(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】型紙データ作成方法、型紙データ作成プログラムおよび型紙データ作成装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20221122BHJP
A41H 3/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G06F30/10
A41H3/00 C
(21)【出願番号】P 2019074320
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】305000297
【氏名又は名称】東レACS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021349(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183374(WO,A1)
【文献】特開2017-166114(JP,A)
【文献】特開2010-113660(JP,A)
【文献】特開平11-286817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10 - 30/28
A41H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を作製するための複数の基準型紙からなる基準型紙データを用いて前記製品を装用する対象の大きさに応じた型紙データを作成する型紙データ作成装置が行う型紙データ作成方法であって、
作成対象のサイズに応じて、互いに大きさが異なる複数の基準型紙データを選択するデータ選択ステップと、
前記作成対象のサイズに対する、選択された基準型紙データの重みを算出する重み算出ステップと、
算出した各基準型紙データの重みを用いて、当該基準型紙データをもとに前記作成対象の型紙データを作成する型紙データ作成ステップと、
を含むことを特徴とする型紙データ作成方法。
【請求項2】
前記重み算出ステップは、作成対象のサイズに対する、各基準型紙データのサイズの比に基づいて前記重みを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の型紙データ作成方法。
【請求項3】
前記型紙データ作成ステップは、
基準型紙データ間で対応する基準型紙における頂点の対応関係を決定し、
対応する頂点位置と、前記重みとを用いて、前記作成対象のサイズの型紙データを作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の型紙データ作成方法。
【請求項4】
前記データ選択ステップは、複数の型紙データにそれぞれ付与される複数のパラメータによって空間上に配置される分布に対し、ドロネー分割によって分割される複数のドロネー領域に対する、前記作成対象のサイズの配置に応じて前記基準型紙データを選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の型紙データ作成方法。
【請求項5】
前記型紙データ作成ステップは、
サイズが異なる二つの基準型紙において対応する線を所定の分割数nでそれぞれn等分し、該等分した分割点同士をそれぞれ結び、
前記分割点同士を結んだ分割順がi(0≦i≦n)の線分に対し、i:(n-i)で按分する位置に按分点を付し、
各按分点を結ぶことによって、前記作成対象の型紙データを作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の型紙データ作成方法。
【請求項6】
製品を作製するための複数の型紙からなる基準型紙データを用いて前記製品を装用する対象の大きさに応じた型紙データを作成する型紙データ作成プログラムであって、
作成対象のサイズに応じて、互いに大きさが異なる複数の基準型紙データを選択するデータ選択手順と、
前記作成対象のサイズに対する、選択された基準型紙データの重みを算出する重み算出手順と、
算出した各基準型紙データの重みを用いて、当該基準型紙データをもとに前記作成対象の型紙データを作成する型紙データ作成手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする型紙データ作成プログラム。
【請求項7】
製品を作製するための複数の型紙からなる基準型紙データを用いて前記製品を装用する対象の大きさに応じた型紙データを作成する型紙データ作成装置であって、
作成対象のサイズに応じて、互いに大きさが異なる複数の基準型紙データを選択するデータ選択部と、
前記作成対象のサイズに対する、選択された基準型紙データの重みを算出する重み算出部と、
算出した各基準型紙データの重みを用いて、当該基準型紙データをもとに前記作成対象の型紙データを作成する型紙データ作成部と、
を備えることを特徴とする型紙データ作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料等の作製に用いられる型紙のデータを作成する型紙データ作成方法、型紙データ作成プログラムおよび型紙データ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCAD(Computer Aided Design)システムの発展、普及に伴い、衣料等の作製に用いられる型紙のデータを作成する技術が採用されてきている。衣料を作製するうえでは、衣料を顧客の体型に合わせることが重要である。従来、標準パターンの型紙データを変形させることによって、標準パターンに対してサイズが大きい、または小さい型紙データを作成している。このような標準パターンを変形させて新たなパターンを得る手法は、グレーディングと呼ばれている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、一つの標準パターンを変形させて異なるサイズのパターンを得ており、得られるパターンの自由度が小さいという問題があった。自由度を大きくするには、輪郭等に詳細に数値を付与して変形方法を指示する必要があり、入力パラメータ数の増加や、変形のためのアルゴリズムの複雑化を招く。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、型紙作成対象の形状に適した型紙データを簡易に作成することができる型紙データ作成方法、型紙データ作成プログラムおよび型紙データ作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる型紙データ作成方法は、製品を作製するための複数の基準型紙からなる基準型紙データを用いて前記製品を装用する対象の大きさに応じた型紙データを作成する型紙データ作成装置が行う型紙データ作成方法であって、作成対象のサイズに応じて、互いに大きさが異なる複数の基準型紙データを選択するデータ選択ステップと、前記作成対象のサイズに対する、選択された基準型紙データの重みを算出する重み算出ステップと、算出した各基準型紙データの重みを用いて、当該基準型紙データをもとに前記作成対象の型紙データを作成する型紙データ作成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる型紙データ作成方法は、上記の発明において、前記重み算出ステップは、作成対象のサイズに対する、各基準型紙データのサイズの比に基づいて前記重みを算出することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる型紙データ作成方法は、上記の発明において、前記型紙データ作成ステップは、基準型紙データ間で対応する基準型紙における頂点の対応関係を決定し、対応する頂点位置と、前記重みとを用いて、前記作成対象のサイズの型紙データを作成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる型紙データ作成方法は、上記の発明において、前記データ選択ステップは、複数の型紙データにそれぞれ付与される複数のパラメータによって空間上に配置される分布に対し、ドロネー分割によって分割される複数のドロネー領域に対する、前記作成対象のサイズの配置に応じて前記基準型紙データを選択することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる型紙データ作成方法は、上記の発明において、前記型紙データ作成ステップは、サイズが異なる二つの基準型紙において対応する線を所定の分割数nでそれぞれn等分し、該等分した分割点同士をそれぞれ結び、前記分割点同士を結んだ分割順がi(0≦i≦n)の線分に対し、i:(n-i)で按分する位置に按分点を付し、各按分点を結ぶことによって、前記作成対象の型紙データを作成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる型紙データ作成プログラムは、製品を作製するための複数の型紙からなる基準型紙データを用いて前記製品を装用する対象の大きさに応じた型紙データを作成する型紙データ作成プログラムであって、作成対象のサイズに応じて、互いに大きさが異なる複数の基準型紙データを選択するデータ選択手順と、前記作成対象のサイズに対する、選択された基準型紙データの重みを算出する重み算出手順と、算出した各基準型紙データの重みを用いて、当該基準型紙データをもとに前記作成対象の型紙データを作成する型紙データ作成手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる型紙データ作成装置は、製品を作製するための複数の型紙からなる基準型紙データを用いて前記製品を装用する対象の大きさに応じた型紙データを作成する型紙データ作成装置であって、作成対象のサイズに応じて、互いに大きさが異なる複数の基準型紙データを選択するデータ選択部と、前記作成対象のサイズに対する、選択された基準型紙データの重みを算出する重み算出部と、算出した各基準型紙データの重みを用いて、当該基準型紙データをもとに前記作成対象の型紙データを作成する型紙データ作成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型紙作成対象の形状に適した型紙データを簡易に作成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が記憶する基準型紙データを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙作成処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が作成した型紙データの一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が作成した型紙データの他の例を説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が行う輪郭形成処理を説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図(その1)である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図(その2)である。
【
図8C】
図8Cは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図(その3)である。
【
図8D】
図8Dは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図(その4)である。
【
図8E】
図8Eは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図(その5)である。
【
図8F】
図8Fは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図(その6)である。
【
図8G】
図8Gは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図(その7)である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その1)である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その2)である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その3)である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その4)である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態1の変形例2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、基準型紙データを選択する処理について説明する図(その1)である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、基準型紙データを選択する処理について説明する図(その2)である。
【
図17】
図17は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、基準型紙データを選択する処理について説明する図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図1に示す型紙データ作成装置1は、衣料の作製に用いられる複数の型紙の設計情報である型紙データを生成する。型紙データ作成装置1は、入力部11と、出力部12と、画像処理部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。
【0017】
入力部11は、型紙データ作成装置1の各部の動作を指示する指示信号の入力や、画像における画像処理領域(位置)を指示する指示信号の入力の受け付け、および受け付けた指示信号を制御部15に入力する。入力部11は、キーボード、マウス、タッチパネル等のインタフェースを用いて実現される。入力部11は、受け付けた指示信号を制御部15に入力する。指示信号には、例えば、画像表示にかかる指示信号や、画像処理に関する選択指示、入力指示などの指示信号が挙げられる。
【0018】
出力部12は、LEDなどの光源や、スピーカなどを用いて構成される。出力部12は、制御部15による制御のもと、例えば、処理の開始時や終了時等に、出力処理を実行する。
【0019】
画像処理部13は、記憶部14に記憶される型紙データから、設定されたサイズの型紙データを作成する処理や、二次元画像として表示される型紙の画像を表示させるため表示画像信号(画像情報)の生成処理を行う。画像処理部13は、型紙データを構成する各型紙の設計に関する文字情報や、色情報などの各種情報を生成する。また、画像処理部13は、複数の型紙の縫合情報などをもとに生成される三次元画像、例えば、複数の型紙に基づく仮想製品などの画像を生成してもよい。
【0020】
記憶部14は、型紙データ作成装置1に実行させる各種プログラム、プログラムの実行中に使用される各種データや、本発明の型紙作成方法にかかる型紙作成プログラムなどを記憶する。記憶部14は、処理中のデータを一時的に記憶する機能を有する。また、記憶部14は、一つの衣服を構成する複数の型紙に関する型紙データを複数組記憶する型紙データ記憶部14aと、顧客のサイズの計測結果から型紙を変更する場合の計測位置間の関係や、型紙データ記憶部14aが記憶する型紙データを用いて、所定のサイズの型紙データを作成するための式等を記憶する変更条件情報記憶部14bとを有する。記憶部14は、フラッシュメモリおよびRAM等の半導体メモリを用いて実現される。なお、記憶部14は、外部から装着されるメモリカード等を用いて構成されてもよい。
【0021】
制御部15は、型紙データ作成装置1の各部の動作を制御するとともに、型紙データ作成装置1を統括的に制御する。制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成され、型紙データ作成装置1に含まれる各部を制御するとともに、外部からの指示信号に応じて指示信号に対応する指示情報やデータの転送等を行って動作を制御する。
【0022】
表示装置2は、画像処理部13が生成した表示画像信号などを受信して該表示画像信号に対応する画像を表示する。表示装置2は、画像処理部13から出力される型紙の設計情報にかかる文字情報や色情報などの各種情報を表示する。表示装置2は、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等を用いて構成される。表示装置2は、制御部15から出力される画像表示指示に基づいて画像を表示する。
【0023】
ここで、画像処理部13について説明する。画像処理部13は、データ選択部131と、重み算出部132と、対応関係決定部133と、頂点位置決定部134と、輪郭生成部135とを有する。なお、対応関係決定部133、頂点位置決定部134および輪郭生成部135によって、型紙データ作成部を構成する。
【0024】
データ選択部131は、型紙データ記憶部14aに記憶されている型紙データから、二つ以上の型紙データを選択する。
【0025】
重み算出部132は、データ選択部131が選択した複数の型紙データの重みを算出する。重み算出部132は、複数の型紙データについて、所定のサイズの型紙データを作成する際に用いる重みを算出する。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が記憶する基準型紙データを示す図である。
図2には、型紙データを構成する複数の型紙のうちの二つの型紙を示している。例えば、
図2に示す型紙M
1が「40サイズ」、型紙M
2が「60サイズ」であるとする。これら型紙M
1、M
2を構成する型紙データは、型紙データ記憶部14aに予め記憶されており、サイズが異なる型紙データを作成するための基準となる型紙データ(以下、基準型紙データともいう)である。サイズの前に付される数字が大きいほど、型紙のサイズが大きくなる。
【0027】
対応関係決定部133は、データ選択部131が選択した各型紙データの各型紙に付与されている頂点や輪郭線(縫合線、裁切線、内部線等)の対応関係を決定する。対応関係決定部133は、型紙自体に付与されている情報(例えばコード)や、記憶部14に記憶されている情報を参照して、データ選択部131が選択した型紙データ間の対応関係を決定する。例えば、
図2に示す型紙M
1の頂点P
100と、型紙M
2の頂点P
101とを対応付けたり、型紙M
1の輪郭線L
100と、型紙M
2の輪郭線L
101とを対応付けたりする。なお、型紙間の頂点や輪郭線の対応関係は、ユーザが入力部11を介して指示してもよい。
【0028】
頂点位置決定部134は、重み算出部132が算出した重みと、対応関係決定部133が決定した対応関係とを用いて、作成するサイズの型紙の頂点位置を決定する。頂点位置決定部134は、型紙に付与されているすべての頂点について、対応する頂点位置を決定する。
【0029】
輪郭生成部135は、基準とする型紙の形状をマージして、作成するサイズにおいて、頂点間を結ぶ輪郭線を生成する。線のマージについては後述する。
【0030】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙作成処理を示すフローチャートである。データ選択部131は、入力部11が、型紙データの作成指示の入力を受け付けると、異なるサイズの基準型紙データを選択する(ステップS101)。ここで、データ選択部131は、例えばサイズの大きさから基準型紙データを選択する場合、型紙データ記憶部14aに記憶されている基準型紙データのサイズのうち、最小のサイズ、および最大のサイズを抽出し、今回作成するサイズ(ここでは指定サイズという)の大きさと比較する。この際、データ選択部131は、指定サイズと、最小サイズ、最大サイズとをそれぞれ比較して、指定サイズが最小サイズより大きく、かつ最大サイズよりも小さければ、指定サイズよりも小さいサイズの基準型紙データのうちの最大のサイズの基準型紙データと、指定サイズよりも大きいサイズの基準型紙データのうちの最小のサイズの基準型紙データとを選択する。また、データ選択部131は、指定サイズが最小サイズより小さければ、指定サイズに対して最小のサイズの基準型紙データと、二番目に小さいサイズの基準型紙データとを選択する。また、データ選択部131は、指定サイズが最大サイズより大きければ、指定サイズに対して最大のサイズの基準型紙データと、二番目に大きいサイズの基準型紙データとを選択する。
【0031】
基準型紙データの選択後、重み算出部132が、各基準型紙データの重みを算出する(ステップS102)。指定サイズの大きさをS、選択された一方のサイズの大きさをS
1、他方のサイズの大きさをS
2、選択された一方のサイズの重みをw
1、他方のサイズの重みをw
2とすると、重みw
1、w
2は、指定サイズの大きさと、基準型紙データの大きさとの関係に基づいて、下式(1)、(2)によって算出される。
【数1】
【0032】
重み算出後、対応関係決定部133が、基準型紙データ間の対応関係を決定する(ステップS103)。対応関係決定部133は、型紙の頂点や輪郭線の対応関係を決定する。
【0033】
その後、頂点位置決定部134は、作成するサイズ(指定サイズ)の型紙の頂点位置を決定する(ステップS104)。頂点位置決定部134は、基準型紙データの型紙の頂点に対応する、指定サイズの型紙の頂点位置を、基準型紙データと、重みとを用いて決定する。
【0034】
頂点位置決定後、輪郭生成部135は、作成するサイズ(指定サイズ)の型紙の輪郭線を生成する(ステップS105)。輪郭生成部135は、頂点位置決定部134が決定した頂点間を結ぶ輪郭線を、基準型紙データと、重みとを用いて生成する。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が作成した型紙データの一例を説明する図であって、「40サイズ」および「60サイズ」の基準型紙データから「50サイズ」の型紙データを作成する例を説明する図である。
【0036】
重み算出部132は、「40サイズ」の重みをw1、「60サイズ」の重みをw2として、「50サイズ」を作成する際の重みを算出する。重みの算出には、上式(1)、(2)を用いる。この場合、重みw1、w2はそれぞれ0.5となる。
【0037】
その後、頂点位置決定部134が、算出された重みw1、w2と、対応関係決定部133が決定した対応関係とを用いて、「50サイズ」の型紙の頂点位置を決定する。例えば、型紙M1の頂点P100と、型紙M2の頂点P101とから、「50サイズ」の型紙(作成後の型紙D1)の頂点位置を頂点P102に決定する。具体的には、型紙M1の頂点P100の座標を(x100,y100)、型紙M2の頂点P101の座標を(x101,y101)、作成するサイズの頂点P102の座標を(x102,y102)とすると、x102、y102は、下式によって算出される。
x102=w1×x100+w2×x101
y102=w1×y100+w2×y101
【0038】
輪郭生成部135は、決定された頂点同士を結ぶことによって輪郭を生成し、「50サイズ」の型紙D1を作成する。この際、輪郭生成部135は、基準とする型紙M1と型紙M2の形状をマージして輪郭線を生成する。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が作成した型紙データの他の例を説明する図であって、「40サイズ」および「60サイズ」の基準型紙データから「70サイズ」の型紙データを作成する例を説明する図である。
【0040】
重み算出部312は、「50サイズ」の場合と同様にして、「40サイズ」の重みw1、「60サイズ」の重みw2を算出する。重みの算出には、上式(1)、(2)を用いる。この場合、重みw1は-0.5、w2は1.5となる。
【0041】
その後、頂点位置決定部134が、算出された重みw1、w2と、対応関係決定部133が決定した対応関係とを用いて、「70サイズ」の型紙の頂点位置を決定する。例えば、型紙M1の頂点P100と、型紙M2の頂点P101とから、「70サイズ」の型紙(作成後の型紙D2)の頂点位置を頂点P103に決定する。
【0042】
輪郭生成部135は、決定された頂点同士を結ぶことによって輪郭を生成し、「70サイズ」の型紙D2を作成する。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる型紙データ作成装置が行う輪郭形成処理を説明する図である。例えば、一方の基準型紙の曲線L
200と、他方の基準型紙の曲線L
201との間に等分する線(w
1=0.5、w
2=0.5)を作図する場合、まず、点P
201と点P
202とを端点として曲線L
200をn等分(
図6ではn=8)し、点P
211と点P
212とを端点として曲線L
201をn等分する。その後、順に対応する点同士を結んで、その結んだ線分を等分する位置を決定する。例えば、曲線L
200のP
201と、曲線L
201のP
211とを結ぶ線分を等分する位置にP
221を付し、曲線L
200のP
202と、曲線L
201のP
212とを結ぶ線分を等分する位置にP
222を付す。同様に対応する曲線L
200と曲線L
201との各点を結ぶ線分を等分する位置に点を付し、それらの点を滑らかに結ぶ曲線L
202を生成する。この曲線L
202が、作成する型紙のサイズに応じた輪郭線となる。このようにして、各頂点間を結ぶ輪郭線を生成し、対応する頂点同士を合わせることによって、作成するサイズの型紙が生成される。
なお、
図6では、二つの曲線を等分(w
1=0.5、w
2=0.5)する場合を例に説明したが、等分以外においても、w
1:w
2に按分する線が作成される。
【0044】
上述した実施の形態1では、複数の基準型紙データを用いて、指定サイズの型紙データを作成する。従来では、指示値をもとに、一つの基準型紙を相似形状で変形させることしかできなかった、または、指示値を細かく入力して基準型紙を変形させる必要があったが、本実施の形態1では、例えば、サイズ間で輪郭線の曲率が異なる場合に、その曲率の変化に対応させた型紙データを作成することができる。本実施の形態1によれば、型紙作成対象の形状に適した型紙データを簡易に作成することができる。
【0045】
(実施の形態1の変形例1)
次に、本発明の実施の形態1の変形例1について説明する。本実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置は、上述した実施の形態1にかかる型紙データ作成装置1と同様の構成を備えている。本変形例1では、上述した処理によって作成された型紙の一部のサイズを変更する場合について説明する。
【0046】
図7は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図である。
図7に示す型紙は、例えば、上述した処理によって基準型紙D
S、D
Lから型紙D
Mが作成された場合に、この型紙D
Mの一部を変形する例を説明する。型紙D
Mは、型紙のサイズとして基準型紙D
Sよりも大きく、型紙D
Lよりも小さい。本変形例1では、基準型紙D
SをSサイズ、基準型紙D
LをLサイズ、型紙D
MをMサイズとする。なお、基準型紙D
S、D
L、型紙D
Mには、ポケットの配設位置に相当するポケット線が付与されている。具体的に、基準型紙D
Sにはポケット線D
SPが付与され、基準型紙D
Lにはポケット線D
LPが付与され、型紙D
Mにはポケット線D
MPが付与されている。以下、この型紙D
Mについて、一部のサイズを、基準型紙D
Sまたは基準型紙D
Lのサイズに変更する。
【0047】
図8A~
図8Gは、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、型紙データの変形処理について説明する図である。
【0048】
まず、入力部11が、型紙D
Mにおけるサイズの変更箇所の指示情報を受け付ける。ここでは、
図8Aに示すように、ポケット線D
MPのサイズをSサイズ(ポケット線D
SP)に変更し、バストラインD
M1および下部中心線D
M2をLサイズに変更し、裾線D
M3をSサイズに変更する。
この際、サイズを変更する複数の線が閉じた環状をなす場合、これらの線は、変更するサイズがすべて同じでなければならない。例えば、
図8Aにおいて、ポケットを構成する複数の線は環状をなすが、すべての線がSサイズに指定されているため許容される。一方、脇線D
M4は、環状をなすバストラインD
M1、下部中心線D
M2、裾線D
M3および脇線D
M4において、裾線D
M3がSサイズに指定され、バストラインD
M1がLサイズに指定されているため、当該変更箇所の環状を維持するには、SサイズやLサイズのサイズ指定は許容されない。
【0049】
輪郭生成部135は、変更箇所として指示された線のうち、連続する線をグループ化する。
図8Bに示す場合は、ポケット線D
MPの輪郭線が領域R
1としてグループ化され、バストラインD
M1、下部中心線D
M2および裾線D
M3を示す輪郭線が領域R
2としてグループ化される。
【0050】
その後、グループ化された各領域において、固定点を一点指示する。本変形例1では、グループ化された時点で、輪郭線上に複数の自由点が表示され、ユーザが入力部11を介して固定点を指示する。自由点は、サイズの変更によってその位置が移動する点であり、固定点は、サイズを変更してもその位置が移動しない点である。
図8Cでは、領域R
1(ポケット線D
MP)において設定される自由点P
41~P
44のうち自由点P
41が固定点として指示された例を示す。また、領域R
2において設定される自由点P
51~P
54のうち自由点P
51が固定点として指示された例を示す。以下、自由点P
41、自由点P
51を、固定点P
41、固定点P
51ということもある。
【0051】
固定点決定後、輪郭生成部135は、固定点を支点として、変更箇所のサイズを変更する(
図8D参照)。具体的に、ポケット線D
MPのサイズを、固定点P
41を支点としてSサイズに変更してポケット線D
SPとし、バストラインD
M1および下部中心線D
M2を、固定点P
51を支点としてLサイズ(バストラインD
L1および下部中心線D
L2)に変更し、裾線D
M3を、変更後の自由点P
53を支点としてSサイズ(裾線D
S1)に変更する。
【0052】
変更箇所のサイズを変更すると、輪郭線の繋がりが切れてしまう部分が生じることがある。
図8Cの場合、変更後の自由点P
52と袖ぐり(
図8Eに示す袖ぐりQ
M)との接続、および、変更後の自由点P
52と自由点P
54との接続が切れてしまう。このため、輪郭生成部135は、線をマージすることによって、輪郭線がつながるように補間する。線のマージの具体的な処理については後述する。
【0053】
変更後の自由点P
52と、袖ぐりQ
M(
図8E参照)とのマージは、型紙D
Mの袖ぐりQ
Mと、バストラインD
L1に対応する型紙D
Lの袖ぐりQ
Lとをマージする。袖ぐりQ
Mと袖ぐりQ
Lとのマージによって、変更後の袖ぐりQ
M´が得られる(
図8E参照)。
【0054】
また、変更後の自由点P
52と自由点P
54とを接続する脇線のマージは、バストラインD
L1に対応する型紙D
Lの脇線D
L4と、裾線D
S1に対応する型紙D
Sの脇線D
S4とをマージする。脇線D
L4と脇線D
S4とのマージによって、変更後の脇線D
M4´が得られる(
図8F参照)。
【0055】
上述したマージ処理によって、型紙D
Mの一部のサイズを変更した型紙D
M´が得られる(
図8G参照)。
【0056】
ここで、線のマージについて、
図9~
図12を参照して説明する。
図9は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その1)である。ここでは、
図9に示すように、一方の端点としてP
61を持つ曲線L
60と、一方の端点としてP
71を持つ曲線L
70をマージして、P
61とP
71を両端点とする新たな曲線(
図9に示す破線L
80)を生成する例を説明する。
【0057】
図10は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その2)である。輪郭生成部135は、曲線L
60、L
70を、それぞれ同じ数で等分し、端点P
61と、曲線L
70の端点P
71と反対側の端点P
72とを結び、曲線L
60の端点P
61と反対側の端点P
62と、端点P
71とを結ぶ。また、輪郭生成部135は、端点間にある、向かい合う分割点(点P
63~点P
69、点P
79~点P
73)同士を結ぶ。本変形例1では、曲線を8等分する。分割数は、予め設定されている値を適用してもよいし、線の長さや、変曲点の数、曲率の最大値(曲率半径の最小値)等から動的に算出された値を適用してもよい。
【0058】
図11は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その3)である。輪郭生成部135は、結んだ線分(
図10参照)を所定の比で按分する按分点を付す(
図11参照)。本変形例1では、端点P
61から順に付される分割順をi(0≦i≦n)とすると、一方の端点から、等分数n(ここでは8)にしたがって、i:(n-i)の比で按分する位置に按分点を付す。例えば、曲線L
60の端点P
61から、該端点P
61の位置をi=0として、順に按分点を付していく。端点P
61と端点P
72とを結ぶi=0の線分においては、i=0であるので、この位置の按分点は端点P
61である。また、端点P
62と端点P
71とを結ぶi=nの線分においては、i=nであるので、この位置の按分点は端点P
71である。輪郭生成部135は、端点P
61側から端点P
62に向かって順に、1:7、2:6、・・・、6:2、7:1で按分する按分点P
81、P
82、・・・、P
86、P
87を付す。
【0059】
図12は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データにおける線のマージ処理を説明する図(その4)である。端点P
61、P
71を含む按分点P
81、P
82、・・・、P
86、P
87を付した後、輪郭生成部135は、端点P
61、P
71、按分点P
81、P
82、・・・、P
86、P
87を繋いで、新たな曲線L
80を生成する。マージされた曲線L
80は、端点P
61の近傍では曲線L
60に近い形状であり、端点P
71の近傍では曲線L
70に近い形状となる。なお、上述した方法では、曲線を例に説明したが、直線であっても同様である。特に直線同士に適用する場合は、新たに生成される線も直線になる。
このように、曲線L
60、L
70をマージして曲線L
80を生成する方法を適用して、上述した袖ぐりQ
M´や脇線D
M4´を得る。
【0060】
以上説明した変形例1では、作成した型紙に対して、一部のサイズを変更する際に、基準型紙の輪郭線を使用してマージすることによって、各基準型紙の形状を反映したマージ線を生成して、一部を変更した型紙データを作成する。本変形例1によれば、型紙の一部を変更する場合であっても、型紙作成対象の形状に適した型紙データを簡易に作成することができる。
【0061】
(実施の形態1の変形例2)
次に、本発明の実施の形態1の変形例2について説明する。本実施の形態1の変形例2にかかる型紙データ作成装置は、上述した実施の形態1にかかる型紙データ作成装置1と同様の構成を備えている。本変形例2では、上述した処理によって作成される型紙を、衣料を構成する型紙の組単位で実施する。
【0062】
図13は、本発明の実施の形態1の変形例2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図である。例えば、同じデザインの衣料を作成する場合において、変形例1で説明したSサイズの衣料の型紙群に相当する基準型紙データG
1と、Lサイズの衣料の型紙群に相当する基準型紙データG
2とを用いて、上述した処理(
図3に示すフローチャート)を型紙ごとに実施することによって、指定したサイズ(ここではMサイズ)の型紙データG
3が作成される。この際、各型紙の対応関係等は、予め設定された情報をもとに決定してもよいし、ユーザが入力部11を介して指示してもよい。
【0063】
上述した変形例2では、型紙群に対してサイズが指定入力された場合に、そのサイズに応じた複数の基準の型紙群(基準型紙データ)を選択して、複数のサイズの型紙データから対応する型紙ごとに指定サイズの型紙群を一括して作成する。本変形例2によれば、型紙作成対象の形状に適した型紙データを、衣料を構成する型紙群単位で一括して簡易に作成することができる。
【0064】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、
図14~17を参照して説明する。本実施の形態2にかかる型紙データ作成装置は、上述した実施の形態1にかかる型紙データ作成装置1と同様の構成を備えている。本実施の形態2では、型紙データ記憶部14aが、少なくとも一部のサイズが互いに異なる三つ以上の基準型紙データを記憶しているものとして説明する。型紙データ作成処理の流れは、上述した
図3に示すフローチャートに準じて実行される。本実施の形態2では、ステップS101のデータ選択処理やステップS102の重み算出処理が、実施の形態1と異なる。以下、実施の形態1とは異なる処理について説明する。
【0065】
本実施の形態2では、作成するサイズを指定する際に、二つのパラメータが入力される。本実施の形態2では、バストと背丈とが入力される例を説明する。
図14は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図である。例えば、バストが110であり、背丈が50であるサイズが指定される。この指定サイズの型紙データ(例えば
図14に示す型紙D
11)は、サイズが近い三つの基準型紙データ(例えば各型紙データの一部である基準型紙M
11、M
12、M
13)を用いて作成される。データ選択部131は、指定のサイズから、パラメータが近い基準型紙データを選択する。
図14に示す例では、バスト110、背丈50に近いサイズの三つの基準型紙データが選択される。
【0066】
以下、
図15~
図17を参照して、データ選択部131による基準型紙データの選択方法について説明する。以下では、ドロネー分割を用いて選択する例について説明する。なお、型紙データ記憶部14aには、登録されている複数の基準型紙データについて、
図14に示すような基準型紙データの分布が記憶されている。
図14では、バストと背丈とをパラメータとする分布を示しているが、パラメータは型紙の種類等によって適宜選択される。
ドロネー分割を用いた選択方法では、二つのパラメータによる二次元の分布において、指定サイズの母点から各基準型紙データの母点までの距離に応じて基準型紙データを選択する。
【0067】
図15は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、基準型紙データを選択する処理について説明する図(その1)である。なお、以下に説明する
図15~
図17では、横軸および縦軸はあるサイズ項目にそれぞれ対応する。
図15に示す分布において、母点P
Bは基準型紙データと対応し、その座標は対応する基準型紙データのサイズを表している。この母点P
B群に対し、母点P
B間の距離に応じて、各母点P
Bの領域を分割される領域を、ボロノイ領域R
Vとする。ボノロイ領域R
Vは、平面上で隣り合う母点P
Bを分割するボロノイ境界L
Vによって分割される。
【0068】
図16は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、基準型紙データを選択する処理について説明する図(その2)である。隣接するボノロイ領域R
Vの母点P
B同士を繋ぐと、母点P
B同士を繋ぐドロネー線L
Bによって新たな領域が形成される。この領域を、ドロネー領域T
Dという。通常、ドロネー領域T
Dは、三角形の領域を形成する。
【0069】
図17は、本発明の実施の形態2にかかる型紙データ作成装置が行う型紙データ作成処理を説明する図であって、基準型紙データを選択する処理について説明する図(その3)である。ドロネー領域T
Dの形成後、ドロネー領域T
D群の外周の領域を分割するため、外周線の角二等分線を追記して、ドロネー領域T
Dの形成範囲を拡大する。
図17に示す例では、母点P
Bに接続するドロネー線L
Bの外周側を二等分する角二等分線L
Hを追加する。これによって、矩形をなす外縁で囲まれた領域が、複数のドロネー領域T
Dに分けられる。
【0070】
データ選択部131は、指定サイズに応じて指定点をプロットした際に、該指定点を含むドロネー領域TDを抽出し、このドロネー領域TDを構成する三つの母点PBを選択する。各母点PBは、基準型紙データと対応付いているため、選択した母点PBに対応する基準型紙データが選択される。
【0071】
データ選択部131は、上述したドロネー分割によるデータ選択のほか、指定サイズと、各基準型紙データとの間の距離を参照して、距離が近い基準型紙データから順に三つ選択するようにしてもよい。また、ユーザが、入力部11を介して、選択する基準型紙データを指示してもよい。
【0072】
重み算出部132は、データ選択部131が選択した基準型紙データと、入力された指定サイズとを用いて、各基準型紙データの重みを算出する。例えば、三つの基準型紙データ(ここでは、第1基準型紙データ、第2基準型紙データ、第3基準型紙データという)が選択され、指定サイズのバストの大きさをS
10、指定サイズの背丈の大きさをS
20、第1基準型紙データにおけるバストのサイズの大きさをS
11、第1基準型紙データにおける背丈のサイズの大きさをS
21、第2基準型紙データにおけるバストのサイズの大きさをS
12、第2基準型紙データにおける背丈のサイズの大きさをS
22、第3基準型紙データにおけるバストのサイズの大きさをS
13、第3基準型紙データにおける背丈のサイズの大きさをS
23、第1基準型紙データの重みをw
11、第2基準型紙データの重みをw
12、第3基準型紙データの重みをw
13とすると、重みw
11、w
12、w
13は、下式(3)~(5)によって算出される。
【数2】
【0073】
重みw11、w12、w13が算出されると、対応関係決定部133が、基準型紙データ間の対応関係を決定し、頂点位置決定部134が、作成するサイズ(指定サイズ)の型紙の頂点位置を決定する。その後、輪郭生成部135が、作成するサイズ(指定サイズ)の型紙の輪郭線を生成する。
【0074】
上述した実施の形態2では、型紙に関して複数のパラメータが入力された場合に、そのパラメータに応じた複数の基準型紙データを選択して、指定サイズの型紙データを作成する。本実施の形態2によれば、上述した実施の形態1と同様に、型紙作成対象の形状に適した型紙データを簡易に作成することができる。
【0075】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態1、2やその変形例にかかる型紙データ作成は、三つのサイズ項目を有するデータに対しても適用することができる。三つのサイズ項目を有するデータの型紙データでは、4つの基準型紙データを用いて指定サイズの型紙データを作成することが可能である。すなわち、n個のサイズ項目を有するデータに対し、n+1個の基準データがあれば、指定サイズのデータを作成することができる。この際、n次元空間におけるボロノイ分割やドロネー分割は、2次元の場合と同様にして実施することが可能である。また、サイズ項目としては、例えば、バスト、背丈、首回り、袖丈およびウエストが挙げられる。
【0076】
なお、上述した実施の形態1、2やその変形例では、型紙データ作成装置1に設けられた記憶部14が型紙データなどを記憶しているものとして説明したが、型紙データ作成装置1とは別に設けられた記憶媒体を介して情報を取得するものであってもよいし、ネットワークを介して情報を取得するものであってもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態1、2やその変形例では、三次元形状をなす製品として衣服を作成するために用いられる型紙を例に説明したが、衣服などの衣料服飾品のほか、布団や枕、型紙を用いて形成されるカバー類、車両用のシートなどの製品においても適用することができる。カバーやシートの場合、基準ボディは、カバーを被せる装用対象の内容物の基準形状に基づいて生成される。
【0078】
以上のように、本発明にかかる型紙データ作成方法、型紙データ作成プログラムおよび型紙データ作成装置は、型紙作成対象の形状に適した型紙データを簡易に作成するのに有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 型紙データ作成装置
2 表示装置
11 入力部
12 出力部
13 画像処理部
14 記憶部
14a 型紙データ記憶部
14b 変更条件情報記憶部
15 制御部
131 データ選択部
132 重み算出部
133 対応関係決定部
134 頂点位置決定部
135 輪郭生成部