(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】直列接続された太陽電池又はその他の電源用の動作点制御回路装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20221122BHJP
G05F 1/67 20060101ALI20221122BHJP
H02S 40/30 20140101ALI20221122BHJP
【FI】
H02M3/155 H
G05F1/67 A
H02S40/30
(21)【出願番号】P 2019155941
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】浦部 心一
(72)【発明者】
【氏名】清水 敏久
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038245(JP,A)
【文献】清水敏久,"太陽電池発電システムの発電動作点制御回路" ,FBテクニカルニュース,No.56,古河電池株式会社,2000年11月01日,pp.22-27
【文献】清水敏久他3名,"Generation Control Circuit for Photovoltaic Modules",IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS,Vol.16,NO.3,IEEE,2001年05月,pp.293-300
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
G05F 1/67
H02S 40/30
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の電源セルのための動作点制御回路装置であって、
直列に接続された2k個(kは、正の整数)の選択的導通手段にして、選択的に、それぞれの両端子間が導通した導通状態又は前記両端子間の導通が遮断された遮断状態となる選択的導通手段と、
前記選択的導通手段の各々に並列に接続され互いに直列に接続された2k個のコンデンサと、
前記選択的導通手段の端子と前記コンデンサの端子との間を接続する回路線のうちの一方の側から数えて2i番目(iは、1からkまでの整数)の回路線のそれぞれに挿入された反転電圧発生手段にして、それぞれ、その両端間にて双方向に電流が流通可能であり、且つ、前記両端間に周期的に反転する電圧を発生する反転電圧発生手段と、
一対の出力端子と、
前記一対の出力端子の間にて、前記2k個のコンデンサの少なくとも一部に対して並列に接続され互いに直列に接続されるn個(nは、1から2kまでの整数)の電源セルの各々の陽極及び陰極に接続される複数の電極用接続端子と、
前
記反転電圧発生手段の両端間に発生する電圧を周期的に反転するよう制御する回路制御手段と、
前記出力端子間の出力電圧を決定する基準電圧を決定する基準電圧決定手段と
を含み、
前記回路制御手段によって、所定の周期にて、前記直列に接続された前記選択的導通手段の列に於いて、前記電源セル列の陰極側から数えて奇数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが導通状態となり前記電源セル列の陰極側から数えて偶数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが遮断状態となる第一の相と、前記電源セル列の陰極側から数えて奇数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが遮断状態となり前記電源セル列の陰極側から数えて偶数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが導通状態となる第二の相との間で、前記直列に接続された前記選択的導通手段の状態が交互に切換えられ且つ前記反転電圧発生手段の発生電圧が前記第一の相のときに前記コンデンサの側が高くなり前記第二の相のときに前記選択的導通手段の側が高くなるように前記反転電圧発生手段の発生電圧の向きが交互に反転され、
前記電極用接続端子に接続される前記電源セルの各々の動作電圧が前記回路制御手段によって制御される前記選択的導通手段の第一の相と第二の相との時間幅の比率と前記基準電圧とに基づいて決定される装置にして、更に、
前記選択的導通手段の列のうちの両端の前記選択的導通手段を除く前記選択的導通手段の各々に並列に接続され互いに直列に接続された2(k-1)個の補助コンデンサと、
前記選択的導通手段の端子と前記補助コンデンサの端子との間を接続する回路線のうちの一方の側から数えて2j番目(jは、1からk-1までの整数)の回路線のそれぞれに挿入された補助反転電圧発生手段にして、その両端間にて双方向に電流が流通可能であり、且つ、前記選択的導通手段の状態の前記第一相と前記第二相との間の切換に同期して前記両端間にて反転する電圧を発生する補助反転電圧発生手段と
を含み、
前記補助反転電圧発生手段の発生電圧が前記第一の相のときに前記選択的導通手段の側が高くなり前記第二の相のときに前記補助コンデンサの側が高くなるように前記補助反転電圧発生手段の発生電圧の向きが交互に反転される装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、
前記選択的導通手段の全てがそれぞれに対応して接続された前記コンデンサの両端子間を選択的に互いに導通するスイッチング手段であり、
前記反転電圧発生手段及び前記補助反転電圧発生手段がインダクタであり、
前記回路制御手段が前記スイッチング手段の状態を前記第一の相と前記第二の相との間にて切換える切換制御手段とを含み、
前記切換制御手段による前記スイッチング手段の前記第一の相と前記第二の相との間の切換制御に同期して前記反転電圧発生手段及び前記補助反転電圧発生手段の発生電圧が反転し、
前記基準電圧が前記一対の出力端子間の出力電圧であり、前記出力電圧と前記スイッチング手段の前記第一の相と前記第二の相との時間幅の比率に基づいて前記電極用接続端子に接続される前記電源セルの各々の動作電圧が決定される装置。
【請求項3】
請求項2の装置であって、前記コンデンサの全ての各々に対して並列に前記電源セルが接続される装置。
【請求項4】
請求項2の装置であって、前記コンデンサの全てが前記出力端子間にて直列に接続されている装置。
【請求項5】
請求項1の装置であって、
前記選択的導通手段の列の一方の側から数えて2番目から2k番目までの前記選択的導通手段の列が、それぞれ陽極と陰極を有し該陽極から該陰極への方向のみ電流の流通を許す整流手段が直列接続された整流手段列であり、前記整流手段列の陰極側が前記電源セル列の陽極側に接続され、
前記回路制御手段が前
記反転電圧発生手段のうちの前記選択的導通手段の列の前記一方の側から数えて1番目の第一の反転電圧発生手段の両端間にて、向きの周期的に反転する電圧
にしてその大きさが前記基準電圧の関数である電圧を発生させる装置。
【請求項6】
請求項5の装置であって、
前記反転電圧発生手段及び前記補助反転電圧発生手段がインダクタであり、
前記選択的導通手段の列の前記一方の側から数えて1番目の前記選択的導通手段がそれに対応して接続された前記コンデンサの両端子間を選択的に互いに導通するスイッチング手段であり、
前記回路制御手段が前記スイッチング手段の両端子間の状態を周期的に導通状態と遮断状態との間で交互に切換える切換制御手段を含み、
前記基準電圧決定手段が前記スイッチング手段に対応する前記コンデンサに対して並列に接続され前記選択的導通手段の列の前記一方の側に直列に接続された電圧源にして、その陽極と陰極との間に任意に設定される大きさの電圧を発生する電圧源を含み、前記基準電圧が前記電圧源の供給電圧であり、
前記電圧源の供給電圧と前記切換制御手段によって制御される前記選択的導通手段の前記第一の相と前記第二の相との時間幅の比率とに基づいて、前記反転電圧発生手段及び前記補助反転電圧発生手段の発生電圧並びに前記電極用接続端子に接続される前記電源セルの各々の動作電圧が決定される装置。
【請求項7】
請求項6の装置であって、前記一対の出力端子間に前記複数の電源セルと前記電圧源が接続されている装置。
【請求項8】
請求項6の装置であって、前記一対の出力端子間に前記複数の電源セルが接続され、前記電圧源が前記一対の出力端子間の外に接続されている装置。
【請求項9】
請求項5の装置であって、
前記反転電圧発生手段及び前記補助反転電圧発生手段がインダクタであり、
前記選択的導通手段の列の前記一方の側から数えて1番目の前記選択的導通手段がそれに対応して接続された前記コンデンサの両端子間を選択的に互いに導通するスイッチング手段であり、
前記回路制御手段が前記スイッチング手段の両端子間の状態を周期的に導通状態と遮断状態との間で交互に切換える切換制御手段を含み、
前記基準電圧決定手段が前記基準電圧として前記一対の出力端子間の出力電圧を決定し、
前記出力電圧と前記切換制御手段によって制御される前記選択的導通手段の第一の相と第二の相との時間幅の比率とに基づいて、前記反転電圧発生手段及び前記補助反転電圧発生手段の発生電圧並びに前記電極用接続端子に接続される前記電源セルの各々の動作電圧が決定される装置。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかの装置であって、前記スイッチング手段がその両端子間の状態を周期的に導通状態と遮断状態との間で等間隔にて交互に切換えるように制御される装置。
【請求項11】
請求項5の装置であって、
前記選択的導通手段の列の前記一方の側から数えて1番目の前記選択的導通手段が前記整流手段列に直列に接続された整流手段であり、
前記回路制御手段が、一次コイルと二次コイルとを有する変圧器の前記一次コイルを含み、前記第一の反転電圧発生手段が前記変圧器の前記二次コイルであり、
前記基準電圧決定手段が前記変圧器の前記二次コイルの両端に於いて任意に設定される大きさの、向きが周期的に反転する前記基準電圧を発生させる回路手段であり、
前記第一の反転電圧発生手段の両端間の発生電圧と前記選択的導通手段の前記第一の相と前記第二の相との時間幅の比率とに基づいて、前記電極用接続端子に接続される前記電源セルの各々の動作電圧が決定される装置。
【請求項12】
請求項11の装置であって、前記第一の反転電圧発生手段の他の前記反転電圧発生手段が前記変圧器の前記二次コイルであり、前記第一の反転電圧発生手段と同期して発生電圧が周期的に反転する装置。
【請求項13】
請求項11の装置であって、前記第一の反転電圧発生手段の他の前記反転電圧発生手段及び前記補助反転電圧発生手段がインダクタであり、前記第一の反転電圧発生手段と同期して発生電圧が周期的に反転する装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかの装置であって、前記電源セルが太陽電池セル、化学電池セル、燃料電池セル、蓄電器セル、発電機、熱電素子及び/又はこれらの組み合わせである装置。
【請求項15】
請求項1乃至13の装置であって、前記電源セルが太陽電池セルであり、前記複数の電源セルのうちの最も受光量の大きい電源セルの発電電圧がその最大電力点に於ける発電電圧に設定される装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかの装置であって、前記回路制御手段が前記第一の相と前記第二の相との時間幅が互いに等しくなるように前記選択的導通手段の状態を切換える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続された複数の太陽電池セル又はその他の複数の電源セル(化学電池、蓄電器、燃料電池、発電機、熱電素子等)の動作点を制御する回路装置(動作点制御回路装置)に係り、より詳細には、太陽電池セル又はその他の電源セルのそれぞれに於いて互いに異なる電流が流通できるように直列接続された太陽電池セル又はその他の電源セルの動作電圧を制御する動作点制御回路装置に係る。
【背景技術】
【0002】
一つの太陽電池(セル)の発電電圧は、一般的に、種々の機械器具や充電器の動作電圧よりも低いので、そのような機械器具の作動や充電器の充電に太陽電池を利用するための一つの方法として、太陽光発電システムに於いて、複数個の太陽電池セルを直列に接続した構成(太陽電池モジュール)が採用される場合がある。しかしながら、太陽電池セルが単に直列に接続されただけの構成の太陽電池モジュールの場合、各太陽電池セルの設置角度の違いや建造物等によって一部のセル上に影が生じ、セル間の受光量にばらつきが生じると、発電量の小さいセルは抵抗(逆バイアスのダイオード)となり、太陽電池モジュールの出力を低下させることとなり得る。
【0003】
より具体的に説明すると、
図10(A)を参照して、この分野に於いてよく知られている如く、一般に、太陽電池は、或る量の光を受けている状態に於いて、発電電圧が0Vから或る値まで増大すると共に電流(細実線I
100~I
25)が徐々に低減し、発電電圧が更に増大すると、電流が急激に低減する発電電圧-電流特性を有しているので、発電電力には、その大きさが最大となる最適な動作点×(最大電力点又は最適動作点と称される。)が存在する。そして、図示の如く、太陽電池の受光量が低減していくと(R=100%→R=25%)、その発電電圧-電流特性は、発電電圧に対する電流(I
100→I
25)が低減する方向に変化し、従って、発電電力(P
100→P
25)も低下して、図中点線にて示されているように、最大出力点×も変化する。このような特性の複数の太陽電池セルが回路に於いて単に直列に接続されている場合には、全ての太陽電池セルに共通の電流が流通することとなるので、全ての太陽電池セルの受光量が実質的に等しく、それらの最大出力点が実質的に一致しているときには、最大出力点に於ける電流が等しくなり、全ての太陽電池セルを最大出力点にて動作させることが可能となるが、太陽電池モジュール内の一部の太陽電池セルの受光量が影などによって低減すると、その受光量が低減された太陽電池セルでは、受光量の大きいセルと共通の電流が流れることから、その動作点が最大出力点から外れ、その発電量が、受光量の低減に対応するよりも大きな程度にて低減することとなる。また、受光量の低減された太陽電池セルは、それ自体が、かかる電流に対する抵抗となるので、電力損失を生じ、太陽電池モジュールの更なる出力低下が惹起されることにもなる。即ち、上記の如く、太陽電池モジュール内の太陽電池セル間に受光量のばらつきがあると、それに起因して、太陽電池モジュールの受光量に対応した最大の発電出力が得られないだけでなく、出力の損失も生ずることとなる。
【0004】
そこで、そのような太陽電池モジュール内に於ける太陽電池セル毎の受光量のばらつきに起因する出力低下を回避するための装置(「部分陰補償回路」などとも称される。)として、直列に接続された太陽電池セルの各々の勳作点を個別に制御することが可能な発電動作点制御回路装置が提案されている(非特許文献1~3)。かかる発電動作点制御回路装置は、複数の太陽電池セルが直列に接続された回路構成に対して、多段昇降圧チョッパ回路を用いて、太陽電池セル毎に、発電電圧を制御して、互いに異なる電流を流通させることが可能であり、これにより、直列接続された複数個の太陽電池セルの受光量が異なる場合であっても、各太陽電池セルにそれぞれの最大出力点に於ける電流が流通するように発電電圧が調節可能であり、従って、全ての太陽電池セルに実質的に最大出力点にて発電させることが可能となっている。
【0005】
また、特許文献1では、上記の如き発電動作点制御回路装置を用いた構成に於いて、
図10(B)に例示されている如く、各太陽電池セルに対応して直列に接続されたn個(nは、正の整数)のスイッチング手段の列のうち、その一方から数えて2k-1番目(kは、1からn/2までの全ての整数)と2k番目に接続されたスイッチング手段の組の全ての両端の各々に対してと2κ-2番目(κは、2からn/2までの全ての整数)と2κ-1番目に接続されたスイッチング手段の組の全ての両端の各々に対して並列にコンデンサ(「電圧安定化コンデンサ」と称されている。)が接続され、スイッチング手段の列の一方から数えて奇数番目に接続されたスイッチング手段の全てが導通状態(ON)となり、偶数番目に接続されたスイッチング手段の全てが遮断状態(OFF)となる第一の相と、奇数番目に接続されたスイッチング手段の全てが遮断状態(OFF)となり、偶数番目に接続されたスイッチング手段の全てが導通状態(ON)となる第二の相との間で直列に接続されたスイッチング手段の状態が交互に切換えられる構成が提案されている。かかる構成に於いては、太陽電池セル毎に互いに異なる大きさの電流の流通が許される状態で、スイッチング手段のデューティ比(所定の周期の長さ、即ち、導通状態の期間と遮断状態の期間の和、に対する遮断状態の期間の長さの比)が、太陽電池セル毎に調節されるのではなく、一律に、例えば、1/2に設定され、全ての太陽電池セルの発電電圧を一律に同じ値に調節することが可能となる。この構成の場合、
図10(A)から理解される如く、太陽電池セルの受光量が低減すると、(R=100%~25%)、発電電圧に対する発電電力(P
100~P
25)及び電流値(I
100~I
25)が低減する方向に発電電圧-電流特性が変化し、これに対応して最大電力点(×)に対応する発電電圧も変化することとなるので、各太陽電池セルの実際の発電電圧を、例えば、受光量が最大の太陽電池セル(R=100%)の最大電力点に於ける発電電圧(一点鎖線:V
mpp100)に、一律に調節したときには、受光量の少ない太陽電池セル(R=75%、50%、25%)に於いては、実際の発電電圧が最大電力点に於ける発電電圧から外れてしまい、発電電力(P
75、P
50、P
25)が各太陽電池セルの最大電力点に於ける電力に比して低減してしまうこととなる。しかしながら、図からも理解される如く、一般に、各々の受光量の場合の発電電力特性に於いて、受光量の変化に伴う最大電力点×の電圧値の変化幅は比較的小さく、最大電力点付近での電圧値の変化に対する発電電力値の変化も比較的緩やかであるので、各太陽電池セルの実際の発電電圧を一律に調節することによる動作点の最大電力点からのずれに起因して発生し得る発電電力の低減量ΔP1、ΔP2、ΔP3は、然程に大きくならないことが理解される。かくして、
図10(B)の如き構成によれば、既に述べた如き太陽電池セル間の受光量のばらつきに起因する出力低下及び/又は損失を小さく抑えつつ、スイッチング手段のデューティ比を太陽電池セル毎に調節する必要がなく、一律に設定すればよいので、スイッチング手段の切換え制御が簡単化され、また、その制御の設定に要する時間と労力を大幅に低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】清水敏久他6名、太陽/風カエネルギー講演論文集、1996年57-60頁
【文献】清水敏久、FBテクニカルニュース No.56 2000年11月1日22-27頁
【文献】清水敏久他3名、“Generation Control Circuit for Photovoltaic Modules” IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL.16, NO. 3, MAY 2001年 293-300頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の如く太陽電池セルを直列接続してなる太陽電池モジュールの電圧・電流の制御に於いては、出力電力を維持しつつジュール損失を低減して効率改善を図るために、出力電流を低減する一方で出力電圧を上昇させる構成が採用されることがある。例えば、最近では、メガソーラーなど大規模の発電設備に於いて、出力電圧が1500Vにまで上昇させられることもあり、その場合には、太陽電池モジュール1枚の出力電圧が30Vとすると、500枚のモジュールを直列接続することになる。このように、直列接続されるモジュール数は、今後、増加する可能性もある。
【0009】
上記の如く直列接続される太陽電池の数が増えると、それに伴って、部分陰補償回路として用いられる発電動作点制御回路装置に於いて、各太陽電池に対応して設けられる昇降圧チョッパ回路の段数も増加することとなる。その際、もし昇降圧チョッパ回路の段数が増加することで、太陽電池の直列接続数の増加で得られるジュール損失の抑制分以上に発電動作点制御回路装置の損失が増加してしまうときには、ジュール損失の抑制のために太陽電池の直列接続数を増やして出力電圧を上昇させる意味がなくなってしまう。従って、発電動作点制御回路装置に於いては、昇降圧チョッパ回路の段数の増加による損失の増大が発生しないか又はできるだけ抑制できるようになっていることが好ましい。この点に関し、例えば、
図10(B)に例示された構成の回路装置は、後の実施形態の欄にて説明される如く、直列接続された太陽電池列の一部が部分陰下に入り、相対的に出力電流の低くなった太陽電池が出来ると、出力端子間を流れる電流の一部がスイッチング手段と電圧安定化コンデンサを通って出力電流の低くなった太陽電池を迂回するよう作動するところ、その電流の迂回のために、出力端子間の(部分陰から離れているものも含めて)電圧安定化コンデンサCv1…の全ての間に於いて、バケツリレーの如く、(スイッチング手段を介した)電荷の受け渡しが生ずる構成となっている。その場合、コンデンサには寄生抵抗があり、スイッチング手段には、ON抵抗があるので、上記の電圧安定化コンデンサ間での電荷の受け渡しによって、全ての電圧安定化コンデンサで充放電によるジュール損失が生じ、全てのスイッチング手段で電流通過によるジュール損失が生ずることとなる。そして、この構成に於いて、昇降圧チョッパ回路の段数が増加して、電圧安定化コンデンサの数が増えると、電荷の受け渡しに関わる電圧安定化コンデンサとスイッチング手段の数が増えることになるので、電圧安定化コンデンサ間の電荷の受け渡しに起因する上記のジュール損失も増大することとなる。そこで、もしそのような太陽電池列の部分陰に起因する全ての電圧安定化コンデンサ間に於ける電荷の受け渡しが生じないように回路構成を改良して、電圧安定化コンデンサ及びスイッチング手段で生ずるジュール損失が低減できれば、非常に有利である。
【0010】
かくして、本発明の一つの主な課題は、複数個の直列に接続された太陽電池セルの列を含む太陽電池モジュールに於いて、セル毎の受光量によらず、全てのセルの発電電圧を一律に調節可能な形式の発電動作点制御回路装置であって、太陽電池セルに対応して設けられる昇降圧チョッパ回路の段数の増加による損失ができるだけ増大しないように構成されている装置を提供することである。なお、「発電動作点制御回路装置」とは、直列に接続された太陽電池セルの各々の発電電圧・電流を制御するための回路部分(太陽電池セルへの接続端子、ダイオード、コンデンサ、インダクタ又はトランス等)から成る装置を指し、「太陽光発電装置」という場合には、直列に接続された太陽電池セルから成る太陽電池モジュールと発電動作点制御回路とを含む構成の装置を指すものとする。
【0011】
ところで、後により詳細に説明される本発明による装置の回路構成は、太陽電池に限らず、任意の電力を出力する電源素子(例えば、化学電池、燃料電池、蓄電器、発電機、熱電素子など)が直列に接続されたモジュールに於ける各電源素子の動作電圧の制御にも利用可能である。従って、本発明の更なる課題は、複数個の太陽電池及び/又は電源素子(電池セル、蓄電器セル、発電機、熱電素子等)を直列に接続したモジュールに於ける個々の電源素子(セル)の動作点を制御する動作点制御回路装置であって、電源素子(セル)に対応して設けられる昇降圧チョッパ回路の段数の増加による損失ができるだけ増大しないように構成されている
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上記の課題の一つは、
直列接続された複数の電源セルのための動作点制御回路装置であって、
直列に接続された2k個(kは、正の整数)の選択的導通手段にして、選択的に、それぞれの両端子間が導通した導通状態又は前記両端子間の導通が遮断された遮断状態となる選択的導通手段と、
前記選択的導通手段の各々に並列に接続され互いに直列に接続された2k個のコンデンサと、
前記選択的導通手段の端子と前記コンデンサの端子との間を接続する回路線のうちの一方の側から数えて2i番目(iは、1からkまでの整数)の回路線のそれぞれに挿入された反転電圧発生手段にして、それぞれ、その両端間にて双方向に電流が流通可能であり、且つ、前記両端間に周期的に反転する電圧を発生する反転電圧発生手段と、
一対の出力端子と、
前記一対の出力端子の間にて、前記2k個のコンデンサの少なくとも一部に対して並列に接続され互いに直列に接続されるn個(nは、1から2kまでの整数)の電源セルの各々の陽極及び陰極に接続される複数の電極用接続端子と、
前記反転電圧発生手段の両端間に発生する電圧を周期的に反転するよう制御する回路制御手段と、
前記出力端子間の出力電圧を決定する基準電圧を決定する基準電圧決定手段と
を含み、
前記回路制御手段によって、所定の周期にて、前記直列に接続された前記選択的導通手段の列に於いて、前記電源セル列の陰極側から数えて奇数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが導通状態となり前記電源セル列の陰極側から数えて偶数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが遮断状態となる第一の相と、前記電源セル列の陰極側から数えて奇数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが遮断状態となり前記電源セル列の陰極側から数えて偶数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが導通状態となる第二の相との間で、前記直列に接続された前記選択的導通手段の状態が交互に切換えられ且つ前記反転電圧発生手段の発生電圧が前記第一の相のときに前記コンデンサの側が高くなり前記第二の相のときに前記選択的導通手段の側が高くなるように前記反転電圧発生手段の発生電圧の向きが交互に反転され、
前記電極用接続端子に接続される前記電源セルの各々の動作電圧が前記回路制御手段によって制御される前記選択的導通手段の第一の相と第二の相との時間幅の比率と前記基準電圧とに基づいて決定される装置にして、更に、
前記選択的導通手段の列のうちの両端の前記選択的導通手段を除く前記選択的導通手段の各々に並列に接続され互いに直列に接続された2(k-1)個の補助コンデンサと、
前記選択的導通手段の端子と前記補助コンデンサの端子との間を接続する回路線のうちの一方の側から数えて2j番目(jは、1からk-1までの整数)の回路線のそれぞれに挿入された補助反転電圧発生手段にして、その両端間にて双方向に電流が流通可能であり、且つ、前記選択的導通手段の状態の前記第一相と前記第二相との間の切換に同期して前記両端間にて反転する電圧を発生する補助反転電圧発生手段と
を含み、
前記補助反転電圧発生手段の発生電圧が前記第一の相のときに前記選択的導通手段の側が高くなり前記第二の相のときに前記補助コンデンサの側が高くなるように前記補助反転電圧発生手段の発生電圧の向きが交互に反転される装置
によって達成される。
【0013】
上記の構成に於いて、「電源セル」とは、太陽電池セル、或いは、例えば、化学電池、燃料電池、蓄電器、発電機、熱電素子などの任意の、陽極から電流を放出し、陰極にて電流が流入することにより、電力を出力する任意の電源素子であってよい。「選択的導通手段」とは、両端子を有し、選択的に、その両端子間が導通した導通状態(ON状態)と両端子間の導通が遮断された遮断状態(OFF状態)のいずれかにもたらされる任意の手段又は素子であってよく、具体的には、MOSFET又はその他のこの分野に於いて利用されているトランジスタなどの、制御入力に応答して、一対の端子間の電流の導通状態と遮断状態とが切換えられる任意のスイッチング手段、又は、「ダイオード」などのその陽極から陰極への方向のみ電流の流通を許す整流手段のいずれかであってよい(後に説明される如く、回路の構成に応じて、いずれかが適宜選択される。)。「コンデンサ」と「補助コンデンサ」とは、通常のコンデンサであってよく、上記の如く、それぞれ、直列に接続され且つ選択的導通手段の列に対して並列に接続される。「コンデンサ」の列の少なくとも一部の各々に対して、上記の電源セルが、それぞれ並列にされ、それらが直列に接続されることとなる(「補助コンデンサ」の用語は、電源セルが並列に接続される列の「コンデンサ」と区別する目的で用いられている。)。なお、本発明の構成に於いて、電源セルは、特に指定した場合を除き、コンデンサ列の全てのコンデンサに対して接続されなくてもよい。「反転電圧発生手段」と「補助反転電圧発生手段」は、その両端間に電流が流通可能な導体にて構成され、且つ、任意の原理にて両端間に起電力が発生させられる素子又は手段であってよい。「反転電圧発生手段」には、後に示す如く、典型的には、インダクタ又は変圧器(トランス)のコイルが採用されるが、これに限定されない。上記の構成に於いては、後述の図面からも理解されるように、「反転電圧発生手段」は、「選択的導通手段」と(電源セルが並列接続される側の)「コンデンサ」との間にて少なくとも一つ置きに挿入され、「補助反転電圧発生手段」は、好適には、「選択的導通手段」と「補助コンデンサ」との間にて「反転電圧発生手段」の挿入された箇所とは互い違いとなるように一つ置きに挿入されることとなる。「回路制御手段」は、後に例示される如く、任意の態様にて、「反転電圧発生手段」の両端間に発生する電圧を制御する任意の手段であってよく、具体的には、その動作によって、上記の如き第一の相(直列接続された選択的導通手段の列に於いて、電源セル列の陰極側から数えて奇数番目に接続された選択的導通手段の全てが導通状態となり、電源セル列の陰極側から数えて偶数番目に接続された選択的導通手段の全てが遮断状態となる相)と第二の相(直列接続された選択的導通手段の列に於いて、電源セル列の陰極側から数えて奇数番目に接続された選択的導通手段の全てが遮断状態となり、電源セル列の陰極側から数えて偶数番目に接続された前記選択的導通手段の全てが導通状態となる相)との間にて直列接続された選択的導通手段の状態を交互に(任意に設定されてよい)所定の周期にて切換えることと、これに同期して反転電圧発生手段の発生電圧の向きを反転することを任意の態様にて達成するよう構成された手段であってよい。なお、キルヒホッフの法則により、反転電圧発生手段の両端電圧は、第一の相のとき、コンデンサ側が高くなり、第二相のとき、選択的導通手段側が高くなる。更に、「回路制御手段」の作動により、選択的導通手段の状態の切換に同期して補助反転電圧発生手段の発生電圧の向きも反転することとなる。補助反転電圧発生手段の両端電圧は、キルヒホッフの法則により、第一の相のとき、選択的導通手段側が高くなり、第二相のとき、補助コンデンサ側が高くなる。「基準電圧決定手段」とは、任意の態様にて、回路装置内の或る部位に基準電圧を与える手段であってよく、基準電圧は、出力端子間の出力電圧自体又は出力電圧を決定することとなる電圧であってよい。
【0014】
上記の本発明の装置は、基本的には、各電源セルに対応して接続される各選択的導通手段とそれに対応するコンデンサ並びに反転電圧発生手段の一つとが一段の昇降圧チョッパ回路を形成し、その昇降圧チョッパ回路が多段に構成された構造となっている。そして、本発明の装置の基本的な作動に於いては、選択的導通手段の第一の相と第二の相との間の切換とこれと同期した反転電圧発生手段の発生電圧の向きの反転との作動によって、以下の実施形態の欄にて説明される如く、選択的導通手段列に於ける電源セル列の陰極側から数えて奇数番目に接続された選択的導通手段の群(奇数群の選択的導通手段とする。)内の選択的導通手段に対応して接続された電源セルの動作電圧又はコンデンサの保持電圧が互いに等しくなり、選択的導通手段列に於ける電源セル列の陰極側から数えて偶数番目に接続された選択的導通手段の群(偶数群の選択的導通手段とする。)内の選択的導通手段に対応して接続された電源セルの動作電圧又はコンデンサの保持電圧が互いに等しくなる状態にもたらされることとなる。その際、直列接続されている電源セルの各々に流れる電流については、電流が最大となる電源セルの電流量と個々の電源セルの電圧・電流特性によって決定される電流量との差分である各電源セルの電流の余剰分は、コンデンサと反転電圧発生手段との作用の下で、選択的導通手段へ迂回することとなるので、各電源セルの電流は、設定された発生電圧又は動作電圧に対応して個々の電圧・電流特性により決定された大きさとなる(即ち、各電源セルは設定された電圧の動作点にて動作することとなる。)。しかしながら、選択的導通手段と電源セルとの間にコンデンサと反転電圧発生手段が設けられているだけの構成の場合には、選択的導通手段や反転電圧発生手段に使用される回路素子や電源セルの特性や寄生抵抗、インピーダンス等の特性の精度に依存して電源セルの動作電圧又はコンデンサの保持電圧の設定が不安定となり得る。
【0015】
そこで、本発明の装置に於いては、上記の如く、選択的導通手段に対して、コンデンサの列に対して並列に、補助コンデンサの列が補助反転電圧発生手段を介して接続され、電源セルの動作電圧又はコンデンサの保持電圧の安定化が図られることとなる。かかる構成に於いては、端的に述べれば、各選択的導通手段とそれに対応する補助コンデンサ並びに補助反転電圧発生手段とで、各選択的導通手段に対して二つ目の昇降圧チョッパ回路を形成し、その二つ目の昇降圧チョッパ回路が多段に構成されて、選択的導通手段の列に対して第二の昇降圧チョッパ回路の列が形成されることとなる。かかる構成に於いては、反転電圧発生手段と補助反転電圧発生手段とが選択的導通手段の列に対して互い違いに接続されていることから、第二の昇降圧チョッパ回路の列に於ける電源セル列の陰極側から数えて奇数番目の段と偶数番目の段が、それぞれ、コンデンサと反転電圧発生手段とからなる第一の昇降圧チョッパ回路の列の電源セル列の陰極側から数えて偶数番目の段と奇数番目の段の電圧を保持する機能を果たし、かくして、直列接続された電源セルの各々の動作電圧を安定化させることとなる。その際、上記の如く補助コンデンサ列を設けた構成によれば、後の実施形態の欄に於いて説明される如く、直列接続された電源セル列の一部の動作電流が相対的に低くなって電流の一部の迂回が生じる際に(例えば、太陽電池セル列の一部が部分陰下に入った場合など)、
図10(B)に例示された回路構成の場合のような電圧安定化コンデンサ列の全てを通るバケツリレーの如き電荷の受け渡しが生じず、かくして、電源セル列の動作電流のばらつきに起因する補助コンデンサ列及び選択的導通手段内でのジュール損失が従前(
図10(B)の如き回路構成)に比して低くなり、これにより、電源セルの直列数と共に昇降圧チョッパ回路の段数を増やす際の補助コンデンサの数の増加による損失の増大も従前に比して抑えられることとなる。
【0016】
なお、上記の構成に於いて、回路制御手段が第一の相と第二の相との時間幅が互いに等しくなるように、即ち、全ての選択的導通手段のデューティ比(所定の周期の長さ、即ち、導通状態の期間と遮断状態の期間の和、に対する遮断状態の期間の長さの比)が1/2となるように、選択的導通手段の状態を切換えるようになっていてよい。この場合、全ての電源セルの動作電圧が等しく制御されることとなり、出力電圧の制御が容易となる。また、電源セルが太陽電池セルである場合、複数の電源セルのうちの最も受光量の大きい電源セルの発電電圧がその最大電力点に於ける発電電圧に設定されてよい。この場合、最も受光量の大きい太陽電池セルの発電出力が最大となり、その他の太陽電池セルの発電出力も略最大となるので、太陽電池モジュールに於いて、略最大の発電出力を得ることが可能となる。
【0017】
上記の本発明に於ける補助反転電圧発生手段を介して補助コンデンサ列が設けられる構成は、具体的には、以下の如く、種々の実施の態様に於いて適用されてよい。
【0018】
本発明の第一の態様に於いては、選択的導通手段の全てがそれぞれに対応して接続されたコンデンサの両端子間を選択的に互いに導通する上記の如きスイッチング手段であり、反転電圧発生手段及び補助反転電圧発生手段がインダクタであり(後者を補助インダクタと称する。)、回路制御手段が、スイッチング手段の状態を第一の相と第二の相との間にて切換える切換制御手段を含んでいてよい。基準電圧決定手段は、基準電圧として一対の出力端子間の出力電圧を調節するようになっていてよく、或いは、出力端子間に接続される負荷が保持している電圧(電池電圧など)が基準電圧となって、その基準電圧に基づいて、出力端子間の出力電圧が決定されるようになっていてもよい(この場合、負荷が基準電圧決定手段となる。)。かかる構成に於いては、切換制御手段により、スイッチング手段の第一の相と第二の相との間の切換制御が実行されると、それに同期してインダクタと補助インダクタの発生電圧が反転されることとなる。そして、電極用接続端子に接続される電源セルの各々の動作電圧は、出力端子間の出力電圧とスイッチング手段の第一の相と第二の相との時間幅の比率(即ち、デューティ比)に基づいて決定されることとなる。
【0019】
上記の構成に於いては、コンデンサの全ての各々に対して並列に電源セルが接続されてよいが、一部のコンデンサに対しては、電源セルが接続されていなくてもよい(その場合、電源セルの動作電圧から昇圧した出力電圧が得られることとなる。)。また、コンデンサの全てが出力端子間にて直列に接続されていてもよく、出力端子間に、電源セルが接続されているコンデンサだけが直列に接続されていてもよい。
【0020】
本発明の第二の態様に於いては、選択的導通手段の列の一方の側(電源セル列の陰極側又は陽極側のいずれでもよい。)から数えて2番目から2k番目までの選択的導通手段が、それぞれ陽極と陰極を有し該陽極から該陰極への方向のみ電流の流通を許す整流手段が直列接続された整流手段であり、整流手段列の陰極側が電源セル列の陽極側に接続され、回路制御手段が、反転電圧発生手段のうちの選択的導通手段列の前記の一方の側から数えて1番目の第一の反転電圧発生手段の両端間にて、基準電圧の関数である大きさを有し向きが周期的に反転する電圧を発生させるように構成されていてよい。ここで、基準電圧の関数である第一の反転電圧発生手段の両端間に於いて発生させられる電圧は、その大きさが、装置の使用者又は設計者によって、装置内の素子や手段の動作の許容範囲内にて適宜設定されてよく、典型的には、向きが周期的に等間隔にて反転し、双方向に於ける大きさが等しい電圧であってよいが、これに限定されない(即ち、向きによって電圧の大きさと時間が異なっていてもよい。)。
【0021】
この第二の態様の構成に於いては、上記の如く、選択的導通手段列に於いて、選択的導通手段列の前記の一方の側から数えて2番目から2k番目までの選択的導通手段として、ダイオードなどの整流手段が採用される(1番目は、形態によってスイッチング手段か整流手段が採用される。)。この構成の場合、回路制御手段が、第一の反転電圧発生手段の両端間にて、その向きが周期的に反転する電圧を発生させると、後の実施形態の欄にて詳細に説明される如く、反転電圧発生手段、補助反転電圧発生手段、整流手段、補助コンデンサ、並びに、各電源セルに並列のコンデンサの作用により、直列接続された整流手段が、自動的に交互に導通状態と遮断状態との間で切換わるよう動作して、第一の相と第二の相が交互に実現されることとなる。そして、各電源セルにて互いに異なる電流が流通可能な状態にて、各電源セルの動作電圧(太陽電池セルの場合は、発電電圧)の大きさが、第一の反転電圧発生手段の両端にていずれかの方向に発生した電圧の大きさに一致し、特に、第一の反転電圧発生手段の両端に於いて、向きが周期的に等間隔にて反転し、双方向に於ける大きさが等しい電圧を発生させる場合には、各電源セルの動作電圧が一律に同じ大きさに調整することが可能となる。かかる構成に於いては、選択的導通手段列の前記の一方の側から数えて2番目から2k番目までの選択的導通手段が整流手段であるので、これらに対しては個別に制御入力を与えるための回路構成及び制御は不要であり、そして、動的な制御は、第一の反転電圧発生手段の電圧を制御する回路制御手段に対してのみ実行すればよいことになるので、装置の構成及び制御のための動作が簡単化される。また、第二の態様では、第一の態様の構成と比べて、選択的導通手段列の前記の一方の側から数えて2番目から2k番目までの選択的導通手段が、MOSFET等のトランジスタなどのスイッチング手段からダイオード等の整流手段へ置き換えられているので、その分のコストの節約も期待されることとなる。
【0022】
上記の第二の態様の装置の具体的な構成は、以下に述べられる形態のいずれかによって実現されてよい。
【0023】
第一の形態に於いては、反転電圧発生手段と補助反転電圧発生手段がインダクタであり、選択的導通手段列の前記の一方の側(電源セル列の陰極側又は陽極側のいずれでもよい。)から数えて1番目の選択的導通手段が、それに対応して接続されたコンデンサの両端子間を選択的に互いに導通するスイッチング手段であり、回路制御手段がそのスイッチング手段の両端子間の状態を周期的に導通状態と遮断状態との間で交互に切換える切換制御手段を含み、基準電圧決定手段がスイッチング手段に対応するコンデンサに対して並列に接続され電源セルの列の選択的導通手段列の前記の一方の側に直列に接続された電圧源にして、その陽極と陰極との間に任意に設定される大きさの電圧を発生する電圧源を含んでいてよい。即ち、選択的導通手段列の前記の一方の側にから数えて1番目の選択的導通手段に対しては、電源セルが接続されず、電圧源が接続される(従って、2k個の選択的導通手段の列に対して、1~2k-1個の電源セルが並列に接続されてよい。)。なお、「電圧源」は、任意に設定される電圧を、その陽極と陰極との間に供給することのできる任意の電圧源であってよい。そして、この場合には、「電圧源」が基準電圧決定手段であり、基準電圧は、電圧源の供給電圧であり、インダクタと補助インダクタの発生電圧(誘導起電力)及び電極用接続端子に接続される電源セルの各々の動作電圧が、電圧源の供給電圧と切換制御手段によって制御される選択的導通手段の第一の相と第二の相との時間幅の比率とに基づいて決定されることとなる。
【0024】
上記の構成に於いて、スイッチング手段がその両端子間の状態を周期的に導通状態と遮断状態との間で交互に切換えるよう動作すると、第一の反転電圧発生手段の両端に於いて、その向きが交互に反転する電圧が発生することなり、これにより、後に説明される如く、スイッチング手段と整流手段の列からなる選択的導通手段の列に於いて、第一の相と第二の相とが交互に達成され、上記の如く、奇数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群と偶数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群とのそれぞれの動作電圧が一律となるように、各電源セルの動作電圧の大きさが決定されることとなる。特に、スイッチング手段がその両端子間の状態を周期的に導通状態と遮断状態との間で等間隔にて交互に切換えるように制御される場合(即ち、デューティ比が1/2のとき)には、第一の反転電圧発生手段の両端に、電圧源の電圧の大きさに等しい電圧が交互に向きが反転する態様にて発生し、各電源セルの動作電圧は、一律に、電圧源の両端の電圧と同一に調整されることとなる。この第一の形態に於いては、動的に制御される対象は、一つのスイッチング手段となるので、制御入力のための回路は、一つでよく、例えば、第一の態様の場合と比べると、回路の構成が簡単化され、制御も容易化される。なお、この第一の形態に於いて、一対の出力端子間に於いて、複数の電源セルと電圧源とが接続されてよく、或いは、一対の出力端子間に於いては、複数の電源セルのみが接続され、電圧源は、一対の出力端子間の外に接続されていてもよい。
【0025】
上記の第一の形態の構成に於いて、スイッチング手段の両端子間の状態に於ける導通状態と遮断状態との切換えが等間隔でない場合には、奇数群又は偶数群の選択的導通手段に並列接続された電源セルのうち、電圧源が並列接続された選択的導通手段の群と同じ群の選択的導通手段に並列接続された電源セルの動作電圧が一律に電圧源の供給電圧に一致し、もう一方の群の選択的導通手段に並列接続された電源セルの動作電圧は、電圧源の供給電圧にデューティ比の関数を乗じた値に一致することとなる。その場合も本発明の範囲に属することは理解されるべきである。
【0026】
本発明の装置の第二の態様の第二の形態は、反転電圧発生手段と補助反転電圧発生手段がインダクタであり、選択的導通手段列の前記の一方の側(電源セル列の陰極側又は陽極側のいずれでもよい。)から数えて1番目の選択的導通手段がそれに対応して接続されたコンデンサの両端子間を選択的に互いに導通するスイッチング手段であり、回路制御手段がスイッチング手段の両端子間の状態を周期的に導通状態と遮断状態との間で交互に切換える切換制御手段を含み、スイッチング手段に対応するコンデンサに対しては並列に一つの電源セルが接続され、基準電圧決定手段(電圧制御手段又は出力端子間に接続される負荷)は、任意の電圧制御によって或いは負荷の保持する電圧に基づいて、基準電圧として一対の出力端子間の出力電圧を決定するよう構成されてよい。即ち、選択的導通手段の全てに対して、電源セルが並列に接続されてよい。この場合、インダクタと補助インダクタの発生電圧(誘導起電力)及び電極用接続端子に接続される電源セルの各々の動作電圧は、決定された出力電圧と切換制御手段によって制御される選択的導通手段の第一の相と第二の相との時間幅の比率とに基づいて決定されることとなる。
【0027】
この形態の場合にも、スイッチング手段が周期的に交互に導通状態と遮断状態となるように動作すると、第一の形態の場合と同様に、第一の反転電圧発生手段の両端に於いて、電圧がその向きが交互に反転するように発生することなり、これにより、後に説明される如く、スイッチング手段と整流手段の列からなる選択的導通手段の列に於いて、第一の相と第二の相とが交互に達成され、上記の如く、奇数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群と偶数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群とのそれぞれの動作電圧が一律となるように、各電源セルの動作電圧の大きさが決定されることとなる。ただし、この形態に於いては、第一の態様の場合と同様に、基準電圧決定手段により、出力端子間の出力電圧が任意に設定される大きさ或いは負荷の電圧に基づいて決定される大きさに保持され、各電源セルの動作電圧の大きさは、出力電圧の関数となる。かかる構成に於いては、スイッチング手段が周期的に等しい時間間隔にて導通状態と遮断状態と繰り返すように動作すると、第一の反転電圧発生手段の両端に於いて電源セルの動作電圧に等しい大きさの電圧がその向きが交互に反転するように発生し、これにより、上記の如く、各電源セルの動作電圧の大きさと向きが、一律に、同一に調整されることとなる。その際、出力端子間の電圧(出力電圧)、即ち、複数の電源セルの動作電圧(或いはコンデンサの保持電圧)の和が任意に設定される大きさに保持されるときには、各電源セルの動作電圧は、出力電圧の大きさを2kで除して得られる大きさに調整できることとなる。この形態に於いても、動的に制御される対象は、一つのスイッチング手段となるので、第一の態様に比して、回路の構成が簡単化され、制御も容易化される。また、この態様に於いては、第一の形態とは異なり、スイッチング手段に並列に接続される電圧源が不用となり、回路の構成が簡単化されると共に、2k個分の電源セルが直列に接続された場合の動作電圧が出力端子間にて得られることとなるので、回路をより有効に利用可能となることが期待される。
【0028】
なお、この態様に於いても、スイッチング手段の両端子間の状態に於ける導通状態と遮断状態との切換えが等間隔でない場合には、奇数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群の動作電圧が一律に第一の電圧に調整され、偶数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群の動作電圧が一律に第一の電圧にデューティ比の関数を乗じた値に調整され、これらの動作電圧の総和が出力端子間の出力電圧に一致することとなる。その場合も本発明の範囲に属することは理解されるべきである。
【0029】
本発明の装置の第二の態様の第三の形態に於いては、選択的導通手段の全てが整流手段であり、回路制御手段が、一次コイルと二次コイルとを有する変圧器の一次コイルを含み、第一の反転電圧発生手段が変圧器の二次コイルであり、基準電圧決定手段が、変圧器の二次コイルの両端に於いて任意に設定される大きさの、向きが周期的に反転する基準電圧を発生させる回路手段であってよい。ここで、「変圧器」は、上記の如く、一次コイルと二次コイルとが巻きつけられた磁気回路を有し、電源セルの動作電圧として適当な大きさの電圧を二次コイルの両端に発生可能な任意の形式の変圧器であってよい。具体的には、変圧器の一次コイル側の構成は、任意の大きさの電圧を発生可能な直流電圧源とスイッチング手段と一次コイルとから成る閉回路(回路に任意に負荷抵抗が挿入されていてよい。)の構成であってよく、スイッチング手段が周期的に電圧源の陰極と陽極との間の導通と遮断とを繰り返すように動作するになっていてよい。そして、この形態に於いては、変圧器の二次コイル、即ち、第一の反転電圧発生手段の両端間の発生電圧と選択的導通手段の第一の相と第二の相との時間幅の比率とに基づいて、電極用接続端子に接続される電源セルの各々の動作電圧が決定されることとなる。
【0030】
上記の第三の形態に於いては、変圧器がその二次コイルの両端に於いて任意に設定される大きさを有し、その向きが周期的に反転する電圧を発生させると、整流手段の列からなる選択的導通手段の列に於いて、第一相と第二相とが交互に達成され、上記の如く、奇数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群と偶数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群とのそれぞれの動作電圧が一律となるように、各電源セルの動作電圧の大きさが決定されることとなる。特に、二次コイルの電圧が等しい時間間隔にて反転するときには、上記の場合と同様に、各電源セルの動作電圧の大きさが、一律に、二次コイルの両端の電圧と同一に調整されることとなる。かかる構成によれば、電源セルの動作電圧を決定する電圧源(変圧器の一次コイル側の電圧源)と、複数の電源セルとが電気的に絶縁されることとなるので、回路装置の適用可能な状況の拡大が期待される。また、この形態に於いては、電源セルが直接に接続される回路内には、制御入力を必要とするスイッチング手段が存在せず、回路が全て受動的な電気素子にて構成されることとなり、回路の構成が簡単化される。
【0031】
上記の第三の形態の構成に於いて、第一の反転電圧発生手段の他の反転電圧発生手段及び補助反転電圧発生手段が変圧器の二次コイルであり、第一の反転電圧発生手段と同期して発生電圧が周期的に反転するようになっていてもよい。この場合、各反転電圧発生手段に於いて、電圧が調節されるので、回路動作の更なる安定化が期待される。一方、第一の反転電圧発生手段の他の反転電圧発生手段及び補助反転電圧発生手段がインダクタであり、第一の反転電圧発生手段と同期して発生電圧が周期的に反転するようになっていてもよい。この場合には、変圧器は、一箇所となるので、回路の消費電力は、相対的に低減されることとなる。
【0032】
上記の第三の形態に於いて、二次コイルの両端に於ける発生電圧の向きの反転が等間隔でない場合には、奇数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群の動作電圧は、一律に、二次コイルに於いて整流手段側から電源セル側へ向かって電圧が発生しているときの、その電圧に調整され、偶数群の選択的導通手段に並列に接続された電源セルの群の動作電圧は、一律に、二次コイルに於いて電源セル側から整流手段側へ向かって電圧が発生しているときの、その電圧に調整されることとなる。その場合も本発明の範囲に属することは理解されるべきである。
【発明の効果】
【0033】
かくして、上記の本発明の構成に於いては、複数個の直列に接続された太陽電池セルなどの電源セルの動作電圧を一律に調節可能な動作点制御回路装置であって、各電源セルの動作電圧を安定化させるためのコンデンサが備えられている構成に於いて、電源セルの動作電流のばらつきの発生時に各電気セルの電流の余剰分を迂回させる際に、補助コンデンサ間で電荷の受け渡しは起こらず、その分、損失を抑制することが可能となる。かかる構成に於いては、電源セルの直列数が増えるとともに、装置内の昇降圧チョッパ回路の段数を増やす際に、補助コンデンサの数の増大を、それによる損失の増大を抑えつつ、達成することが可能である。かかる構成によれば、直列接続された電源セルのより損失を抑えた動作が達成され、動作点制御回路装置を有利に利用できる範囲が更に拡大されることが期待される。
【0034】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1(A)は、本実施形態による発電動作点制御回路装置の第一の態様を示す回路構成図である(2k個の太陽電池セルPVnが直列接続されている場合)。
図1(B)は、
図1(A)の発電動作点制御回路装置に於ける各スイッチング手段Mnの両端子間の導通状態(ON)と遮断状態(OFF)の切換え制御のためにスイッチング手段の制御入力Snへ与えられる制御信号の時間変化を示している。
【
図2】
図2(A)、(B)は、
図1の回路構成(2k=4の場合)に於いて、太陽電池セルPV2が陰に入った場合の電流の流れる方向を説明する図である。
図2(A)が相1の場合であり、
図2(B)が相2の場合である。簡単のため、記載に於いて、切換制御装置(CP)、電圧制御装置(MPPT制御装置)は、省略されている。
【
図3】
図3(A)は、
図1の回路装置(2k=4の場合)に於いて一部のコンデンサCに対して太陽電池セルが並列に接続されていない場合の回路構成図である。
図3(B)は、
図1の回路装置(2k=4の場合)に於いて一部のコンデンサCに対して太陽電池セルが並列に接続されていない場合に出力電圧を太陽電池セル列のみから取り出すように出力端子を接続した回路構成図である。簡単のため、記載に於いて、切換制御装置(CP)、電圧制御装置(MPPT制御装置)は、省略されている。
【
図4】
図4(A)は、本実施形態による発電動作点制御回路装置の第二の態様の第一の形態(2k-1個の太陽電池セルPVnが直列接続されている場合)であって、スイッチング手段が太陽電池セル列の陰極側に設けられている場合の回路構成図である。
図4(B)は、
図4(A)の発電動作点制御回路装置に於けるスイッチング手段M1の両端子間の導通状態(ON)と遮断状態(OFF)の切換え制御のためにスイッチング手段の制御入力S1へ与えられる制御信号の時間変化を示している。
【
図5】
図5(A)、(B)は、それぞれ、
図4(A)の太陽光発電装置の第二の態様の第一の形態に於けるスイッチング手段が導通状態(相1)及び遮断状態(相2)にあるときに各回路要素に発生する電圧と電流の向きを表した回路構成図である。なお、説明の目的で、直列接続される太陽電池セルの数は、3個(k=2のとき)としている。
【
図6】
図6(A)は、本実施形態による発電動作点制御回路装置の第二の態様の第一の形態(2k-1個の太陽電池セルPVnが直列接続されている場合)であって、スイッチング手段が太陽電池セル列の陽極側に設けられている場合の回路構成図である。
図6(B)、(C)は、それぞれ、
図6(A)の形態に於けるスイッチング手段が導通状態(相2)及び遮断状態(相1)にあるときに各回路要素に発生する電圧と電流の向きを表した回路構成図である。なお、説明の目的で、直列接続される太陽電池セルの数は、3個(k=2のとき)としている。
【
図7】
図7(A)は、本実施形態による発電動作点制御回路装置の第二の態様の第一の形態であって、電圧源が出力端子の外に設けられている場合の回路構成図である。
図7(B)は、本実施形態による発電動作点制御回路装置の第二の態様の第二の形態(2k個の太陽電池セルPVnが直列接続されている場合)の回路構成図である。説明の目的で、k=2のときを示している。
【
図8】
図8(A)は、本実施形態による発電動作点制御回路装置の第二の態様の第三の形態(2k個の太陽電池セルPVnが直列接続されている場合)を示す回路構成図である。
図8(B)は、
図8(A)の回路に於いて反転電圧発生手段として使用される変圧器の二次コイルに電圧を発生する変圧器の一次コイル側の回路構成図である。
図8(C)は、
図8(B)の変圧器の一次コイル側回路に於けるスイッチング手段の両端子間の導通状態(ON)と遮断状態(OFF)の切換え制御のためにスイッチング手段の制御入力S1へ与えられる制御信号S
1と一次コイルL0に流れるリップル電流I
L0の時間変化を示している。
図8(D)は、
図8(A)の回路構成に於いて、第一の反転電圧発生手段以外の反転電圧発生手段としてインダクタを採用した場合である。
【
図9】
図9(A)、(B)は、本実施形態による動作点制御回路装置に於いて、太陽電池セルに置換して、任意のその他の電源セルを直列接続した場合の回路構成図である。
図9(C)は、本実施形態による動作点制御回路装置に於いて適用可能な電源セルの例を模式的に示したものである。
【
図10】
図10(A)は、種々の受光量Rを受けた太陽電池の発電電圧に対する発電電流I
Rと発電電力P
Rの変化を模式的に表す特性図である。Rは、R=100%のときの受光量を100%として、それぞれの受光量の割合を示している。
図10(B)は、従来の技術(特許文献1等)に於いて提案されている太陽光発電装置の回路構成図の例を示している。
【
図11】
図11(A)~(D)は、
図10(B)の回路装置の作動状態を説明する図である。(A)、(B)は、相1に於ける回路の状態と、電圧安定化コンデンサの接続状態を示し、(C)、(D)は、相2に於ける回路の状態と、電圧安定化コンデンサの接続状態を示している。
【符号の説明】
【0036】
ot…出力端子
PVn…太陽電池セル(nは、2k以下の正の整数。以下、同様)
ct…電極用接続端子
Cn…コンデンサ
Li…インダクタ又は変圧器の二次コイル(iは、k以下の正の整数。)
Lvj…補助インダクタ(jは、k-1以下の正の整数。)
Cvm…補助コンデンサ(mは、2k-2以下の正の整数。)
Mn…スイッチング手段(MOSFET)
Sn…制御入力
Dn…ダイオード(整流手段)
Vs…電圧源
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0038】
太陽電池モジュールのための発電動作点制御回路装置の構成と作動
本実施形態による複数の太陽電池セルが直列に接続されてなる太陽電池モジュールに於ける各セルの発電動作点を制御する発電動作点制御回路装置は、基本的には、
図10(B)にも例示されている如く、各太陽電池セルに対してその発電電圧を制御すると共に各太陽電池セルに於ける電流の余剰分(太陽電池モジュールの出力端子間に流れる電流に於ける各セルの発電電圧に対して電圧・電流特性に従って決定される電流よりも多い分)を迂回させる昇降圧チョッパ回路が多段にて連結された回路と同様の構成を有している。しかしながら、本実施形態の装置に於いては、
図10(B)の構成とは異なり、各段の太陽電池セルの発生電圧(又はコンデンサの保持電圧)を安定化させるために、昇降圧チョッパ回路のスイッチング手段又は整流手段(選択的導通手段)の各々に対して、コンデンサ(補助コンデンサ)とインダクタ又は変圧器のコイル(補助反転電圧発生手段)とを用いてもう一組の昇降圧チョッパ回路が形成される。この構成の場合、太陽電池セルに於いて電流の余剰分が発生するときに、その電流の余剰分は、その太陽電池セルが並列に接続されている選択的導通手段とそれに並列に接続された補助コンデンサに迂回し、その他の段の選択的導通手段及び補助コンデンサを流通せず、そうすると、
図10(B)にも例示されている電圧安定化コンデンサを接続する場合よりも、各太陽電池セルの電流の余剰分が迂回する際に通る素子にて生ずる損失が相対的に低減され、エネルギーの効率化が図られることとなる。以下に於いては、まず、
図10(B)の如き従前の回路構成に於いて生ずる損失について説明し、次いで、本実施形態の発電動作点制御回路装置の具体的な種々の態様について説明する。
【0039】
A.従前の回路構成に於ける損失
図10(B)の如き回路構成は、一対の出力端子ot+、ot-の間にて複数の太陽電池セルを直列に接続するべく、各太陽電池セルPVn(nは、1から2kまでの整数であり、kは、2以上の整数である。)の陽極及び陰極のそれぞれに接続される電極用接続端子ctを有し、電極用接続端子ctには、太陽電池セルPVnと並列となるようにコンデンサCnが接続される共に、選択的導通手段として、スイッチング手段Mnが並列となるように接続され、コンデンサCnとスイッチング手段Mnとの間の回路線に於いて、スイッチング手段Mnの列の一方の側(BL)から数えて偶数番目の回路線に反転電圧発生手段として、インダクタLi(iは、1からkまでの整数)がそれぞれ挿入される。また、図示の如く、電圧安定化コンデンサCvl(lは、1から2k-1までの整数)が、スイッチング手段Mnの列の一方の側から数えて2p-1番目と2p番目のスイッチング手段の組の全て(1番目と2番目の組、3番目と4番目の組、…)(pは、1からkまでの整数)と2q番目と2q+1番目のスイッチング手段の組の全て(2番目と3番目の組、…)(qは、1からk-1までの整数)との両端の各々に対して並列に接続される。作動に於いては、
図11(A)、(C)に示されている如く、出力端子間の電圧Voutが所望の値に調節された状態にて、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目のスイッチング手段M
2r-1の群(奇数群)と偶数番目のスイッチング手段M
2rの群(偶数群)が、任意に設定されてよい所定の周期にて、交互に導通状態と遮断状態との間で切換えられる(rは、1からkまでの整数)。その場合、各太陽電池セルの発電電圧Vnの総和が出力端子間電圧Voutに等しいという条件と、同時にスイッチング手段が遮断状態となる段の各太陽電池セルの発電電圧Vnは、互いに等しくなるという条件とから、
ΣVn=Vout …(1a)
Vn
I=VI …(1b)
Vn
II=VII …(1c)
が成立する。ここで、Vn
Iは、奇数群のスイッチング手段に並列接続された各太陽電池セルの発電電圧Vnであり、Vn
IIは、偶数群のスイッチング手段に並列接続された各太陽電池セルの発電電圧Vnであり、VI、VIIは、それぞれ、奇数群及び偶数群の太陽電池セルの発電電圧の電圧値である。また、スイッチング手段の状態の切換えに同期して、インダクタLiに発生する電圧の向きが交互に反転する過程に於いて、スイッチング手段M
2i-1のON状態の間にインダクタL
iに蓄積した電磁エネルギーは、スイッチング手段M
2i-1のOFF状態の間に放出されるとの条件により、所定の周期に対する奇数番目のスイッチング手段が遮断状態となる時間幅の比(デューティ比とする。)がdのとき、
VII=αVI …(2a)
α=d/(1-d)) …(2b)
の関係が成立することとなる。従って、d=1/2のときは、
VI=VII …(2c)
となる。
【0040】
上記の回路構成の作動に於いて、電圧安定化コンデンサCvlは、対応する二つのスイッチング手段M
l、M
l+1に接続された太陽電池セルPV
l、PV
l+1の発生電圧V
l+V
l+1をVI+VII=(1+α)VIとなるように保持し、各太陽電池セルの発生電圧を安定化させるように機能することとなる。より具体的には、
図11(A)、(C)に示されている如く、スイッチング手段が交互に導通状態及び遮断状態との間で切換えられると、
図11(B)、(D)に描かれている如く、電圧安定化コンデンサCv
lが、隣接する各補助コンデンサCv
l-1及びCv
l+1に対して交互に並列に接続されることとなり、これにより、全ての補助コンデンサCv
lの保持電圧がVout/kに均一化されるともに、各太陽電池セルの発生電圧が式(1b)、(1c)にて与えられる値に安定的に保持されることとなる(特許文献1参照)。
【0041】
上記の補助コンデンサを含む回路構成の作動に於いて、直列接続された太陽電池セルの一部が部分陰下に入るなどして、その太陽電池セルに流れるべき電流が他の太陽電池セルの電流よりも相対的に低下したときには、その低下分に相当する電流の余剰分は、その太陽電池セルが並列接続されたスイッチング手段を介して電圧安定化コンデンサCvlに蓄積された後、
図11(B)、(D)の如く、各補助コンデンサが並列接続される補助コンデンサを交互に切換える間に、電流の余剰分に相当する電荷(δq)が補助コンデンサ間にてスイッチング手段を介して順々に受け渡されることとなる。例えば、
図11に於いて、太陽電池セルPV2が部分陰に入り、そこを流れるべき電流が相対的に低下したときには、太陽電池セルPV1から太陽電池セルPV2を迂回する電流の余剰分δqは、電圧安定化コンデンサCv1に蓄積された後、電圧安定化コンデンサCv1が電圧安定化コンデンサCv2に並列接続された際に、電圧安定化コンデンサCv2に受け渡され、更に、電圧安定化コンデンサCv2が電圧安定化コンデンサCv3に並列接続された際に、電圧安定化コンデンサCv3に受け渡されて出力端子から流出していくこととなる。即ち、端的に述べれば、流れるべき電流が相対的に低下した太陽電池セルに於ける電流の余剰分は、その太陽電池セルを、スイッチング手段列と電圧安定化コンデンサ列の全てを通って迂回することとなる。
【0042】
ところで、「発明の概要」の欄に於いても触れた如く、コンデンサには寄生抵抗があり、スイッチング手段には、ON抵抗があるので、コンデンサやスイッチング手段を通過する電流の絶対量が多くなるほど、ジュール損失が大きくなる。即ち、電流の通過するスイッチング手段の数と電圧安定化コンデンサの数とが増えるほど、その分、ジュール損失も増大することとなる。従って、上記の如く、流れるべき電流が相対的に低下した太陽電池セルを迂回する電流の余剰分がスイッチング手段列と電圧安定化コンデンサ列の全てを通る構成に於いては、或る量の電流の余剰分を迂回させる場合、直列接続される太陽電池セルの数が増えるほど、スイッチング手段の数と電圧安定化コンデンサの数とが増えることから、ジュール損失も増大することとなる。実際、計算によると、下記の表の如く、
図10(B)の如き回路構成に於いて、直列接続される太陽電池セルの数を増大すると、電圧安定化コンデンサ列全体での電荷の(単位時間当たりの)移動量(電荷の変化量の絶対値の和)とスイッチング手段列全体での電流量(電流の絶対値の和)は、共に、増大することとなり、その分、ジュール損失も増大することが理解される。
【表1】
[上記の表の値は、
図10(B)の構成に於いて、PV2~PVnまでの出力電流を5Aとし、PV1の出力電流を1Aとしたときに各スイッチング手段に流れる電流と各電圧安定化コンデンサの電荷総移動量/秒を算出し、それぞれの絶対値の和を算出した。]
換言すれば、上記の如く、電圧安定化コンデンサの各々が二つの隣接するスイッチング手段の組に対して交互に並列接続された構成の場合には、流れるべき電流が相対的に低下した太陽電池セルに於ける電流の余剰分をスイッチング手段と電圧安定化コンデンサへ迂回することに起因するスイッチング手段と電圧安定化コンデンサでの損失は、直列接続される太陽電池セルの数が増えるほど、増大してしまうこととなる。
【0043】
B.本実施形態の動作点制御回路装置
上記の如き従前の回路構成に於いて、直列接続される太陽電池セルの数が増えるほど、流れるべき電流が相対的に低下した太陽電池セルに於ける電流の余剰分の迂回に起因するスイッチング手段と電圧安定化コンデンサでの損失(以下、「余剰電流迂回損失」と称する。)が増大してしまうという事情に鑑み、本実施形態に於いては、余剰電流迂回損失が、直列接続される太陽電池セルの数によらない新規な構成の動作点制御回路装置が提案される。本実施形態に於ける動作点制御回路装置では、既に触れた如く、端的に述べれば、上記の如き多段昇降圧チョッパ回路の構成に於いて、(両端の段を除いて)各段の昇降圧チョッパ回路に対して補助コンデンサがインダクタ又は変圧器のコイル(補助反転電圧発生手段)を介して並列に接続され、これにより、謂わば、選択的導通手段の各々に対して、二組の昇降圧チョッパ回路が形成される(補助コンデンサが従前の電圧安定化コンデンサに相当する。)。そして、流れるべき電流が相対的に低下した太陽電池セルに於ける電流の余剰分は、その太陽電池セルの属する段の補助コンデンサと選択的導通手段を通ってその太陽電池セルを迂回し、その他の段の補助コンデンサと選択的導通手段を通らないため、余剰電流迂回損失がその他の段の補助コンデンサと選択的導通手段に於いて実質的に発生せず、余剰電流迂回損失が、直列接続される太陽電池セルの数によらないこととなる。以下、本実施形態が適用された動作点制御回路装置の種々の態様の具体的な構成について説明する。
【0044】
(a)第一の態様の構成
図1(A)を参照して、本実施形態の第一の態様の構成に於いては、発電動作点制御回路装置の回路は、
図10(B)の構成の場合と同様に、一対の出力端子ot+、ot-と、それらの間にて複数の太陽電池セルを直列に接続するべく、各太陽電池セルPVn(nは、1から2kでの整数であり、kは、正の整数である。)の陽極及び陰極のそれぞれに接続される電極用接続端子ctと、電極用接続端子ctに接続される各太陽電池セルに対して並列に接続され互いに直列に接続されるコンデンサCn(C1、C2、…C
2k)と、かかるコンデンサCnに対して並列に接続され互いに直列に接続される選択的導通手段としてMOSFET等であってよいスイッチング手段Mn(M1、M2、…M
2k)とを有し、コンデンサCnとスイッチング手段Mnとの間の2k+1本の回路線のうち、スイッチング手段の列の一方の側(BL)から数えて偶数番目の回路線に於いて、反転電圧発生手段として、インダクタLi(L1、L2…Lk)がそれぞれ装入される。各スイッチング手段Mnは、切換制御装置CP(切換制御手段)からそれぞれの制御入力端子Snに与えられる制御入力に応答して、それぞれの両端子間の状態を、両端子間を導通した導通状態(ON)と、両端子間を絶縁する遮断状態(OFF)との間で切換えるよう作動する。そして、更に、本実施形態の構成に於いては、既に触れた如く、スイッチング手段Mnの列の両端のスイッチング手段M1、M2kを除く各スイッチング手段Mnに対して、補助コンデンサCvm(Cv1、Cv2、…Cv
2k-2)が並列に接続され、補助コンデンサCvmとスイッチング手段Mnと間の2k-1本の回路線のうち、スイッチング手段の列の一方の側から数えて偶数番目の回路線に於いて、補助反転電圧発生手段として、補助インダクタLvj(Lv1、Lv2…Lv
k-1)がそれぞれ装入される。即ち、図示の如く、インダクタLiと補助インダクタLvjは、各スイッチング手段Mnに対して互い違いに接続された状態となる。なお、回路に於いて使用されるスイッチング手段、コンデンサ、補助コンデンサ、インダクタ、補助インダクタは、それぞれ、この分野で通常用いられる素子であってよい。そして、第一の態様の回路の構成に於いては、基準電圧決定手段として、出力端子間ot+~ot-の出力電圧を調節するMPPT制御装置などの任意の電圧制御装置が設けられ、出力電圧Voutが制御される。なお、出力端子間ot+~ot-に接続されている負荷が充電池などのその両端子に有意な電圧を保持している負荷である場合、出力電圧Voutは、負荷の保持している電圧に基づいて自動的に決定されるようになっていてもよく(この場合、負荷が基準電圧決定手段に相当し、例えば、出力電圧は、負荷保持電圧+αの大きさとなる。αは、負荷の内部抵抗や充電電流によって決定される正数である。)、そのような場合も本発明の範囲に属する。
【0045】
(b)第一の態様の作動
上記の本実施形態の第一の態様の装置の作動に於いては、
図10(B)の構成の場合と同様に、切換制御装置CPは、相1(ph1:太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目のスイッチング手段M
2r-1の群(奇数群)が導通状態となり、偶数番目のスイッチング手段M
2rの群(偶数群)が遮断状態となる相)と、相2(ph2:太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目のスイッチング手段M
2r-1の群(奇数群)が遮断状態となり、偶数番目のスイッチング手段M
2rの群(偶数群)が導通状態となる相)とが、任意に設定されてよい所定の周期Tsにて交互に達成されるように、各スイッチング手段Mnの制御入力Snに対して、
図1(B)に示されている制御指令ON/OFFを与えるよう作動する(制御指令がONのとき、スイッチング手段は導通状態となり、制御指令がOFFのとき、スイッチング手段は遮断状態となる。)。そうすると、
図10(B)の構成の場合と同様に、各太陽電池セルの発電電圧Vnの総和が出力端子間電圧Voutに等しいという条件と、同時にスイッチング手段がOFF状態となる段の各太陽電池セルの発電電圧Vnは、互いに等しくなるという条件とから、定常状態に於いて、式(1a)~(1c)が成立し、デューティ比dに於いて、式(2a)、(2b)が成立し、d=1/2のときは、式(2c)が成立し、全ての太陽電池セルの発生電圧が一律に制御されることとなる。また、上記の如くスイッチング手段が作動される間、補助コンデンサCvmの保持電圧に於いても、式(1b)、(1c)の関係が成立し、各スイッチング手段が遮断状態にあるときに、それに並列に接続された補助コンデンサCvmの電圧によって、それに並列に接続された対応する太陽電池セルの発生電圧が安定的に保持され、これにより、太陽電池セルやスイッチング手段の寄生抵抗、インピーダンス等の特性に関して、より大きな公差が許されることとなる。
【0046】
上記の回路構成の作動に於いて、直列接続された太陽電池セルの一部が部分陰下に入るなどして、その太陽電池セルに流れるべき電流が他の太陽電池セルの電流よりも相対的に低下したとき、その低下分に相当する電流の余剰分は、
図2(A)、(B)に示されている如く、その太陽電池セルが並列接続されたスイッチング手段を介して補助コンデンサに蓄積された後、その太陽電池セルの陽極側に接続された太陽電池セルへそのまま送られることとなる。例えば、
図2に於いて、太陽電池セルPV2が部分陰に入り、そこを流れるべき電流が相対的に低下したときには、太陽電池セルPV1から太陽電池セルPV2を迂回する電流の余剰分は、
図2(B)に示されている如く、相2に於いて、補助コンデンサCv1に充電された後、
図2(A)に示されている如く、相1に於いて、太陽電池セルPV3へ流れることとなる。即ち、端的に述べれば、流れるべき電流が相対的に低下した太陽電池セルに於ける電流の余剰分は、その太陽電池セルに並列に接続されたスイッチング手段と補助コンデンサを通り、その他のスイッチング手段と補助コンデンサを通らずに、その太陽電池セルを迂回することとなる。従って、この態様によれば、直列接続される太陽電池セルの数が増えることに対応して、直列接続されるスイッチング手段と補助コンデンサの数が増えても、余剰電流迂回損失は増大せず、かくして、従前の構成に比して、損失を抑制することが可能となる。
【0047】
かくして、
図1(A)の如き回路構成に於いて、デューティ比d=1/2として、スイッチング手段M1のON/OFFの切換を反復すると、直列接続された2k個の太陽電池セルPvnの発生電圧VnがVout/2kに一致し、Vout/2kを、例えば、複数の太陽電池セルの中で最も受光量の大きいセルの最大電力点に於ける発電電圧Vmppに一致させると(
図10(A)参照)、太陽電池セル間の受光量のばらつきに起因する出力低下及び/又は損失を小さく抑えながら、太陽電池モジュールの発電作動を実行することが可能となる。なお、出力電圧Voutの制御に於いては、具体的には、出力電圧Voutを変化させながら、太陽電池モジュールの出力電力、電圧及び/電流を計測し、太陽電池モジュールの出力電力、電圧及び/電流が最大となる電圧に出力電圧Voutを一致させることによって達成されてよい。
【0048】
(b)第一の態様の変更例
図1(A)に示されている如き回路構成に於いて、コンデンサCnの全てに対して太陽電池セルが並列に接続されていなくてもよい。即ち、
図3(A)に例示されている如く、回路構成に於いて、太陽電池セルが接続されてない段が存在していてもよい。その場合、太陽電池セルが接続されてない段のコンデンサCnは、出力電圧Voutと直列接続された太陽電池セルの発生電圧Vnの総和ΣVnとの差分を保持することとなる(保持電圧Vch)。即ち、この構成に於いては、太陽電池セル列の出力電圧がそれらの発生電圧Vnの総和ΣVnから電圧Voutまで昇圧されることとなる。また、
図3(B)に例示されている如く、回路構成に於いて、太陽電池セルが接続されてない段が存在する場合には、出力端子が、太陽電池セル列の両端に接続され、出力端子間にて、太陽電池セル列の発生電圧Vnの総和ΣVnに相当する出力電圧が得られるようになっていてもよい(コンデンサC1~C3に太陽電池セルが接続され、それらの太陽電池セル列の両端に出力端子対が接続されていてもよい。)。これらの構成は、太陽電池セルの数が奇数個のときに採用されてよい。
【0049】
(c)第二の態様
本実施形態の動作点制御回路装置の第二の態様は、第一の態様の回路構成に於けるスイッチング手段の一部又は全てがダイオードなどの整流手段に置き換えられた構成を有する。かかる構成によれば、太陽電池セル毎にスイッチング手段の制御入力のための回路を設ける必要がなくなり、回路の構成が大幅に簡単化され、制御に於ける作動も容易となる。以下、本実施形態の第二の態様の種々の形態の構成について説明する。
【0050】
(d)第二の態様の第一の形態の構成
本実施形態の第二の態様の第一の形態に於いては、まず、
図1(A)に示されている如き本実施形態の第一の態様の構成に於けるスイッチング手段が、その列の一方の側から数えて一番目のスイッチング手段を除き、全て整流手段に置き換えられる。かかる整流手段としては、ダイオードDn(D1、D2、…D
2k-1)が、それらの陽極及び陰極が、対応する太陽電池セルの陰極及び陽極に接続されるように配置される。そして、本形態に於いては、基準電圧決定手段として電圧源Vsが、スイッチング手段に並列に接続されるコンデンサに対して並列に接続され、且つ、太陽電池セルPVnの列に対して直列に接続される。電圧源Vsは、MPPT制御装置などの任意の電圧制御装置により、任意の大きさの電圧を供給するよう制御されるよう構成されていてよい。
図4(A)を参照して、太陽電池セルPVn列の陰極側にスイッチング手段M1が設けられているときには、電圧源Vsは、太陽電池セルPVn列の陰極側に直列に接続されることとなる。
【0051】
(e)第二の態様の第一の形態の作動
上記の
図4(A)に例示のスイッチング手段M1と電圧源Vsが太陽電池セルPVn列の陰極側に接続された回路構成の作動に於いては、切換制御装置CPからスイッチング手段M1の制御入力S1へ、
図4(B)にて模式的に描かれている如く、任意に設定されてよい所定のサイクル時間TsにてON/OFFの制御指令が与えられ、これにより、スイッチング手段M1の状態が導通状態と遮断状態との間で切換えられることとなる。そうすると、スイッチング手段M1に接続されたインダクタL1に於いて、スイッチング手段M1の導通/遮断状態の切換に同期して向きが反転する誘導起電力(発生電圧)が発生し、その後のスイッチング手段M1の導通/遮断状態の切換作動の間に於ける回路内のインダクタLi、補助インダクタLvj、ダイオードDn、補助コンデンサCvm及びコンデンサCnの作動の結果、太陽電池セルPVnの全ての発電電圧の大きさVnが電圧源Vsの出力電圧V0に基づいて決定されることとなる。
【0052】
上記の第一の形態の回路構成に於いて、スイッチング手段M1の導通/遮断状態(ON/OFF)の切換作動の間に各太陽電池セルPVnの全ての発電電圧Vnが電圧源Vsの出力電圧V0に基づいて決定される過程は、以下のように説明される。
【0053】
図5(A)、(B)を参照して、まず、
図5(A)の如く、スイッチング手段M1が導通状態(ON)となり、その両端子間が導通すると、電圧源Vsの陽極からインダクタL1とスイッチング手段M1とを通って電圧源Vsの陰極に戻る閉ループ(ループ1)が出来るところ、キルヒホッフの法則が成立するので、インダクタL1に於いて、
図5(A)中の矢印にて示されている如く、スイッチング手段M1から電圧源Vsの方へ向かう方向に電圧源Vsの供給電圧V0に等しい大きさの誘導起電力(発生電圧)が発生する。即ち、スイッチング手段M1が導通状態のときのインダクタL1の発生電圧Vb(L1)は、
Vb(L1)=V0 …(3a)
となる。このとき、スイッチング手段M1とダイオードD1の陽極との接点の電位が電圧源Vsの陰極と実質的に等しく、ダイオードD1の陰極には、インダクタL1の発生電圧が太陽電池セルPV1を介してかかっているので、ダイオードD1の陰極の電位は陽極より高くなり、ダイオードD1には電流が流れず、ダイオードD1は遮断状態(OFF)となる。また、このとき、電圧源Vsの陽極から太陽電池セルPV1、補助インダクタLv1、補助コンデンサCv1及びスイッチング手段M1を通って電圧源Vsの陰極に戻る閉ループ(ループ2)ができるので、補助インダクタLv1に於いて補助コンデンサCv1からスイッチング手段M1へ向かう方向に誘導起電力が発生し、補助コンデンサCv1の保持電圧V(Cv1)と(スイッチング手段M1がONのときの)補助インダクタLv1の発生電圧Vb(Lv1)とは、キルヒホッフの法則により、太陽電池セルPV1の発生電圧V1とインダクタL1の発生電圧V0と釣り合うので、
V1+V0=V(Cv1)+Vb(Lv1) …(3b)
が成立する。更に、このとき、電圧源Vsの陽極から太陽電池セルPV1、PV2、インダクタL2、補助コンデンサCv2、Cv1及びスイッチング手段M1を通って電圧源Vsの陰極に戻る閉ループ(ループ3)ができるので、インダクタL2に於いてダイオードD2からコンデンサC3へ方向に誘導起電力が発生し、ダイオードD2の陰極は、その陽極よりも電位が高くならないので、ダイオードD2に電流が流通可能となり、ダイオードD2は導通状態(ON)となる。これにより、キルヒホッフの法則から、太陽電池セルPV2の発生電圧V2、インダクタL2の(スイッチング手段M1がONのときの)発生電圧Vb(L2)、補助コンデンサCv2の保持電圧V(Cv2)及び(スイッチング手段M1がONのときの)補助インダクタLv1の電圧Vb(Lv1)に於いては、
V2=Vb(L2) …(3c)
Vb(Lv1)=V(Cv2) …(3d)
が成立する。そして、ダイオードD2の陰極側に直列接続されたダイオードD3に於いては、その陰極側にインダクタL2の発生電圧Vb(L2)と太陽電池セルPV3の発生電圧V3がかかり、ダイオードD3の陰極側がその陽極側よりも電位が高いので、ダイオードD3には電流は流れず、ダイオードD3は遮断状態(OFF)となる。このようにして、スイッチング手段M1が導通状態となると、スイッチング手段M1とダイオードDnとを含めた選択的導通手段列に於いて、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目の選択的導通手段(スイッチング手段M1とダイオードD
2s(sは、1~kの整数))が導通状態(ON)となり、太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目の選択的導通手段(ダイオードD
2s-1(sは、1~kの整数))が遮断状態(OFF)となる相1が達成されることとなる。
【0054】
次に、
図5(B)の如く、スイッチング手段M1が遮断状態(OFF)となると、補助コンデンサ列からスイッチング手段M1へ通って電圧源Vsへ戻る電流路となる各ループ(ループ1、2、3)がそれぞれ遮断されるので、図示の如く、各インダクタL1、Lv1、L2の誘導起電力(発生電圧)の向きが反転することとなる。ここで、スイッチング手段M1の導通状態の間に各インダクタに蓄積した電磁エネルギーは、スイッチング手段M1の遮断状態の間に放出されるとの条件により、インダクタの反転前の電圧Vbと反転後の電圧Vaには、Vb:Va=(1-d):dの関係が成立し(dは、スイッチング手段M1のデューティ比)、反転後のインダクタの電圧の大きさVaは、インダクタの反転前の電圧Vbにデューティ比の関数α(=d/(1-d))を乗じて得られる値
Va=αVb …(4a)
となる。そうすると、それまで遮断状態(OFF)であった太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目の選択的導通手段のダイオードD1、D3は、その陽極側の電位が、インダクタLiの誘導起電力によって高くなり、そのダイオードの陰極側よりも低くなくなるので、導通状態(ON)となる。一方、それまで導通状態(ON)であった太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目の選択的導通手段のダイオードD2は、その陰極側に太陽電池セルPV2の発生電圧又は補助コンデンサの保持電圧Cv2とインダクタL2、補助インダクタLv1の誘導起電力がかかり、その陽極側の電位が陰極側よりも低くなるので、遮断状態(OFF)となる。このようにして、スイッチング手段M1がOFFとなると、スイッチング手段M1とダイオードDnとを含めた選択的導通手段列に於いて、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目の選択的導通手段(スイッチング手段M1とダイオードD
2sが遮断状態(OFF)となり、太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目の選択的導通手段(ダイオードD
2s-1)が導通状態(ON状態)となる相2が達成されることとなる。そして、上記の選択的導通手段の状態が変わったとき、太陽電池セルPV1、PV2、PV3の発生電圧V1、V2、V3、電圧安定化電圧Cv1、Cv2の保持電圧V(Cv1)、V(Cv2)、(スイッチング手段がOFFのときの)インダクタL1、L2、Lv1の発生電圧Va(L1)、Va(L2)、Va(Lv1)の間に於いて、キルヒホッフの法則より、下記の関係が成立する。
V1=Va(L1) …(4b)
V(Cv1)=Va(Lv1) …(4c)
V2+Va(L2)=Va(Lv1)+V(Cv2) …(4d)
V3=Va(L2) …(4e)
【0055】
かくして、上に列記した関係式(3a)~(4e)を整理すると、
図5(A)、(B)にも示されている如く、回路構成内の各手段・素子に発生する電圧は、下記の通りとなる。
V2=V(Cv2)=Vb(L1)=Vb(L2)=Vb(Lv1)=V0 …(5a)
V1=V3=V(Cv1)=Va(L1)=Va(L2)=Va(Lv1)=αV0 …(5b)
そして、d=1/2のときには、α=1となり、太陽電池セルPV1、PV2、PV3の発生電圧V1、V2、V3は、一律に電圧源の供給電圧V0に制御されることとなる。なお、図では簡単のために、選択的導通手段の数が4の場合について記載されているが、当業者にとって理解される如く、選択的導通手段の数が増えても、スイッチング手段M1がONのときには、相1が達成され、スイッチング手段M1がOFFのときには、相2が達成され、そのような場合も本発明の範囲に属する。即ち、太陽電池セルの発生電圧は、下記の如くとなる。
Vn
I=V0 …(5c)
Vn
II=αV0 …(5d)
ここで、Vn
Iは、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目の選択的導通手段に並列接続された各太陽電池セルの発電電圧Vnであり、Vn
IIは、太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目の選択的導通手段に並列接続された各太陽電池セルの発電電圧Vnである。
【0056】
また、
図4(A)の如き構成に於いて、デューティ比d=1/2として、電圧源Vsの供給電圧V0を、例えば、複数の太陽電池セルの中で最も受光量の大きいセルの最大電力点に於ける発電電圧Vmppに一致させると(
図10(A)参照)、
図1(A)の場合と同様に、太陽電池セル間の受光量のばらつきに起因する出力低下及び/又は損失を小さく抑えながら、太陽電池モジュールの発電作動を実行することが可能となる。なお、電圧源Vsの供給電圧V0の制御に於いては、具体的には、供給電圧V0を変化させながら、太陽電池モジュールの出力電力、電圧及び/電流を計測し、太陽電池モジュールの出力電力、電圧及び/電流が最大となる電圧に供給電圧V0を一致させることによって達成されてよい。
【0057】
図4(A)に例示の本実施形態の第二の態様の第一の形態の回路構成に於いても、
図1の回路構成と同様に、太陽電池セルの一部が部分陰下に入るなどして、その太陽電池セルに流れるべき電流が他の太陽電池セルの電流よりも相対的に低下したとき、その低下分に相当する電流の余剰分は、その太陽電池セルが並列接続されたスイッチング手段を介して補助コンデンサに蓄積された後、その太陽電池セルの陽極側に接続された太陽電池セルへ、その他のスイッチング手段と補助コンデンサを通らずに、そのまま送られることとなるので、第一の態様と同様に、直列接続される太陽電池セルの数が増えることに対応して、直列接続されるスイッチング手段と補助コンデンサの数が増えても、余剰電流迂回損失は増大せず、従前の構成に比して、損失を抑制することが可能となる。
【0058】
(f)第二の態様の第一の形態の変形例
図4(A)に例示の回路構成の変形例の一つに於いては、
図6(A)に描かれている如く、スイッチング手段M1と電圧源Vsが太陽電池セル列の陽極側に設けられていてよい。即ち、この形態に於いては、直列接続されたダイオードDnの列の陽極側に直列にスイッチング手段M1が接続され、直列接続された太陽電池セル列PVnの陽極側に電圧源Vsが接続される。
図6(A)の形態では、スイッチング手段M1が、選択的導通手段列に於いて太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目の選択的導通手段となるので、スイッチング手段M1がOFFのときに、相1が達成され、スイッチング手段M1がONのときに、相2が達成されることとなる。作動に於いては、スイッチング手段M1のデューティ比をdとし、α=d/(1-d)とおくと、スイッチング手段M1がONのとき、
図6(B)に示されている如く、インダクタL1、L2に於いて、太陽電池セル側からダイオードへ向かう方向へ、補助インダクタLv1に於いて、ダイオードから補助コンデンサへ向かう方向へ、それぞれ、電圧源Vsの供給電圧V0の大きさに等しい誘導起電力が発生し、スイッチング手段M1がOFFのとき、
図6(C)に示されている如く、各インダクタに於いて、向きが反転し、αV0の大きさの誘導起電力が発生することとなる。そして、回路構成内の各手段・素子に発生する電圧は、下記の通りとなる。
V2=V(Cv1)=V0 …(6a)
V1=V3=V(Cv2)=αV0 …(6b)
なお、図では簡単のために、選択的導通手段の数が4の場合について記載されているが、当業者にとって理解される如く、回路装置は、選択的導通手段の数が増えても、同様に作動し、そのような場合も本発明の範囲に属する。即ち、太陽電池セルの発生電圧は、下記の如くとなる。
Vn
I=αV0 …(6c)
Vn
II=V0 …(6d)
【0059】
また、
図4(A)に例示の回路構成に於いてもコンデンサの全てに対して太陽電池セルが接続されていなくてもよい(図示せず)。更に、
図7(A)に示されている如く、出力端子ot+~ot-の間には、太陽電池セル列だけが取り付けられ、電圧源Vsが出力端子ot+~ot-の外に配置されるようになっていてもよい(電圧源Vsとスイッチング手段M1は、太陽電池セル列の陰極側に接続されても、陽極側に接続されてもよく、いずれの場合も、回路装置は同様に作動する。)。
【0060】
(g)第二の態様の第二の形態
本実施形態の第二の態様の第二の形態に於いては、
図4(A)に例示の構成に於ける電圧源Vsは用いられず、基準電圧決定手段として、
図7(B)の如く、出力端子間ot+~ot-の出力電圧を調節するMPPT制御装置などの任意の電圧制御装置が設けられ、出力電圧Voutが制御される。なお、第一の態様の場合と同様に、出力端子間ot+~ot-に接続されている負荷が充電池などのその両端子に有意な電圧を保持している負荷であるとき、かかる負荷が基準電圧決定手段となり、出力電圧Voutは、負荷の保持している電圧に基づいて自動的に決定されるようになっていてもよい。そして、スイッチング手段M1に対しては、太陽電池セルが並列に接続されてよい(即ち、太陽電池セルが全ての選択的導通手段の各々に対して並列に接続され、互いに直列に接続されてよい。)。作動に於いては、各太陽電池セルPVnの発生電圧Vnの総和ΣVnが任意に設定される大きさ又は負荷電圧に基づいて決定される大きさの出力電圧Voutとなる点を除いて、第一の形態の場合と同様である。太陽電池セル数が2kのとき、スイッチング手段が太陽電池セル列の陰極側に接続されている場合には、太陽電池セルの発生電圧は、
Vn
I=Vout/(1+α)k …(7a)
Vn
II=αVout/(1+α)k …(7b)
となる。一方、スイッチング手段が太陽電池セル列の陽極側に接続されている場合には、太陽電池セルの発生電圧は、
Vn
I=αVout/(1+α)k …(7c)
Vn
II=Vout/(1+α)k …(7d)
となる。なお、
図7(B)に例示の本実施形態の第二の態様の第二の形態の回路構成に於いても、コンデンサCnの全てに対して太陽電池セルが接続されていなくてもよい(図示せず)。なお、図では簡単のために、選択的導通手段の数が4の場合について記載されているが、当業者にとって理解される如く、回路装置は、選択的導通手段の数が増えても、同様に作動し、そのような場合も本発明の範囲に属する。
【0061】
図7(B)に例示の第二の形態の回路構成に於いても、
図1の回路構成と同様に、太陽電池セルの一部が部分陰下に入るなどして、その太陽電池セルに流れるべき電流が他の太陽電池セルの電流よりも相対的に低下したとき、その低下分に相当する電流の余剰分は、その太陽電池セルが並列接続されたスイッチング手段を介して補助コンデンサに蓄積された後、その太陽電池セルの陽極側に接続された太陽電池セルへ、その他のスイッチング手段と補助コンデンサを通らずに、そのまま送られることとなるので、第一の態様と同様に、直列接続される太陽電池セルの数が増えることに対応して、直列接続されるスイッチング手段と補助コンデンサの数が増えても、余剰電流迂回損失は増大せず、従前の構成に比して、損失を抑制することが可能となる。
【0062】
(h)第二の態様の第三の形態
図8(A)を参照して、本実施形態の第二の態様の第三の形態の構成に於いては、
図4(A)に例示の第二の態様の第一の形態の回路構成のスイッチング手段M1が、ダイオードに置き換えられて、選択的導通手段の列は、全てが直列に接続されたダイオードの列となり、電圧源Vsは用いられず、各ダイオードに対して太陽電池セルが並列に接続されてよい。
【0063】
そして、第一の形態の回路構成に於いてインダクタLiが配置されていた部位には、反転電圧発生手段として、変圧器の二次コイルが用いられる。かかる変圧器の二次コイルは、図示していない磁気回路を介して、
図8(B)に例示されている如き変圧器の一次コイル側回路の一次コイルと磁気的に結合される。変圧器の一次コイル側回路は、一次コイルL0、電圧源Vs、スイッチング手段M1及び抵抗Rが閉ループを形成してなる回路であってよく、スイッチング手段M1の両端子間の導通/遮断状態(ON/OFF)が周期的に切換わることにより、電圧源Vsから一次コイルL0へ流通する電流が変化し、これにより、一次コイルL0にて発生する磁束が変化し、その磁束の変化が磁気回路を経由して二次コイルLiへ伝達されて、二次コイルLiにて起電力が発生することとなる。スイッチング手段M1は、
図8(C)にて模式的に描かれている如く、その制御入力S1から、任意に設定されてよい所定のサイクル時間Tsに於いて、任意のデューティ比dにて、ON状態とOFF状態とが周期的に変化する制御信号を受信し、これにより、制御信号がONのときに、スイッチング手段M1の両端子間が導通状態となり、制御信号がOFFのときに、スイッチング手段M1の両端子間が遮断状態となるよう構成される。また、反転電圧発生手段として、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目の太陽電池セルの陽極側に接続される二次コイルLiの向きは、全て、一致するよう配置される(図中、○印参照)。補助反転電圧発生手段Lvjは、インダクタであっても、変圧器の二次コイルであってもよい。補助反転電圧発生手段が、変圧器の二次コイルのときには、その向きが反転電圧発生手段の二次コイルLiの向きと一致するように(ダイオード列に対しては、逆向きに電圧が発生するように)配置される。また、この形態に於いて用いられる変圧器としては、二次コイルに於いて、太陽電池セルの発電電圧として利用可能な大きさの範囲の電圧を発生すると共に、本実施形態に於ける反転電圧発生手段として要求される周期にて電圧の反転が可能となる任意の変圧器が用いられてよい。かくして、この形態に於いては、変圧器の一次コイル側回路と電圧源Vsとが、それぞれ、回路制御手段と基準電圧決定手段に相当する。
【0064】
作動に於いては、
図8(B)の変圧器の一次コイル側回路に於けるスイッチング手段M1のON/OFFが、
図8(C)下段に示されている如く、デューティ比dにて周期的に変化すると、一次コイルには、
図8(C)上段に示されている如く、リップル電流が流通し、二次コイルに於いて周期的に反転する起電力が発生することとなる。ここに於いて、スイッチング手段M1がONのときには、
図8(B)中、一次コイルにて下向きに起電力が発生し、これにより、
図8(A)の二次コイルLiには、左向き、即ち、ダイオード列から太陽電池セル列へ向かう向きの起電力Vbが発生し、その際には、キルヒホッフの法則に従い、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目の太陽電池セルPVnの発電電圧Vnが二次コイルLiの発生電圧Vbと等しくなる。また、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目のダイオードが導通し、太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目のダイオードが遮断された状態となるので、上記の相1が実現される。一方、スイッチング手段M1がOFFのときには、
図8(B)中、一次コイルにて上向きに起電力が発生し、これにより、
図8(A)の二次コイルLiには、右向き、即ち、太陽電池セル列からダイオード列へ向かう向きの起電力Vaが発生し、その際には、太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目のダイオードDnが導通し、奇数番目のダイオードDnが遮断され、上記の相2が実現され、キルヒホッフの法則に従い、太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目の太陽電池セルPVnの発電電圧Vnが二次コイルLmの発生電圧Vaと等しくなる。ここで、これまでの態様の回路構成と同様に、スイッチング手段M1の導通状態の間に一次コイルL0及び二次コイルLiに蓄積した電磁エネルギーは、スイッチング手段M1の遮断状態の間に放出されるとの条件により、スイッチング手段M1の導通状態のときの二次コイルLiの電圧Vbとスイッチング手段M1の遮断状態のときの二次コイルLiの電圧Vaには、Vb:Va=(1-d):dの関係が成立するので、結局、Va=αVbが成立し、かくして、太陽電池セル列の陰極側から数えて奇数番目の太陽電池セルPVnの発電電圧Vnは、一律に、Vbに調整され、太陽電池セル列の陰極側から数えて偶数番目の太陽電池セルPVnの発電電圧Vnは、αVbに、一律に調整されることとなる。更に、デューティ比d=1/2のときには、太陽電池セルPVnの発電電圧Vnは、一律に、二次コイルLiの発生電圧Vbと等しくなり、更に、変圧器の一次コイルのインダクタンスL0と二次コイルのインダクタンスLiと起電力との間には、L0:Li=Vs:Vbの関係が成り立つので、結局、太陽電池セルPVnの発電電圧Vnは、一次コイル側回路の電圧源電圧Vsを用いて、
Vn=Li/L0・Vs …(8)
により与えられることとなる。図では簡単のために、選択的導通手段の数が4の場合について記載されているが、当業者にとって理解される如く、回路装置は、選択的導通手段の数が増えても、同様に作動し、そのような場合も本発明の範囲に属する。
【0065】
図8(A)に例示の第三の形態の回路構成に於いても、
図1の回路構成と同様に、太陽電池セルの一部が部分陰下に入るなどして、その太陽電池セルに流れるべき電流が他の太陽電池セルの電流よりも相対的に低下したとき、その低下分に相当する電流の余剰分は、その太陽電池セルが並列接続されたスイッチング手段を介して補助コンデンサに蓄積された後、その太陽電池セルの陽極側に接続された太陽電池セルへ、その他のスイッチング手段と補助コンデンサを通らずに、そのまま送られることとなるので、第一の態様と同様に、直列接続される太陽電池セルの数が増えることに対応して、直列接続されるスイッチング手段と補助コンデンサの数が増えても、余剰電流迂回損失は増大せず、従前の構成に比して、損失を抑制することが可能となる。
【0066】
上記の第三の形態に於いては、太陽電池セルが直接に接続される回路内には、制御入力を必要とするスイッチング手段が存在せず、回路が全て受動的なダイオードにて構成されることとなるので、動作点制御回路に対して、制御入力を供給するための回路を準備する必要がなくなり、回路に於ける配線構造が簡単化される。更に、電源は、変圧器の一次コイル側回路内にあり、太陽電池セルと電圧源とが電気的に絶縁されることとなるので、太陽電池モジュールと電源とに於いて、共通の接地が取れない環境に於いても回路装置の利用が可能となり、回路装置の適用可能な状況の拡大が期待される。
【0067】
上記の第三の形態の構成に於いて、
図8(D)に描かれている如く、反転電圧発生手
段は、ダイオード列のいずれか一方の側から数えて一番目のものに於いてのみ変圧器の二次コイルを用い、その他は、インダクタであってよい。その場合、二次コイルL1(又はLk)の発生電圧が上記の如く周期的に反転されると、上記と同様に、相1及び相2が達成され、各太陽電池セルの電圧が制御されることとなる。この構成に於いては、動作点制御回路に於いて、変圧器の二次コイルが使用される箇所が一箇所となるので、
図8(A)の回路に比して、回路の作動に要する消費電力が低減される。
【0068】
C.本実施形態による動作点制御回路装置のその他の電源素子への応用
上記に説明された本実施形態による発電動作点制御回路装置の一連の構成は、太陽電池の他に、
図9(A)~(C)に例示されている如く、化学電池セル、蓄電器セル(BCn)、燃料電池セル(固形酸化物型燃料電池であってもよい。)、熱電発電素子、発電機セル(風力、水力、潮力、エンジン等による任意の発電機であってよい。)など、任意の電源セルを直列接続する際に適用されてよい。直列接続される電源セルの各々の最適な動作電圧が異なっていても、その動作電圧のずれによる出力低下が然程に大きくない場合には、本実施形態による教示に従って、動作点制御回路装置を利用することにより、出力を大きく低減させずに、動作電圧の調節のための時間と労力とを削減することが可能となる。また、上記の本実施形態による発電動作点制御回路装置の構成は、直列接続される電源の種類は同じ場合であっても異なる場合であっても適用されてもよい。例えば、
図1(A)、
図3(A)、(B)、
図4、
図6(A)、
図7(A)、(B)、
図8(A)、(D)に例示されている如き回路構成を有する動作点制御回路装置に於いて、太陽電池セルに換えて、化学電池セル、蓄電器セル、燃料電池セル、熱電発電素子、発電機セル等の任意の電源セルが直列に接続されてよく、互いに異なる電源セルが直列に接続された状態で使用されてよい。
【0069】
更に、本実施形態の動作点制御回路装置に於いては、所定の周期Tsに対する相2の時間幅の比(デューティ比)がdであるとき、電源セル列の陰極側から数えて奇数番目の電源セルの動作電圧Vnoと偶数番目の電源セルの動作電圧Vneとは、α==d/(1-d)を用いて、
Vne=αVno …(9)
の関係となるので、本実施形態によれば、一つの動作点制御回路装置により、所望の動作電圧が互いに異なる二つの電源セル群の電源セルを交互に直列に接続されたモジュールに於ける二つの群の電源セルの動作電圧を、基準電圧決定手段により決定される基準電圧とデューティ比dを調節することによって、それぞれ所望の電圧に調節することが可能となる。
【0070】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。