IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ビルシステムの特許一覧

<>
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図1
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図2
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図3
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図4
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図5
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図6
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図7
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図8
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図9
  • 特許-診断装置、診断システムおよび診断方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】診断装置、診断システムおよび診断方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20221122BHJP
   G01M 13/04 20190101ALI20221122BHJP
【FI】
B66B31/00 D
G01M13/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019127188
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011371
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 真年
(72)【発明者】
【氏名】永石 英幸
(72)【発明者】
【氏名】藤森 司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小平 法美
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224853(JP,A)
【文献】特開2005-344842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0339389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
G01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型の診断装置であって、
エスカレーターに設けられる軸受により支持される軸の回転に伴って動く機器の動作を測定可能なミリ波センサを備えるセンサ部と、
前記軸に係る特定の回転速度を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出し、算出した前記軸の回転速度より前記軸受が故障しているかを診断する制御部と、
正常時の前記軸の回転速度を算出可能な情報を含む設計情報を記憶する記憶部と、
を備え
前記制御部は、前記設計情報から、正常時の前記軸の回転速度を前記特定の回転速度として算出する、
診断装置。
【請求項2】
前記センサ部は、前記軸受の内輪の回転速度を測定可能な磁気センサを備え、
前記制御部は、前記磁気センサの測定データから前記軸受の内輪の回転速度を、前記特定の回転速度として算出する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記センサ部は、前記軸の回転に伴って動く機器の振動を測定可能な加速度センサを備え、
前記制御部は、前記加速度センサの測定データから前記機器の衝撃音の周期を特定し、特定した周期と前記軸と一体となって回転するギアの数とから前記軸の回転速度を算出して前記特定の回転速度とする、
請求項1または2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ミリ波センサで取得された測定データについて速度のフーリエ変換を行い、前記速度のフーリエ変換した後の測定データにおいて、前記特定の回転速度の情報を含む範囲をフィルタリングの範囲として設定する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記機器と前記ミリ波センサとの距離を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記軸に係る特定の回転速度を用いて、前記フィルタリング処理した後の測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出し、算出した前記軸の回転速度より前記軸受が故障しているかを診断する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ミリ波センサで取得された測定データについて距離のフーリエ変換を行い、前記距離のフーリエ変換した後の測定データにおいて、前記機器と前記ミリ波センサとの距離の情報を含む範囲をフィルタリングの範囲として設定する、
請求項に記載の診断装置。
【請求項7】
前記センサ部は、前記軸受が固定されているハウジングの上に設置される、
請求項に記載の診断装置。
【請求項8】
エスカレーターに設けられる軸受により支持される軸の回転に伴って動く機器の動作を測定可能なミリ波センサを備える可搬型のセンサ部と、
前記軸に係る回転速度を測定可能な所定のセンサを備え、前記エスカレーターに設置されている固定型のセンサ部と、
前記所定のセンサにより測定された前記軸に係る回転速度および/または前記軸に係る特定の回転速度を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出し、算出した前記軸の回転速度より前記軸受が故障しているかを診断する制御部と、
正常時の前記軸の回転速度を算出可能な情報を含む設計情報を記憶する記憶部と、
を備え
前記制御部は、前記設計情報から、正常時の前記軸の回転速度を前記特定の回転速度として算出する、
診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断システムおよび診断方法に関し、例えば、軸受を診断する診断装置、診断システムおよび診断方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターでは、乗客を乗せる踏段と、踏段と同期して進行方向に移動するハンドレールとをチェーンにより駆動させるターミナルギヤが上部の機械室および下部の機械室に設けられている。
【0003】
ターミナルギヤの軸の両端には、軸受が設けられており、経年劣化、外的要因(例えば、異物混入)等による故障を防止するために定期的に軸受を診断する必要がある。
【0004】
従来、軸受を診断する方法としては、アコースティックエミッションセンサを用い、出力信号の持続時間を算出して診断する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、軸受を診断する方法としては、加速度センサを用い、診断対象物の異常に対応した固有帯域成分を抽出した振動の波高率を算出して診断する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2839623号公報
【文献】特許第2695366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、測定した音から軸受の診断を行い、特許文献2に記載の方法では、測定した振動から軸受の診断を行っているため、軸の回転速度(以降、軸回転速度と記す)を用いて軸受を診断するといったように、直接的に軸受を診断することが求められる。
【0007】
稼働中のエスカレーターの軸受の動作を直接検出する手段として、異常な振動が発生したときの軸回転速度の時系列の変化を観察する方法が考えられる。故障の箇所の診断に十分な時間分解能で観察するためには、軸が1回転する間に少なくとも10点程度の測定が必要である。
【0008】
この点、ロータエリーエンコーダを用いた軸回転速度の測定では、十分な時間分解能で観察可能である。しかしながら、エスカレーターの可動部にロータエリーエンコーダを取り付ける必要がある。この場合、可動部へのロータエリーエンコーダの接触により、可動部等が破損するおそれがある。
【0009】
このようなことから、非接触かつ十分な時間分解能を有する軸回転速度の検出手段としてミリ波レーダー(ミリ波センサ)の活用が考えられる。ミリ波レーダーをエスカレーターの機械室内で使用した場合、ミリ波センサで測定されたデータ(以降、測定データと記す)には、軸回転速度以外の速度で稼動する物体からの情報も含まれていて、軸回転速度を特定できないため、軸受を診断することができない。
【0010】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、ミリ波センサを用いて適切に軸受を診断し得る診断装置等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明においては、可搬型の診断装置であって、エスカレーターに設けられる軸受により支持される軸の回転に伴って動く機器の動作を測定可能なミリ波センサを備えるセンサ部と、前記軸に係る特定の回転速度を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出し、算出した前記軸の回転速度より前記軸受が故障しているかを診断する制御部と、を設けるようにした。
【0012】
上記構成によれば、例えば、軸の回転速度以外の速度がミリ波センサにより測定される場合であっても、軸に係る特定の回転速度を用いて、ミリ波センサで取得された測定データをフィルタリング処理することで、測定データから、軸の回転速度以外の速度のデータを除去することができる。よって、ミリ波センサを用いて適切に軸の回転速度を算出することができ、算出した軸の回転速度より軸受を診断することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミリ波センサを用いて適切に軸受を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態による診断システムが診断の対象とするエスカレーターの構造を示す概略図である。
図2】第1の実施の形態による軸受に係る構成の一例を示す図である。
図3】第1の実施の形態による診断装置に係る構成の一例を示す図である。
図4】第1の実施の形態によるフィルタリング処理および診断処理に係る処理の一例を示す図である。
図5】第1の実施の形態によるフィルタリング処理を説明するための図である。
図6】第1の実施の形態による診断処理を説明するための図である。
図7】第2の実施の形態による診断システムに係る構成の一例を示す図である。
図8】第3の実施の形態による診断システムに係る構成の一例を示す図である。
図9】第3の実施の形態によるフィルタリング処理および診断処理に係る処理の一例を示す図である。
図10】第3の実施の形態による診断処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。本実施の形態では、エスカレーターの軸受の点検に好適な技術に関して説明する。本技術を適用した診断装置、診断システム、診断方法等では、例えば、ミリ波レーダーを用いて、稼働しているエスカレーターの軸受により支持される軸の回転速度の時系列の変化を算出することで、軸受を診断する。
【0016】
例えば、上記診断装置は、ミリ波レーダーの測定データから軸回転速度を算出する際、診断対象のエスカレーターの型番情報から算出した軸回転速度情報と、ミリ波レーダー以外のセンサから算出した軸回転速度情報との両方または一方により、ミリ波レーダーの測定データをフィルタリング処理する。
【0017】
また、例えば、上記診断装置は、フィルタリング処理により、測定データ内に含まれる軸回転速度の算出に不要な非可動部品、壁面等からの多重反射信号、軸と異なる速度で回転する部品等のデータを除去する。
【0018】
これにより、軸回転速度の時系列の変化を軸受の診断に必要な時間分解能で算出でき、経年劣化、外的要因等による軸受の故障を検出可能となる。なお、軸受の故障には、軸受と軸とが滑ってしまう故障、軸受の内部の部品の故障等が含まれる。
【0019】
また、上記診断装置は、診断対象のエスカレーターの型番情報から算出したミリ波レーダーから測定対象物までの距離を示す距離情報により、ミリ波レーダーの測定データをフィルタリング処理してもよい。かかるフィルタリング処理により、軸受の故障をより精度よく検出可能となる。
【0020】
以下の説明において、「プロセッサ部」は、1以上のプロセッサである。少なくとも1つのプロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、処理の一部または全部を行うハードウェア回路(例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサでもよい。
【0021】
また、以下の説明において、「記憶部」は、メモリ部とPDEV部の少なくとも一部とのうちの少なくとも1つ(典型的には少なくともメモリ部)である。
【0022】
また、以下の説明において、「メモリ部」は、1以上のメモリであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリ部における少なくとも1つのメモリは、揮発性メモリであってもよいし不揮発性メモリであってもよい。
【0023】
また、以下の説明において、「PDEV部」は、1以上のPDEVであり、典型的には補助記憶デバイスでよい。「PDEV」は、物理的な記憶デバイス(Physical storage DEVice)を意味し、典型的には、不揮発性の記憶デバイス、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)である。
【0024】
また、以下の説明において、「通信部」は、1以上のインターフェースでよい。当該1以上のインターフェースは、1以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば、1以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし2以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えば、NICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0025】
また、以下の説明において、「出力部」は、1以上のディスプレイ、1以上のスピーカ等である。出力部は、タッチパネルといった入出力部であってもよい。なお、出力とは、ディスプレイによる表示であってあってもよいし、スピーカによる音出力であってもよいし、他のコンピュータへの情報の送信であってもよいし、印刷装置による印刷であってもよいし、他の態様の出力であってもよい。
【0026】
また、以下の説明において、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ部によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶部(例えば、メモリ)および/または通信部(例えば、通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主語がプロセッサとされてもよい。プログラムを主語として説明された処理は、プロセッサ部あるいはそのプロセッサ部を有する装置が行う処理としてもよい。また、プロセッサ部は、処理の一部または全部を行うハードウェア回路(FPGA、ASIC等)を含んでもよい。プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば、非一時的な記録媒体)であってもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0027】
(1)第1の実施の形態
図1において、100は全体として第1の実施の形態による診断システムを示す。
【0028】
図1は、診断システム100が診断対象とするエスカレーター110の構造を示す概略図である。
【0029】
エスカレーター110には、乗客を乗せる踏段120と、踏段120と同期して進行方向に移動するハンドレール130とが設けられている。また、エスカレーター110には、踏段120とハンドレール130とを図示しないチェーンにより駆動させる図示しない上部ターミナルギヤが図示しない上部機械室に設けられ、下部ターミナルギヤ140が下部機械室150に設けられる。上部ターミナルギヤの軸の両端の各々には、図示しない軸受が設けられ、下部ターミナルギヤ140の軸の両端の各々には、軸受160が設けられている。
【0030】
図2は、下部機械室150に設けられている軸受160に係る構成の一例を示す図である。
【0031】
上述したように、下部機械室150に設けられている下部ターミナルギヤ140の軸の両端の各々には、軸受160が設けられている。軸受160は、ハウジング210により固定されている。ハウジング210は、スライドレール220を介して下部機械室150に設けられているトラス梁230の上に設置されている。また、ハウジング210は、テンションロッド240と接続され、テンションロッド240に設けられたテンションバネ250により図示しない踏段120のチェーンにテンションを与えている構造となっている。
【0032】
ハウジング210の上には、軸受160により支持される軸(下部ターミナルギヤ140の軸)の軸回転速度を測定可能なセンサ部260が設置されている。センサ部260は、ケーブル270を介して制御部280に通信可能に接続されている。
【0033】
次に、軸受160を診断する構成について説明する。
【0034】
図3は、診断システム100が備える診断装置300に係る構成の一例を示す図である。
【0035】
診断装置300は、センサ部260と制御部280とを含んで構成される。センサ部260は、加速度センサ311、磁気センサ312およびミリ波レーダー313を備える。
【0036】
加速度センサ311の出力信号は、アンプフィルタ部314にて処理されたのち、ADC(Analog-to-Digital Converter)315でデジタル化され、変換された信号(以降、加速度データと記す)は、ケーブル270を介して制御部280に出力される。また、磁気センサ312の出力信号は、アンプフィルタ部314にて処理されたのち、ADC315でデジタル化され、変換された信号(以降、磁気データと記す)は、ケーブル270を介して制御部280に出力される。
【0037】
ミリ波レーダー313の出力信号は、アンプフィルタ部316にて処理されたのち、ミリ波用プロセッサ部317でデジタル化され、変換された信号(以降、ミリ波データと記す)は、ケーブル270を介して制御部280に出力される。
【0038】
制御部280は、演算処理を行うプロセッサ部321と、プロセッサ部321で処理されたデータを記憶(保管)する記憶部322と、記憶部322により記憶されたデータをPC(Personal Computer)等の外部機器330に送信等する通信部323と、センサ部260の動作状態等を出力する出力部324とを備える。また、制御部280は、プロセッサ部321、記憶部322、通信部323および出力部324に電源を供給する電源部325を備える。
【0039】
制御部280の機能は、例えば、プロセッサ部321がプログラムを記憶部322に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。また、制御部280の機能の一部は、制御部280と通信可能な他のコンピュータ(例えば、センサ部260、外部機器330、図示は省略するサーバ装置等)により実現されてもよい。
【0040】
制御部280に出力されたセンサ部260からのデータに基づく診断処理の全部または一部については、プロセッサ部321で実施され、診断処理の結果(以降、診断結果と記す)は、記憶部322に記憶される。記憶された診断結果は、通信部323により接続された外部機器330に送信される。記憶された診断結果は、出力部324により出力されてもよい。
【0041】
外部機器330は、プロセッサ部331と、記憶部332と、通信部333と、出力部334とを備える。外部機器330の機能は、例えば、プロセッサ部331がプログラムを記憶部332に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。また、外部機器330の機能の一部は、外部機器330と通信可能な他のコンピュータ(例えば、センサ部260、制御部280、図示は省略するサーバ装置等)により実現されてもよい。
【0042】
外部機器330は、後述する制御部280により行われる診断処理に必要なエスカレーター110の型番情報(設計情報の一例)を記憶する。また、外部機器330は、受信した診断結果を作業員に提示する。例えば、図6に示すような内容が出力部334により表示される。
【0043】
診断装置300は、作業員により診断対象となるエスカレーター110に運搬され、センサ部260がエスカレーター110の軸受160が固定されるハウジング210に取り付けられ、軸受160の振動、踏段120が稼動する際の振動、軸受160の内部部品の動作に起因する磁気変動、軸受160の周囲の部品からのミリ波レーダーの反射が測定される。
【0044】
次に、ミリ波レーダー313で測定されたミリ波データのフィルタリング処理および診断処理(診断方法)について説明する。
【0045】
図4は、フィルタリング処理および診断処理に係る処理の一例を示す図である。
【0046】
ステップS401では、制御部280は、外部機器330から型番情報を取得する。型番情報には、上部ターミナルギヤの歯数、下部ターミナルギヤ140の歯数、下部ターミナルギヤ140の外径、チェーンの寸法、上部ターミナルギヤとモータとのギア比、正常時のモータの回転数等が含まれる。また、型番情報には、ハウジング210、軸受160、下部ターミナルギヤ140およびチェーンの位置関係を示す設計値が含まれる。
【0047】
ステップS402では、制御部280は、型番情報から正常時の軸回転速度(型番)を算出する。例えば、制御部280は、正常時のモータの回転数と、上部ターミナルギヤおよびモータのギア比とから、上部ターミナルギヤの回転速度を算出する。そして、制御部280は、上部ターミナルギヤの回転速度と、上部ターミナルギヤの歯数と、下部ターミナルギヤ140の歯数とから、下部ターミナルギヤ140の回転速度(軸回転速度(型番))を算出する。なお、軸回転速度(型番)は、正常時の値であり、時系列の変化は含まれない。
【0048】
ステップS403では、制御部280は、型番情報から、ミリ波レーダー313の測定対象であるチェーンとセンサ部260との距離(距離情報)を算出する。
【0049】
ステップS411では、制御部280は、加速度センサ311が測定した加速度データを取得する。なお、加速度センサ311のサンプリング周波数は、例えば、10ksps(kilo sample(s) per second)程度である。
【0050】
ステップS412では、制御部280は、取得した加速度データから、異常を示す振動が発生した時刻(異常振動の発生時刻)を検出する。
【0051】
ステップS413では、制御部280は、踏段120が下部ターミナルギヤ140で移動した際に発生する一定周期の衝撃音を検出する。換言するならば、制御部280は、踏段120の衝撃音と、衝撃音が発生した時刻とを検出する。
【0052】
ステップS414では、制御部280は、軸回転速度(加速度)を算出する。衝撃音が発生する周期は、軸回転速度に依存しているため、制御部280は、衝撃音が発生する周期と下部ターミナルギヤ140の歯数と踏段120の寸法とから軸回転速度(加速度)を算出する。軸回転速度(加速度)を取得する間隔は、踏段120が下部ターミナルギヤ140に接触するごとであるので、一般には数秒間隔程度となる。
【0053】
ステップS421では、制御部280は、磁気センサ312が測定した測定した磁気データを取得する。なお、磁気センサ312のサンプリング周波数は、例えば、100sps程度である。
【0054】
ステップS422では、制御部280は、取得した磁気データから、軸受160内部の内輪の回転速度、保持器の回転速度、コロ玉の回転速度を算出し、これらの回転速度が不規則に変動した時刻を算出する。なお、ステップS422の各回転速度および各回転速度が不規則に変動した時刻の算出方法は、既存の技術であるので、その説明については省略する。
【0055】
ステップS423では、制御部280は、軸回転速度(磁気)を算出する。ここで、軸と内輪との間ですべりが発生しなかった場合、内輪の回転速度は、軸回転速度と一致する。そこで、制御部280は、軸受160の内輪の回転速度を軸回転速度(磁気)とする。軸回転速度(磁気)を取得する間隔は、磁気センサ312がデータを取得する間隔となるので、0.01秒程度となる。
【0056】
ミリ波レーダー313が取得した信号については、送信信号と受信信号とによる変調信号(ミリ波データ)に2次元FFT(Fast Fourier Transform)を実行することで、測定対象物(本例では、チェーン)までの距離、測定対象物の速度を算出する。2次元FFTによる距離および速度の算出手順についは、周知の技術であるため、ここでは説明は省略する。
【0057】
ステップS431では、制御部280は、ミリ波データをフィルタリング処理する。ミリ波データには、下部ターミナルギヤ140、チェーン等、測定対象物以外の複数の物のデータが含まれているので、制御部280は、フィルタリング処理により測定対象物以外の物のデータを除去する。制御部280は、フィルタリング処理を行った後のミリ波データから軸回転速度(診断用)を算出する。なお、フィルタリング処理については、図5を用いて後述する。
【0058】
ステップS432では、制御部280は、軸回転速度(診断用)を用いて診断処理を行う。診断処理では、例えば、ステップS412により得られた異常振動の発生時刻における、軸回転速度(診断用)の変化を比較することで、軸受160の故障が発生したか否かが診断される。なお、診断処理については、図6を用いて後述する。
【0059】
図5は、フィルタリング処理を説明するための図である。
【0060】
まず、制御部280は、ミリ波データを取得する。取得したミリ波データの一例をグラフ510に示す。
【0061】
次に、制御部280は、取得したミリ波データについて1次元のフーリエ変換(距離のフーリエ変換)を行う。1次元のフーリエ変換した後のミリ波データ(1次元変換データ)の一例をグラフ520に示す。
【0062】
ここで、制御部280は、ステップS403で型番情報から算出した距離(距離521)により、測定対象となるチェーン以外の距離にあるデータをフィルタリングする。このとき、距離521は、センサ部260が設置された場所によって変化するため、フィルタリングの範囲は、型番情報から算出された距離521が含まれる距離のフィルタリングの範囲522(第1のフィルタリング範囲、例えば、距離521を中心に50cm程度の幅)とするのが好適である。
【0063】
次に、制御部280は、1次元変換データから第1のフィルタリング範囲のデータを抽出し、抽出したデータについて2次元のフーリエ変換(速度のフーリエ変換)を行う。2次元のフーリエ変換した後のミリ波データ(2次元変換データ)の一例をグラフ530に示す。
【0064】
最後に、制御部280は、測定対象となるチェーンの速度以外の速度のデータをフィルタリングする。
【0065】
制御部280は、サンプリング時間ごとに上述の一連の処理を行い、所定の時間においてフィルタリング後のデータについての平均をとり、最も高いピークの周波数および/またはしきい値を超える周波数(当該周波数に対応する速度)をチェーンの速度として算出する。なお、チェーンは、下部ターミナルギヤ140と接続されている。下部ターミナルギヤ140は、軸と接続されている。つまり、チェーンと下部ターミナルギヤ140と軸との間では、すべりは生じない。したがって、チェーンの速度から、型番情報を用いて軸回転速度(診断用)が算出できる。
【0066】
ここで、軸受160に故障が発生した際、軸回転速度(診断用)は、型番情報から算出された軸回転速度(型番)、加速度センサ311から算出された軸回転速度(加速度)、磁気センサ312から算出された軸回転速度(磁気)から変化する。したがって、速度のフィルタリングの範囲532(第2のフィルタリング範囲)については、軸回転速度(型番)に対応する周波数531-1、軸回転速度(加速度)に対応する周波数531-2および軸回転速度(磁気)に対応する周波数531-3が含まれ、かつ、前後に幅を持つ値とするのが好適である。
【0067】
なお、軸回転速度(診断用)が取得される間隔は、ミリ波レーダー313がミリ波データを取得する間隔に依存しており、0.01秒での取得が可能である。
【0068】
図6は、診断処理を説明するための図である。
【0069】
制御部280が算出した軸回転速度(診断用)の時間的な変化の一例(軸回転速度変化611)をグラフ610に示す。
【0070】
制御部280は、軸回転速度変化611にしきい値612(例えば、上限しきい値612-1、下限しきい値612-2)を超える変動があるか否かを判定する。制御部280は、しきい値612を超える変動があると判定した場合、軸受160に異常が発生していると判断(軸受160が故障していると診断)する。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態では、型番情報と、ミリ波レーダー以外のセンサのデータとを用いたフィルタリング処理により、ミリ波データから軸回転速度を軸受の診断に必要な時間分解能で取得でき、軸受の故障をより精度よく検出可能となる。例えば、本実施の形態によれば、エスカレーターの下部機械室に設置されている下部ターミナルギヤの軸の両端に設けられているハウジングにて固定されている軸受について、グリス枯渇、異物混入による潤滑不良等により発生する摩耗、傷といった初期段階の異常を一早く検出することができる。
【0072】
本実施の形態では、下部ターミナルギヤの軸受の診断について説明したが、図示しない上部ターミナルギヤ、その他の軸受について診断を行ってもよい。
【0073】
また、センサ部に加速度センサ、磁気センサ、ミリ波レーダーを内蔵した方式について説明したが、各センサが複数のセンサ部に分割され、内蔵されていてもよい。
【0074】
また、ミリ波レーダーのフィルタリング処理に使用する特定の軸回転速度を、型番情報、加速度データおよび磁気データから算出する方式について説明したが、型番情報、加速度データおよび磁気データのうちの少なくとも1つを用いて算出してもよい。
【0075】
また、加速度センサの代わりに、音センサ、アコースティックエミッションセンサ等を用いてもよい。
【0076】
また、通信部は、外部機器と有線にて接続される方式について説明したが、無線通信で接続されてもよい。
【0077】
また、外部機器に記憶された型番情報は、制御部により取得される方式について説明したが、事前に制御部に記憶しておいてもよい。
【0078】
(2)第2の実施の形態
本実施の形態は、第1の実施の形態とは、センサ部を、可搬型のセンサとエスカレーターに常時設置される固定型のセンサとに分けている点が主に異なる。本実施の形態では、第1の実施の形態と異なる点について主に説明する。
【0079】
図7は、診断システム700に係る構成の一例を示す図である。
【0080】
診断システム700は、センサ部710とセンサ部720と制御部730と制御部740と外部機器750とを含んで構成される。
【0081】
センサ部710は、加速度センサ711および磁気センサ712を備える。加速度センサ711の出力信号は、アンプフィルタ部713で処理されたのち、ADC714でデジタル化され、変換された信号(加速度データ)は、制御部730に出力される。磁気センサ712の出力信号は、アンプフィルタ部713で処理されたのち、ADC714でデジタル化され、変換された信号(磁気データ)は、制御部730に出力される。
【0082】
センサ部720は、ミリ波レーダー721を備える。ミリ波レーダー721の出力信号は、アンプフィルタ部722で処理されたのち、ミリ波用プロセッサ部723でデジタル化され、変換された信号(ミリ波データ)は、制御部740に出力される。
【0083】
制御部730は、演算処理を行うプロセッサ部731と、プロセッサ部731で処理されたデータを記憶する記憶部732と、記憶部732により記憶されたデータをPC等の外部機器750に送受信する通信部733と、センサ部710の動作状態等を出力する出力部734とを備える。また、制御部730は、プロセッサ部731、記憶部732、通信部733および出力部734に電源を供給する電源部735を備える。
【0084】
制御部740は、演算処理を行うプロセッサ部741と、プロセッサ部741で処理されたデータを記憶する記憶部742と、記憶部742により記憶されたデータをPC等の外部機器750に送受信する通信部743と、センサ部720の動作状態等を出力する出力部744とを備える。また、制御部740は、プロセッサ部741、記憶部742、通信部743および出力部744に電源を供給する電源部745を備える。
【0085】
外部機器750は、上述した制御部280により行われるフィルタリング処理および診断処理を行う。外部機器750は、診断処理に必要なエスカレーター110の型番情報を記憶する。また、外部機器750は、診断結果を作業員に提示する。
【0086】
外部機器750は、プロセッサ部751と、記憶部752と、通信部753と、出力部754とを備える。外部機器750の機能は、例えば、プロセッサ部751がプログラムを記憶部752に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。また、外部機器750の機能の一部は、外部機器750と通信可能な他のコンピュータ(例えば、センサ部720、制御部730、制御部740等)により実現されてもよい。
【0087】
本実施の形態では、センサ部710は、診断対象となるエスカレーター110に常時設置されている。センサ部720は、作業員により、診断対象となるエスカレーター110に運搬される。センサ部710は、診断対象から取り外されないため、作業員の負担が軽減される。また、センサ部710は、診断対象から取り外されないため、取付箇所、取付方法等に依存した診断に不要となる信号変化の除去が可能となる。
【0088】
本実施の形態では、下部ターミナルギヤの軸受の診断について説明したが、図示しない上部ターミナルギヤ、その他軸受について診断を行ってもよい。
【0089】
また、エスカレーターに一定期間設置されるセンサとして加速度センサおよび磁気センサについて説明したが、加速度センサと磁気センサとの一方を用いて診断を行ってもよい。
【0090】
また、ミリ波データのフィルタリング処理に使用する特定の軸回転速度を、型番情報と、ミリ波データ以外の加速度データおよび磁気データとから算出する方式について説明したが、型番情報、加速度データおよび磁気データのうちの少なくとも1つを用いて算出してもよい。
【0091】
また、加速度センサの代わりに、音センサ、アコースティックエミッションセンサ等を用いてもよい。
【0092】
また、通信部は、外部機器と有線にて接続される方式について説明したが、無線通信で接続されてもよい。
【0093】
(3)第3の実施の形態
本実施の形態は、第2の実施の形態とは、過去の点検時の実績データを用いて診断処理を行う点が主に異なる。
【0094】
図8は、診断システム800に係る構成の一例を示す図である。本実施の形態は、第2の実施の形態で説明した診断システム700に係る構成と同じ構成については、同じ符号を用いて、その説明を適宜省略する。
【0095】
外部機器750は、監視センタに設けられるサーバ装置810と通信回線820を介して通信可能に接続される。外部機器750は、制御部730から受信した加速度データおよび磁気データを任意のタイミング(例えば、一定の周期で、リアルタイムに、作業員による指示に応じて等)でサーバ装置810に送信する。また、外部機器750は、診断結果をサーバ装置810に送信する。
【0096】
サーバ装置810は、プロセッサ部811と、記憶部812と、通信部813と、出力部814とを備える。サーバ装置810の機能は、例えば、プロセッサ部811がプログラムを記憶部812に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。また、サーバ装置810の機能の一部は、サーバ装置810と通信可能な他のコンピュータ(例えば、センサ部720、制御部730、制御部740、外部機器750等)により実現されてもよい。
【0097】
サーバ装置810は、外部機器750から送信されたセンサ部710の加速度データおよび磁気データを受信し、センサ部710を識別可能な情報に対応付けてセンサデータとして記憶部812に記憶する。サーバ装置810は、外部機器750からの要求に応じて、診断処理に要するセンサデータを記憶部812から読み出して外部機器750に送信する。
【0098】
サーバ装置810は、外部機器750から送信された診断結果を受信し、センサ部720を識別可能な情報に対応付けて診断結果データとして記憶部812に記憶する。サーバ装置810は、外部機器750からの要求に応じて、診断処理に要する診断結果データを記憶部812から読み出して外部機器750に送信する。
【0099】
次に、ミリ波レーダー721で測定したミリ波データのフィルタリング処理および診断処理について説明する。
【0100】
図9は、診断システム800が行うフィルタリング処理および診断処理に係る処理の一例を示す図である。なお、ステップS901~ステップS931の処理については、ステップS401~ステップS431の処理と基本的に同様であるので、その説明を適宜省略する。ただし、ステップS901~ステップS931は、制御部280ではなく、外部機器750により実行される。また、ステップS901では、外部機器750は、記憶部752から型番情報を取得する。
【0101】
ステップS932では、外部機器750は、診断結果取得処理を行う。例えば、外部機器750は、サーバ装置810から以前の点検(例えば、定期点検)のときに取得した診断結果を取得する。なお、診断結果には、異常振動、軸受160内部の内輪の回転速度、保持器の回転速度、コロ玉の回転速度、軸回転速度(診断用)等が含まれる。
【0102】
ステップS933では、外部機器750は、軸回転速度(診断用)を用いて診断処理を行う。診断処理では、外部機器750は、今回の点検において得られた異常振動の発生時刻における、軸受160の内部部品の動作、軸回転速度(診断用)の変化、点検間の異常振動の発生頻度の変化、異常振動の発生時の軸受160内部の内輪の回転速度、保持器の回転速度、コロ玉の回転速度等と、以前の点検時に取得した診断結果とを比較することで、軸受160を診断する。なお、診断処理の一例については、図10を用いて後述する。
【0103】
図10は、診断処理を説明するための図である。
【0104】
図10に示すグラフ1010は、軸受160の異常と判断された軸回転速度(診断用)の回数の時間的な変化の一例を示している。
【0105】
外部機器750は、各測定(例えば、数分間)において、軸回転速度(診断用)が不規則に変動した回数(例えば、異常が発生した回数)が所定のしきい値1011を超えたと判断した場合、軸受160の故障が発生したと診断する。
【0106】
診断方法は、上述の内容に限られるものではない。例えば、外部機器750は、異常発生の回数に急激な上昇が見られた場合、軸受160の故障が発生したと診断してもよい。
【0107】
また、例えば、図6とは異なり、各測定において、異常が検出されず、正常範囲において速度が同様にふらついていると判定した場合、正常範囲であったとしても、軸受160の故障が発生したと診断してもよい。
【0108】
本実施の形態によれば、経時的な変化をもとに軸受を診断するので、診断の精度をより高めることができるようになる。
【0109】
本実施の形態では、以前の点検時の診断結果に加えて、点検間のデータを用いてもよい。点検間のデータを用いることで、より精度よく診断が可能となる。
【0110】
また、本実施の形態では、エスカレーターに一定期間設置されるセンサとして加速度センサおよび磁気センサについて説明したが、加速度センサと、磁気センサとの一方で診断を行ってもよい。
【0111】
また、ミリ波データのフィルタリング処理に使用する特定の軸回転速度を、型番情報と、ミリ波データ以外の加速度データおよび磁気データとから算出する方式について説明したが、型番情報、加速度データおよび磁気データのうちの少なくとも1つを用いて算出してもよい。
【0112】
また、加速度センサの代わりに、音センサ、アコースティックエミッションセンサ等を用いてもよい。
【0113】
また、記憶部に記憶された以前の点検時の診断結果および/または点検間のデータを利用する方式について説明したが、この方式に限られるものではない。例えば、エスカレーターに常時設置されるセンサ部から得られた点検間のデータを利用する方式を利用してもよいし、両方を利用してもよい。
【0114】
また、点検間のデータを利用する方式を利用しない場合は、第1の実施の形態を用いて説明したように、加速度センサまたは磁気センサがミリ波レーダーと同じセンサ部に内蔵され、一定期間、設置されない方式であってもよい。
【0115】
また、記憶部に記憶された以前の点検時の診断結果は、通信回線を介して取得される方式について説明したが、事前に作業用の外部機器に記憶しておいてもよい。
【0116】
(4)他の実施の形態
なお、上述の実施の形態においては、本発明を診断装置に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
【0117】
また、上記の説明において、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0118】
上述した実施の形態は、例えば、以下の特徴的な構成を有する。
【0119】
可搬型の診断装置(例えば、診断装置300)であって、エスカレーター(例えば、エスカレーター110)に設けられる軸受(例えば、軸受160)により支持される軸の回転に伴って動く機器(例えば、チェーン、踏段120、ハンドレール130)の動作を測定可能なミリ波センサ(例えば、ミリ波レーダー313)を備えるセンサ部(例えば、センサ部260)と、前記軸に係る特定の回転速度(例えば、軸回転速度(型番)、軸回転速度(加速度)、軸回転速度(磁気))を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出し、算出した前記軸の回転速度より前記軸受が故障しているかを診断する制御部(例えば、制御部280)と、を備える。
【0120】
上記構成によれば、例えば、軸の回転速度以外の速度がミリ波センサにより測定される場合であっても、軸に係る特定の回転速度を用いて、ミリ波センサで取得された測定データをフィルタリング処理することで、測定データから、軸の回転速度以外の速度のデータを除去することができる。よって、ミリ波センサを用いて適切に軸の回転速度を算出することができ、算出した軸の回転速度より軸受を診断することができる。
【0121】
正常時の前記軸の回転速度を算出可能な情報(例えば、上部ターミナルギヤの歯数、下部ターミナルギヤ140の歯数、上部ターミナルギヤとモータとのギア比、正常時のモータの回転数)を含む設計情報(例えば、型番情報)を記憶する記憶部(例えば、記憶部322)を備え、前記制御部は、前記設計情報から、正常時の前記軸の回転速度を前記特定の回転速度として算出する(例えば、ステップS402)。
【0122】
上記構成によれば、例えば、設計情報から算出した正常時の軸の回転速度を用いて、ミリ波センサで取得された測定データをフィルタリング処理することができるようになる。
【0123】
前記センサ部は、前記軸受の内輪の回転速度を測定可能な磁気センサ(例えば、磁気センサ312)を備え、前記制御部は、前記磁気センサの測定データから前記軸受の内輪の回転速度を、前記特定の回転速度として算出する(ステップS422)。
【0124】
上記構成によれば、例えば、磁気データから算出した軸受の内輪の回転速度を用いて、ミリ波センサで取得された測定データをフィルタリング処理することができるようになる。
【0125】
前記センサ部は、前記軸の回転に伴って動く機器(例えば、踏段120)の振動を測定可能な加速度センサ(例えば、加速度センサ311)を備え、前記制御部は、前記加速度センサの測定データから前記機器の衝撃音の周期を特定し、特定した周期と前記軸と一体となって回転するギアの数とから前記軸の回転速度を算出して前記特定の回転速度とする(例えば、ステップS414)。付言するならば、ミリ波センサが測定対象とする機器と、加速度センサが測定対象とする機器とは、同じ機器であってもよいし、異なる機器であってもよい。
【0126】
上記構成によれば、例えば、加速度データから算出した軸の回転速度を用いて、ミリ波センサで取得された測定データをフィルタリング処理することができるようになる。
【0127】
前記制御部は、前記ミリ波センサで取得された測定データについて速度のフーリエ変換(例えば、2次元のフーリエ変換)を行い、前記速度のフーリエ変換した後の測定データにおいて、前記特定の回転速度の情報を含む範囲(例えば、速度のフィルタリングの範囲532)をフィルタリングの範囲として設定する。
【0128】
上記構成によれば、例えば、軸受の異常が発生した際、特定の回転速度は変化するが、かかる変化があったとしても、フィルタリングの範囲を設定することで、フィルタリング処理を適切に行うことができる。
【0129】
前記制御部は、前記機器と前記ミリ波センサとの距離を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記軸に係る特定の回転速度を用いて、前記フィルタリング処理した後の測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出し(ステップS431)、算出した前記軸の回転速度より前記軸受が故障しているかを診断する(ステップS432)。
【0130】
上記構成によれば、例えば、測定対象の機器とミリ波センサとの距離でフィルタリング処理することで、当該距離からしきい値以上離れているデータを除去できるので、より適切に軸の回転速度を算出することができるようになる。
【0131】
前記制御部は、前記ミリ波センサで取得された測定データについて距離のフーリエ変換(例えば、1次元のフーリエ変換)を行い、前記距離のフーリエ変換した後の測定データにおいて、前記機器と前記ミリ波センサとの距離の情報を含む範囲(例えば、距離のフィルタリングの範囲522)をフィルタリングの範囲として設定する。
【0132】
上記構成によれば、例えば、作業員により診断装置がエスカレーターに設置される際、距離は設置場所によって変化するが、かかる変化があったとしても、フィルタリングの範囲を設定することで、フィルタリング処理を適切に行うことができる。
【0133】
前記センサ部は、前記軸受が固定されているハウジング(例えば、ハウジング210)の上に設置される。
【0134】
上記構成によれば、例えば、適切に軸受の内輪の回転速度を測定することができる。
【0135】
診断システム(例えば、診断システム700)は、エスカレーターに設けられる軸受により支持される軸の回転に伴って動く機器の動作を測定可能なミリ波センサを備える可搬型のセンサ部(例えば、センサ部720)と、前記軸に係る回転速度を測定可能な所定のセンサ(例えば、加速度センサ、磁気センサ、音センサ、アコースティックエミッションセンサ等)を備え、前記エスカレーターに設置されている固定型のセンサ部(例えば、センサ部710)と、前記所定のセンサにより測定された前記軸に係る回転速度(例えば、軸回転速度(加速度)、軸回転速度(磁気))および/または前記軸に係る特定の回転速度(例えば、軸回転速度(型番)、軸回転速度(加速度)、軸回転速度(磁気))を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出し、算出した前記軸の回転速度より前記軸受が故障しているかを診断する制御部(例えば、外部機器750)と、を備える。
【0136】
上記構成によれば、第2のセンサ部は、エスカレーターに設置されているので、例えば、点検のたびに、測定の環境が変わってしまい、軸受の診断の信頼性を保つことができなくなってしまう事態を回避することができる。また、例えば、点検のたびに、第2のセンサ部を設置する手間を省くことができる。
【0137】
エスカレーターに設けられる軸受(例えば、軸受160)により支持される軸の回転に伴って動く機器(例えば、チェーン、踏段120、ハンドレール130)の動作を測定可能なミリ波センサ(例えば、ミリ波レーダー721)を用いて前記軸受の故障を診断する診断方法であって、制御部(例えば、外部機器750)が、前記軸に係る特定の回転速度を用いて、前記ミリ波センサで取得された測定データのフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理した後の測定データから前記軸の回転速度を算出する第1のステップと、制御部(例えば、外部機器750)が、前記第1のステップで算出された前記軸の回転速度を示す情報(例えば、軸回転速度(診断用)が不規則に変動した回数、所定の期間の軸回転速度(診断用))を記憶部(例えば、記憶部812)に記憶する第2のステップと、制御部(例えば、外部機器750)が、前記記憶部に記憶されている前記軸の回転速度を示す情報を参照し、経時的な変化をもとに前記軸受が故障しているかを診断する第3のステップと、を備える。
【0138】
上記構成によれば、例えば、経時的な変化から軸受の故障を診断するので、より精確に軸受の故障を検出することができる。
【0139】
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
【0140】
上述した構成において「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式におけるリストに含まれる項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができると理解されたい。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」の形式においてリストされた項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができる。
【符号の説明】
【0141】
100……診断システム、110……エスカレーター、120……踏段、130……ハンドレール、140……下部ターミナルギヤ、150……下部機械室、160……軸受。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10