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特許7181144学習済モデルの生成方法、コンピュータプログラム、溶接電源装置及び学習済モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】学習済モデルの生成方法、コンピュータプログラム、溶接電源装置及び学習済モデル
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
B23K9/095 515Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019068318
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163453
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】宮島 雄一
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝典
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 一郎
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-235490(JP,A)
【文献】特開平05-050244(JP,A)
【文献】特開2017-030014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルの生成方法であって、
溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られるアーク音データを取得し、
溶接後に溶接部位を撮像し又は検出光にて該溶接部位を走査することによって、該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得し、
取得した前記検出データに基づいて、溶接状態の良否を判定し、
取得した前記アーク音データ及び溶接状態の良否を示す前記良否データを対応付けた学習用データを、異なる複数の溶接条件毎に記憶部に蓄積し、
前記記憶部に蓄積された前記複数の溶接条件の前記学習用データに基づいて、前記アーク音データが入力された場合に、該アーク音データに対応する前記良否データを出力する、前記複数の溶接条件毎に異なる複数の学習済モデルを機械学習にて生成する
学習済モデルの生成方法。
【請求項2】
前記検出データが入力された場合に溶接状態の良否を示すデータを出力する良否判定用学習済モデルに、取得した前記検出データを入力することによって、溶接状態の良否を判定する
請求項1に記載の学習済モデルの生成方法。
【請求項3】
コンピュータに、アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルを生成させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られるアーク音データを取得し、
溶接後に溶接部位を撮像し又は検出光にて該溶接部位を走査することによって、該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得し、
取得した前記検出データに基づいて、溶接状態の良否を判定し、
取得した前記アーク音データ及び溶接状態の良否を示す前記良否データを対応付けた学習用データを、異なる複数の溶接条件毎に記憶部に蓄積し、
前記記憶部に蓄積された前記複数の溶接条件の前記学習用データに基づいて、前記アーク音データが入力された場合に、該アーク音データに対応する前記良否データを出力する、前記複数の溶接条件毎に異なる複数の学習済モデルを機械学習にて生成する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項4】
アーク音を採取するマイクと、
アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルと、
該マイクにて採取して得られるアーク音データを前記学習済モデルに入力させ、前記学習済モデルから出力される前記良否データが示す溶接状態の良否を報知する報知部と
を備える溶接電源装置であって、
前記学習済モデルは複数であり、各学習済モデルは異なる複数の溶接条件毎に機械学習させたものであり、
溶接条件に基づいて、該溶接条件に対応する前記学習済モデルを選択する選択部を備え、
前記報知部は前記選択部によって選択された前記学習済モデルから出力される前記良否データが示す溶接状態の良否を報知する
溶接電源装置
【請求項5】
アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルの生成方法であって、
溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られるアーク音データを取得し、
溶接後に溶接部位を撮像し又は検出光にて該溶接部位を走査することによって、該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得し、
前記検出データが入力された場合に溶接状態の良否を示すデータを出力する良否判定用学習済モデルに、取得した前記検出データを入力することによって、溶接状態の良否を判定し、
取得した前記アーク音データ及び溶接状態の良否を示す前記良否データを対応付けた学習用データを記憶部に蓄積し、
前記記憶部に蓄積された前記学習用データに基づいて、前記アーク音データが入力された場合に、該アーク音データに対応する前記良否データを出力する学習済モデルを機械学習にて生成する
学習済モデルの生成方法。
【請求項6】
コンピュータに、アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルを生成させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られるアーク音データを取得し、
溶接後に溶接部位を撮像し又は検出光にて該溶接部位を走査することによって、該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得し、
前記検出データが入力された場合に溶接状態の良否を示すデータを出力する良否判定用学習済モデルに、取得した前記検出データを入力することによって、溶接状態の良否を判定し、
取得した前記アーク音データ及び溶接状態の良否を示す前記良否データを対応付けた学習用データを記憶部に蓄積し、
前記記憶部に蓄積された前記学習用データに基づいて、前記アーク音データが入力された場合に、該アーク音データに対応する前記良否データを出力する学習済モデルを機械学習にて生成する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習済モデルの生成方法、コンピュータプログラム、溶接電源装置及び学習済モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式の溶接電源装置は、溶接電源、ワイヤ送給装置、溶接トーチ、アーク周りにシールドガスを噴射するガス供給部を備える。特許文献1には、溶接トーチに設けられたマイクによってアーク音を採取し、アーク音の特定周波数の音圧レベルから溶接状態の良否を判定する技術が開示されている。また、特許文献1には、シールドガスの流音を採取し、特定周波数の音圧レベルに基づいてシールドガスの噴射状態を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-113637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る溶接電源装置においては、採取したアーク音に対して溶接状態が良か否かの判定を行う基準となるアーク音のデータが充分でなく、良否の判定にバラツキが生じてしまうという技術的問題があった。また、ワークの材質、厚み、開先の形状、継手の種類、ワークWの姿勢、溶接ワイヤの材質、ワイヤ径、溶接電流、溶接電圧等の溶接条件が変わると、判定バラツキの問題はより顕著になる。
かかる問題を解決するために、アーク音に対する溶接状態の良否を示すデータを大量に解析することが考えられるが、一般的にかかるデータを効率的に準備することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、学習用データを効率的に生成及び蓄積し、アーク音から溶接状態の良否を精度良く判定する学習済モデルを生成することができる生成方法、コンピュータプログラム、溶接電源装置、学習済モデルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本態様に係る学習済モデルの生成方法は、アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルの生成方法であって、溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られるアーク音データを取得し、溶接後に溶接部位を撮像し又は検出光にて該溶接部位を走査することによって、該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得し、取得した前記検出データに基づいて、溶接状態の良否を判定し、取得した前記アーク音データ及び溶接状態の良否を示す前記良否データを対応付けた学習用データを記憶部に蓄積し、前記記憶部に蓄積された前記学習用データに基づいて、前記アーク音データが入力された場合に、該アーク音データに対応する前記良否データを出力する学習済モデルを機械学習にて生成する。
【0007】
本態様によれば、アーク音から溶接状態の良否を判定するため学習済モデルを生成するために必要な学習用データを効率よく用意することができる。学習用データは、溶接中に取得されるアーク音データと、当該アーク音が発生しているときの溶接状態の良否を示す良否データとを含む。
学習用データは、溶接中に発生するアーク音をマイクで採取することによって得られる。しかし、当該アーク音が発生しているときの溶接状態の良否は直ちに分かるものではない。
そこで、溶接後に溶接部位を撮像することによって、当該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得する。また、検出光にて溶接部位を走査することによって、当該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得しても良い。そして、検出データに基づいて、溶接状態の良否を判定することによって、良否データを得る。溶接部位に係る検出データから溶接状態の良否を判定することは比較的容易であり、自動的に良否データを得ることが可能である。
このようにして得られたアーク音データと、良否データとを対応付け、学習用データとして記憶部に蓄積する。次いで、記憶部に蓄積された学習用データを用いて、アーク音から溶接状態の良否を判定するための学習済モデルを生成する。学習済モデルは、学習前のニューラルネットワークを機械学習させることによって生成することができる。生成された学習済モデルにアーク音データを入力すると、溶接状態の良否を示す良否データが出力されるため、アーク音から溶接状態の良否を判定することが可能となる。
【0008】
本態様に係る学習済モデルの生成方法は、前記検出データが入力された場合に溶接状態の良否を示すデータを出力する良否判定用学習済モデルに、取得した前記検出データを入力することによって、溶接状態の良否を判定する。
【0009】
本態様によれば、異なる複数の溶接条件毎に学習用データを記憶部に蓄積し、複数の溶接条件毎に学習済モデルを生成する。従って、溶接条件毎に適した学習済モデルを生成することができる。溶接条件毎に機械学習させることによって、効率的に学習済モデルを生成することができる。
【0010】
本態様に係る学習済モデルの生成方法は、異なる複数の溶接条件毎に前記学習用データを前記記憶部に蓄積し、前記記憶部に蓄積された前記複数の溶接条件の前記学習用データに基づいて、前記複数の溶接条件毎に異なる複数の前記学習済モデルを生成する。
【0011】
本態様によれば、学習済みのニューラルネットワークである良否判定用学習済モデルを用いることにより、検出データから溶接状態の良否を精度良く判定することができる。
【0012】
本態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルを生成させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られるアーク音データを取得し、溶接後に溶接部位を撮像し又は検出光にて該溶接部位を走査することによって、該溶接部位の状態を検出して得られる検出データを取得し、取得した前記検出データに基づいて、溶接状態の良否を判定し、取得した前記アーク音データ及び溶接状態の良否を示す前記良否データを対応付けた学習用データを記憶部に蓄積し、前記記憶部に蓄積された前記学習用データに基づいて、前記アーク音データが入力された場合に、該アーク音データに対応する前記良否データを出力する学習済モデルを機械学習にて生成する処理を実行させる。
【0013】
本態様によれば、上記コンピュータプログラムをコンピュータに実行させることによって、学習用データを効率よく蓄積し、アーク音から溶接状態の良否を精度良く判定する学習済モデルを生成することができる。
【0014】
本態様に係る溶接電源装置は、アーク音を採取するマイクと、アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力する学習済モデルと、該マイクにて採取して得られるアーク音データを前記学習済モデルに入力させ、前記学習済モデルから出力される前記良否データが示す溶接状態の良否を報知する報知部とを備える。
【0015】
本態様によれば、溶接電源装置は、アーク音から溶接状態の良否を判定してユーザに報知することができる。具体的には、溶接電源装置は、溶接中にアーク音データを取得し、取得したアーク音データを学習済モデルに入力させ、当該学習済モデルから出力される良否データが示す溶接状態の良否を報知部にて報知する。
【0016】
本態様に係る溶接電源装置は、前記学習済モデルは複数であり、各学習済モデルは異なる複数の溶接条件毎に機械学習させたものであり、溶接条件に基づいて、該溶接条件に対応する前記学習済モデルを選択する選択部を備え、前記報知部は前記選択部によって選択された前記学習済モデルから出力される前記良否データが示す溶接状態の良否を報知する。
【0017】
本態様によれば、溶接電源装置は、溶接条件に対応する学習済モデルを選択し、選択された学習済モデルを用いて溶接状態の良否を判定して報知する。溶接条件に適した学習済モデルを利用することにより、溶接状態をより精度良く判定し、その良否を報知することができる。
【0018】
本態様に係る学習済モデルは、アーク音データが入力された場合に、溶接状態の良否を示す良否データを出力するように、コンピュータを機能させる学習済モデルであって、溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られるアーク音データが入力される入力層と、該入力層に入力された前記アーク音データに対して学習済みの重み係数に基づく演算を行う中間層と、前記アーク音データに係る音が発せられるときの溶接状態の良否を示す前記良否データを出力する出力層とを有し、溶接中に発生するアーク音をマイクで採取して得られる前記アーク音データと、溶接後に溶接部位を撮像し又は検出光にて該溶接部位を走査することによって、該溶接部位の状態を検出して求められる前記良否データとに基づいて、前記入力層に入力された前記アーク音データと、前記出力層から出力される前記良否データとが対応するように、前記重み係数を学習させてなるニューラルネットワークを備え、前記コンピュータに、前記入力層に入力された前記アーク音データ及び前記重み係数に基づく演算を行い、前記良否データを出力させる。
【0019】
本態様によれば、アーク音データが学習済モデルの入力層に入力された場合、当該アーク音が発生しているときの溶接状態の良否を示す良否データが出力層から出力される。当該学習済モデルを利用することにより、アーク音から溶接状態の良否を判定することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本態様によれば、学習用データを効率的に生成及び蓄積し、アーク音から溶接状態の良否を精度良く判定する学習済モデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係る溶接電源装置を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る溶接トーチの構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態1に係る溶接電源の構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態1に係る学習部の構成例を示すブロック図である。
図5】学習用データの一例を示す概念図である。
図6】学習済モデルの生成方法を示すフローチャートである。
図7】溶接状態の良否判定及び報知方法を示すフローチャートである。
図8】実施形態2に係る学習システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る溶接電源装置を示す模式図である。消耗電極式の溶接電源装置は、溶接電源1、ワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3を備える。当該溶接電源装置は半自動式である。
【0024】
溶接電源1は、溶接トーチ3に電力を供給するための第1出力端子及び第2出力端子と、信号を送受信するため信号端子とを備える。溶接電源1の第1出力端子には、第1パワーケーブル41の一端が接続され、第1パワーケーブル41の他端はワイヤ送給装置2を介して溶接トーチ3に接続される。溶接電源1の第2出力端子は、第2パワーケーブル42によってワークWに接続される。ワークWは接地されている。溶接電源1は、電力系統Pの三相交流を所要の溶接電流及び溶接電圧に変換し、第1及び第2パワーケーブル41,42を通じて、アーク溶接に必要な電力を溶接トーチ3に供給する。
【0025】
溶接電源1及びワイヤ送給装置2は駆動制御用の電力伝送線5にて接続されている。また、ワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3も電力伝送線5にて接続されている。溶接電源1は、ワイヤ送給装置2の送給モータ、溶接トーチ3の制御部36(図2参照)等を駆動させるための電力を、電力伝送線5を通じてワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3に供給する。
【0026】
溶接電源装置は、アーク溶接時における溶融金属の酸化を防ぐためのシールドガスを供給するガスボンベ6を備える。ガスボンベ6には、ガス配管7の一端が接続され、ガス配管7の他端は溶接電源1、ワイヤ送給装置2を介して溶接トーチ3に接続されている。ガスボンベ6のシールドガスは、ガス配管7を通じて溶接トーチ3に供給される。
【0027】
溶接電源1の信号端子には、信号線8の一端が接続され、信号線8の他端はワイヤ送給装置2に接続されている。またワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3も信号線8にて接続されている。溶接電源1は、信号線8を通じてワイヤ送給装置2へ制御信号を出力し、溶接ワイヤの送給速度等を制御する。また溶接電源1及び溶接トーチ3は、溶接状態の良否を判定する学習済モデル154の生成処理、学習済モデル154を用いた溶接状態の良否判定処理に必要な各種情報を送受信する。
【0028】
ワイヤ送給装置2は、消耗電極として機能する溶接ワイヤを溶接トーチ3へ送給する装置である。溶接ワイヤは、例えばソリッドワイヤである。ワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3間はトーチケーブル39によって接続されており、溶接ワイヤは、トーチケーブル39及び溶接トーチ3の内部に設けられているライナの内部を通って溶接トーチ3の先端部に導かれる。ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤを送給するための送給ローラ及び送給用モータ等を備え、溶接電源1から供給される電力にて駆動する。
また、トーチケーブル39の内部には、第1パワーケーブル41、ガス配管7、ライナ、電力伝送線5及び信号線8が配されている。溶接電源1からワイヤ送給装置2に供給された駆動制御用の電力は、トーチケーブル39の内部に配された電力伝送線5を通じて溶接トーチ3にも供給される。ワイヤ送給装置2は信号線8を通じて、溶接電源1及び溶接トーチ3と通信を行うことができる。同様に、溶接電源1及び溶接トーチ3は、ワイヤ送給装置2を介して、通信を行うことができる。
【0029】
溶接トーチ3は、銅合金等の導電性材料からなり、溶接対象のワークWへ溶接ワイヤを案内すると共に、アークの発生に必要な溶接電流を供給する円筒形状のコンタクトチップを有する。ワイヤ送給装置2から送給された溶接ワイヤは、コンタクトチップの先端部から突出するように送り出される。第1パワーケーブル41はコンタクトチップと電気的に接続されている。コンタクトチップは、その内部を挿通する溶接ワイヤに接触し、溶接電流が溶接ワイヤに供給される。
また、溶接トーチ3は、コンタクトチップを囲繞する中空円筒形状をなし、先端の開口からワークWへシールドガスを噴射するノズルを有する。シールドガスは、アークによって溶融したワークW及び溶接ワイヤの酸化を防止するためのものである。シールドガスは、例えば炭酸ガス、炭酸ガス及びアルゴンガスの混合ガス、アルゴン等の不活性ガス等である。
【0030】
<溶接トーチ>
図2は実施形態1に係る溶接トーチ3の構成例を示すブロック図である。溶接トーチ3は、通信部31、表示部32、操作部33、記憶部34、センサ35、制御部36、マイク37及び報知部38を備える。
【0031】
通信部31は、ワイヤ送給装置2又は溶接電源1との間で通信を行う回路である。通信部31は、制御部36から与えられたデータを、所定の通信プロトコルに従って変調し、信号線8を通じてワイヤ送給装置2又は溶接電源1へ送信する。通信プロトコルは、例えばCAN(Controller Area Network)である。また、溶接電源1及びワイヤ送給装置2から送信されたデータを受信し、復調し、復調された信号を制御部36に与える。なお、溶接トーチ3及び溶接電源1間の通信は、有線通信に限定されるものでは無く、無線通信であっても良い。
【0032】
表示部32は、溶接に係る各種情報を表示するディスプレイを有する。ディスプレイは、例えば液晶表示パネルであり、ワークWの材質、厚み、開先の形状、継手の種類、ワークWの姿勢、溶接ワイヤの材質、ワイヤ径、溶接電流、溶接電圧等の溶接条件を表示する。
【0033】
操作部33は、溶接工による操作を受け付けるための各種スイッチ、ボタンである。溶接工は、操作部33を操作することによって、本実施形態に係る学習済モデル154を生成する溶接音学習モードと、学習済モデル154を用いた溶接を行う溶接モードとを選択することができる。操作部33が操作された場合、操作信号が制御部36に入力され、制御部36は操作部33の操作状態を認識することができる。
【0034】
記憶部34は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部34は、操作部33の操作によって設定された溶接条件等の情報を記憶する。溶接条件は、例えば、ワークWの材質、厚み、開先の形状、継手の種類、ワークWの姿勢、所定の溶接トーチ3の移動速度、姿勢及び角度等において推奨される溶接電流、溶接電圧、溶接ワイヤの送給速度等の設定値の情報である。なお、溶接条件の設定は、溶接電源1側で行っても良い。
【0035】
センサ35は、例えば撮像部であり、溶接後のビード、溶接痕等の溶接部位を撮像できる姿勢で溶接トーチ3に設けられている。撮像部は溶接部位を撮像して得られる画像データを検出データとして制御部36に出力する。
また、センサ35は、溶接部位をレーザ(検出光)にて走査することによって溶接部位の状態を検出する検査装置であっても良い。検査装置は、レーザ走査によって溶接部位の状態を検出し、検出結果を示す検出データを制御部36に出力する。
【0036】
マイク37は、溶接トーチ3に設けられており、溶接中に発生するアーク音を採取し、アーク音データを制御部36へ出力する
【0037】
報知部38は、例えばスピーカであり、溶接状態の良否を示す音声を出力する。音声の出力は制御部36によって制御される。
【0038】
制御部36は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を有するコンピュータである。制御部36は、操作部33の操作に応じて溶接条件を設定する等の所定処理を実行する。制御部36は、設定された溶接条件を示す溶接条件データを通信部31にて溶接電源1へ送信する処理を実行する。また、制御部36は、センサ35にて検出された検出データと、マイク37にて採取されたアーク音データとを、通信部31にて溶接電源1へ送信する処理を実行する。なお、アーク音データ及び検出データは、センサ35及びマイク37から直接、溶接電源1へ出力するように構成しても良い。
更に、制御部36は溶接条件、記憶部34から読み出した情報等を、適宜、表示部32に表示させる制御を行うこともできる。また、溶接電源1は後述するようにアーク音データに基づいて溶接状態の良否を判定しており、制御部36は溶接電源1から送信された溶接状態の良否を示す良否データを、通信部31を介して受信し、溶接状態の良否を報知部38に報知させる制御を行う。
【0039】
<溶接電源>
図3は実施形態1に係る溶接電源1の構成例を示すブロック図である。溶接電源1は、主制御部11、電源部12、通信部13、記憶部14、学習部15を備える。
【0040】
主制御部11は、CPUを有するマイコンであり、溶接電源1を構成する各構成部の動作を制御する。
【0041】
電源部12は、アーク溶接を行うための電力を溶接トーチ3に供給する回路である。電源部12は、電力系統Pから入力される三相交流電力をアーク溶接に適した電力に変換して出力する。また、電源部12は、三相交流電力を、ワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3の駆動制御に適した電力に変換し、ワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3へ供給する。
【0042】
通信部13は、ワイヤ送給装置2及び溶接トーチ3と通信を行う回路である。例えば、溶接トーチ3及びワイヤ送給装置2から送信されたアーク音データ、検出データ、溶接条件データ等を受信し、受信した各種データを主制御部11、学習部15等に出力する。また、通信部13は、後述するように、アーク音から判定される溶接状態の良否を示す良否データを溶接トーチ3へ送信する。
【0043】
記憶部14は、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部14は、アーク音から溶接状態の良否を判定する学習済モデル154を生成するためのコンピュータプログラム14aを記憶する。また、記憶部14は、当該学習済モデル154を生成するための学習用データを蓄積する。更に、記憶部14は、複数の溶接条件毎に生成した学習済モデル154を記憶する。
【0044】
学習部15は、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)又はマルチコアCPU等のプロセッサ、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するコンピュータである。学習部15は、溶接条件毎にアーク音データ及び検出データを対応付けた学習用データを記憶部14に蓄積する処理を実行する。
十分な学習用データが蓄積されると、学習部15は、記憶部14に蓄積した学習用データに基づいて、アーク音から溶接状態の良否を判定するための学習済モデル154を生成する処理を実行する。
学習済モデル154の生成後、学習部15は学習済モデル154を用いて、溶接状態の良否を判定する処理を実行する。主制御部11は学習済モデル154を用いて判定された溶接状態の良否を示す良否データを、通信部13を介して溶接トーチ3へ送信し、溶接状態の良否を溶接工に報知する。
【0045】
<学習部>
図4は実施形態1に係る学習部15の構成例を示すブロック図、図5は学習用データの一例を示す概念図である。学習部15は、判定器151、アーク音変換部152、学習処理部153、学習済モデル154を備える。
【0046】
判定器151は、センサ35から取得した検出データに基づいて、溶接状態の良否を判定し、溶接状態の良否を示す良否データを学習処理部153へ出力する。溶接状態が良の状態は、溶接中の溶接電流、溶接電圧、溶接ワイヤ送給速度、短絡状況が正常な状態であり、熟練者であれば溶接後の溶接部位の外観から溶接状態の良否を判断できる。
判定器151は、例えば良否判定用学習済モデル151aを備える。良否判定用学習済モデル151aは、学習済みのディープニューラルネットワークであり、入力層、中間層及び出力層を有する。検出データが入力層に入力された場合、溶接状態の良否を示す良否データが出力層から出力される。なお、ニューラルネットワークの構成及び種類は、特に限定されるものでは無く、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)、再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)等のディープニューラルネットワーク、又はこれらを組み合わせたディープニューラルネットワークであってもよい。検出データが、画像データである場合、畳み込みニューラルネットワークを利用し、検出データが時系列データである場合、再帰型ニューラルネットワーク等を利用すると良い。
溶接状態の良否に対応付けられた溶接部位の画像データは、比較的、多く蓄積されているため、良否判定用学習済モデル151aを生成するための学習用データを準備することは比較的容易である。
なお、判定器151は、溶接中の溶接電流又は溶接電圧を示すモニタデータを取得し、モニタデータに基づいて、溶接状態の良否を判定しても良い。また、ニューラルネットワークの教師あり学習によって判定器151を生成する例を説明したが、ロジスティック回帰、サポートベクタマシン等、その他の公知の方法で機械学習させた判定器151を備えても良い。
【0047】
アーク音変換部152は、マイク37から取得したアーク音データを、学習済モデル生成用のデジタルデータに変換する。アーク音変換部152は、例えばアーク音の音圧を示した波形画像のデジタルデータに変換する。なお、言うまでも無く時系列のデジタルデータに変換しても良い。溶接音学習モードにおいては、アーク音変換部152は学習処理部153へアーク音データを出力する。学習済モデル154を用いた溶接状態の良否判定を行う溶接モードにおいては、アーク音変換部152は、アーク音データを学習済モデル154へ出力する。
【0048】
学習処理部153は、学習用データの収集及び蓄積処理と、学習済モデル154の生成処理とを実行する。溶接音学習モード、特に学習用データの収集及び蓄積段階においては、学習処理部153は、溶接が行われる都度、溶接中に発生するアーク音をマイク37で採取して得られるアーク音データと、溶接状態の良否を示す良否データと、溶接条件データとを取得する。具体的には、学習処理部153は、アーク音変換部152から出力されるアーク音データを取得する。また、学習処理部153は、判定器151から良否データを取得する。更に、学習処理部153は、主制御部11から溶接条件データを取得する。そして、図5に示すように、取得した溶接条件データ、アーク音データ及び良否データを対応付けた学習用データを記憶部14に記憶させる。
溶接音学習モードにおいて、十分な学習用データが蓄積されると、学習処理部153は、記憶部14から蓄積された学習用データを読み出し、読み出された学習用データに基づいて、アーク音から溶接状態の良否を判定する学習済モデル154を生成する。
更に、学習済モデル154を用いた溶接状態の良否判定を行う溶接モードにおいては、学習処理部153は、記憶部14が記憶する複数の学習済モデル154の中から溶接条件に対応する学習済モデル154を選択し、記憶部14から読み出す選択部153aを備える。
【0049】
操作部33にて溶接音学習モードが選択された場合、学習部15は以下の処理を実行する。なお、学習済モデル154がまだ生成されていない場合、溶接電源1は自動的に溶接音学習モードを選択するように構成しても良い。
【0050】
<学習済モデルの生成方法>
図6は学習済モデル154の生成方法を示すフローチャートである。溶接電源装置は、溶接工による操作を操作部33にて監視しており、溶接条件を受け付ける(ステップS11)。溶接トーチ3に入力された溶接条件データは、溶接トーチ3から溶接電源1へ送信される。なお、溶接電源1が溶接条件を受け付けても良い。
【0051】
次いで溶接電源1の学習部15は、アーク音変換部152を介してマイク37からアーク音データを取得する(ステップS12)。また、学習部15は、センサ35から検出データを取得し(ステップS13)、検出データに基づいて溶接状態の良否を判定する(ステップS14)。そして、学習部15は、溶接条件データ、アーク音データ及び良否データを対応付け、当該データを学習用データとして記憶部14に蓄積する(ステップS15)。
【0052】
次いで、学習部15は、記憶部14に所定量の学習用データが蓄積されたか否かを判定する(ステップS16)。所定量の学習用データが蓄積されていないと判定した場合(ステップS16:NO)、学習部15は処理をステップS11へ戻す。
【0053】
所定量の学習用データが蓄積されていると判定した場合(ステップS16:YES)、学習部15は、記憶部14に蓄積された学習用データを読み出し、読み出された学習用データに基づいて、アーク音データが入力された場合に、当該アーク音データに対応する前記良否データを出力する学習済モデル154を機械学習にて生成する(ステップS17)。例えば勾配降下法にて誤差関数を最小化することによって中間層の重み係数を求めることができる。
学習部15は、ステップS17において、複数の溶接条件毎に異なる学習済モデル154を生成する。例えば、学習部15は、溶接条件αの学習用データを用いて、溶接条件α用の学習用データを生成し、溶接条件βの学習用データを用いて、溶接条件β用の学習用データを生成する。生成された学習済モデル154は記憶部14に記憶される。なお、学習済モデル154の生成は、十分な学習済モデル154が蓄積されたか否かを溶接条件毎に判定し、学習用データが準備できたものから学習済モデル154を生成すれば良い。
【0054】
学習済モデル154は、図4に示すようにニューラルネットワーク154aを備える。ニューラルネットワーク154aは、アーク音データが入力される入力層と、入力層に入力されたアーク音データに対して学習済みの重み係数に基づく演算を行う中間層と、溶接状態の良否を示す良否データを出力する出力層とを有する。
入力層には、アーク音を表したアーク音データが入力される。アーク音データはアーク音の音圧波形を表した画像データであってもよいし、時系列データであってもよい。なお、画像の情報は、図示しない畳み込み層、コンボリューション層を介して入力層に入力される。
出力層は、一又は複数のニューロンを有する。出力層は、例えば、溶接状態が良である確率を示すニューロンと、溶接状態が不良である確率を示すニューロンとを備える。
【0055】
ニューラルネットワーク154aの構成及び種類は、特に限定されるものでは無く、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、LSTM等のディープニューラルネットワーク、又はこれらを組み合わせたディープニューラルネットワークであってもよい。
また、ニューラルネットワークの教師あり学習によって学習済モデル154を作成する例を説明したが、アーク音データ及び良否データに基づいて、溶接状態の良否を判定する良否判定器を、ロジスティック回帰、サポートベクタマシン等、その他の公知の方法で機械学習させて生成しても良い。
【0056】
操作部33にて溶接モードが選択された場合、学習部15は以下の処理を実行する。なお、記憶部14が学習済モデル154を記憶している場合、溶接電源1は自動的に溶接モードを選択するように構成しても良い。
【0057】
<学習済モデル154を用いた溶接状態の良否判定方法>
図7は溶接状態の良否判定及び報知方法を示すフローチャートである。溶接電源装置は、溶接工による操作を操作部33にて監視しており、溶接条件を受け付ける(ステップS31)。溶接トーチ3に入力された溶接条件データは、溶接トーチ3から溶接電源1へ送信される。
【0058】
次いで、溶接電源1の学習部15は、複数の学習済モデル154の中から、溶接条件に対応する一の学習済モデル154を選択する(ステップS32)。そして、学習部15は、アーク音データを取得し(ステップS33)、ステップS32で選択した学習済モデル154を用いて溶接状態の良否を判定する(ステップS34)。具体的には、学習部15は、アーク音データを学習済モデル154の入力層に入力することによって、良否データを出力層から出力させる。
【0059】
次いで、主制御部11は、学習済モデル154から出力された良否データを通信部13を介して溶接トーチ3へ送信し、報知部38にて溶接状態の良否を溶接工に報知する(ステップS35)。
【0060】
本実施形態1によれば、学習用データを効率的に生成及び蓄積し、アーク音から溶接状態の良否を精度良く判定する学習済モデル154を生成することができる。
【0061】
また、溶接条件毎に機械学習させることによって、効率的に学習済モデル154を生成することができる。
【0062】
更に、溶接電源装置は、学習済モデル154を用いてアーク音から溶接状態の良否を判定して溶接工に報知することができる。具体的には、溶接電源装置は、溶接中にアーク音データを取得し、取得したアーク音データを学習済モデル154に入力させ、当該学習済モデル154から出力される良否データが示す溶接状態の良否を報知部38にて報知することができる。
【0063】
更にまた、溶接電源装置は、溶接条件に対応する学習済モデル154を選択し、選択された学習済モデル154を用いて溶接状態の良否を判定して報知する。溶接条件に適した学習済モデル154を利用することにより、溶接状態をより精度良く判定し、報知することができる。
【0064】
更にまた、学習済みのニューラルネットワークである良否判定用学習済モデル151aを用いることにより、検出データから溶接状態の良否を精度良く判定することができる。
【0065】
(実施形態2)
図8は実施形態2に係る学習システムを示す模式図である。実施形態2に係る溶接電源装置Aは、サーバで学習済モデル154を生成する点が実施形態1と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
実施形態2に係る学習システムは、学習処理サーバ9と、当該学習処理サーバ9に有線又は無線で接続された複数の溶接電源装置Aとを備える。
【0067】
各溶接電源装置Aの溶接電源1は、学習用データを学習処理サーバ9へ送信する。学習処理サーバ9は、各溶接電源装置Aから送信された学習用データを蓄積し、実施形態1と同様の方法で、溶接条件毎に学習済モデル154を生成する。そして、学習処理サーバ9は、生成した学習済モデル154を、各溶接電源装置Aへ配信する。溶接電源装置Aは学習処理サーバ9から配信された学習済モデル154を受信し、記憶する。学習済モデル154を用いた溶接状態の良否の報知方法は実施形態1と同様である。
【0068】
実施形態2によれば、クラウドの学習処理サーバ9にて複数の溶接電源装置Aからアーク音データを受信することによって、より効率的に学習用データを収集及び蓄積することができる。そして、大量の学習用データにて機械学習させることにより、溶接音から溶接状態の良否をより精度良く判定することができる学習済モデル154を生成することができる。
【0069】
また、学習処理サーバ9から学習済モデル154を配信することによって、学習済モデル154を複数の溶接電源装置Aで共有することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、主に半自動式の溶接電源装置を説明したが、溶接ロボットを用いた溶接システムにも本発明を適用することができる。
【0071】
また、検出データに基づいて溶接状態の良否を判定する処理を溶接電源1で行う例を説明したが、溶接トーチ3側で溶接状態の良否を判定するように構成しても良い。
【0072】
更に、学習済モデル154の記憶、学習済モデル154を用いた良否判定を溶接電源1側で行う例を説明したが、当該処理を溶接トーチ3側で実行するように構成しても良い。
【0073】
更に、本実施形態では選択された溶接条件に対応する一つの学習済モデル154を選択する例を説明したが、選択された溶接条件に完全対応する学習済モデル154が無い場合、選択された溶接条件に近い複数の学習済モデル154を選択するように構成しても良い。学習部15は、複数の学習済モデル154にアーク音データを入力させ、複数の学習済モデル154から出力される良否データに基づいて、溶接状態の良否を判定するようにしても良い。
【0074】
更に、本実施形態では学習済モデル154は、溶接状態の良否を示す良否データを出力する例を説明したが、良否データを細分化して出力するように構成しても良い。例えば、溶接状態が不良であることを示すデータを、不良原因によって分類して出力するように機械学習させた学習済モデル154を溶接電源装置に備えても良い。
例えば、学習済モデル154は、第1の不良原因による不良状態にある確率を示すデータを出力するノードと、第2の不良原因による不良状態にある確率を示すデータを出力するノードと、良好な状態にある確率を示すノードとを出力層に備えると良い。言うまでも無く、学習用データとしては、第1の不良原因による不良状態、第2の不良原因による不良状態、良好な状態を示す良否データを教師データとして含むようにし、ニューラルネットワークを機械学習させれば良い。
更に、溶接条件が不良である場合、溶接電源装置は、不良原因に応じた助言を報知部38に出力されるように構成しても良い。助言は、溶接方法の修正方法、不良原因、その他、溶接状態を良好な状態にするために必要な情報である。
【0075】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1溶接電源、2ワイヤ送給装置、3溶接トーチ、11主制御部、14aコンピュータプログラム、15学習部、151判定器、151a良否判定用学習済モデル、152アーク音変換部、153学習処理部、153a選択部、154学習済モデル、154aニューラルネットワーク、34記憶部、35センサ、36制御部、37マイク、38報知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8