(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ワクチン構築物およびブドウ球菌感染症に対するその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20221122BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221122BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20221122BHJP
C07K 14/31 20060101ALI20221122BHJP
C12N 1/13 20060101ALI20221122BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221122BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221122BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221122BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20221122BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221122BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221122BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20221122BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20221122BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20221122BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221122BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20221122BHJP
A61K 39/085 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/31
C07K14/31
C12N1/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
A61K38/02
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/74 A
A61K39/39
A61K47/65
A61P31/04
A61K39/00 H
A61K39/085
(21)【出願番号】P 2019542759
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 CA2017051253
(87)【国際公開番号】W WO2018072031
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-19
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519145296
【氏名又は名称】ソクプラ、サイエンシズ、エ、ジェニ、エス.イー.シー.
【氏名又は名称原語表記】SOCPRA SCIENCES ET GENIE S.E.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ、マルワン
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ、ステル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー、コテ-グラベル
(72)【発明者】
【氏名】エリック、ブルイエ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/113160(WO,A1)
【文献】特表2012-521441(JP,A)
【文献】特表2012-523246(JP,A)
【文献】Steven R. Gill et al,Journal of Bacteriology,2005年04月,Vol. 187, No. 7,p. 2426-2438
【文献】Makoto Kuroda et al.,The Lancet,2001年04月21日,Vol. 357,p. 1225-1240
【文献】Byoung Sun Chang et al.,Vaccine,2008年,Vol. 26,p. 2081-2091
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号55のアミノ酸配列を含み、SACOL1867およびSACOL0029を含む融合構築物を含んでなる、単離ポリペプチド構築物。
【請求項2】
配列番号3のアミノ酸配列を含み、SACOL0442およびSACOL0720由来のエピトープの組合せを含んでなる、単離ポリペプチド構築物。
【請求項3】
配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチド構築物を含んでなる、単離ポリペプチド構築物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物をコードする単離核酸分子。
【請求項5】
請求項
4に記載の単離核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項6】
請求項
5に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項7】
弱毒生型の黄色ブドウ球菌である、請求項
6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、安定化した小コロニー変異体(SCV)表現型を有する、請求項
7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
安定化したSCV表現型を有する弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、ΔhemBΔ720黄色ブドウ球菌である、請求項
8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
請求項
1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物を含んでなる、組成物。
【請求項11】
請求項
1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド構築物の少なくとも2つの組合せを含んでなる、組成物。
【請求項12】
配列番号5のアミノ酸配列を含むSACOL0029、配列番号29のアミノ酸配列を含むSACOL0442、配列番号11のアミノ酸配列を含むSACOL0720、配列番号38のアミノ酸配列を含むSACOL1867、配列番号43のアミノ酸配列を含むSACOL1912、および配列番号50のアミノ酸配列を含むSACOL2385を含む、ポリペプチド構築物を含んでなる、組成物。
【請求項13】
配列番号29のアミノ酸配列を含むSACOL0442、配列番号11のアミノ酸配列を含むSACOL0720、ならびに配列番号55のアミノ酸配列を含み、SACOL1867およびSACOL0029を含む融合構築物を含むポリペプチド構築物を含んでなる、組成物。
【請求項14】
配列番号5のアミノ酸配列を含むSACOL0029、配列番号38のアミノ酸配列を含むSACOL1867、ならびに配列番号55のアミノ酸配列を含み、SACOL1867およびSACOL0029を含む融合構築物を含むポリペプチド構築物を含んでなる、組成物。
【請求項15】
配列番号3のアミノ酸配列を含み、SACOL0442およびSACOL0720由来のエピトープの組合せを含むポリペプチド構築物を含んでなる、組成物。
【請求項16】
配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチド構築物を含んでなる、組成物。
【請求項17】
配列番号3のアミノ酸配列を含み、SACOL0442およびSACOL0720の組合せを含むポリペプチド構築物、ならびに配列番号55のアミノ酸配列を含み、SACOL0029およびSACOL1867のポリペプチド融合構築物の2つのポリペプチド構築物を含んでなる、組成物。
【請求項18】
弱毒生型の黄色ブドウ球菌をさらに含んでなる、請求項
12~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、安定化した小コロニー変異体(SCV)表現型を有する、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
安定化したSCV表現型を有する弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、ΔhemBΔ720黄色ブドウ球菌である、請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
アジュバントをさらに含んでなる、請求項
10~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
アジュバントが、ミョウバン、油、サポニン、環状ジグアノシン-5’-一リン酸(c-di-GMP)、ポリホスファジン、インドリシジン、病原体関連分子パターン(PAMPS)、リポソームまたはそのうち少なくとも2つの組み合わせを含んでなる、請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
哺乳類におけるブドウ球菌乳腺内感染(IMI)の治療のための医薬の製造における、請求項
10~22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
なし
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
なし
【0003】
発明の分野
本発明は、ワクチン構築物およびブドウ球菌感染症に対するその使用に関する。より具体的には、本発明は、抗原を組み合わせたワクチン構築物およびウシ乳腺内感染(IMI)などのブドウ球菌感染症に対するその使用に関する。
【0004】
配列表の参照
米国特許施行規則第1.821条(37C.F.R.1.821(c))に従い、2017年10月5日に作成し、278キロバイトのサイズのSEQUENCE LISTING USP62411120_ST25という名前のASCII準拠のテキストファイルとして、本明細書とともに配列表を提出する。前述のファイルの全内容は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0005】
発明の背景
ウシ乳房炎は、酪農業者にとって最も頻繁な、かつコストにかかる疾患であり、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus
aureus)は、この疾患の発生に最も多い原因である伝染性細菌であると考えられている(Sears et al., 2003)。乳腺炎に至る可能性があるブドウ球菌IMIは、処置することが困難であり、頻繁な再発がよくみられる(Sandholm et al., 1990)。
【0006】
黄色ブドウ球菌IMIを予防および管理するためのワクチンの開発は、広く検討されているが、現在までのところ予防効果を示している製剤はない。これはおそらく、ワクチンの標的が不適切であること(Middleton, 2008; Middleton 2009)、乳腺炎を誘導できる株間の多様性が高いこと(Buzzola, 2007; Kerro-Dego, 2006; Middleton, 2008)または適切な免疫応答を誘導できないこと(Bharathan, 2011; Ferens, 2000; Fowler, 2014; Proctor, 2012)が原因である。ワクチンで誘導された抗体にもっぱら基づく免疫は重要な可能性があるが、黄色ブドウ球菌に対する防御を誘導するには不十分であることの理解が深まってきている(Middleton 2008; Middleton 2009)。Th1およびTh17型の応答に基づく細胞性免疫(CMI)は、防御を完全なものにするのに必要である可能性があると思われる(Fowler, 2014; Lin, 2009; Proctor, 2012; Spellberg, 2012)。
【0007】
in vitroでの抗生物質に対する細菌感受性は、慢性的に感染した雌ウシにおける治療効果の予測因子としては不十分である(Owens et al., 1997)。乳腺炎の処置に続発する感染症は、新たに獲得した株に起因し得るが、その感染症は、元の感染性微生物が残存していた結果であることが多い(Sandholm et al., 1990; Myllys et al., 1997)。よって、既存の治療法は、しばしば感染症の排除に失敗し、ブドウ球菌IMIを予防または処置するための新規のアプローチを見出すことが、強く望まれるであろう。
【0008】
市販の黄色ブドウ球菌ワクチンに対しては、ワクチンの有効性および防御能の欠如が認められている(Middleton, 2008)。このため、IMIの発症中に発現することで知られる非常に効果のある黄色ブドウ球菌抗原を、IMIおよび乳腺炎に対して防御するためのワクチン成分として使用することが、強く望まれるであろう。
【0009】
本発明は、これらのニーズおよびその他のニーズを満たすことを目的とする。
【0010】
本明細書は、多数の文書を参照しており、その全内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0011】
発明の概要
第一の態様では、本発明は、増大した免疫原性を示す融合ポリペプチド、およびブドウ球菌IMIに対するワクチンとしてのその使用を提供する。
【0012】
黄色ブドウ球菌IMIなどのブドウ球菌の特徴は、黄色ブドウ球菌が宿主細胞内に持続することができる能力である。特に、黄色ブドウ球菌の小コロニー変異体(SCV)は、一般に侵襲性感染症を生じず、宿主細胞に内部移行することがある。したがって、さらなる態様では、本発明は、そのような株に対する免疫応答を示し、ワクチンの予防効果を増大させるため、SCVの表現型の側面に基づいたワクチン目的での弱毒生型黄色ブドウ球菌株を提供する。
【0013】
一態様では、本発明は以下の項目を提供する。
【0014】
項目1:式(I):X-A-リンカー-B-Z(I)の融合構築物であって、式中、(1)AおよびBは同一または異なり、独立して、(a)NCBI Reference Sequence NC_002951.2に記載の黄色ブドウ球菌COL(SACOL)ゲノムに由来する遺伝子命名法に基づいた、
図24に示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0029ポリペプチド(配列番号5および121~131)、SACOL0264ポリペプチド(配列番号185)、
図22Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0442ポリペプチド(配列番号29および82~92)、SACOL0718ポリペプチド(配列番号186)、
図23I~Kに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0720ポリペプチド(配列番号11および109~120)、SACOL1353ポリペプチド(配列番号187)、SACOL1416ポリペプチド(配列番号188)、SACOL1611ポリペプチド(配列番号189)、
図25Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL1867ポリペプチド(配列番号152~164)、SACOL1912ポリペプチド(配列番号43)、SACOL1944ポリペプチド(配列番号190)、SACOL2144ポリペプチド(配列番号191)、SACOL2365ポリペプチド(配列番号192)、SACOL2385ポリペプチド(配列番号50)またはSACOL2599ポリペプチド(配列番号193)を含んでなるポリペプチド;(b)(a)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c)(a)または(b)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d)(a)~(c)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e)(a)~(c)のいずれか1つの少なくとも13個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドであり、(2)リンカーが少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列である、または存在しない;(3)Xが存在しない、または少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列である;かつ(4)Zが存在しない、または少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列である、融合構築物。
【0015】
項目2:(1)(a)が、
図24に示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0029ポリペプチド(配列番号5および121~131)、
図22Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0442ポリペプチド(配列番号29および82~92)、
図23I~Kに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0720ポリペプチド(配列番号11および109~120)、または
図25Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL1867ポリペプチド(配列番号152~164)を含んでなるポリペプチドである、項目1に記載の構築物。
【0016】
項目3:AおよびBの少なくとも1つが、(a)
図24に示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0029ポリペプチドを含んでなるポリペプチド(配列番号5および121~131);(b)(a)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c)(a)または(b)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d)(a)~(c)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e)(a)~(d)のいずれか1つの少なくとも13個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドであり、かつ、AおよびBの他方が、(a’)
図25Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL1867ポリペプチドを含んでなるポリペプチド(配列番号152~164);(b’)(a’)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c’)(a’)または(b’)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d’)(a’)~(c’)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e’)(a’)~(d’)のいずれか1つの少なくとも12個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドである、項目2に記載の構築物。
【0017】
項目4:AおよびBの少なくとも1つが、(a)
図22Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0442ポリペプチドを含んでなるポリペプチド(配列番号29および82~92);(b)(a)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c)(a)または(b)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d)(a)~(c)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e)(a)~(d)のいずれか1つの少なくとも13個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドであり、かつ、AおよびBの他方が、(a’)
図23I~Kに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0720ポリペプチドを含んでなるポリペプチド(配列番号11および109~120);(b’)(a’)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c’)(a’)または(b’)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d’)(a’)~(c’)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e’)(a’)~(d’)のいずれか1つの少なくとも12個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドである、項目2に記載の構築物。
【0018】
項目5:AおよびBが同一または異なり、(a)
図23I~Kに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0720ポリペプチドを含んでなるポリペプチド(配列番号11および109~120);(b)(a)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c)(a)または(b)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d)(a)~(c)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e)(a)~(d)のいずれか1つの少なくとも13個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドである、項目2に記載の構築物。
【0019】
項目6:前記免疫原性フラグメント(d)が、以下のアミノ酸配列:KDTINGKSNKSRNW(配列番号34);およびKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)のうち1つ以上を含んでなる、項目1~2および4のいずれか一項に記載の構築物。
【0020】
項目7:前記免疫原性フラグメント(d)が、以下のアミノ酸配列:
【化1】
のうち1つ以上を含んでなる、項目6に記載の構築物。
【0021】
項目8:前記免疫原性フラグメント(d)が、以下のアミノ酸配列:QFGFDLKHKKDALA(配列番号21);TIKDQQKANQLAS(配列番号22);KDINKIYFMTDVDL(配列番号23);およびDVDLGGPTFVLND(配列番号24)のうち1つ以上を含んでなる、項目1~2および4~5のいずれか一項に記載の構築物。
【0022】
項目9:前記免疫原性フラグメント(d)が、以下のアミノ酸配列:
【化2】
のうち1つ以上を含んでなる、項目8に記載の構築物。
【0023】
項目10:前記免疫原性フラグメント(c’)が、以下のアミノ酸配列:PYNGVVSFKDATGF(配列番号165);AHPNGDKGNGGIYK(配列番号167);SISDYPGDEDISVM(配列番号169);RGPKGFNFNENVQA(配列番号172);QFESTGTIKRIKDN(配列番号175);およびGNSGSPVLNSNNEV(配列番号178)のうち1つ以上を含んでなる、項目1~3のいずれか一項に記載の構築物。
【0024】
項目11:前記免疫原性フラグメント(d)が、以下のアミノ酸配列:
【化3】
を含んでなる、項目10に記載の構築物。
【0025】
項目12:リンカーが、グリシン、セリン、アラニン、アスパラギン酸塩(aspartate)、グルタミン酸塩(glutamate)およびリジンからなる群から選択される少なくとも4つの同一または異なるアミノ酸を含んでなる、項目1~11のいずれか一項に記載の構築物。
【0026】
項目13:リンカーが、(GGGGS)n(配列番号67)、(ERKYK)n(配列番号61);または(EAAAK)n(配列番号63)を含んでなり、n=1~5である、項目1~12のいずれか一項に記載の構築物。
【0027】
項目14:前記Xが、6~10個のアミノ酸のポリヒスチジンを含んでなる、項目1~13のいずれか一項に記載の構築物。
【0028】
項目15:前記Xが存在しない、項目1~13のいずれか一項に記載の構築物。
【0029】
項目16:前記Zが存在しない、項目1~15のいずれか一項に記載の構築物。
【0030】
項目17:項目1~16のいずれか一項に定義される構築物をコードする単離核酸分子。
【0031】
項目18:項目17に定義される単離核酸を含んでなるベクター。
【0032】
項目19:項目18に定義されるベクターを含んでなる宿主細胞。
【0033】
項目20:弱毒生型の黄色ブドウ球菌である、項目19に記載の細胞。
【0034】
項目21:弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、安定化した小コロニー変異体(SCV)表現型を有する、項目20に記載の細胞。
【0035】
項目22:安定化したSCV表現型を有する弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、ΔhemBΔ720黄色ブドウ球菌である、項目21に記載の細胞。
【0036】
項目23:(A)項目1~16のいずれか一項に定義される構築物のうち少なくとも1つ;項目17に定義される核酸分子のうち少なくとも1つ;項目18に定義されるベクターのうち少なくとも1つ;または項目19~22のいずれか一項に定義される細胞のうち少なくとも1つ;および(B)(i)項目1~11のいずれか一項に定義されるポリペプチド;(ii)弱毒生型黄色ブドウ球菌;(iii)薬学的に許容可能な賦形剤;(iv)アジュバント;または(v)(i)~(iv)のうち少なくとも2つの組み合わせを含んでなる組成物。
【0037】
項目24:弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、(a)NCBI Reference Sequence NC_002951.2に記載の黄色ブドウ球菌COL(SACOL)ゲノムに由来する遺伝子命名法に基づいた、
図24に示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0029ポリペプチド(配列番号5および121~131)、SACOL0264ポリペプチド(配列番号185)、
図22Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0442ポリペプチド(配列番号29および82~92)、SACOL0718ポリペプチド(配列番号186)、
図23I~Kに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0720ポリペプチド(配列番号11および109~120)、SACOL1353ポリペプチド(配列番号187)、SACOL1416ポリペプチド(配列番号188)、SACOL1611(配列番号189)、
図25Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL1867ポリペプチド(配列番号152~164)、SACOL1912ポリペプチド(配列番号43)、SACOL1944(配列番号190)、SACOL2144ポリペプチド(配列番号191)、SACOL2365ポリペプチド(配列番号192)、SACOL2385ポリペプチド(配列番号50)またはSACOL2599ポリペプチド(配列番号193)を含んでなるポリペプチド;(b)(a)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c)(a)または(b)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d)(a)~(c)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e)(a)~(c)のいずれか1つの少なくとも13個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドを発現する、項目23に記載の構築物。
【0038】
項目25:弱毒生型の黄色ブドウ球菌が、安定化した小コロニー変異体(SCV)表現型を有する、項目23または24に記載の組成物。
【0039】
項目26:アジュバントが、ミョウバン、油(例えば、乳化油、鉱油)、サポニン(例えば、Quil-A(商標))、環状ジグアノシン-5’-一リン酸(c-di-GMP)、ポリホスファジン、インドリシジン、病原体関連分子パターン(PAMPS)、またはそのうち少なくとも2つの組み合わせを含んでなる、項目23~25のいずれか一項に記載の組成物。
【0040】
項目27:哺乳類におけるブドウ球菌乳腺内感染(IMI)を予防および/または処置する方法であって、項目1~16のいずれか一項に定義される構築物;項目17に定義される核酸分子;項目18に定義されるベクター;項目19~22のいずれか一項に定義される細胞;または項目23~26に定義される組成物の有効量を前記哺乳類に投与することを含んでなる、方法。
【0041】
項目28:前記ブドウ球菌IMIが、1つ以上の黄色ブドウ球菌株によって引き起こされる、項目27に記載の方法。
【0042】
項目29:前記哺乳類が雌ウシである、項目27または28に記載の方法。
【0043】
項目30:哺乳類におけるブドウ球菌乳腺内感染(IMI)を予防および/または処置するための、(i)項目1~16のいずれか一項に定義される構築物;(ii)項目17に定義される核酸分子;(iii)項目18に定義されるベクター;項目19~22のいずれか一項に定義される細胞;(iv)項目23~26のいずれか一項に定義される組成物;または(v)(i)~(iv)のうち少なくとも2つの組み合わせの有効量の使用。
【0044】
項目31:前記ブドウ球菌IMIが、1つ以上の黄色ブドウ球菌株によって引き起こされる、項目30に記載の使用。
【0045】
項目32:前記哺乳類が雌ウシである、項目30または31に記載の使用。
【0046】
項目33:哺乳類におけるブドウ球菌乳腺内感染(IMI)の予防および/または処置に使用するための、項目1~16のいずれか一項に定義される構築物;項目17に定義される核酸分子;項目18に定義されるベクター;項目19~22のいずれか一項に定義される細胞;項目23~26のいずれか一項に定義される組成物またはそのうち少なくとも2つの組み合わせ。
【0047】
項目34:前記ブドウ球菌IMIが、1つ以上の黄色ブドウ球菌株によって引き起こされる、項目33に記載の構築物、核酸分子、ベクター、細胞、組成物または組み合わせ。
【0048】
項目35:前記哺乳類が雌ウシである、項目33または34に記載の構築物、核酸分子、ベクター、細胞または組成物。
【0049】
項目36:(A)(i)項目1~16のいずれか一項に定義される構築物のうち少なくとも1つ;(ii)項目17に定義される核酸分子のうち少なくとも1つ;(iii)項目18に定義されるベクターのうち少なくとも1つ;(iv)項目19~22のいずれか一項に定義される細胞のうち少なくとも1つ;または(v)(i)~(iv)のうち少なくとも2つの組み合わせ、および(B)(i)項目1~11のいずれか一項に定義されるポリペプチド;(ii)弱毒生型黄色ブドウ球菌;(iii)薬学的に許容可能な賦形剤;(iv)アジュバント;(v)哺乳類におけるブドウ球菌乳腺内感染(IMI)を予防および/または処置するためのキットの使用に関する使用説明書;または(vi)(i)~(v)のうち少なくとも2つの組み合わせを含んでなる、哺乳類におけるブドウ球菌乳腺内感染(IMI)を予防および/または処置するためのキット。
【図面の簡単な説明】
【0050】
添付図面において、
【
図1】
図1A~Dは、ワクチンの各抗原、すなわちSACOL0029、SACOL0442、SACOL0720、SACOL1867、SACOL1912およびSACOL2385に関する、2回目の免疫化の4週後(実験感染の直前)におけるワクチン接種(9)雌ウシおよびプラセボ(10)雌ウシの血清中総IgG(
図1A)、IgG1(
図1B)およびIgG2(
図1C)力価を示す。
図1Dでは、ワクチン接種雌ウシに対してIgG2/IgG1比を示している。
図1A、BおよびCでは、白丸(○)は、ワクチン接種雌ウシのデータを表し、黒四角(黒四角)は、プラセボ雌ウシのデータを表す。各記号は、1頭の雌ウシに対する力価を表す。水平線は中央値を表す。破線は、ワクチン接種雌ウシに対する中央値を表し、一方、実線は、プラセボ雌ウシに対する中央値を表す。
図1A、BおよびCでは、ワクチン接種雌ウシに対する力価は、プラセボ雌ウシに対する力価より高い(P<0.0001)。
図1Dでは、記号は、各雌ウシに対するIgG2/IgG1比を表す。水平線は中央値を表す。異なる文字は、統計学的差を示す。***,P<0.001。
【
図2】
図2は、各抗原に関する、2回目の免疫化の4週後におけるワクチン接種雌ウシ(9)およびプラセボ雌ウシ(10)に由来する血中CD4+細胞の抗原依存的増殖を示す。各記号は、陽性対照(ConA)または各抗原、すなわちSACOL0029、SACOL0442、SACOL0720、SACOL1867、SACOL1912およびSACOL2385によるインキュベーションの1週後における、各雌ウシに対する増殖しているCD4+細胞の割合を示す。白丸(○)は、ワクチン接種雌ウシのデータを表し、黒四角(黒四角)は、プラセボ雌ウシのデータを表す。水平線は中央値を表す。破線は、ワクチン接種雌ウシに対する中央値を表し、一方、実線は、プラセボ雌ウシに対する中央値を表す。統計解析:SASの混合手順。記号*は、抗原SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL1912に関するワクチン接種群とプラセボ群との間の統計学的差を示す(*,P<0.05)。さらに、CD8+細胞の増殖は、全抗原に関してワクチン接種雌ウシとプラセボ雌ウシとで同程度であったが、抗原SACOL0720は例外で、CD8+細胞の高い増殖がワクチン接種雌ウシに認められた(データ未掲載)。
【
図3】
図3は、乳牛における実験的黄色ブドウ球菌乳腺内感染を示す。2回目の免疫化の4週後および4日後に、黄色ブドウ球菌の63コロニー形成単位(CFU)を、夕方の搾乳時に、ワクチン接種雌ウシ(9)およびプラセボ雌ウシ(10)の4乳区のうち3乳区に注入した(1日目、
図3中の矢印)。朝の搾乳時に無菌乳試料を採取し、体細胞数(SCC)をValacta社(サン=タンヌ=ド=ベルビュー、ケベック州)が測定した。白丸(○)および破線は、ワクチン接種雌ウシのデータを表し、一方、黒四角(黒四角)および実線は、プラセボ雌ウシのデータを表す。各白丸は、ワクチン接種雌ウシの全感染乳区(27)に対するSCCの平均を表し、各四角は、プラセボ雌ウシの全感染乳区(30乳区)に対するSCCの平均を表す。負荷期にわたり、乳中体細胞数は、プラセボ雌ウシよりもワクチン接種雌ウシにおいて有意に低いことが認められた(***;P<0.001)。
【
図4】
図4A~C
図4Aは、各雌ウシに対するCFUとSCCとの相関を示し、
図4Bは、各雌ウシに関するSACOL0442に対する血清中IgG1力価とSCCとの相関を示す。各記号は、1頭の雌ウシのデータを表す。
図4Aでは、各記号は、感染症の最初から最後までの3感染乳区に対するSCCおよびCFUの平均を表す。
図4Bでは、各記号は、感染症の最初から最後までの3感染乳区に対するSCCの平均と、2回目の免疫化の4週後および実験感染の直前におけるSACOL0442に対する血清中IgG1力価を表す。白丸は、ワクチン接種雌ウシのデータを表し、黒四角は、プラセボ雌ウシのデータを表す。SCC/mlとCFU/mlとの間には強い相関が認められ、SCCとSACOL0442に対するIgG1力価との間には負の相関が認められる。
図4Cでは、実験感染の10日後(2回目の免疫化の6週後)における各雌ウシに対して、SACOL0029に対する乳中IgG2力価とSCCまたはCFUとの相関を示している。各記号は、実験感染10日後の1頭の雌ウシのデータを表す。朝の搾乳時に無菌乳試料を採取し、黄色ブドウ球菌の生菌数は、10倍希釈およびトリプティックソイ寒天(TSA)プレートへの播種により測定し、一方、SCCは、Valacta社(サン=タンヌ=ド=ベルビュー、ケベック州)が測定した。各雌ウシに対するSCCおよびCFUデータは、実験感染10日後における3感染乳区に対するデータの平均を表す。乳中IgG2力価の測定のための乳試料は、実験感染10日後(2回目の免疫化の6週後)における各雌ウシの4乳区からの等量の乳の混合物である。黒四角(黒四角)は、プラセボ雌ウシのデータを表し、白丸(○)は、ワクチン接種雌ウシのデータを表す。
【
図5】
図5は、融合抗原SACOL0029およびSACOL1867(SACOL0029-1867として示す)ならびに抗原SACOL0442およびSACOL0720を含んでなるワクチンの各抗原に関する、ワクチン接種雌ウシに対する血清中総IgG力価を示す。ELISAでは、標的抗原は、SACOL0029-1867、SACOL0029、SACOL1867、SACOL0442およびSACOL0720であった。各白丸は、11頭の雌ウシの各々に対する2回目の免疫化の4週後における力価を表し、一方、各黒菱形は、免疫前力価を表す。水平線は中央値を表す。実線は、免疫前血清に対する中央値を表し、点線は、免疫化の4週後に採取した試料に対する中央値を表す。ワクチン接種雌ウシに対する力価は、免疫前血清の力価より高い(**,P<0.01;***,試験した他の抗原に対するP<0.001)。
【
図6】
図6は、等モル量での融合タンパク質(SACOL0029-1867;融合物)、別々のタンパク質の組み合わせ(SACOL0029+SACOL1867;組み合わせ)、SACOL0029タンパク質のみ(0029)またはSACOL1867タンパク質のみ(1867)で免疫化したマウスのSACOL1867抗原に対する血清中総IgG力価を示す。白丸(○)は、免疫前力価のデータを表し、黒四角(黒四角)は、免疫力価のデータを表す。免疫前力価に関しては、各免疫化群のマウス5匹の間で免疫前血清を等しく混合し、免疫前プール力価(1群あたり1個の白丸で表した)を得た。免疫力価に関しては、各四角記号は、マウス1匹に対する力価を表す。水平線は中央値を表す。黒線は、免疫血清に対する中央値を表し、一方、破線(および白丸)は、免疫前血清プールの力価に対する中央値を表す。融合物群、組み合わせ群および1867群におけるワクチン接種マウスの力価は、免疫前マウスの力価よりも高く(P<0.001)、SACOL0029一価抗原のみを投与されたマウスの力価は、SACOL1867に対する免疫前プールの力価と有意差があるとは認められなかった。組み合わせ群および2つの一価ワクチン群に対する融合物群の免疫力価の統計学的有意性が示されている(***:P<0.001)。
【
図7】
図7 SACOL0442のアミノ酸配列(GEHLPKGNIVINTKDGGKYTLESHKELQKDRENVKINTAD、配列番号2)のフラグメントに含有されるB細胞エピトープ配列KDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)に対するものであり、かつ、SACOL0442およびSACOL0720からコードされるペプチドの融合物KDGGKYTLESHKELQEAAAKEAAAKKDINKIYFMTDVDLGGPTFVLND(配列番号3)(群1)またはSACOL0442からコードされるペプチドKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)(群2)のいずれかで免疫化したマウスから得た血清中総IgG(ELISAアッセイにおいて光学密度450nmにより測定)。各群は、等モル量の配列KDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)(群1ではKDGGKYTLESHKELQEAAAKEAAAKKDINKIYFMTDVDLGGPTFVLND(配列番号3)100μgおよび群2ではKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)31.25μgに相当)で、2週間間隔で2回注入された4匹(n=4)から構成され、最後の注入の1週後に採取した血液から血清を調製した。ELISAアッセイは、100000倍に希釈した血清試料を用いて実施し、SACOL0442からのフラグメント(GEHLPKGNIVINTKDGGKYTLESHKELQKDRENVKINTAD、(配列番号2))を、ペプチドエピトープKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)を含有する標的抗原として用いた。個々のデータは、グラフ上の円およびバーによる中央値として表している。群間差は、統計学的に有意であることが認められた(P<0.0286、クラスカル・ワリス(Kuskal-Wallis)検定、GraphPad Prism(商標)7.00)。
【
図8】
図8A~B 黄色ブドウ球菌のATCC29213およびΔ720株におけるhemBの欠失。(
図8A)野生型(WT)株ATCC29213およびその同質遺伝子変異体Δ720におけるhemB遺伝子を、相同組換えおよびermAカセットとの置換により欠失させ、それぞれ変異体株ΔhemBおよびΔ720ΔhemBを作製した。太線および数字は、親(1)株およびhemB欠失(2)株に関するBに示したPCR増幅領域を表す。(
図8B)WT株およびその同質遺伝子ΔhemB変異体のPCR産物(Δ720株およびΔ720ΔhemB株でも同様の結果が得られた)。
【
図9】
図9A~Cは、MAC-T細胞の感染性に対する黄色ブドウ球菌ΔhemB、Δ720およびΔhemBΔ720変異の影響を示す。MAC-T細胞を、4つの各株で3時間感染させた後、リゾスタフィンでさらに30分(t=3h)、12時間または24時間インキュベートし、生存細胞内細菌(CFU)の測定のために溶解した。(
図9A)Δ720および(
図9B)ΔhemBΔ720変異体に関するt=3hにおいて細胞内に認められた最初の接種材料の相対回収率。結果は、それぞれATCC29213(WT)またはΔhemBに対して得られた結果に従って正規化しており、SDとともに平均で表している(**,P≦0.01;***,P≦0.001;対応のないt検定)。(
図9C)12時間(左)および24時間(右)におけるWTおよび変異体に関する細胞内CFUの平均およびSD。2元配置分散分析およびチューキーの多重比較検定を用いた(*:P≦0.05;***:P≦0.001)。すべての値は、3つの独立した実験(各々3回実施)の平均を示す。
【
図10】
図10は、MAC-T細胞内の黄色ブドウ球菌ATCC29213(WT)および同質遺伝子変異体の経時的な持続を示す。MAC-T細胞を、4つの各株で3時間感染させた後、リゾスタフィンでさらに30分、12時間または24時間インキュベートし、細胞内細菌(CFU)の測定のために溶解した。細胞内細菌のCFUは、10を底とする対数値で変換した後の最初の接種材料の割合として表している(Log10CFU/ml)。値は、標準偏差とともに、3つの独立した3回の実験の平均を示す。
【
図11】
図11A~Bは、黄色ブドウ球菌ATCC29213(WT)および同質遺伝子変異体によって感染されたMAC-T細胞の生存率を示す。MAC-T細胞を、4つの各株で3時間感染させた後、リゾスタフィンで12時間(
図11A)または24時間(
図11B)インキュベートした。次に、Kubica et al., 2008に記載の方法を用いて、MTT生存率アッセイを実施した。結果は、非感染細胞と比較した生存率として報告しており、3回実施した3つの独立した実験の平均とともにSDとして表している。(Φ)の記号を付した統計学的有意性は、WTに対して比較している(2元配置分散分析およびチューキーの多重比較検定:*またはΦ:P≦0.05;**:P≦0.01;***:P≦0.001;ΦΦΦΦ:P≦0.0001)。
【
図12】
図12は、親(WT)株およびΔhemBΔ720(ΔΔ)株によるマウスIMIを示す。マウスを前述のように感染させ、感染後の指定の時間(h)または日(D)に腺を採取した。各カラムは、腺の群に関する細菌CFU数の中央値を表し、範囲はバーで示している。D7のWT株(腺2個:1匹のみが生存した)を除き、1群あたり最低6個の腺を使用した。特定の時点におけるマウスの死亡率を、矢印で示している。アスタリスクは、腺からΔhemBΔ720が排除されたこと(10CFU/腺の検出限界未満)を示す。
【
図13】
図13 二重変異体(Δ720ΔhemB)は、感染後最初の24時間において、乳腺における好中球の流入を、WTと比較して同レベルまで刺激する。マウスを材料と方法での記載通りに感染させ、対照群(PBS)のマウスに滅菌PBS注入を行った。腺を指定の時間に採取し、ホモジナイズし、材料と方法での記載通りにMPO活性について動態学的に分析した。各ドットは、1つの腺に対するMPO単位を表し、腺のグラムで調整した生の値で示している。平均は太線で表している。
【
図14】
図14 黄色ブドウ球菌ATCC29213(WT)および二重変異体Δ720ΔhemB(ΔΔ)によるマウスIMIの24時間後の大きなR4およびL4の乳腺の視覚的炎症。マウスを材料と方法での記載通りに感染させ、対照群(PBS)のマウスに滅菌PBS注入を行った。写真は、24時間後に採取した腺を示す。各パネルでは、R4(左)およびL4(右)の腺を示している。
【
図15】
図15A:二重変異体Δ720ΔhemBの排除後、好中球浸潤は正常レベルに戻る。マウスを材料と方法での記載通りに感染させ、対照群(PBS)のマウスに滅菌PBS注入を行った。腺を指定の時間に採取し、ホモジナイズし、材料と方法での記載通りにMPO活性について動態学的に分析した。カラムは、腺のグラムで調整した6個の腺の群(PBS対照では4個)のMPO単位の平均を表し、エラーバーは標準偏差を示す。感染後の4日目群と12日目群との間の統計学的有意性を、(Φ)の記号で示している。1元配置分散分析およびチューキーの多重比較検定を用いた(ΦΦ:P≦0.01;NS:群間の有意差なし)。
図15B~C:弱毒生二重変異体(Δ720ΔhemB)によるマウスの免疫化は、通常認められるspa型の黄色ブドウ球菌ウシ乳房炎分離菌に対する強い液性応答を刺激する。マウスを前述のように免疫化した。プライミング免疫化前(免疫前)およびブースト免疫化の10日後(免疫)に血清を採取した。
図15B.弱毒生株Δ720GΔhemBの増量とともに、IgG力価は上昇する。各ドットは、Δ720GΔhemB全細胞抽出液に対する1匹のマウスの総IgG力価を表す。中央値は、免疫力価に関しては太線で、免疫前力価に関しては破線で示している。力価を、それに対応する免疫前力価と比較した(2元配置分散分析およびチューキーの多重比較検定:****:P≦0.0001)。
図15C.弱毒生変異体Δ720GΔhemBによる免疫化は、通常認められるspa型の乳腺炎株によって共有される成分に対するIgG力価を与える。各ドットは、指定の株の全細胞抽出液に対する1匹のマウスの総IgG力価を表す。中央値は、免疫力価に関しては太線で、免疫前力価に関しては破線で示している。すべての免疫力価を、それに対応する免疫前力価と比較し(P≦0.0001)、臨床株間で比較した(2元配置分散分析およびシダックの多重比較検定:NS:有意差なし)。
【
図16】
図16は、タンパク質混合物(抗原SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL0029-1867融合物5μgから構成される)、弱毒生株Δ720ΔhemBのみ10
5CFUまたはタンパク質混合物とΔ720ΔhemB株の組み合わせで免疫化したマウスのSACOL0029-1867融合タンパク質に対する血清中総IgG力価を示す。白丸(○)は、免疫前力価のデータを表し、黒四角(黒四角)は、免疫力価のデータを表す。各記号は、1匹のマウスに対する力価を表す。水平線は中央値を表す。黒線は、免疫血清に対する中央値を表し、一方、破線は、免疫前血清に対する中央値を表す。タンパク質混合物群および組み合わせ群におけるワクチン接種マウスに対する力価は、免疫前マウスに対する力価より高い(P<0.001)。他の2つのワクチン接種マウス群に対する、組み合わせ群の免疫力価の統計学的有意性が示されている(**:P<0.01)。
【
図17】
図17は、タンパク質混合物(抗原SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL0029-1867融合物5μgから構成される)、弱毒生株Δ720ΔhemBのみ10
5CFUまたはタンパク質混合物とΔ720ΔhemB株の組み合わせで免疫化したマウスのSACOL0029に対する血清中総IgG力価を示す。白丸(○)は、免疫前力価のデータを表し、黒四角(黒四角)は、免疫力価のデータを表す。各記号は、1匹のマウスに対する総IgG力価を表す。水平線は中央値を表す。黒線は、免疫血清に対する中央値を表し、一方、破線は、免疫前血清に対する中央値を表す。3つのマウス群の免疫力価と免疫前力価との間の統計学的有意性が示されている(**:P<0.01)。
【
図18】
図18は、SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL0029-1867タンパク質混合物、弱毒生株Δ720ΔhemBのみ10
5CFUまたはタンパク質混合物とΔ720ΔhemBの組み合わせで免疫化したマウスに関する、ブドウ球菌表面タンパク質ClfAに対する血清中総IgG力価を示す。白丸(○)は、免疫前力価のデータを表し、黒四角(黒四角)は、免疫力価のデータを表す。各記号は、1匹のマウスに対する力価を表す。水平線は中央値を表す。黒線は、免疫血清に対する中央値を表し、一方、破線は、免疫前血清に対する中央値を表す。免疫前力価と免疫力価との間の統計学的有意性が示されている(*:P<0.05)。
【
図19】下記
図19は、タンパク質混合物、またはタンパク質混合物と弱毒生Δ720ΔhemB株の組み合わせで免疫化されたマウスに関する、SACOL0029-1867融合ポリペプチドに対するIgG2a/IgG1力価の血清比を示す。
【
図20】
図20は、SACOL0029抗原に対する血清比を示す。白四角(□)は、免疫前力価のデータを表し、黒四角(黒四角)は、免疫力価のデータを表す。各記号は、1匹のマウスに対する力価比を表す。水平線は中央値を表す。組み合わせ群の比に対するタンパク質混合物群の統計学的有意性が示されている(*:P<0.05;**:P<0.01)。
【
図21】
図21A~J I.SACOL0029ポリヌクレオチド(全長配列、配列番号4)およびポリペプチド(全長、フラグメントおよび変異体配列、配列番号5~9)。選択したエピトープを網掛けおよび/または太字で示している;II.SACOL0720ポリヌクレオチド(全長配列、配列番号10)およびポリペプチド(全長、フラグメントおよび変異体配列、配列番号11~27)。選択したエピトープを網掛けで示している;III.SACOL0442ポリヌクレオチド(全長配列、配列番号28)およびポリペプチド(全長、フラグメントおよび変異体配列、配列番号29~36および1)。選択したエピトープを網掛けで示している;IV.SACOL1867ポリヌクレオチド(全長配列、配列番号37)およびポリペプチド(全長、フラグメントおよび変異体配列、配列番号38~41)。選択したエピトープを網掛けで示している。予測した膜貫通(
http://www.enzim.hu/hmmtop/html/submit.html)領域を太字で示している;V.SACOL1912ポリヌクレオチド(全長配列、配列番号42)およびポリペプチド(全長および変異体配列、配列番号43~44)。選択したエピトープを網掛けで示している(例えば、配列番号45~48参照);VI.SACOL2385ポリヌクレオチド(全長、配列番号49)およびポリペプチド(全長および変異体配列、配列番号50~51)。選択したエピトープを網掛けで示している(例えば、配列番号52~53参照);VII.融合物:(i)SACOL0029-1867融合ポリヌクレオチド配列(配列番号54および56)およびポリペプチド配列(配列番号55、57~58)。ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列において、二重下線の配列(ある場合)はポリヒスチジンの配列であり、イタリック体の配列はSACOL0029フラグメントの配列であり、一本下線の配列はリンカーの配列であり、太字の配列はSACOL1867フラグメントの配列である;(ii)SACOL0720-720融合ポリペプチド配列(配列番号27)。ポリペプチド配列において、二重下線の配列(ある場合)はポリヒスチジンの配列であり、イタリック体の配列はSACOL0720フラグメントの配列であり、一本下線の配列はリンカーの配列である;(iii)SACOL0442-720融合ポリペプチド配列(配列番号3)。ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列において、二重下線の配列(ある場合)はポリヒスチジンの配列であり、イタリック体の配列はSACOL0442フラグメントの配列であり、一本下線の配列はリンカーの配列であり、太字の配列はSACOL0720フラグメントの配列である;VIII.リンカーの配列(配列番号59~70)。
【
図22】
図22A~D I.全長SACOL0442および相同分子種に対する多重ポリヌクレオチド配列(配列番号71~72、28、73~81)アラインメント;II.全長SACOL0442、相同分子種に対する多重ポリペプチド配列(配列番号29および82~92)アラインメントおよびそれに由来するコンセンサス配列を示している。これらの配列において、「*」は、そのカラム内の残基がアラインメントの全配列において同一であることを表し、「:」は、保存置換が認められていることを表し、「.」は、半保存置換が認められていることを表す。これらのアラインメントに由来するコンセンサス配列も示しており、Xはいずれかのアミノ酸である。ポリペプチド配列において、選択したエピトープを網掛けで示している(例えば、配列番号1、34、93~97参照)。
【
図23】
図23A~K I.全長SACOL0720および相同分子種に対する多重ポリヌクレオチド配列(配列番号98~104、10および105~108)アラインメント;II.全長SACOL0720、相同分子種に対する多重ポリペプチド配列(配列番号11および109~120)アラインメントおよびそれに由来するコンセンサス配列を示している。これらの配列において、「*」は、そのカラム内の残基がアラインメントの全配列において同一であることを表し、「:」は、保存置換が認められていることを表し、「.」は、半保存置換が認められていることを表す。これらのアラインメントに由来するコンセンサス配列も示しており、Xはいずれかのアミノ酸である。ポリペプチド配列において、選択したエピトープを網掛けで示している(例えば、配列番号22、19および21参照)。
【
図24】
図24 全長SACOL0029、相同分子種に対する多重ポリペプチド配列(配列番号5および121~131)アラインメントおよびそれに由来するコンセンサス配列を示している。これらの配列において、「*」は、そのカラム内の残基がアラインメントの全配列において同一であることを表し、「:」は、保存置換が認められていることを表し、「.」は、半保存置換が認められていることを表す。これらのアラインメントに由来するコンセンサス配列も示しており、Xはいずれかのアミノ酸である。ポリペプチド配列において、選択したエピトープを網掛けで示している(例えば、配列番号132~139参照)。太字のエピトープは、BCPred(商標)で同定されたものである。網掛けのエピトープは、AAp予測で同定されたものである。
【
図25】
図25A~D I-全長SACOL1867および相同分子種に対する多重ポリヌクレオチド配列(配列番号140~151)アラインメント;II-全長SACOL1867、相同分子種に対する多重ポリペプチド配列(配列番号152~164)アラインメントおよびそれに由来するコンセンサス配列を示している。これらの配列において、「*」は、そのカラム内の残基がアラインメントの全配列において同一であることを表し、「:」は、保存置換が認められていることを表し、「.」は、半保存置換が認められていることを表す。これらのアラインメントに由来するコンセンサス配列も示しており、Xはいずれかのアミノ酸である。ポリペプチド配列において、選択したエピトープを網掛けで示しており(例えば、配列番号165~180参照)、シグナルペプチド領域および/または膜貫通領域の末端は、線を付している(シグナルペプチドおよび/または膜貫通領域の分泌型からの分離)。
【
図26】
図26 I-全長SACOL1715(hemB)に対するポリヌクレオチド配列(配列番号181);およびII-全長SACOL1715(hemB)に対するアミノ酸配列(配列番号182)。
【
図27】
図27 I-全長ClfA(NWMN_0756、newman)に対するポリヌクレオチド配列(配列番号183);およびII-全長ClfAに対するアミノ酸配列(配列番号184)。
【0051】
例示的な実施形態の説明
本発明は、2つの抗原の融合物が、免疫応答において予想外の相乗作用を生み出したことを示した。
【0052】
さらに、本発明は、hemB(完全欠失のため、侵襲性の表現型への復帰の可能性を損なう(Tuchscherr, 2011))を通じたブドウ球菌のSCV表現型の安定化も行い、ワクチン送達システムとしてのその使用を可能にした。HemBはHemBタンパク質/モノマーをコードしており、HemBタンパク質/モノマーは、組み合わさって、ポルフォビリノーゲン合成酵素またはアミノレブリン酸デヒドラターゼ酵素を産生する[EC 4.2.1.24]。さらに、本発明の抗原、すなわち遺伝子SACOL0720の不活性化によって、さらなる弱毒化がもたらされた。この遺伝子は、カチオン性ペプチド耐性(Falord, 2012; Kawada-Matsuo, 2011; Meehl, 2007)およびIMI中のin vivo(Allard, 2013)において黄色ブドウ球菌に対して重要であることが以前に示されている。それゆえ、本発明の構築物を発現するこの弱毒二重変異体株は、IMIに対する免疫化および防御に使用可能である。
【0053】
一般的な定義
見出しおよびその他の識別子、例えば、(a)、(b)、(i)、(ii)などは、明細書および請求項を単に読みやすくするために示している。明細書または請求項における見出しまたはその他の識別子の使用は、工程または要素をアルファベット順もしくは番号順またはそれらが示される順番で実施することを必ずしも必要とするわけではない。
【0054】
本明細書において、多数の用語が広範に使用される。そのような用語が示される範囲を含む、明細書および請求項を明確かつ一貫して理解するために、以下の定義が提供される。
【0055】
請求項および/または明細書において用語「を含んでなる」とともに使用する場合の単語「1つ(a)」または「1つ(an)」の使用は、「1つ(one)」を意味し得るが、「1つ以上(one or more)」、「少なくとも1つ」および「1つ以上(one or more than one)」の意味にも一致する。
【0056】
本明細書を通じて、用語「約」は、値が、その値を測定するのに用いられるデバイスまたは方法における誤差の標準偏差を含むことを示すのに用いられる。一般に、用語「約」は、最大10%の変動の可能性を示すことを意図されている。したがって、値の1、2、3、4、5、6、7、8、9および10%の変動は、用語「約」に含まれる。特に断りのない限り、範囲の前の用語「約」の使用は、範囲の両端に適用される。
【0057】
本明細書および請求項で使用するとき、単語「含んでなる(comprising)」(ならびに「含んでなる(comprise)」および「含んでなる(comprises)」などのいずれの形式の「含んでなる(comprising)」)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などのいずれの形式の「有する(having)」)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などのいずれの形式の「含む(including)」)または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)および「含有する(contain)」などのいずれの形式の「含有する(containing)」」は、包括的すなわち非制限的であり、それ以外の列挙されない要素または方法工程を排除しない。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」は、特定の請求項に係る実施形態または請求項において具体的に列挙される要素、工程または成分のみを含むことを意味する。
【0059】
ポリペプチド、核酸および送達システム
本明細書で使用する場合、用語「ワクチン」は、宿主において免疫応答を誘導/惹起でき、感染症および/または疾患の処置および/または予防が可能ないずれの化合物/剤(「ワクチン成分」)またはその組み合わせを意味する。したがって、そのような剤の非限定的な例としては、タンパク質、ポリペプチド、タンパク質/ポリペプチドフラグメント、免疫原、抗原、ペプチドエピトープ、エピトープ、タンパク質、ペプチドまたはエピトープの混合物、および別々に添加される、または核酸ワクチンにおいてなどの連続した配列における核酸、遺伝子または遺伝子の部分(目的のポリペプチドもしくはタンパク質またはそのフラグメントをコードする)などが挙げられる。
【0060】
本発明の一態様では、式I:
X-A-リンカー-B-Z(式(I))の融合構築物であって、
式中、AおよびBは同一または異なり、各々独立して本発明の抗原性ポリペプチド(すなわち、天然フラグメントまたはその変異体)である、融合構築物が提供される。
【0061】
特定の実施形態では、Aおよび/またはBは、(a)
図24に示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0029ポリペプチド(配列番号5および121~131)、SACOL0264ポリペプチド(配列番号185)、
図22Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0442ポリペプチド(配列番号29および82~92)、SACOL0718ポリペプチド(配列番号186)、
図23I~Jに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0720ポリペプチド(配列番号11および109~120)、SACOL1353ポリペプチド(配列番号187)、SACOL1416ポリペプチド(配列番号188)、SACOL1611(配列番号189)、
図25Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL1867ポリペプチド(配列番号152~164)、
図21G~Vに記載のSACOL1912ポリペプチド(配列番号43)、SACOL1944(配列番号190)、SACOL2144ポリペプチド(配列番号191)、SACOL2365ポリペプチド(配列番号192)、
図21HのVIに記載のSACOL2385ポリペプチド(配列番号50)またはSACOL2599ポリペプチド(配列番号193)を含んでなるポリペプチドである。特定の実施形態では、上記のポリペプチド(a)は、上記で定義されたポリペプチドの分泌型または細胞外フラグメントである。例えば、ソフトウェアTMpred(商標)(ExPASy)http://www.ch.embnet.org/software/TMPRED_form.html、http://www.psort.org/psortb/index.htmlhttp://www.enzim.hu/hmmtop/html/submit.htmlおよび/またはSignlP4.1(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP)を用いて、膜貫通領域を予測することができる。TMpred(商標)およびSignalIP4.1は、SACOL0720:AA310~508;SACOL0442AA36~203に対する細胞外領域を予測した。Enzimは、細胞外領域がAA41~239であるように膜貫通領域SACOL1867(1~40)を予測し、一方、http://www.psort.org/psortb/index.html
は、SACOL1867が細胞外タンパク質であると予測した。上記の膜貫通領域および/またはシグナルペプチド領域は推定上のものであるため、本発明は、本明細書に示す抗原(例えば、SACOL1867)がシグナルペプチド領域および/または膜貫通領域を有するまたは有さないケースを包含し、対応する細胞外フラグメントを包含する。一実施形態では、上記のポリペプチドは、細菌(例えば、黄色ブドウ球菌)の表面に通常分泌されるまたは発現するポリペプチドである。
【0062】
本発明が包含する本明細書に記載の黄色ブドウ球菌遺伝子およびそれらにコードされる抗原性ポリペプチドに対するGenbank(商標)アクセッション番号を、以下の表Iに示す。
【表1】
【0063】
特定の上記のポリペプチドのアラインメントに由来するコンセンサスを、
図21~25に示す。これらのコンセンサスの特定の実施形態では、コンセンサス配列(例えば、
図21~25におけるコンセンサス)における各Xは、いずれかのアミノ酸と定義され、または、アラインメントに示される1つ以上の相同分子種においてこの位置が存在しない場合は、存在しないと定義される。これらのコンセンサスの特定の実施形態では、コンセンサス配列における各Xは、アラインメントに示される相同分子種の対応する位置でのいずれかのアミノ酸の保存置換もしくは半保存置換を構成するいずれかのアミノ酸と定義され、または、アラインメントに示される1つ以上の相同分子種においてこの位置が存在しない場合は、存在しないと定義される。
図21~25において、保存的置換は記号「:」で表し、半保存的置換は記号「.」で表している。別の実施形態では、各Xは、アラインメントに示される相同分子種の対応する位置でのいずれかのアミノ酸と同じクラスに属するいずれかのアミノ酸を意味し、または、アラインメントに示される1つ以上の相同分子種においてこの位置が存在しない場合は、存在しないことを意味する。別の実施形態では、各Xは、アラインメントに示される相同分子種の対応する位置でのいずれかのアミノ酸を意味し、または、アラインメントに示される1つ以上の相同分子種においてこの位置が存在しない場合は、存在しないことを意味する。特定の実施形態では、Aおよび/またはBは、これらのコンセンサスのいずれか1つまたはそのフラグメントを満たすポリペプチドである。
【0064】
保存的アミノ酸変異は、アミノ酸の付加、欠失または置換を含み得る。保存的アミノ酸置換は、本明細書において、類似した化学特性(例えば、サイズ、電荷または極性)を有する別のアミノ酸残基に対するアミノ酸残基の置換と定義される。そのような保存的アミノ酸置換は、塩基性、中性、疎水性または酸性アミノ酸の、同じ群の別のアミノ酸(例えば、以下の表II参照)に対する置換であり得る。用語「塩基性アミノ酸」とは、通常は生理的pHで正に帯電する、7を超える側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸は、ヒスチジン(HisまたはH)、アルギニン(ArgまたはR)およびリジン(LysまたはK)を含む。用語「中性アミノ酸」(「極性アミノ酸」とも言う)は、生理的pHでは帯電しないが、2個の原子によって共有される電子対がその原子のうちの1つによってより密接に保持されている少なくとも1つの結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸は、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、システイン(CysまたはC)、チロシン(TyrまたはY)、アスパラギン(AsnまたはN)およびグルタミン(GInまたはQ)を含む。用語「疎水性アミノ酸」(「非極性アミノ酸」とも言う)は、Eisenberg(1984)の正規化コンセンサス疎水性スケールに従って、ゼロより大きい疎水性を示すアミノ酸を含むことを意味する。疎水性アミノ酸は、プロリン(ProまたはP)、イソロイシン(HeまたはI)、フェニルアラニン(PheまたはF)、バリン(VaIまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、トリプトファン(TrpまたはW)、メチオニン(MetまたはM)、アラニン(AlaまたはA)およびグリシン(GIyまたはG)を含む。「酸性アミノ酸」は、通常は生理的pHで負に帯電する、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味する。酸性アミノ酸は、グルタミン酸(GIuまたはE)およびアスパラギン酸(AspまたはD)を含む。
【0065】
半保存アミノ酸は、1つの残基を、類似した立体配座を有するが、化学特性を共有しない別の残基と置換する。半保存的置換の例としては、アラニンもしくはロイシンに対するシステインの置換;アスパラギンに対するセリンの置換;トレオニンに対するバリンの置換;またはアラニンに対するプロリンの置換が挙げられるであろう。
【0066】
【0067】
アミノ酸配列間またはヌクレオチド配列間の類似性および同一性は、アラインメント後の配列における各位置を比較することにより、判定することができる。類似性および/または同一性を比較するための配列の最適なアラインメントは、種々のアルゴリズムを用いて、例えば、ClustalW(商標)、SAGA(商標)、UGENE(商標)またはT-coffee(商標)などの当技術分野で周知の多重配列アラインメントプログラム/ソフトウェアを用いて実施し得る。多重配列アラインメントの例は、以下の実施例において説明しており、
図21A~25に示している。
【0068】
遺伝子オペロン
別の実施形態では、Aおよび/またはBは、(b)上記で定義された(a)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチドである。例えば、SACOL0718は、SACOL0720と同じオペロンに由来する遺伝子である。
【0069】
フラグメント
別の実施形態では、Aおよび/またはBは、(c)上記で定義された(a)または(b)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチドである。
【0070】
タンパク質/ポリペプチドの免疫原性フラグメントは、宿主において免疫応答を誘導/惹起できるタンパク質/ポリペプチドの一部と定義される。一実施形態では、免疫原性フラグメントは、タンパク質/ポリペプチドと種類が同じであるが、必ずしも量が同じではない免疫応答を惹起することができる。タンパク質/ポリペプチドの免疫原性フラグメントは、好ましくは、前記タンパク質/ポリペプチドの1つ以上のエピトープを含んでなる。タンパク質/ポリペプチドのエピトープは、特異抗体および/または前記エピトープに特異的に結合できる受容体を有する免疫細胞(例えば、T細胞またはB細胞)を惹起できる、長さが少なくとも約4または5個のアミノ酸の前記タンパク質/ポリペプチドのフラグメントと定義される。2つの異なる種類のエピトープ、すなわち、直線状エピトープおよび立体構造エピトープが存在する。直線状エピトープは、一続きの連続したアミノ酸を含んでなる。立体構造エピトープは、所定の位置で折り畳まれ、適切に折り畳まれたタンパク質において一緒になってエピトープを形成する数個の一続きの連続したアミノ酸によって、通常形成される。本明細書で使用する免疫原性フラグメントは、前記の種類のエピトープのいずれか1つ、または両方を意味する。免疫原性フラグメントが単独で使用される(すなわち、大きなポリペプチド構築物(例えば、他の抗原性フラグメントとの融合物)において融合されない)一実施形態では、タンパク質/ポリペプチドの免疫原性フラグメントは、少なくとも16個のアミノ酸残基を含んでなる。さらなる実施形態では、免疫原性フラグメントは、天然タンパク質/ポリペプチドの少なくとも16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150または160個の連続したアミノ酸を含んでなる。特定の実施形態では、フラグメントは、天然タンパク質/ポリペプチドの少なくとも18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個または50個以上の連続したアミノ酸を有する。少なくとも1つの免疫原性フラグメントが、大きなポリペプチド構築物(例えば、他の抗原性ポリペプチド、フラグメントまたはその変異体との融合物)の一部を形成する一実施形態では、免疫原性フラグメントは、ポリペプチドの少なくとも13個の連続したアミノ酸残基を含んでなる。これらに限定されずに、本発明により包含されるフラグメントは、
図21に示すSACOL029(および(例えば、
図24に示す)SACOL029相同分子種における対応するフラグメント);
図21に示すSACOL0442(および(例えば、
図22に示す)SACOL0442相同分子種における対応するフラグメント);
図21に示すSACOL0720(および(例えば、
図23に示す)SACOL0720相同分子種における対応するフラグメント);ならびに
図21に示すSACOL1867(および(例えば、
図25に示す)SACOL1867相同分子種における対応するフラグメント)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなる。別の実施形態では、本発明により包含されるフラグメントは、本発明の抗原性タンパク質/ポリペプチド(上記のポリペプチド(a))の少なくとも1つのエピトープを含んでなる免疫原性フラグメントを含む。別の実施形態では、本発明により包含されるフラグメントは、
図21~25のいずれか1つに示す抗原性タンパク質/ポリペプチドのうちいずれか1つにおいて示される(網掛け)少なくとも1つのエピトープを含んでなる免疫原性フラグメントを含む。これらに限定されずに、配列中のエピトープは、BCPred(商標)、AAP(商標)、FBCPred(商標)およびABCPred(商標)などのソフトウェアを用いて予測し得る。
【0071】
一実施形態では、上記の免疫原性フラグメントは、少なくとも2つの異なる黄色ブドウ球菌株において保存される(すなわち、同一である)配列を含んでなる。さらなる実施形態では、上記の免疫原性フラグメントは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10個の異なる黄色ブドウ球菌株において保存される(すなわち、同一である)配列を含んでなる。別の実施形態では、上記の黄色ブドウ球菌株は、COL、RF122、NCTC8325、JH1、JH9、Newman、Mu3、Mu50、USA300-FPR3757、N315、MW2またはMSSA476である。一実施形態では、上記の黄色ブドウ球菌株は、ウシ乳房炎に関連する(例えば、RF122)。
【0072】
変異体
別の実施形態では、上記のポリペプチド、または前記ポリペプチドと実質的に同一であるポリペプチドは、少なくとも2つの異なる黄色ブドウ球菌株において発現する。本明細書で使用する実質的に同一とは、アミノ酸配列において少なくとも60%の同一性、実施形態では少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するポリペプチドを意味する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは、それらが比較される他のポリペプチドと、それらのアミノ酸配列において少なくとも60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する。
【0073】
別の実施形態では、Aおよび/またはBは、(d)上記で定義された(a)~(c)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである。他の実施形態では、アミノ酸は、(例えば、それらの全長にわたって)(a)と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。さらなる実施形態では、アミノ酸は、(a)と少なくとも60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。例えば、
図21~25のアラインメントに示される抗原相同分子種は同一ではないが、それらが比較される抗原またはフラグメントと特定の同一性を示す。これらの図に示されるコンセンサスは、そのようなパーセントの同一性を具体化している。
【0074】
別の実施形態では、Aおよび/またはBは、(e)(a)~(c)のいずれか1つの少なくとも13個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチドである。タンパク質/ポリペプチドの免疫原性変異体は、宿主において免疫応答を誘導/惹起できるタンパク質/ポリペプチドの一部と定義される。当業者であれば理解するであろうが、非自然発生的な修飾(例えば、免疫原性変異体)を有し、非修飾剤に特異的な免疫応答を誘導できる(例えば、非修飾剤を認識できる抗体の産生を誘導できる)剤(タンパク質/ポリペプチド、そのフラグメント)も、用語「ワクチン成分」の範囲内である。例えば、本発明のワクチン成分は、それらの活性、安定性および/もしくはバイオアベイラビリティを亢進する、および/またはそれらの毒性を減少させるように修飾され得る。保存的アミノ酸置換は、例えば、酸性側鎖を含んでなるアミノ酸の酸性側鎖を含んでなる別のアミノ酸による置換、嵩高いアミノ酸の別の嵩高いアミノ酸による置換、塩基性側鎖を含んでなるアミノ酸の塩基性側鎖を含んでなる別のアミノ酸による置換などのように、実施し得る。当業者であれば、タンパク質/ポリペプチドの変異体を作製することが十分可能である。これは、例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを通じて、またはペプチド変更プログラムによって実施される。本発明に係る免疫原性変異体は、基本的に、前記タンパク質と種類が同じであるが、必ずしも量が同じではない免疫原特性を有する。本発明のタンパク質/ポリペプチドの免疫原性変異体は、例えば、融合タンパク質および/またはキメラタンパク質を含んでなり得る。例えば、外毒素、エンテロトキシンまたはスーパー抗原と予測される、本明細書で同定されたタンパク質(例えば、SACOL0442)の生物学的機能は、哺乳類の免疫系および抗体産生と潜在的に干渉する、および/または宿主において多少の毒性を示す可能性がある。SACOL0442ポリペプチドを、免疫化中に例えばSACOL0720と組み合わせて用いた場合、そのような干渉は認められなかったが、外毒素の生物活性を減少させるために、ワクチン接種に用いたタンパク質またはポリペプチドを修飾することが有用であり得る。そのような目的で、化学物質(例えば、ホルムアルデヒド)で外毒素を不活性化することが可能である。分子生物学的手法を用いて、免疫原性を失うことなく、外毒素活性に関与する推定上の領域を欠失または変異させることも可能である(Chang et al., 2008)。別の例としては、細菌多糖類莢膜またはバイオフィルムにおいて認められるものなど、核酸(例えば、別々に添加される、または連続した配列における遺伝子または遺伝子の部分)炭水化物とアミノ酸ベースの成分との抱合物または混合物が挙げられる。変異体の他の例としては、本明細書でに記載の抗原、または、精製(例えば、親和性精製)に有用な、またはスペーサーもしくはリンカーとして有用なオリゴペプチドを、N末端もしくはC末端のいずれかで含んでなる、または抗原配列内に挿入した、そのフラグメントが挙げられる。親和性精製に有用なオリゴペプチドの例としては、ポリヒスチジンタグ(例えば、RGSタグを含むまたは含まない6~10個のヒスチジン残基(例えば、HHHHHH、RGSHHHHHHまたはRGSHHHHHGS))が挙げられる。hisタグの後には、エンドペプチダーゼを用いたポリヒスチジンタグの除去を促進するのに好適な1つのアミノ酸配列が続いてもよい。式(I)に列挙される「X」および/または「Z」セグメントは、精製に有用なそのようなオリゴペプチドおよび/または精製に有用なそのようなオリゴペプチドの除去を促進するのに好適な配列を含んでなってもよい。
【0075】
特定の実施形態では、免疫原性フラグメントは、ポリペプチド(a)の少なくとも1つのエピトープを含んでなる。これらに限定されずに、特定の実施形態では、免疫原性フラグメントは、
図21~25に示す配列において(網掛けで)示されるポリペプチド(a)の少なくとも1つのエピトープを含んでなる。他の特定の実施形態では、変異体は、
図21~25に開示した通りである。
【0076】
リンカー
融合タンパク質領域間へのリンカーの挿入は、領域間の距離を広げ、構築物の異なるセグメント(例えば、抗原性フラグメント)間の潜在的な斥力を軽減し、その結果、タンパク質フォールディングを改善および/または回復することにより、生物活性を増大することができる。異なる配列のポリペプチドリンカーを使用することができ、それらは、可動性リンカー、剛直リンカーまたは切断可能リンカーなどの異なる特性を有することで知られる。本発明は、例えば、Chen et. al, Adv Drug Deliv Rev. (2013), 65(10):1357-69に記載のリンカーのいずれか1つを含むそのようないずれかのリンカーの使用を包含する。本明細書における実施例では、使用した特定のリンカー(すなわち、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号60)、ERKYK(配列番号61)またはEAAAKEAAAK(配列番号62))、すなわち、2つの連結された領域間の距離を維持し、フォールディングを改善する小さな親水性アミノ酸に富む可動性リンカー構造を図示している。
【0077】
別の特定の実施形態では、Fcは、CH2領域、CH3領域およびヒンジ領域を含んでなる。別の特定の実施形態では、Fcは、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-3およびIgG-4からなる群から選択される免疫グロブリンの定常領域である。別の特定の実施形態では、Fcは、免疫グロブリンIgG-1の定常領域である。
【0078】
リンカーは、融合物の連続した抗原間に含まれ得る(例えば、2つの抗原を含んでなる融合物に1つのリンカー、3つの抗原を含んでなる融合物に2つのリンカー、4つの抗原を含んでなる融合物に3つのリンカーなど)。大きなタンパク質領域が用いられる融合物においては、リンカーは大きくてもよく、フラグメントの結晶性領域(Fc)を含んでなってもよい。
【0079】
特定の実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列である、または存在しない。特定の実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびリジンからなる群から選択される少なくとも3つの(少なくとも4、5、6、7、8、9または10個の)アミノ酸を含んでなる。特定の実施形態では、リンカーは、(EAAAK)n(配列番号63);(GGGGS)n(配列番号67);または(XPXPXP)n(配列番号69)(Xはいずれかのアミノ酸であり、nは1~5のいずれか1つ、より具体的には、1、2、3、4または5である);EAAAKEAAAK(配列番号62);EAAAKEAAAKEAAAK(配列番号64);GGGGS(配列番号67);GGGGSGGGGS(配列番号68);GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号60);XPXPXP(配列番号69)(Xはいずれかのアミノ酸である);XPXPXPXPXPXP(配列番号70)(Xはいずれかのアミノ酸である);ERKYK(配列番号61);ERKYKERKYK(配列番号65);ERKYKERKYKERKYK(配列番号66)である。さらに特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号60)、ERKYK(配列番号61)またはEAAAKEAAAK(配列番号62)である。
【0080】
構築物のN末端およびC末端
XおよびZは、それぞれ独立して、存在しない、または少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸配列である。これらに限定されずに、それらは、クローニング戦略の結果得られる1つ以上のアミノ酸、構築物(例えば、ポリヒスチジン)の精製を促進するために用いられるアミノ酸、エンドペプチダーゼを用いた精製タグの除去を促進するのに好適なアミノ酸であり得る。融合構築物が3つ以上の抗原ポリペプチドを含んでなる特定の実施形態では、Xおよび/またはZのいずれか1つは、さらなる抗原(抗原C、抗原Dなど)の配列、および任意選択で、少なくとも1つのさらなるリンカーの配列を含んでもよい。Xおよび/またはZが1つ以上のさらなる抗原および任意選択でリンカーを含んでなるそのような実施形態は、例えば、以下の式(II)または(III)、すなわち、融合物が少なくとも3つの抗原を含んでなる場合はX’-C-リンカー1-A-リンカー2-B-Z’(II);または融合物が少なくとも4つの抗原を含んでなる場合はX’-C-リンカー1-A-リンカー2-B-リンカー3-D-Z’(III)として、より具体的に示される。式(II)および(III)の両方において、X’、Z’、リンカー1、リンカー2および該当する場合はリンカー3は、同一または異なり、本明細書で定義される式(I)におけるX、Zおよびリンカーとして独立して定義される。
【0081】
したがって、特定の実施形態では、融合構築物は、2、3、4個以上の抗原ポリペプチド(および該当する場合はさらなるリンカー)を含んでなる。さらに特定の実施形態では、これらに限定されずに、融合構築物は、SACOL0029_SACOL0442;SACOL0029_SACOL0720;SACOL0029_SACOL1867;SACOL0029_SACOL0720_SACOL1867;SACOL0029_SACOL1867_SACOL0442;SACOL0029_SACOL0720_SACOL0442;SACOL0442_SACOL0029_SACOL0720;SACOL0442_SACOL0029_SACOL1867;SACOL0442_SACOL1867_SACOL0720;SACOL0720_SACOL0442_SACOL1867;もしくはSACOL0029_SACOL1867_SACOL0720_SACOL0442、または抗原ポリペプチドがいずれかのその他の順番である前述の構築物のいずれかであり得る。
【0082】
組み合わせ
本発明の構築物は、本発明の組成物(例えば、ワクチン)の単独の免疫原性成分として、または、1つ以上のさらなる融合構築物、免疫原性ポリペプチド、フラグメントもしくはその変異体および/または(融合構築物および/またはポリペプチド、フラグメントもしくはその変異体を発現している、またはしていない)弱毒生細菌(例えば、黄色ブドウ球菌)と組み合わせて使用し得る。
【0083】
1つ以上の融合構築物は、上記で定義されるさらなる融合構築物を含むいずれかの免疫原性融合構築物であり得る(例えば、例14参照)。
【0084】
本発明の組成物に使用するための1つ以上の免疫原性ポリペプチド、フラグメントまたはその変異体は、本明細書で定義される本発明の組成物の免疫原性に寄与するいずれかのポリペプチド、フラグメントまたは変異体であり得る。これらに限定されずに、そのようなポリペプチド、フラグメントまたは変異体は、上記で定義される、
図24に示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0029ポリペプチド(配列番号5および121~131)、SACOL0264ポリペプチド(配列番号185)、
図22Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0442ポリペプチド(配列番号29および82~92)、SACOL0718ポリペプチド(配列番号186)、
図23I~Kに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL0720ポリペプチド(配列番号11および109~120)、SACOL1353ポリペプチド(配列番号187)、SACOL1416ポリペプチド(配列番号188)、SACOL1611(配列番号189)、
図25Dに示す配列のいずれか1つに記載のSACOL1867ポリペプチド(配列番号152~164)、SACOL1912ポリペプチド(配列番号43)、SACOL1944ポリペプチド(配列番号190)、SACOL2144ポリペプチド(配列番号191)、SACOL2365ポリペプチド(配列番号192)、SACOL2385ポリペプチド(配列番号50)またはSACOL2599ポリペプチド(配列番号193)を含んでなるポリペプチド;(b)(a)のポリペプチドをコードする遺伝子と同じオペロンに由来する遺伝子によりコードされるポリペプチド;(c)(a)または(b)の少なくとも13個の連続したアミノ酸の免疫原性フラグメントを含んでなるポリペプチド;(d)(a)~(c)のいずれか1つのポリペプチドの配列と全体が少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;または(e)(a)~(c)のいずれか1つの少なくとも13個の連続したアミノ酸を含んでなる免疫原性変異体を含んでなるポリペプチド、を含む。これらに限定されずに、いずれのそのようなポリペプチド、フラグメントまたは変異体も、例1~14および21~26に例示される組成物(例えば、ワクチン番号1~8)に含まれるものを包含する。
【0085】
弱毒生細菌
本発明の組成物に使用するための弱毒生細菌(例えば、黄色ブドウ球菌)は、本発明の融合構築物および/またはポリペプチド、フラグメントもしくはその変異体と独立していてよく、または、本発明のそのような融合構築物および/またはポリペプチド、フラグメントもしくはその変異体のための容器(すなわち、それらを発現するもの)であってもよい。
【0086】
これらに限定されずに、本明細書に示されるように、本発明の組み合わせの文脈において有用な弱毒生細菌は、変異もしくは欠失した、ビルレンスに寄与する(例えば、Δ720)または宿主における適応度に寄与する(例えば、代謝関連遺伝子)少なくとも1つの遺伝子を有するブドウ球菌(例えば、黄色ブドウ球菌)を含む。これらに限定されずに、そのような遺伝子は、Novick 2003、Novick 2008またはMaresso and Schneewind 2008において同定された遺伝子のいずれか1つであってもよい。
【0087】
さらなる実施形態では、弱毒生細菌は、安定化したSCV表現型を有することによって、さらに弱毒化され得る。本明細書で使用する場合、用語「SCV表現型」とは、緩徐な増殖を引き起こす機能障害性の酸化的代謝、ビルレンス因子の発現の変化、および宿主細胞に内部移行する能力を有する細菌を意味する。本明細書で使用する場合、用語「安定化したSCV表現型」は、SCV表現型を保持する、すなわち、侵襲性の復帰変異体を産生できない(すなわち、通常の増殖表現型への復帰)SCV株を表すのに用いられる。そのような安定化したSCVの黄色ブドウ球菌は、以下の表IIIに記載の遺伝子(例えば、ΔhemB)のいずれか1つを変異または欠失させることにより、産生し得る。限定されずに、本発明は、例15~25に例示する安定化したSCVの黄色ブドウ球菌の使用を包含する。本明細書で使用する変異は、本発明の遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現を防止する、または機能性ポリペプチドの発現を防止する1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含む。好ましい実施形態では、変異は、ポリペプチドの発現を防止する。別の特定の実施形態では、黄色ブドウ球菌の同じ弱毒生株または不活性化株における2つの変異は、欠失または挿入である。ポリペプチドの発現を防止する本発明の遺伝子の1つのいずれかの位置での変異を有する黄色ブドウ球菌の変異株を、本発明に従って弱毒生ワクチンとして使用できることが期待される。弱毒生ワクチン、すなわち、本発明に係る細菌を弱毒生型で含んでなるワクチンは、感染の自然な様式を最もよく模倣している不活性化ワクチンに勝る利点を有する。さらに、そのワクチンの複製能力は、少量の細菌でのワクチン接種を可能とする。そのワクチンの数は、免疫系のトリガーレベルに達するまで、自動的に増加する。その瞬間から、免疫系は惹起され、最終的に細菌を排除する。しかし、弱毒生細菌を使用することの小さな不利点は、本質的に特定レベルのビルレンスが残ることである可能性がある。このことは、ビルレンスレベルが許容可能である限り、すなわち、ワクチンが細菌感染症(例えば、IMI)症状を少なくとも減少させる限り、必ずしも本当の不利点とはならない。もちろん、弱毒生ワクチンの残存するビルレンスが低いほど、ワクチン接種がワクチン接種中/後に体重増加に及ぼす影響は小さくなる。
【表3】
【0088】
核酸
本発明の核酸は、好ましくは、プロモーター、開始コドン、終止コドン、エンハンサーおよびポリアデニル化シグナルなどの遺伝子発現に必要な調節エレメントに操作可能なように結合した上記の1つ以上のタンパク質/ポリペプチド(またはそのフラグメント)をコードするヌクレオチド配列を含んでなる。調節エレメントは、好ましくは、投与される種において操作可能な選択されたものである。特定の実施形態では、核酸は
図21~25に示す通りである。
【0089】
本発明の文脈において、本発明の核酸の哺乳類へのin vivo投与は、目的の1つ以上のタンパク質/ポリペプチド(またはそのフラグメント)が、哺乳類において発現されるようにするものである(例えば、核酸ワクチン、DNAまたはRNAワクチン)。
【0090】
送達システム
本ワクチンの核酸は、「ネイキッド(naked)」DNAであり得、または操作可能なようにベクターに組み込むことができる。核酸は、DNAの直接注入、受容体を介したDNAの取り込み、ウイルスを介したトランスフェクションまたは非ウイルストランスフェクションおよび脂質ベースのトランスフェクション(そのすべてがベクターの使用に関与し得る)などの当技術分野で周知の方法を用いて、in vivoにおいて細胞に送達し得る。直接注入は、ネイキッドDNAをin vivoで細胞内に導入するのに用いられている(例えば、Acsadi et al. (1991) Nature 332:815-818; Wolff et al. (1990) Science 247:1465-1468参照)。DNAをin vivoで細胞内に注入するための送達装置(例えば、「遺伝子銃」)を用い得る。そのような装置は、市販の装置(例えば、BioRad社製)でもよい。ネイキッドDNAは、細胞表面受容体に対するリガンドと共役するポリリジンなどのカチオンに対してDNAを組み合わせることにより、細胞内に導入してもよい(例えば、Wu, G. and Wu, C. H. (1988) J. Biol. Chem. 263: 14621; Wilson et al. (1992) J. Biol. Chem. 267: 963-967;および米国特許第5,166,320号参照)。受容体へのDNAリガンド複合体の結合は、受容体依存性エンドサイトーシスによるDNAの取り込みを促進し得る。細胞内リソソームによる複合体の分解を回避するために、エンドソームを破壊することにより物質を細胞質内に放出するアデノウイルスカプシドに結合するDNAリガンド複合体を用いてもよい(例えば、Curiel et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8850; Cristiano et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2122-2126参照)。
【0091】
有用なデリバリーベクターは、生体分解性マイクロカプセル、免疫刺激複合体(ISCOM)またはリポソーム、および細胞、ウイルスまたは細菌などの遺伝子改変弱毒生ベクターを含む。
【0092】
リポソームベクターは、親油性材料から作られる膜部分および内側の水性部分を有する単層または多層小胞である。水性部分は、本発明において、標的細胞に送達されるポリヌクレオチド材料を含有するために用いられる。材料を形成するリポソームは、四級アンモニウム群などのカチオン群、および約6~約30個の炭素原子を有する飽和または不飽和アルキル群などの1つ以上の親油性群を有することが、一般に好ましい。好適な材料の1つの群は、欧州特許公報第0187702号に記載されており、Wolffらに対する米国特許第6,228,844号においてさらに考察されており、その関連開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。その他の多くの好適なリポソーム形成カチオン性脂質化合物は、文献において記載されている。例えば、L. Stamatatos, et al., Biochemistry 27:3917 3925 (1988);およびH. Eibl, et al., Biophysical Chemistry 10:261 271 (1979)を参照。代わりに、ポリラクチド-コグリコリド生分解性ミクロスフェアなどのミクロスフェアを利用することができる。核酸構築物は、被包されるか、そうでなければ、当技術分野で周知の核酸を組織に送達するためのリポソームまたはミクロスフェアと複合体を形成する。
【0093】
好ましいウイルスベクターは、バクテリオファージ、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルス、ワクシニアウイルス、欠損性レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびトリポックスを含む。外因性DNA構築物を用いたウイルスベクターをトランスフォームする方法も、当技術分野で十分に説明されている。上記のSambrookとRussellを参照。
【0094】
上記で示したように、核酸(例えば、DNAまたはRNA)は、トランスフェクションまたはトランスフォーメーションによって、in vitroもしくはex vivoにおける宿主細胞(例えば、樹状細胞などの免疫細胞)などの宿主、または上記で示したように、弱毒細菌宿主(例えば、弱毒黄色ブドウ球菌、SCVなど。例えば、例25~26参照)に組み込んでよく、目的のポリペプチド(例えば、多重抗原の融合物もしくはそれに対するフラグメントおよび/または単一抗原もしくはそのフラグメント)を発現するトランスフェクションまたはトランスフォームされた細胞または微生物を、対象に投与してもよい。投与後、細胞が、対象において目的のタンパク質またはポリペプチド(または変異体もしくはそのフラグメント)を発現し、それが次に、タンパク質、ポリペプチドまたはそのフラグメントに対する免疫応答の誘導に至る。
【0095】
本発明の特定の構築物または抗原混合物を免疫化および/または送達するための弱毒生細菌の使用は、免疫応答を改善するための興味深いアプローチとなっている(Griffiths and Khader, 2014)。自然感染を模倣する弱毒生細菌は、免疫系を強力に刺激し、血清および粘膜抗体の双方を産生する広範かつ強力な免疫応答を惹起し、疾患から防御するために相乗的に作用するエフェクターおよびメモリーT細胞を惹起する(Detmer and Glenting, 2006; Kollaritsch et al, 2000; Pasetti et al., 2011)。好適な弱毒生細菌ベクターの例としては、黄色ブドウ球菌、ネズミチフス菌、チフス菌、赤痢菌、桿菌、乳酸桿菌、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、大腸菌、コレラ菌、カンピロバクター、または当技術分野で周知のその他のいずれかの好適な細菌ベクターが挙げられる。外因性DNA構築物を用いた生細菌ベクターをトランスフォームする方法は、当技術分野で十分に説明されている。例えば、Joseph Sambrook and David W. Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)を参照。本発明は、弱毒生細菌(例えば、単独の免疫原性成分として、または、各々本発明の別のポリペプチド、フラグメントもしくはその変異体(例えば、SACOL0442、SACOL0720またはフラグメントもしくはその変異体)を発現する他の弱毒生細菌と組み合わせて、本発明の構築物を発現するΔhemBΔ720黄色ブドウ球菌)を含んでなる組成物を包含する。
【0096】
組成物
本明細書に記載のポリペプチド、核酸および送達システム(例えば、前記核酸またはベクターを含んでなる宿主細胞)は、組成物に処方され得る。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容可能な」とは、対象に投与した場合、生理学的に許容でき、急性胃蠕動異常亢進、めまいなどのアレルギー反応または類似した有害反応を通常生じないワクチン成分(例えば、賦形剤、担体、アジュバント)および組成物を意味する。好ましくは、本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容可能な」とは、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認されていること、または米国薬局方もしくは動物およびヒトにおいて使用するためのその他の一般的に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。用語「賦形剤」とは、それを用いて本発明のワクチン成分を投与し得る希釈剤、担体または溶媒を意味する。滅菌水または生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液を、担体として、特に注射液用に用いてもよい。
【0097】
一実施形態では、本発明の剤は、アジュバントまたは免疫賦活剤と組み合わせて投与される。免疫応答を増大させるために成分の有効性を改善し得る好適なアジュバントまたは免疫賦活剤には、油(例えば、MONTANIDE(商標)もしくはEMULSIGEN(商標)-Dなどの鉱油、乳化油)、金属塩(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウム)、インドリシジンなどのカチオン性ペプチド(Bowdish et al., 2005; Hancock, et al., 2000)、雌ウシの免疫細胞により産生されるカチオン性ペプチド(Falla et al., 1996)、天然および人工微生物成分(例えば、細菌性リポ多糖類(bacterial liposaccharides))、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド(MDP)、環状ジグアノシン-5’-一リン酸(c-di-GMP)、表面多糖類、リポ多糖類、グリカン、ペプチドグリカンもしくは微生物DNA(例えば、CpG)などの病原体関連分子パターン(PAMPS)、サポニンなどの植物成分(例えば、Quil-A(商標))、ならびに/または、担体効果を有する1つ以上の材料(例えば、ベントナイト、ラテックス粒子、リポソーム、ISCOM(商標)、DNAおよびポリホスファゼン(PCPP)共重合体)が含まれるが、これらに限定されない。抗原、およびTLRを介してシグナルを伝達し、炎症性サイトカインを刺激するリガンドを含有する合成ナノ粒子(ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)などの生分解性合成重合体から作られたものなど)を用いた免疫化も可能である(Kasturi et al, 2011)。
【0098】
本発明のワクチン成分は、医薬組成物で投与し得る。医薬組成物は、単位剤形で投与し得る。いずれかの適切な投与経路を用いてよく、例えば、非経口、皮下、筋肉内、乳腺内、頭蓋内、眼窩内、眼、脳室内、嚢内、関節内、脊髄内、大槽内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾルまたは経口投与が挙げられる。特定の投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、乳腺内;経口(例えば、吸入);経皮(局所);経粘膜および直腸投与が挙げられる。
【0099】
アジュバントがありまたはなしでそのようなワクチン成分を対象に投与するための好適な製剤または組成物を提供するために、従来の薬務を用いてもよい。医薬組成物および製剤を作製するための当技術分野で周知の方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, (第20版)A. R. Gennaro A R.編, 2000, Lippincott: Philadelphiaにおいて認められる。非経口投与用の製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水もしくは生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ミグリオール、植物由来の油または水素化ナフタレンを含有し得る。化合物の遊離を制御するために、生体適合性および生分解性のラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を用いてもよい。その他の潜在的に有用な本発明の化合物の非経口送達システムは、エチレン酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入システムおよびリポソームを含む。吸入または乳腺内注射用の製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含有してもよく、または、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ミグリオール、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含有する水溶液であってもよく、または、点鼻剤の形態でまたはゲルとして投与するための油性溶液(例えば、パラフィン油)であってもよい。
【0100】
治療製剤は、溶液または懸濁液の形態でもよく、経口投与では、製剤は、錠剤またはカプセル剤の形態でもよく、鼻腔内製剤では、散剤、点鼻剤またはエアロゾルの形態でもよい。非経口、皮内、乳腺内または皮下適用に用いる溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る。注射用水、生理食塩水、固定油(例えば、パラフィン油)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ミグリオールまたはその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;ジチオスレイトールなどの還元剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの緊張度の調節のための剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口製剤は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多人数用バイアルに封入することができる。
【0101】
注射用途に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性)または分散剤、および滅菌注射液または分散剤の即時調製用の滅菌散剤を含む。静脈内または乳腺内投与では、好適な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor(商標)ELTM(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。
【0102】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル剤に封入することができ、または、錠剤または飼料に圧縮することができる。経口ワクチン接種の目的で、有効成分を賦形剤とともに組み込むことができ、錠剤、トローチ剤、カプセル剤の形態で、または飼料中に使用することができる。薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または類似した性質の化合物を含有し得る。微結晶性セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel(商標)もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(sterote)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味剤などの香味剤。
【0103】
吸入による投与では、ワクチン成分は、好適な噴霧剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する加圧容器もしくはディスペンサーからのエアロゾルスプレー、またはネブライザーの形態で送達される。
【0104】
全身投与は、経粘膜または経皮の手段によるものでもあり得る。経粘膜または経皮投与では、透過されるバリアに適切な浸透剤が製剤に用いられる。そのような浸透剤は、当技術分野で一般に既知であり、例えば、経粘膜投与では、洗浄剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻内スプレーまたは坐剤の使用を通じて達成し得る。経皮投与では、活性化合物は、当技術分野で一般に既知の軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、ゲルまたはクリームに処方される。
【0105】
リポソーム懸濁液(特定の細胞型を標的とするリポソームを含む)は、薬学的に許容可能な担体としても使用し得る。
【0106】
医薬組成物は、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、オドラント、浸透圧の変動のための塩、緩衝剤、コーティング剤または抗酸化剤も含有し得る。医薬組成物は、その他の治療的に有用な剤も含有し得る。
【0107】
静脈内、筋肉内、皮下、乳腺内または経口投与は、好ましい使用形態である。本発明の成分が有効量で投与される用量は、特定の有効成分、宿主および対象の要件の性質ならびに適用様式に依存する。
【0108】
微生物の標的
本発明のポリペプチド、核酸および送達システムは、乳腺内感染(IMI)を引き起こすものを含むブドウ球菌感染症に対する抗菌剤として使用し得る。好ましい実施形態では、ブドウ球菌感染症は、黄色ブドウ球菌により引き起こされる。
【0109】
ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、組成物および送達システムを用いた免疫化の方法
本発明の方法、使用、医薬組成物およびキットに包含されるものは、受動および能動免疫化である。
【0110】
受動免疫化とは、レシピエント動物を感染症または将来の感染症から防御するまたはそれを治癒するために、病原体(または本明細書に記載の抗原)に対して先に作製された抗体または抗血清を注射することである。防御は、数週間の間に徐々に消失し、その期間中、ポリペプチド、核酸または送達システム(例えば、上記のもの)による能動免疫化は、持続する防御反応を生じる時間を有するであろう。受動免疫化用の血清は、本明細書に記載のポリペプチド、核酸または送達システムを用いたドナー動物の免疫化によって作製され得る。抗原に対する抗体を含有するこの血清は、直ちに使用される、または適切な条件下で保存されることができる。この血清は、急性感染症(例えば、IMI)と戦うために、または予防薬として使用され得る(Tuchscherr et al., 2008)。受動免疫化における抗体または血清の使用は、現在進行中の感染症の治癒率を増加させるため、または切迫した感染症に対する防御を増大させるために、抗生物質などの他の剤と併用され得る。
【0111】
能動免疫化とは、本明細書に記載のポリペプチド、核酸または送達システムを対象に投与することである。
【0112】
本発明の教示に従って同定された成分は、疾患または状態、より詳しくは微生物感染症に関連した疾患または状態を予防するおよび/またはそれと戦うために免疫応答の増大に使用され得るといった、予防的および/または治療的価値を有する。
【0113】
本明細書で使用する用語「予防する/予防(prevent/preventing/prevention)」または「処置する/処置(treat/treating/treatment)」は、対象において所望の生物学的応答、すなわち、それぞれ予防効果および治療効果を惹起することを意味する。本発明によれば、治療効果は、処置前の対象における重症度、強度および/もしくは持続期間と比較した場合、または感染症もしくはそのいずれかの症状を有する非処置対照対象におけるものと比較した場合の、本発明のポリペプチド、核酸または送達システム(本発明の剤/組成物)の投与後の微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状の重症度、強度および/または持続期間の1つ以上の増大/減少を含んでなる。本発明によれば、予防効果は、微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)、または微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)を経験するリスクにある無症候性の対象におけるそのいずれかの症状、または将来の時点でのその症状の発症の遅延;あるいは、非処置対照対象(すなわち、微生物(例えば、細菌)感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状を経験するリスクにある無症候性の対象)における発症のタイミングまたは重症度、強度および/もしくは持続期間と比較した場合の、本発明の剤/組成物の投与後に生じた微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状の重症度、強度および/または持続期間の増大/減少;ならびに/あるいは、そのような既存の微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状を有する非処置対照対象における微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状の進行と比較した場合の、本発明の剤/組成物の投与後の対象におけるいずれかの既存の微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状の進行の増大/減少を含んでなり得る。本明細書で使用する場合、治療的処置において、本発明の剤/組成物は、微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状の発症後に投与される。本明細書で使用する場合、予防的処置において、本発明の剤/組成物は、微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)もしくはそのいずれかの症状の発症前、またはその発症後であるがその進行前に投与される。
【0114】
本明細書で使用する場合、微生物感染症(例えば、ブドウ球菌感染症)またはそのいずれかの症状の「減少(decrease)」または「減少(reduction)」は、対照の対象(本発明の剤/組成物で処置されていない対象)と比較して、少なくとも10%、一実施形態では少なくとも20%低い、さらなる実施形態では少なくとも30%低い、さらなる実施形態では少なくとも40%低い、さらなる実施形態では少なくとも50%低い、さらなる実施形態では少なくとも60%低い、さらなる実施形態では少なくとも70%低い、さらなる実施形態では少なくとも80%低い、さらなる実施形態では少なくとも90%低い、さらなる実施形態では100%(完全阻害)の症状の減少を意味する。
【0115】
本明細書で使用する場合、ブドウ球菌感染症に関連した「症状」という用語は、疼痛、炎症、発熱、嘔吐、下痢、疲労、筋痛、食欲不振、脱水、低血圧、蜂巣炎、膿痂疹、おできおよび熱傷様皮膚症候群などのいずれかのブドウ球菌感染症の症状を意味する。より詳しくは、ブドウ球菌IMIに関連して、ブドウ球菌IMIの症状は、例えば、乳の視覚的異常(例えば、水様の外観、薄片、塊、悪臭、血液の存在など)、乳房の発赤、乳房の腫脹、乳房の圧痛、直腸温の上昇(39.0℃超)、食欲不振、第一胃の運動性減少および疲労を意味する。乳中体細胞数(SCC)の増加は、別のブドウ球菌IMIである。乳中体細胞は、白血球または好中球などの白血球細胞に加え、上皮細胞を含む。200,000/mL超のSCCは、ブドウ球菌IMI症状を示し得る、またはブドウ球菌IMIであることを示すものであると、一般的に合意されている。
【0116】
用量
免疫応答を惹起するワクチン成分の毒性または有効性は、細胞培養または実験動物における標準手順によって判定され得る。毒性作用と免疫刺激作用との間の用量比を測定することができる。大きな比を示す成分が好まれる。中毒性副作用を示す成分を使用してもよいが、細胞への潜在的な損傷を最小限にし、それにより副作用を減少させるために、送達システムの設計には注意を払う必要がある。
【0117】
細胞培養アッセイおよび実験動物試験から得られたデータは、大型動物およびヒトにおいて使用するための用量の範囲の処方に用いられ得る。そのような成分の用量は、好ましくは、毒性をほとんど示さない、または全く示さない有効性を含む投与濃度の範囲内である。用量は、用いられる剤形および利用される投与経路に依存して、この範囲内を変動し得る。
【0118】
いずれの好適な量の医薬組成物も、対象に投与してよい。用量は、多くの因子に依存する。典型的には、単一用量内に含有される有効成分の量は、重大な毒性を誘導することなく、IMIを効果的に予防または処置する量となる。当業者は、対象における免疫応答を効果的に増大させるのに必要な用量に影響を及ぼし得る特定の因子を認識するであろう。さらに、本発明の抗原(例えば、融合構築物)の治療的有効量は、一連の用量を必要とし得る。一般に、1回の投与あたり、融合構築物を含む抗原約0.01mg~500mgの量が検討される。特定の実施形態では、1回の投与あたり、融合構築物を含む抗原約0.1mg~1mgの量が検討される。一般に、ワクチンの1、2または3回の投与が、免疫の最適な発症に好都合であり得る。2回の投与間の時間は、3または4週と短くてもよいが、プライミング投与(初回投与)とブースター投与(2回目の投与)との間を、ブースター投与で免疫系を刺激する5、6、7、8、9または10週間空けることが好まれ得る。その後のブースター投与(リコール投与)も、持続性の免疫をもたらすのに最適となり得る。このリコールは、例えば、半年(6ヵ月)毎、1年毎、2年毎、3年毎または5年毎に生じ得る。
【0119】
「試料」または「生体試料」とは、生体から単離されたいずれかの固体または液体試料を意味する。特定の実施形態では、それは、乳、生検材料(例えば、固体組織試料)、血液(例えば、血漿、血清または全血)、唾液、滑液、尿、羊水および脳脊髄液などの哺乳類から単離されたいずれかの固体(例えば、組織試料)または液体試料を意味する。そのような試料は、例えば、感染病原体の発現レベルの分析前に、新鮮であり得、固定(例えば、ホルマリン、アルコールもしくはアセトン固定)、パラフィン包埋または凍結され得る。
【0120】
患者
本明細書で使用する場合、用語「対象」または「患者」は、処置、観察または実験の対象である動物、好ましくは、ヒト、雌ウシ(例えば、若い雌ウシ、多胎、初産、仔ウシ)、ヤギ、ヒツジ、雌ヒツジ、ロバ、ウマ、ブタ、ニワトリ、ネコ、イヌなどであるがこれらに限定されない哺乳類を意味する。特定の実施形態では、それは雌ウシ(例えば、ブドウ球菌(例えば、IMI)感染症を経験するリスクにある)である。
【0121】
本明細書で使用する場合、用語「将来、ブドウ球菌感染症(例えば、ブドウ球菌感染症(例えば、IMI))またはそのいずれかの症状を経験するリスクにある対象」とは、乳または肉の生産に使用される哺乳類(例えば、雌ウシ(例えば、若い雌ウシ、多胎、初産、仔ウシ)、ヤギ、ヒツジ)を意味する。
【0122】
一実施形態では、上記の哺乳類は雌ウシである。
【0123】
検出方法
特定のタンパク質/ポリペプチドの量/レベルを測定する方法の例としては、ウエスタンブロット、免疫ブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学的分析、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡検査、フローサイトメトリー、およびDNA結合、リガンド結合、他のタンパク質パートナーとの相互作用または酵素活性を含むがこれらに限定されないタンパク質の特性に基づいたアッセイが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
一実施形態では、本発明の方法内でのポリペプチド/タンパク質の量は、ポリペプチド/タンパク質に対して特異的である抗体を用いて検出される。本明細書で使用する「抗体」という用語は、所望の生物活性または特異性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体フラグメントを包含する。「抗体フラグメント」は、全長抗体の部分、一般に、その抗原結合領域または可変領域を含んでなる。抗体と標的ポリペプチドとの間の相互作用は、放射測定、比色分析または蛍光定量的な手段によって検出される。抗原抗体複合体の検出は、例えば、酵素、フルオロフォアまたは発色団などの検出可能なタグに共役する二次抗体の添加によって、達成され得る。
【0125】
抗体を作製する方法は、当技術分野で周知である。ポリクローナル抗体は、好適な対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたはその他の哺乳類)を目的のポリペプチド/タンパク質またはそのフラグメントを免疫原として免疫化することにより、調製することができる。ポリペプチド/タンパク質の「フラグメント」、「部分」または「セグメント」とは、上記のポリペプチドの少なくとも約5、7、10、14、15、20、21個以上のアミノ酸の一続きのアミノ酸残基である。免疫化された対象における抗体価は、固定化エキソソームマーカーポリペプチドまたはそのフラグメントを用いた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によるものなど、標準的な方法によって経時的に測定することができる。免疫化後の適切な時点、例えば、抗体価が最高である場合に、抗体産生細胞は、動物、通常はマウスから得ることができ、Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495-497によって最初に記載されたハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al. (1983) Immunol. Today 4: 72)、EBVハイブリドーマ法(Cole et al. (1985) in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, ed. Reisfeld and Sell (Alan R. Liss, Inc., New York, NY), pp. 77-96)またはトリオーマ法などの標準的な方法によって、モノクローナル抗体の調製に使用することができる。ハイブリドーマを産生するための方法は、周知である(一般にColigan et al., eds. (1994) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY参照)。
【0126】
あるいは、モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製するために、ポリペプチドまたはそのフラグメントで組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングして、それにより、そのポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することにより、モノクローナル抗体を同定および単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングするためのキットは、市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System(商標)、カタログ番号27-9400-01およびStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。
【0127】
さらに、本明細書に記載の1つ以上のポリペプチド/タンパク質に対する抗体は、商業的供給源から得られ得る。
【0128】
ポリペプチド/タンパク質に特異的な固定化抗体の使用も、本発明によって企図されており、当業者に周知である。抗体は、磁性またはクロマトグラフィーマトリックス粒子などの種々の固相担体、アッセイ場所(マイクロタイターウェルなど)の表面、固体支持材料(プラスチック、ナイロン、紙など)の一部などに固定化され得る。アッセイストリップは、固相担体上のアレイにおける抗体または複数の抗体をコーティングすることにより、調製され得る。このストリップは、次に、試験試料に浸漬された後、洗浄および検出工程を通じて迅速に処理され、有色スポットなどの測定可能シグナルを生成し得る。
【0129】
複数(2つ以上)のポリペプチド/タンパク質の分析は、別々に、または1つの試験試料と同時に実施してもよい。複数の試料を効率的に処理するために、いくつかのポリペプチド/タンパク質をまとめて1つの試験に供してもよい。
【0130】
ポリペプチド/タンパク質の分析は、種々の物理フォーマットにおいても実施することができる。例えば、多数の試験試料の処理を促進するために、マイクロタイタープレートまたは自動化が用いられ得る。あるいは、時宜を得た迅速な処置および診断を促進するために、単一の試料フォーマットが開発され得る。特に、有用な物理フォーマットは、複数の異なる分析物を検出するための複数の別々のアドレス指定可能な場所を有する表面を含んでなる。そのようなフォーマットは、タンパク質マイクロアレイ、すなわち「タンパク質チップ」(例えば、Ng and Ilag, J. Cell Mol. Med. 6: 329-340, 2002参照)およびキャピラリーデバイスを含む。
【0131】
一実施形態では、上記の発現レベルは、前記1つ以上の遺伝子から転写されたmRNAの発現レベルを測定することにより決定される。
【0132】
核酸(mRNA)レベルを決定する方法は、当技術分野で既知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、SAGE、定量的PCR(q-PCR)、サザンブロット、ノーザンブロット、配列解析、マイクロアレイ解析、レポーター遺伝子の検出、またはその他のDNA/RNAハイブリダイゼーションプラットフォームを含む。RNA発現に関して、好ましい方法は、細胞mRNAの抽出、および本発明のタンパク質/ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸のすべてまたは一部をコードする転写物をハイブリダイズする標識プローブを用いたノーザンブロッティング;特異的プライマー、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的PCR(q-PCR)および逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いた、本発明のタンパク質/ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸から発現するmRNAの増幅に続いて、いずれかの種々の手段による産物の定量的検出;生体試料から全RNAを抽出した後、これを標識して、いずれかの種々の表面に整列した本発明のタンパク質/ポリペプチドをコードする核酸のすべてまたは一部をコードするcDNAまたはオリゴヌクレオチドを探索するために使用する方法を含むが、これらに限定されない。
【0133】
キット
本発明はまた、本発明の成分を含んでなるキットも包含する。例えば、キットは、1つ以上の成分を含んでなり得る。成分は、好適な投与用の容器およびデバイスに包装され得る。キットは、キットの使用に関する使用説明書をさらに含んでなる。
【0134】
本発明はまた、1つ以上の構築物、ポリペプチド、核酸、ベクター、宿主、本発明の組成物、またはそのうち少なくとも2つの組み合わせを、ブドウ球菌IMIの処置および/または予防のためにそれを必要とする対象に投与するのに有用な試薬を含んでなるキットまたはパッケージも提供する。そのようなキットは、例えば、方法を実施するのに有用な、ブドウ球菌IMIの予防および/または処置に関する使用説明書、容器、試薬をさらに含んでなり得る。キットは、必要な場合、試験におけるバックグラウンド干渉を低減させるための剤、シグナルを増大させるための剤、目的とする臨床成績の予測をもたらすためのマーカー値を併合および内挿するためのソフトウェアおよびアルゴリズム、試験を実施するための装置、較正曲線およびチャート、標準曲線およびチャートなどをさらに含み得る。
【実施例】
【0135】
発明を実施するための形態
本発明を以下の非限定的な例によりさらに詳細に説明する。
【0136】
例1:SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720、SACOL1867、SACOL1912およびSACOL2385を含むワクチン(ワクチン番号1)に関する材料と方法
抗原の産生。黄色ブドウ球菌ウシ乳腺内感染中に高度に発現する6個の抗原を、最初のウシワクチン(ワクチン番号1)に組み入れるために選択した。これらの抗原は、SACOL0029(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_184940.1)(配列番号5)、SACOL0442(YP_185332.1)(配列番号29)、SACOL0720(YP_185601.1)(配列番号11)、SACOL1867(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_186695.1)(配列番号38)、SACOL1912(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_186737.1)(配列番号43)およびSACOL2385(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_187189.1)(配列番号50)である。SACOL0029、SACOL1867、SACOL1912およびSACOL2385のhisタグ組換えタンパク質は、GenScript,Inc.(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)が設計および作製した。SACOL0442およびSACOL0720のhisタグ組換えタンパク質は、製造業者の推奨に従って、Qiagen Inc.(ミシサガ、オンタリオ州、カナダ)からのQIA発現法(pQE30プラスミド)を用いて設計および作製した。抗原のhisタグ配列については、
図21I~VIを参照。例2~5および
図1~4は、このワクチン番号1に関する。
【0137】
乳牛の免疫化。19頭の泌乳中期の健康な多胎ホルスタイン雌ウシを、Dairy and Swine Research and Development Centre of Agriculture and Agri-Food Canada(シャーブルック、ケベック州)にあるレベルIIのバイオセイフティー畜舎で飼育した。雌ウシをランダムに2群に分けた。1つの群(雌ウシ10頭)には生理食塩水を投与し(プラセボ群)、もう一方の群(雌ウシ9頭)にはワクチン番号1を投与した(ワクチン接種群)。ワクチンは、Emulsigen(商標)-D(MVP Technologies、オマハ、ネブラスカ州)、CpG ODN2007(TCGTCGTTGTCGTTTTGTCGTT(配列番号194)、病原体関連分子パターン(PAMP)(VIDO、サスカトゥーン、サスカチュワン州)および雌ウシの免疫応答を誘導するために用いたカチオン性ペプチドインドリシジン(ILPWKWPWWPWRR(配列番号195)(Chemprep Inc.、マイアミ、フロリダ州)とともに、6個の抗原(SACOL0029、SACOL0720、SACOL1867、SACOL1912およびSACOL2385)各300μgから構成された。2回の免疫化を、10週間隔で頸部の皮下に実施した。有害な副作用は認められなかった。尾静脈からの血液および乳試料を初回免疫化の前に採取し(免疫前血清)、その後、総IgG、IgG1およびIgG2の検出のために2週毎に採取した。頸静脈からの大量の血液(150mL)を初回免疫化の前に採取し、末梢血単核球(PBMC)の分離および細胞性免疫応答の分析のために、初回免疫化の14週後(すなわち、2回目の免疫化の4週後)に採取した。
【0138】
ELISAによる総IgG、IgG1およびIgG2の検出。血清および乳中の各抗原に対する総IgG、IgG1およびIgG2の検出を、多少の変更を加えて以前の記述通りに実施した(Ster et al., Vet. Immunol. Immunopathol. (2010), 136: 311-318)。Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロチェスター、ニューヨーク州)を試験抗原(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液に希釈した5μg/mL、Sigma Aldrich、オークビル、オンタリオ州)で被覆し、37℃で一晩インキュベートした。次に、プレートを0.5%ゼラチンを含有するPBS(BD、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)で37℃で1時間飽和させた。0.5%ゼラチンおよび0.1%Tween(商標)20を含有するPBS中の血清の2倍段階希釈液100μLをプレートにロードし、37℃で1時間インキュベートした。プレートを0.1%Tween(商標)20を含有するPBSで3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合二次抗体100μLをプレートに添加した。使用した二次抗体は、0.5%ゼラチンおよび0.1%Tween(商標)20を含有するPBSにそれぞれ1/50,000、1/20,000および1/20,000に希釈したヤギ抗ウシIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、ウェスト・グローブ、ペンシルベニア州)、ヒツジ抗ウシIgG1(AbD Serotec、ローリー、ノースカロライナ州)またはヒツジ抗ウシIgG2(AbD Serotec)であった。37℃で1時間インキュベーションした後に3回洗浄した後、製造業者の推奨に従って、3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン(TMB)試薬(KPL Inc.、ゲイザースバーグ、メリーランド州)を用いてペルオキシダーゼ活性を検出した。
【0139】
乳中の総IgG、IgG1およびIgG2の検出は、わずかな変更を加えて同じ手順で実施した。乳試料を0.5%ゼラチンを含有するPBSに希釈した。ヒツジ抗ウシIgG2は、0.5%ゼラチンおよび0.1%Tween(商標)20を含有するPBSに1/10,000希釈した。
【0140】
細胞性免疫応答の評価。以前の記述通りに(Loiselle et al., J. Dairy. Sci. (2009), 92:1900-1912)、PBMCを頸静脈血から分離し、カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル(carboxyfluoroscein diacetate, succinimidyl ester)(CFDA-SE;Molecular Probes Inc.、ユージーン、オレゴン州)で標識した。CFDA-SE標識手順の最後に、PBMCを5%FBSおよび1倍抗生物質/抗真菌剤を含有するRPMI培地(A5955、Sigma Chemical Aldrich)に懸濁した。PBMC(ウェルあたり5×106個)を、最終濃度1μg/mLのマイトジェンコンカナバリンA(ConA;陽性対照;Sigma Aldrich)または各抗原(ウェルあたり5μg)で刺激し、37℃で7日間インキュベートした。陰性対照として、PBMCをいずれのマイトジェンも用いずにインキュベートした。刺激は2回実施した(Ster et al., 2010)。
【0141】
CD4+およびCD8+細胞の増殖は、異なるマイトジェンを用いたインキュベーション後に実施した。細胞は、300×gで5分間遠心分離し、0.5%BSAを含有するPBSに懸濁した。次に、Alexa Fluor(商標)647と共役したマウス抗ウシCD8(1/20希釈、AbD serotec)およびrPEと共役したマウス抗ウシCD4(1/20希釈、AbD serotec)を添加した。氷上で20分間インキュベーションした後、細胞を0.5%BSAを含有するPBSで3回洗浄した。次に、細胞を0.5%ホルムアルデヒドでPBSに懸濁した。増殖集団の割合を、BD FACS Divaソフトウェアを用いたBD FACS Canto IIフローサイトメーターでのフローサイトメトリーにより決定した。
【0142】
乳牛におけるIMIにおける実験的黄色ブドウ球菌。実験的IMIにおいて使用する前に、細菌培養液の吸光度(A600nm)とCFUとの間の関係性を決定した。負荷日に、ミュラーヒントン液体培地(MHB;BD)における黄色ブドウ球菌の一晩培養液の量を新鮮MHB200mLに移し、0.1のA600nmを得、その後、A600nmが増殖の対数期における108CFU/mLに相当する値に達するまで、35℃で増殖させた。この実験感染に使用した株(CLJ08-3)は、共同発明者の研究室において以前に特徴づけられていた(Allard et al., Vet. Microbiol. (2013) 162: 761- 770)。乳腺内注入のために、細菌を滅菌PBS(Sigma Aldrich)にルーチン的に希釈し、3mL中約50CFUを得た。この実験において、接種材料をTSAに播種し、3mL中63cfuを含有することが認められた。
【0143】
体細胞数(SCC)の測定および無菌乳区乳試料の細菌分析を実験的IMI前に実施し、すべての雌ウシがIMIを有さないことを確認した。細菌を用いた乳区の実験的注入を、わずかな変更を加えて以前に記述された手順(Petitclerc et al., J. Dairy. Sci. (2007), 90: 2778-2787)に従って、夕方の搾乳後の各雌ウシの4乳区のうち3乳区(ランダムに選択)において実施した。簡潔に述べると、接種前に、70%エタノールに浸漬したガーゼで乳首をごしごし洗った。細菌懸濁液(63CFU含有)3mLを4乳区のうち3乳区へ乳腺内注入する前に、乳首を風乾させた。注入直後、全乳区を徹底的にマッサージし、乳首をヨードフォア(iodophore)系乳首消毒剤に浸漬した。使い捨て手袋を手順全体で着用し、次の動物に進む前に消毒した。黄色ブドウ球菌を注入した全乳区が感染となり、全雌ウシが、黄色ブドウ球菌の注入後最初の数日中のある時点で乳腺炎の臨床徴候(炎症および/または乳の外観不良)を示した。
【0144】
実験感染後の黄色ブドウ球菌の生菌数の評価。無菌乳試料を、実験感染後の最初の3週間中は週3回、その後、残りの2週間は週2回、朝の搾乳前に採取した。初乳を廃棄し、乳首を70%エタノールで消毒した後、個々の各乳区に対して、乳試料10mLを50mL滅菌バイアルに無菌的に採取した。乳試料を段階希釈し、CFUの測定および黄色ブドウ球菌の同定のために、各希釈液100μLをトリプティックソイ寒天(Becton Dickinson)およびマンニトール食塩寒天プレート(Becton Dickinson)の双方に播種した。次に、プレートを35℃で24時間インキュベートした後、コロニーを数えた。30~300コロニーを示した希釈液を用いて、細菌濃度を算出した。各希釈液は、2回播種した。
【0145】
体細胞数の評価。無菌乳試料と同じ頻度で、個々の乳区搾乳ユニットを用いて朝の搾乳時に乳を採取し、乳区の乳産生量の決定のために計量した。民間研究所(Valacta Inc.、サン=タンヌ=ド=ベルビュー、ケベック州、カナダ)によって、SCCの測定のために、非無菌50mL試料も各乳区搾乳ユニットから採取した。搾乳ユニットは、各雌ウシに使用する度に、徹底的に洗浄し、ヨード系殺菌洗浄剤(K.O. Dyne(商標)、GEA Farm Technologies、ウェストモアランド、ニューヨーク州)で消毒した。乳に接触するその他のすべての材料は、70%エタノールで消毒した。
【0146】
統計解析。実験感染データの統計解析を、SASの混合手順(SAS Institute Inc.、ケーリー、ノースカロライナ州)を用いて、反復測定として実施した。SCCおよびCFUの解析では、解析前にデータをlog10変換した。抗体価、ならびにCFUとSCCとの間の相関の統計解析は、GraphPad Prism(商標)v6.05を用いて実施した。
【0147】
倫理に関する記載。すべての動物実験は、カナダ農務省の地方施設動物管理委員会により承認され、カナダ動物管理協会のガイドラインに従って実施した。
【0148】
例2:ワクチン接種後の血清中総IgG1力価-ワクチン番号1
SACOL0029(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_184940.1)(配列番号5)、SACOL0442(配列番号29)、SACOL0720(配列番号11)、SACOL1867(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_186695.1)(配列番号38)、SACOL1912(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_186737.1)(配列番号43)およびSACOL2385(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_187189.1)(配列番号50)に対する組換えhisタグ抗原を、例1(抗原の産生および乳牛の免疫化)に記載の通りに調製し、健康な雌ウシに投与した。9頭の乳牛がワクチンを投与され、10頭の雌ウシが生理食塩水(プラセボ)を投与された。例1(ELISAによる総IgG、IgG1およびIgG2の検出)に記載の通りに、血清中総IgG、IgG1およびIgG2力価を検出した。
【0149】
予想通りに、また、
図1B~Cに示すように、免疫化は、プラセボ群と比較して、ワクチン接種群における抗原特異的血清中IgG1およびIgG2の産生増加を誘導した。興味深いことに、IgG2/IgG1比はSACOL0442に対しては1であり(
図1D参照)、これは、この抗原に対するバランスの取れたTh1/Th2免疫応答の指標である。抗原SACOL0029、SACOL0720、SACOL1912およびSACOL2385については、IgG2/IgG1比は、SACOL0442の比よりも有意に低く、これらの抗原は、Th2経路を通じたIgG1抗体応答を主に誘導したことが示された。
【0150】
例3:ワクチン接種後の血中CD4+およびCD8+細胞の抗原依存的増殖-ワクチン番号1
ワクチン接種雌ウシ(9)およびプラセボ雌ウシ(10)に由来する血中CD4+およびCD8+細胞の抗原依存的増殖を、各抗原に対する2回目の免疫化の4週後(実験感染の直前)に、例1(細胞性免疫応答の評価)に記載の通りに評価した。CD4+細胞の結果を
図2に示す。各記号は、陽性対照(ConA)または各抗原によるインキュベーションの1週後における、各雌ウシに対する増殖しているCD4+細胞の割合を表す。白丸(○)は、ワクチン接種雌ウシのデータを表し、黒四角(黒四角)は、プラセボ雌ウシのデータを表す。水平線は中央値を表す。破線は、ワクチン接種雌ウシに対する中央値を表し、一方、実線は、プラセボ雌ウシに対する中央値を表す。
【0151】
記号*は、抗原SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL1912に関するワクチン接種群とプラセボ群との間の統計学的差を示す(*,P<0.05)。
【0152】
さらに、CD8+細胞の増殖は、全抗原に関してワクチン接種雌ウシとプラセボ雌ウシとで類似していたが、抗原SACOL0720は例外であり、CD8+細胞の高い増殖がワクチン接種雌ウシに認められた(データ未掲載)。CD8+細胞の誘導は、感染症の消散にとって重要であるようにも思われた(Riollet et al., 2001; Burton and Erskine, 2003)。ワクチンは、細胞性(CD8+)免疫応答および液性(CD4+)免疫応答の双方を刺激することができた。異なる抗原を有するワクチン番号1は、バランスの取れた免疫応答をもたらす。
【0153】
例4:体細胞数(SCC)の急速な変化に従うことにより評価したワクチンの防御効果-ワクチン番号1
例1(乳牛における実験的黄色ブドウ球菌IMI、実験感染後の黄色ブドウ球菌の生菌数の評価、体細胞数の評価、および統計解析)に記載の通りに、乳牛における実験的黄色ブドウ球菌IMI感染を実施し、評価した。2回目の免疫化の4週後および4日後に、黄色ブドウ球菌の63CFUを、夕方の搾乳時に、ワクチン接種雌ウシ(9)およびプラセボ雌ウシ(10)の4乳区のうち3乳区に注入した(1日目、
図3中の矢印)。朝の搾乳時に無菌乳試料を採取し、SCCをValacta社(サン=タンヌ=ド=ベルビュー、ケベック州)が測定した。結果を
図3に示す。白丸(○)および破線は、ワクチン接種雌ウシのデータを表し、一方、黒四角(黒四角)および実線は、プラセボ雌ウシのデータを表す。各白丸は、ワクチン接種雌ウシの全感染乳区(27)に対するSCCの平均を表し、各四角は、プラセボ雌ウシの全感染乳区(30乳区)に対するSCCの平均を表す。
【0154】
負荷期にわたり、乳中SCCは、プラセボ雌ウシよりもワクチン接種雌ウシにおいて有意に低いことが認められ(***;P<0.001)、ワクチン接種雌ウシにおいて炎症が少なく、感染症のコントロールが良好であることが示された。
【0155】
例5:特異抗原に対する血清中または乳中IgG力価に関するSCCまたは黄色ブドウ球菌の生菌数(CFU)の間の相関-ワクチン番号1
図4A~Bに示すように、SCCは、負荷期の黄色ブドウ球菌CFUと正の相関を示し(
図4A、r=0.82、P<0.0001)、感染症前に測定したSACOL0442に対する血清中IgG1力価と負の相関を示した(
図4B、r=-0.49、P<0.05)。よって、ワクチン接種は、負荷により誘導された炎症のこの基準を減少させた。10日目に採取した試料を用いて、同様の分析を実施した。先に得られたものと同じ相関が認められたが、この特定の時点では、SCCおよび黄色ブドウ球菌CFUは、SACOL0029に対する乳中IgG2力価とも相関していた(
図4C、それぞれr=-0.48、P<0.05およびr=-0.58、P<0.05)。これらの結果は、2つ以上の抗原が感染症に対する免疫応答に関与していることを示している。
【0156】
例6:SACOL0442、SACOL0720、およびSACOL1867とSACOL0029との融合物を含むワクチンに関する材料と方法-ワクチン番号2
抗原の産生。黄色ブドウ球菌ウシ乳腺内感染中に高度に発現する4つの抗原を、ワクチン番号2に含めるために選択した。抗原は、SACOL0029(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_184940.1)(配列番号5)、SACOL1867(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_186695.1)(配列番号38)、SACOL0442(配列番号29)およびSACOL0720(配列番号11)によりコードされるポリペプチドである。SACOL0029およびSACOL1867抗原は、融合物の形態で含めた。SACOL0720およびSACOL0029-1867のhisタグ組換えタンパク質は、GenScript,Inc.(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)が設計および作製した。SACOL0442のhisタグ組換えタンパク質は、製造業者の推奨に従って、Qiagen Inc.(ミシサガ、オンタリオ州、カナダ)からのQIA発現法(pQE30プラスミド)を用いて設計および作製した(SACOL0720、SACOL0442およびSACOL0029-1867のhisタグ配列については、
図21D~EおよびI、ならびに項目II、IIIおよびVIIを参照)。表面タンパク質ClfA(配列番号184)も、黄色ブドウ球菌ATCC25904に由来するclfA遺伝子のクローニングによって、QIA発現ベクターを用いて追加で作製した。後者の組換えタンパク質はワクチン組成物の一部ではなかったが、ClfAなどのその他の黄色ブドウ球菌タンパク質に対する血清のIgG力価を測定するためのELISAアッセイに用いた。
【0157】
ワクチンは、Emulsigen(商標)-D(MVP Technologies、オマハ、ネブラスカ州)、CpG ODN2007(すなわち、TCGTCGTTGTCGTTTTGTCGTT(配列番号194)(IDT、コーラルビル、アイオワ州))およびインドリシジン(ILPWKWPWWPWRR(配列番号195、GenScript、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、Chemprep Inc.、マイアミ、フロリダ州)(ワクチン番号2)とともに、3つの抗原(例1で定義されるSACOL0442およびSACOL0720、ならびに融合物SACOL0029-1867)各300μgから構成された。
【0158】
乳牛の免疫化。11頭の泌乳中期の健康な多胎ホルスタイン雌ウシを、Dairy and Swine Research and Development Centre of Agriculture and Agri-Food Canada(シャーブルック、ケベック州)にあるレベルIIのバイオセイフティー畜舎で飼育した。雌ウシをランダムに2群に分けた。雌ウシに対してワクチン番号2を投与した(ワクチン接種群)。2回の免疫化を、10週間隔で頸部の皮下に実施した。有害な副作用は認められなかった。尾静脈からの血液および乳試料を初回免疫化の前に採取し(免疫前血清)、その後、総IgGの検出のために毎週採取した。
【0159】
ELISAによる総IgGの検出。血清中の各抗原に対する総IgGの検出を、多少の変更を加えて以前の記述通りに実施した(Ster et al., Vet. Immunol. Immunopathol. (2010), 136: 311-318)。Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロチェスター、ニューヨーク州)を試験抗原(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液に希釈した5μg/mL、Sigma Aldrich、オークビル、オンタリオ州)で被覆し、37℃で一晩インキュベートした。次に、プレートを、0.5%ゼラチンを含有するPBS(BD、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)で37℃で1時間飽和させた。0.5%ゼラチンおよび0.1%Tween(商標)20を含有するPBS中の血清の2倍段階希釈液100μLをプレートにロードし、37℃で1時間インキュベートした。プレートを0.1%Tween(商標)20を含有するPBSで3回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合二次抗体100μLをプレートに添加した。使用した二次抗体は、0.5%ゼラチンおよび0.1%Tween(商標)20を含有するPBSに1/1000,000に希釈したヤギ抗ウシIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、ウェスト・グローブ、ペンシルベニア州)であった。37℃で1時間インキュベーションした後に3回洗浄した後、製造業者の推奨に従って、3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン(TMB)試薬(KPL Inc.、ゲイザースバーグ、メリーランド州)を用いてペルオキシダーゼ活性を検出した。
【0160】
例7:抗原の融合物は高抗体価を誘導する-ワクチン番号2
図5は、(融合抗原SACOL0029およびSACOL1867(
図5における標識SACOL0029-1867)を含む)ワクチンの各抗原に関する、ワクチン接種雌ウシに対する血清中総IgG力価を示す。各白丸は、各雌ウシに対する2回目の免疫化の4週後(実験感染直前)における力価を表し、一方、各黒菱形は、免疫前力価を表す。水平線は中央値を表す。実線は、免疫前血清に対する中央値を表し、点線は、免疫化の4週後に採取した試料に対する中央値を表す。ワクチン接種雌ウシに対する力価は、免疫前血清の力価より高い(**,P<0.01;***,試験した他の抗原に対するP<0.001)。
【0161】
よって、
図5は、融合ペプチドを含む3つの別々の抗原から構成されるワクチンは、雌ウシにおいて強力な免疫応答を誘導することを示している。さらに、
図5は、驚くべきことに、融合抗原SACOL0029およびSACOL1867(融合物SACOL0029-SACOL1867)は、各抗原単独により上昇した値よりも高く抗体価を上昇させたことを示し(
図1Aと
図5とを比較)、そのような融合抗原は、ワクチンに対してさらなる利点をもたらすことを示している。
【0162】
より詳しくは、ワクチンにおいて個々に投与した場合、SACOL0029およびSACOL1867に対する免疫雌ウシの力価は、それぞれ3200および51200に達し(
図1A)、一方、これらの抗原を融合物として投与した場合、免疫雌ウシの力価は、それぞれ12800および409600に達し(
図5)、融合物は免疫応答において予想外の相乗作用を生むことが示された。
【0163】
例8:SACOL0029、SACOL1867、およびSACOL1867とSACOL0029との融合物を含んでなるワクチンに関する材料と方法-ワクチン番号3
抗原の産生。黄色ブドウ球菌ウシ乳腺内感染中に高度に発現する2つの遺伝子に由来する4つの抗原を、ワクチンに含めるために選択した。これらの抗原は、SACOL0029(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_184940.1)(配列番号5)、SACOL1867(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_186695.1)(配列番号38)およびSACOL1867とSACOL0029との融合物(Genbank(商標)アクセッション番号:YP_184940.1)(配列番号5)である。SACOL0029、SACOL1867およびSACOL0029-1867のhisタグ組換えタンパク質は、GenScript, Inc.(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)が設計および作製した(SACOL0029、SACOL1867およびSACOL0029-1867のhisタグ配列については、
図21A、FおよびI、項目I、IVおよびVIIを参照)。
【0164】
マウスの免疫化。SACOL0029遺伝子、SACOL1867遺伝子、およびSACOL0029とSACOL1867との融合物によりコードされる組換え黄色ブドウ球菌タンパク質の免疫原特性を、マウスにおいて評価した。一価型(SACOL0029もしくはSACOL1867)または多価型(融合物SACOL0029-1867もしくはSACOL0029とともにSACOL1867の組み合わせ)のいずれかの正確な等モル量のタンパク質を投与したマウスの4群を比較した。
【0165】
簡潔に述べると、全融合物、または融合物のSACOL0029もしくはSACOL1867部分に対応する各アミノ酸配列の理論分子量を、ExPASy(商標)Bioinformatic Resource Portal(http://web.expasy.org/cgi-bin/compute_pi/pi_tool)を用いて算出した。
【0166】
融合物5μgを1群のマウスに投与した。SACOL0029-1867融合物5μgの対応するモル量は、その理論分子量に関して、168.55pmolであると決定された。SACOL0029およびSACOL1867それぞれ1.15μgおよび3.69μgの量を、それぞれ各抗原168.55pmolをもたらすために、その他の2群のマウスに投与した。最後の群のマウスには、2つの個々の抗原(各168.55pmol)の組み合わせを投与した。
【0167】
免疫化用量の調製のために、SACOL0029、SACOL1867およびSACOL0029-1867融合ポリペプチドを個々に混合し、PBSに懸濁して、100μlの容量での各抗原用量の最終等モル量を得た。20匹のCD-1雌マウスをランダムに4群に分けた。A群(5匹)には、SACOL0029-1867融合タンパク質5μgを投与した(融合物)。B群(5匹)には、SACOL0029 1.15μgおよびSACOL1867 3.69μgを投与した(組み合わせ)。C群(5匹)には、SACOL0029 1.15μgを投与し(0029)、D群には、SACOL1867 3.69μgを投与した(1867)。CD-1マウスに対し、2週間隔で頸部への2回の皮下注射により免疫化した。全実験免疫化期間中に有害な副作用は認められなかった。血液試料を、初回プライミング注射の直前(免疫前血清)およびブースト免疫化の10日後(免疫血清)に採取した。血液アリコートを室温で1時間凝固させ、4℃で10分間10,000gで遠心分離した。血清を採取し、その後の分析まで-20℃で保存した。
【0168】
ELISAによる総IgGの検出。SACOL0029およびSACOL1867組換えタンパク質に対する血清中総IgGの検出を、多少の変更を加えて以前の記述通りに実施した(Ster et al., Vet. Immunol. Immunopathol. (2010), 136: 311-318)。Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロチェスター、ニューヨーク州)を試験抗原(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液に希釈した6.67μg/mL、Sigma Aldrich、オークビル、オンタリオ州)各75μlで被覆し、室温で一晩インキュベートした。次に、プレートを5%脱脂粉乳を含有するPBSで37℃で1時間飽和させた。3%ミルクおよび0.025%Tween(商標)20を含有するPBS中の血清の4倍段階希釈液100μLをプレートにロードし、37℃で1時間インキュベートした。プレートを0.05%Tween(商標)20を含有するPBSで3回洗浄した。次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合二次抗体100μLをプレートに添加した。使用した二次抗体は、3%ミルクおよび0.025%Tween(商標)20を含有するPBSに1/5000に希釈した市販のヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、ウェスト・グローブ、ペンシルベニア州)であった。37℃で1時間インキュベーションした後に3回洗浄した後、製造業者の推奨に従って、3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン(TMB)試薬(KPL Inc.、ゲイザースバーグ、メリーランド州)100μLを添加してペルオキシダーゼ活性を検出した。
【0169】
統計解析。抗体価および相関の統計解析を、GraphPad Prism(商標)v6.05を用いて実施した。
【0170】
例9:抗原の融合物は、一価抗原または抗原の組み合わせと比較して、有意に高い抗体価を誘導する-ワクチン番号3
図6は、融合ポリペプチド(すなわち、SACOL0029-1867融合タンパク質)に含まれる抗原(SACOL1867)が、その特異抗原(SACOL1867)に対する強力かつ特異的な抗体免疫応答を誘導し得ることを示し、さらに重要なことには、この応答は、この抗原の一価型(投与されたSACOL1867のみ)または融合物(SACOL1867とSACOL0029の組み合わせ)の一部である個々のポリペプチドの多価組み合わせで得られる応答よりも有意に高いことがあることを示している。よって、複数のポリペプチド標的に対する免疫応答を生じるという利点に加え、そのような融合抗原は、それらの標的に対する抗体価を大幅に改善するという追加の利点をももたらす。
【0171】
例10:SACOL0720フラグメントおよび/またはSACOL442フラグメントを含むワクチンに関する材料と方法-ワクチン番号4~6
抗原の産生。長さが15~50アミノ酸であり、配列SACOL0442および/またはSACOL0720に由来するペプチドおよびアミノ酸フラグメントを、B細胞エピトープの存在に基づき選択した。ペプチドエピトープの融合物も、アミノ酸リンカー(例えば、EAAAKEAAAK(配列番号62)、またはERKYK(配列番号61)もしくはKDYERKYKKHIVS(配列番号196))が種々のエピトープに連結するように設計した。ペプチドおよびアミノ酸フラグメントは、Biomatik, Inc.(ケンブリッジ、オンタリオ州)が合成した。受領時、凍結乾燥されたペプチドおよびアミノ酸フラグメントを、濃度5mg/mLで滅菌水に懸濁し、使用日まで-80℃で保存した。
【0172】
マウスの免疫化。ペプチドおよびアミノ酸フラグメントを、マウスの免疫化のために抗原として用いた。免疫化用量の調製のために、特に断りのない限り、各ペプチドおよびアミノ酸フラグメントまたはその組み合わせを混合し、20%のEMULSIGEN(商標)-D水中油型エマルションアジュバントを含有するPBSに懸濁し、用量あたりポリペプチド100μgの最終用量を得た。CD-1雌マウスを、3~4匹の異なる群にランダムに分けたマウスに対し、2週間隔で頸部への2回の皮下注射により免疫化した。全実験期間中に有害な副作用は認められなかった。血液試料を、初回プライミング注射の直前(免疫前血清)およびブースト免疫化の10日後(免疫血清)に採取した。血液アリコートを室温で1時間凝固させ、4℃で10分間、10,000gで遠心分離した。血清を採取し、その後の分析まで-20℃で保存した。
【0173】
ELISAによる総IgGの検出。マウスの免疫化に用いた抗原に認められた特異的なアミノ酸配列に対する血清中総IgGの検出を、多少の変更を加えて以前の記述通りに実施した(Ster et al., Vet. Immunol. Immunopathol. (2010), 136: 311-318)。Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロチェスター、ニューヨーク州)を炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(Sigma Aldrich、オークビル、オンタリオ州)に最終濃度5μg/mLで希釈した標的アミノ酸配列各100μlで被覆し、室温で一晩インキュベートした。次に、プレートを、5%脱脂粉乳を含有するPBSで37℃で1時間飽和させた。1%ミルクおよび0.025%Tween(商標)20を含有するPBS中の血清の4倍または2倍段階希釈液100μLをプレートにロードし、37℃で1時間インキュベートした。プレートを0.05%Tween(商標)20を含有するPBSで3回洗浄した。次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合二次抗体100μLをプレートに添加した。使用した二次抗体は、1%ミルクおよび0.025%Tween(商標)20を含有するPBSに1/5000に希釈したヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、ウェスト・グローブ、ペンシルベニア州)であった。37℃で1時間インキュベーションした後にPBS Tween(商標)20で3回洗浄し、PBSで最終洗浄した後、製造業者の推奨に従って、3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン(TMB)試薬(KPL Inc.、ゲイザースバーグ、メリーランド州)を用いてペルオキシダーゼ活性を検出した。
【0174】
統計解析。抗体価および光学密度の統計解析を、GraphPad Prism(商標)v6.05を用いて実施した。
【0175】
例11:配列SACOL0442およびSACOL0720によりコードされるエピトープを含むペプチドの融合物に対する免疫応答-ワクチン番号4
SACOL0442およびSACOL0720によりコードされるペプチドエピトープの融合物を用いて、マウス(n=4)をワクチン接種した。ペプチドの融合物の配列は、
【化4】
であり、リンカーはイタリック体で示しており、異なるエピトープは太字で識別している。エピトープは、SACOL0442によりコードされるKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)、SACOL0720によりコードされるKDINKIYFMTDVDL(配列番号23)およびこれもSACOL0720によりコードされるDVDLGGPTFVLND(配列番号24)であった。動物から採取した血清に由来するIgG抗体は、抗体価が1/6400以上で、ELISAアッセイにおいて、SACOL0442(すなわち、KDGGKYTLESHKELQ(配列番号1))および/またはSACOL0720(すなわち、QFGFDLKHKKDALA(配列番号21);KDINKIYFMTDVDL(配列番号23)、DVDLGGPTFVLND(配列番号24))のいずれかに由来するB細胞エピトープを含んでなるアミノ酸フラグメントに結合することができた。免疫化に用いたペプチドの融合物およびELISAアッセイにおいて抗体標的として用いたアミノ酸フラグメントまたはポリペプチドを、以下の表IIIに示す。この表では、エピトープは太字で、リンカー配列はイタリック体で示している。
【表4】
【0176】
上記に示したすべての抗体標的は、上記の融合抗原でワクチン接種したマウス由来のIgGによって、ELISAアッセイにおいて結合された。
【0177】
このことは、SACOL0442およびSACOL0720の双方によりコードされるペプチドエピトープの融合物は、哺乳類における免疫化および免疫応答の惹起に使用し得ることを示している。得られた免疫応答は、SACOL0442またはSACOL0720を認識する抗体、SACOL0442またはSACOL0720によりコードされるアミノ酸フラグメントまたは変異体の産生を含む。
【0178】
例12:免疫化における抗原として使用される多重エピトープの融合物は、単一エピトープに対する免疫応答を有意に亢進する-ワクチン番号4
SACOL0442およびSACOL0720によりコードされるペプチドエピトープの融合物を用いて、マウス(n=4)をワクチン接種した。ペプチドの融合物の配列は、
【化5】
であり、リンカーはイタリック体で示しており、異なるエピトープは太字で識別している。エピトープは、SACOL0442によりコードされるKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)、SACOL0720によりコードされるKDINKIYFMTDVDL(配列番号23)およびこれもSACOL0720によりコードされるDVDLGGPTFVLND(配列番号24)であった。別の群のマウス(n=4)に対しては、SACOL0442によりコードされる単一のペプチドエピトープKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)で免疫化した。
【0179】
血清を動物から採取し、ペプチドエピトープKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)を含有するSACOL0442(GEHLPKGNIVINTKDGGKYTLESHKELQKDRENVKINTAD)(配列番号2)によりコードされるアミノ酸フラグメントに対するIgG抗体の存在に関して試験した。
【0180】
図7に示すように、3つのペプチドエピトープ(1つはSACOL0442によりコードされ、2つはSACOL0720によりコードされる)の融合物による免疫化は、ペプチドエピトープKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)のみを免疫化の抗原として用いた場合に得られた抗体レベルと比較して、ペプチドエピトープKDGGKYTLESHKELQ(配列番号1)を含有するSACOL0442(GEHLPKGNIVINTKDGGKYTLESHKELQKDRENVKINTAD)(配列番号2)によりコードされるアミノ酸フラグメントに対する抗体産生を有意に増加させた。
【0181】
例13:SACOL0720の変異体によりコードされる50アミノ酸のポリペプチドフラグメントに対する免疫応答-ワクチン番号5
配列SACOL0720によりコードされるB細胞エピトープ(太字)を含有する50アミノ酸ペプチドフラグメント(KDINKIYFMTDVDLGGPTFVLNDKDYERKYKKHIVSQFGFDLKHKKDALA(配列番号27))(ワクチン番号5)、より具体的には、エピトープKDINKIYFMTDVDL(配列番号23)、DVDLGGPTFVLND(配列番号24)およびQFGFDLKHKKDALA(配列番号21)を用いて、1群のマウス(n=3)をワクチン接種した。KDINKIYFMTDVDLGGPTFVLNDKDYERKYKKHIVSQFGFDLKHKKDALA(配列番号27)の全体的な配列は、エピトープDVDLGGPTFVLND(配列番号24)およびQFGFDLKHKKDALA(配列番号21)を連結する領域における4つのアミノ酸によって、SACOL0720の天然配列とは異なっている。よって、ワクチン番号5は、リンカーERKYK(配列番号61)により間隔が空いているSACOL0720の変異体フラグメントまたはSACOL0720由来のエピトープの融合物であるとみなすことができる。
【0182】
SACOL0720(配列番号25)によりコードされる天然タンパク質のフラグメント(すなわち、
図21D、項目IIに示すポリヒスチジンバージョン)に対するIgG抗体の存在に関して、血清を試験した。アミノ酸の変異体配列に対応するペプチドフラグメント(または融合物SACOL0720-720)でワクチン接種した双方のマウスは、力価が1/6400以上でELISAアッセイにおいてアミノ酸の最初の配列内のエピトープを認識した抗体を産生した。
【0183】
このことは、配列SACOL0720によりコードされるエピトープを含んでなるアミノ酸フラグメントは、哺乳類において免疫応答を惹起し得ることを示している。このことはまた、天然配列の変異体は、B細胞エピトープを含有する最初のフラグメント配列に対する免疫系を刺激する能力を有することも、さらに示している。
【0184】
例14:融合物の組み合わせ(ペプチド融合物0442-0720およびポリペプチド融合物0029-1867)に対する免疫応答-ワクチン番号6
SACOL0442およびSACOL0720によりコードされるペプチドエピトープの融合物(
図21I、項目VII-融合物における配列を参照)を、SACOL0029およびSACOL1867の配列を含有するポリペプチド融合物(
図21H、項目VI
Iにおける配列を参照)と組み合わせて、マウスのワクチン接種に使用した(ワクチン番号6)。
【0185】
免疫化用量の調製のために、ペプチド融合物0442-0720およびポリペプチド融合物1867-0029を混合し、20%のEMULSIGEN(商標)-D水中油型エマルションアジュバントを含有するPBSに懸濁し、用量あたりペプチド融合物(0442-0720)およびポリペプチド融合物(0029-1867)それぞれ100μgの最終用量を得た。CD-1雌マウス(n=3)を頸部への3回の皮下注射により免疫化した。最初の2回の注射は1週間隔で実施し、3回目の注射は、2回目の注射の3週後に実施した。全実験期間中に有害な副作用は認められなかった。血液試料を、初回プライミング注射の直前(免疫前血清)および最後のブースト免疫化の14日後(免疫血清)に採取した。血液アリコートを室温で1時間凝固させた後、4℃で10分間、10,000gで遠心分離した。血清を採取し、その後の分析まで-20℃で保存した。
【0186】
動物から採取した血清に由来するIgG抗体は、抗体価が1/6400以上で、ELISAアッセイにおいて、SACOL0442もしくはSACOL0720のいずれかに由来するエピトープを含んでなるアミノ酸フラグメント、またはポリペプチドSACOL0029もしくはSACOL1867に結合することができた。免疫化に用いたペプチドおよびポリペプチドの融合物ならびにELISAアッセイにおいて抗体標的として用いたポリペプチドまたはアミノ酸フラグメントを、以下の表IVに示す。
【表5】
【0187】
このことは、融合物の組み合わせ(例えば、ポリペプチド融合物0029-1867と混合したペプチド融合物0442-0720)は、哺乳類における免疫化および免疫応答の惹起に使用し得ることを示している。得られる免疫応答は、SACOL0442またはSACOL0720またはSACOL0029またはSACOL1867のいずれかによりコードされるアミノ酸配列を認識する抗体の産生を含む。
【0188】
例15:弱毒生変異体に関する材料と方法
細菌株および増殖条件。例15~25で使用した株を表Vに記載する。黄色ブドウ球菌ATCC29213およびその同質遺伝子変異体Δ720は、以前に記述されていた(Allard et al. 2013)。特に断りのない限り、黄色ブドウ球菌株はトリプシンソイブロス(TSB)およびトリプシンソイ寒天(TSA)(BD、オンタリオ州、カナダ)で増殖させ、大腸菌DH5αはLBおよびLBA培地(BD)で増殖させた。必要に応じて、アンピシリン(100μg/ml)(Sigma、オークビル、オンタリオ州、カナダ)、クロラムフェニコール(20μg/ml)(ICN Biomedicals、アーバイン、カリフォルニア州)およびエリスロマイシン(10μg/ml)(Sigma)を寒天プレートに添加した。免疫学的検査のために、カナダの乳牛群および世界各地で発見された主な黄色ブドウ球菌spa型の一部に相当する4つの異なるウシ乳房炎分離菌を選択した(Veh et al., 2015; Mitra et al., 2013)。授乳期中に生じた臨床ウシ乳房炎の例から株SHY97-3906(spa t529)を分離し、乾乳時に乳腺炎が持続していた雌ウシからCLJ08-3(spa t359)を最初に分離した(Allard et al., 2013)。株Sa3151(spa t13401)およびSa3181(spa t267)を、Canadian Bovine Mastitis and Milk Quality Research Network(CBMMQRN)Mastitis Pathogen Culture Collection(Universite de Montreal, Faculte de medecine veterinaire、サンティアシント、ケベック州、カナダ)から得、無症候性の乳腺内感染の例から分離した。
【表6】
【0189】
細胞培養条件。確立されたウシ乳腺上皮細胞(BMEC)株MAC-T(Huynh et al., 1991)を、感染症の細胞培養モデルとして用いた。MAC-T細胞を、10%熱失活ウシ胎仔血清(FBS)含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)でルーチン的に培養および維持し、5μg/mlインスリン(Roche Diagnostics Inc.、ラヴァル、カナダ)および1μg/mlヒドロコルチゾン(Sigma)で補充し、5%CO2を有する加湿インキュベーター中、37℃でインキュベートした。細胞培養試薬は、Wisent(サン=ブルノ、ケベック州、カナダ)から購入した。
【0190】
DNA操作。ゲノムDNAの単離(Sigma)、プラスミドDNAの単離(Qiagen、オンタリオ州、カナダ)、アガロースゲルからのDNAフラグメントの抽出(Qiagen)、ならびにPCR産物および消化DNAフラグメントの精製(Qiagen)については、キットの製造業者の推奨に従った。ゲノムおよびプラスミドDNAの単離において黄色ブドウ球菌細胞の効率的な溶解を達成するために、200μg/mlのリゾスタフィン(Sigma)を用いた1時間の追加処理を用いた。増幅産物の上流および下流の制限酵素認識部位を付加するように、プライマー(IDT(商標)Integrated DNA Technologies;コーラルビル(Coraville)、アイオワ州、米国)を設計した。ルーチンのPCRに対してはTaq DNAポリメラーゼ(NEB、ピカリング、オンタリオ州、カナダ)を用いて、クローニングに対してはQ5高忠実度DNAポリメラーゼ(NEB)を用いてPCRを実施し、サイクル時間および温度を各プライマー対に対して最適化した。大腸菌DH5α(Invitrogen、バーリントン、オンタリオ州、カナダ)、制限酵素(NEB)およびT4 DNAリガーゼ(NEB)を用いて、プラスミド構築物を作製した。黄色ブドウ球菌RN4220(Kreiswirth et al., 1983)および最後の宿主株におけるエレクトロポレーションの前に、制限消化パターンおよびDNAシークエンシングにより、プラスミド構築物を検証した。例15~25で用いたプラスミドを上記の表Vに記載する。
【0191】
弱毒生型黄色ブドウ球菌株Δ720およびΔhemBの作製。ATCC29213株の同質遺伝子hemB変異体を構築物し、相同組換えによるemrAカセットの挿入によって、hemB遺伝子を欠失および置換させた。黄色ブドウ球菌ATCC29213におけるヌクレオチド803と804との間にグループIIイントロン(以前に記述されたようにフラグメントサイズは約2Kb(Allard et al., 2013))を挿入することによる細菌遺伝子の破壊のために、TargeTron(商標)遺伝子ノックアウトシステム(TargeTron(商標)ベクターpNL9164(Sigma-Aldrich Canada Ltd.)を用いた)を用いて、遺伝子SACOL0720(Δ720)の黄色ブドウ球菌ATCC29213変異体を作製した(Chen et al., 2007)。製造業者のプロトコルおよび推奨に従った。
【0192】
ΔhemBΔ720の作製。Δ720変異体の遺伝的背景におけるSCV表現型を得るための遺伝子hemBの2回目の変異を達成するために、別の戦略を用いた。温度感受性pBT2-hemB:emrA(pBT-E:hemB)を、多少の変更を加えて以前の記述通りに戦略に用いた(Mitchell et al., 2008)。簡潔に述べると、温度感受性シャトルベクターpBT2のXbaI部位とSalI部位の間にermAカセットを挿入することにより、pBT-Eプラスミドを構築した(Brueckner, 1997)。遺伝子hemB(SACOL1715)DNAフラグメントの隣接領域を、黄色ブドウ球菌ATCC29213から増幅し、ermAカセットの両側でプラスミドpBT-Eにクローン化した。次に、黄色ブドウ球菌RN4220(res-)への伝播のために、プラスミドを導入した。リゾスタフィンによる溶菌後(室温で1時間200μg/ml)、プラスミドDNAを単離し、エレクトロポレーションによるATCC29213およびΔ720へのトランスフォームのために用いた。プラスミド組込みおよび変異体作製のために、エリスロマイシン10μg/mlおよび1μg/mlヘミン添加(Sigma-Aldrich、オンタリオ州、カナダ)を用いて、最初に細菌を30℃で一晩増殖させた。次に、細菌を1:1000に希釈し、エリスロマイシン2.5μg/mlおよび1μg/mlヘミンを用いて42℃で一晩増殖させた。この工程を2回繰り返した。最後に、細菌を1:1000に希釈し、抗生物質を用いずに42℃で一晩増殖させた。不活性化hemB遺伝子を有する変異体を、寒天プレートへの5μg/mlヘミン添加により補完され得る(すなわち、正常な増殖表現型への復帰)SCV表現型とともに、エリスロマイシンに抵抗性であり、クロラムフェニコールに感受性があるものとして選択した。ATCC29213(すなわち、ΔhemB)株およびΔ720(すなわち、ΔhemBΔ720)株におけるhemBの欠失を、PCRにより確認した(
図8AおよびB参照)。
【0193】
ブロス培養におけるヘミン添加。黄色ブドウ球菌ΔhemBおよび二重変異体Δ720ΔhemBの最適な増殖動態を回復できるヘミンの能力を評価するために、一晩細菌培養液を、種々の濃度で添加されたヘミンにより補充された新鮮BHI(Sigma)を含有する培養試験管においてA600nm約0.1に希釈した。培養液のA600nmを、35oC(225rpm)でのインキュベーション期間中の異なる時点で測定した。
【0194】
ウシ乳腺上皮細胞(BMEC)の黄色ブドウ球菌感染。ATCC29213(WT)およびその同質遺伝子変異体の細胞内感染性および持続の特徴づけのために、MAC-T BMECを用いた。感染の48時間前に、1×105/mlのMAC-T細胞を処理済み24ウェルプレート(Corning)に播種し、30%のコンフルエンスを得た。37oCで10%CO2の下、単層をコンフルエンスまで増殖させた。感染の6時間前に、単層をDMEMで洗浄し、浸潤培地(IM)(1%熱失活FBSを含有する抗生物質を含まない増殖培地)でインキュベートした。一晩細菌培養液を新鮮TSBに1:20に希釈し、中対数増殖期まで増殖させた後、PBSで洗浄し、感染多重度10までIMに希釈した。細菌で3時間単層をインキュベートすることにより、浸潤を達成した。次に、単層をDMEMで洗浄し、20μg/mlリゾスタフィンを含有するIMでインキュベートして細胞外細菌を死滅させた。細胞外正常およびSCV黄色ブドウ球菌を死滅させるためのリゾスタフィンの使用は、細胞浸潤アッセイにおいて以前に検証された(Moisan et al., 2006 and Tuchscherr et al, 2011)。処置を感染の3時間時のCFUを測定するために30分間実施し、または、追加で12もしくは24時間実施した。次に、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)による広範な洗浄の後、単層をトリプシン処理により剥離し、0.05%トリトンX100で溶解し、PBSを添加して最終1倍濃度を得た。ライセートを段階希釈し、CFUの測定のためにTSAに播種した。
【0195】
BMECの生存率および代謝活性アッセイ。黄色ブドウ球菌ATCC29213(WT)およびその同質遺伝子変異体により与えられるMAC-T細胞に対する細胞傷害を測定するために、3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の生存細胞における不溶性ホルマザン産物への還元を測定するMTT細胞代謝活性アッセイを実施した。アッセイは、多少の変更を加えてKubicaらの方法(Kubica et al, 2008)に従った。簡潔に述べると、細胞の黄色ブドウ球菌感染は、持続アッセイにおいて述べられた通りに達成されたが、12時間または24時間後の溶解の代わりに、細胞をDPBS中でMTT試薬(5mg/ml)(Sigma)100μlを用いて37℃で2時間インキュベートした。この後、pH4.7の16%SDSおよび40%PMFの酸性溶媒溶液を添加して、細胞を溶解し、ホルマザンの結晶を一晩可溶化させた。波長570nmのEpochマイクロプレートリーダー(Biotek Instruments Inc.)を用いて、試料を読み取った。すべてのアッセイは3回実施し、非感染細胞を有する対照ウェル(高生存率対照)または溶解後のWT感染細胞(細菌バックグラウンド対照;MTT添加前に0.05%トリトンX100で10分間処理)を各プレートに含めた。代謝活性のレベルは、以下の式を用いて算出した。
【0196】
(試料の吸光度-バックグラウンド対照)/高対照)×100。
【0197】
マウス乳腺炎モデルにおけるビルレンス。感染症のマウス乳腺炎モデルは、以前に記述されたものに基づく(Brouillette, 2005; Brouillette, 2004)。マウスを用いて実施したすべての実験は、Faculte des sciences of the Universite de Sherbrookeの動物実験倫理委員会により承認され、カナダ動物管理協会のガイドラインに従って実施した。簡潔に述べると、12~14日齢の子孫を除去した1時間後に、授乳中のCD-1マウス(Charles River Laboratories)をそれぞれ体重の87および13mg/kgのケタミンおよびキシラジンで麻酔し、乳腺を両眼下で接種した。乳首の近端で小さく切開することにより乳管を露出させ、エンドトキシンフリーリン酸緩衝食塩水(PBS、Sigma)中に102CFUを含有する100μl細菌懸濁液を、32ゲージ鈍針を用いて、乳頭管を通じて注射した。2つの腺(頭部から尾にかけて右側4番目[R4]および左側4番目[L4])を各動物に対して接種した。乳腺を指定の時間に無菌的に採取し、秤量し、炎症に関して視覚的に評価した。PBS中での機械的組織均質化、段階希釈、およびCFU測定のための寒天への播種後に、細菌負荷を評価した。2回目の実験では、ホモジナイズした腺を、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性酵素アッセイでのタンパク質抽出のために保存した。
【0198】
乳腺タンパク質の抽出。乳腺からの総タンパク質の抽出を、多少の変更を加えて以前に記述された最適化された方法により実施した(Pulli et al., 2013)。pH6.0の最終濃度50mMのリン酸カリウムおよびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)50mM(Sigma)を含有する緩衝液中で、乳腺組織をホモジナイズした。次に、試料を超音波処理し、液体窒素で凍結融解し、4℃で15分間2000gで遠心分離した。最後に、脂肪層を吸引により除去し、上澄みを15000gでの15分間の最終遠心分離のために保存し、すべての壊死細胞片を廃棄した。上澄みをアリコートに分布させ、酵素アッセイまたはビシンコニン酸法(BCA)タンパク質アッセイキット(Thermo-Scientific)により測定するタンパク質濃度測定に使用するまで、-80℃で保存した。
【0199】
MPO活性アッセイ。マイクロプレート用に改変したo-ジアニシジン-H2O2法によるMPO酵素活性の定量により、乳腺組織における好中球動員を測定した(Bradley, RD. and Rothstein, GPPC., 1982)。96ウェルマイクロプレートにおいて、pH6.0の50mM CTABリン酸緩衝液50mM中のo-ジアニシジン塩酸塩(0.167mg/mL)(Sigma)および0.0005%H2O2(Sigma)の溶液で、組織抽出上澄み液10μlをインキュベートした。460nmのEpochマイクロプレートリーダーにおいて、MPO活性を15秒の間隔をおいて5分間動態学的に測定した。MPOの単位は、o-ジアニシジンに対する460nmでの吸収係数11.3mM-1cm-1を想定し、25℃で1μmolのH2O2/分を分解する酵素の量とみなした(Zhang et al., 2004)。結果は、腺のgあたりのMPOの単位として表した。
【0200】
弱毒生変異体Δ720ΔhemBによるマウスの免疫化。生ワクチンとして投与した弱毒株Δ720ΔhemBの免疫原特性を、マウスにおいて評価した。予備試験において、マウスは、弱毒株の筋肉内注射および皮下(SC)注射に良好な忍容性を示した。106、107および108CFUの用量、ならびにSC経路を、その後の実験に選択した。細菌接種材料の調製のために、先にBHIAプレートで増殖させた黄色ブドウ球菌Δ720ΔhemBコロニーを、氷冷PBS中で2回洗浄し、15%グリセロール含有PBSに懸濁した後、分注し、その後使用するまで-80℃で保存した。接種材料調製物中の生細菌数を、BHIAへの段階希釈液の播種により検証した。CD-1マウスをランダムに3群に分けた。第1群(n=3)には106CFUの用量を投与し、第2群(n=3)には107CFUを、第3群(n=3)には108CFUを投与した。マウスに対し、2週間隔で頸部へのPBS(100μl)中の細菌の2回の皮下注射により免疫化した。血液試料を、プライミング注射の直前(免疫前血清)およびブースト免疫化の10日後(免疫血清)に採取した。血液アリコートを室温で1時間凝固させた後、4℃で10分間、10,000gで遠心分離した。血清を採取し、その後の分析まで-20℃で保存した。
【0201】
黄色ブドウ球菌の細胞抽出液の調製。黄色ブドウ球菌の全細胞抽出液の調製を、多少の変更を加えて以前の記述通りに実施した(Asli et al., 2016)。簡潔に述べると、一晩細菌培養液を新鮮BHIブロスに1/1000に希釈した後、約0.8のA600nmに達するまで35℃(225rpm)でインキュベートした。細菌細胞を遠心分離し、ペレットを氷冷PBS中で2回洗浄し、ペレット1mlあたりPBS5mlを添加して懸濁した。細菌懸濁液を最初にリゾスタフィン(Sigma)(ペレット100μg/ml)で37℃で1時間処理した後、ペレット1mlあたりプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)3μg、リボヌクレアーゼA(Sigma)8μgおよびデオキシリボヌクレアーゼ(Qiagen)8μgを懸濁液に添加した。室温で30分後、SLM Aminco(商標)French Pressure細胞破壊器中での3~4継代により細胞を機械的に破壊した後、12,000×gおよび4℃で10分間遠心分離し、破壊されていない細胞を除去した。上澄みを回収し、BCAタンパク質アッセイキットを用いて、総タンパク質濃度を以前の記述通りに測定した。
【0202】
ELISAによるマウス総IgGの検出。マウスの免疫化により生じる全身性液性応答を実証および測定するために、Δ720ΔhemBワクチン接種株および各ウシIMI分離菌に対する血清中総IgGの検出を実施した。標的抗原に関しては、Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロチェスター、ニューヨーク州)を全黄色ブドウ球菌細胞抽出液(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液に希釈した10μg/mL、Sigma)各100μlで被覆し、室温で一晩インキュベートした。次に、プレートを、5%脱脂粉乳を含有するPBSで37℃で1時間飽和させた後、非特異的な黄色ブドウ球菌タンパク質Aの相互作用を防ぐために、5%ブタ血清を添加して2番目のブロッキング工程を実施した。希釈緩衝液(2%ミルク、5%ブタ血清および0.025%Tween(商標)20を有するPBS)中の血清の2倍段階希釈液100μLをプレートにロードし、37℃で1時間インキュベートした。次に、プレートを0.05%Tween(商標)20を含有するPBSで3回洗浄し、希釈緩衝液に1/5000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、ウェスト・グローブ、ペンシルベニア州)100μlを用いてロードした。37℃で1時間インキュベーションした後に3回洗浄した後、製造業者の推奨に従って、3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン(TMB)試薬(KPL Inc.、ゲイザースバーグ、メリーランド州)を用いてペルオキシダーゼ活性を検出した。
【0203】
統計解析。統計解析をGraphPad Prism(商標)ソフトウェア(v.6.02)を用いて実施した。腺(マウスにおけるIMI)の細胞内細菌のCFUおよび細菌CFU/gを、統計解析に使用する前に、底10の対数値に変換した。各実験および有意性の解析に用いた統計検定は、図の凡例に明記している。
【0204】
例16:黄色ブドウ球菌株ATCC29213Δ720、ΔhemBおよびΔ720ΔhemBの構築
自然感染を模倣する弱毒生細菌は、免疫系を強力に刺激し、血清および粘膜抗体の双方を産生する広範かつ強力な免疫応答を惹起し、疾患から防御するために相乗的に作用するエフェクターおよびメモリーT細胞を惹起する(Detmer, 2006; Kollaritsch, 2000; Pasetti, 2011)。
【0205】
遺伝子SACOL0720における変異は、雌ウシにおける実験的IMI感染での黄色ブドウ球菌のビルレンスを変化させることが示された(Allard et al., 2013)。
【0206】
黄色ブドウ球菌SCVの表現型の側面に基づき、さらなる弱毒生株をワクチン目的で調製した。SCVは、一般に侵襲性感染症(すなわち、さらなる弱毒化)を生じず、宿主細胞内に内部移行し得るため、液性免疫応答に加え細胞性免疫応答を刺激する。
【0207】
hemB遺伝子(ΔhemB)の欠失を通じて、安定的な黄色ブドウ球菌SCVを最初に作製した(例15、弱毒生型黄色ブドウ球菌株Δ720およびΔhemBの作製を参照)。次に、このSCVのさらなる弱毒化を、遺伝子SACOL0720(Δ720)の不活性化によって達成した(例15、ΔhemBΔ720の作製を参照)。
【0208】
MAC-Tウシ乳腺上皮細胞の感染後、二重変異体(Δ720ΔhemB)は、それぞれΔhemBおよびΔ720でみられたものと比較して、低い内部移行および細胞破壊を有意に示した。
【0209】
例17:黄色ブドウ球菌株ΔhemBΔ720はMAC-T細胞において弱毒化される
次に、ATCC29213(WT)、Δ720、ΔhemBおよびΔhemBΔ720株の感染性を、MAC-T細胞を用いた細胞内持続アッセイにおいて比較した。3つの変異体株をそれらの同質遺伝子WT親と比較することにより、遺伝子hemBおよびSACOL0720における変異の別々の作用が認められた。細胞単層を用いた細菌の短時間の3時間インキュベーションの後に、リゾスタフィンを添加して細胞外細菌を排除した結果、生存細胞内細菌(CFU)の回収率に基づき、WT株およびΔhemB株双方で、MAC-T細胞への内部移行のレベルが高いことが示された(
図9AおよびB)。しかし、単一Δ720変異体は、その親WT株と比較して、有意に低い(P≦0.01)内部移行を示した(
図9A)。二重変異体ΔhemBΔ720をΔhemBと比較した場合、Δ720にみられた内部移行の減少は、さらにより顕著であり、この3時間内部移行アッセイにおいて接種材料の回収率に10倍の減少がみられた(P≦0.001、
図9B)。内部移行した細菌量のこの最初の減少は、二重変異体株ΔhemBΔ720で浸潤(PI)後12および24時間でも明らかであり(
図9C)、これは、ΔhemB(P≦0.001)で認められたものと比較して、両時点でのCFU/mlの1-log
10の減少により示されている。単一Δ720変異体とWT株との間の最初の細胞内細菌量の差(
図9A)は、両株はMAC-T細胞内に十分持続しなかったため(
図10)、インキュベーション時間が長いほど徐々に消えた(
図9C)。反対に、単一ΔhemB株に関して回収された細胞内CFUは、24時間PIにおける他の3つの株に関して回収されたものと比較して、有意に高かった(
図9C、すべてに対するP≦0.001)。全体的に見て、およびSCV表現型に関して予想されたように、ΔhemB株は、経時的に他のいずれの株よりも高い細胞内持続を示した(
図10)。これらの結果は、Δ720変異は、MAC-T細胞内への内部移行プロセスを主に減少させることを示唆している。結果はさらに、ΔhemBΔ720変異体は、BMECへの内部移行および持続が依然として可能であるが、単一ΔhemB変異体でみられるものよりもかなり低い程度であることを示している。
【0210】
ΔhemBΔ720およびΔhemB SCVは低BMEC破壊を引き起こす。上記で報告したように、ΔhemBおよびΔhemBΔ720 SCV株は、MAC-T細胞において経時的に大きな持続を示し、これは、WT株およびΔ720株との比較において、12時間および24時間PIのそれらの持続した生存率によって示されている(
図9Cおよび10)。細胞から回収した接種材料の割合は、二重および単一hemB変異体の双方に関して、リゾスタフィン添加後0~24時間にほぼ同じままであり、12時間にわずかな増加を示し、細胞内増殖が示された(
図10)。両株とも、この感染時点後に遅い速度で減少し始めた。しかし、WT株およびΔ720株に関する細胞内CFUの見かけの減少は、SCV表現型の株で認められたものと比較して、経時的な細胞単層への損傷の増加という視覚的観察を伴った。
【0211】
試験した4つの各株による感染後、MAC-T細胞の生存率も評価した。MAC-T細胞の生存率をMTT法により評価した(Kubica et al., 2008)。結果は、両SCV株(ΔhemBおよびΔhemBΔ720)は、WT株およびΔ720株と対照的に、このアッセイにおいて有意に少ないMAC-Tの死滅を引き起こしたことを示している。ΔhemBと比較した場合、WT株は、12時間において細胞の生存率をほぼ半分に減少させた(
図11A:WT:25.4%;ΔhemB:48.4%)。この差は、たとえ細菌量がΔhemB変異体で10倍高かったとしても(
図9C)、24時間において依然として明らかであった(
図11B:それぞれ16.3%対34.5%)。MAC-T細胞は、二重変異体Δ720ΔhemBよりもΔhemBによる損傷が大きかったが、差は24時間でのみ有意であった(P≦0.01)。WT株と直接比較した場合、二重変異体Δ720ΔhemBは、上皮細胞生存率を12時間において2.3倍高く維持し(
図11A)、24時間において2.7倍高く維持した(
図11B)(12および24時間:P≦0.0001)。したがって、WT株およびΔ720株と比較して、両SCV株の細胞内持続が経時的に大きかったこと(
図10)は、MAC-T細胞に対するSCVの毒性が低いことに起因していた可能性が高い(
図11)。まとめると、BMEC感染アッセイの結果は、WT株の弱毒化に対するΔhemBおよびΔ720変異の双方の相加効果の証拠をもたらした。
【0212】
例18:黄色ブドウ球菌株ΔhemBΔ720はマウスIMIモデルにおいて弱毒される
感染症のin vivoモデルにおけるΔhemBΔ720の弱毒化を証明するために、二重変異体のビルレンスを評価し、マウスIMIモデルにおけるWT株と比較した(Brouillette and Malouin, 2005)。両株に関して、感染の対数期は、主に感染後最初の12時間以内に生じたが、最大細菌負荷は、二重変異体で24時間に達し、WT株で48時間(2日目[D2])に達した(
図12)。24時間において、二重変異体は、WTと比較して、腺の平均CFU/gの1.9log
10の減少を示した(P≦0.05)。また、24時間後も、変異体の細菌負荷は、12日目に完全な細菌排除が達成されるまで(
図12のアスタリスクで示す)、一定の減少を示した。対照的に、親WT株は、変異体と比較して、重度の侵襲性感染症を誘発し、その群で腺を採取できる前に、2日目に残りのマウス9匹中3匹および7日目に3匹中2匹が死亡した(
図12;矢印)。WT感染症から生存したマウスは、7日目に高い生菌数(9log
10CFU/腺のg)を維持し、二重変異体と比較して細菌負荷における約5log
10の差を示した。これらの結果は、ΔhemBΔ720株が乳腺において増殖および生存できる能力が著明に減少したことを明らかに示している。したがって、ΔhemBΔ720二重変異体は、マウス乳腺内感染(IMI)モデルにおいて強く弱毒化され、乳腺から効率的に除去される。
【0213】
弱毒株ΔhemBΔ720は、ワクチン接種の目的および抗原の細胞内送達にとって理想的であるようである。実際に、ΔhemBΔ720の低いおよび一時的な内部移行は、黄色ブドウ球菌に対する防御にとって重要である免疫応答の構成要素である細胞性免疫の刺激に役立つはずである(Fowler and Proctor, 2014)。
【0214】
例19:IMI後のΔ720ΔhemB株およびWT株に対する炎症反応
WT株および変異体株による感染に対するマウスの炎症反応(免疫応答)を測定するために、腺における好中球浸潤を、腺ホモジネートの総タンパク質抽出液のMPO酵素活性により評価した。生体試料中のMPO活性は、好中球の絶対数と以前に強く相関しており(Xia, 1997)、よって、適切なマーカーである。感染後の最初の1時間の間、好中球動員は、二重変異体およびWTに感染した腺に対して類似したプロファイルをたどり(
図13)、ある程度の遅延がみられたものの、細菌増殖と一致した、感染後12~24時間に見かけの好中球浸潤の指数関数的増大を示した。乳腺における細菌量と関連した多形核細胞の絶対数は、常に同時にピークとなるわけではないことが以前に示された(Brouillette, 2005)。変異体株およびWT株により感染した腺の間には、MPO活性の有意差は6、12および24時間には認められなかった(
図13)。しかし、見かけの好中球浸潤におけるこの同等性は、24時間における炎症の視覚的観察とは相関せず、この時点において、WT感染は、二重変異体と比較して、感染腺の広範な発赤を生じさせた(
図14の写真)。反対に、変異体感染腺は、PBS対照と比較して、肉眼レベルで視覚的変化はなかった。炎症の視覚的評価と好中球浸潤の結果との不一致は、細菌量(
図9A-C)およびWT株の細胞傷害活性(
図11)における差に起因していた可能性があり、毒素および酵素発現を通じた株の高侵襲性および播種性の能力と整合がとれていた可能性がある。それゆえ、これらの結果は、変異体株により感染した腺における好中球動員は、WT株でみられたものと同等であったこと、ならびに、これは、変異体の細菌量のその後の減少および排除を可能とするために十分であったことを示している。
【0215】
最後に、株の安全性を確認するため、およびこの炎症反応は許容されない反応性株の結果として生じたものではないことを評価するため、感染の4および12日後のΔ720ΔhemB感染腺においてMPO活性を測定した。次に、活性のレベルを、PBS注射マウスで得られたレベルと比較した。
図15に示すように、変異体感染腺における見かけの好中球の存在は、感染の4日後にも依然として高く、MPO活性は8~21単位/腺のgの範囲であった。その上、乳腺が形態的にほぼ妊娠前の状態に戻るプロセスである腺退縮は、組織のリモデリング中にアポトーシス細胞の貪食を可能にする好中球動員と元々関連している(Stein, 2007)。このモデルにおける感染後の数日以内に、マウスの腺はすでに修飾の正常状態にあり、このことは腺の迅速な萎縮によって示されている。しかし、変異体感染腺におけるMPOレベルは、4日目と12日目の間に実質的な減少を経た(P≦0.01)。次に、MPOレベルは、12日目に正常レベルに戻ったとみなされ、PBS注射マウスで得られたものとの有意差は示されなかった。Δ720ΔhemB感染腺の炎症反応は、細菌排除とともに正常レベルに戻る(
図15)。
【0216】
例20:Δ720GΔhemBによる免疫化は、いくつかの黄色ブドウ球菌ウシ乳腺内感染分離菌に対して強力な液性応答を生じさせる
生Δ720ΔhemBによる免疫化は、黄色ブドウ球菌乳腺内感染に対する推定上の生ワクチンとして使用するのに好適な強力な免疫応答を実際に生じさせ得ることを確認するために、マウスを異なる用量の生ワクチンで免疫化し、種々の黄色ブドウ球菌ウシ分離菌の全細胞抽出液への結合に関して血清中総IgGを定量した。最初に、頸部へ皮下投与した10
6、10
7および10
8CFUの用量は、免疫化期間を通じて、マウスの行動の修飾または免疫化部位での炎症もしくは壊死の徴候などの有害作用を惹起しなかった。さらに、生二重変異体ATCC29213 Δ720ΔhemBの量を増加させて用いた免疫化は、それ自身の抗原の全細胞抽出液に対する全身IgG抗体の力価の増加をもたらした(
図15B)。免疫血清の力価は、免疫前血清の力価よりも有意に高く、生ワクチン中に存在する黄色ブドウ球菌抗原に対する抗体産生の特異性が示された。最も重要なことに、Δ720ΔhemBの量を増加させて用いた免疫化は、カナダおよび世界各地で発見された主要なspa型に由来する株を含む、ウシ乳房炎から分離された種々の黄色ブドウ球菌株に対する抗体価の必然的な上昇ももたらした(
図15C)。これらの結果は、(i)二重変異体による免疫化は免疫応答を増大させ得ること、および(ii)株バックグラウンド(ATCC29213)は、抗体応答が主要なspa型の株も強く認識するように、ウシ乳房炎株と十分な共通の特徴を共有していること、を明確に示している。
【0217】
生Δ720ΔhemBの皮下注射を用いたマウスの免疫化は、全細菌細胞抽出液に対して測定した総IgGの高力価により判断した結果、強力な液性応答を生じさせた。また、ワクチン株Δ720ΔhemBは、抗体応答が種々の一般的な乳腺炎関連spa型に由来する株も強く認識するように、ウシ乳房炎株と十分な共通の特徴を有していた。
【0218】
このことは、二重変異体バックグラウンド(ATCC29213)はウシ乳房炎株と多くの共通の特徴を共有していることを示したが、望む場合は、いずれかの所望の遺伝的背景において、特に、これに限定されないが黄色ブドウ球菌株RF122などのウシ乳房炎から分離されたいずれかの株において、そのような二重変異体を作製することができる。
【0219】
これらの結果は、ある程度の残存細胞内能力を有するSCV株は、重度の感染症を確立することなく、免疫細胞動員を可能にし得ることを示している。そのようなSCV株は、細胞内能力で病原体と戦うために免疫応答を適切に刺激する弱毒生ワクチンとして作用し得る。
【0220】
例21:材料と方法-SACOL0442、SACOL0720、SACOL0029およびSACOL1867とSACOL0029との融合物+弱毒生細菌(ワクチン番号7)
抗原の産生。抗原の産生は、抗原SACOL0029の追加の存在を除き、例6の抗原の産生の項での記載通りに実施した。SACOL0029のhisタグ組換えタンパク質は、GenScript, Inc.(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)が設計および作製した(
図21A、項目I、hisタグ配列を参照)。
【0221】
弱毒生型黄色ブドウ球菌株Δ720ΔhemBの作製。弱毒生型黄色ブドウ球菌株の作製は、例15(ΔhemBΔ720の作製)での記載通りに実施した。
【0222】
マウスの免疫化。弱毒生細菌株黄色ブドウ球菌Δ720ΔhemBと組み合わせた、または組み合わせない、SACOL0442、SACOL0720、SACOL0029遺伝子、ならびにSACOL0029およびSACOL1867遺伝子の融合物にコードされる組換え黄色ブドウ球菌タンパク質の免疫原特性をマウスにおいて評価した。マウスは、頸部への皮下注射および大腿への筋肉内注射による103、105、106、107および108CFUの用量に良好な忍容性を示した。105の用量および皮下経路を、以下の実験に選択した。
【0223】
細菌接種材料の調製のために、先にBHIAプレートで増殖させた黄色ブドウ球菌Δ720ΔhemBコロニーを、氷冷PBS中で2回洗浄し、15%グリセロール含有PBSに懸濁した後、分注し、その後使用するまで-80℃で保存した。弱毒細菌105CFUに相当する最終マウス免疫化用量を得るために、凍結接種材料の細菌濃度を、BHIAに播種した段階希釈液により評価した後、免疫化日にPBSに最終濃度105CFU/mlまで希釈した。
【0224】
タンパク質用量の調製のために、SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL0029-1867融合ポリペプチドを混合し、PBSに懸濁して、各々5μgの最終用量を得た。CD-1雌マウスをランダムに3群に分けた。第1群(5匹)には混合タンパク質用量を投与した(タンパク質混合物)。第2群(5匹)には弱毒細菌(Δ720ΔhemB)用量を投与した(Δ720ΔhemB)。第3群(6匹)には混合タンパク質と弱毒細菌の組み合わせを投与した(組み合わせ)。CD-1雌マウスに対し、2週間隔で頸部への2回の皮下注射により免疫化した。タンパク質および細菌株の用量は、以前の記述通りにPBSに希釈し、各群のマウスに対して最終容量100μlで投与した。全実験免疫化期間中に有害な副作用は認められなかった。血液試料を、初回プライミング注射の直前(免疫前血清)およびブースト免疫化の10日後(免疫血清)に採取した。血液アリコートを室温で1時間凝固させ、4℃で10分間、10,000gで遠心分離した。血清を採取し、その後の分析まで-20℃で保存した。
【0225】
ELISAによる総IgG、IgG1およびIgG2の検出。免疫化のために以前に用いた各抗原に対する血清中総IgG、IgG1およびIgG2の検出を、多少の変更を加えて以前の記述通りに実施した(Ster et al., Vet. Immunol. Immunopathol. (2010), 136: 311-318)。さらに、黄色ブドウ球菌に対する免疫応答を亢進し、バランスを取るために生株を用いることの補足的な利点を示すために、ブドウ球菌表面タンパク質ClfAに対するIgGの検出を実施した。Nunc MaxiSorp(商標)96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.、ロチェスター、ニューヨーク州)を試験抗原(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液に希釈した6.67μg/mL、Sigma Aldrich、オークビル、オンタリオ州)各75μlで被覆し、室温で一晩インキュベートした。次に、プレートを、5%脱脂粉乳を含有するPBSで37℃で1時間飽和させた。3%ミルクおよび0.025%Tween(商標)20を含有するPBS中の血清の4倍段階希釈液100μLをプレートにロードし、37℃で1時間インキュベートした。プレートを0.05%Tween(商標)20を含有するPBSで3回洗浄した。次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合二次抗体100μLをプレートに添加した。使用した二次抗体は、3%ミルクおよび0.025%Tween(商標)20を含有するPBSに1/5000に希釈したヤギ抗マウスIgG、IgG2aおよびIgG1(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、ウェスト・グローブ、ペンシルベニア州)であった。37℃で1時間インキュベーションした後に3回洗浄した後、製造業者の推奨に従って、3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン(TMB)試薬(KPL Inc.、ゲイザースバーグ、メリーランド州)を用いてペルオキシダーゼ活性を検出した。
【0226】
統計解析。抗体価および相関の統計解析を、GraphPad Prism(商標)v6.05を用いて実施した。
【0227】
例22:抗原の融合物および弱毒生型黄色ブドウ球菌株との組み合わせは、マウスにおける高抗体価を誘導する-ワクチン番号7
抗原および弱毒生型黄色ブドウ球菌株Δ720ΔhemBを、例21に記載の通りに作製する。例21に記載の通りに、マウスを免疫化し、IgGを検出する。
【0228】
図16の結果は、SACOL0029-1867融合物(他の抗原または弱毒生株のいずれかと同時投与した場合の)による免疫化は、マウスにおいて高特異抗体応答を誘導することを示している。
【0229】
例23:弱毒生型黄色ブドウ球菌株は、一部の特異抗原に対する抗体免疫応答を有意に改善する-ワクチン番号7
抗原および弱毒生型黄色ブドウ球菌株Δ720ΔhemBを、例21に記載の通りに作製する。例21に記載の通りに、マウスを免疫化し、IgGを検出する。
【0230】
図17の結果は、弱毒生株Δ720ΔhemBによる免疫化は、タンパク質混合物単独で免疫化したマウスに由来するIgG抗体で得られたものと比較して、SACOL0029抗原に対する特異IgG抗体の産生を有意に増加させることを示している。
【0231】
例24:弱毒生型黄色ブドウ球菌株は、黄色ブドウ球菌の追加の表面タンパク質に対する有意な抗体価を誘導する-ワクチン番号7
抗原および弱毒生型黄色ブドウ球菌株Δ720ΔhemBを、例21に記載の通りに作製する。例21に記載の通りに、マウスを免疫化し、IgGを検出する。
【0232】
図18の結果は、弱毒生株Δ720ΔhemB(単独またはポリペプチド抗原と同時投与した場合)による免疫化は、SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL0029-1867から構成されるタンパク質混合物単独で達成されたものと比較して、ブドウ球菌表面タンパク質ClfAに対する特異抗体の産生を有意に増加させることを示している。
【0233】
例25:弱毒生型黄色ブドウ球菌株はTh1/Th2免疫応答のバランスを有意に取る-ワクチン番号7
抗原および弱毒生型黄色ブドウ球菌株Δ720ΔhemBを例21に記載の通りに作製する。
【0234】
SACOL0029-1867融合物タンパク質に対する血清中IgG2aおよびIgG1アイソタイプを、以前の記述通りにワクチン接種マウスの血清において検出し、各マウスのIgG1力価に対するIgG2aの比を決定した。IgG2aアイソタイプはマウスにおけるTh1免疫応答と関連しているが、IgG1はTh2応答に関するマーカーである。例5に記載したように、雌ウシにおけるIgG2産生の誘導および乳中のIgG2力価の程度は、雌ウシの乳中の対応する体細胞(SCC)または細菌数(CFU)のレベルで判断した結果、黄色ブドウ球菌による負荷に対する雌ウシの防御と有意に相関している(
図4C)。
【0235】
図19および20に示す結果は、免疫化ワクチンの組み合わせ(SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL0029-1867とともに投与したΔ720ΔhemB黄色ブドウ球菌)に含まれる弱毒生株Δ720ΔhemBは、タンパク質混合物での免疫化(SACOL0029、SACOL0442、SACOL0720およびSACOL0029-1867)でみられたものよりも有意に高いSACOL0029-1867融合物およびSACOL0029タンパク質に対するIgG2a/IgG1抗体比を誘導し、有意にバランスの取れたTh1/Th2応答をもたらすことを示している。
【0236】
上記の例21~25は、タンパク質混合組成物における異なる抗原(例えば、SACOL0029-1867融合物を含む)での免疫化により強力な抗体応答が得られたとしても、これらの抗原と弱毒生株との組み合わせによるマウスの免疫化は、一部の特異抗原(例えば、SACOL0029)に対する高い抗体価を誘導すること、その他のブドウ球菌タンパク質(例えば、ClfA)に対する抗体を産生すること、および生株と同時投与される抗原に対するよりバランスの取れたIgG2a/IgG1比(より強力なTh1型応答の優れたマーカー)を達成することにより、黄色ブドウ球菌に対する免疫応答を有意に改善したことを示している。
【0237】
例26:黄色ブドウ球菌株ΔhemBΔ720における組換えタンパク質の発現-ワクチン番号8、9、10など
遺伝子SACOL0442、SACOL0720、SACOL0029および/もしくはSACOL1867に加え、遺伝子(もしくはそのフラグメント)SACOL0029およびSACOL1867(SACOL0029-SACOL1867)の融合物(例えば、サイズ50AA以上)、SACOL720および/もしくはSACOL0442のフラグメント(例えば、エピトープ)の融合物(融合物720-720)(融合物442-720)または遺伝子もしくはそのフラグメントの他のいずれかの融合物、例えば、SACOL0029-SACOL0442、SACOL0029-SACOL0720、SACOL0029-SACOL0720-SACOL0442、SACOL0029-SACOL0720-SACOL1867、SACOL0029-SACOL1867-SACOL0442、SACOL0442-SACOL0029-SACOL0720、SACOL0442-SACOL0029-SACOL0720、SACOL0442-SACOL1867-SACOL0720、SACOL0720-SACOL0442-SACOL1867、SACOL04029-SACOL1867-SACOL0720-SACOL0442を、構成的プロモーター(プラスミドpCN40に由来するPblaZ)(Charpentier et al., 2004)の下でプラスミドpCN36(Charpentier et al., 2004)においてクローン化し、黄色ブドウ球菌ΔhemBΔ720株において発現させる。本明細書で提案する特定のタンパク質抗原は、外毒素、エンテロトキシンもしくはスーパー抗原(例えば、SACOL0442)または宿主防御に対する防御に有用なタンパク質(例えば、SACOL0720)であると予測され、哺乳類の免疫系および抗体産生と潜在的に干渉する可能性があり、ならびに/あるいは、宿主において多少の毒性を示す。そのような干渉は、本明細書に記載のワクチン組成物および製剤では認められなかったが、クローン化した遺伝子がビルレンスを補完しないように、黄色ブドウ球菌ΔhemBΔ720株において発現するタンパク質またはポリペプチドを修飾することが有用であり得る。そのような目的のために、分子生物学的手法を用いて、免疫原性を失うことなく、そのようなタンパク質活性に関与する推定上の領域を欠失または変異させることが可能である(Chang et al., 2008)。これは、本発明のワクチン組成物の抗原を調製するために出願人が用いたアプローチである。
【0238】
構築された発現ベクターの1つを保有する各黄色ブドウ球菌ΔhemBΔ720株による個々の組換えタンパク質産物の発現を、LC-MS/MS分析により検証する。簡潔に述べると、15μg/mlテトラサイクリンで、BHI中、中対数期まで増殖させた株を遠心分離し、ペレットをエタノールで不活性化した。細胞溶解およびトリプシン消化手順まで、試料を-20℃で保存した。試料を37℃でリゾスタフィンおよびトリプシンでインキュベートした後、ガラスビーズおよびビーズビーターを用いた機械的均質化による細胞破壊を行う。次に、壊死組織片を除去するために、ライセートを、4℃で13000rpmで25分間遠心分離し、トリプシンによるタンパク質消化後、標準手順により還元およびアルキル化を実施し、LC-MS/MSのMRM法を用いたタンパク質検出のために試料を注射した。
【0239】
あるいは、組換えタンパク質の発現を、バクテリアライセートのウエスタンブロットによっても確認する。
【0240】
例27:抗原を発現する弱毒株によるマウスの免疫化-ワクチン番号8など
CD-1雌マウスに対し、2週間隔で2回の皮下注射によりワクチン接種する。構築された発現ベクターの1つを保有するまたはしない各黄色ブドウ球菌ΔhemBΔ720株を、生理食塩水に希釈し、用量あたり100μlの最終容量で投与する。第1群には、二重変異体株単独を投与する。第2群には、融合物SACOL0029-1867を発現する二重変異体株を投与する。第3群には、融合物SACOL0029-0442を発現する二重変異体株を投与する。第4群には、融合物SACOL0029-0720を発現する二重変異体株を投与する。第5群には、一方が融合物SACOL0029-1867を発現し、もう一方が融合物SACOL0029-0442を発現する二重変異体株の混合物を投与する。第6群には、一方が融合物SACOL0029-1867を発現し、もう一方が融合物SACOL0029-0720を発現する二重変異体株の混合物を投与する。第7群には、二重変異体株の混合物を投与する。血液試料を、初回注射の直前および2回目の注射の12日後に採取する。試料を室温で1時間凝固させ、4℃で10分間、2000gで遠心分離する。上澄み(血清)を採取し、その後の分析まで-20℃で保存する。マウスを27日目に安楽死させ、心臓穿刺により血液を採取する。免疫血清を回収し、分注し、免疫前血清用として保存する。
【0241】
ワクチン接種に対する免疫応答を、黄色ブドウ球菌の全細胞(Wood株)または特異組換えタンパク質に対する血清中ポリクローナルIgG抗体の存在に関して、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により評価する。抗マウスIgG-HRP(HRP:西洋ワサビペルオキシダーゼ)を二次抗体として用いて、分光光度計を用いたペルオキシダーゼ活性による3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質酸化の比色産生量を検出する。
【0242】
【配列表】