IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】積層造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20221122BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221122BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20221122BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20221122BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20221122BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20221122BHJP
   B23K 9/032 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B23K9/04 Z
B33Y10/00
B33Y80/00
B22F3/105
B22F3/16
B22F7/04 Z
B23K9/04 G
B23K9/032 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019097003
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020189322
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
【審査官】梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104059(JP,A)
【文献】特開平05-134067(JP,A)
【文献】特開2017-071154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236604(US,A1)
【文献】特開2000-084665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00
B23K 26/00
B33Y 10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層させて造形物を製造する積層造形物の製造方法であって、
前記溶着ビードを層状に積層させる際に、中空形状の補助部材を前記溶着ビード内に埋め込む工程を有し、
前記工程では、
前記補助部材を母材とし、前記補助部材の周囲に前記溶着ビードを積層させ、前記補助部材の周囲を前記溶着ビードからなる積層部で覆う
積層造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形物の製造方法及び積層造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段としての3Dプリンタのニーズが高まっており、特に金属材料への適用については航空機業界等で実用化に向けて研究開発が行われている。金属材料を用いた3Dプリンタは、レーザやアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させて造形物を造形する。
【0003】
このような造形物を造形する技術として、溶加材を供給する溶接トーチを移動させることで、溶融金属を積層させて造形物を造形する溶接技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、熱間圧延設備において、鋼を素材とする中実または中空の母材を耐火性加熱型に通し、母材の周囲の隙間に溶湯を流し込んで母材の外周に肉盛層を形成することも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-15363号公報
【文献】特許第2848646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内部に空洞を有する造形物を造形する場合、後工程で空洞を切削等によって形成するのは困難である。このため、特許文献1に記載の溶接技術を用い、空洞を有する造形物を、溶着ビードを積層させて造形することが考えられる。しかし、空洞を有する造形物を積層造形によって製造する場合、溶着ビードに垂れや変形が生じてしまい、精度良く空洞を形成することが困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載の方式によって、例えば、中空の管の周りに肉盛層を形成することも考えられるが、様々な外形状の造形物を造形することが困難である。
【0008】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、空洞を有する造形物を、溶着ビードを積層して容易に製造することが可能な積層造形物の製造方法提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記構成からなる。
加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層させて造形物を製造する積層造形物の製造方法であって、
前記溶着ビードを層状に積層させる際に、中空形状の補助部材を前記溶着ビード内に埋め込む工程を有し、
前記工程では、
前記補助部材を母材とし、前記補助部材の周囲に前記溶着ビードを積層させ、前記補助部材の周囲を前記溶着ビードからなる積層部で覆う
積層造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空洞を有する造形物を、溶着ビードを積層して容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の製造方法で製造する積層造形物の概略斜視図である。
図2】本発明の製造方法で製造する積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図3】積層造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
図4A】積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図4B】積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図4C】積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図4D】積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図4E】積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図5A】他の実施形態に係る積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図5B】他の実施形態に係る積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
図5C】他の実施形態に係る積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の製造方法で製造する積層造形物の概略斜視図である。図2は本発明の製造方法で製造する積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本発明に係る製造方法によって製造する積層造形物Wは、複数の溶着ビード53を積層させて構成されている。積層造形物Wは、板状の母材51の上部に形成されている。
【0014】
この積層造形物Wには、補助部材55が埋め込まれている。補助部材55は、中空の筒状に形成されている。本例では、補助部材55として、断面円環状に形成されたパイプ材を用いた場合を例示する。この補助部材55は、例えば、鋼や銅などの金属、カーボンあるいはセラミックなどから形成されている。
【0015】
積層造形物Wは、中空の補助部材55が埋め込まれることによって長手方向に沿って空洞部Cを有している。この空洞部Cは、例えば、流体が通される流路等として用いられる。具体的には、この積層造形物Wを、例えば、ミキサーやポンプなどのロータとして用いる際に、空洞部Cに冷却水などの冷却媒体が流される。そして、この冷却媒体が空洞部Cへ流れることで、積層造形物Wが冷却される。なお、空洞部Cを冷却媒体用の流路として用いる場合、熱伝導性に優れた銅製の補助部材55を用いるのが好ましい。積層造形物Wは、溶着ビード53の積層による成形後に、外周等を切削加工することで、製品形状とされる。また、母材51は、必要に応じて切り離されて除去される。
【0016】
次に、上記の積層造形物Wを製造する製造システムについて説明する。
図3は積層造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
【0017】
図3に示すように、本構成の製造システム100は、積層造形装置11と、切削装置12と、積層造形装置11及び切削装置12を統括制御するコントローラ15と、を備える。
【0018】
積層造形装置11は、先端軸にトーチ17を有する溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部21とを有する。トーチ17は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。
【0019】
溶接ロボット19は、多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ17は、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0020】
トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。本構成で用いられるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物Wに応じて適宜選定される。
【0021】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ17は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、トーチ17を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、母材51上に溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶着ビード53が形成される。
【0022】
なお、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビームやレーザにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビード53の状態をより適正に維持して、積層造形物Wの更なる品質向上に寄与できる。
【0023】
溶加材Mは、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0024】
切削装置12は、切削ロボット41を備えている。切削ロボット41は、溶接ロボット19と同様に、多関節ロボットであり、先端アーム43の先端部に、例えば、エンドミルや研削砥石などの金属加工工具45を備える。これにより、切削ロボット41は、コントローラ15により、その加工姿勢が任意の姿勢を取り得るように、3次元的に移動可能となっている。
【0025】
切削ロボット41は、積層造形装置11の溶接ロボット19によって母材51に溶着ビード53を積層した積層造形物Wを金属加工工具45で切削して加工する。
【0026】
コントローラ15は、CAD/CAM部31と、軌道演算部33と、記憶部35と、これらが接続される制御部37と、を有する。
【0027】
CAD/CAM部31は、作製しようとする積層造形物Wの形状データを作成した後、複数の層に分割して各層の形状を表す層形状データを生成する。軌道演算部33は、生成された層形状データに基づいてトーチ17の移動軌跡を求める。また、軌道演算部33は、形状データに基づいて、金属加工工具45の移動軌跡を求める。記憶部35は、積層造形物Wの形状データ、生成された層形状データ、トーチ17の移動軌跡及び金属加工工具45の移動軌跡等のデータを記憶する。
【0028】
制御部37は、記憶部35に記憶された層形状データやトーチ17の移動軌跡に基づく駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19を駆動する。つまり、溶接ロボット19は、コントローラ15からの指令により、軌道演算部33で生成したトーチ17の移動軌跡に基づき、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ17を移動する。また、制御部37は、記憶部35に記憶された形状データや金属加工工具45の移動軌跡に基づく駆動プログラムを実行して、切削ロボット41を駆動する。これにより、切削ロボット41の先端アーム43に設けられた金属加工工具45によって積層造形物Wに対して切削加工を行う。
【0029】
上記構成の製造システム100は、設定された層形状データから生成されるトーチ17の移動軌跡に沿って、トーチ17を溶接ロボット19の駆動により移動させ、溶融した溶加材Mからなる溶着ビード53をトーチ17によって母材51上に積層させる。これにより、母材51上に溶着ビード53が積層された積層造形物Wを製造する。この積層造形物Wは、造形後に切削加工を施すことで設計された外形に形成される。
【0030】
次に、本発明の積層造形物の製造方法について説明する。
図4A図4Eは積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
【0031】
(積層部造形工程)
製造システム100に、母材51をセットする。次いで、設定された層形状データから生成されるトーチ17の移動軌跡に沿って、積層造形装置11のトーチ17を溶接ロボット19の駆動により移動させながら、溶加材Mを溶融させ、図4Aに示すように、溶融した溶加材Mを母材51上に供給する。これにより、図4Bに示すように、母材51の表面に溶着ビード53を層状に積層させて積層部57を造形する。そして、母材51上に造形した積層部57が、補助部材55の配設範囲を超えたら溶着ビード53の積層を一旦停止する。
【0032】
(設置部加工工程)
切削ロボット41を駆動させ、金属加工工具45によって積層部57における補助部材55の設置箇所(図4Bにおける二点鎖線部分)を切削する。これにより、図4Cに示すように、積層部57に、補助部材55が設置される設置部59を形成する。本例では、中空の筒状に形成された補助部材55を設置するため、断面視で円弧状に凹んだ溝部からなる設置部59を溶着ビード53の形成方向に沿って形成する。
【0033】
(補助部材設置工程)
図4Dに示すように、積層部57に形成した設置部59に補助部材55を載置する。すると、補助部材55は、その下方側の外周面が積層部57に形成された設置部59に嵌り込む。これにより、積層部57に対して補助部材55の中空部分からなる空洞部Cが設定した位置に配置される。
【0034】
(再造形工程)
図4Eに示すように、補助部材55を設置した積層部57に対して、トーチ17を移動させながら、溶加材Mを溶融させて溶着ビード53を積層させる。これにより、補助部材55が溶着ビード53に埋め込まれ、この補助部材55によって空洞部Cが形成された積層造形物Wを造形する(図1,2参照)。
【0035】
その後、必要に応じて積層造形物Wの外周等を切削ロボット41によって切削し、最終製品形状に形成する。なお、必要に応じて母材51を切り離して除去する。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る積層造形物Wの製造方法によれば、溶着ビード53を層状に積層させる際に、中空形状の補助部材55を溶着ビード53に埋め込む。具体的には、母材51上に溶着ビード53を積層させて積層部57を造形し、積層部57上に補助部材55を設置し、その後、補助部材55を設置した積層部57に溶着ビード53を積層させる。これにより、補助部材55の中空部分が空洞部Cとされ、この空洞部Cを、例えば、冷却媒体を流す流路等として用いることが可能な積層造形物Wを低コストで容易に製造することができる。また、中空形状の補助部材55を用いるので、空洞を溶着ビードで形成する場合と比べ、高精度な形状の空洞部Cを有する高品質な積層造形物Wを製造することができる。また、溶着ビード53を積層させて造形するので、空洞部Cを有する様々な外形形状の積層造形物Wを製造することができる。また、空洞部Cを形成するために補助部材55を用いることで、空洞部Cの周りに積層する溶着ビード53の数を補助部材55の分だけ削減でき、製造にかかるコスト及び時間を節約できる。
【0037】
しかも、補助部材55の外周面に対応する形状の設置部59を積層部57に形成し、この設置部59に補助部材55を設置させるので、補助部材55を予め設定した位置へ高精度に位置決めして埋め込むことができる。これにより、補助部材55の中空部分からなる空洞部Cが目的の位置に高精度に形成された高品質な積層造形物Wを製造することができる。
【0038】
そして、上記の製造方法で製造された積層造形物Wによれば、パイプ形状の補助部材55によって形成された空洞部Cを、例えば、冷却媒体を流す流路として用いることができる。
【0039】
次に、積層造形物の製造方法の他の実施形態例を説明する。
図5A図5Cは、他の実施形態に係る積層造形物の製造工程を示す製造途中の積層造形物の幅方向に沿う概略断面図である。
【0040】
中空円筒状の鋼製や銅製のパイプ材からなる補助部材55を用意し、この補助部材55を、軸方向を水平に配置させて回転可能に支持させる。
【0041】
図5Aに示すように、補助部材55を母材とし、この補助部材55の外周面における上部に、トーチ17によって溶融した溶加材Mを供給する。これにより、補助部材55の外周面の一部に、溶着ビード53を層状に積層させて積層部57を造形する。
【0042】
積層部57が上方位置から外れた位置に配置されるように、補助部材55を、一方向(図5Aにおける矢印R方向)へ約120度回転させる。そして、図5Bに示すように、この補助部材55の外周面における上部に、トーチ17によって溶融した溶加材Mを供給する。これにより、補助部材55の外周面の一部に、溶着ビード53を層状に積層させて積層部57を造形する。
【0043】
積層部57が上方位置から外れた位置に配置されるように、補助部材55を再び一方向(図5Bにおける矢印R方向)へ約120度回転させる。そして、図5Cに示すように、この補助部材55の外周面における上部に、トーチ17によって溶融した溶加材Mを供給する。これにより、補助部材55の外周面の一部に、溶着ビード53を層状に積層させて積層部57を造形する。
【0044】
このようにすると、補助部材55の外周が溶着ビード53を積層してなる積層部57で覆われ、補助部材55によって空洞部Cが形成された積層造形物Wが造形される。その後、必要に応じて積層造形物Wの外周等を切削ロボット41によって切削し、最終製品形状に形成する。
【0045】
この他の実施形態に係る積層造形物の製造方法によれば、補助部材55を母材とし、補助部材55の周囲に溶着ビード53を積層させ、補助部材55の周囲を溶着ビード53からなる積層部57で覆う。これにより、補助部材55の中空部分が空洞部Cとされた積層造形物Wを容易に製造することができる。また、補助部材55を母材とするので、別個の母材を不要にでき、製造コストを削減できる。
【0046】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、中空円筒状の補助部材55を用いた場合を例示したが、補助部材55としては、必要な空洞部Cの大きさや形状等に応じて様々な大きさや形状を有するものを用いるのは勿論である。
【0048】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層させて造形物を製造する積層造形物の製造方法であって、
前記溶着ビードを層状に積層させる際に、中空形状の補助部材を前記溶着ビード内に埋め込む
積層造形物の製造方法。
上記(1)の構成の積層造形物の製造方法によれば、溶着ビードを層状に積層させる際に、中空形状の補助部材を溶着ビードに埋め込む。これにより、補助部材の中空部分が空洞部とされ、この空洞部を、例えば、冷却媒体を流す流路等として用いることが可能な積層造形物を低コストで容易に製造することができる。また、中空形状の補助部材を用いるので、空洞を溶着ビードで形成する場合と比べ、高精度な形状の空洞部を有する高品質な積層造形物を製造することができる。また、溶着ビードを積層させて造形するので、空洞部を有する様々な外形形状の積層造形物を製造することができる。また、空洞部を形成するために補助部材を用いることで、空洞部周りに積層する溶着ビード数を補助部材の分だけ削減でき、製造にかかるコスト及び時間を節約できる。
【0049】
(2) 母材上に前記溶着ビードを積層させて積層部を造形する造形工程と、
前記積層部上に前記補助部材を設置する設置工程と、
前記補助部材を設置した前記積層部に前記溶着ビードを積層させる再造形工程と、
を含む(1)に記載の積層造形物の製造方法。
上記(2)の構成の積層造形物の製造方法によれば、母材上に溶着ビードを積層させて積層部を造形し、積層部上に補助部材を設置し、その後、補助部材を設置した積層部に溶着ビードを積層させる。これにより、補助部材の中空部分が空洞部とされた積層造形物を容易に製造することができる。
【0050】
(3) 前記積層部に、前記補助部材の外周面に対応する形状の設置部を形成する加工工程を含み、
前記設置工程において、前記積層部に形成した前記設置部に前記補助部材を設置させる(2)に記載の積層造形物の製造方法。
上記(3)の構成の積層造形物の製造方法によれば、補助部材の外周面に対応する形状の設置部を積層部に形成し、この設置部に補助部材を設置させる。これにより、補助部材を予め設定した位置へ高精度に位置決めして埋め込むことができ、補助部材の中空部分からなる空洞部が目的の位置に高精度に形成された高品質な積層造形物を製造することができる。
【0051】
(4) 前記補助部材を母材とし、前記補助部材の周囲に前記溶着ビードを積層させ、前記補助部材の周囲を前記溶着ビードからなる積層部で覆う(1)に記載の積層造形物の製造方法。
上記(4)の構成の積層造形物の製造方法によれば、補助部材を母材とし、補助部材の周囲に溶着ビードを積層させ、補助部材の周囲を溶着ビードからなる積層部で覆う。これにより、補助部材の中空部分が空洞部とされた積層造形物を容易に製造することができる。また、補助部材を母材とするので、別個の母材を不要にでき、製造コストを削減できる。
【0052】
(5) 空洞部を有する積層造形物であって、
前記空洞部を形成する中空形状の補助部材と、
前記補助部材の周囲に層状に積層されて前記補助部材と一体となった溶着ビードと、
からなる積層造形物。
上記(5)の構成の積層造形物によれば、中空形状の補助部材によって形成された空洞部を、例えば、冷却媒体を流す流路として用いることができる。また、溶着ビードを層状に積層させる際に中空形状の補助部材を埋め込むことで、容易に製造することができる。
【0053】
(6) 前記補助部材は、断面が環状に形成されたパイプ形状とされている(5)に記載の積層造形物。
上記(6)の構成の積層造形物によれば、パイプ形状の補助部材によって形成された空洞部を、例えば、冷却媒体を流す流路として用いることができる。また、溶着ビードを層状に積層させる際にパイプ形状の補助部材を埋め込むことで、容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0054】
51 母材
53 溶着ビード
55 補助部材
57 積層部
59 設置部
C 空洞部
M 溶加材
W 積層造形物
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C