(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ノズルおよび加水分解装置
(51)【国際特許分類】
B05B 7/08 20060101AFI20221122BHJP
B05B 12/18 20180101ALI20221122BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B05B7/08
B05B12/18
F01N3/08 B
(21)【出願番号】P 2019208835
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】森 匠磨
(72)【発明者】
【氏名】庄野 恵美
(72)【発明者】
【氏名】田中 博仲
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027347(JP,A)
【文献】特開2011-117386(JP,A)
【文献】特開2004-033840(JP,A)
【文献】特開2002-066393(JP,A)
【文献】特開平07-060333(JP,A)
【文献】特開2004-195335(JP,A)
【文献】EVERLOY SPRAY NOZZLES スプレーノズル総合カタログ,日本,株式会社共立合金製作所,2018年10月31日,C2~3,https://everloy-spray-nozzles.com/product/,
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18
5/00- 5/16
7/00- 9/06
12/00-12/14
13/00-13/06
F01N 3/04- 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体と、
前記ノズル本体に設けられ、液体を噴射対象面に噴射する少なくとも3つの噴射部と、を備え、
前記ノズル本体を、前記少なくとも3つの噴射部が配置された側から平面視したとき、前記少なくとも3つの噴射部は、同一直線上に配置されておらず、
前記噴射部のそれぞれは、
前記ノズル本体の外側に向かう方向に前記液体を噴射する噴射孔と、
前記噴射孔から噴射された
前記液体の進路を制御する進路制御部とを備え、
前記噴射孔から噴射された前記液体が前記噴射対象面に付着することによって形成される領域を付着領域とし、
前記進路制御部は、前記付着領域において、複数の前記付着領域の集合体の中心部から外側に向かう第1方向の長さよりも前記第1方向に垂直な第2方向の長さが長くなるように、前記液体の進路方向を制御
し、
前記進路制御部として、前記噴射孔から噴射される前記液体に対して気体を吹き付ける1対の気体出射部を備える、ノズル。
【請求項2】
前記1対の気体出射部のそれぞれは、前記気体を噴射する気体噴射孔を備え、
前記気体噴射孔は、前記噴射部の外周部に設けられているとともに、前記ノズル本体の中央と、前記噴射孔とを通る直線上に設けられている、請求項
1に記載のノズル。
【請求項3】
前記噴射部は、前記ノズル本体の中央を中心とした同一円周上に等間隔に配置されている、請求項1
または2に記載のノズル。
【請求項4】
加水分解反応を促進する触媒を格納するための容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記触媒に対して前記液体としての尿素水を噴射する請求項1~
3のいずれか1項に記載のノズルと、
前記ノズルに前記尿素水を供給する管と、を備える、加水分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノズルおよび加水分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿素水を加水分解して得られるアンモニア(NH3)を還元剤として選択的触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)により、排気に含まれる窒素酸化物を窒素と水に分解して浄化するシステムが知られている。このようなシステムにおいて、尿素水を触媒に対して噴射することでアンモニアに加水分解させる反応の効率については向上が望まれている。
【0003】
液体を噴射対象物に噴霧するためのノズルは様々なものが実用化されている。例えば特許文献1には、2つのオリフィスを幅方向に併設し、それぞれのオリフィスから流体を噴射する流体噴射ノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、尿素水を効率的にNH3へ加水分解させる方法において、尿素水を触媒である噴射対象物のある断面に対して均一に噴射することが重要であることを発見し、上述のようなノズルを用いてこれを実現しようとした。
【0006】
しかしながら、上述のようなノズルにおいて、噴射部を3つ以上にした場合、噴射対象面に付着する液体の量が位置によって偏り得る。従って、従来のノズルによって噴射された液体の噴射対象物に対する付着量の均一性については、なお改善の余地がある。
【0007】
本発明の一態様は、3つ以上の噴射部を備えるノズルにおいて、噴射した液体の噴射対象物への付着量の均一性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るノズルは、ノズル本体と、前記ノズル本体に設けられ、液体を噴射対象面に噴射する少なくとも3つの噴射部と、を備え、前記ノズル本体を、前記少なくとも3つの噴射部が配置された側から平面視したとき、前記少なくとも3つの噴射部は、同一直線上に配置されておらず、前記噴射部のそれぞれは、前記ノズル本体の外側に向かう方向に前記液体を噴射する噴射孔と、前記噴射孔から噴射された液体の進路を制御する進路制御部とを備え、前記噴射孔から噴射された前記液体が前記噴射対象面に付着することによって形成される領域を付着領域とし、前記進路制御部は、前記付着領域において、複数の前記付着領域の集合体の中心部から外側に向かう第1方向の長さよりも前記第1方向に垂直な第2方向の長さが長くなるように、前記液体の進路を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、3つ以上の噴射部を備えるノズルにおいて、噴射した液体の噴射対象物への付着量の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る容器を備えた、加水分解装置を示す概略構成図である。
【
図3】
図2に示すノズルのA-A´切断線による断面図である。
【
図4】ノズルが備える噴射部の内部構造を示す概略図である。
【
図5】ノズルを用いて液体を噴射したときの噴射対象面を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るノズルを示す概略図である。
【
図7】
図6に示すノズルのB-B´切断線による断面図である。
【
図8】ノズルを用いて液体を噴射した時の噴射対象面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
<加水分解装置100の構成>
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る容器1を備えた、加水分解装置100を示す概略構成図である。
図2は、容器1が備えるノズル2を示す概略図である。
図3は、
図2に示すノズル2のA-A´切断線による断面図である。
図4は、ノズル2が備える噴射部13の内部構造を示す断面図である。
図5は、ノズル2を用いて液体6を噴射したときの噴射対象面Pにおける液体6の付着の様子を示す図である。
【0012】
実施形態1に係る加水分解装置100は、アンモニア(NH
3)を含んだガスを脱硝触媒に対して供給し、当該アンモニアを還元剤として選択的触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)反応により、排気に含まれる窒素酸化物を窒素と水に分解して浄化するための装置である。
図1に示すように、加水分解装置100は、容器1と、抽気ライン101と、処理ガスライン102と、不図示の加熱手段と、を備えている。
【0013】
加熱手段は、ディーゼルエンジン等のエンジンの排ガスの抽気を加熱する。加熱された抽気は、抽気ライン101を通じて容器1に供給される。
【0014】
容器1は、当該容器1内部で液体6を加水分解して、アンモニアを生成するための装置である。例えば、液体6とは尿素水である。容器1には、加水分解反応を促進させるための触媒である、噴射対象物5が格納されている。容器1には、噴射対象物5に液体6を噴射するためのノズル2が設けられている。また、容器1には、ノズル2を支持し、ノズル2に対して液体6等を供給するための管4が設けられている。ノズル2には、管4を通じて液体6が供給される。
【0015】
ノズル2は、噴射対象物5に対して液体6を噴射する。噴射された液体6は、容器1に導入された高温のガス(抽気)により加水分解されてアンモニアが生成される。
【0016】
容器1の形状は、具体的な例示として、軸方向に長い筒状、例えば、延伸方向に垂直な断面が略正方形の角筒状である。ただし、容器1の形状は角筒状に限られず、円筒状であってもよい。容器1は、アンモニアが混合された高温の処理ガスを、処理ガスライン102を通じて供給する。
【0017】
<ノズル2の構成>
ノズル2は、容器1に設けられるノズルであり、噴射対象物5の噴射対象面Pに対して霧状の液体6を噴射(噴霧)する液体噴射ノズルである。
図2および
図3に示すように、ノズル2は、管4に接続されるノズル本体11および液体6を噴射する少なくとも3つの噴射部13を備える。なお、本実施形態では、一例としてノズル本体11が噴射部13として3つの噴射部13A、噴射部13B、および噴射部13Cを備える場合について説明する。
【0018】
噴射部13A~13Cは、それぞれ同一の構造を備えているため、噴射部13Aの構造のみについて説明し、噴射部13Bおよび噴射部13Cの構造についての説明は省略する。
図4は、ノズル2が備える噴射部13Aの構造を示す断面図である。
図4に示すように、噴射部13Aには液体噴射孔14、気体供給部15、および一対の気体出射部17(進路制御部)が設けられている。液体噴射孔14は、噴射部13に設けられた円形の開口部である。液体噴射孔14は、管4内部の輸液管141と接続しており、輸液管141を通じて送られる液体6を噴射する。
【0019】
気体供給部15は、噴射孔としての気体噴射孔151および気体輸送管152を備える。気体噴射孔151は、液体噴射孔14の近傍に配置される1対の開口部である。気体輸送管152は、管4内部の気体輸送管と接続しており、当該気体輸送管によって送られる気体50を気体噴射孔151に供給し、気体噴射孔151が気体50を、噴射部13から噴射された液体6に向けて噴射する。これにより液体噴射孔14から噴射された液体6の粒子径が小さくなるため、液体6は霧状になる。
【0020】
気体出射部17は、噴射部13から噴射される液体6が噴射対象面Pに付着することによって形成される領域(以降では、付着領域とも称する)を制御するための機構である。なお、噴射対象面Pは、ノズル本体11を平面視したときの方向に対して略垂直な平面である。
【0021】
気体出射部17は、液体噴射孔14から噴射される液体に対して気体を吹き付けることにより、液体噴射孔14から噴射された液体の進路を制御する。気体出射部17は、気体噴射孔171および気体輸送管172を備える。1対の気体出射部17のそれぞれが、1つの気体噴射孔171を備えている。
【0022】
気体噴射孔171は、噴射部13Aの先端付近において、ノズル本体11の中心点20(
図2参照)と噴射部13Aとを結ぶ直線L(
図2において符号Lで示す直線)上に設けられる1対の開口部である。
図2に示すように、1対の気体噴射孔171は、直線L上において、液体噴射孔14を挟むように配置されている。換言すると、1対の気体噴射孔171は、噴射部13Aの外周部に設けられているとともに、ノズル本体11の中央と、液体噴射孔14とを通る直線L上に設けられている。
【0023】
気体輸送管172は、気体輸送管152と接続する気体輸送管とは異なる、管4内部に設けられる気体輸送管と接続しており、当該気体輸送管によって送られた気体60を気体噴射孔171に供給する。なお、気体輸送管172および気体輸送管152は、管4内部に設けられる同一の気体輸送管と接続していてもよい。この場合、当該気体輸送管によって送られた気体50が気体噴射孔171および気体噴射孔151に供給される。
【0024】
気体噴射孔171は、気体輸送管172によって供給された気体60を噴射され霧状になった液体6に対して噴射する。なお、気体噴射孔151および17から噴射する気体50および気体60の種類は特に限定されない。気体50および気体60は、例えば空気であってもよい。
【0025】
また、3つの噴射部13は、噴射対象面Pに対して垂直な方向である第3方向(
図3において矢印30で示す方向)から見て同一直線上に位置しないよう配置されている。具体的には、第3方向から見た場合(換言すれば、ノズル本体11を3つの噴射部13が配置された側から平面視した場合)、3つの噴射部13はノズル本体11の中央である中心点20(
図2において点20で示す位置)を中心とした同一円周上に配置されている。
【0026】
また、3つの噴射部13は、互いの距離が等間隔になるように配置されている。換言すると3つの噴射部13は、第3方向から見た場合、正三角形を成すように配置されている。また、3つの噴射部13は、第3方向から見たときに、ノズル本体11の中心点20から噴射部13へ向かう方向(例えば、噴射部13Bについては、
図3において矢印40で示す方向)に向けて液体を噴射するように第3方向に垂直な面に対して傾いて設置されている。
【0027】
<ノズル2の効果>
本実施形態におけるノズル2では、気体出射部17の気体噴射孔171によって噴射された気体60の圧力により、液体噴射孔14から噴射された液体6全体の形状は、気体噴射孔171が対向する方向において短く、前記方向に対して垂直な方向において長い扁平形状(楕円形状)となるよう変形する。すなわち、気体出射部17は、付着領域Sにおいて、複数の付着領域Sの集合体の中心部から外側に向かう第1方向の長さよりも当該第1方向に垂直な第2方向の長さが長くなるように、液体の進路を制御する。
【0028】
これにより、
図5に示すように、1つの噴射部13から噴射され、噴射対象面Pに付着する液体6の付着領域S(
図5において符号Sで示す領域)は、扁平形状(楕円形状)となる。換言すると、付着領域Sは、ノズル本体11の中心(中心点20)から外側に向かう方向である第1方向(
図5において矢印70で示す方向)における長さよりも前記第1方向に対して垂直な第2方向(
図5において矢印80で示す方向)における長さの方が長くなる。
【0029】
図5に示すように、3つの噴射部13から噴射され、噴射対象面Pに付着する液体の領域T(付着領域Tと称する)では、1つの噴射部13による付着領域S(
図5においてSで示す領域)の端部が別の噴射部13による付着領域Sの端部と重なり合う。
【0030】
ここで、1つの噴射部13による噴射領域Sは、扁平形状であるため、特に長手方向端部において液体6の付着量が少なくなる傾向がある。しかしながら、ノズル2は3つの噴射部13によって噴射領域Sの端部同士が重なり合っているため、噴射領域T内において液体6の付着量のばらつきは低減される。
【0031】
それぞれの噴射部13は、ノズル本体11の外側に向けて傾斜している。そのため、噴射部13は、液体6をノズル本体11の外側に向かう方向に噴射する。これにより、噴射部13が第3方向に向いている場合よりも、付着領域S内における液体6の付着量の偏りが低減される。
【0032】
ハニカム構造を有する噴射対象物5に対して、噴射部13が第3方向を向いている場合、噴射部13から噴射された液体6の多くは略第3方向に噴射される。この場合、液体6の多くは、噴射対象物5である触媒のハニカム構造内部を、当該ハニカム構造の内壁面に接触することなく通り抜けるため、触媒反応の効率が低下し得る。
【0033】
これに対して、本実施形態に係るノズル2では、それぞれの噴射部13が、ノズル本体11の外側に向けて傾斜している。これにより、噴射部13から噴射される液体6は、第3方向に対して傾斜した方向に噴射される。従って、液体6の多くは、噴射対象物5が有するハニカム構造の内壁面に接触するため、触媒反応の効率を向上させることができる。
【0034】
また、噴射部13では、気体噴射孔171から噴出される気体の風圧によって扁平形状を調節している。そのため、噴射対象面Pの大きさ等の条件が変更された場合においても、上記風圧を変更することにより、噴射部13の構造を変更することなく対応することが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態では、進路制御部として気体出射部17を備える構成について説明したが、付着領域Sの形状を制御する方法はこれに限られるものではない。例えば、進路制御部として、液体噴射孔14の形状を変形し、扁平形状とすることによって付着領域Sを扁平形状となるように調整してもよい。
【0036】
〔実施形態2〕
<ノズル2Aの構成>
本発明の他の実施形態について、
図6~
図8を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図6は、本発明の実施形態2に係るノズル2Aを示す概略図である。
図7は、
図6に示すノズル2AのB-B´切断線による断面図である。
図8は、ノズル2Aを用いて液体6を噴射した時の噴射対象面Pを示す図である。
【0037】
図6および
図7に示すように、本発明の実施形態2に係るノズル2Aは、噴射部13として4つの噴射部13A、13B、13C、および13Dを備える。4つの噴射部13A~13Dはそれぞれ噴射対象面Pに対して垂直な方向である第3方向から見て同一直線上に位置しないよう配置されている。具体的には、第3方向から見た場合、4つの噴射部13はノズル本体11の中心点20を中心とした同一円周上に配置されている。
【0038】
また、4つの噴射部13は、互いの距離も均等になるように配置されている。換言すると4つの噴射部13は、第3方向から見た場合、正四角形を成すように配置されている。また、4つの噴射部13は、第3方向から見たときに、ノズル本体11の中心点20から噴射部13へ向かう方向に向けて液体を噴射するように第3方向に垂直な面に対して傾いて設置されている。
【0039】
<ノズル2Aの効果>
図8に示すように、ノズル2Aを用いて液体6の付着領域U(
図8において符号Uで示す領域)は、4つの付着領域Sによって構成されるため、ノズル2による付着領域Tよりも広くなる。これは、ノズル2Aが4つの噴射部13A~13Dを備えているためである。ノズル2Aは、上記構成により、ノズル2と同様に付着領域T内における液体6の付着量の偏りを低減しつつ噴射領域Pのより広い範囲に液体6を噴射することができる。
【符号の説明】
【0040】
2、2A ノズル
5 噴射対象物
6 液体
11 ノズル本体
13、13A、13B、13C、13D 噴射部
14 液体噴射孔(噴射孔)
17 気体出射部(進路制御部)
P 噴射対象面