が分散型電源システム20が接続されている分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の上限電流を超えないようにインバータ回路24を制御することにより給電制御を実行(開始)する(ステップS220)。そして、第2電流センサCT2からの電流Ict2が略値0である状態が所定期間(例えば3日)以上継続しているか否かを判定する(ステップS230)。第2電流センサCT2からの電流Ict2が略値0でないと判定したり、電流Ict2が略値0であってもその状態が所定期間以上継続していないと判定すると、ステップS180に戻って処理を繰り返す。ステップS180において第2電流センサCT2からの電流Ict2が所定値以上であり且つその状態が所定時間以上継続していると判定すると、ステップS190に進み、第2電流センサCT2の取付方向の判定とその取付方向に応じた符号の設定とを行なうと共に、第1~第3電流センサCT1~CT3からの電流Ict1~Ict3に基づくステップS210の給電制御を開始して、CT補正処理を終了する。
【0038】
ステップS230において、第2電流センサCT2からの電流Ict2が略値0である状態が所定期間以上継続していると判定すると、分散型電源システム20の発電を停止し(ステップS240)、現在の状況が第2電流センサCT2の取付方向を判定できない状況であるか第2電流センサCT2に断線が生じていると判断し、表示器に異常報知を行なって(ステップS250)、CT補正処理を終了する。例えば、新築の住宅に分散型電源システム20を設置する等、人が住んでおらず、商用電力系統1への家庭内負荷の接続がない場合、分散型電源システム20が連系していない他方の電圧線(V相)には電流が流れず、当該他方の電圧線に取り付けられた第2電流センサCT2の取付方向を判定することができない。この場合、ステップS230において肯定的な判定がなされ、発電を停止すると共に異常報知を行なう。
【0039】
ステップS130において、該当する2つの電流センサにより検出される電流の電流差が所定値未満であると判定したり、電流差が所定値以上であってもその状態が所定時間以上継続していないと判定すると、該当する2つの電流センサのうち一方の電流センサを仮第1電流センサCT1tmpであると判定すると共に他方の電流センサを仮第3電流センサCT3tmpであると判定する(ステップS260)。この仮判定は、例えば、第1~第3のCT計測回路41~43のうち番号が小さい方に接続された電流センサを仮第1電流センサCT1tmpであると判定すると共に番号が大きい方に接続された電流センサを仮第3電流センサCT3tmpであると判定することにより行なうことができる。また、残りの1つの電流センサが第2電流センサCT2であると判定する(ステップS270)。 そして、仮第1電流センサCT1tmpまたは仮第3電流センサCT3tmpにより検出された電流の位相が連系電圧Vの位相と逆位相であるか否かを判定する(ステップS280)。各電流のいずれかの位相と連系電圧Vの位相とが逆位相であると判定すると、該当する電流センサは逆方向に取り付けられていると判断し、該当する電流センサにより以降に検出される電流の符号(位相)を反転させる符号反転の設定を行なう(ステップS290)。一方、各電流のいずれの位相も連系電圧Vの位相と同位相であると判定すると、仮第1電流センサCT1tmpおよび仮第3電流センサCT3tmpは、いずれも順方向に取り付けられていると判断して、ステップS290の処理をスキップする。
【0040】
次に、第2電流センサCT2により検出される電流Ict2が所定値(例えば1A)以上であり且つその状態が所定時間(例えば5秒)以上継続しているか否かを判定する(ステップS300)。第2電流センサCT2からの電流Ict2が所定値以上であり且つその状態が所定時間以上継続していると判定すると、その電流Ict2の位相と電圧センサ44により検出された連系電圧Vの位相とが同位相であるか否かを判定する(ステップS310)。電流Ict2の位相と連系電圧Vとの位相とが同位相であると判定すると、第2電流センサCT2は逆方向に取り付けられていると判断し、第2電流センサCT2により以降に検出される電流の符号(位相)を反転させる位相反転の設定を行なう(ステップS320)。一方、電流Ict2の位相が連系電圧Vの位相と逆位相であると判定すると、第2電流センサCT2は、順方向に取り付けられていると判断して、ステップS320の処理をスキップする。
【0041】
そして、解列リレー26をオンし、仮第1電流センサCT1tmpからの電流と第2電流センサCT2からの電流Ict2との和の電流が商用電力系統1への逆潮流が生じない範囲内となり且つ仮第3電流センサCT3tmpからの電流と分散型電源システム20から出力される電流との和の電流が上限電流を超えないようにインバータ回路24を制御する給電制御(発電制御)を実行(開始)する(ステップS330)。給電制御を開始すると、仮第1電流センサCT1tmpおよび仮第3電流センサCT3tmpによりそれぞれ検出される電流の電流差が所定値(例えば1A)以上であり且つその状態が所定時間(例えば5秒)以上継続するまで待つ(ステップS340)。仮第1電流センサCT1tmpおよび仮第3電流センサCT3tmpからの電流の電流差が所定値以上であり且つその状態が所定時間以上継続したと判定すると、検出された電流が大きい方の電流センサが第1電流センサCT1であると判定すると共に検出された電流が小さい方の電流センサが第3電流センサCT3であると判定する(ステップS350)。なお、第1電流センサCT1および第3電流センサCT3の取付方向は上述したステップS280,S290で判定済みであるから、第1~第3電流センサCT1~CT3からの電流Ict1~Ict3に基づくステップS210の給電制御を開始して、CT補正処理を終了する。
【0042】
ステップS300において、第2電流センサCT2により検出される電流Ict2が所定値未満であると判定したり、電流Ict2が所定値以上であってもその状態が所定時間以上継続していないと判定すると、解列リレー26をオンし、仮第1電流センサCT1tmpからの電流が商用電力系統1への逆潮流が生じない範囲内となり且つ仮第3電流センサCT3tmpからの電流Ict3と分散型電源システム20から出力される電流との和の電流が上限電流を超えないように給電制御を実行(開始)する(ステップS360)。そして、第2電流センサCT2からの電流Ict2が略値0である状態が所定期間(例えば3日)以上継続しているか否かを判定する(ステップS370)。第2電流センサCT2からの電流Ict2が略値0でないと判定したり、電流Ict2が略値0であってもその状態が所定期間以上継続していないと判定すると、ステップS300に戻って処理を繰り返す。ステップS300において第2電流センサCT2からの電流Ict2が所定値以上であり且つその状態が所定時間以上継続していると判定すると、ステップS310に進み、第2電流センサCT2の取付方向の判定とその取付方向に応じた符号の設定とを行なうと共に、仮第1電流センサCT1tmpと第2電流センサCT2と仮第3電流センサCT3tmpからの電流に基づくステップS330の給電制御を開始する。そして、仮第1電流センサCT1tmpおよび仮第3電流センサCT3tmpからの電流の電流差が所定値以上であり且つその状態が所定時間以上継続するのを待って、検出された電流が大きい方の電流センサが第1電流センサCT1であると判定すると共に検出された電流が小さい方の電流センサが第3電流センサCT3であると判定し(ステップS340,S350)、第1~第3電流センサCT1~CT3からの電流Ict1~Ict3に基づくステップS210の給電制御を開始してCT補正処理を終了する。
【0043】
ステップS370において、第2電流センサCT2からの電流Ict2が略値0である状態が所定期間以上継続していると判定すると、分散型電源システム20の発電を停止し(ステップS380)、異常報知を行なって(ステップS390)、CT補正処理を終了する。
【0044】
ここで、上述したように、商用電力系統1からの電力を用いて分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の二次側に接続された分散型電源システム20の補機32を駆動する場合、2つの電流センサにより補機32の電力消費に応じた電流変動が検出されるから、その2つの電流センサは、第1電流センサCT1か第3電流センサCT3のいずれかであると判定することができる。しかし、主幹ブレーカ11の分散型電源システム20が接続される分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)と共通の二次側端子から分岐する他の分岐ブレーカ14Aに家庭負荷Aが接続されていない場合には、2つの電流センサにより検出される電流は互いに一致するため、この場合、2つの電流センサがそれぞれ第1電流センサCT1であるか第3電流センサCT3であるかを区別することができない。本実施形態では、2つの電流センサが第1電流センサCT1か第3電流センサCT3のいずれかであることが判明した場合には、両者を区別できなくても、一方の電流センサを仮第1電流センサCT1tmpと仮判定すると共に他方の電流センサを仮第3電流センサCT3tmpと仮判定した上で、分散型電源システム20の給電制御を開始する。この場合、仮第1電流センサCT1tmpが実際には第3電流センサCT3であり仮第3電流センサCT3tmpが実際には第1電流センサCT1であった場合には、分散型電源システム20の出力は通常時よりも制限されるが、分散型電源システム20を早期に稼働させることができ、商用電力系統1への逆潮流を抑制すると共に分散型電源システム20が接続されている分岐ブレーカ14Cの二次側に当該分岐ブレーカ14Cに定められる上限電流を超える電流が流れるのを抑制することができる。
【0045】
以上説明した実施形態の分散型電源システム20では、主幹ブレーカ11の一次側の電圧線(U相2uおよびV相2v)のうち分散型電源システム20が接続されている一方の相に流れる電流を検出する第1電流センサCT1と、主幹ブレーカ11の一次側の電圧線のうち分散型電源システム20が接続されていない他方の相に流れる電流を検出する第2電流センサCT2と、特定分岐ブレーカ(分岐ブレーカ14C)に流れる電流を検出する第3電流センサCT3のいずれかとして機能するように取り付けられる3つの電流センサを備える。そして、補機32を駆動制御した状態で3つの電流センサのうち2つの電流センサに補機32の電力消費に応じた電流変動が検出された場合、2つの電流センサによりそれぞれ検出された電流値の偏差が所定値以上のときには、電流値が大きい方の電流センサが第1電流センサCT1であると判定すると共に電流値が小さい方の電流センサが第3電流センサCT3であると判定する。更に、第1電流センサCT1または第2電流センサCT2により検出された電流が電圧センサ44により検出された連系電圧Vと逆位相であるときには該当する電流センサにより以降に検出される電流の位相を反転させる。また、3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサが第2電流センサCT2であると判定し、更に第2電流センサCT2により電流が検出され且つその検出された電流が連系電圧Vと同位相であるときには第2電流センサCT2により以降に検出される電流の位相を反転させる。そして、第1電流センサCT1と第2電流センサCT2とによりそれぞれ検出される電流との和の電流が商用電力系統1への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ第3電流センサCT3により検出される電流とインバータ回路24から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう。これにより、3つの電流センサの取付状態(取付位置および取付方向)を適切に判定してこれに対応することができ、分散型電源システム20の給電制御を適切に行なうことができる。
【0046】
また、実施形態の分散型電源システム20では、残りの1つの電流センサが第2電流センサCT2であると判定した際に第2電流センサCT2により電流が検出されなかったときには、第2電流センサCT2により電流が検出されるまでの間、第1電流センサCT1により検出される電流が商用電力系統1への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ第3電流センサCT3により検出される電流とインバータ回路24から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう。これにより、第2電流センサCT2の取付方向を判定できない状況においても、分散型電源システム20を早期に稼働することができ、商用電力系統1への逆潮流を防止すると共に分散型電源システム20が接続される分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の二次側に上限電流を超える電流が流れるのを防止することができる。
【0047】
また、実施形態の分散型電源システム20では、補機32を駆動制御した状態で3つの電流センサのうち2つの電流センサに補機32の電力消費に応じた電流変動が検出された場合、2つの電流センサによりそれぞれ検出された電流値の偏差が所定値未満のときには、3つの電流センサのうち残りの1つの電流センサが第2電流センサCT2であると判定し、第2電流センサCT2により電流が検出され且つその電流が連系電圧Vと同位相であるときには更に第2電流センサCT2により以降に検出される電流の位相を反転させる。そして、上記2つの電流センサのうち一方の電流センサ(仮第1電流センサCT1tmp)と第2電流センサCT2とによりそれぞれ検出される電流の和が商用電力系統1への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ2つの電流センサのうち他方の電流センサ(仮第3電流センサCT3tmp)により検出される電流とインバータ回路24から出力される電流との和の電流が上限電流を超えないように給電制御を行なう。これにより、2つの電流センサが第1電流センサCT1および第3電流センサCT3のいずれかであることは判明したが、両者を区別することができない状況においても、分散型電源システム20を早期に稼働することができ、商用電力系統1への逆潮流を防止すると共に分散型電源システム20が接続された分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の二次側に上限電流を超える電流が流れるのを防止することができる。
【0048】
この場合、残りの1つの電流センサが第2電流センサCT2であると判定した際に第2電流センサCT2により電流が検出されなかったときには、第2電流センサCT2により電流が検出されるまでの間、2つの電流センサのうち一方の電流センサ(仮第1電流センサCT1tmp)により検出される電流が商用電力系統1への逆潮流が発生しない範囲内となるように且つ2つの電流センサのうち他方の電流センサ(仮第3電流センサCT3tmp)により検出される電流とインバータ回路24から出力される電流との和の電流が所定の上限電流を超えないように給電制御を行なう。これにより、第2電流センサCT2の取付方向を判定できない状況においても、分散型電源システム20を早期に稼働することができ、商用電力系統1への逆潮流を防止すると共に分散型電源システム20が接続された分岐ブレーカ14C(特定分岐ブレーカ)の二次側に上限電流を超える電流が流れるのを防止することができる。
【0049】
さらに、補機32を駆動制御した状態で3つの電流センサのうち2つの電流センサに補機32の電力消費に応じた電流変動が生じなかった場合には、エラーを出力するものとしてもよい。これにより、2つの電流センサのいずれかがN相に取り付けられているか故障していることを作業者に報知することができる。
【0050】
上述した実施形態では、3つの電流センサが第1~第3電流センサCT1~CT3のいずれであるかを判定して給電制御を行なうものとしたが、例えば3つの電流センサの検出電流容量が異なる場合などには、3つの電流センサのいずれかが本来とは異なる取付位置に取り付けれていると判定すると、給電制御を行なうことなく取付異常を報知してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、分散型電源システム20の補機32として、凍結予防ヒータを駆動することによりその電力消費に応じた電流変動が2つの電流センサにより検出されるか否かを判定するものとしたが、これに限られず、電力を消費する電気機器であれば、如何なる補機を駆動するものとしてもよい。但し、使用する補機は、消費電力が少なくとも数10W以上の電気機器が望ましい。
【0052】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、主幹ブレーカ11が「主幹ブレーカ」に相当し、分岐ブレーカ14A~14Cが「分岐ブレーカ」に相当し、受電設備10が「受電設備」に相当し、分散型電源22が「分散型電源」に相当し、分岐ブレーカ14Cが「特定分岐ブレーカ」に相当し、インバータ回路24が「電力変換装置」に相当し、補機32が「補機」に相当し、第1~第3電流センサCT1~CT3が「3つの電流センサ」に相当し、電圧センサ44が「電圧センサ」に相当し、制御装置40が「制御装置」に相当する。
【0053】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、分散型電源システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 商用電力系統、2u U相、2v V相、2n N相、10 受電設備、11 主幹ブレーカ、12u U相、12v V相、12n N相、13C 分岐線、14A~14C 分岐ブレーカ、15A~15C 電線、16 屋外コンセント、17 配線、20 分散型電源システム、22 分散型電源、24 インバータ回路、25 電力ライン、26 解列リレー、28 給電コンセント、32 補機、34 補機用駆動装置、40 制御装置、41 第1CT計測回路、42 第2CT計測回路、43 第3CT計測回路、44 電圧センサ、CT1 第1電流センサ、CT2 第2電流センサ、CT3 第3電流センサ。
図1
図2
図3