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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】乾燥装置及び処理システム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/08 20060101AFI20221122BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20221122BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20221122BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20221122BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20221122BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20221122BHJP
   F26B 9/00 20060101ALI20221122BHJP
   F26B 3/36 20060101ALI20221122BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20221122BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20221122BHJP
   F26B 5/08 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G21F9/08 511F
G21F9/10 A
G21F9/06 541
G21F9/36 511L
G21F9/30 101
G21F9/00 Z
F26B9/00 Z
F26B3/36
F26B5/04
F26B25/00 F
F26B5/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019079862
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020176936
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】浅野 隆
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-104597(JP,A)
【文献】特開昭60-128398(JP,A)
【文献】特開昭63-188797(JP,A)
【文献】実開平02-016099(JP,U)
【文献】特開平10-170149(JP,A)
【文献】特開2004-219408(JP,A)
【文献】特開2004-340814(JP,A)
【文献】特開2011-185801(JP,A)
【文献】特開2016-123891(JP,A)
【文献】特開2016-128798(JP,A)
【文献】特開2018-155497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/08
G21F 9/10
G21F 9/06
G21F 9/36
G21F 9/30
G21F 9/00
F26B 9/00
F26B 3/36
F26B 5/04
F26B 25/00
F26B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を含むスラッジの乾燥により放射性乾燥物を得る乾燥装置であって、
前記スラッジを収容して前記スラッジの乾燥を行う本体部と、
100℃以上の流体を熱源とした前記スラッジの加熱により前記乾燥を行う加熱部と、を備え、
前記本体部は、外気との接触を遮断した状態で前記本体部での前記放射性乾燥物が前記放射性乾燥物の保管容器に収容されるように構成される
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
放射性物質を含むスラッジの乾燥により放射性乾燥物を得る乾燥装置であって、
前記スラッジを収容して前記スラッジの乾燥を行うとともに、前記放射性乾燥物を取り出す取出口を備える本体部を備え、
前記本体部は、外気との接触を遮断した状態で前記本体部での前記放射性乾燥物が前記放射性乾燥物の保管容器に収容されるように構成され
前記取出口は、前記保管容器の収容口に着脱可能に構成される
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記保管容器を収容可能になっており、
前記本体部に収容された前記保管容器への前記スラッジの収容とともに、前記保管容器内部での前記スラッジの乾燥による前記放射性乾燥物の生成により、前記放射性乾燥物が前記保管容器に収容される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記保管容器を交換可能に構成される
ことを特徴とする請求項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
放射性物質を含むスラッジの乾燥により放射性乾燥物を得る乾燥装置であって、
前記スラッジを収容して前記スラッジの乾燥を行う本体部と、
振動乾燥装置、ドラムドライヤ、回転加圧脱水装置、及び流動層脱水装置のうちの少なくとも一種と、を備え、
前記本体部は、外気との接触を遮断した状態で前記本体部での前記放射性乾燥物が前記放射性乾燥物の保管容器に収容されるように構成される
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
放射性物質を含むスラッジの処理を行う処理システムであって、
前記スラッジの乾燥により放射性乾燥物を得るとともに、前記スラッジを収容して前記スラッジの乾燥を行う本体部を備え、前記本体部は、外気との接触を遮断した状態で前記本体部での前記放射性乾燥物が前記放射性乾燥物の保管容器に収容されるように構成される乾燥装置と、
スラッジ含有水中の前記スラッジを前記スラッジ含有水から分離する固液分離装置と、
前記固液分離装置での固相である前記スラッジを前記乾燥装置に供給するスラッジ系統と、を備える
ことを特徴とする処理システム。
【請求項7】
前記固液分離装置に凝集剤を供給する凝集剤供給装置を備える
ことを特徴とする請求項に記載の処理システム。
【請求項8】
前記固液分離装置は、沈降槽及び遠心分離装置のうちの少なくとも一種を含む
ことを特徴とする請求項又はに記載の処理システム。
【請求項9】
前記固液分離装置での液相を前記固液分離装置に戻す戻り系統を備える
ことを特徴とする請求項の何れか1項に記載の処理システム。
【請求項10】
放射性物質を含むスラッジの処理を行う処理システムであって、
前記スラッジの乾燥により放射性乾燥物を得るとともに、前記スラッジを収容して前記スラッジの乾燥を行う本体部を備え、前記本体部は、外気との接触を遮断した状態で前記本体部での前記放射性乾燥物が前記放射性乾燥物の保管容器に収容されるように構成される乾燥装置と、
前記本体部での乾燥物の含水率を非接触で測定する含水率測定装置と、を備える
ことを特徴とする処理システム。
【請求項11】
前記含水率測定装置は中性子水分計を含む
ことを特徴とする請求項10に記載の処理システム。
【請求項12】
前記乾燥装置から排出されるガスの放射線量を測定する線量計を備える
ことを特徴とする請求項11の何れか1項に記載の処理システム。
【請求項13】
前記本体部を減圧する減圧装置と、
前記本体部に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給装置とを備える
ことを特徴とする請求項12の何れか1項に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
福島第一発電システムでは、原子炉建屋、タービン建屋、放射性廃棄物処理建屋等の各建屋最下階フロアには、高線量のスラッジが残存する。スラッジにより、建屋ドライアップ完了後のエリア空間線量率上昇が懸念される。そこで、エリア有効活用に向けたスラッジの処理が望まれる。スラッジ(汚泥)の処理技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、汚染土壌の洗浄工程の一部に放射性元素吸着剤を加え放射性元素を吸着した固形物を含む土壌洗浄水から固液分離装置を介して完全に無害な浄水と有害な放射性物質を含む固形物である汚泥とに分離し、有害な放射性物質を含む固形物は放射線遮蔽カプセルに封入することにより完全に放射線の漏洩を防止すると共に、その完全無害化された洗浄水は汚染土壌用洗浄水として循環閉塞回路を構成し再利用する放射性物質を含む汚染土壌処理方法が記載される。特許文献1に記載の技術では、固形物として分離された汚泥は乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-019905号公報(特に要約書、段落0014参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラッジの乾燥により得られた乾燥物は吸湿し易い。特に、放射性物質を含む乾燥物(放射性乾燥物)の吸湿により、乾燥物中で水の放射線分解が生じる。水の放射線分解により水素が発生することから、水の放射線分解は抑制されることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、乾燥物の吸湿については検討されていない。
【0006】
本発明は、放射線乾燥物の吸湿を抑制可能な乾燥装置及び処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、放射性物質を含むスラッジの乾燥により放射性乾燥物を得る乾燥装置であって、前記スラッジを収容して前記スラッジの乾燥を行う本体部と、100℃以上の流体を熱源とした前記スラッジの加熱により前記乾燥を行う加熱部と、を備え、前記本体部は、外気との接触を遮断した状態で前記本体部での前記放射性乾燥物が前記放射性乾燥物の保管容器に収容されるように構成されることを特徴とするスラッジの乾燥装置に関する。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放射性乾燥物の吸湿を抑制可能な乾燥装置及び処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る処理システムの系統図である。
図2図1に示す処理システムでの処理方法を示すフローチャートである。
図3】第2実施形態に係る処理システムの系統図である。
図4】第3実施形態に係る処理システムの系統図である。
図5】第4実施形態に係る処理システムの系統図である。
図6】第5実施形態に係る処理システムの系統図である。
図7】第6実施形態に係る処理システムの系統図である。
図8図7に示す処理システムでの乾燥装置を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の例に何ら限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。また、各実施形態は任意に組み合わせて実施できる。さらに、異なる実施形態同士において、共通する部材及び装置は同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、異なる部材及び装置であっても、同じ機能を有するものは同じ名称を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る処理システム100の系統図である。処理システム100は、放射性物質を含むスラッジS(汚泥)の処理を行うものである。図1には、スラッジSの発生源である原子力設備101が併記され、処理システム100は、例えば原子力設備101に隣接して設置される。原子力設備101は、原子炉建屋101a、タービン建屋101b及び放射性廃棄物処理建屋101cにより構成される。原子力設備101の最下層フロアには、スラッジSを含む汚染水Lが滞留する。滞留する汚染水Lは、ポンプ102の駆動により、汚染水系統40を通じて処理システム100に供給される。
【0012】
汚染水は、例えば任意の処理を施した後、処理システム100に供給されてもよい。任意の処理とは、例えば、サイクロン、スプリングフィルタ、フィルタプレス等による脱水である。脱水により、例えば30質量%~70質量%程度にまで含水率を低下できる。これにより、後記する処理システム100の乾燥装置10での乾燥負荷を低減できる。また、乾燥装置10で得られる放射性乾燥物(以下、乾燥物Dという)の含水率を例えば1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下に低減し易くできる。
【0013】
処理システム100は、放射性物質を含むスラッジSの乾燥により乾燥物Dを得る乾燥装置10を備える。乾燥装置10は、振動加熱装置、ドラムドライヤ、回転加圧脱水装置、及び流動層脱水装置のうちの少なくとも一種を含む。乾燥装置10がこれらの少なくとも一種を含むことで、スラッジSの乾燥を行うことができる。ただし、乾燥装置10は、図示の例では、例えば振動を伴う加熱により乾燥を行う振動加熱装置を含む。振動加熱装置により、スラッジSへの例えば機械油等の混入を抑制できる。
【0014】
乾燥装置10は、スラッジSを収容してスラッジSの乾燥を行う本体部11を備える。本体部11は、外気との接触を遮断した状態で本体部11での乾燥物Dが乾燥物Dの保管容器14に収容されるように構成される。より具体的には、本体部11は、乾燥物Dを取り出す取出口11aを備え、取出口11aは、保管容器14の収容口14aに直接接続(直結)される。保管容器14は乾燥装置10から取り外し可能になっており、取出口11aは、保管容器14の収容口14aに着脱可能に構成される。取出口11a及び収容口14aはいずれもフランジにより構成され、これらは例えばボルト(図示しない)等で固定される。フランジ同士の間には、例えばOリング等の封止部材が配置されてもよい。
【0015】
このようにすることで、本体部11でのスラッジSの乾燥により生成した乾燥物Dは、外気との接触を遮断した状態で、取出口11a及び収容口14aを通じて保管容器14に収容される。これにより、外気との接触に起因する乾燥物Dの吸湿を抑制できる。なお、本体部11の乾燥物Dは、例えば自重によって保管容器14に落下する。
【0016】
なお、取出口11aと収容口14aとを直接接続(直結)しなくても、外気との接触を遮断した状態で乾燥物Dが保管容器14に収容される限り、取出口11aと収容口14aと間に例えば配管、別途の処理装置等が備えられてもよい。
【0017】
本体部11は、弁15を備える。また、保管容器14も弁16を備える。本体部11でのスラッジSの乾燥中、弁15は閉じている。一方で、乾燥終了後、取出口11aへの収容口14aの接続による乾燥物Dの保管容器14への収容時には、弁15は開く。これとともに、保管容器14の弁16も開く。これにより、本体部11の乾燥物Dが保管容器14に収容される。乾燥物Dを収容した保管容器14は、弁16の閉弁によって気密状態にされたうえで、例えば保管施設(図示しない)に保管される。なお、保管容器14の本体部11への接続は、本体部11の乾燥後に行われてもよく、乾燥前に行われてもよい。
【0018】
本体部11は、加熱部12によって外部から与えられた熱の伝導性を高めるため、例えば金属により構成される。加熱部12について説明する。
【0019】
乾燥装置10は、例えば100℃以上の流体を熱源としたスラッジSの加熱により乾燥を行う加熱部12を備える。加熱部12は、例えば、100℃以上の流体を流通可能な加熱ジャケットである。流体は、例えば蒸気(気体の水)、温水(高温高圧の液体水)等である。100℃以上の流体を用いた加熱により、本体部11でスラッジSを100℃以上にすることができる。これにより、スラッジSが塊状になることを抑制できる。即ち、スラッジSが塊状になっても、塊状のスラッジSの内部での水分蒸発が生じ、塊状のスラッジSを粉砕できる。これにより、スラッジSの乾燥を速やかに行うことができる。
【0020】
加熱部12は、本体部11の外部に配置される。これにより、スラッジSに対して非接触でスラッジSを乾燥でき、放射性物質により汚染される部材を減らすことができる。
【0021】
乾燥装置10は、本体部11を振動させる振動モータ13を備える。振動モータ13は、本体部11を振動させるものである。本体部11の振動により、本体部11の内部でのスラッジSを流動でき、スラッジSの乾燥を促進できる。
【0022】
処理システム100は、水(図示の例では汚染水L)中のスラッジSを水から分離する固液分離装置20を備える。固液分離装置20は例えば沈降槽(スラッジタンク)を含むが、例えば遠心分離装置(サイクロン)を含んでもよい。固液分離装置20は攪拌翼21を備え、攪拌翼21はモータ(図示しない)に接続される。固液分離装置20では、汚染水Lの緩やかな攪拌混合により、汚染水Lに含まれるスラッジSが固相として沈降する。
【0023】
処理システム100は、固液分離装置20での固相であるスラッジSを乾燥装置10に供給するスラッジ系統41を備える。固液分離装置20でのスラッジSは、ポンプ22の駆動により、スラッジ系統41を通じて乾燥装置10に供給される。汚染水L全体ではなくスラッジSのみ(固相。液相を多少含んでもよい)を乾燥装置10に供給することで、乾燥装置10での乾燥時間を短縮できる。また、乾燥装置10でのスラッジSの単位時間当たりの処理量を増大できる。さらに、乾燥装置10で蒸発させる水分量が減少するため、乾燥装置10の乾燥負荷を低減できる。なお、処理システム100では、スラッジSの固液分離の都度、固液分離されたスラッジSについて乾燥装置10での乾燥が行われる。
【0024】
処理システム100は、乾燥装置10での乾燥中に生じる蒸気と接触する捕集装置30を備える。捕集装置30は例えばバグフィルタを含む。捕集装置30は、乾燥装置10で生じた蒸気を排出する蒸気系統42に備えられる。捕集装置30と蒸気との接触により、蒸気中の飛散微粒子を捕集できる。
【0025】
処理システム100は、乾燥装置10での乾燥中に生じた蒸気を凝縮させる凝縮器31を備える。凝縮器31は蒸気系統42に接続される。凝縮器31は例えば熱交換器を含む。凝縮器31へは、冷水製造装置32で製造された冷水が供給される。冷水と蒸気との凝縮器31での熱交換により、蒸気が凝縮して凝縮水が生成する。一方で、蒸気との熱交換により熱を奪われた冷水は、使用済冷水として冷水製造装置32に戻される。
【0026】
凝縮器31で生成した凝縮水は、凝縮水系統43を通じて、凝縮水受槽33に供給される。凝縮水受槽33では、供給された凝縮水が貯留される。貯留された凝縮水は、例えば放射線計測装置(図示しない)等によって放射線量が基準値以下であることが確認された後、処理システム100の外部に排出される。
【0027】
処理システム100は、本体部11を減圧する減圧装置34を備える。減圧装置34は例えば真空ポンプである。減圧装置34は、ガス系統44に備えられ、凝縮水受槽33の気相(図示しない)に接続される。減圧装置34により、凝縮水受槽33の気相、凝縮水系統43及び蒸気系統42の各配管(図示しない)の内部を減圧できる。また、減圧装置34により、凝縮水系統43及び蒸気系統42を通じて接続される本体部11の内部を減圧できる。減圧は、例えば真空又は真空に近い状態にまで行うことができる。乾燥装置10での減圧により、本体部11で蒸気圧を低下でき、乾燥装置10の本体部11での乾燥を促進できる。
【0028】
図2は、図1に示す処理システム100での処理方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、図1に示す処理システムにおいて行われるため、以下の図2の説明は、適宜図1を併せて参照しながら行う。
【0029】
はじめに、固液分離装置20において固液分離が行われる(ステップS1)。固液分離装置20では、水分を大量に含む汚染水LからスラッジSが固液分離される。固液分離装置20には、所定量の汚染水Lが供給される。供給された所定量の汚染水Lについて、その都度固液分離が行われる。固液分離装置20で固液分離される汚染水Lの量は同じであるため、汚染水Lから固液分離されるスラッジSの質量も概ね同じになる。
【0030】
固液分離装置20で固液分離されたスラッジSは、乾燥装置10に供給される(ステップS2)。乾燥装置10に供給されるスラッジSの含水率は、例えば30質量%~70質量%程度である。スラッジSの供給は、ポンプ22の駆動によりスラッジ系統41を通じて行われる。
【0031】
乾燥装置10では、スラッジSの乾燥が行われる(ステップS3)。乾燥は、例えば、以下のようにして行われる。はじめに、スラッジSの供給に使用されたポンプ22が停止される。次いで、減圧装置34の駆動により、乾燥装置10の本体部11が減圧される。減圧は、後記する乾燥時の圧力である例えば1300Pa以上2600Pa以下(10Torr以上20Torr以下)としてもよいし、例えば2600Pa以上大気圧未満の任意の真空度にしてもよい。そして、加熱部12への流体の流通によって本体部11が加熱され、これにより、スラッジSの乾燥が開始する。次に、振動モータ13を駆動させて、本体部11の振動が行われる。
【0032】
乾燥は、定常状態の温度及び圧力として、例えば、120℃以上160℃以下(好ましくは140℃程度)、1300Pa以上2600Pa以下(10Torr以上20Torr以下)の条件で行うことができる。乾燥は、定常状態を継続する時間として、例えば2時間以上4時間以下にすることができる。なお、乾燥の条件は、スラッジSの量及び含水率に応じて、スラッジSを十分に乾燥できる条件とすることが好ましい。このような条件は、例えば、放射性物質を含まないこと以外は同じとした予備実験によって決定できる。なお、ここでいう十分な乾燥とは、例えば、乾燥物Dの含水率が例えば1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下となる乾燥をいう。
【0033】
乾燥後、スラッジSの乾燥により生成した乾燥物Dの保管容器14への収容が行われる(ステップS4)。具体的には、まず、加熱部12への流体の供給及び振動モータ13の振動が停止される。そして、乾燥装置10の取出口11aに対し、保管容器14の収容口14aが接続される。次いで、弁15,16が開弁され、適宜振動モータ13による振動を与えることで、本体部11の乾燥物Dが保管容器14に移送される。これにより、乾燥物Dが保管容器14に収容される。
【0034】
本体部11の乾燥物Dが保管容器14に収容されたら、弁15,16が閉弁される。そして、取出口11aへの収容口14aの接続が解除され、保管容器14が取り外される。取り外された保管容器14は、図示しない保管設備で保管される。なお、保管容器14からの乾燥物Dの取り出しは、例えば、収容口14aを通じて行われる。
【0035】
以上のような処理システム100及び処理方法によれば、スラッジSの乾燥により生成した乾燥物Dの吸湿を抑制した状態で、保管容器14に収容できる。これにより、保管容器14での特に長期の保管中に、保管容器14での水の放射線分解を抑制できる。この結果、保管容器14の内部での水素発生を抑制でき、保管容器14の安定的な長期保管を行うことができる。また、保管容器14を例えば放射線遮蔽体により構成することで、保管容器14の外部への放射線放出を抑制できる。これにより、乾燥作業に従事する作業者の被爆を抑制できる。
【0036】
図3は、第2実施形態に係る処理システム200の系統図である。処理システム200は、固液分離装置20に凝集剤を供給する凝集剤供給装置52を備える。凝集剤供給装置52は例えば送液ポンプを含む。凝集剤は例えばポリ塩化アルミニウムを含む。凝集剤供給装置52の駆動により、凝集剤を貯留した凝集剤タンク51から凝集剤が固液分離装置20に供給される。凝集剤の固液分離装置20への供給により、スラッジSを固相として沈降させ易くできる。
【0037】
処理システム200は、本体部11に乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給装置53を備える。乾燥ガス供給装置53は、例えば、乾燥ガスを充てんした乾燥ガスボンベを含む。乾燥ガスは、例えば、乾燥空気、乾燥窒素ガス等を含む。上記のように、乾燥装置10での乾燥は減圧下で行われる。そこで、乾燥終了後、かつ、弁15を開弁する前に、弁54が開弁される。これにより、乾燥ガス供給装置53から乾燥ガスが乾燥装置10の本体部11に供給され、本体部11の圧力が上昇する。乾燥ガスの供給は、例えば、本体部11の内圧が例えば大気圧となるように行われる。
【0038】
弁15の開弁前に本体部11の圧力を上昇させることで、弁15の開弁に起因する本体部11の急激な圧力変動を抑制できる。また、低湿度の乾燥ガスを本体部11に供給することで、本体部11の乾燥物Dの吸湿を抑制できる。
【0039】
処理システム200は、固液分離装置20での液相を固液分離装置20に戻す戻り系統45を備える。戻り系統45は、固液分離装置20から三方弁55まではスラッジ系統41と共通する。戻り系統45は、三方弁55の下流でスラッジ系統41から分岐する。上記のように、固液分離装置20での固相であるスラッジSは、スラッジ系統41を通じて、乾燥装置10に供給される。このとき、三方弁55は、スラッジ系統41により固液分離装置20と乾燥装置10とを接続するように切り替えられる。
【0040】
一方、スラッジSの乾燥装置10への供給後、三方弁55は、戻り系統45に流路を切り替える。これにより、固相除去後に残存する液相は、戻り系統45を通じ、固液分離装置20に戻される。戻り系統45により、液相に存在し得る放射性物質の外部への排出を抑制できる。
【0041】
図4は、第3実施形態に係る処理システム300の系統図である。処理システム300は、汚染水Lから固相であるスラッジSを分離する固液分離装置61を備える。固液分離装置61は、遠心分離装置(サイクロン)を含む。遠心分離装置を含むことで、スラッジSを遠心分離装置の下方に集め、大量のスラッジSを汚染水Lから速やかに分離できる。
【0042】
固液分離装置61の気相には、排気系統63が接続される。排気系統63は、凝縮器31に接続される。これにより、固液分離装置61で生成し得る蒸気を凝縮器31に供給できる。
【0043】
処理システム300は、汚染水系統40を通じて供給される汚染水Lを貯留する貯留槽60(スラッジタンク)を備える。貯留槽60と固液分離装置61とは、汚染水系統46により接続される。汚染水系統46は送液ポンプ62を備え、送液ポンプ62の駆動により、汚染水Lが貯留槽60から固液分離装置61に供給される。貯留槽60を備えることで、汚染水Lを固液分離装置61に安定的に供給できる。
【0044】
固液分離装置61でスラッジSの分離後に残存する液相は、貯留槽60に戻される。貯留槽60では、汚染水Lと戻された液相とが混合する。従って、固液分離装置61でスラッジSの分離後に残存する液相は、貯留槽60を経由して、再度固液分離装置61に供給される。液相をいったん貯留槽60に戻すことで、液相の体積が大きくなったとしても、液相を汚染水Lとともに貯留槽60に貯留できる。
【0045】
図5は、第4実施形態に係る処理システム400の系統図である。処理システム400は、本体部11での乾燥物Dの含水率を非接触で測定する含水率測定装置70を備える。含水率測定装置70を備えることで、放射性廃棄物を増やすことなく、乾燥物Dの含水率をリアルタイムで測定できる。また、含水率測定装置70を備えることで、ガス系統44を通じて外部に蒸気が排出された場合であっても、乾燥物Dの含水率を測定できる。
【0046】
また、含水率測定装置70を備えることで、例えば測定された含水率が目標値(例えば1質量%以下)になるまで乾燥を行うことができる。この結果、含水率を目標値以下にするために行う乾燥の終了時期を適切に判断できる。従って、含水率測定装置70によって乾燥物Dの含水率を把握しながら、含水率が目標値以下になるまで乾燥を行うことができる。ここでいう目標値とは、上記のように、例えば1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下である。
【0047】
含水率測定装置70は、例えば中性子水分計を含む。中性子水分計は、水分中の水素原子への中性子の衝突により生じた熱中性子を測定することで、測定対象物中の水分量を測定するものである。中性子水分計を含むことで、乾燥物Dの含水率を簡便に測定できる。
【0048】
処理システム400は、乾燥装置10から排出されるガスの放射線量を検出する線量計71を備える。線量計71を備えることで、乾燥装置10から排出されるガスの放射線量を測定できる。特に、捕集装置30の下流側に線量計71を備えることで、捕集装置30への微粒子吸着量が過剰となり、捕集装置3での捕集能力が低下したことを検出できる。
【0049】
乾燥装置10での振動乾燥中、乾燥が進行するに従い、乾燥物同士が擦り合うことで微粒子が生成する。生成した微粒子は、水蒸気に同伴されて、乾燥装置10の蒸気出口(図示しない)から飛散する。蒸気出口から飛散した微粒子は捕集装置30で捕集されるが、微粒子の捕集能力には限界がある。このため、吸着量が捕集能力の限界を超えた場合、微粒子が捕集装置30を素通りし得る。
【0050】
そこで、捕集装置30の下流側に線量計71を備えることで、放射性物質を含む微粒子の素通りを検出できる。これにより、捕集装置30の除去能力低下を検出できる。そして、例えば、線量計71による計測値が規制値に近づいたときには、乾燥作業を停止させて捕集装置30の洗浄(微粒子の払い落し)、交換等の対策をとることができる。この結果、捕集装置30の捕集能力を回復できる。
【0051】
図6は、第5実施形態に係る処理システム500の系統図である。処理システム500は、上記の貯留槽60及び固液分離装置61(いずれも処理システム300の説明を参照)、含水率測定装置70及び線量計71(いずれも処理システム400の説明を参照)を備える。
【0052】
このような処理システム500によっても、乾燥物Dを収容した保管容器14を長期間安定して保管できる。
【0053】
図7は、第6実施形態に係る処理システム600の系統図である。図7には、説明の便宜のため、乾燥装置80に設置された保管容器83Bのほか、スラッジSを収容した保管容器83A、及び、保管容器83内部でのスラッジSの乾燥により生成した乾燥物Dを収容した保管容器83Cが図示される。なお、保管容器83は、これらの保管容器83A,83B,83Cを含む。
【0054】
上記の処理システム100~500の乾燥装置10では、保管容器14は、本体部11の外部に取り付けられる。これにより、保管容器14は交換可能である。一方で、処理システム600の乾燥装置80では、スラッジSの乾燥により乾燥物Dを得る点は乾燥装置10と共通するが、保管容器83が本体部81の内部に取り付けられる点で、乾燥装置10とは異なっている。
【0055】
図8は、図7に示す処理システム600での乾燥装置80を拡大して示す断面図である。乾燥装置80では、本体部81に収容された保管容器83へのスラッジSの収容が行われる。これとともに、乾燥装置80では、保管容器83内部でのスラッジS(図8では図示しない)の乾燥による乾燥物Dの生成により、乾燥物Dが保管容器83に収容される。従って、乾燥装置80は、スラッジSの収容及び乾燥と、乾燥物Dの収容とを、いずれも、同一の保管容器83において行っている。このため、乾燥装置80では、乾燥装置10とは異なり、乾燥物Dの移送は行われない。
【0056】
乾燥装置80は、底部を備えるとともに上部に開口部(図示しない)を備える本体部81と、本体部81の開口部を閉塞する蓋体82とを備える。本体部81は、蓋体82の取り外しにより、保管容器83を収容可能になっている。従って、本体部81は、保管容器83を交換可能に構成される。保管容器83の本体部81への収容時、本体部81の内壁と保管容器83の外壁とは接触する。加熱部12によって外部から与えられた熱の伝導性を高めるために、本体部81及び保管容器83は例えば金属により構成される。
【0057】
本体部81の外面には、上記処理システム100と同様に加熱部12を備える。加熱部12は例えば加熱ジャケットであり、蒸気等の流体を内部に供給する供給口12aと、使用済の流体を排出する排出口12bとを備える。供給口12aを通じて加熱部12に流入した流体は、本体部81及び保管容器83の壁面を通じて、保管容器83内部のスラッジS(図8では図示しない)に熱を与える。これにより、保管容器83の内部でスラッジSの乾燥が行われる。スラッジSに熱を与えた後の流体は、排出口12bを通じて使用済媒体として加熱部12の外部に排出される。
【0058】
保管容器83は、収容口84と、保管容器83の内部を気密に維持する弁85とを備える。収容口84には蒸気系統42が接続される。収容口84は、保管容器83から乾燥物Dを取り出す際にも使用される。弁85は、保管容器83に収容されたスラッジSの収容時及び乾燥時には開弁しているが、それ以外のときには閉弁している。
【0059】
このような乾燥装置80によれば、本体部81に収容した保管容器83の内部で、スラッジSの乾燥及び乾燥物Dの収容の双方を行うことができる。これにより、乾燥物Dの移送作業が不要となり、スラッジSの乾燥により生成した乾燥物Dの全量を保管容器83で保管できる。
【0060】
図7に戻って、処理システム600でのスラッジSの乾燥方法を説明する。はじめに、例えば上記の処理システム100での固液分離により生成したスラッジSが、保管容器83Aに収容される。保管容器83AへのスラッジSの収容は、例えば収容口84を通じて行うことができる。ただし、保管容器83Aに別途スラッジ収容口(図示しない)が形成されている場合には、当該スラッジ収容口を通じて行うこともできる。
【0061】
保管容器83Aの本体部81への収容後、本体部81において保管容器83AのスラッジSが乾燥される。乾燥は、弁85を開弁した状態で行われ、乾燥条件は、例えば上記乾燥装置10と同じにできる。スラッジSの乾燥により乾燥物Dが得られる。乾燥物Dを収容した保管容器83Bを図7に図示している。乾燥後には、弁85は閉弁される。
【0062】
弁85を閉弁した状態での蓋体82の取り外しにより、乾燥物Dを収容した保管容器83Bを本体部81から取り出すことができる。本体部81から取り出され、乾燥物Dを収容した保管容器83が、保管容器83Cとして図7に図示される。取り出された保管容器83Cは、図示しない保管設備で保管される。
【0063】
このような処理システム600によっても、乾燥物Dを収容した保管容器83を長期間安定して保管できる。
【符号の説明】
【0064】
10 乾燥装置(振動乾燥装置、ドラムドライヤ、回転加圧脱水装置、流動層脱水装置)
100 処理システム
101 原子力設備
101a 原子炉建屋
101b タービン建屋
101c 放射性廃棄物処理建屋
102 ポンプ
11 本体部
11a 取出口
12 加熱部
12a 供給口
12b 排出口
13 振動モータ
14 保管容器
14a 収容口
15 弁
16 弁
20 固液分離装置(沈降槽)
200 処理システム
21 攪拌翼
22 ポンプ
30 捕集装置
300 処理システム
31 凝縮器
32 冷水製造装置
33 凝縮水受槽
34 減圧装置
40 汚染水系統
400 処理システム
41 スラッジ系統
42 蒸気系統
43 凝縮水系統
44 ガス系統
45 戻り系統
46 汚染水系統
500 処理システム
51 凝集剤タンク
52 凝集剤供給装置
53 乾燥ガス供給装置
54 弁
55 三方弁
60 貯留槽
600 処理システム
61 固液分離装置(遠心分離装置)
62 送液ポンプ
63 排気系統
70 含水率測定装置(中性子水分計)
71 線量計
80 乾燥装置
81 本体部
82 蓋体
83,83A,83B,83C 保管容器
84 収容口
85 弁
D 乾燥物(放射性乾燥物)
L 汚染水
S スラッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8