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7181206ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する非架橋性共重合体の発泡性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する非架橋性共重合体の発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/08 20060101AFI20221122BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20221122BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221122BHJP
   C08J 9/10 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08J9/08 CEZ
B29C45/00
B29C44/00 D
B29C44/00 E
C08J9/10 CEZ
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019542514
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 FR2018050312
(87)【国際公開番号】W WO2018146426
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】1751046
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コケッ,クリオ
(72)【発明者】
【氏名】シュミネ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナグ,フランスワ
(72)【発明者】
【氏名】デイレユ,イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ピオ,クエンティン
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052387(WO,A1)
【文献】特開平03-128949(JP,A)
【文献】国際公開第2005/005527(WO,A1)
【文献】特開2001-199347(JP,A)
【文献】特開2005-029699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42、
B29C44/00-44/60、67/20-67/20、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを封入した独立気泡を有するポリマーマトリックスの形をした非架橋性の発泡体組成物であって、上記マトリックスが発泡体組成物の総重量に対して、
90~99.5重量%の少なくとも1種のブロックコポリマーと、
0.5~10重量%の炭酸水素金属塩と、
を含むハードブロックとソフトブロックとを有するコポリマーから成ることを特徴とし、
上記少なくとも一種のコポリマーがハードブロックとしてのポリアミドブロックとソフトブロックとしてのポリエーテルブロックとを有するコポリマーを含み、
発泡体は、55%超のISO規格8307:2007に従って測定した反発弾性を有する、非架橋性発泡体組成物。
【請求項2】
上記ガスがCO2、H2O、N2およびこれらの混合物から選択される少なくとも一つの化合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コポリマーのハードブロックが200~2000g/モルの数平均モル質量を有し、
コポリマーのソフトブロックが800~2500g/モルの数平均モル質量を有し:
コポリマーのソフトブロックに対するハードブロックの重量比が0.1~2である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
コポリマーのポリアミドブロックが下記ポリアミド単位:11、12、6、6.10、6.12、10.10、10.12およびこれらの混合物の少なくとも一つを含むブロックである請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡体組成物。
【請求項5】
コポリマーのポリエーテルブロックがポリエチレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールのブロックである請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡体組成物。
【請求項6】
エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、エチレンとアクリレートとのコポリマー、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーから選択される0.1~50重量%の1種または複数の添加剤、および/または、0.1~10重量%の核形成剤から選択される添加剤をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載の発泡体組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の発泡体からからなる物品。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の発泡体からなる少なくとも1つの要素を有する物品。
【請求項9】
スポーツシューズのソール、バルーン、ボール、手袋、個人用プロテクター、レールのソール、自動車部品、ベビーカー部品、ホイール、ハンドル、シート部材、子供用カーシート部品、建設部品、電気および/または電子機器部品、オーディオ機器部品、遮音材および/または断熱材、衝撃および/または振動を減衰させるための部品およびこれらの組み合わせを含む任意の物品の中から選択される請求項7または8に記載の物品。
【請求項10】
下記(a)と(b)とを含む発泡性ブロック共重合体組成物:
(a)90~99重量%の請求項1~5のいずれか一項に定義のブロック共重合体、
(b)~10重量%の炭酸水素金属塩と下記(1)~(4)の中から選択される少なくとも一つの成分とを含む発泡剤:
(1)2~10個の炭素原子と少なくとも2つのカルボキシル基を有するポリカルボン酸、
(2)上記ポリカルボン酸の金属塩、
(3)カルボキシル基の少なくとも一つが1~6個の炭素原子を有するアルコールでエステル化された上記ポリカルボン酸のエステル、
(4)上記の混合物
(上記重量パーセントは発泡性組成物の総重量に対する比率)
【請求項11】
発泡剤が炭酸水素アルカリ金属塩とクエン酸またはその塩と含む請求項10に記載の発泡性ブロック共重合体組成物。
【請求項12】
90~250℃の範囲の温度の作用で膨張するガスを封入した熱可塑性カプセルをブロック共重合体組成物の総重量に対して0.5~20重量%さらに含み、このカプセルの発泡前の平均寸法D50は8~20μmで、発泡体中での発泡後の平均寸法D50は30~130μmの範囲にある請求項10または11に記載の発泡性ブロック共重合体組成物。
【請求項13】
ブロック共重合体組成物の総重量に対して0.1~10重量%の少なくとも1種の物理的発泡剤をさらに含む請求項10~12のいずれか一項に記載の発泡性ブロック共重合体組成物。
【請求項14】
ブロック共重合体組成物の総重量に対して10~50重量%のゼオライトおよび/またはアルカリ土類金属酸化物を含む乾燥剤をさらに含む請求項10~13のいずれか一項に記載の発泡性ブロック共重合体組成物。
【請求項15】
以下の(1)と(2)の段階を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法:
(1)請求項10~14のいずれか一項に記載の発泡性組成物を用意し、
(2)ポリマーが溶融し、発泡剤が分解してCO、ΗOおよび/またはNを生じ、溶融ポリマー中にガスの形で分散するような温度に上記組成物を加熱する。
【請求項16】
上記発泡性組成物を金型中に射出し、加熱した後の上記組成物の発泡を金型中への注入時、および/または、型開き時に行う請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記発泡性組成物を押出し、押出機の出口で発泡剤の分解によって上記発泡性組成物を直接発泡させる請求項15に記載の方法。
【請求項18】
上記発泡性組成物を反応器中で加熱し(バッチ)、圧力および/または温度スイングにおいて熱力学的不安定状態を作り出すことが可能であり、これにより組成物が発泡する請求項15に記載の方法。
【請求項19】
加熱工程中に、溶融した共重合体に化学発泡剤および必要に応じて1種または複数の添加剤をさらに混合する請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
上記発泡性組成物に少なくとも1種の物理的発泡剤をさらに添加する請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ガス注入装置を使用しない請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体から作られる発泡体と、その製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用品の分野、例えばスポーツシューズのソールやソール部品、手袋、ラケット、ゴルフボール、スポーツ用プロテクション部品(ベスト、ヘルメットインナーパーツ等)、遮蔽材料の分野、特に遮音材および/または断熱材では種々のポリマー発泡体が使用されている。
【0003】
これらの用途では、軽量で、反発力があり、圧縮永久歪みが少なく、耐反復衝撃能力に優れ、元の形状に戻る能力に優れるといった物理的特性のセットが要求される。
【0004】
[特許文献1](欧州特許第EP0405227号)および[特許文献2](欧州特許第EP0402883号)には種々のポリマーから作られた発泡体とその靴底製造での使用が記載されている。
【0005】
[特許文献3](欧州特許第EP1650255号)にはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーから得られる架橋性の発泡体が記載されている。
【0006】
しかし、この架橋性発泡体には製造プロセスに大きな欠点、すなわち、製造時間が一般に長くなり、製造が不連続(バッチ)モードになり、一般に望ましくない化学物質を取り扱う必要があるという欠点がある。しかも、架橋した発泡体のリサイクルは困難である。
【0007】
[特許文献4](国際公開第WO2013/148841号公報)にはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーを含む種々のポリマーの二層押出成形方法が開示されている。
[特許文献5](国際公開第WO2015/052265号公報)には熱可塑性エラストマーポリマーから熱可塑性発泡粒子を製造する方法が開示されている。
【0008】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する共重合体から作られた発泡体粒子はZotefoam社からZOTEK(登録商標)PEBAとして市販されている。しかし、この発泡体粒子には上記の欠点があり、また、製品の耐久性が低い。
【0009】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)または酢酸ビニルコポリマー(EVA)から作られた発泡体も多数存在する。これらのフォーム(発泡体)の欠点は使用温度範囲が比較的狭く、耐久性が低い点にある。さらに、その製造プロセスも制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第EP0405227号公報
【文献】欧州特許第EP0402883号公報
【文献】欧州特許第EP1650255号公報
【文献】国際公開第WO2013/148841号公報
【文献】国際公開第WO2015/052265号公報
【文献】フランス特許第FR0950637号公報
【文献】フランス特許第FR0856752号公報
【文献】フランス特許第FR095063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、下記(1)~(3)の1つまたは複数の有利な特性を有する低密度のポリマー発泡体を提供するというニーズがある:
(1)低応力下での弾性エネルギー回復能(capacite elevee a restituer de l'energie elastique)が高く、
(2)圧縮残留変形(deformation remanente en compression)が低く、
(3)圧縮疲労(fatigue en compression)強度が高い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、これらの有利な特性を得るために、非架橋性の共重合体の発泡体、特に下記特性によって特徴づけられるPEBAの発泡体を開発した:
(1)密度が800kg/m3以下、好ましくは600kg/m3以下、好ましくは500kg/m3以下、好ましくは400kg/m3以下、好ましくは30kg/m3以下、理想的には200kg/m3以下、
(2)セル(細孔)寸法が均質:各セル内径の差(セル寸法μm)が30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、
(3)セル寸法がガス注入による物理的発泡で得たものより小さく、
(4)発泡部品の外側表面が滑らか。
セル寸法は走査電子顕微鏡(SEM)を用いて発泡部品で測定する。
【0013】
本発明の発泡セルのD50は30~130μmの範囲内であるのが有利である。発泡セルのD50とは試験したセルの集団をちょうど半分に分ける寸法値に対応すする。換言すれば、D50が130μm以下である本発明発泡体のセルでは、セルの50%が130μm以下のサイズを有する。D50はISO規格9276-パート1~6:「粒径分析の結果の表現」に従って測定することができる。本明細書ではFEI社のSEM「Quants250」とフトウェア(Fraunhofer)とを使用して発泡体のセル寸法の分布を求め、それからD50を推定した。
【0014】
本発明の対象は、ガスを封入した独立気泡を有するポリマーのマトリックスの形をした非架橋性発泡性組成物であって、上記マトリックスが、発泡性組成物の総重量に対して、
90~99.9重量%の少なくとも1種のブロックコポリマーと、
ISO規格11358:2011に従って熱重量分析(TGA)によって測定した0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、好ましくは0.5~5重量%、好ましくは0.7~5重量%の炭酸水素金属塩(metal d'hydrogenocarbonate)と、
を含む、ハードブロックとソフトブロックとを有するコポリマーから成ることを特徴とする非架橋性発泡性組成物にある。
【0015】
上記ガスはCO2、H2O、N2およびこれらの混合物から選択される少なくとも一つの化合物を含むのが有利である。
【0016】
上記の少なくとも1種のブロックコポリマーはポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリアミドブロック、ポリウレタンブロックおよびこれらの混合物から選択される少なくとも一つのブロックを含むのが有利である。
【0017】
本発明組成物では下記であるのが好ましい:
(1)コポリマーのハードブロックが200~2000g/モルの数平均分子量を有し、
(2)コポリマーのソフトブロックが800~2500g/モルの数平均モル質量を有し、
(3)コポリマーのポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は0.1~2である、
【0018】
コポリマーはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーを含むのが有利である。コポリマーのポリアミドブロックはポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12のブロックおよびこれらの混合物であるのが好ましい。コポリマーのポリエーテルブロックはポリエチレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールのブロックであるのが好ましい。
【0019】
本発明の発泡性組成物の密度は800kg/m3以下、好ましくは700kg/m3以下、好ましくは600kg/m3以下、好ましくは500kg/m3以下、好ましくは400kg/m3以下、好ましくは300kg/m3以下、例えば200kg/m3以下であるのが有利である。
【0020】
本発明の発泡性組成物は、(本発明のブロック共重合体とは異なる)1種または複数の他のポリマー、好ましくはエチレンとビニルアセテートとの共重合体、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体から選択されるポリマーをさらに0.1~50重量%含むのが有利である。
【0021】
本発明はさらに他の対象は下記にある:
(1)本発明の発泡性組成物からなる物品、または
(2)本発明の発泡性組成物からなる任意の要素。
【0022】
本発明の対象は特に、スポーツ靴の底、ボール、バルーン、手袋、個人用プロテクター、靴底(クッションパッド)、レール底材料、自動車部品、ベビーカー、ホイール、ハンドル、シート部材、子供用カーシート部品、コンポーネント、電気および/または電子機器、オーディオ機器、防音および/または断熱材料、衝撃および/または振動減衰部品、輸送手段、ホイール、メンテナンスを必要としないタイヤのような可撓性部品およびこれらの混合物を含む任意の物品から選択された物品にある。
【0023】
本発明のさらに他の対象は、下記(a)と(b)から成る発泡性ブロックを含むコポリマー組成物にある:
(a)90~99.5重量%、好ましくは95~99重量%、好ましくは95~98重量%の上記定義の本発明ブロック共重合体、
(b)0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%、好ましくは2~5重量%の炭酸水素金属塩から成る発泡剤と、下記の中から選択される少なくとも一つの成分:
(1)2~10個の炭素原子と少なくとも2つのカルボキシル基とを有するポリカルボン酸、
(2)上記酸の金属塩、
(3)カルボキシル基の少なくとも一つが1~6個の炭素原子を有するアルコールでエステル化されている上記ポリカルボン酸のエステル、
(4)これらの混合物。
上記の重量パーセントは発泡性組成物の総重量に対するものである。
【0024】
発泡剤は炭酸水素アルカリ金属塩およびクエン酸またはその塩を含むのが有利である。
【0025】
本発明の特定の実施形態では、発泡性ブロック共重合体組成物は、組成物の総重量に対して0.5~20質量%のガスを封入した熱可塑性カプセル(この熱可塑性カプセルは90~250℃の範囲の温度の作用で膨張する)をさらに含む。このカプセルの膨張前の平均粒径D50は8~20μm、フォーム中で膨張した後の平均粒径D50は30~130μmの範囲である。
【0026】
本発明の発泡性ブロック共重合体組成物はさらに、ゼオライトおよび/またはアルカリ土類金属酸化物を含む乾燥剤を10~50重量%含むのが有利である。
【0027】
本発明のさらに他の対象は、以下の工程を含む本発明発泡体の製造方法にある:
(1)本発明の発泡性組成物を用意し、
(2)ポリマーが溶融し、発泡剤が分解する温度に上記組成物を加熱して、CO2、Η2Οおよび/またはN2、好ましくはCO2およびΗ2Οがガスの形で溶融ポリマー中に分散させる。
【0028】
本発明方法はさらに、加熱工程中に、溶融した共重合体と化学発泡剤との混合物、場合によっては1種または複数の添加剤との混合物を含むのが有利である。
【0029】
本発明方法は本発明組成物の射出工程を含むのが有利である。すなわち、上記コポリマーと化学的発泡剤との混合物を金型中に射出し、加熱後の混合物(本発明組成物)の発泡を下記で実行する:
1)金型中ヘの射出中(ショートショット技術)、
および/または
2)型開き時(コアバック技術)
【0030】
上記実施形態の代替方法または補足法では、本発明方法は上記発泡性組成物を押出し、押出機の出力で発泡剤の分解によって組成物を直接発泡させる工程を含む。
【0031】
本発明方法のさらに別の実施形態では、上記発泡性組成物を反応器中で加熱する(バッチ方式)。この場合、必要に応じて圧力および/または温度を変化させて熱力学的不安定状態にして発泡組成物を発泡させる。
【0032】
本発明の特定実施形態では、混合工程中に(組成物の総重量に対して)少なくとも0.1~10重量%、好ましくは0.1~3重量%の物理的発泡剤を添加する。この物理的発泡剤は窒素ガス、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボンおよびこれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0033】
分子状窒素N2、二酸化炭素CO2のような物理的発泡剤はガスの形態をしている。これらのガスは溶融した共重合体中に高圧下で溶解される。系を減圧することで気泡の核生成と成長が起こり、細胞構造ができる。
【0034】
さらに別の実施形態では、超臨界状態のCO2(気体と液体の間の中間状態の組成物流体)を本発明組成物と組み合わせて使用する。本発明の好ましい実施形態では、ガスの射出装置を使用しない。従って、ブロックコポリマーを製造するのに使用される既存の実装機構を改造せずにそのまま用いることができる。
【0035】
本発明は従来技術の欠点を克服することができる。特に、低応力下でのストレス時の弾性エネルギー回復能が高く(une capacite elevee a restituer de l'energie elastique lors de sollicitations sous faible contrainte)、圧縮永久(deformation remanente en compression)が小さく、圧縮疲労強度(fatigue en compression)が高という有利な特性の1つまたは複数を有する低密度のポリマー発泡体を提供することができる。
【0036】
これらの特性は-20℃~50℃の広い温度範囲、例えば-30℃~80℃で得られるという利点がある。これはる架橋していないブロック共重合体を使用したことで達成された。好ましくは、特定の範囲のポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックの分子量と特定の範囲のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのブロック質量比とによって特徴付けられるポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するブロック共重合体を使用したことで達成された。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明が下記の説明に限定されるものではない。
【0038】
本発明ではブロック共重合体を使用する。
本発明のブロック共重合体は、ハートまたは剛性のブロックまたはセグメント(熱可塑性の挙動をする)と、ソフトまたは可撓性のブロックまたはセグメント(エラストマーの挙動をする)とを交互に有するエラストマー性熱可塑性ポリマー(TPE)を意味する。例えば、ポリアミドブロックはポリマーの使用温度よりも高い融点(Tm)またはガラス転移温度(Tg)を有するいわゆるリジッドなセグメントであり、ポリエーテルブロックはポリマーの使用温度より低いTmまたはTgを有するいわゆる可撓性セグメントである。
【0039】
より正確には、「ソフト」ブロックは低いガラス転移温度(Tg)を有するブロックであり、ガラス転移温度が低いとはガラス転移温度Tgが15℃以下、好ましくは0℃以下、好ましくは-15℃以下、好ましくは-30℃以下、さらには-50℃以下であることを意味する。
【0040】
本発明では、共重合体中の可撓性またはソフトブロックはポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリシロキサンブロック、例えばポリジメチルシロキサンまたはPDMSブロック、ポリオレフィンブロック、ポリカーボネートブロックおよびこれらの混合物から選択されるものを意味する。ソフトブロックに関しては[特許文献6](フランス特許第0950637号公報)の第33頁3行~第28頁第23行目に記載されている。例えば、ポリエーテルブロックはポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(1,2-プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3-プロピレングリコール)(PO3G)、ポリ(テトラメチレングリコール)(PTMG)およびこれらのコポリマーまたはブレンドから選択される。
【0041】
ハードブロックはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルまたはこれらのポリマーの混合物をベースにしたものにすることができる。これらのブロックは[特許文献7](フランス特許第0856752号公報)に記載されている。ハードブロックはポリアミド(PAと略記)をベースにしたものが好ましい。ポリアミドブロックはホモポリアミドまたはコポリアミドにすることができる。本発明組成物で使用可能なポリアミドブロックとしては[特許文献8](フランス特許第FR095063号公報)の第27頁第18行目~第31頁第14行目に定義のものが挙げられる。
【0042】
上記の少なくとも一種のブロックコポリマーは、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリアミドブロック、ポリウレタンブロックおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1つのブロックを含むのが有利である。ハードブロックとソフトブロックとを有する共重合体の例としては(a)ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとの共重合体(COPEまたはコポリエーテルエステルと呼ばれる)、(b)ポリウレタンブロックコポリマーとポリエーテルブロックとの共重合体(熱可塑性ポリウレタン、TPUと略称)、(c)ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの共重合体(IUPACでPEBAと呼ばれ、ポリエーテルブロックアミドとも呼ばれる)を挙げることができる。
【0043】
上記の少なくとも一種のブロックコポリマーはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含む共重合体(PEBA)であるのが好ましい。このPEBAは反応性末端を有するポリアミドブロックと反応性末端を有するポリエーテルブロックとの縮重合、例えば、下記の重縮合で得られる:
1)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック(これは例えばα、ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化と水素化で得られる、ポリエーテルジオールと呼ばれる)
3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオール(この特定の場合に得られる製品がポリエーテルエステルアミド)
【0044】
ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックは例えばポリアミド先駆物質をジカルボン酸連鎖制限剤の存在下で縮合して得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えばポリアミド先駆物質をジアミン連鎖制限剤の存在下で縮合して得られる。下記の三種類のポリアミドブロックを使用するのが有利である。
【0045】
第一のタイプでは、ポリアミドブロックは4~20個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を有するジカルボン酸と脂肪族または芳香族のジアミン、特に2~20個の炭素原子、好ましくは6~14個の炭素原子を有するジアミンとの縮合で得られる。ジカルボン酸の例としては1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、さらには脂肪酸ダイマーを挙げることができる。ジアミンの例としてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレン、ドデカメチレン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)の各異性体、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、2,2-ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、パラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジン(PIP)を挙げることができる。
【0046】
ポリアミドブロックとしてはPA4.12、PA4.14、PA4.18、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA6.18、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA10.14およびPA10.18を使用するのが有利である。PAX.Yという表記で、Xはジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは二酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0047】
第二のタイプでは、ポリアミドブロックは一つまたは複数のα、ωアミノカルボン酸および/または4~12個の炭素原子を有するカルボン酸またはジアミンの存在下での6~12個の炭素原子を有する一つまたは複数のラクタムの縮合で得られる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。α、ω-アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、アミノ-7-アミノヘプタン酸、アミノ-11-ウンデカン酸およびアミノ-12-ドデカン酸を挙げることができる。
【0048】
第二のタイプのポリアミドブロックはPA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)またはPA-6(ポリカプロラクタム)のブロックであるのが有利である。表記PA XにおいてXはアミノ酸残基の炭素原子の数を表す。
【0049】
第三のタイプでは、ポリアミドブロックは少なくとも1種のα、ω-アミノカルボン酸(またはラクタム)の縮合、少なくとも1種のジアミンと少なくとも一種のジカルボン酸の縮合で得られる。この場合、ポリアミドブロックPAはジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下での下記の重縮合で得られる:
1)X個の炭素原子を有するまたは直鎖脂肪族または芳香族ジアミン、
2)Y個の炭素原子を有するジカルボン酸、
3)Z個の炭素原子を有するラクタムおよびα、ω-アミノカルボン酸およびX1個の炭素原子を有する少なくとも1つのジアミンとY1個の炭素原子を有する少なくとも一つのジカルボン酸との等モル混合物から選択されるコモノマー{Z}(ただし、(XI、Y1)(X、Y)とは異なる)、(ここで、コモノマー{Z}はポリアミド前駆体モノマーに対して50重量%以下、好ましくは20%重量%以下、好ましくは10重量%以下の比率で導入される)
【0050】
連鎖制限剤のジカルボン酸はY個の炭素原子を有し、ジアミンの化学量論に対して過剰に導入するのが有利である。
【0051】
この第三のタイプの変形例では、ポリアミドブロックが6~12個の炭素原子を有する少なくとも二つのα、ω-アミノカルボン酸または少なくとも2つのラクタムの縮合、または、同じ数の炭素原子を有していない一つのラクタムと一つのアミノカルボン酸の縮合で得られる。この縮合は必要に応じて連鎖制限の存在下で行う。脂肪族のα、ω-アミノカルボン酸の例としてはアミノカプロン酸、アミノ-7-ヘプタン酸、アミノ-11-ウンデカン酸、アミノ-12-ドデカン酸を挙げることができる。ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。脂肪族ジアミンの例としてはヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。脂環式二酸ジアミンの例としては1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を挙げることができる。脂肪族二酸の例としてはブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、脂肪酸ダイマーを挙げることができる。この脂肪酸ダイマーのダイマー含有量は少なくとも98%であるのが好ましく、水素化されているのが好ましい。その例としては"CRODA社から「PRIPOL」の名称で市販のもの、BASF社から「EMPOL」の名称で市販のもの、または、OLEON社から「Radiacid」の名称で市販のもの、およびポリオキシアルキレンα、ω-二酸が挙げられる。芳香族二酸の例としてはテレフタル酸(T)およびイソフタル酸(I)を挙げることができる。脂環式ジアミンの例としてはビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンの各異性体(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、2-2-ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-プロパン(BMACP)およびパラ-アミノジシクロ-ヘキシルメタン(PACM)を挙げることができる。一般的に使用されている他のジアミンはイソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンである。
【0052】
第三のタイプのポリアミドブロックの例としては以下のものが挙げられる:
(1)PA6.6/6(ここで、6.6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6はカプロラクタムの縮合で得られる単位を表す)
(2)PA6.6/6.10/11/12(ここで、6.6は、アジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6.10はセバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、11はアミノウンデカン酸の縮合で得られる単位を表し、12はラウリルラクタムの縮合で得られる単位を表す)
【0053】
コポリアミドを表すPA X/Y、PA X/Y/Z等の表記で、X、Y、Z等は関連する上記のホモポリアミド単位を表す。
【0054】
本発明に用いられる共重合体のポリアミドブロックは、ポリアミドブロックのPA6、PA11、PA12、PA5.4、PA5.9、PA5.10、PA5.12、PA5.13、PA5.14、PA5.16、PA5.18、PA5.36、PA6.4、PA6.9、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6.14、PA6.16、PA6.18、PA6.36、PA10.4、PA10.9、PA10.10、PA10.12、PA10.13、PA10.14、PA10.16、PA10.18、PA10.36、PA10.T、PA12.4、PA12.9、PA12.10、PA12.12、PA12.13、PA12.14、PA12.16、PA12.18、PA12.36、PA12.Tまたはこれらの混合物またはコポリマーであるのが有利であり、ポリアミドブロックPA6、PA11、PA12、PA6.10、PA10.10、PA10.12またはこれらの混合物またはコポリマーを含むのが好ましい。
【0055】
ポリエーテルブロックはアルキレンオキシド.n単位から構成される。特に、ポリエーテルブロックはPEG(ポリエチレングリコール)ブロックすなわちエチレンオキシド単位および/またはPPG(プロピレングリコール)ブロックすなわちプロピレンオキシド単位および/またはP03G(ポリトリメチレングリコール)ブロックすなわちポリトリメチレンエーテルグリコール単位および/またはPTMGブロックすなわちテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフランとも呼ばれる)にすることができる。PEBAコポリマーはその鎖中に複数のタイプのポリエーテルを含むことができ、コポリエーテルはブロックでもランダムでもよい。
【0056】
また、ビスフェノール、例えばビスフェノールAのエトキシル化で得られるブロックを使用することもできる。その例は欧州特許第EP613919に記載されている。
【0057】
また、ポリエーテルブロックはエトキシ化第一級アミンで構成することもできる。このエトキシル化第一級アミンの例としては下記の式の化合物を挙げることができる:
【0058】

【0059】
(ここで、mとnは1~20の整数、xは8~18の整数である)
この化合物は例えばCECA社からNORAMOX(登録商標)の名称で市販され、CLARIANT社からGENAMIN(登録商標)の名称で市販されている。
【0060】
ソフトなポリエーテルブロックはNH2鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックを含むことができ、このブロックはポリエーテルジオールとしても知られるα、ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化によって得ることができる。特に、ジェファーミン(Jeffamine)またはエラストミン(Elastamin)の名称で市販の製品を使用することができる(例えば、Huntsman社からJeffamine(登録商標)D400、D2000、ED2003、XTJ542の名称で市販のもの、また、日本特許第JP2004346274号公報、日本特許第JP2004352794号公報、欧州特許第EP1482011号公報にも記載)
【0061】
ポリエーテルジオールブロックはそのまま使用するか、カルボン酸末端を有するポリアミドブロックと縮合して使用するか、アミン化してジアミンポリエーテルに変換し、カルボン酸末端基を有するポリアミドブロックと縮合する。PAブロックとPEブロックとのエステル結合を有するPEBAコポリマーの二段階製造方法の一般的方法は例えばフランス特許第FR2846332号公報二記載されている。PAブロックとPEブロックとの間のアミド結合を有する本発明のPEBAコポリマーを調製するための一般的な方法も公知で、例えば欧州特許第EP1482011号公報に記載されている。また、ポリエーテルブロックをポリアミド先駆物質および連鎖制限剤の二酸と混合してランダムに分布した単位を有ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーを製造することもできる(一段階プロセス)。
【0062】
本明細書でPEBAと記載したものには、アルケマ社arkemaのPEBAX(登録商標)、Evonik社から市販のVestamid(登録商標)、EMS社から市販の Grilamid(登録商標)、三洋から市販のPelestat(登録商標)タイプのPEBAおよびその他のサプライヤーの他のPEBAが含まれる。
【0063】
上記のブロックコポリマーが一般的に少なくとも一つのポリアミドブロックと少なくとも一つのポリエーテルブロックとを含む場合、本発明は本明細書に記載のブロック(このブロックはポリアミドブロックとポリエーテルの少なくとも1つを含む)の中から選択される2つ、3つ、4つ(またはそれ以上)の異なるブロックを含むコポリマーの全てのアロイをカバーする。
【0064】
例えば、本発明のブロック共重合体は、複数の上記ブロックの縮合で得られる3つの異なるブロック(または「トリブロック」)を含むセグメント化ブロック共重合体であってもよい。このトリブロックはコポリエーテルエステルアミドおよびコポリエーテルアミドウレタンから選択するのが好ましい。
【0065】
本発明で特に好ましいPEBAコポリマーはPA12-PEG、PA6-PEG、PA6/12-PEG、PA11-PEG、PA12-PTMG、PA6-PTMG、PA6/12-PTMG、PA11-PTMG、PAl2-PEG/PPG、PA6-PEG/PPG、PA6/12-PEG/PPG、PA11-PEG/PPG、PA11/PO3G、PA6.10/PO3Gおよび/またはPA10.10/PO3Gである。
【0066】
本発明の発泡体は上記のブロックコポリマーを含み、このような共重合体を
単独で使用するのが好ましい。しかし、2つ以上のブロックコポリマー、特に複数の上記PEBAを含む混合物を使用することもできる。
【0067】
本発明の共重合体、例えばPEBA中の剛性ブロック、例えばポリアミドブロックの数平均モル質量は200~2000g/モルの範囲であり、ソフトブロック、例えばポリエーテルブロックの数平均モル質量は800~2500g/モルの範囲である。
【0068】
数平均モル質量は連鎖停止剤の含有量によって決めることができる。数平均モル質量は下記の式を用いて計算することができる:
Mn=(nモノマー/n連鎖停止剤)ラM繰返単位+M連鎖停止剤
nモノマー=モノマーのモル数
n連鎖停止剤=過剰二酸のモル数
M繰返単位=繰返し単位のモル質量
M連鎖停止剤=過剰の二酸のモル質量
【0069】
本発明では、共重合体のソフトブロック(PEBAの場合にはポリエーテル)に対するハードブロック(PEBAの場合には例えばポリアミド)の重量比は0.1~2である。
【0070】
この質量比はハードブロック、特にポリアミドの数で平均モル質量をソフトブロック、特にPEBAの場合にはポリエーテルの数平均モル質量で割ることによって計算することができる。
【0071】
本発明の特定実施形態ではこの比は0.1~0.2または0.2~0.3または0.3~0.4または0.4~0.5または0.5~0.6または0.6~0.7または0.7~0.8または0.8~0.9または0.9~1または1~1.1または1.1~1.2または1.2~1.3または1.3~1.4または1.4~1.5または1.5~1.6または1.6~1.7または1.7~1.8または1.8~1.9または1.9~2である。
【0072】
本発明で用いられる共重合体のISO規格868:2003に従って測定したショアD硬度は40ショアD以下、好ましくは35ショアD以下であるのが好ましい。
【0073】
上記のブロック共重合体、特にポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するブロック共重合体は、発泡体を形成するために架橋工程なしに使用される。本発明の発泡体は、上記のブロック共重合体を溶融状態で発泡剤または化学的発泡剤と混合し、次いで発泡工程が行なって形成される。
【0074】
本発明の一つの実施形態では、上記のようにして形成された発泡体が上記共重合体(共重合体のブレンドが使用される場合には複数の共重合体)と、発泡剤または化学発泡剤の分解生成物(これはマトリックス中に分散しており、特に発泡体のセル中に存在している)とで基本的に構成されている(あるいはそれらのみで構成されている)。
【0075】
上記のブロック共重合体、特にポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するブロック共重合体は種々の添加剤と組み合わせることができる。添加剤の例はエチレンと酢酸ビニル(EVA)との共重合体(例えば、アルケマ社からEvatane(登録商標)の名称で市販のもの)、エチレンとアクリレートとの共重合体、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、例えばアルケマ社からLotry(登録商標)の名称で市販のものである。これらの添加剤を使用することで発泡体の硬度、外観および取扱い易さを調整することができる。
【0076】
これらの添加剤は本発明組成物の総重量に対して5~30重量%、好ましく、0.1~50重量%の含有量で添加することができる。
【0077】
本発明組成物は核剤、特に無機充填剤、例えばタルクのよう添加剤をさらに含むことができる。その含有率は本発明組成物の総重量に対して0.1~10重量%、好ましくは0.1~3重量%にするのが好ましい。
【0078】
本発明組成物では、化学発泡剤を物理的発泡剤と組み合わせて使用することができる。物理的発泡剤の例は窒素ガス、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン(飽和または不飽和)である。例えばブタンまたはペンタンを使用することができる。この場合、物理的発泡剤は液体状態または超臨界形態で発泡性共重合体組成物と混合され、発泡工程中に気相に変換される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の共重合体発泡性組成物は金型中に射出される。組成物の発泡は金型中への射出中または型開き時に行われる。これら2つの技術を使用するか、それらを組み合わせて使用することで複雑な形状を有する三次元発泡物品を直接製造することができる。
【0080】
これらの技術は、先行技術のように発泡粒子の一部を溶融するプロセスに比べて実施するのが比較的簡単な技術である。すなわち、先行技術のように発泡性ポリマー顆粒を金型に充填し、その後に発泡体構造を破壊せずに粒子を融合して機械的強度を有する部品にするのは複雑な操作である。
【0081】
その他の有用な発泡技術は「バッチ」発泡法と発泡押出法である。
【0082】
本発明に従って製造された発泡体は50~800kg/m3の密度、好ましくは100~600kg/m3の密度を有する。密度の制御は製造プロセスのパラメータを調整することで達成できる。
【0083】
本発明の発泡体はISO規格8307:2007に従って測定した反発弾性が55%以上であるのが有利である。
【0084】
本発明の発泡体はISO規格7214:2012に従って測定した圧縮下残留変形が10%以下、好ましくは8%以下であるのが有利である。
【0085】
本発明の発泡体は優れた疲労抵抗特性とクッション性とを有しているのが有利である。
【0086】
本発明の発泡体はスポーツ用品を製造するために使用することができる。例えばスポーツシューズのソール、スキーブーツ、ミッドソール、インソールまたはソールの機能構成要素、ソールの各種部分(例えばヒールアーチ)の挿入物、靴上部構造の補強または甲成分挿入物、プロテクターで使用することができる。
【0087】
本発明の発泡体はさらに、ボール、スポーツ手袋(例えばサッカー手袋)、ゴルフボールの部品、ラケット、保護アイテム(ジャケット、ヘルメット内部要素、芯材・・・)を作るのにも使用できる。
【0088】
本発明の発泡体は、機器に要求される通常の特性に加えて、耐衝撃特性、耐振動特性および耐騒音特性をさらに与えることができる。従って、本発明の発泡体はスポーツシューズのソール(またはクッションパット)、摺動レール、輸送業およびまたは自動車産業における各種部品、ベビーカー用部品、例えばホイール、ハンドル、シート材料、子供用自動車シート、電気・電子機器およびオーディオ機器の部品、絶縁機器、特に遮音および/または断熱材料の製造で使用でき、さらに、輸送用車輌の衝撃および/または振動の吸収材料、メンテナンスを必要としないソフトライドホイール、例えばタイヤの部品、建設用部材、製造工業用部品の製造で使用できる。
【0089】
本発明の発泡部品の利点は容易にリサイクルができることにある。例えば、(必要に応じて断片に切断し後に)脱気口を備えた押出機で溶融することで容易にリサイクルができる。
【実施例
【0090】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものでとない。実施例では、特に断りのない限り、全ての百分率および部は重量%および重量部である。
試験で使用したPEBA共重合体の組成物(実施例と比較例)(アルケマ社のPebax(登録標章))は下記の[表1]示す特徴を有する。
【0091】
【表1】
【0092】
試験した組成物で使用した化学発泡剤は以下のとおり:
(1)ACM1:クエン酸と炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)をベースにした混合物(Clariant社のHydrocerol(登録標章)の一つ)。
(2)ACM2:クエン酸および重炭酸ナトリウム(NaHCO3)をベースにした混合物で、ミクロスフェアを含む(Clariant社のHydrocerol(登録標章)の一つ)。
【0093】
シートの押出成形と密度試験
密度はISO規格1183に従って「液浸」方法を使用して測定した。
【0094】
本発明の実施例1、2の2つの組成物をプレートに押出成形した。両方の組成物とも極めて良好な押出加工性を示した。得られた発泡シートは平滑で滑らかなシームレスの表面外観と正確なエッジとを有し、発泡マトリックス中に均一かつ均一な細孔または細胞分布を有していた。
【0095】
このことは、下記の構成によって、本発明の発泡体ではセルの寸法と分布の両方の均一性が得られるということを示している
(1)本発明の発泡性組成物に使用する炭酸水素金属塩をベースにした発泡剤の含有量を少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%にし、
(2)ISO規格11358:2011に従ってTGAで測定した得られたフォームのマトリックス中に残存する炭酸水素金属塩の含有量を、組成物の全重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%に対応させる。
【0096】
得られた部品の密度は800kg/m3以下である。
【0097】
シートの射出成形と密度試験
密度はISO規格1183に従って「液浸」方法を使用して測定した。
【0098】
本発明の実施例3~6では本発明発泡性組成物を通常の射出成形方法を用いて部品に直接射出成形した。得られた部品は精密な寸法精度を有する軟質フォームで、ガスを注入する操作を行わずに、密度を600kg/m3以下、さらには500kg/m3以下にすることができる。
得られた本発明の軟質フォーム部品はセル寸法(発泡体の細孔)が均質で、細孔(または独立気泡)の内径の差は30%未満である。
【0099】
本発明の実施例1~6で得られた発泡体は、ISO規格8307:2007に従って測定した反発弾性が55%以上であり、ISO規格7214:2012に従って測定した圧縮セット(ゆがみ)が10%以下である。
【0100】
本発明に従って得られる発泡体は制御された均一な構造と機械特性、特に疲労強度および減衰特性とを有する点に特徴がある。従って、本発明発泡体はスポーツ用品、個人用プロテクター、遮音および/または断熱材料、特に輸送関連する振動を減衰するための部品の製造で使用することができる。