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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】除湿装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20221122BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20221122BHJP
   C25B 1/02 20060101ALN20221122BHJP
   C25B 9/00 20210101ALN20221122BHJP
   C25B 15/00 20060101ALN20221122BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALN20221122BHJP
【FI】
B01D53/26 231
C01B3/56 Z
C25B1/02
C25B9/00 A
C25B15/00 302Z
H01M8/0656
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019087396
(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公開番号】P2020182894
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】越後 拓海
(72)【発明者】
【氏名】八巻 昌宏
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-029896(JP,A)
【文献】特開昭59-127625(JP,A)
【文献】特開昭55-108000(JP,A)
【文献】特開昭62-180720(JP,A)
【文献】特開2009-165956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26-53/28
C01B 3/00-6/34
H01M 8/04-8/0668
C25B 1/00-9/77;13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を吸着可能な吸着剤を収容し、湿潤ガス供給ラインから供給される湿潤ガスを一端から流入させ、該湿潤ガスを除湿した乾燥ガスを他端から流出させる第1除湿器および第2除湿器と、
前記第1除湿器へ前記湿潤ガスを供給して除湿した後、該湿潤ガスの供給先を前記第1除湿器から前記第2除湿器へ切り替えると共に、該第2除湿器から流出した前記乾燥ガスの一部を前記第1除湿器に収容された前記吸着剤を再生する再生ガスとして前記第1除湿器の他端から供給するライン切替機構と、
前記第1除湿器の一端から流出される、前記吸着剤の再生に使用した前記再生ガスを循環させて前記第1除湿器の他端へ供給する再生ガス循環ラインと、
を備える除湿装置。
【請求項2】
前記再生ガス循環ラインは、前記吸着剤の再生に使用した前記再生ガスを貯留する再生ガスタンクを含む請求項1に記載の除湿装置。
【請求項3】
前記再生ガス循環ラインは、
前記再生ガスタンクから供給される前記再生ガスを昇圧する昇圧部と、
前記昇圧部によって昇圧された前記再生ガスを冷却する熱交換器と、
前記熱交換器の下流側に配置され、前記再生ガス循環ラインの内部圧力を保持する圧力保持部と、
をさらに含む請求項2に記載の除湿装置。
【請求項4】
前記再生ガス循環ラインは、
前記熱交換器によって冷却された前記再生ガスを減圧する減圧部をさらに含む請求項3に記載の除湿装置。
【請求項5】
前記再生ガス循環ラインの内部圧力を検出する圧力計をさらに備え、
前記圧力計によって検出される前記再生ガス循環ラインの内部圧力が所定の基準圧力値以下の場合、前記乾燥ガスを前記再生ガス循環ラインへ補充する請求項1から4までのいずれか1項に記載の除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体に含まれる水分を除去する除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水電解槽で発生させた水素に含まれる水分を除去するための除湿装置が知られている。この種の除湿装置では、特許文献1に記載のように、水分を吸着可能な吸着剤を収容した除湿器を並列に複数配置し、水素の供給先を交互に切り替えて、1つの除湿器で水素を乾燥しつつ、別の除湿器で除湿性能が低下した吸着剤を加熱乾燥させて再生する。
【0003】
上述した吸着剤の再生には、吸着剤から放出される水分を同伴・除去するための再生ガスが使用される。この再生ガスとしては、除湿器の切り替え時におけるガス純度の低下を抑制するために、除湿後の乾燥水素(乾燥ガス)が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-249488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、吸着剤の再生に使用した再生ガスは大気へ放出される。そのため、再生ガスとして使用した分だけ乾燥水素が減少し、乾燥水素の生産効率が低下するという課題がある。
【0006】
本発明の一態様は、吸着剤の再生に伴う乾燥ガスの生産効率の低下を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る除湿装置は、水分を吸着可能な吸着剤を収容し、湿潤ガス供給ラインから供給される湿潤ガスを一端から流入させ、該湿潤ガスを除湿した乾燥ガスを他端から流出させる第1除湿器および第2除湿器と、前記第1除湿器に前記湿潤ガスを供給して除湿した後、該湿潤ガスの供給先を前記第1除湿器から前記第2除湿器へ切り替えると共に、該第2除湿器から流出した前記乾燥ガスの一部を前記第1除湿器に収容された前記吸着剤を再生する再生ガスとして前記第1除湿器の他端から供給するライン切替機構と、前記第1除湿器の一端から流出される、前記吸着剤の再生に使用した前記再生ガスを循環させて前記第1除湿器の他端へ供給する再生ガス循環ラインと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、吸着剤の再生に使用した再生ガスを大気へ放出することなく循環させて、吸着剤の再生に繰り返し利用することができる。したがって、吸着剤の再生に伴う乾燥ガスの生産効率の低下を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る除湿装置を備えた水素発生装置を示す概略図である。
図2】上記除湿装置が実施する吸着工程の動作例を示す概略図である。
図3】上記除湿装置が実施する加熱再生工程の初期運転時の動作例を示す概略図である。
図4】上記除湿装置が実施する加熱再生工程の通常運転時の動作例を示す概略図である。
図5】上記除湿装置が実施する冷却再生工程の動作例を示す概略図である。
図6】上記除湿装置が実施する昇圧工程の動作例を示す概略図である。
図7】上記除湿装置が実施する並列工程の動作例を示す概略図である。
図8】上記除湿装置が実施する切替工程の動作例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図1図8を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る除湿装置を備えた水素発生装置の一例について説明する。
【0011】
(水素発生装置の概要)
本実施形態に係る水素発生装置は、水電解槽で発生させた水素および酸素のうち水素を除湿装置へ供給して除湿することにより得られる乾燥水素を製品ガスとして製造する装置である。製造した乾燥水素は、燃料電池その他のエネルギー源等として利用される。本実施形態に係る水素発生装置は、後述するように、吸着剤の再生に使用した再生水素を大気へ放出することなく循環させて、吸着剤の再生に繰り返し利用することにより、吸着剤の再生に伴う乾燥水素の生産効率の低下を抑制する。
【0012】
(水素発生装置の構成)
図1は、本実施形態に係る水素発生装置1を示す概略図である。図1に示すように、水素発生装置1は、水電解槽2、純水タンク3、酸素気液分離器4、水素気液分離器5および除湿装置6を含む。
【0013】
水電解槽2は、太陽光、風力、水力または地熱等の再生可能エネルギーまたは商用電源等を用いて水を電気分解して水素と酸素とを発生させる。水電解槽2には、該水電解槽2に純水を供給するための純水タンク3が接続される。また、水電解槽2は、酸素気液分離器4と水素気液分離器5とに接続される。水の電気分解によって生じた酸素は、電気分解されずに残った水と共に気液混合水の状態で、水電解槽2から酸素気液分離器4へ供給される。一方、水の電気分解によって生じた水素は、電解反応により固体高分子膜を陰極側へ透過してくる水と共に気液混合水の状態で、水電解槽2から水素気液分離器5へ供給される。
【0014】
酸素気液分離器4は、水電解槽2から供給される酸素を含んだ気液混合水を、酸素と水とに気液分離する。気液分離後の水は純水タンク3に供給され、純水として再利用される。一方、気液分離後の酸素は大気へ放出される。
【0015】
水素気液分離器5は、水電解槽2から供給される水素を含んだ気液混合水を、水素と水とに気液分離する。気液分離後の水素は、水分を多く含んだ湿潤水素(湿潤ガス)である。そのため、気液分離後の湿潤水素は、湿潤水素供給ライン(湿潤ガス供給ライン)L1を介して除湿装置6へ供給され、水分が除去される。
【0016】
除湿装置6は、湿潤水素供給ラインL1から供給される湿潤水素を除湿して、乾燥水素(乾燥ガス)を生成する。除湿装置6は、第1除湿器61、第2除湿器62、再生水素タンク63、昇圧部64および熱交換器65を含む。
【0017】
第1除湿器61および第2除湿器62は、例えば、合成ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、活性アルミナ粒子等の水分を吸着可能な吸着剤を収容した吸着塔である。本実施形態では2台の除湿器を備えるが、除湿器の数は3台以上であってよい。
【0018】
第1除湿器61は、上流側(一端)から湿潤水素が供給され、該湿潤水素を除湿した乾燥水素を下流側(他端)から流出させる。また、第2除湿器62は、上流側(一端)から湿潤水素が供給され、該湿潤水素を除湿した乾燥水素を下流側(他端)から流出させる。
【0019】
第1除湿器61と第2除湿器62とは並列配置され、湿潤水素を交互に除湿する。即ち、除湿装置6は、湿潤水素供給ラインL1から供給される湿潤水素の供給先を、第1除湿器61と第2除湿器62とに切り替え可能になっている。本実施形態では、湿潤水素供給ラインL1からの湿潤水素は、第1自動弁XV61を経て、第1除湿器61の上流側へ供給される。一方、湿潤水素供給ラインL1からの湿潤水素は、第2自動弁XV62を経て、第2除湿器62の上流側へ供給される。
【0020】
第1除湿器61および第2除湿器62から流出した除湿後の乾燥水素は、乾燥水素供給ラインL2へ流入する。本実施形態では、第1除湿器61の下流側から流出した乾燥水素は、第1逆止弁CV61を経て、乾燥水素供給ラインL2へ流入する。一方、第2除湿器62の下流側から流出した乾燥水素は、第2逆止弁CV62を経て、乾燥水素供給ラインL2へ流入する。乾燥水素供給ラインL2に流入した乾燥水素は、製品ガスとして装置外部へ供給される。
【0021】
なお、第1除湿器61および第2除湿器62には、それぞれヒータ61a・62aが内蔵される。第1除湿器61および第2除湿器62は、これらのヒータ61a・62aによって水分を吸着した吸着剤を加熱することによって、吸着剤から水分を離脱させて該吸着剤を再生する。
【0022】
例えば、除湿装置6は、湿潤水素供給ラインL1からの湿潤水素を第1除湿器61に供給して除湿した後、第1除湿器61から第2除湿器62へ湿潤水素の供給先を切り替え、該第2除湿器62で湿潤水素の除湿を継続する。また、除湿装置6は、第2除湿器62で湿潤水素の除湿を継続しつつ、第1除湿器61に収容される吸着剤を再生する。
【0023】
具体的には、第1除湿器61に収容される吸着剤をヒータ61aによって加熱すると共に、第2除湿器62から流出した乾燥水素の一部を、上記吸着剤を再生するための再生ガス(以下、再生水素と称することがある。)として使用する。即ち、除湿装置6は、内蔵されたヒータ61aによって第1除湿器61の吸着剤を加熱しつつ、第1除湿器61の下流側から再生水素を導入して、吸着剤から離脱させた水分を再生水素に同伴させることで吸着剤を再生する。
【0024】
この再生水素は、乾燥水素供給ラインL2から分枝した再生水素補充ラインL3と、該再生水素補充ラインL3に接続された再生水素循環ライン(再生ガス循環ライン)L4とを介して、第1除湿器61または第2除湿器62へ供給される。
【0025】
再生水素補充ラインL3は、再生水素補充ラインL3を流れる乾燥水素の一部を、再生水素循環ラインL4へ流入させる。この再生水素補充ラインL3には、上流側から第1流量調整弁V61および再生水素補充弁V62が配置される。第1流量調整弁V61は、例えば手動の流量調整弁等から構成される。この第1流量調整弁V61を適度に絞ることにより、再生水素補充弁V62の上流側の圧力を穏やかに上昇させて、再生水素補充弁V62が開いた際の再生水素補充ラインL3の圧力変動を抑制することができる。また、再生水素補充弁V62の開閉を制御することにより、再生水素循環ラインL4への再生水素の供給/停止を切り替えることができる。
【0026】
再生水素循環ラインL4は、再生水素を循環させる流路である。再生水素循環ラインL4には、第1除湿器61と第2除湿器62とが並列接続される。また、再生水素循環ラインL4には、第1除湿器61および第2除湿器62の下流側に、再生水素タンク63、昇圧部64および熱交換器65が配置される。
【0027】
再生水素タンク63は、第1除湿器61または第2除湿器62から流出した、吸着剤の再生に使用した再生水素を貯留する。例えば、第1除湿器61から流出した再生水素は、第3自動弁XV63を経て再生水素タンク63へ流入する。一方、第2除湿器62から流出した再生水素は、第4自動弁XV64を経て再生水素タンク63へ流入する。この再生水素タンク63を配置することにより、昇圧部64による急激な圧力変動や流量変動等を回避することができると共に、適切なタイミングで昇圧部64によって再生水素を昇圧して、第1除湿器61または第2除湿器62へ供給することができる。
【0028】
また、天候等によって発電量が左右される不安定な再生可能エネルギーの水素への転換を目的とした場合においても、再生水素タンク63を設けることによって吸着剤の再生に必要な水素を貯蔵しておくことが可能となり、安定して吸着剤の再生を継続することができる。
【0029】
また、再生水素タンク63には、該再生水素タンク63の内部圧力を検出するための再生水素圧力計(圧力計)P61が配置される。この再生水素圧力計P61は、再生水素循環ラインL4のうち昇圧部64の上流側の内部圧力を検出可能であればよく、再生水素タンク63以外の位置に配置されてもよい。
【0030】
さらに、再生水素タンク63には、再生水素排気弁V64が配置されたラインが接続される。例えば、再生水素タンク62の内部圧力が異常に高くなった場合(例えば、0.15MPag以上)、再生水素排気弁V64が開いて再生水素タンク62の内部圧力が脱圧させる。
【0031】
昇圧部64は、再生水素タンク63から供給される再生水素を昇圧することによって、再生水素を循環させる。昇圧部64は、例えばコンプレッサ、ファン等で構成される。昇圧部64によって昇圧された再生水素は、熱交換器65へ供給される。昇圧部64によって昇圧された再生水素を熱交換器65へ供給することにより、熱交換器65において再生水素に含まれる水分を除去し易くなる。
【0032】
熱交換器65は、昇圧部64によって昇圧された再生水素を冷却して、再生水素に含まれる水分を除去する。これにより、第1除湿器61または第2除湿器62における除湿効果を高めることができる。熱交換器65は、例えば冷却水を用いて再生水素を冷却し、水素を含んだ凝縮水を外部へ排出する。
【0033】
この熱交換器65の下流側には、再生水素補充ラインL3の内部圧力を所定の圧力値に保持し、熱交換器65での凝縮水の生成を確実にするための背圧弁(圧力保持部)V65が配置される。第1除湿器61へ再生水素を供給する場合、熱交換器65を経て水分を除去された再生水素が、背圧弁V65、逆止弁V66、第2流量調整弁(減圧部)V63および第3逆止弁CV63を経て減圧された後、第1除湿器61へ供給される。一方、第2除湿器62へ乾燥水素を供給する場合、熱交換器65を経て水分を除去された再生水素が、背圧弁V65、逆止弁V66、第2流量調整弁V63および第4逆止弁CV64を経て減圧された後、第2除湿器62へ供給される。
【0034】
(除湿装置の動作例)
次に、図2図8を参照しつつ、除湿装置6の動作例を説明する。本実施形態に係る除湿装置6は、吸着工程、再生工程、冷却工程および塔切替工程を実施する。
【0035】
図2は、除湿装置6が実施する吸着工程の動作例を示す概略図である。図2では、第1除湿器61が除湿運転中であり、第2除湿器62が運転停止中である状態を示している。
【0036】
図2に示すように、吸着工程では、湿潤水素供給ラインL1を流れる湿潤水素A1が、第1除湿器61の上流側へ供給される。この吸着工程では、第1自動弁XV61が開き、第2自動弁XV62、第3自動弁XV63および第4自動弁XV64が閉じる。これにより、湿潤水素A1は、第1自動弁XV61を経て第1除湿器61の上流側へ流入する。第1除湿器61の上流側から流入した湿潤水素A1は、第1除湿器61に収容された吸着剤によって除湿される。除湿後の乾燥水素A2は、第1除湿器61の下流側から流出し、第1逆止弁CV61を経て乾燥水素供給ラインL2へ流入する。乾燥水素供給ラインL2へ流入した乾燥水素A2は、製品ガスとして装置外部へ供給される。
【0037】
次の再生工程では、除湿装置6は、第1除湿器61の吸着剤に十分に水分を吸着させた後、湿潤水素A1の供給先を第2除湿器62へ切り替える。そして、第2除湿器62で除湿工程を継続しつつ、第1除湿器61に収容された吸着剤を再生する再生工程を実施する。この再生工程は、加熱再生工程および冷却再生工程を含む。
【0038】
図3は、除湿装置6が実施する加熱再生工程の初期運転時の動作例を示す概略図である。図3では、第1除湿器61が加熱再生運転中であり、第2除湿器62が除湿運転中である状態を示している。
【0039】
図3に示すように、加熱再生工程では、湿潤水素A1が第2除湿器62の上流側へ供給されると共に、第2除湿器62の下流側から流出した乾燥水素A2の一部が再生水素A3として第1除湿器61の下流側へ供給されるようにラインを切り替える。このラインの切り替えは、第1自動弁XV61、第2自動弁XV62、第3自動弁XV63、第4自動弁XV64および再生水素補充弁V62の開閉を制御することにより行われる(ライン切替機構)。そして、第1除湿器61に内蔵されたヒータ61aをONにして第1除湿器61の吸着剤を加熱しつつ、第1除湿器61の下流側から供給された再生水素A3を流通させることにより、吸着剤を乾燥させる。
【0040】
具体的には、加熱再生工程では、第2自動弁XV62および第3自動弁XV63が開き、第1自動弁XV61および第4自動弁XV64が閉じる。これにより、湿潤水素A1は、第2自動弁XV62を経て第2除湿器62の上流側へ流入する。除湿後の乾燥水素A2は、第2除湿器62の下流側から流出し、第2逆止弁CV62を経て乾燥水素供給ラインL2へ流入する。
【0041】
また、第1除湿器61の加熱再生運転の開始時には、再生水素循環ラインL4に十分な再生水素A3が存在しない場合がある。そのため、加熱再生工程の初期には、再生水素補充弁V62が開く。これにより、乾燥水素供給ラインL2を流れる乾燥水素A2の一部が再生水素A3として、再生水素補充ラインL3を介して再生水素循環ラインL4へ供給される。例えば、除湿装置6は、再生水素循環ラインL4の内部圧力が低い場合、再生水素補充弁V62を開いて、再生水素A3(乾燥水素A2)を再生水素循環ラインL4へ供給する。より詳細には、除湿装置6は、再生水素圧力計P61によって検出される再生水素タンク63の内部圧力が所定の始動条件圧力値(例えば0.1MPag)未満の場合、再生水素補充弁V62が開き、再生水素A3を再生水素循環ラインL4へ供給する。再生水素循環ラインL4へ供給された再生水素A3は、第2流量調整弁V63および第3逆止弁CV63を経て、第1除湿器61の下流側へ流入する。
【0042】
このように、加熱再生工程初期では、再生水素補充ラインL3を介して再生水素循環ラインL4へ供給される再生水素A3が、第1除湿器61の下流側へ供給される。そして、内蔵されたヒータ61aによって第1除湿器61の吸着剤を150℃~200℃に加熱しつつ、吸着剤の水分を再生水素A3に同伴させる。これにより、吸着剤を乾燥させて、再生させる。
【0043】
吸着剤の水分を同伴させて湿潤状態となった再生水素A3は、第1除湿器61の上流側から流出する。第1除湿器61の上流側から流出した再生水素A3は、第3自動弁XV63を経て再生水素タンク63へ供給される。除湿装置6では、再生水素圧力計P61によって検出される再生水素タンク63の内部圧力が所定の始動条件圧力値以上になった場合、再生水素補充弁V62が閉じると共に、昇圧部64が稼働を開始する。
【0044】
図4は、除湿装置6が実施する加熱再生工程の通常運転時の動作例を示す概略図である。図4では、第1除湿器61が加熱再生運転中であり、第2除湿器62が除湿運転中である状態を示している。
【0045】
加熱再生工程において、再生水素タンク63の内部圧力が上記基準圧力値以上になった場合、図4に示すように、再生水素補充弁V62が閉じる。これにより、再生水素補充ラインL3を介した再生水素循環ラインL4への再生水素A3の供給が停止し、再生水素循環ラインL4は閉じた流路となる。また、昇圧部64が稼働を開始し、再生水素A3を昇圧する。昇圧部64によって昇圧された再生水素A3は、熱交換器65により冷却されて水分がある程度除去される。そして、熱交換器65によって水分がある程度除去された再生水素A3は、背圧弁V65、逆止弁V66、第2流量調整弁V63および第3逆止弁CV63を経て第1除湿器61の下流側へ再び供給され、吸着剤を再生する。熱交換器65により冷却されて水分がある程度除去された再生水素A3を第1除湿器61へ供給することにより、吸着剤の水分が再生水素A3に同伴し易くなる。そのため、吸着剤の再生効率を高めることができる。
【0046】
以降、第1除湿器61から流出した湿潤状態の再生水素A3は、再生水素循環ラインL4を循環し、その過程において昇圧、冷却(水分除去)および減圧された後、再び第1除湿器61へ供給され、吸着剤の再生に繰り返し使用される。
【0047】
続く冷却再生工程では、加熱再生工程により高温になった吸着剤を再生水素A3によって冷却する。図5は、除湿装置6が実施する冷却再生工程の動作例を示す概略図である。図5では、第1除湿器61が冷却再生運転中であり、第2除湿器62が除湿運転中である状態を示している。
【0048】
図5に示すように、冷却再生工程では、第1除湿器61に内蔵されたヒータ61aをOFFにして、第1除湿器61に再生水素A3を流通させ続ける。これにより、第1除湿器61の内部は、再生水素A3によって冷却される。
【0049】
このように、再生工程では、吸着剤の再生に使用した再生水素A3は、従来のように大気へ放出されることなく、吸着剤の再生に繰り返し利用される。したがって、吸着剤の再生に伴う乾燥水素A2の生産効率の低下を低減することができる。
【0050】
なお、熱交換器65から外部へ排出される凝縮水に水素が溶存している。そのため、再生水素循環ラインL4を流れる再生水素A3の量は徐々に減少していく。再生水素A3の流量が減少して再生水素循環ラインL4の内部圧力が低下した場合、再生のための水素流量が不足し再生工程の継続が困難となる。
【0051】
そこで、再生工程では、再生工程中の再生水素循環ラインL4の内部圧力を維持するために、再生水素補充ラインL3を介して再生水素A3を再生水素循環ラインL4へ適宜補充することが好ましい。例えば、再生水素圧力計P61によって検出される再生水素タンク63の内部圧力が所定の補充基準圧力値(例えば、大気圧:0MPag)以下になった場合、再生水素補充ラインL3を介して再生水素A3を再生水素循環ラインL4へ補充してもよい。具体的には、昇圧部64が稼働中であり、かつ、再生水素タンク63の内部圧力が大気圧以下の場合、再生水素補充弁V62が開く。また、再生水素タンク63の内部圧力が大気圧よりも少し高い圧力(例えば、0.05MPag)に達した場合、再生水素補充弁V62バルブを閉じる。これにより、再生水素A3を確保し、安定して再生工程を継続することが可能となる。
【0052】
また、上述した再生工程では、昇圧部64が異常を起こして稼働が停止した場合、再生水素補充弁V62および再生水素排気弁V64が開くことが好ましい。これにより、昇圧部64の稼働が停止した場合であっても、再生工程を継続することができる。
【0053】
次の塔切替工程では、再生工程を完了した第1除湿器61と、除湿工程を実施した第2除湿器62との運転を切り替える。この塔切替工程は、昇圧工程、並列工程および切替工程を含む。
【0054】
図6は、除湿装置6が実施する昇圧工程の動作例を示す概略図である。図6では、第1除湿器61が昇圧運転中、第2除湿器62が吸着運転中である状態を示している。
【0055】
図6に示すように、昇圧工程では、第2自動弁XV62が開き、第1自動弁XV61、第3自動弁XV63および第4自動弁XV64が閉じる。また、第3自動弁XV63が閉じているため、第1除湿器61の内部圧力が上昇し、第1除湿器61と第2除湿器62とを均圧にする。第1除湿器61と第2除湿器62とを均圧にすることにより、第1除湿器61の急激な加圧による吸着剤の流動を防止することができる。
【0056】
図7は、除湿装置6が実施する並列工程の動作例を示す概略図である。図7では、第1除湿器61および第2除湿器62が吸着運転中である状態を示している。並列工程では、第1除湿器61と第2除湿器62との双方を一時的に吸着運転させる。
【0057】
図7に示すように、並列工程では、第1自動弁XV61および第2自動弁XV62が開き、第3自動弁XV63および第4自動弁XV64が閉じる。これにより、湿潤水素A1が第1除湿器61および第2除湿器62へ供給される。
【0058】
図8は、除湿装置6が実施する切替工程の動作例を示す概略図である。図8では、第1除湿器61が吸着運転中であり、第2除湿器62が再生運転中である状態を示している。切替工程では、湿潤水素A1の供給先を第1除湿器61のみへ切り替える。
【0059】
図8に示すように、切替工程では、第1自動弁XV61および第4自動弁XV64が開き、第2自動弁XV62および第3自動弁XV63が閉じる。これにより、湿潤水素A1は、第1自動弁XV61を経て第1除湿器61の上流側へ流入する。除湿後の乾燥水素A2は、第1除湿器61の下流側から流出し、第1逆止弁CV61を経て乾燥水素供給ラインL2へ流入する。
【0060】
また、再生水素循環ラインL4を流れる再生水素A3は、第2除湿器62の下流側へ流入し、第2除湿器62において上述した再生工程が実施される。
【0061】
なお、本実施形態では、水電解槽で発生させた水素および酸素のうち水素を除湿装置へ供給して除湿する構成について説明した。しかし、除湿装置によって除湿する湿潤ガス(被処理ガス)の種類は水素に限定されない。湿潤ガスは、水分を含むものであればよく、酸素その他のガス(気体)であってよい。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
(まとめ)
本発明の態様1に係る除湿装置は、水分を吸着可能な吸着剤を収容し、湿潤ガス供給ラインから供給される湿潤ガスを一端から流入させ、該湿潤ガスを除湿した乾燥ガスを他端から流出させる第1除湿器および第2除湿器と、前記第1除湿器へ前記湿潤ガスを供給して除湿した後、該湿潤ガスの供給先を前記第1除湿器から前記第2除湿器へ切り替えると共に、該第2除湿器から流出した前記乾燥ガスの一部を前記第1除湿器に収容された前記吸着剤を再生する再生ガスとして前記第1除湿器の他端から供給するライン切替機構と、前記第1除湿器の一端から流出される、前記吸着剤の再生に使用した前記再生ガスを循環させて前記第1除湿器の他端へ供給する再生ガス循環ラインと、を備える。
【0064】
上記の構成によれば、第1除湿器の一端から流出した吸着剤の再生に使用した再生ガスは、再生ガス循環ラインを循環して、第1除湿器の他端へ再び流入する。そのため、吸着剤の再生に使用した再生ガスを、従来のように大気へ放出することなく、吸着剤の再生に繰り返し利用することができる。したがって、吸着剤の再生に伴う乾燥ガスの生産効率の低下を抑制することができる。
【0065】
また、本発明の態様2に係る除湿装置は、前記態様1において、前記再生ガス循環ラインは、前記吸着剤の再生に使用した前記再生ガスを貯留する再生ガスタンクをさらに含む。
【0066】
上記の構成によれば、吸着剤の再生に使用した再生ガスが再生ガスタンクに貯留されるため、適切なタイミングで昇圧部によって再生ガスを昇圧して、第1除湿器へ供給することができる。
【0067】
また、近年、太陽光等の再生可能エネルギーを用いて水を電気分解し、再生可能エネルギーを水素へ転換して貯蔵する方法等が注目されている。しかしながら、再生可能エネルギーは天候等に左右され不安定であるため、吸着剤の再生に必要な再生ガスを安定して供給できないといった課題がある。上記の構成によれば、このような不安定な再生可能エネルギーの水素への転換を目的とした場合においても、再生ガスタンクを設けることによって吸着剤の再生に必要な水素を貯蔵しておくことが可能となり、安定して吸着剤の再生を継続することができる。
【0068】
また、本発明の態様3に係る除湿装置は、前記態様2において、前記再生ガス循環ラインは、前記再生ガスタンクから供給される前記再生ガスを昇圧する昇圧部と、前記昇圧部によって昇圧された前記再生ガスを冷却する熱交換器と、前記熱交換器の下流側に配置され、前記再生ガス循環ラインの内部圧力を保持する圧力保持部と、をさらに含む。
【0069】
上記の構成によれば、吸着剤の再生に使用した再生ガスは、昇圧部によって昇圧された後、熱交換器によって冷却される。これにより、吸着剤の再生に使用した再生ガスに含まれる水分を効果的に除去して、再生ガスとして利用することができる。また、圧力保持部によって圧力を保持することによって、熱交換器において凝縮水を確実に生成することができるため、吸着剤の再生効率を高めて再生時間を短縮化することできる。
【0070】
本発明の態様4に係る除湿装置は、前記態様3において、前記再生ガス循環ラインは、前記熱交換器によって冷却された前記再生ガスを減圧する減圧部をさらに含む。
【0071】
上記の構成によれば、減圧部によって減圧した再生ガスを第1除湿器へ供給することにより、吸着剤の水分が再生ガスに同伴し易くなる。したがって、吸着剤の再生効率を高めることができる。
【0072】
本発明の態様5に係る除湿装置は、前記態様1から4において、前記再生ガス循環ラインの内部圧力を検出する圧力計をさらに備え、前記圧力計によって検出される前記再生ガス循環ラインの内部圧力が所定の基準圧力値以下の場合、前記乾燥ガスを前記再生ガス循環ラインへ補充する。
【0073】
再生ガス循環ラインを流れる再生ガスの量が減少し、再生ガス循環ラインの内部圧力が低下した場合、除湿装置の除湿能力が低下する場合がある。上記の構成によれば、再生ガス循環ラインの内部圧力が所定の基準圧力値以下の場合、乾燥ガスを再生ガス循環ラインへ補充するため、上述した除湿装置の除湿能力の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0074】
1:水素発生装置
2:水電解槽
6:除湿装置
61:第1除湿器
62:第2除湿器
63:再生水素タンク(再生ガスタンク)
64:昇圧部
A1:湿潤水素(湿潤ガス)
A2:乾燥水素(乾燥ガス)
A3:再生水素(再生ガス)
L1:湿潤水素供給ライン(湿潤ガス供給ライン)
L4:再生水素循環ライン(再生ガス循環ライン)
P61:再生水素圧力計(圧力計)
V63:第2流量調整弁(減圧部)
V65:背圧弁(圧力保持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8