IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

特許7181156基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法
<>
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図1
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図2
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図3
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図4
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図5
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図6
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図7
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図8
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図9
  • 特許-基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20221122BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 27/11582 20170101ALI20221122BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/304 642A
H01L21/304 648F
H01L21/304 648G
H01L21/304 647Z
H01L21/306 E
H01L27/11582
H01L29/78 371
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019103046
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020198352
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 敬次
(72)【発明者】
【氏名】森田 明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】枝光 建治
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 真治
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-115079(JP,A)
【文献】特開2017-69331(JP,A)
【文献】特開平6-69179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
H01L 27/11582
H01L 21/336
H01L 29/788
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液で基板に対して処理を行う基板処理装置において、
前記処理液を貯留し、該処理液に浸漬させて前記基板に対して前記処理を行う処理槽と、
前記処理槽から溢れた前記処理液を回収するオーバーフロー槽と、
前記オーバーフロー槽と前記処理槽とを連通接続する循環配管と、
前記循環配管に設けられ、前記処理液を循環させるポンプと、
前記循環配管に設けられ、前記処理液を処理温度に温調するインラインヒータと、
前記循環配管に設けられ、前記処理液中の異物を除去するフィルタと、
前記インラインヒータ及び前記フィルタの上流側において前記循環配管から分岐して、前記インラインヒータ及び前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続される第1バイパス配管と、
前記第1バイパス配管を開閉する第1開閉弁と、
前記第1開閉弁の開閉を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整する制御部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記フィルタの上流側において前記循環配管から分岐して、前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続される第2バイパス配管と、
前記第2バイパス配管を開閉する第2開閉弁と、
を備え、
前記制御部は、前記第1開閉弁及び第2開閉弁の開閉を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1バイパス配管は、前記インラインヒータを迂回して前記循環配管と並列に接続されるヒータバイパス配管と、前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続されるフィルタバイパス配管とを含み、
前記第1開閉弁は、前記ヒータバイパス配管を開閉するヒータバイパス開閉弁と、前記フィルタバイパス配管を開閉するフィルタバイパス開閉弁とを含み、
前記制御部は、前記ヒータバイパス開閉弁及び前記フィルタバイパス開閉弁の開閉を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記処理による前記処理液中の特定の成分の濃度に応じて、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記循環配管を流通する処理液における特定の成分の濃度を検知する濃度検知部を備え、
前記制御部は、前記濃度検知部により検知された前記濃度に基づいて、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記特定の成分は、シリコンであることを特徴とする請求項4又は5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板は、3次元NAND半導体素子を形成する基板であり、
前記処理は、前記基板に含まれる窒化シリコン膜を、前記処理液としてリン酸を含むエッチング液によってエッチングする処理であることを特徴とする請求項1ないし6のいず
れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理装置を備える基板処理システム。
【請求項9】
処理槽に貯留された処理液に基板を浸漬させて処理を行う基板処理方法であって、
前記処理槽に連通接続される循環配管を介して、前記処理液を循環させるステップと、
前記処理液を処理温度に温調するインラインヒータ及び前記処理液中の異物を除去するフィルタの上流側において前記循環配管から分岐して、前記インラインヒータ及び前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続される第1バイパス配管を開閉する第1開閉弁を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整するステップと、
を含むことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ、液晶ディスプレイ用基板、プラズマディスプレイ用基板、有機EL用基板、FED(Field Emission Display)、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板(以下、単に「基板」と称する)に対して、処理液によって処理を行う基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸を含む処理液によりエッチングを行う場合に、処理液中のシリコン濃度が高くなると、処理液のエッチング能力が低下したり、シリコンが再析出して基板に付着したりすることがあった。このため、特許文献1,2及び3に記載されているように、処理槽と、オーバーフロー槽と、循環配管と、ポンプと、インラインヒータと、フィルタと、排出流路とを備える基板処理装置において、循環配管のフィルタとインラインヒータとの間から分岐させた排出流路等を通じて処理液を排出し、処理液中のシリコン濃度を一定範囲内に保持する技術が提案されている。
【0003】
また、処理液の置換速度を高めるために、処理槽内において基板に対してバブリングを行う技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-148245号公報
【文献】特開2018-152622号公報
【文献】特開2018-157235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、3次元NAND半導体素子の製造工程においては、処理対象である基板が、その厚み方向に3次元構造を有する。このため、基板中の窒化シリコン(SiN)膜をエッチングする工程では、エッチング速度が速く、構造内の処理液の置換速度が追い付かず、エッチングされた成分が構造内で析出する可能性がある。
【0006】
そこで、開示の技術の1つの側面は、処理の進行に応じて処理液の循環流量を調整可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような基板処理装置によって例示される。
すなわち、本基板処理装置は、
処理液で基板に対して処理を行う基板処理装置において、
前記処理液を貯留し、該処理液に浸漬させて前記基板に対して前記処理を行う処理槽と、
前記処理槽から溢れた前記処理液を回収するオーバーフロー槽と、
前記オーバーフロー槽と前記処理槽とを連通接続する循環配管と、
前記循環配管に設けられ、前記処理液を循環させるポンプと、
前記循環配管に設けられ、前記処理液を処理温度に温調するインラインヒータと、
前記循環配管に設けられ、前記処理液中の異物を除去するフィルタと、
前記インラインヒータ及び前記フィルタの上流側において前記循環配管から分岐して、
前記インラインヒータ及び前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続される第1バイパス配管と、
前記第1バイパス配管を開閉する第1開閉弁と、
前記第1開閉弁の開閉を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整する制御部と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置である。
【0008】
このような発明は、処理槽を介して循環する処理液が流通する循環配管に対して、インラインヒータ及びフィルタを迂回して循環配管と並列に接続される第1バイパス配管と、第1バイパス配管を開閉する第1開閉弁と、第1開閉弁の開閉を制御する制御部を備えている。このため、制御部によって第1開閉弁を開放し、第1バイパス配管に処理液を流通させることにより、圧力損失を生じるインラインヒータ及びフィルタを含む循環配管の流路と、これらの要素を迂回した第1バイパス配管の流路とが形成される。このため、処理液の温調というインラインヒータの機能や、処理液からの異物の除去というフィルタの機能を維持しつつ、第1バイパス配管を介しても処理液を循環させることにより、処理槽を流通する処理液の流量を増加させることができる。また、制御部によって第1開閉弁を閉止し、処理液の流路はインラインヒータ及びフィルタを含む循環流路のみとすることにより、処理槽を流通する処理液の流量を減少させることができる。従って、処理の進行に応じて、制御部によって第1開閉弁の開閉を制御することにより、処理槽を流通する処理液の流量を調整することができる。
【0009】
本発明においては、
前記フィルタの上流側において前記循環配管から分岐して、前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続される第2バイパス配管と、
前記第2バイパス配管を開閉する第2開閉弁と、
を備え、
前記制御部は、前記第1開閉弁及び第2開閉弁の開閉を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整するようにしてもよい。
【0010】
このように本発明は、インラインヒータ及びフィルタを含む循環配管に対して、フィルタのみを迂回して循環配管と並列に接続される第2バイパス配管と、第2バイパス配管を開閉する第2開閉弁と、第2開閉弁の開閉を制御する制御部を、さらに備える。このため、このため、制御部によって第2開閉弁を開放し、第2バイパス配管に処理液を流通させることにより、インラインヒータ及びフィルタを含む循環配管の流路と、フィルタのみを迂回した第2バイパス配管の流路とが形成される。このため、処理液からの異物の除去というフィルタの機能を維持しつつ、第2バイパス配管を介しても処理液を循環させることにより、処理槽を流通する処理液の流量をさらに増加させることができる。また、制御部によって第2開閉弁を閉止することにより、処理槽を流通する処理液の流量を減少させることができる。従って、処理の進行に応じて、制御部によって第2開閉弁の開閉を制御することにより、処理槽を流通する処理液の流量を、より的確に調整することができる。
例えば、処理液の温度が低いために処理液の粘度が高く、フィルタでの圧力損失が大きくなる場合には、第2開閉弁を開放し、フィルタを迂回する第2バイパス配管にも処理液を流通させることにより、インラインヒータによる処理液の温調を行いつつ、処理槽を流通する処理液の流量を増加させることができ、温調に要する時間を短縮することができる。
【0011】
さらに、本発明においては、
前記第1バイパス配管は、前記インラインヒータを迂回して前記循環配管と並列に接続されるヒータバイパス配管と、前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続されるフィルタバイパス配管とを含み、
前記第1開閉弁は、前記ヒータバイパス配管を開閉するヒータバイパス開閉弁と、前記フィルタバイパス配管を開閉するフィルタバイパス開閉弁とを含み、
前記制御部は、前記ヒータバイパス開閉弁及び前記フィルタバイパス開閉弁の開閉を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整するようにしてもよい。
【0012】
このように本発明においては、第1バイパス配管が、インラインヒータを迂回して循環配管と並列に接続されるヒータバイパス配管と、フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続されるフィルタバイパス配管とを含む。そして、第1開閉弁が、ヒータバイパス配管を開閉するヒータバイパス開閉弁と、フィルタバイパス配管を開閉するフィルタバイパス開閉弁とを含み、制御部が、ヒータバイパス開閉弁及びフィルタバイパス開閉弁の開閉を制御する。このため、圧力損失を生じるインラインヒータ及びフィルタを迂回する第1バイパス配管の流路を、ヒータバイパス配管とフィルタバイパス配管とで、それぞれを独立して開閉することができる。すなわち、インラインヒータ及びフィルタの両者を迂回する流路、インラインヒータのみを迂回する流路、フィルタのみを迂回する流路を、インラインヒータ及びフィルタを含む循環配管に並列に形成することができる。従って、制御部によって、処理の進行に応じて、処理槽を流通する処理液の流量を、より的確に調整することができる。
【0013】
また、本発明においては、
前記制御部は、前記処理による前記処理液中の特定の成分の濃度に応じて、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を制御するようにしてもよい。
【0014】
このように、本発明によれば、処理により処理液中の特定の成分の濃度が高くなる場合には、制御部は、処理槽を流通する処理液の流量が増加するように制御することにより、処理液の置換速度が速くすることができるので、処理液中で特定の濃度が高くなることを抑制することができる。
【0015】
また、本発明においては、
前記循環配管を流通する処理液における特定の成分の濃度を検知する濃度検知部を備え、
前記制御部は、前記濃度検知部により検知された前記濃度に基づいて、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整するようにしてもよい。
【0016】
このように、本発明によれば、濃度検知部によって処理液中の特定の成分の濃度を検知することができるので、制御部は、検知された濃度に基づき、処理槽を流通する処理液の流量が増加するように制御して、処理液の置換速度が速くすることにより、より的確に処理液中で特定の濃度が高くなることを抑制することができる。
また、このような特定の成分としては、シリコンが挙げられるがこれに限られない。
【0017】
また、本発明においては、
前記基板は、3次元NAND半導体素子を形成する基板であり、
前記処理は、前記基板に含まれる窒化シリコン膜を、前記処理液としてリン酸を含むエッチング液によってエッチングする処理であるようにしてもよい。
【0018】
このように、本発明によれば、3次元NAND半導体素子の3次元構造内で、窒化シリコン膜のエッチングが行われ、当該構造内でエッチング液中のシリコン濃度が高くなるような場合でも、処理槽内のエッチング液の流量を増加するように制御部が制御することによって、当該構造内でのエッチング液の置換速度を速くすることができる。これによってシリコン濃度を下げることができ、シリコンが基板に付着して再析出することを抑制することができる。
【0019】
また、本発明は、上述の基板処理装置を備える基板処理システムとして構成することができる。
【0020】
このようにすれば、基板処理システムに含まれる基板処理装置において、進行に応じて処理液の循環流量を調整することができる。
【0021】
また、開示の技術の1つの側面は、次のような基板処理方法によって例示される。
すなわち、本基板処理方法は、
処理槽に貯留された処理液に基板を浸漬させて処理を行う基板処理方法であって、
前記処理槽に連通接続される循環配管を介して、前記処理液を循環させるステップと、
前記処理液を処理温度に温調するインラインヒータ及び前記処理液中の異物を除去するフィルタの上流側において前記循環配管から分岐して、前記インラインヒータ及び前記フィルタを迂回して前記循環配管と並列に接続される第1バイパス配管を開閉する第1開閉弁を制御して、前記処理槽を流通する前記処理液の流量を調整するステップと、
を含むことを特徴とする基板処理方法である。
【0022】
このように、本発明によれば、第1開閉弁を開放し、第1バイパス配管に処理液を流通させることにより、圧力損失を生じるインラインヒータ及びフィルタを含む循環配管の流路と、これらの要素を迂回した第1バイパス配管の流路とが形成される。このため、処理液の温調というインラインヒータの機能や、処理液からの異物の除去というフィルタの機能を維持しつつ、第1バイパス配管を介しても処理液を循環させることにより、処理槽を流通する処理液の流量を増加させることができる。また、第1開閉弁を閉止し、処理液の流路はインラインヒータ及びフィルタを含む循環流路のみとすることにより、処理槽を流通する処理液の流量を減少させることができる。従って、処理の進行に応じて、第1開閉弁の開閉を制御することにより、処理槽を流通する処理液の流量を調整することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る基板処理装置によれば、処理の進行に応じて処理液の循環流量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例1の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、3次元NANDのエッチング処理の進捗を示す模式図である。
図3図3は、3次元NANDの基板の構成を説明する模式図である。
図4図4は、実施例1の基板処理方法を説明するタイムチャートである。
図5図5は、実施例2の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図6図6は、実施例2の基板処理方法を説明するタイムチャートである。
図7図7は、実施例3の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図8図8は、実施例3の基板処理方法を説明するタイムチャートである。
図9図9は、実施例4の基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図10図10は、基板処理システムの全体構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。図1は、実施例1に係る基板処理装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0026】
基板処理装置1は、複数枚の基板Wを一括して処理液で処理するバッチ式の装置である。この基板処理装置1は、処理槽11とオーバーフロー槽12とを備える。処理槽11は複数枚の基板Wを収容可能な大きさを有し、処理液を貯留して複数枚の基板Wに対して処理液による処理を行う。オーバーフロー槽12は、処理槽11の上縁の周囲に設けられ、処理槽11から溢れた処理液を回収する。
【0027】
処理槽11とオーバーフロー槽12とは、循環配管13によって連通接続されている。循環配管13は、一端側がオーバーフロー槽12の上部から底部に向って配置され、他端側が処理槽11の底部に配置された液体供給管141,142に接続されている。循環配管13には、オーバーフロー槽12側に設けられたポンプ15から、処理槽11側、すなわち処理液の下流側に向って、インラインヒータ16とフィルタ17、開閉弁18、調整弁19とが、その順に配置されている。
【0028】
ポンプ15は、循環配管13に貯留する処理液を圧送する。インラインヒータ16は、循環配管13を流通する処理液を処理温度(例えば、約160℃)に温調する。フィルタ17は循環配管13を流通する処理液中のパーティクル等の異物をろ過して除去する。開閉弁18は、循環配管13中における処理液の流通を制御する。また、調整弁19は、循環配管13中における処理液の流量を制御する。ポンプ15がオンされると、オーバーフロー槽12に貯留する処理液が循環配管13に吸い込まれ、インラインヒータ16による温調と、フィルタ17によるろ過が行われて処理槽11に送られる。
【0029】
循環配管13には、ポンプ15とインラインヒータ16との間に、バイパス配管20の一端が接続されている。バイパス配管20の他端は、循環配管13の調整弁19と液体供給管141,142との間に接続されている。すなわち、バイパス配管20は、インラインヒータ16及びフィルタ17の上流側において循環配管13から分岐して、インラインヒータ16及びフィルタ17を迂回して循環配管13と並列に接続されている。そして、バイパス配管20には、ポンプ15側から処理槽11に向って、開閉弁21と、調整弁22とが、その順に配置されている。開閉弁21は、バイパス配管20中における処理液の流通を制御する。また、調整弁22は、バイパス配管20中における処理液の流量を制御する。調整弁22によってバイパス配管中における処理液の流量を制御することにより、インラインヒータ16やフィルタ17を流れる処理液の流量を必要最低量に調整しつつ、処理槽11を流通する処理液の流量を増加させることができる。なお、バイパス配管20の他端は、循環配管13とは独立して、処理槽11底部の液体供給管に接続されるようにしてもよい。バイパス配管20が本発明の「第1バイパス配管」に対応し、開閉弁21が本発明の「第1開閉弁」に対応する。
【0030】
処理槽11には、処理液を処理液供給部23から処理槽11に供給する処理液供給管24の一端が配置されている。処理液供給部23にはリン酸を含む処理液が貯留されている。処理液供給管24には、処理液供給部23から処理槽11への処理液の供給を制御する開閉弁25が設けれている。処理液供給部23は、処理槽11に貯留される処理液を供給するとともに、処理液のシリコン濃度等が高くなり過ぎるのを抑制するために、処理液が処理槽11と循環配管13を通じて循環しているときに処理液を補充することもできる。
【0031】
また、処理槽11の底部に配置された気体供給管261,262,263,264には、気体供給部27に一端が接続された気体供給配管28の他端が接続されている。気体供給配管28には、処理槽11側から順に、開閉弁29と、調整弁30とが配置されている。開閉弁29は、気体供給部27から気体供給管261~264への気体の供給を制御する。そして、調整弁は、気体供給部27から気体供給管261~264への気体の流量を制御する。気体供給部27からは、気体(窒素、アルゴン等の好ましくは不活性ガス)が、気体供給配管28を介して供給され、処理槽11の底部に配置された気体供給管261
~264から気泡が処理液中に放出されることによりバブリングが行われ、底部から上方への処理液の置換速度を増加させる。
【0032】
また、処理槽11の底部には、排液配管31の一端が接続されている。排液配管31の他端は廃液処理部(不図示)に接続される。排液配管31には、排液配管31を介した処理液の排出を制御する開閉弁32が設けられている。
【0033】
基板Wは、基板保持部33の本体板331の下部に設けられた保持棒332,333,334によって起立姿勢で保持される。昇降ユニット34により、基板保持部33は、図1に示す基板Wが処理槽11内部で処理液に浸漬される処理位置と、処理槽11上方の待機位置との間で昇降移動する。
【0034】
上述した、ポンプ15、インラインヒータ16、フィルタ17、開閉弁18、調整弁19、開閉弁21、調整弁22、開閉弁25、開閉弁29、調整弁30、開閉弁32及び昇降ユニット34は、制御部35によって統括的される。制御部35は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM等の補助記憶装置を有するコンピュータにより構成することができる。補助記憶装置には、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。
【0035】
(3次元NAND基板の構造)
ここでは、本発明の好適な適用例である3次元構造を有する3次元NANDの製造工程におけるエッチング処理を例として説明する。
【0036】
3次元NAND半導体素子(以下、単に「3次元NAND」という。)を製造する場合には、シリコン基材S上に酸化シリコン(SiO)膜Maと窒化シリコン(SiN)膜Eaを交互に製膜して積層する。そして、積層を貫通する方向(ウエハーの法線方向)に孔を開け、この孔の中に同心円状に、例えば、酸化アルミニウム(Al)膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜を形成し、中心部にはポリシリコンが配置される。このようにして、シリコンウエハー上に積層された酸化シリコン膜Maと窒化シリコン膜Eaとを多数のポストMbが貫通する3次元構造を有する基板Wが形成される。このような、基板Wに対して、法線方向に積層された窒化シリコン膜Eaが、リン酸を含む処理液によってエッチングされる。
【0037】
図2は、このような基板Wが、リン酸(HPO)を含むエッチング液によってエッチングされる過程を模式的に示したものである。基板Wには、積層を貫通するようにスリットSLが形成されており、このスリットSLにエッチング液が導入されることにより、スリットSLの両側の積層に含まれる窒化シリコン膜Eaが選択的にエッチングされる。斜線で示される窒化シリコン膜Eaのエッチングは、図2(A)から、図2(B)、図2(C)、図2(D)へと進む。図2(A)における窒化シリコン膜EaとポストMbとの関係を窒化シリコン膜に平行な断面で模式的に示したのが図3である。このように、図2(A)に示されるエッチング処理の初期では、スリットSLの両側に露出する窒化シリコン膜Eaが、スリットSL近傍からエッチングされ、図2(B)から図2(C)に示すように、徐々にポストMbが配置された領域へとエッチングが進む。このように、エッチング処理の初期には、基板Wから除去されるシリコンの量が多いため、処理液中のシリコン濃度は高くなる。また、基板Wの3次元構造内でエッチングが行われるため、基板Wの表面に沿った処理液の流速が十分でないと、構造内のシリコンの置換速度が追い付かず、エッチングされたシリコン等の成分が構造内に付着し、析出する可能性がある。ここでは、シリコンが本発明の「特定の成分」に対応し、エッチング液が本発明の「処理液」に対応
する。
【0038】
本実施例の基板処理装置1では、基板保持部33に起立姿勢で保持されて処理液に浸漬された基板Wに対して、処理液は、オーバーフロー槽12からポンプ15によって循環配管13を流通し、処理槽11の底部に配置された液体供給管141,142から供給される。このため、処理槽11内では鉛直方向の下方から上方に向けて、基板Wの表面に沿った方向への処理液の流れが生じる。また、気体供給部27から供給される気体も、処理槽11の底部に配置された気体供給管261~264から処理槽11内に供給され、同様に、処理槽11内で鉛直方向の下方から上方に向け、処理液中を気泡として上昇し、基板Wの表面に沿った方向の処理液の流れを促進する。
【0039】
上述したように、本実施例に係る基板処理装置1は、循環配管13に対して、インラインヒータ16及びフィルタ17を通らないバイパス配管20を設けている。インラインヒータ16及びフィルタ17は、処理液が流通する際に圧力損失が生じる要素である。このため、バイパス配管20に設けられた開閉弁21を開放するように制御することにより、インラインヒータ16やフィルタ17を含む循環配管13とバイパス配管20の両方を処理液が流通する。これにより、処理槽11を流通する処理液の流量が増加し、基板Wの3次元構造内の処理液の置換速度も増加する。
【0040】
(基板処理方法)
以下に、実施例1に係る基板処理方法について説明する。図4は、実施例1に係る基板処理方法のタイムチャートである。図4では、基板処理装置1の構成のうち、以下に説明する基板処理方法に直接関連する構成のみについて記載している。
【0041】
まず、制御部35は、処理液を処理槽11に供給するために、開閉弁25を開放する。これにより、処理液供給部23から処理液が供給される(t1時点)。このとき、制御部35は、基板保持部33を待機位置に位置させ、ポンプ15をオフにし、開閉弁18を解放している。
【0042】
次に、制御部35は、処理槽11及びオーバーフロー槽12並びに循環配管13に処理液が満たされた後に、インラインヒータ16をオンにして温調を開始するとともに、ポンプ15をオンにして、処理槽11及びオーバーフロー槽12並びに循環配管13に貯留している処理液を循環させる(t2時点)。さらに、制御部35は、開閉弁25を閉止して、処理液の供給を停止する(t3時点)。
【0043】
制御部35は、処理液の温度が処理温度に達した後も、温調のためにインラインヒータ16のオン状態を維持する。
【0044】
制御部35は、昇降ユニット34により、基板保持部33を処理位置まで下降させる(t4時点)。これにより、基板保持部33に保持された基板Wが処理液に浸漬され、基板Wに対するエッチング処理が開始される。
【0045】
制御部35は、開閉弁21及を開放する(t5時点)。開閉弁21を開放することにより、循環配管13と並列にバイパス配管20に処理液が流通するため、処理槽11内を流通する処理液の流量が増加する。これにより、基板Wの表面を流れる処理液の流速を増加させ、基板W表面のシリコン濃度を低下させることができる。これにより、基板Wの構造内のシリコン濃度を低下させることができ、シリコン成分が構造内に析出することを抑制することができる。また、開閉弁21が開放されても、処理液は循環配管13とバイパス配管20の両者を並列に流通するので、フィルタ17によるパーティクルのろ過やインラインヒータ16による温調も並行して行われる。開閉弁21の開放は、基板保持部33の
処理位置への下降によるエッチング処理の開始のタイミング又は他の先行するタイミングからの経過時間に基づいて制御する。エッチング処理の初期には、処理液中のパーティクルの量がまだ増加していないので、処理液の一部が、循環する過程でフィルタが設けられていない流路を流通することがあるとしても影響は小さい。なお、ここでは、開閉弁21の開放による処理槽11内の処理液の流速の変化が基板保持部33の処理位置への下降に影響を与えないように、基板保持部33の処理位置への下降後に、開閉弁21を開放しているが、これに限られない。
【0046】
また、エッチング処理が開始されるt4時点以前の準備期間において、処理液が処理温度にまで昇温される以前の低温の状態では、リン酸を含む処理液の粘度が高く、フィルタ17における圧力損失が大きいため、処理槽11内を流通する処理液の流量を稼ぐことができない。このため、例えば、t4に先行するt1時点で開閉弁21を開放するようにしてもよい。このようにすれば、フィルタ17を含む循環配管13と並列してバイパス配管20による流路が形成されるので、処理液の流量を稼ぐことができ、温調に要する時間を短縮することができる。
【0047】
また、制御部35は、開閉弁29を開放する(t5時点)。開閉弁29を開放することにより、気体供給部27から気体が供給され、バブリングが開始される。バブリングにより、基板Wの表面を流れる処理液の置換速度が増加するので、基板W表面のシリコン濃度を低下させることができる。これにより、基板Wの構造内のシリコン濃度を低下させることができ、シリコン成分が構造内に析出することをさらに抑制することができる。開閉弁29の開放は、基板保持部33の処理位置への下降によるエッチング処理の開始のタイミング又は他の先行するタイミングからの経過時間に基づいて制御する。エッチング処理の初期はシリコン濃度が高くなるので、開閉弁21の開放により処理液の循環流量の増加と、バブリングの併用は特に有効である。ここでは、開閉弁29を、開閉弁21を同じタイミングで開放しているが、開閉弁21の開放タイミングとは異なるタイミングで開放するようにしてもよい。
【0048】
処理時間Ts(=t6-t4)が経過し、エッチングが終了すると、制御部35は、基板保持部33を待機位置に上昇させる(t6時点)。
【0049】
次に、制御部35は、開閉弁21及び開閉弁29を閉止する(t7時点)。ここでは、基板保持部33の待機位置への上昇後に、開閉弁21及び開閉弁29を閉止しているが、処理液中のシリコン濃度が高くなるエッチング初期のみ、開放を維持し、処理期間Ts中のt8時点で閉止するようにしてもよい。このような開閉弁21を閉止する時点t8については、予め実験等に基づいて、処理時間Tsの1/2等のように、処理液中のシリコン濃度が低くなるまでのタイミングを定めておくこともできる。制御部35は、このように定められた時間に基づいて開閉弁21を制御するようにしてもよい。開閉弁21を開放しておく期間は、処理液の流量を増加させたいタイミングに合せて適宜設定することができる。また、開閉弁21及び開閉弁29の少なくともいずれか一方は、処理期間Ts中に開放及び閉止を複数回繰り返すようにしてもよい。また、開閉弁29を、開閉弁21を同じタイミングで閉止しているが、開閉弁21の閉止タイミングとは異なるタイミングで開放するようにしてもよい。なお、ここでは、開閉弁21及び開閉弁29の閉止による処理槽11内の処理液の流速の変化が基板保持部33の処理位置への上昇に影響を与えないように、基板保持部33の処理位置への上昇後に、開閉弁21及び開閉弁29を閉止しているが、これに限られない。
【0050】
t7時点で開閉弁21が閉止されているので、循環配管13を流通する処理液に含まれるパーティクルをフィルタ17でろ過して除去することができる。このため、次の基板Wに対する処理において、基板Wにパーティクルが付着してパーティクル性能が低下するこ
とを抑制することができる。
【0051】
<実施例2>
以下、本発明の実施例2について図面を参照しながら詳細に説明する。図5は、実施例2に係る基板処理装置2の概略構成を示すブロック図である。実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0052】
実施例2に係る基板処理装置2は、実施例1に係る基板処理装置1の構成に加えて、フィルタ17をバイパスするバイパス配管36を備える。
【0053】
基板処理装置2では、バイパス配管36の一端が循環配管13のインラインヒータ16とフィルタ17との間に接続され、バイパス配管36の他端が循環配管13のフィルタ17と開閉弁18との間に接続されている。すなわち、バイパス配管36は、フィルタ17の上流側において循環配管13から分岐して、フィルタ17を迂回して循環配管13と並列に接続されている。バイパス配管36の他端は、調整弁19の下流側において、バイパス配管20とともに循環配管13に接続されるようにしてもよい。また、バイパス配管36の他端は、循環配管13とは独立して、処理槽11底部の液体供給管に接続されるようにしてもよい。ここでは、バイパス配管36が本発明の「第2バイパス配管」に対応する。
【0054】
バイパス配管36には、開閉弁37が配置されている。開閉弁37は、制御部35により制御される。バイパス配管36には、開閉弁37に加えて調整弁を配置して、第2バイパス配管36中における処理液の流量を制御するようにしてもよい。ここでは、開閉弁37が本発明の「第2開閉弁」に対応する。
【0055】
(基板処理方法)
以下に、実施例2に係る基板処理方法について説明する。
実施例1と同様に、3次元構造を有する3次元NANDの製造工程におけるエッチング処理を例として説明する。
【0056】
図6は、実施例2に係る基板処理方法のタイムチャートである。開閉弁25、開閉弁18、開閉弁29及び開閉弁21の開閉、インラインヒータ16及びポンプ15のオンオフ、基板保持部33の昇降の各制御については、実施例1と共通である。
【0057】
実施例2では、バイパス配管36に設けられた開閉弁37をt1時点で開放し、t7時点で閉止している。
実施例1においても説明したように、エッチング処理が開始されるt4時点以前の準備期間において、処理液が処理温度にまで昇温される以前の低温の状態では、リン酸を含む処理液の粘度が高く、フィルタ17における圧力損失が大きいため、処理槽11内を流通する処理液の流量を稼ぐことができない。このため、t1時点で開閉弁37を開放するようにしてもよい。このようにすれば、フィルタ17を含む循環配管13と並列してバイパス配管36による流路が形成されるので、処理液の流量を稼ぐことができ、温調に要する時間を短縮することができる。
【0058】
ここでは、開閉弁37を開閉弁21と同じt7時点で閉止するようにしているが、処理液が処理温度に昇温した時点で、開閉弁21とは独立して閉止するようにしてもよい。インラインヒータ16とフィルタ17の両者をバイパスするバイパス配管20による流路と、フィルタ17のみをバイパスするバイパス配管36による流路とを連携して開閉することにより、処理液の状態により的確に対応した基板処理が可能となる。
【0059】
<実施例3>
以下、本発明の実施例3について図面を参照しながら詳細に説明する。図7は、実施例3に係る基板処理装置3の概略構成を示すブロック図である。実施例1及び2と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0060】
実施例3に係る基板処理装置3は、実施例1に係る基板処理装置1におけるバイパス配管20に替えて、循環配管13からフィルタ17をバイパスするバイパス配管36と、循環配管13からインラインヒータ16をバイパスするバイパス配管38とを備える。実施例1に係る基板処理装置1では、インラインヒータ16とフィルタ17とをともに循環配管13からバイパスするバイパス配管20を設けていたが、実施例3では、インラインヒータ16とフィルタ17をそれぞれ独立して循環配管13からバイパスしている。ここでは、バイパス配管36が本発明の「フィルタバイパス配管」に対応し、バイパス配管38が本発明の「ヒータバイパス配管」に対応する。また、バイパス配管36及びバイパス配管38が本発明の「第1バイパス配管」に対応する。
【0061】
基板処理装置3では、バイパス配管38の一端は、循環配管13のインラインヒータ16の上流側に接続しており、バイパス配管38の他端は、循環配管13のインラインヒータ16とバイパス配管36の分岐部分との間に接続している。すなわち、バイパス配管38は、インラインヒータ16の上流側において循環配管13から分岐して、インラインヒータ16を迂回して循環配管13と並列に接続されている。また、上述したように、バイパス配管36は、フィルタ17の上流側において循環配管13から分岐して、フィルタ17を迂回して循環配管13と並列に接続されている。
【0062】
バイパス配管38には、開閉弁39が配置されている。開閉弁39は、制御部35により制御される。バイパス配管38には、開閉弁39に加えて調整弁を配置して、バイパス配管38中における処理液の流量を制御するようにしてもよい。ここでは、開閉弁37が本発明の「フィルタバイパス開閉弁」に対応し、開閉弁39が本発明の「ヒータバイパス開閉弁」に対応する。また、開閉弁37及び開閉弁39が本発明の「第1開閉弁」に対応する。
【0063】
(基板処理方法)
以下に、実施例3に係る基板処理方法について説明する。
実施例1及び2と同様に、3次元構造を有する3次元NANDの製造工程におけるエッチング処理を例として説明する。
【0064】
図8は、実施例3に係る基板処理方法のタイムチャートである。開閉弁25、開閉弁18、開閉弁29及び開閉弁37の開閉、インラインヒータ16及びポンプ15のオンオフ、基板保持部33の昇降の各制御については、実施例2と共通である。
【0065】
実施例3では、バイパス配管38に設けられた開閉弁39をt5時点で開放し、t7時点で閉止している。開閉弁39を開放することにより、循環配管13と並列にバイパス配管38に処理液が流通するため、処理槽11内を流通する処理液の流量が増加する。これにより、基板Wの表面を流れる処理液の流速を増加させ、基板W表面のシリコン濃度を低下させることができる。これにより、基板Wの構造内のシリコン濃度を低下させることができ、シリコン成分が構造内に析出することを抑制することができる。また、開閉弁39が開放されても、処理液は循環配管13とバイパス配管38の両者を並列に流通するので、フィルタ17によるパーティクルのろ過やインラインヒータ16による温調も並行して行われる。開閉弁39の開放は、基板保持部33の処理位置への下降によるエッチング処理の開始のタイミング又は他の先行するタイミングからの経過時間に基づいて制御する。なお、ここでは、開閉弁39の開放による処理槽11内の処理液の流速の変化が基板保持
部33の処理位置への下降に影響を与えないように、基板保持部33の処理位置への下降後に、開閉弁39を開放しているが、これに限られない。
【0066】
また、実施例3では、実施例2と同様に、バイパス配管36に設けられた開閉弁37をt1時点で開放し、t7時点で閉止している。
実施例1においても説明したように、エッチング処理が開始されるt4時点以前の準備期間において、処理液が処理温度にまで昇温される以前の低温の状態では、リン酸を含む処理液の粘度が高く、フィルタ17における圧力損失が大きいため、処理槽11内を流通する処理液の流量を稼ぐことができない。このため、t1時点で開閉弁37を開放するようにしてもよい。このようにすれば、フィルタ17を含む循環配管13と並列してバイパス配管36による流路が形成されるので、処理液の流量を稼ぐことができ、温調に要する時間を短縮することができる。ここでは、開閉弁37を開閉弁21と同じt7時点で閉止するようにしているが、処理液が処理温度に昇温した時点で、開閉弁21とは独立して閉止するようにしてもよい。
【0067】
このように、インラインヒータ16をバイパス配管38により、フィルタ17をバイパス配管36により、それぞれ独立て循環配管13からバイパスしている。このため、インラインヒータ16をバイパスするバイパス配管38による流路と、フィルタ17のみをバイパスするバイパス配管36による流路とを個別に開閉することにより、処理液の状態により的確に対応した基板処理が可能となる。
【0068】
<実施例4>
以下、本発明の実施例4について図面を参照しながら詳細に説明する。図9は、実施例3に係る基板処理装置4の概略構成を示すブロック図である。実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0069】
実施例4に係る基板処理装置4は、実施例1に係る基板処理装置1の構成に加えて、処理液中のシリコン濃度を検知するシリコン濃度センサ40を備える。シリコン濃度センサ40により検知された処理液中のシリコン濃度は、制御部35に送信される。シリコン濃度センサ40が設けられた検知用配管41の一端は循環配管13のインラインヒータ16とフィルタ17との間に接続され、検知用配管41の他端はオーバーフロー槽12に接続されている。検知用配管41の他端の接続先はこれに限られず、循環配管13に接続してもよいし、排液処理部に接続してもよい。ここでは、シリコンが本発明の「特定の成分」に対応し、シリコン濃度センサが本発明の「濃度検知部」に対応する。
【0070】
このように、実施例4に係る基板処理装置4では、シリコン濃度センサ40によって処理液中のシリコン濃度を検知することができるので、バイパス配管20に設けられた開閉弁21及び調整弁22を、検知された処理液中のシリコン濃度に基づいて制御することできる。実施例1では、基板保持部33の処理位置への下降によるエッチング処理の開始のタイミング又は他の先行するタイミングからの経過時間に基づいて、開閉弁21の開閉を制御していたが、実施例4では、制御部35は、処理液中のシリコン濃度に応じてより的確に開閉弁21を開閉及び流量制御を行うことができる。実施例1に係るタイムチャートを例にすると、実施例1では、開閉弁21の閉止(t8時点)が所定のタイミングからの時間に基づいて制御されているが、本実施例では、シリコン濃度センサ40によって検知された処理液中のシリコン濃度が所定値以下となった時点で開閉弁21を閉止するように制御する。本実施例においては、処理液中のシリコン濃度に応じて、的確に、開閉弁21を開閉し、又は調整弁を制御することにより、循環配管13と並列にバイパス配管20に流通する処理液の流量の増減を制御することができる。これにより、エッチング量が多く、処理液中のシリコン濃度が高いときには、開閉弁21を開放して、基板Wの表面を流れる処理液の流速を増加させることができる。すなわち、より的確に基板Wの構造内のシリ
コン濃度を低下させることができ、シリコン成分が構造内に析出することを抑制することができる。一方で、エッチング量が少なく、処理液中のシリコン濃度が高くないときには、開閉弁21を閉止することにより、循環配管13を流通する処理液の全量に対して、インラインヒータ16による温調及びフィルタ17によるパーティクルのろ過を行うことができる。
【0071】
<変形例>
上述の実施例においては、循環配管13に配置されたインラインヒータ16及びフィルタ17の両者(実施例1及び4)、インラインヒータ16及びフィルタ17の両者とフィルタ17のみ(実施例2)、インラインヒータ16及びフィルタ17のそれぞれ(実施例3)をバイパスする流路を設けている。基板処理装置においては、循環配管13に直列に、リン酸の濃度を検知するリン酸濃度センサを配置する場合がある。このようなリン酸濃度センサにおいても、循環配管13を流通する処理液の圧力損失が生じる。このため、リン酸濃度センサを循環配管13からバイパスさせるバイパス配管を設け、当該バイパス配管に配置した開閉弁を制御部35により開閉制御するようにしてもよい。実施例1及び実施例4のように、インラインヒータ16及びフィルタ17並びにリン酸濃度センサを循環配管13からバイパスさせるようにしてもよい。また、実施例2のように、フィルタ17のみをバイパスさせるとともに、インラインヒータ16及びフィルタ17並びにリン酸濃度センサを循環配管13からバイパスさせるようにしてもよい。また、実施例3のように、インラインヒータ16、フィルタ17及びリン酸濃度センサをそれぞれ循環配管13からバイパスさせるようにしてもよい。リン酸濃度センサに対する、循環配管13からのバイパスのさせ方はこれらに限られない。
【0072】
また、上述の実施例では、循環配管13に並列に接続されたバイパス配管は、それぞれ一つであるが、並列に複数のバイパス配管が循環配管13に接続されるようにしてもよい。複数のバイパス配管を並列に設けることにより、処理液の流量をより増加させることができる。
【0073】
また、上述の実施例では、循環配管13において、ポンプ15の下流側に、インラインヒータ16及びフィルタ17を配置しているが、ポンプ15の上流側に、インラインヒータ16及びフィルタ17を配置してもよい。
【0074】
また、上述の実施例では、エッチング処理、特に、3次元NANDの製造過程におけるエッチング処理について説明したが、本発明に係る基板処理装置及び基板処理方法が適用される処理はこれに限られるものではない。
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0075】
<基板処理システム>
図10は、上述の実施例に係る基板処理装置を適用した基板処理システム100の全体構成の概略を示す平面図である。
基板処理システム100は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置である。基板処理システム100は、半導体ウェハなどの円板状の基板Wを収容するキャリアCが搬送されるロードポートLPと、ロードポートLPから搬送された基板Wを薬液やリンス液などの処理液で処理する処理ユニット102と、ロードポートLPと処理ユニット102との間で基板Wを搬送する複数の搬送ロボットと、基板処理システム100を制御する制御装置103とを含む。
【0076】
処理ユニット102は、複数枚の基板Wが浸漬される第1薬液を貯留する第1薬液処理槽104と、複数枚の基板Wが浸漬される第1リンス液を貯留する第1リンス処理槽105と、複数枚の基板Wが浸漬される第2薬液を貯留する第2薬液処理槽106と、複数枚
の基板Wが浸漬される第2リンス液を貯留する第2リンス処理槽107とを含む。処理ユニット102は、さらに、複数枚の基板Wを乾燥させる乾燥処理槽108を含む。本基板処理システム100の第2薬液処理槽106を、上述の実施例に係る基板処理装置1,2,3,4により構成することができる。
【0077】
第1薬液は、たとえば、SC1またはフッ酸である。第2薬液は、たとえば、リン酸、酢酸、硝酸、および水の混合液である混酸である。第1リンス液および第2リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。第1薬液は、SC1およびフッ酸以外の薬液であってもよい。同様に、第1リンス液および第2リンス液は、純水以外のリンス液であってもよい。第1リンス液および第2リンス液は、互いに異なる種類のリンス液であってもよい。
【0078】
複数の搬送ロボットは、ロードポートLPと処理ユニット102との間でキャリアCを搬送し、複数のキャリアCを収容するキャリア搬送装置109と、キャリア搬送装置109に保持されているキャリアCに対して複数枚の基板Wの搬入および搬出を行い、水平な姿勢と鉛直な姿勢との間で基板Wの姿勢を変更する姿勢変換ロボット110とを含む。姿勢変換ロボット110は、複数のキャリアCから取り出した複数枚の基板Wで1つのバッチを形成するバッチ組み動作と、1つのバッチに含まれる複数枚の基板Wを複数のキャリアCに収容するバッチ解除動作とを行う。
【0079】
複数の搬送ロボットは、さらに、姿勢変換ロボット110と処理ユニット102との間で複数枚の基板Wを搬送する主搬送ロボット111と、主搬送ロボット111と処理ユニット102との間で複数枚の基板Wを搬送する複数の副搬送ロボット112とを含む。複数の副搬送ロボット112は、第1薬液処理槽104と第1リンス処理槽105との間で複数枚の基板Wを搬送する第1副搬送ロボット112Aと、第2薬液処理槽106と第2リンス処理槽107との間で複数枚の基板Wを搬送する第2副搬送ロボット112Bとを含む。
【0080】
主搬送ロボット111は、複数枚(たとえば50枚)の基板Wからなる1バッチの基板Wを姿勢変換ロボット110から受け取る。主搬送ロボット111は、姿勢変換ロボット110から受け取った1バッチの基板Wを第1副搬送ロボット112Aおよび第2副搬送ロボット112Bに渡し、第1副搬送ロボット112Aおよび第2副搬送ロボット112Bに保持されている1バッチの基板Wを受け取る。主搬送ロボット111は、さらに、1バッチの基板Wを乾燥処理槽108に搬送する。
【0081】
第1副搬送ロボット112Aは、主搬送ロボット111から受け取った1バッチの基板Wを第1薬液処理槽104と第1リンス処理槽105との間で搬送し、第1薬液処理槽104内の第1薬液または第1リンス処理槽105内の第1リンス液に浸漬させる。同様に、第2副搬送ロボット112Bは、主搬送ロボット111から受け取った1バッチの基板Wを第2薬液処理槽106と第2リンス処理槽107との間で搬送し、第2薬液処理槽106内の第2薬液または第2リンス処理槽107内の第2リンス液に浸漬させる。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3,4・・・基板処理装置
11・・・処理槽
15・・・ポンプ
16・・・インラインヒータ
17・・・フィルタ
20,36,38・・・バイパス配管
21,37,39・・・開閉弁
40・・・シリコン濃度センサ
100・・・基板処理システム
W・・・基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10