(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】船舶用燃料油の転換システム及び転換方法
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20221122BHJP
F02D 19/06 20060101ALI20221122BHJP
F02M 53/02 20060101ALI20221122BHJP
F02M 53/00 20060101ALI20221122BHJP
F02M 55/00 20060101ALI20221122BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20221122BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221122BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63H21/38 C
F02D19/06 G
F02M53/02
F02M53/00 C
F02M55/00 D
F02M55/02 350P
F02M55/02 360F
F02M55/02 350C
F02M37/00 341A
F02M37/00 341B
F02M37/00 331B
F02D19/08 Z
(21)【出願番号】P 2019523860
(86)(22)【出願日】2017-10-30
(86)【国際出願番号】 KR2017012081
(87)【国際公開番号】W WO2018093064
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2016-0154939
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】デウ シップビルディング アンド マリン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ビョン タク
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウォン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イル ス
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-153871(JP,U)
【文献】特開2009-121367(JP,A)
【文献】特開昭60-226620(JP,A)
【文献】国際公開第2015/044334(WO,A1)
【文献】特開2014-122633(JP,A)
【文献】特開2012-176672(JP,A)
【文献】特表2011-515550(JP,A)
【文献】特開昭59-037239(JP,A)
【文献】特開昭58-200050(JP,A)
【文献】実開平05-061450(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38
F02D 19/06
F02M 53/02
F02M 53/00
F02M 55/00
F02M 55/02
F02M 37/00
F02D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の燃料油をエンジンの燃料として使用する途中で他の種類の燃料油を前記エンジンの燃料に転換する船舶用燃料油の転換システムにおいて、
燃料油を供給する供給部;と
前記供給部から燃料油が供給されて、燃料油を循環させる循環部;と
前記供給部及び前記循環部を制御する制御部;とを備え、
前記供給部は、それぞれ異なる種類の燃料油を貯蔵する複数のタンクと、これらの異なる種類の燃料油
を混合した
ものを混合燃料油
とし、この混合燃料油を前記循環部に供給する供給ポンプと、この供給ポンプの下流に設けられて、前記循環部に送られる
混合燃料油の流量を測定する第1流量計とを備え、
前記エンジンは前記循環部から
混合燃料油が供給され、前記エンジンで使用されずに残った
混合燃料油
が前記循環部
で再循環
され、
前記制御部は、前記複数のタンクから排出される
各燃料油の流量をそれぞれ制御して、前記エンジンに送られる
混合燃料油の混合割合を調節
すると共に、前記エンジンの単位時間当たりの燃料油消費量と同等の流量を前記第1流量計が指示するように構成され、前記エンジンで消費された燃料油の流量分だけ混合燃料油が前記循環部に送られる
ようにしたことを特徴とする、船舶用燃料油の転換システム。
【請求項2】
前記供給部は、
前記複数のタンクから燃料油が排出される複数の排出ライン;と
前記複数の排出ライン上にそれぞれ設置される複数の調節バルブ;とをさらに備え、
前記制御部は、前記複数の調節バルブの開度をそれぞれ調節して燃料油の混合割合を調節することを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項3】
前記供給部は、前記複数の排出ライン上にそれぞれ設置される複数の逆流防止バルブをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項4】
前記循環部は、燃料油の圧力を上昇させて燃料油を循環させる循環ポンプをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項5】
前記循環ポンプは、前記循環部を循環する燃料油の圧力を8~10barに維持することを特徴とする、請求項
4に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項6】
前記循環部は、前記エンジンの最大燃料消費量の約3倍に相当する流量が循環することを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項7】
前記制御部は割合計算装置を備え、
前記循環部は、
前記エンジンに供給される燃料油の温度を測定する第1温度センサー;と
前記エンジンに供給される燃料油の粘度を測定する粘度センサー;とをさらに備え、
前記第1温度センサーが測定した燃料油の温度値と前記粘度センサーが測定した燃料油の粘度値とは、前記割合計算装置に送信され、
前記割合計算装置は、前記循環部を循環する燃料油に含まれる互いに異なる燃料油の混合割合を計算することを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項8】
前記割合計算装置は、
前記循環部を循環する燃料油に含まれる各成分の粘度をcStで表した値がvである場合、「VBI=14.534×ln(ln(v+0.8))+10.975」の式で粘度ブレンド指数(VBI)を求め、
混合された燃料油におけるA成分の重量比をw_Aとし、各成分の重量比(w)を同一温度で決定された値を使用した場合、「VBI_blend=(w_A×VBI_A)+(w_B×VBI_B)」式、混合された燃料油の粘度をv_blendとした場合、「v_blend=exp{exp(VBI_blend-10.975)÷14.534}-0.8」式に基づいて、w_Aとw_Bとを求めることを特徴とする、請求項
7に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項9】
前記制御部は統合自動化システムをさらに備え、
前記統合自動化システムには、
前記割合計算装置で計算した燃料油の混合割合の値;と
前記第1温度センサーから前記割合計算装置に送信された燃料油の温度値;と
前記粘度センサーから前記割合計算装置に送信された燃料油の粘度値;とが前記割合計算装置から送信されることを特徴とする、請求項
7に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項10】
前記統合自動化システムは、
前記割合計算装置から送信された燃料油の粘度値が、前記エンジンで要求される粘度を満たすように、燃料油の温度と燃料油の混合割合とを調節し、
調節した燃料油の温度に関するフィードバックは、前記割合計算装置から送信された前記第1温度センサーが測定した温度値から受け、
調節した燃料油の混合割合に関するフィードバックは、前記割合計算装置から送信された前記粘度センサーが測定した粘度値から受けることを特徴とする、請求項
9に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項11】
前記循環部は加熱器をさらに備え、
前記加熱器は、前記循環部を循環する燃料油の粘度が前記エンジンで要求される粘度より高い場合に、燃料油を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項12】
前記循環部は冷却器をさらに備え、
前記冷却器は、前記循環部を循環する燃料油の粘度が前記エンジンで必要される粘度より低い場合に、燃料油を冷却することを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【請求項13】
前記循環部は前記エンジンの下流に設置され、前記エンジンで使用されずに残った燃料油を一時貯蔵する燃料油管をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料油の転換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の燃料油をエンジンの燃料として使用する途中で他の種類の燃料油をエンジンの燃料に転換する、船舶用燃料油の転換システム及び転換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載したエンジンの燃料として使用する燃料油は、HFO(Heavy Fuel Oil)、MGO(Marine Gas Oil)、MDO(Marine Diesel Oil)などがある。
【0003】
HFOは原油からガソリン、灯油、軽油などを抽出した後で得られる黒褐色の粘性油であり、液体形態で得られる石油製品の中で最も密度が高い。HFOは引火点が約40℃であり、灯油、軽油、特にガソリンに比べて蒸発させることが難しい。また、粘度が180~700cStであって、エンジンで要求される10~25cStの粘度に合わせるためには、約100~140℃まで加熱する必要がある。HFOには水、異物、固形物などが混合されているため、清浄器の清浄過程を経たHFOを船舶のエンジンに供給する。
【0004】
MGO及びMDOは、HFOより高品質の船舶用燃料油であり、残渣油の有無と硫黄含有量によって区別される。MGO及びMDOは粘性が低いので、エンジンで要求される粘度を満たすために加熱装置を追加する必要がなく、また、発熱量が高く、残渣油が含まれない。MGO及びMDOは、硫黄酸化物(SOx)を発生する硫黄含有量がHFOに比べて著しく低い。したがって、船舶が硫黄酸化物の排出規制地域を運航する場合や、硫黄酸化物の排出規制地域内の港を出入する場合、MGOまたはMDOを使用する必要がある。しかし、MGO及びMDOはHFOに比べて高価であり、また、エンジンが要求する最低粘度未満である場合に備え、粘度を上げるための別の冷却装置が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HFO、MGO、MDOなどの燃料油は、化学的特性及び物理的特性と価格がそれぞれ異なるため、船舶の運航状況に応じて適切な燃料油に変更してエンジンに供給する必要がある。
【0006】
異なる温度の燃料油を混合処理によって転換する場合、エンジンと各種装置に損傷を与えないように、混合燃料油における時間当たりの温度変化を所定値の以下に抑えながらも、エンジンに供給される混合燃料油の粘度を、エンジンで要求される燃料油の粘度を満たすために所定範囲内で維持しなければならない。もし、混合割合の調節が間違って混合された燃料油で急激な温度変化が起こる場合、エンジンと各種装置に急激な熱膨張または熱収縮が発生し、漏洩、潤滑機能の喪失、摩耗などの損傷が生じる虞がある。
【0007】
また、長時間に亘って徐々に燃料を転換すると、混合する燃料油の急激な温度変化を防止することはできるが、転換時間が長くなるほど高価格のMGOまたはMDOの使用量が多くなるため経済的な損失が生じる。
【0008】
本発明は、船舶の運航速度に影響を与えることなく、各種装置及びエンジンの性能と寿命に影響を与えずに、燃料消費の費用を最小限に抑えることができる、船舶用燃料油の転換システム及び転換方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明の一実施形態では、所定の燃料油をエンジンの燃料として使用する途中で他の種類の燃料油を前記エンジンの燃料に転換する船舶用燃料油の転換システムにおいて、燃料油を供給する供給部と、前記供給部から燃料油が供給されて、燃料油を循環させる循環部と、前記供給部及び前記循環部を制御する制御部;とを備え、前記供給部は、それぞれ異なる種類の燃料油を貯蔵する複数のタンクと、これらの異なる種類の燃料油を混合したものを混合燃料油とし、この混合燃料油を前記循環部に供給する供給ポンプと、この供給ポンプの下流に設けられて、前記循環部に送られる混合燃料油の流量を測定する第1流量計とを備え、前記エンジンは前記循環部から混合燃料油が供給され、前記エンジンで使用されずに残った混合燃料油が前記循環部で再循環され、前記制御部は、前記複数のタンクから排出される各燃料油の流量をそれぞれ制御して、前記エンジンに送られる混合燃料油の混合割合を調節すると共に、前記エンジンの単位時間当たりの燃料油消費量と同等の流量を前記第1流量計が指示するように構成され、前記エンジンで消費された燃料油の流量分だけ混合燃料油が前記循環部に送られる、船舶用燃料油の転換システムが提供される。
【0010】
前記供給部は、前記複数のタンクから燃料油が排出される複数の排出ラインと、前記複数の排出ライン上にそれぞれ設置される複数の調節バルブとをさらに備え、前記制御部は、前記複数の調節バルブの開度をそれぞれ調節して燃料油の混合割合を調節する。
【0012】
前記第1流量計は、前記エンジンの単位時間当たりの燃料油消費量と同等の流量を指示する。
【0013】
前記供給部は、前記複数の排出ライン上にそれぞれ設置される複数の逆流防止バルブをさらに備える。
【0014】
前記循環部は燃料油の圧力を上昇させて燃料油を循環させる循環ポンプをさらに備える。
【0015】
前記循環ポンプは、前記循環部の循環する燃料油の圧力を8~10barに維持する。
【0016】
前記循環部は、前記エンジンの最大燃料消費量の約3倍に相当する流量が循環する。
【0017】
前記制御部は割合計算装置を備え、前記循環部は、前記エンジンに供給される燃料油の温度を測定する第1温度センサーと、前記エンジンに供給される燃料油の粘度を測定する粘度センサーとをさらに備え、前記第1温度センサーが測定した燃料油の温度値と前記粘度センサーが測定した燃料油の粘度値とは、前記割合計算装置に送信され、前記割合計算装置は、前記循環部を循環する燃料油に含まれる互いに異なる燃料油の混合割合を計算する。
【0018】
前記割合計算装置は、前記循環部を循環する燃料油に含まれる各成分の粘度をcStで表した値がvである場合、「VBI=14.534×ln(ln(v+0.8))+10.975」の式によって粘度ブレンド指数(VBI)を求め、混合された燃料油のA成分の重量比をw_Aとし、各成分の重量比(w)を同一温度で決定された値を使用した場合、「VBI_blend=(w_A×VBI_A)+(w_B×VBI_B)」の式と、混合された燃料油の粘度をv_blendとした場合、「v_blend=exp{exp(VBI_blend-10.975)÷14.534}-0.8」の式によって、w_Aとw_Bとを求める。
【0019】
前記制御部は統合自動化システムをさらに備え、前記統合自動化システムには、前記割合計算装置で計算した燃料油の混合割合の値と、前記第1温度センサーから前記割合計算装置に送信された燃料油の温度値と、前記粘度センサーから前記割合計算装置に送信された燃料油の粘度値とが前記割合計算装置から送信される。
【0020】
前記統合自動化システムは、前記割合計算装置から送信された燃料油の粘度値が、前記エンジンで要求される粘度を満たすように、燃料油の温度と燃料油の混合割合とを調節し、調節した燃料油の温度に関するフィードバックは、前記割合計算装置から送信された前記第1温度センサーが測定した温度値から受けて、調節した燃料油の混合割合に関するフィードバックは、前記割合計算装置から送信された前記粘度センサーが測定した粘度値から受ける。
【0021】
前記循環部は加熱器をさらに備え、前記加熱器は、前記循環部を循環する燃料油の粘度が前記エンジンで要求される粘度より高い場合に、燃料油を加熱する。
【0022】
前記循環部は冷却器をさらに備え、前記冷却器は、前記循環部を循環する燃料油の粘度が前記エンジンで要求される粘度より低い場合に、燃料油を冷却する。
【0023】
前記循環部は、前記エンジンの下流に設置され、前記エンジンで使用されて残った燃料油を一時貯蔵する燃料油管をさらに備える。
【0024】
前記目的を達成するため本発明の他の一実施形態では、所定の燃料油をエンジンの燃料として使用する途中で他の種類の燃料油を前記エンジンの燃料に転換する船舶用燃料油の転換方法において、1)第2燃料油を供給する第2調節バルブを完全に開放し、第1燃料油を供給する第1調節バルブを完全に閉鎖し、前記エンジンに前記第2燃料油のみを供給し、2)割合計算装置は、前記エンジンに供給される燃料油に含まれる互いに異なる燃料油の混合割合を計算し、3)使用者から燃料油の転換信号が送信され、4)前記第1燃料油が設定された時間当たりの流量分だけ増加しながら排出されるように前記第1調節バルブを徐々に開放し、5)前記第1調節バルブが完全に開放されたら、第2燃料油が設定された時間当たりの流量分だけ減少しながら排出されるように前記第2調節バルブを徐々に閉鎖して、6)前記第2制御バルブを完全に閉鎖して、前記割合計算装置によって計算された前記第1燃料油の割合が所定値以上になると、燃料油の転換が完了したと判断する、船舶用燃料油の転換方法が提供される。
【0025】
前記割合計算装置は、前記エンジンに供給される燃料油の温度と粘度とを引数として使用して燃料油の混合割合を計算する。
【0026】
前記3)ステップで使用者から燃料油の転換信号が送信されたら、自動的に前記エンジンに供給される燃料油の粘度が設定され、前記6)のステップで燃料油の転換が完了したと判断したら、自動的に前記エンジンに供給される燃料油の粘度が設定される。
【0027】
前記目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態では、船舶用エンジンに供給される燃料油を第1燃料油から第2燃料油に転換する方法において、前記第1燃料油と前記第2燃料油とは粘度が互いに異なり、前記第1燃料油と前記第2燃料油とが混合されて前記エンジンに供給される時間が設定値以下となり、前記第1燃料油と前記第2燃料油とが混合されて発生する温度変化が設定値以下になるように、前記第1燃料油の流量と前記第2燃料油の流量とを制御する、船舶用燃料油の転換方法が提供される。
【0028】
前記船舶用燃料油の転換方法は、前記第1燃料油のみを前記エンジンに供給する状態で前記第2燃料油の供給量を増加させた後、前記第2燃料油の供給量が最大になったら前記第1燃料油の供給量を減少させて、前記第2燃料油のみを前記エンジンに供給する。
【0029】
前記船舶用燃料油の転換方法は、前記エンジンに供給される燃料油の粘度及び温度を引数として、前記エンジンに供給される燃料油の混合割合を計算して流量制御のフィードバックを受ける。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、燃料油の転換が完了した時点を正確に予測して、硫黄酸化物の排出制限地域への進入が可能な時点を正確に知ることができる。また、燃料油の転換を確実に保証し、排出制限地域における排出規定を満足させることができる。
【0031】
本発明は、燃料油の変更時間を最小限に抑え、比較的高い価格のMGOまたはMDOの使用量を最小限に抑えることができるため、燃料消費の費用を低減することができる。
【0032】
本発明は、各装置で要求される燃料油の時間当たりの温度変化及び粘度を満足させて、装置の破損を最小限に抑えることができる。また、燃料油の転換を自動的に行うことで、人件費を低減することができると共に、精度を向上させることができる。
【0033】
本発明は、燃料油の転換時において各装置を保護するための安全装置を備え、システム運用の安全性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る船舶用燃料油の転換システムの概略図。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る船舶用燃料油の転換システムの概略図。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る船舶用燃料油の転換システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の構成及び作用を詳細に説明する。本発明の船舶用燃料油の転換システム及び転換方法を適用する船舶は、液化天然ガス運搬船、液化天然ガス燃料船、掘削船、海洋構造物などの様々な用途がある。また、本発明の船舶用燃料油の転換システム及び転換方法は、互いに異なる種類の燃料油を使用する全てのエンジンに適用することができる。下記の実施形態は、様々な他の形態に変更することが可能であり、本発明の範囲は下記の実施形態によって限定されない。
【0036】
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶用燃料油の転換システムの概略図である。
【0037】
図1を参照して、本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、供給部(100)、循環部(200)、及び制御部(300)を備える。
【0038】
本実施形態の供給部(100)は、複数のタンク(T1,T2)、複数の調節バルブ(V11,V12)、及び供給ポンプ(110)を備え、複数のタンク(T1,T2)に貯蔵された燃料油を循環部(200)に送る。
【0039】
本実施形態の複数のタンク(T1,T2)は、互いに異なる種類の燃料油を貯蔵する。本実施形態の複数のタンク(T1,T2)はそれぞれ、HFO供給タンク(HFO Service Tank)、HFO沈降タンク(HFO Settling Tank)、HFOバンカータンク(HFO Bunker Tank)、MDO供給タンク(MDO Service Tank)、MDO貯蔵タンク(MDO Storage Tank)、MGO供給タンク(MGO Service Tank)、MGO貯蔵タンク(MGO Storage Tank)のいずれかである。
【0040】
複数のタンク(T1,T2)から燃料油が排出される排出ライン(L1,L2)上にそれぞれ緊急遮断バルブ(V41,V42)を設置する。本実施形態の緊急遮断バルブ(V41,V42)は、空気または油圧で開閉が調節され、機関室内で火災が発生した場合に燃料油の供給を遮断して火災の拡大を防止するために設置される。
【0041】
本実施形態では、2つのタンク(T1,T2)を備え、第1タンク(T1)はMGOを貯蔵し、第2タンク(T2)はHFOを貯蔵する場合を例に説明する。
【0042】
本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、複数のタンク(T1,T2)から燃料油が排出される複数の排出ライン(L1,L2)上にそれぞれ設置される。本実施形態が2つのタンク(T1,T2)を備える場合、第1タンク(T1)から燃料油が排出される第1排出ライン(L1)上には第1調節バルブ(V11)が設置され、第2タンク(T2)から燃料油が排出される第2排出ライン(L2)上には第2調節バルブ(V12)が設置される。
【0043】
本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、後述する制御部(300)の統合自動化システム(IAS;Integrated Automation System,320)によって開度が調節され、複数のタンク(T1,T2)から供給ポンプ(110)に供給される燃料油の流量を調節する。また、本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、平常時には統合自動化システム(320)によって自動的に開度が調節されるが、非常時には手動操作ができるように構成される。
【0044】
本実施形態の供給ポンプ(110)は、複数のタンク(T1,T2)から排出された燃料油の圧力を上昇させて循環部(200)に供給し、複数が並列に連結される。複数のタンク(T1,T2)からそれぞれ排出された互いに異なる種類の燃料油は、混合された後、供給ポンプ(110)に供給される。
【0045】
本実施形態がMGOを貯蔵した第1タンク(T1)とHFOを貯蔵した第2タンク(T2)とを備える場合を例に説明すると、第1タンク(T1)から排出されたMGOを供給ポンプ(110)に送る第1排出ライン(L1)と、第2タンク(T2)から排出されたHFOを供給ポンプ(110)に送る第2排出ライン(L2)とは、供給ポンプ(110)の前段で合流し、第1タンク(T1)から排出されたMGOと第2タンク(T2)から排出されたHFOとは、供給ポンプ(110)の前段で混合された後で供給ポンプ(110)に送られる。
【0046】
本実施形態の供給部(100)は、前記供給ポンプ(110)の下流から分岐して前記供給ポンプ(110)の前段に合流するリターンライン(L3)をさらに備える。本実施形態のリターンライン(L3)は、供給ポンプ(110)が圧縮した燃料油のうちエンジン(E)で消費された量を超える燃料油を分岐させて供給ポンプ(110)の前段に送る。リターンライン(L3)上には、流体の流量と開閉を調節する第1バルブ(V31)が設置される。
【0047】
本実施形態の供給部(100)は、供給ポンプ(110)の下流に設置される第1流量計(120)をさらに備える。本実施形態の第1流量計(120)は、複数のタンク(T1,T2)からそれぞれ排出された後で混合され、供給ポンプ(110)によって循環部(200)に供給される燃料油の流量を測定する。本実施形態の第1流量計(120)によって測定された流量値は、統合自動化システム(320)に送信される。
【0048】
循環部(200)は燃料油を循環させてエンジン(E)に供給し、供給部(100)はエンジン(E)で消費された燃料油の流量分だけを循環部(200)に供給する。したがって、第1流量計(120)がエンジン(E)での時間当たりの燃料油消費量と同じ量の流量を指示するようにシステムを運用することになり、第1流量計(120)がエンジン(E)における時間当たりの燃料油消費量より少ないか多い流量を指示したらシステムに問題があることを検知する。
【0049】
本実施形態の供給部(100)は、複数のタンク(T1,T2)から燃料油を排出させる複数の排出ライン(L1,L2)上にそれぞれ設置される複数の逆流防止バルブ(V21,V22)をさらに備える。本実施形態が2つのタンク(T1,T2)を備える場合、第1タンク(T1)から燃料油が排出される第1排出ライン(L1)上に第1逆流防止バルブ(V21)が設置され、第2タンク(T2)から燃料油が排出される第2排出ライン(L2)上に第2逆流防止バルブ(V22)が設置される。
【0050】
本実施形態の燃料油の転換システムでは、複数の調節バルブ(V11,V12)の全てが開いている状態が存在するため、一方のタンクから排出された燃料油が他方のタンクに流入する。本実施形態がMGOを貯蔵した第1タンク(T1)とHFOを貯蔵した第2タンク(T2)とを備える場合を例に説明すると、燃料油の転換時に第1調節バルブ(V11)と第2調節バルブ(V12)との両方が開いているので、第1タンク(T1)から排出されたMGOの一部が第1調節バルブ(V11)及び第2調節バルブ(V12)を通って第2タンク(T2)に流入することも、第2タンク(T2)から排出されたHFOの一部が第2調節バルブ(V12)及び第1調節バルブ(V11)を通って第1タンク(T1)に流入することもできる。
【0051】
本実施形態の複数の逆流防止バルブ(V21,V22)は、一方のタンクから排出された燃料油が他方のタンクに流入することを防止して、各タンク(T1,T2)内で異種の燃料油が混合することを防止する。
【0052】
本実施形態の循環部(200)は、循環ポンプ(210)、第1温度センサー(241)、及び粘度センサー(230)を備え、供給部(100)から供給された燃料油を循環させてエンジン(E)に供給する。
【0053】
本実施形態の循環ポンプ(210)は、供給部(100)から循環部(200)に供給された燃料油の圧力を上昇させて燃料油を循環させ、複数が並列に連結される。本実施形態の循環部(200)は、循環ポンプ(210)によって加圧されて約8~10barの圧力を維持することが好ましい。
【0054】
低粘度のHFOをエンジン(E)の燃料として使用する場合、HFOをエンジン(E)で要求される粘度まで合わせるために、HFOの加熱が必要な場合がある。HFOを加熱するとHFOに含まれる有機化合物、水などの不純物が気化し、気化した不純物がポンプを損傷させ、エンジン(E)における燃料油の噴射を妨げる恐れがある。
【0055】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムでは、HFOの圧力を上昇させた後に加熱するため、不純物の圧力も高くなって不純物の沸点が上昇し、最終的にはHFOに含まれる不純物の気化が防止される。一例として、HFOを約7barで加圧すると、HFOに含まれる水は170℃付近で気化するため、HFOを約130℃に加熱しても水は気化しない。
【0056】
本実施形態の循環部(200)を循環していた燃料油は、エンジン(E)に供給されて燃料として使用され、エンジン(E)で使用されずに残った燃料油は、エンジン(E)から排出されて再び循環部(200)を循環する。供給部(100)は、エンジン(E)で消費された燃料油分だけを新たに循環部(200)に供給し、循環部(200)では平均的に一定流量が循環することになる。本実施形態の循環部(200)では、エンジン(E)の最大燃料消費量の約3倍に相当する流量が循環することが好ましい。
【0057】
本実施形態の第1温度センサー(241)は、エンジン(E)に供給される燃料油の温度を測定し、第1温度センサー(241)によって測定された燃料油の温度値は、割合計算装置(310)に送信される。
【0058】
本実施形態の粘度センサー(230)は、エンジン(E)に供給される燃料油の粘度を測定し、粘度センサー(230)によって測定された燃料油の粘度値は、割合計算装置(310)に送信される。
【0059】
本実施形態の循環部(200)は、循環部(200)を循環する燃料油を加熱する加熱器(220)をさらに備える。本実施形態の加熱器(220)は、循環部(200)を循環する燃料油の粘度がエンジン(E)で要求される粘度より高い場合には、燃料油を加熱して粘度を下げる。本実施形態の加熱器(220)は、蒸気または電気を加熱源として使用することができ、加熱器(220)が蒸気を加熱源として使用する場合、加熱器(220)に蒸気流量と開閉とを調節する蒸気制御バルブ(V52)を設置する。
【0060】
エンジン(E)は約10~25cStの粘度を要求し、一般的にHFOはエンジン(E)の要求粘度を合わせるために加熱が必要となるが、MGOやMDOは別の加熱過程がなくてもエンジン(E)で要求される粘度を満たす場合がほとんどである。したがって、本実施形態の加熱器(220)は、特に、エンジン(E)でHFOのみを燃料として使用する場合、又はHFOと他の燃料油が混合された燃料油を燃料として使用する場合に用いられる。
【0061】
本実施形態の循環部(200)は、加熱器(220)と並列に連結される第2バルブ(V32)をさらに備える。第2バルブ(V32)は、燃料油を加熱器(220)で加熱する必要がなく、燃料油が加熱器(220)を迂回する場合に開放される。一例として、MGO及びMDOは粘性が低いので加熱器(220)で加熱しなくても良い。
【0062】
本実施形態の循環部(200)は、循環部(200)を循環する燃料油を冷却する冷却器(250)をさらに備える。本実施形態の冷却器(250)は、循環部(200)を循環する燃料油の粘度が、エンジン(E)で要求される粘度より低い場合には、燃料油を冷却して粘度を上昇させる。冷却器(250)は、冷却水などを冷媒で使用して燃料油を冷却し、本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、冷媒を冷却する別の冷却装置を備える。エンジン(E)が約10~25cStの粘度を必要とする場合もあり、特にMGOは冷却器(250)による冷却過程を経て粘度を上昇させた後でエンジン(E)に供給する必要がある場合もある。
【0063】
本実施形態において、供給部(100)から循環部(200)に供給された燃料油が冷却器(250)に送られるライン上に、三方バルブ(V60)を設置し、三方バルブ(V60)は燃料油を2つの流れに分岐させ、一方を冷却器(250)に送り、他方は冷却器(250)を迂回させてエンジン(E)に直接送られる。
【0064】
本実施形態において、三方バルブ(V60)によって分岐された燃料油が冷却器(250)に送られるライン上には、燃料油の流量と開閉とを調節する第3バルブ(V33)が設置される。また、冷却器(250)によって冷却された燃料油が冷却器(250)から排出されるライン上には燃料油の逆流を防止する第3逆流防止バルブ(V23)が設置される。
【0065】
本実施形態において、冷却器(250)によって冷却された後で冷却器(250)から排出された燃料油は、三方バルブ(V60)によって分岐された後で冷却器(250)を迂回した燃料油と合流してエンジン(E)に送られる。
【0066】
本実施形態の循環部(200)は、エンジン(E)の下流に設置され、エンジン(E)で使用されて残った燃料油を一時貯蔵して循環ポンプ(210)に供給する燃料油管(240)をさらに備える。
【0067】
本実施形態の制御部(300)は、割合計算装置(310)との統合自動化システム(320)を備え、供給部(100)及び循環部(200)を制御する。
【0068】
本実施形態の割合計算装置(310)は、循環部(200)を循環する燃料油を含む互いに異なる燃料油の混合割合を計算する。割合計算装置(310)による割合の計算過程は下記の通りである。
【0069】
一応、混合燃料油に含まれる各成分の温度に対する粘度は、次式によって求めることができ、単一成分の燃料油の場合、次式によって直接粘度を求めることができる。vは粘度、Tは温度を意味する。
【0070】
(数1)
log(log(v+0.7))=X-{Y×log(T+273.15)}
【0071】
前記式数1においてX,Yは燃料油の種類に依存する値であり、下記式数2により求められる。V1は燃料油の温度がT1の時の粘度、V2は燃料油の温度がT2の時の粘度を意味する。
【0072】
(数2)
X=log(log(V2+0.7))+B×log(T2)
Y={log(log(V2+0.7))-log(log(V1+0.7))}/{log(T1)-log(T2)}
【0073】
また、混合された燃料油の粘度(v_blend)は、次の方法などで求めることができる。
【0074】
まず、次式数3によって、混合された燃料油に含まれる各成分における粘度ブレンド指数(VBI;Viscosity Blending Index)を求める。vは、各成分の粘度をcStで表した値を意味する。
【0075】
(数3)
VBI=14.534×ln(ln(v+0.8))+10.975
【0076】
次に、次式によって、混合された燃料油の粘度ブレンド指数(VBI_blend)を求める。w_Aは混合された燃料油のA成分の重量比、VBI_Aは第1ステップで求めたA成分の粘度ブレンド指数を意味する。各成分の重量比(w)は、同じ温度で決定された値を使用する。
【0077】
(数4)
VBI_blend=(w_A×VBI_A)+(w_B×VBI_B)+・・・・
【0078】
2つの燃料油を使用する場合の粘度ブレンド指数は次のように表す。
【0079】
(数5)
VBI_blend=(w_A×VBI_A)+(w_B×VBI_B)
VBI_blend=((1-w_B)×VBI_A)+(w_B×VBI_B)
(∵w_A+w_B=1)
【0080】
一方、混合された燃料油の粘度(v_blend)は次のように表す。
【0081】
(数6)
v_blend=exp[exp{(VBI_blend-10.975)÷14.534}]-0.8
v_blend+0.8=exp[exp{(VBI_blend-10.975)÷14.534}]
ln(v_blend+0.8)=exp{(VBI_blend-10.975)÷14.534}
ln{ln(v_blend+0.8)}=(VBI_blend-10.975)÷14.534
ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534=VBI_blend-10.975
ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534+10.975=VBI_blend
【0082】
一例として、HFOとMGOが1:1の重量比で混合された燃料油の温度が47.6℃である場合、混合された燃料油の粘度を下記のように求める。47.6℃でMGOの粘度は2.85cStであり、47.6℃でHFOの粘度は245.02cStである。v_MGOはMGOの粘度、v_HFOはHFOの粘度を意味する。
【0083】
VBI_MGO=14.534×ln(ln(v_MGO+0.8))+10.975=14.534×ln(ln(2.85+0.8))+10.975=14.7291
VBI_HFO=14.534×ln(ln(v_HFO+0.8))+10.975=14.534×ln(ln(245.02+0.8))+10.975=35.7659
VBI_blend=(0.5×VBI_MGO)+(0.5×VBI_HFO)=(0.5×14.7291)+(0.5×35.7659)=25.2475
∴v_blend=exp{exp(VBI_blend-10.975)÷14.534}-0.8=exp{exp(25.2475-10.975)÷14.534}-0.8=13.6373cSt
【0084】
したがって、次のように数5と数6を連立してw_Bを求め、燃料油の重量比を求めることができる。
【0085】
(数7)
ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534+10.975=VBI_blend
ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534+10.975=((1-w_B)×VBI_A)+(w_B×VBI_B)
(∵VBI_blend=((1-w_B)×VBI_A)+(w_B×VBI_B))
ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534+10.975=VBI_A-(w_B×VBI_A)+(w_B×VBI_B)
ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534+10.975=VBI_A+w_B×(VBI_B-VBI_A)
ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534+10.975-VBI_A=w_B×(VBI_B-VBI_A)
∴w_B=[ln{ln(v_blend+0.8)}×14.534+10.975-VBI_A]/(VBI_B-VBI_A)
【0086】
割合計算装置(310)による割合の計算は、次のプロセスで行われる。
【0087】
第1ステップにおいて、配管を流れる混合燃料油の温度を温度センサー(241)で検知し、混合燃料油の粘度を粘度センサー(230)で検知する。
【0088】
第2ステップにおいて、第1ステップで温度センサー(241)により検知した温度(T)と数1を用いて、温度Tにおける各成分の粘度(v)を求める。
【0089】
第3ステップにおいて、第2ステップで求めた粘度(v)と数3を用いて各成分別の粘度ブレンド指数(VBI)を求める。
【0090】
第4ステップにおいて、第3ステップで求めた各成分別の粘度ブレンド指数(VBI_A、VBI_B)と数5によって混合燃料油の粘度ブレンド指数(VBI_blend)を求める。
【0091】
第5ステップにおいて、第4ステップで求めた混合燃料油の粘度ブレンド指数(VBI_blend)と、混合燃料油の粘度(v_blend)とに関する数6を用いて、各成分別の重量比(w_A,w_B)を求める。第1ステップで粘度センサー(230)によって検知した粘度は、混合燃料油の粘度(v_blend)を表す。
【0092】
第5ステップで燃料油における各成分別の重量比が分かれば、燃料油の各成分別の割合が分かる。
【0093】
本実施形態の統合自動化システム(320)は、割合計算装置(310)が計算した混合割合から、複数の調節バルブ(V11,V12)の開度を調節して、燃料油の混合割合を調節することに関するフィードバックを受ける。
【0094】
本実施形態の統合自動化システム(320)には、割合計算装置(310)で計算した燃料油の混合割合の値、第1温度センサー(241)から割合計算装置(310)に送信された燃料油の温度値、及び粘度センサー(230)から割合計算装置(310)に送信された燃料油の粘度値が、割合計算装置(310)から送信される。また、本実施形態の統合自動化システム(320)には、第1流量計(120)で測定した流量値が送信される。
【0095】
本実施形態の統合自動化システム(320)は、割合計算装置(310)から送信される燃料油の粘度値がエンジン(E)で要求される粘度を満たすように、燃料油の温度と燃料油の混合割合とを調節し、調節した燃料油の温度に対するフィードバック(Feedback)は割合計算装置(310)から送信された第1温度センサー(241)が測定した温度値から受けて、調節された燃料油の混合割合のフィードバックは割合計算装置(310)から送信された粘度センサー(230)が測定した粘度値から受ける。
【0096】
本実施形態の統合自動化システム(320)は、複数の調節バルブ(V11,V12)の開度を調節して燃料油の混合割合を調節し、本実施形態の循環部(200)が蒸気制御バルブ(V52)を備える場合には、蒸気制御バルブ(V52)の開度を調節して燃料油の加熱程度を調節し、本実施形態の循環部(200)が冷却器(250)と三方バルブ(V60)とを備える場合には、三方バルブ(V60)の開度を調節して燃料油の冷却度合を調節する。
【0097】
本実施形態における船舶用燃料油の転換システムは、蒸気トレースバルブ(Steam Tracing Valve,V51)をさらに備えて、本実施形態の統合自動化システム(320)は蒸気トレースバルブ(V51)の開度を調節する。
【0098】
本実施形態の蒸気トレースバルブ(V51)は、長時間エンジンを停止したことにより、配管内でHFOの温度が低下して移送できない場合に、HFOを加熱する目的で使用され、MGOまたはMDOの場合には一般的に使用されない。
【0099】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、MGOを貯蔵した第1タンク(T1)、HFOを貯蔵した第2タンク(T2)、冷却器(250)、第3バルブ(V33)、及び三方バルブ(V60)を備え、エンジン(E)が必要とする最大の要求粘度が25cStであり、エンジン(E)の燃料としてHFOのみを供給する途中でエンジン(E)の燃料をMGOに転換する場合を下記のように説明する。
【0100】
エンジン(E)の燃料としてHFOのみを供給する場合、第1調節バルブ(V11)を完全に閉めて(0%)、第2調節バルブ(V12)のみを完全に開放する(100%)。エンジン(E)の燃料としてHFOのみを供給する場合には、本実施形態の燃料油の転換システムによって、自動的に設定されたエンジン(E)に供給される燃料油の粘度は、15cStである。
【0101】
船舶が硫黄酸化物の排出規制地域に進入する予定の場合など、エンジン(E)の燃料をHFOからMGOに転換する必要があれば、使用者はエンジン(E)の燃料を、HFOからMGOに転換する信号を本実施形態における燃料油の転換システムに送信する。
【0102】
使用者からのHFOからMGOに転換する信号が送信されると、本実施形態の燃料油の転換システムによって自動的に、エンジン(E)で要求される最大要求粘度より少し少ない値である23cStに、エンジン(E)に供給される燃料油の粘度が設定される。
【0103】
設定された粘度が15cStから23cStまで上昇したので、粘度を下げる役割をする加熱器(220)の負荷は0%に調節され、本実施形態の循環部(200)が蒸気制御バルブ(V52)を備える場合、統合自動化システム(320)は蒸気制御バルブ(V52)を完全に閉鎖する。ただし、燃料油の温度が低下して粘度上昇が発生する場合があるが、燃料油の温度が低下する場合には燃料油の粘度が設定値を超えないように加熱器(220)が駆動され、統合自動化システム(320)が蒸気制御バルブ(V52)を開放する。
【0104】
使用者からのHFOからMGOに転換する信号が送信されると、本実施形態の燃料油の転換システムは、第2調節バルブ(V12)を完全に開放した状態(100%)にして、完全に閉じた状態(0%)の第1調整バルブ(V11)を徐々に開放する。第1調節バルブ(V11)は、フィードバック制御(Feedback Control)によって徐々に開放される。
【0105】
フィードバック制御とは、制御された出力信号の一部を入力側に送り返すことで、目標値または基準値と比較してその差を制御用の操作信号で作り出す制御方法を意味し、フィードバック制御による信号伝送路は閉ループ(Closed Loop)を形成する。
【0106】
また、第1調節バルブ(V11)の開度は、第1温度センサー(241)で測定される燃料油の単位時間(例えば1分)当たりの温度変化(dT/dtは、Tは温度、tは時間)を変数として決定することができ、第1調節バルブ(V11)は、第1温度センサー(241)で測定される燃料油の単位時間当たりの温度変化が2℃となる速度で徐々に開放するように、統合自動化システム(320)によって調節される。
【0107】
第1調節バルブ(V11)が完全に開いたら(100%)、本実施形態の燃料油の転換システムは、完全に開いた状態(100%)の第2調節バルブ(V12)を徐々に閉める。第2調節バルブ(V12)は、フィードバック制御により徐々に閉鎖される。第2調節バルブ(V12)の開度は、第1温度センサー(241)で測定される燃料油の単位時間(例えば1分)当たりの温度変化(dT/dt)を変数として決定することができ、第2調節バルブ(V12)は、第1温度センサー(241)で測定される燃料油の単位時間当たりの温度変化が2℃となる速度で徐々に閉めるように、統合自動化システム(320)で調節される。
【0108】
一実施形態において、燃料油の種類をHFOからMGOに転換する場合、130℃のHFOを40℃のMGOに転換する必要がある。すなわち、MGOの割合を次第に上昇させながら、MGOが100%になった時、燃料油の温度が40℃になる必要がある。
【0109】
燃料油の1分当たりの温度変化が、2℃となるように燃料油の温度を90℃下げるためには45分がかかるので、MGOを45分間で0%から100%に増加させれば良く、HFOを45分間で100%から0%に減少させれば良い。したがって、MGOの増加量=HFOの減少量=100÷45=2.22%となる。
【0110】
本実施形態では、上述の計算過程によってMGOの増加量とHFOの減少量とを決定し、第1調節バルブ(V11)と第2調節バルブ(V12)との開度を調節する。
【0111】
もし、制御途中の温度変化量が毎分2℃を超えると、フィードバック制御を停止し、現在の状態を維持して、温度変化量が毎分2℃になるように待機する。また、粘度が高くなる場合には、加熱器(220)を作動させて燃料油が最大許容粘度値を超えないようにする。
【0112】
第2調節バルブ(V12)を完全に閉じると(0%)、第1調節バルブ(V11)のみが完全に開いた状態(100%)となり、供給部(100)はMGOのみを循環部(200)に供給する。
【0113】
本実施形態の燃料油の転換システムは、割合計算装置(310)で計算された燃料油の混合割合において、MGOが96%以上になると、燃料油の転換が完了したと判断する。燃料油の転換が完了してエンジン(E)にMGOが供給されると判断した場合、本実施形態の燃料油転換システムによって自動的に、エンジン(E)に供給される燃料油の粘度が6cStで設定される。
【0114】
また、燃料油の転換が完了してエンジン(E)にMGOが供給されると判断した場合、本実施形態の燃料油の転換システムは、循環部(200)を循環するMGOの粘度をエンジン(E)で要求される粘度に合わせるために、三方バルブ(V60)と第3バルブ(V33)とを開いてMGOを冷却器(250)に送る。
【0115】
図2は、本発明の第2実施形態に係る船舶用燃料油の転換システムの概略図である。
【0116】
図2に示した第2実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、
図1に示した第1実施形態の船舶用燃料油の転換システムと比較して、割合計算装置(310)を備えず、第2流量計(122)をさらに備えるという点で相違する。以下では相違点を中心に説明する。前述した第1実施形態の船舶用燃料油の転換システムと同一部材は、詳細な説明を省略する。
【0117】
図2を参照して、本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、供給部(100)、循環部(200)、及び制御部(300)を備える。
【0118】
本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)、複数の調節バルブ(V11,V12)、及び供給ポンプ(110)を備え、複数のタンク(T1,T2)に貯蔵された燃料油を循環部(200)に送る。
【0119】
本実施形態の複数のタンク(T1,T2)は、第1実施形態と同様に、それぞれ異なる種類の燃料油を貯蔵し、それぞれ、HFO供給タンク(HFO Service Tank)、HFO沈降タンク(HFO Settling Tank)、HFOバンカータンク(HFO Bunker Tank)、MDO供給タンク(MDO Service Tank)、MDO貯蔵タンク(MDO Storage Tank)、MGO供給タンク(MGO Service Tank)、MGO貯蔵タンク(MGO Storage Tank)のいずれかである。
【0120】
複数のタンク(T1,T2)から燃料油が排出される排出ライン(L1,L2)上には、第1実施形態と同様に、それぞれ緊急遮断バルブ(V41,V42)が設置される。本実施形態の緊急遮断バルブ(V41,V42)は、第1実施形態と同様に、空気または油圧で開閉が調節され、機関室内で火災が発生した場合、燃料油の供給を遮断して火災の拡大を防止するために設置される。
【0121】
本実施形態も第1実施形態と同様に、2つのタンク(T1,T2)を備え、第1タンク(T1)はMGOを貯蔵し、第2タンク(T2)はHFOを貯蔵する場合を例に説明する。
【0122】
本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)から燃料油が排出される複数の排出ライン(L1,L2)上にそれぞれ設置される。第1実施形態と同様に、本実施形態が2つのタンク(T1,T2)を備える場合、第1タンク(T1)から燃料油が排出される第1排出ライン(L1)上に第1調節バルブ(V11)が設置され、第2タンク(T2)から燃料油が排出される第2排出ライン(L2)上に第2調節バルブ(V12)が設置される。
【0123】
本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、第1実施形態と同様に、後述する制御部(300)の統合自動化システム(IAS;Integrated Automation System,320)によって開度が調節され、複数のタンク(T1,T2)から供給ポンプ(110)に供給される燃料油の流量を調節する。また、本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、第1実施形態と同様に、平常時には統合自動化システム(320)によって自動的に開度が調節されるが、非常時には手動操作ができるように構成される。
【0124】
本実施形態の供給ポンプ(110)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)から排出された燃料油の圧力を上昇させて循環部(200)に供給し、複数が並列に連結される。複数のタンク(T1,T2)からそれぞれ排出された互いに異なる種類の燃料油は、第1実施形態と同様に、互いに混合された後で供給ポンプ(110)に供給される。
【0125】
本実施形態がMGOを貯蔵した第1タンク(T1)とHFOを貯蔵した第2タンク(T2)とを備える場合を例に説明すると、第1実施形態と同様に、第1タンク(T1)から排出されたMGOを供給ポンプ(110)に送る第1排出ライン(L1)と、第2タンク(T2)から排出されたHFOを供給ポンプ(110)に送る第2排出ライン(L2)とは、供給ポンプ(110)の前段で合流し、第1タンク(T1)から排出されたMGOと第2タンク(T2)から排出されたHFOとは供給ポンプ(110)の前段で混合された後で供給ポンプ(110)に送られる。
【0126】
本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態と同様に、前記供給ポンプ(110)の下流から分岐して前記供給ポンプ(110)の前段に合流するリターンライン(L3)をさらに備える。本実施形態のリターンライン(L3)は、第1実施形態と同様に、供給ポンプ(110)が圧縮した燃料油の中でエンジン(E)の消費量を超える燃料油を分岐させて供給ポンプ(110)の前段に送る。リターンライン(L3)上には、第1実施形態と同様に、流体の流量と開閉とを調節する第1バルブ(V31)が設置される。
【0127】
ただし、本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態とは異なり、供給ポンプ(110)の下流に設置される第1流量計(120)だけでなく、複数のタンク(T1,T2)から燃料油が排出される複数の排出ライン(L1,L2)の一部または全部にそれぞれ設置される第2流量計(122)をさらに備える。
【0128】
本実施形態の第1流量計(120)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)からそれぞれ排出された後に混合され、供給ポンプ(110)によって循環部(200)に供給される燃料油の流量を測定する。
【0129】
本実施形態における船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、第1流量計(120)がエンジン(E)の時間当たりの燃料油の消費量などの流量を指示するように運用され、第1流量計(120)がエンジン(E)における時間当たりの燃料油の消費量より少ないか多い流量を指示したらシステムに問題があることを検知する。
【0130】
本実施形態の第2流量計(122)は、前記第2流量計(122)が設置された排出ライン(L1またはL2)の前段でタンク(T1またはT2)から排出される燃料油の流量を測定する。第1流量計(120)は、複数のタンク(T1,T2)から排出された後で混合されて循環部(200)に供給される燃料油の流量を測定するので、第1流量計(120)が測定した流量値から、第2流量計(122)が測定した一方のタンク(T1またはT2)から排出された燃料油の流量値を減算すると、他のタンクから排出された燃料油の流量を知ることができる。
【0131】
本実施形態がMGOを貯蔵した第1タンク(T1)とHFOを貯蔵した第2タンク(T2)とを備える場合、
図2に示すように、第2流量計(122)は第1排出ライン(L1)上に設置されて、第1タンク(T1)から排出されるMGOの流量を測定する。第1流量計(120)が測定した流量値から第2流量計(122)が測定した流量値を減算すると、第2タンク(T2)から排出されるHFOの流量を知ることができるので、MGOとHFOとの混合割合を知ることができる。
【0132】
また、第1流量計(120)によって測定された流量値、第2流量計(122)によって測定された流量値と、次の式を利用して、燃料油の転換が完了した時間(t)を計算する。Yは転換しようとする燃料油の量、Vは燃料油が循環する配管の全体積と各装置の内部体積の合計、Y0は燃料油の転換の開始時に混合された燃料油が含まれる転換しようとする燃料油の初期量、FOCはエンジンにおいて単位時間あたりに消費される燃料油の流量、tは経過時間を意味する。FOCは、第1流量計(120)によって測定された流量値の変化量によって知ることができる。
【0133】
(数8)
Y=V+(Y0-V)×exp(-FOC×t÷V)
【0134】
一実施形態において、HFOをMGOに転換する場合、Yは転換しようとするHFOの量を示し、Y0は燃料油の転換を開始する時の初期HFOの量であり一般的に0である。また、MGOが96%以上になったら燃料油の転換が完了したと判断することができ、MGOが96%以上になる時点のtが燃料油の転換が完了した時間である。
【0135】
本実施形態の第1流量計(120)によって測定された流量値と第2流量計(122)によって測定された流量値とは、統合自動化システム(320)に送信される。
【0136】
本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)から燃料油を排出させる複数の排出ライン(L1,L2)上にそれぞれ設置される複数の逆流防止バルブ(V21,V22)をさらに備える。本実施形態が2つのタンク(T1,T2)を備える場合、第1実施形態と同様に、第1タンク(T1)から燃料油が排出される第1排出ライン(L1)上に第1逆流防止バルブ(V21)が設置され、第2タンク(T2)から燃料油が排出される第2排出ライン(L2)上に第2逆流防止バルブ(V22)が設置される。
【0137】
本実施形態の複数の逆流防止バルブ(V21,V22)は、第1実施形態と同様に、一方のタンクから排出された燃料油が他方のタンクに流入することを防止し、各タンク(T1,T2)内で異種の燃料油が混合することを防止する。
【0138】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、循環ポンプ(210)、第1温度センサー(241)、及び粘度センサー(230)を備え、供給部(100)から供給された燃料油を循環させてエンジン(E)に供給する。
【0139】
本実施形態の循環ポンプ(210)は、第1実施形態と同様に、供給部(100)から循環部(200)に供給された燃料油の圧力を上昇させて燃料油を循環させ、複数が並列に連結される。本実施形態の循環部(200)は、循環ポンプ(210)によって加圧されて約8~10barの圧力を維持することが好ましい。
【0140】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、HFOの圧力を上昇させた後に加熱するので、不純物の圧力も高くなって不純物の沸点が高くなり、最終的にHFOに含まれる不純物の気化が防止される。
【0141】
第1実施形態と同様に、本実施形態の循環部(200)を循環する燃料油は、エンジン(E)に供給されて燃料として使用され、エンジン(E)で使用されずに残った燃料油は、エンジン(E)から排出されて再び循環部(200)を循環する。供給部(100)は、エンジン(E)で消費された燃料油分だけを新たに循環部(200)に供給し、循環部(200)には平均的に一定の流量が循環することになる。本実施形態の循環部(200)には、第1実施形態と同様に、エンジン(E)の最大燃料消費量の約3倍に相当する流量が循環することが好ましい。
【0142】
本実施形態の第1温度センサー(241)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)に供給される燃料油の温度を測定する。ただし、第1温度センサー(241)によって測定された燃料油の温度値は、第1実施形態とは異なり、統合自動化システム(320)に送信される。
【0143】
本実施形態の粘度センサー(230)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)に供給される燃料油の粘度を測定する。ただし、粘度センサー(230)によって測定された燃料油の粘度値は、第1実施形態とは異なり、統合自動化システム(320)に送信される。
【0144】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油を加熱する加熱器(220)をさらに備える。本実施形態の加熱器(220)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油の粘度がエンジン(E)で要求される粘度よりも高い場合には、燃料油を加熱して粘度を下げることになり、蒸気または電気を加熱源として使用する。本実施形態の加熱器(220)が蒸気を加熱源として使用する場合、第1実施形態と同様に、加熱器(220)には蒸気流量と開閉とを調節する蒸気制御バルブ(V52)を連結する。
【0145】
本実施形態の加熱器(220)は、第1実施形態と同様に、特にエンジン(E)でHFOのみを燃料として使用するか、HFOと他の燃料油とが混合された燃料油を燃料として使用する場合に用いられる。
【0146】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、加熱器(220)と並列に連結される第2バルブ(V32)をさらに備える。第2バルブ(V32)は、燃料油を加熱器(220)によって加熱する必要がないため、燃料油が加熱器(220)を迂回する場合に開放する。一実施形態において、MGOとMDOとは粘性が低いので、加熱器(220)によって加熱しなくても良い場合がある。
【0147】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油を冷却する冷却器(250)をさらに備える。本実施形態の冷却器(250)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油の粘度がエンジン(E)で要求される粘度より低い場合には、燃料油を冷却して粘度を上昇させ、特にMGOの場合には冷却器(250)による冷却過程を経て粘度を上昇させた後でエンジン(E)に供給する必要がある場合がある。
【0148】
本実施形態の冷却器(250)は、第1実施形態と同様に、冷却水などを冷媒として使用して燃料油を冷却し、本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、冷媒を冷却する別の冷却装置を備える。
【0149】
本実施形態の供給部(100)から循環部(200)に供給された燃料油が冷却器(250)に送られるライン上には、第1実施形態と同様に、三方バルブ(V60)が設置され、三方バルブ(V60)は燃料油を2つの流れに分岐させ、一方を冷却器(250)に送り、他方は冷却器(250)を迂回させてエンジン(E)に直接送られる。
【0150】
本実施形態の三方バルブ(V60)によって分岐した燃料油が冷却器(250)に送られるライン上には、第1実施形態と同様に、燃料油の流量と開閉とを調節する第3バルブ(V33)が設置される。また、冷却器(250)によって冷却された燃料油が冷却器(250)から排出されるライン上には、第1実施形態と同様に、燃料油の逆流を防止する第3逆流防止バルブ(V23)を設置する。
【0151】
本実施形態の冷却器(250)によって冷却された後で冷却器(250)から排出された燃料油は、第1実施形態と同様に、三方バルブ(V60)によって分岐した後に冷却器(250)を迂回した燃料油と合流してエンジン(E)に送られる。
【0152】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)の下流に設置され、エンジン(E)で使用されて残った燃料油を一時貯蔵して循環ポンプ(210)に供給する燃料油管(240)をさらに備える。
【0153】
本実施形態の制御部(300)は、第1実施形態と同様に、統合自動化システム(320)を備え、供給部(100)及び循環部(200)を制御する。
【0154】
ただし、本実施形態の制御部(300)は、第1実施形態とは異なり、割合計算装置(310)を備えず、本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1流量計(120)と第2流量計(122)とで測定された流量値を利用して燃料油の混合割合を計算する。
【0155】
本実施形態の統合自動化システム(320)には、第1流量計(120)で測定した流量値、第2流量計(122)で測定した流量値、第1温度センサー(241)で測定した温度値、及び粘度センサー(230)で測定した粘度値が送信される。
【0156】
本実施形態の統合自動化システム(320)は、第1流量計(120)で測定した流量値と第2流量計(122)で測定した流量値とを用いて、エンジン(E)に供給される燃料油の混合割合を計算する。
【0157】
また、本実施形態の統合自動化システム(320)は、粘度センサー(230)から送信された燃料油の粘度値がエンジン(E)で要求される粘度を満たすように、燃料油の温度と燃料油の混合割合とを調節し、調節した燃料油の温度に関するフィードバックは第1温度センサー(241)から送られた燃料油の温度値から受け、調節した燃料油の混合割合に関するフィードバックは粘度センサー(230)から送信された燃料油の粘度値から受ける。
【0158】
本実施形態の統合自動化システム(320)は、第1実施形態と同様に、複数の調節バルブ(V11,V12)の開度を調節して燃料油の混合割合を調節し、本実施形態の循環部(200)が蒸気制御バルブ(V52)を備える場合には、蒸気制御バルブ(V52)の開度を調節して燃料油の加熱程度を調節し、本実施形態の循環部(200)が冷却器(250)及び三方バルブ(V60)を備える場合は、三方バルブ(V60)の開度を調節して燃料油の冷却程度を調節する。
【0159】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、蒸気トレースバルブ(Steam Tracing Valve,V51)をさらに備え、本実施形態の統合自動化システム(320)は、第1実施形態と同様に、蒸気トレースバルブ(V51)の開度を調節する。
【0160】
本実施形態の蒸気トレースバルブ(V51)は、第1実施形態と同様に、長時間エンジンを停止したことにより、配管内でHFOの温度が低下して移送できない場合に、HFOを加熱する目的で使用され、MGOまたはMDOの場合には一般的に使用されない。
【0161】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、MGOが貯蔵された第1タンク(T1)、HFOが貯蔵された第2タンク(T2)、冷却器(250)、第3バルブ(V33)、及び三方バルブ(V60)を備え、エンジン(E)で要求される最大要求粘度が25cStである場合、エンジン(E)の燃料としてHFOのみを供給する途中でエンジン(E)の燃料をMGOに転換する方法は、第1実施形態と同様である。
【0162】
ただし、本実施形態では、第2調節バルブを完全に閉じ(0%)、第1流量計が送信した流量値と第2流量計が送信した流量値とによって求めた前記第1燃料油の割合が所定値以上になると、燃料油の転換が完了したと判断する。
【0163】
図3は、本発明の第3実施形態に係る船舶用燃料油の転換システムの概略図である。
【0164】
図3に示された第3実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、
図1に示された第1実施形態における船舶用燃料油の転換システムと比較して、割合計算装置(310)を備えず、第2温度センサー(244)及び第3温度センサー(245)をさらに備えるという点に相違する。以下では相違点を中心に説明する。前述した第1実施形態の船舶用燃料油の転換システムと同じ部材は詳細な説明を省略する。
【0165】
図3を参照して、本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、供給部(100)、循環部(200)、及び制御部(300)を備える。
【0166】
本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)、複数の調節バルブ(V11,V12)、及び供給ポンプ(110)を備え、複数のタンク(T1,T2)に貯蔵された燃料油を循環部(200)に送る。
【0167】
本実施形態の複数のタンク(T1,T2)は、第1実施形態と同様に、それぞれ異なる種類の燃料油を貯蔵し、それぞれ、HFO供給タンク(HFO Service Tank)、HFO沈降タンク(HFO Settling Tank)、HFOバンカータンク(HFO Bunker Tank)、MDO供給タンク(MDO Service Tank)、MDO貯蔵タンク(MDO Storage Tank)、MGO供給タンク(MGO Service Tank)、MGO貯蔵タンク(MGO Storage Tank)のいずれかである。
【0168】
複数のタンク(T1,T2)から燃料油が排出される排出ライン(L1,L2)上には、第1実施形態と同様に、それぞれ緊急遮断バルブ(V41,V42)を設置する。本実施形態の緊急遮断バルブ(V41,V42)は、第1実施形態と同様に、空気または油圧で開閉が調節され、機関室に火災が発生した場合に燃料油の供給を遮断して火災が拡大を防止するために設置される。
【0169】
本実施形態も、第1実施形態と同様に、2つのタンク(T1,T2)を備え、第1タンク(T1)はMGOを貯蔵し、第2タンク(T2)はHFOを貯蔵する場合を例に説明する。
【0170】
本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)から燃料油が排出される複数の排出ライン(L1,L2)上にそれぞれ設置される。第1実施形態と同様に、本実施形態が2つのタンク(T1,T2)を備える場合、第1タンク(T1)から燃料油が排出される第1排出ライン(L1)上に第1調節バルブ(V11)が設置され、第2タンク(T2)から燃料油が排出される第2排出ライン(L2)上に第2調節バルブ(V12)が設置される。
【0171】
本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、第1実施形態と同様に、後述する制御部(300)の統合自動化システム(IAS;Integrated Automation System,320)によって開度が調節され、複数のタンク(T1,T2)から供給ポンプ(110)に供給される燃料油の流量を調節する。また、本実施形態の複数の調節バルブ(V11,V12)は、第1実施形態と同様に、平常時には統合自動化システム(320)によって自動的に開度が調節されるが、非常時に手動操作ができるように構成される。
【0172】
本実施形態の供給ポンプ(110)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)から排出された燃料油の圧力を上昇させて循環部(200)に供給し、複数が並列に連結される。複数のタンク(T1,T2)からそれぞれ排出された互いに異なる種類の燃料油は、第1実施形態と同様に、互いに混合された後で供給ポンプ(110)に供給される。
【0173】
本実施形態がMGOを貯蔵した第1タンク(T1)とHFOを貯蔵した第2タンク(T2)とを備える場合を例に説明すると、第1実施形態と同様に、第1タンク(T1)から排出されたMGOを供給ポンプ(110)に送る第1排出ライン(L1)と、第2タンク(T2)から排出されたHFOを供給ポンプ(110)に送る第2排出ライン(L2)とは、供給ポンプ(110)の前段で合流し、第1タンク(T1)から排出されたMGOと第2タンク(T2)から排出されたHFOとは、供給ポンプ(110)の前段で混合された後で供給ポンプ(110)に送られる。
【0174】
本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態と同様に、前記供給ポンプ(110)の下流から分岐して前記供給ポンプ(110)の前段に合流されるリターンライン(L3)をさらに備える。
【0175】
本実施形態のリターンライン(L3)は、第1実施形態と同様に、供給ポンプ(110)が圧縮した燃料油からエンジン(E)の消費量を超える燃料油を分岐させて供給ポンプ(110)の前段に送る。リターンライン(L3)上には、第1実施形態と同様に、流体の流量と開閉とを調節する第1バルブ(V31)を設置する。
【0176】
本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態と同様に、供給ポンプ(110)の下流に設置される第1流量計(120)をさらに備える。本実施形態の第1流量計(120)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)からそれぞれ排出された後に混合され、供給ポンプ(110)によって循環部(200)に供給される燃料油の流量を測定する。本実施形態の第1流量計(120)によって測定された流量値は、統合自動化システム(320)に送信される。
【0177】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、第1流量計(120)がエンジン(E)における時間当たりの燃料油の消費量などの流量を指示するように運用され、第1流量計(120)がエンジン(E)における時間当たりの燃料油の消費量よりも少ないか多い流量を指示したらシステムに問題があることを検知する。
【0178】
ただし、本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態とは異なり、供給ポンプ(110)の下流に設置される第2温度センサー(244)をさらに備える。本実施形態の第2温度センサー(244)は、複数のタンク(T1,T2)からそれぞれ排出された後に混合されて循環部(200)に供給される燃料油の温度を測定し、第2温度センサー(244)によって測定された燃料油の温度値は、統合自動化システム(320)に送信される。
【0179】
本実施形態の供給部(100)は、第1実施形態と同様に、複数のタンク(T1,T2)から燃料油を排出させる複数の排出ライン(L1,L2)上にそれぞれ設置される複数の逆流防止バルブ(V21,V22)をさらに備える。本実施形態が2つのタンク(T1,T2)を備える場合、第1実施形態と同様に、第1タンク(T1)から燃料油が排出される第1排出ライン(L1)上に第1逆流防止バルブ(V21)が設置され、第2タンク(T2)から燃料油が排出される第2排出ライン(L2)上に第2逆流防止バルブ(V22)が設置される。
【0180】
本実施形態の複数の逆流防止バルブ(V21,V22)は、第1実施形態と同様に、一方のタンクから排出された燃料油が他方のタンクに流入することを防止し、各タンク(T1,T2)内で異種の燃料油が混合することを防止する。
【0181】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、循環ポンプ(210)、第1温度センサー(241)、及び粘度センサー(230)を備え、供給部(100)から供給された燃料油を循環させてエンジン(E)に供給する。
【0182】
本実施形態の循環ポンプ(210)は、第1実施形態と同様に、供給部(100)から循環部(200)に供給された燃料油の圧力を上昇させて燃料油を循環させ、複数が並列に連結される。本実施形態の循環部(200)は循環ポンプ(210)によって加圧されて約8~10barの圧力を維持することが好ましい。
【0183】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、HFOの圧力を上昇させた後に加熱するので、不純物の圧力も高くなって不純物の沸点が高くなり、最終的にはHFOに含まれる不純物の気化が防止される。
【0184】
第1実施形態と同様に、本実施形態の循環部(200)を循環する燃料油は、エンジン(E)に供給されて燃料として使用され、エンジン(E)で使用されずに残った燃料油は、エンジン(E)から排出されて再び循環部(200)を循環する。供給部(100)は、エンジン(E)で消費された燃料油分だけを新たに循環部(200)に供給して、循環部(200)には平均的に一定の流量が循環することになる。本実施形態の循環部(200)には、第1実施形態と同様に、エンジン(E)の最大燃料消費量の約3倍に相当する流量が循環することが好ましい。
【0185】
本実施形態の第1温度センサー(241)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)に供給される燃料油の温度を測定する。ただし、第1温度センサー(241)によって測定された燃料油の温度値は、第1実施形態とは異なり、統合自動化システム(320)に送信される。
【0186】
本実施形態の粘度センサー(230)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)に供給される燃料油の粘度を測定する。ただし、粘度センサー(230)によって測定された燃料油の粘度値は、第1実施形態とは異なり、統合自動化システム(320)に送信される。
【0187】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油を加熱する加熱器(220)をさらに備える。本実施形態の加熱器(220)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油の粘度がエンジン(E)で要求される粘度よりも高い場合には燃料油を加熱して粘度を下げ、蒸気または電気を加熱源として使用することができる。本実施形態の加熱器(220)が蒸気を加熱源として使用する場合、第1実施形態と同様に、加熱器(220)には蒸気流量と開閉とを調節する蒸気制御バルブ(V52)を連結する。
【0188】
本実施形態の加熱器(220)は、第1実施形態と同様に、特にエンジン(E)でHFOのみを燃料として使用するか、HFOと他の燃料油が混合された燃料油を燃料として使用する場合に用いられる。
【0189】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、加熱器(220)と並列に連結される第2バルブ(V32)をさらに備える。第2バルブ(V32)は、第1実施形態と同様に、燃料油を加熱器(220)によって加熱する必要がないため、燃料油が加熱器(220)を迂回する場合に開放される。
【0190】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油を冷却する冷却器(250)をさらに備える。本実施形態の冷却器(250)は、第1実施形態と同様に、循環部(200)を循環する燃料油の粘度がエンジン(E)で要求される粘度より低い場合には、燃料油を冷却して粘度を上昇させ、特にMGOの場合には冷却器(250)による冷却過程を経て粘度を上昇させた後でエンジン(E)に供給する必要がある場合もある。
【0191】
本実施形態の冷却器(250)は、第1実施形態と同様に、冷却水などを冷媒として使用して燃料油を冷却し、本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、冷媒を冷却する別の冷却装置を備えることもできる。
【0192】
本実施形態において、供給部(100)から循環部(200)に供給された燃料油が冷却器(250)に送られるライン上には、第1実施形態と同様に、三方バルブ(V60)が設置され、三方バルブ(V60)は燃料油を2つの流れに分岐させ、一方を冷却器(250)に送り、他方は冷却器(250)を迂回させてエンジン(E)に直接送られる。
【0193】
本実施形態の三方バルブ(V60)によって分岐された燃料油が冷却器(250)に送られるライン上には、第1実施形態と同様に、燃料油の流量と開閉を調節する第3バルブ(V33)が設置される。また、冷却器(250)によって冷却された燃料油が冷却器(250)から排出されるライン上には、第1実施形態と同様に、燃料油の逆流を防止する第3逆流防止バルブ(V23)が設置される。
【0194】
本実施形態の冷却器(250)によって冷却された後に冷却器(250)から排出された燃料油は、三方バルブ(V60)によって分岐された後に冷却器(250)を迂回した燃料油と合流してエンジン(E)に送られる。
【0195】
本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)の下流に設置され、エンジン(E)で使用されて残った燃料油を一時貯蔵して循環ポンプ(210)に供給する燃料油管(240)をさらに備える。
【0196】
ただし、本実施形態の循環部(200)は、第1実施形態とは異なり、エンジン(E)の下流に設置され、エンジン(E)で使用されずに残った燃料油の温度を測定する第3温度センサー(245)をさらに備える。本実施形態の第3温度センサー(245)によって測定された燃料油の温度値は、統合自動化システム(320)に送信される。
【0197】
本実施形態の制御部(300)は、第1実施形態と同様に、統合自動化システム(320)を備え、供給部(100)及び循環部(200)を制御する。ただし、本実施形態の制御部(300)は、第1実施形態とは異なり、割合計算装置(310)を備えない。
【0198】
本実施形態の統合自動化システム(320)は、第1温度センサー(241)で測定した温度値、第2温度センサー(244)で測定した温度値、第3温度センサー(245)で測定した温度値、及び粘度センサー(230)で測定した粘度値を送信される。また、本実施形態の統合自動化システム(320)には、第1流量計(120)で測定した流量値が送信される。
【0199】
また、本実施形態の統合自動化システム(320)は、粘度センサー(230)から送られて燃料油の粘度値がエンジン(E)で要求される粘度を満たすため、燃料油の温度と燃料油の混合割合を調節し、調節した燃料油の温度に関するフィードバックは第1温度センサー(241)から送られた燃料油の温度値から受け、調節した燃料油の混合割合に関するフィードバックは粘度センサー(230)から送信された燃料油の粘度値から受ける。
【0200】
本実施形態の統合自動化システム(320)は、第1実施形態と同様に、複数の調節バルブ(V11,V12)の開度を調節して燃料油の混合割合を調節し、本実施形態の循環部(200)が蒸気制御バルブ(V52)を備える場合には、蒸気制御バルブ(V52)の開度を調節して燃料油の加熱程度を調節し、本実施形態の循環部(200)が冷却器(250)と三方バルブ(V60)を備える場合は、三方バルブ(V60)の開度を調節して燃料油の冷却程度を調節する。
【0201】
ただし、本実施形態の統合自動化システム(320)は、第1温度センサー(241)で測定される燃料油の温度が設定値になるように調節することができる。第1温度センサー(241)の設定値は、次の式を用いて計算する。T1は第1温度センサー(241)の設定値、Q1は第1流量計(120)で測定した燃料油の流量値、T2は第2温度センサー(244)で測定した燃料油の温度、Q2はエンジン(E)で使用後に残ってエンジン(E)から排出された燃料油の流量、T3は第3温度センサー(245)で測定した燃料油の温度、Q3は循環ポンプ(210)の容量を意味する。また、「2」は要求される燃料油の温度変化量が一分当たりに2℃であることを意味する。
【0202】
(数9)
T1×Q1+T2×Q2=(T3-2)×Q3
T1×Q1=(T3-2)×Q3-T2×Q2
∴T1={(T3-2)×Q3-T2×Q2}÷Q1
【0203】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムは、第1実施形態と同様に、蒸気トレースバルブ(Steam Tracing Valve,V51)をさらに備えて、本実施形態の統合自動化システム(320)は、第1実施形態と同様に、蒸気トレースバルブ(V51)の開度を調節する。
【0204】
本実施形態の蒸気トレースバルブ(V51)は、第1実施形態と同様に、長時間エンジンを停止したことにより、配管内でHFOの温度が低下して移送できない場合、HFOを加熱する目的で使用され、MGOまたはMDOの場合には一般的に使用しない。
【0205】
本実施形態の船舶用燃料油の転換システムにMGOを貯蔵した第1タンク(T1)、HFOを貯蔵した第2タンク(T2)、冷却器(250)、第3バルブ(V33)、及び三方バルブ(V60)が備えられ、エンジン(E)で要求される最大の要求粘度が25cStである場合、エンジン(E)の燃料としてHFOのみを供給する途中でエンジン(E)の燃料をMGOに転換する方法は、第1実施形態と同様である。
【0206】
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で様々な形態で修正または変更して実施できることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかである。