(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】クーラント処理装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20221122BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20221122BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20221122BHJP
B03C 1/10 20060101ALI20221122BHJP
B03C 1/14 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q17/00 A
B03C1/00 A
B03C1/10 A
B03C1/14 101
(21)【出願番号】P 2019547921
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2018028464
(87)【国際公開番号】W WO2019073662
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017199030
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】巌 義輝
(72)【発明者】
【氏名】板谷 開盛
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184241(JP,A)
【文献】特開2011-237459(JP,A)
【文献】特開2004-093256(JP,A)
【文献】国際公開第2014/088620(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 17/00
B03C 1/00
B03C 1/10
B03C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置であって、
複数の磁石を配置した回転ドラムと、前記回転ドラムの回転異常を検知する回転検知器と、前記回転ドラムと従動回転する従動回転体を備え、
前記回転検知器は、前記従動回転体の回転異常を検知することにより前記回転ドラムの回転異常を検知することを特徴とする、クーラント処理装置。
【請求項2】
使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置であって、
複数の磁石を配置した回転ドラムと、前記回転ドラムの回転異常を検知する回転検知器と、前記回転ドラムと従動回転する絞りローラを備え、
前記回転検知器は、前記絞りローラの回転異常を検知することにより前記回転ドラムの回転異常を検知することを特徴とする、クーラント処理装置。
【請求項3】
使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置であって、
複数の磁石を配置した回転ドラムと、前記回転ドラムの回転異常を検知する回転検知器と、
前記クーラント処理装置の前記回転ドラムを内側に収容する本体に流入するクーラント液の流入量を調整する流入量調整手段を備え、
前記流入量調整手段は、前記回転検知器により検知された前記回転ドラムの回転異常に応じて流入量を制御することを特徴とする、クーラント処理装置。
【請求項4】
使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置であって、
複数の磁石を配置した回転ドラムと、前記回転ドラムの回転異常を検知する回転検知器と、
前記クーラント処理装置の前記回転ドラムを内側に収容する本体にクーラント液を供給するための供給流路と、前記供給流路から分岐し、前記本体へのクーラント液の供給を回避するための回避流路と、前記供給流路及び前記回避流路の切換えを行う切換え弁と、を備え、
前記切換え弁は、前記回転検知器により検知された前記回転ドラムの回転異常に応じて流路を切換えることを特徴とする、クーラント処理装置。
【請求項5】
前記クーラント処理装置は、前記回転検知器から得られたデータを、2以上のデータ区分に区別し、各データ区分に応じた処理を実行する制御部を備えたことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のクーラント処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みクーラント液に含まれる金属成分等の磁性体を除去するためのクーラント処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工機械としては磁性金属を被切削材とする加工機械があり、このような金属加工機械にはクーラント液(冷却液)が使用される。使用されたクーラント液は、切削屑を含有するクーラント液として回収される。回収された使用済みクーラント液は、切削屑を分離することで再利用される。クーラント液から切削屑を分離する装置としては、磁石により磁性体である切削屑等を分離するクーラント処理装置が知られている。例えば、特許文献1には、複数の磁石を配置した回転ドラムを備え、使用済みクーラント液中の切削屑等を分離する回転ドラム型磁気分離装置が記載されている。回転ドラム型磁気分離装置では、回転ドラムと回転ドラムに沿って配置された底板の間を使用済みクーラント液が通過することにより、回転ドラムの磁力が作用して切削屑を分離又は回収する。また、回転ドラムの両端にはスプロケットが設けられており、モータの回転を伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転ドラムのスプロケットが欠損する等のトラブルが生じると、回転ドラムの回転が停止したり、回転不良を生じたりする場合がある。回転ドラムが停止した状態でクーラント処理装置にクーラント液が供給されると、回転ドラムと底板の間に磁性体が堆積して、クーラント液の流れが停止する。クーラント液をクーラント処理装置に供給し続けると、クーラント処理装置の排出部からクーラント液が排出されず、クーラント処理装置の本体の上端からオーバーフローする等の問題が生じる。クーラント液のオーバーフローが発生すると、クーラント処理装置の内部や周囲を汚染するため、清掃作業に多大な労力を要する。
【0005】
そこで、本発明の課題は、使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置において、回転ドラムの停止によるクーラント液のオーバーフロー等の問題を未然に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題について鋭意検討した結果、本発明者は、使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置において、回転ドラムの回転異常を検知することにより、回転ドラムの異常停止を直ちに発見し、クーラント液がオーバーフローする等の問題の発生を未然に防止できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のクーラント処理装置である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明のクーラント処理装置は、使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置であって、複数の磁石を配置した回転ドラムと、前記回転ドラムの回転異常を検知する回転検知器と、を備えたことを特徴とする。
このクーラント処理装置によれば、回転ドラムの回転異常を検知する回転検知器を備えるため、回転ドラムの異常停止を直ちに発見することができる。よって、クーラント液のオーバーフロー等の問題の発生を未然に防ぐことができる。
【0008】
本発明のクーラント処理装置の一実施態様としては、クーラント処理装置は、回転ドラムを内側に収容する本体を備え、回転検知器は、本体の外側に設置するという特徴を有する。
この特徴によれば、回転検知器がクーラント処理装置の本体の外側に配置されているため、クーラント液による回転検知器への汚染が防止され、回転異常を正確に検知することができる。
【0009】
本発明のクーラント処理装置の一実施態様としては、クーラント処理装置は、回転ドラムと従動回転する従動回転体を備え、回転検知器は、従動回転体の回転異常を検知することにより回転ドラムの回転異常を検知するという特徴を有する。
この特徴によれば、回転検知器は、従動回転体の回転異常を検知し、間接的に回転ドラムの回転異常を検知する。クーラント処理装置の運転時には、回転ドラムは、下側略半分をクーラント液に浸した状態となる。そのため、回転ドラムに回転検知器を設置すると、クーラント液により回転検知器が汚染する恐れがある。そこで、従動回転体を汚染し難い位置に設置し、間接的に回転ドラムの回転異常を検知することにより、クーラント液による回転検知器への汚染が防止され、回転異常を正確に検知することができる。
【0010】
本発明のクーラント処理装置の一実施態様としては、クーラント処理装置は、回転ドラムと従動回転する絞りローラを備え、回転検知器は、絞りローラの回転異常を検知することにより回転ドラムの回転異常を検知するという特徴を有する。
この特徴によれば、回転検知器は、絞りローラの回転異常を検知し、間接的に回転ドラムの回転異常を検知する。クーラント処理装置の運転時には、回転ドラムは、下側略半分をクーラント液に浸した状態となる。一方、絞りローラは、クーラント液の液面より上部に設置される。よって、回転検知器が絞りローラの回転異常を検知し、間接的に回転ドラムの回転異常を検知することにより、クーラント液による回転検知器への汚染が防止され、回転異常を正確に検知することができる。
【0011】
本発明のクーラント処理装置の一実施態様としては、クーラント処理装置は、本体に流入するクーラント液の流入量を調整する流入量調整手段を備え、流入量調整手段は、回転検知器により検知された回転ドラムの回転異常に応じて流入量を制御するという特徴を有する。
この特徴によれば、回転ドラムの回転が停止した場合に、直ちに本体に流入するクーラント液の流入量を低下又は停止させることができる。そのため、クーラント液のオーバーフロー等を防止することができる。
また、回転ドラムの回転異常として回転数が低下した場合に、クーラント処理装置が磁性体を除去する作用が低下する。しかし、本体に流入するクーラント液の流入量を低下することにより、クーラント液が時間をかけて回転ドラムと底板の間を通過するため、クーラント液から磁性体を十分に除去することができる。
【0012】
本発明のクーラント処理装置の一実施態様としては、クーラント処理装置は、本体にクーラント液を供給するための供給流路と、供給流路から分岐し、本体へのクーラント液の供給を回避するための回避流路と、供給流路及び回避流路の切換えを行う切換え弁と、を備え、切換え弁は、回転検知器により検知された回転ドラムの回転異常に応じて流路を切換えるという特徴を有する。
この特徴によれば、クーラント液の通過する流路を供給流路から回避流路に切換える切換え弁を備えるため、簡単な操作で素早く本体へのクーラント液の供給を停止することができる。また、回避流路により本体への供給を回避したクーラント液を、ろ過処理等の他の磁性体除去装置に供給することにより、クーラント液処理システム全体の運転を停止せずに、クーラント液のオーバーフロー等を防止することができる。
【0013】
本発明のクーラント処理装置の一実施態様としては、クーラント処理装置は、回転検知器から得られたデータを、2以上のデータ区分に区別し、各データ区分に応じた処理を実行する制御部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、例えば、回転検知器から検知された回転異常のデータを、回転ドラムの回転数が低下した状態を示すデータ区分と、回転ドラムが停止した状態を示すデータ区分に分け、回転数が低下した状態のデータ区分では、本体に流入する使用済みクーラント液の流入量を低下するように制御し、回転が停止した状態のデータ区分では、本体への使用済みクーラント液の供給を停止するなど、各データ区分に応じた処理を実行することができる。これにより、クーラント液のオーバーフロー等の問題を防止しつつ、クーラント処理装置の運転を可能な限り継続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用済みクーラント液から磁性体を除去するクーラント処理装置において、回転ドラムの停止によるクーラント液のオーバーフロー等の問題を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置の内部の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置の外部の構造を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置の回転検知器の構造を説明する概略説明図である。なお、
図3は、
図2の一点鎖線A-Aにおける断面図を黒矢印方向から見た図である。
【
図4】本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置の制御部による制御の一例を説明するフローチャート図である。
【
図5】本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置を備えたクーラント液処理システムの構造を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第二の実施態様のクーラント処理装置の外部の構造を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第二の実施態様のクーラント処理装置の回転検知器の構造を説明する概略説明図である。なお、
図7は、
図6の一点鎖線B-Bにおける断面図を黒矢印方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
クーラント液は、磁性金属を被切削材とする金属切削加工機械等に供給される冷却液である。クーラント液は、金属切削加工機械等の冷却液として使用すると、磁性スラッジ等の磁性体を含む使用済みクーラント液として排出される。本発明のクーラント処理装置は、使用済みクーラント液に含有する磁性スラッジ等の磁性体を磁力によって回収するものである。使用済みクーラント液としては、磁性体を含む液体であれば、特に制限されず、油性の液体でも、水溶性の液体でもよい。
【0017】
以下に、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
〔第一の実施態様〕
図1には、本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置100の内部の構造を示す。本発明のクーラント処理装置100は、矩形状の筐体からなる本体1と、本体1の幅方向(
図1の紙面垂直方向)にわたって懸架された回転ドラム2と、回転ドラム2と当接して回転する絞りローラ8を備えている。本体1には、本体1の内部に磁性スラッジ(磁性体)を含むクーラント液を流入する流入部5と、磁性スラッジが除去された処理液を排出する処理液排出部6aと、磁性スラッジを排出する磁性体排出部6bを備えている。なお、回転ドラム2は、流入部5と処理液排出部6aの間に配置されている。
【0018】
本体1の下部には、回転ドラム2の形状に沿って形成された底板1aが設けられ、クーラント液を貯留する液溜め部1bが形成されている。ポンプ等により本体1へ供給されたクーラント液は、流入部5から流入し、液溜め部1bに一時的に貯留された後、回転ドラム2と底板1aの間を通過する。回転ドラム2と底板1aの間を通過する際に、回転ドラム2の磁束によりクーラント液に含まれる磁性スラッジが回転ドラム2に付着する。回転ドラム2により磁性スラッジが除去された処理液は、底板1aを越流して、処理液排出部6aから排出される。
【0019】
また、本体1の内部には、流入部5と離間して整流壁9が設置されている。整流壁9は、本体1の天面から吊り下げられた板材からなり、その下端は、液溜め部1bに貯留されたクーラント液の液面下に位置する。流入したクーラント液は、整流壁9と底板1aの間を通過する際に流速が高まるため、整流壁9は、液溜め部1bの底部への磁性スラッジの堆積を抑制するという効果を奏する。
【0020】
<回転ドラム>
回転ドラム2は、磁性スラッジを磁着してクーラント液から分離するものである。回転ドラム2は、クーラント液の流れに対して略直交する方向に、略水平に軸支されている。また、回転ドラム2は、下側略半分をクーラント液の液面下に浸し、上側略半分は液面から出るように設置されている。
【0021】
回転ドラム2は、内筒2aと外筒2bの二つの円筒体を備え、内筒2aの外周には複数の磁石3が固定されている。複数の磁石3は、外筒2bの外周面に所定の磁力を作用させて外筒2bの外周面に磁性スラッジを磁着させることができる。なお、二つの円筒体は、ステンレス鋼等の非磁性材で形成されており、円筒体からは磁力が発生しない。
【0022】
回転ドラム2は、内筒2aの外周に固定された磁石3の配置により、外筒2bの外周面に磁力を作用させる範囲を設定することができる。外筒2bの外周面に磁力を作用させる範囲は、回転ドラム2の外径や、スクレーパ7の位置等によって適宜設計する。
図1に示すように、第一の実施態様のクーラント処理装置100では、内筒2aの外周面の略3/4の範囲に磁石が配置されている。すなわち、回転ドラム2の液溜め部1bに浸漬する部分から頂上部までの外筒2bの外周面の略3/4の範囲に磁力を作用させている。また、内筒2aの外周面の残りの略1/4には、磁石を配置せず、外筒2bの外周面の残りの略1/4(スクレーパ7の近傍)に磁力を作用させていない。
【0023】
次に、
図3を参照して、回転ドラム2の本体1への固定手段について説明する。なお、
図3において、回転ドラム2の領域については、
図2の一点鎖線A-Aにおける断面図ではなく、回転ドラム2の断面図を示した。
図3に示すように、回転ドラム2は、中心軸としてドラム軸2cを備え、ドラム軸2cは、本体1の内壁から突設した台座1cにボルト等の固定部材により固定されている。
【0024】
内筒2a(
図3では、内筒2a及び磁石3の表示は省略。)は、ドラム軸2cに直接的に固定されている。一方、外筒2bは、その両端に端円盤2fが固定されており、端円盤2fの中心には、ボールベアリング等の軸受2dを備えている。そして、外筒2bは、この軸受2dを介してドラム軸2cに設置される。
【0025】
また、一方の端円盤2f(
図3に図示する端円盤とは反対側の端円盤。図示しない。)の外側(本体1の側壁側)には、モータ4の駆動力を伝達する駆動スプロケットが固定されており、他方の端円盤2f(
図3に図示する端円盤)の外側(本体1の側壁1d側)には、モータ4の動力を絞りローラ8に伝達する従動スプロケット2eが固定されている。
【0026】
駆動スプロケット(図示しない。)は、モータ4とチェーンを介して連結されており、モータ4の駆動力が、チェーン、駆動スプロケット、端円盤を介して、回転ドラム2の外筒2bに伝達する。これにより、回転ドラム2の外筒2bが回転する。なお、外筒2bの回転方向は、下方を通過するクーラント液の流れと逆方向(
図1の紙面から見て反時計回り)である。
従動スプロケット2eは、絞りローラ8のローラ側スプロケット8b(
図3参照。)とチェーン18を介して連結されており、モータ4の動力を、回転ドラム2の外筒2b、端円盤2f、従動スプロケット2e、チェーン18を介して絞りローラ8に伝達する。
【0027】
なお、第一の実施態様では、一つの回転ドラム2を備えたクーラント処理装置を例示したが、本発明のクーラント処理装置は、複数の回転ドラムを備えたものでもよい。また、外筒を固定し、内筒を回転させるタイプの回転ドラムでもよい。
【0028】
<絞りローラ>
回転ドラム2の頂上部近傍には、回転ドラム2に磁着した磁性スラッジから液分を搾り取るための絞りローラ8が設置されている。
図3に示すように、絞りローラ8は、ローラ軸8aと、ローラ軸8aに固定されたローラ側スプロケット8b及びローラ本体8cを備える。また、ローラ軸8aの一端は、本体1の外側まで延在し、先端に回転検知器10を構成する回転子10bが固定されている。
【0029】
ローラ側スプロケット8bは、上述したとおり、回転ドラム2の端円盤2fに固定された従動スプロケット2eとチェーン18を介して連結される。これにより、絞りローラ8は、回転ドラム2と連動して回転する。
【0030】
ローラ本体8cは、外周面にゴム等の弾性体を表面に配してあり、所定の押圧で回転ドラム2の外筒2bの外周面に当接されている。ローラ本体8cの表面に配した弾性体としては、CR(クロロプレン)系ゴム、NBR(ニトリル)系ゴム等の弾性体が主流であるが、例えば、ポリエステルポリオールを主成分とした未架橋のポリウレタン材を用いてもよい。
【0031】
<スクレーパ>
回転ドラム2の頂上部近傍には、絞りローラ8により液分を絞り取られた磁性スラッジを回転ドラム2から掻き取るためのスクレーパ7が設置されている(
図1参照。)。スクレーパ7は、磁力の作用しない領域に設置され、回転ドラム2の外筒2bの外周面に当接している。
【0032】
次に、回転ドラム2の作動について説明する。クーラント液に浸漬している回転ドラム2の外周面には、磁力の作用によって磁性スラッジが付着する。ここで、回転ドラム2の外筒2bを回転すると、磁性スラッジは、回転ドラム2の外周面に磁着しつつ、外筒2bの外周面との摩擦力によって外筒2bの回転方向に移動する。そして、回転ドラム2の外周面と絞りローラ8との間を磁着された磁性スラッジが通過することにより、磁性スラッジの液分が絞り取られるため、液分の少ない磁性スラッジを分離回収することができる。次いで、液分を絞り取られた磁性スラッジは、磁力の作用しない位置に移動し、スクレーパ7により、回転ドラム2の外周面から掻き取られる。掻き取られた磁性スラッジSは、磁性体排出部6bから排出される。
【0033】
<回転検知器>
回転検知器10は、回転ドラム2の回転異常を検知するものである。回転ドラム2は、スプロケットが欠損する等のトラブルによって、モータ4の回転による駆動力がうまく伝達できず、回転ドラム2の外筒2bの回転が停止したり、回転不良を生じたりする(回転異常になる)場合がある。回転ドラム2が停止した状態でクーラント処理装置100にクーラント液が供給されると、回転ドラム2と底板1aの間に磁性スラッジが堆積して、クーラント液の流れが停止する。クーラント液をクーラント処理装置100に供給し続けると、クーラント処理装置100の処理液排出部6aからクーラント液が排出されず、クーラント処理装置100の本体1の上端からオーバーフローする等の問題が生じる。本発明のクーラント処理装置100は、回転検知器10を設けることにより、回転ドラムの異常停止を直ちに発見し、クーラント液がオーバーフローする等の問題を生じる前に対処することができる。
【0034】
図2に示すように、回転検知器10は、本体1の外側に設置されている。また、
図3に示すように、回転検知器10は、絞りローラ8のローラ軸8aの先端に固定された回転子10bと、回転子10bの近傍に設置された近接スイッチ10aを備える。
【0035】
回転子10bは、矩形の板状部材であり、ローラ軸8aの回転と共に回転する。近接スイッチ10aは、回転子10bとの距離を検知する装置である。回転子10bが一定の回転数で回転すると、近接スイッチ10aと回転子10bとの距離が一定のリズムで変動するため、安定した回転数であることを認識することができる。一方、回転子10bの回転数に異常が生じると、一定のリズムで変動する近接スイッチ10aと回転子10bとの距離が不規則に変動する。この不規則な変動から絞りローラ8の回転異常を検知することができる。また、絞りローラ8は、ローラ側スプロケット8bを介して回転ドラム2の外筒2bの回転と連動しているため、絞りローラ8の回転異常を検知することにより、回転ドラム2の回転異常が発生していると判断することができる。なお、近接スイッチ10aにより検出されたデータは、コンピュータ等の制御部に送信される。
【0036】
回転検知器10は、回転ドラム2の回転異常を検知することができれば、どのような装置でもよい。第一の実施態様の近接スイッチのように、回転子との距離を検知するもの以外にも、例えば、絞りローラ8や回転ドラム2の外周面やスプロケット等に反射体や磁石を付し、光学検知センサや磁気センサ等で反射体や磁石を検知する手段や、モータ4の回転数をインバータ制御し、インバータの電流値の変動により回転異常の検知する手段等が挙げられる。モータ4が正常に回転している場合でも、スプロケットが欠損等している場合には、回転ドラム2が正常に回転していないことがあるため、回転ドラム2又は回転ドラム2の回転と同期して回転する回転体の回転異常を検知することが好ましい。
【0037】
また、回転検知器10を設置する位置は、どのような位置でもよい。第一の実施態様では、本体1の外側に設置されているが、本体1の内側に回転検知器10を設置してもよい。本体1の外側に配置することにより、クーラント液による回転検知器10への汚染が防止され、回転異常を正確に検知することができる。
【0038】
本体1の外側に回転検知器10を配置する場合、回転検知器10を設置するためのスペースを最小化するためには、回転軸のみを延設することが好ましい。第一の実施態様のクーラント処理装置100では、回転ドラム2のドラム軸2cは固定軸であるため、絞りローラ8のローラ軸8aを延設し、絞りローラ8の回転異常を検知することにより、間接的に回転ドラム2の回転異常を検知する。また、絞りローラ8は、クーラント液の液面より上部に設置されているため、クーラント液による回転検知器10の汚染が抑制されるという効果もある。
なお、回転ドラム2の回転異常の検知は、第一の実施態様のように、間接的に回転異常を検知してもよいし、回転ドラム2に回転検知器10を設けて直接的に回転ドラム2の回転異常を直接検知してもよい。
【0039】
<制御部>
本発明のクーラント処理装置100は、回転検知器10において回転ドラム2の回転異常を検知した場合に、クーラント液がオーバーフローする等の問題を生じないように自動制御する制御部を設けることが好ましい。制御部による制御手段としては、本体1へのクーラント液の流入量を制限する手段であれば、特に制限されない。例えば、本体1に流入するクーラント液の流入量を調整する流入量調整手段により本体1への流入量を低下又は停止する制御手段や、本体1へのクーラント液の供給流路を分岐し、本体1へのクーラント液の供給を回避するための回避流路を設けて、切換え弁の操作によりクーラント液の流れを回避流路に切換える制御手段などが挙げられる。
なお、本発明のクーラント処理装置は、制御部による制御だけでなく、回転異常を検知した際に、作業員がポンプ等の流量を調整しても、回避流路への切換え弁を操作してもよい。
【0040】
流入量調整手段とは、回転検知器10により検知された回転異常に応じて、流量を制御するものである。例えば、回転検知器10からのデータが制御部に入力され、そのデータに応じて、制御部から流量を調整する指令があるポンプ等が挙げられる。
【0041】
制御部は、回転検知器から得られたデータを、2以上のデータ区分に区別し、各データ区分に応じた処理を実行することが好ましい。例えば、回転検知器から得られたデータを、回転が停止する回転異常が生じた場合のデータ区分(1)と、回転数が変動する回転異常が生じた場合のデータ区分(2)に分け、各データ区分に応じた処理を実行する。上記データ区分(1)に応じた処理としては、例えば、流入量調整手段により本体1へのクーラント液の流入を停止する処理、供給流路の切換え弁を切換えてクーラント液を回避流路に回避する処理等が挙げられる。また上記データ区分(2)に応じた処理としては、例えば、流入量調整手段により本体1へのクーラント液の流入量を低下する処理等が挙げられる。
【0042】
図4は、本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置の制御部の制御の一例を説明するフローチャート図である。
図4に示すように、初めにクーラント処理装置100の運転を開始する(Step1)。次に、回転検知器10により絞りローラ8の回転を検知することにより、間接的に回転ドラム2の回転を監視する(Step2)。制御部には、データ区分(1)として、回転ドラム2の回転が停止する場合のデータと、データ区分(2)として、回転ドラム2の回転数が変動する回転異常が生じる場合のデータが記憶されている。回転検知器10によるデータがデータ区分(1)に該当するかどうかを判断し(if1)、データ区分(1)に該当する場合は、供給流路に設置したポンプを停止し、本体1へのクーラント液の供給を停止する(Step3)。次いで、警報を開始する(Step4)。警報は、アラーム音やアラーム画面表示等により実施する。一方、回転検知器10によるデータがデータ区分(1)に該当しない場合は、データ区分(2)に該当するかどうかを判断する(if2)。データ区分(2)に該当する場合には、供給流路に設置したポンプによる本体へのクーラント液の供給量を低下し(Step5)、次いで、警報を開始する(Step6)。データ区分(2)に該当しない場合には、回転異常を監視しつづける。この制御により、回転ドラム2の回転異常に直ちに気づき、クーラント液のオーバーフロー等の問題の発生を未然に防ぐことができる。
【0043】
警報やアラーム画面表示は、クーラント処理装置にて実施してもよいし、クーラント処理装置から離れて設置されている制御部(室)にて実施してもよい。作業員による制御では、作業員は常時制御部を監視していることから、アラーム画面表示は制御部に表示することが好ましい。また、アラーム画面表示を制御部に表示することにより、制御部からポンプの操作を直ちに行うこともできる。
【0044】
[クーラント液処理システム]
図5は、本発明の第一の実施態様のクーラント処理装置100を備えたクーラント液処理システム200及び工作機械300の全体構成を示す。なお、工作機械300は、クーラント液を使用する研削盤や切削機等の金属切削加工機械であり、大小様々な切粉等の粒子が発生するものである。
【0045】
本発明のクーラント液処理システム200は、工作機械300から排出された使用済みクーラント液から磁性スラッジを沈降分離するスラッジコンベア16と、スラッジコンベア16の上清から磁性スラッジを磁気分離するクーラント処理装置100と、クーラント処理装置100の処理液を貯留するダーティー液槽12と、ダーティー液槽12に貯留された処理液から磁性スラッジをフィルタ等でろ過するためのろ過装置15と、ろ過装置15でろ過されたろ液を貯留するクリーン槽11を備えている。そして、クリーン槽11に貯留されたろ液を工作機械300のクーラント液として再利用する。
【0046】
スラッジコンベア16は、貯留槽の底部に沈降したスラッジを掻き寄せて除去する装置である。工作機械300から排出された使用済みクーラント液は、流路L2を介してスラッジコンベア16に供給され、沈降分離により沈降した磁性スラッジが除去される。スラッジコンベア16の上清は、供給流路L3を介してポンプP3により本発明のクーラント処理装置100の本体1に供給される。クーラント処理装置100における磁気分離処理は上述したとおりである。
【0047】
クーラント処理装置100で処理された処理液は、流路L4を介してダーティー液槽12に供給される。ダーティー液槽12に貯留された処理液は、流路L5を介してポンプP2によりろ過装置15に供給されて、磁性スラッジが除去される。ろ過装置15によりろ過処理されたろ液は、流路L6を介してクリーン液槽11に供給される。
【0048】
また、クリーン液槽11とダーティー液槽12は、一つの処理槽に区画壁13を設けることにより形成されている。更には、区画壁13の上部には開口14が形成され、クリーン液槽11とダーティー液槽12が上部空間において連通している。なお、クリーン液槽11とダーティー液槽12は、別槽で形成してもよく、その場合には、配管等によりクリーン液槽11とダーティー液槽12の上部空間を連通すればよい。クリーン液槽11とダーティー液槽12の上部空間を連通することにより、クリーン液槽11のろ液が溢流として、ダーティー液槽12に流れ込むことができるため、ろ過装置15でろ過処理される処理量を、工作機械300に供給されるクーラント液の量よりも大きくなるように設定する。これにより、クリーン液槽11の液面が低下して、工作機械300へのクーラント液の供給が停止するというトラブルを防止することができる。
【0049】
なお、上記実施態様のクーラント液処理システム200は、スラッジを除去するための装置として、スラッジコンベア16、本発明のクーラント処理装置100、ろ過装置15を具備するが、クーラント液として再利用できる程度に磁性スラッジを除去することができればよい。これ以外にも、例えば、遠心力によりスラッジを分離除去するサイクロン分離機等を組み合わせてもよい。
【0050】
次に、本発明のクーラント処理装置100において、回転検知器10により回転ドラム2の回転異常を検知した場合に、クーラント液がオーバーフローする等の問題を生じないように制御する方法を説明する。クーラント液処理システム200において、供給流路L3は、切換え弁V1を介して分岐され、本体1へのクーラント液の供給を回避するための回避流路L7を備えている。また、回避流路L7は、ダーティー槽12に連結している。
【0051】
回転検知器10により回転ドラム2の回転異常を検知すると、切換え弁V1が作動して、クーラント液の流れは、供給流路L3から回避流路L7へと切り換わる。そして、クーラント液は、ダーティー槽12に供給されて、ろ過装置15によりろ過処理される。これにより、クーラント処理装置100へのクーラント液の供給が停止するため、オーバーフロー等のトラブルの発生を防止することができる。そして、クーラント処理装置100へのクーラント液の供給が停止している間に、回転ドラム2の異常を調査し、修理することができる。なお、回避流路L7の使用中、ろ過装置15の負荷が一時的に大きくなるが、逆洗等の洗浄処理の頻度を高めることにより対応すればよい。
【0052】
〔第二の実施態様〕
図6は、本発明の第二の実施態様のクーラント処理装置101の内部の構造を示す。第二の実施態様のクーラント処理装置101は、間接的に回転ドラム2の回転異常を検知するために、従動回転体17を備えている。
【0053】
図7に示すように、従動回転体17は、本体1の天面に設置された支持体19に軸支されている。従動回転体17は、従動回転体軸17aとその周囲に固定された従動回転体側スプロケット17bを備え、従動回転体軸17aの端部に回転子10bが固定されている。従動回転体側スプロケット17bは、チェーン18を介して回転ドラム2の従動スプロケットと連結しており、従動回転体17は、回転ドラム2の回転と同期して回転する。
従動回転体17を設けることにより、絞りローラ等を有しないクーラント処理装置であっても、回転検知器10をクーラント液による汚染の恐れのない位置に設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のクーラント処理装置は、磁性金属を被切削材とする金属切削加工機械や、磁性金属を被研磨材とする金属研磨加工機械等におけるクーラント液から磁性体を回収するために利用する。クーラント液としては、油性、水溶性を問わず利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100,101…クーラント処理装置、1…本体、1a…底板、1b…液溜め部、1c…台座、1d…側壁、2…回転ドラム、2a…内筒、2b…外筒、2c…ドラム軸、2d…軸受、2e…従動スプロケット、2f…端円盤、3…磁石、4…モータ、5…流入部、6a…処理液排出部、6b…磁性体排出部、7…スクレーパ、8…絞りローラ、8a…ローラ軸、8b…ローラ側スプロケット、8c…ローラ本体、9…整流壁、10…回転検知器、10a…近接スイッチ、10b…回転子、11…クリーン液槽、12…ダーティー液槽、13…区画壁、14…開口、15…ろ過装置、16…スラッジコンベア、17…従動回転体、17a…従動回転体軸、17b…従動回転体側スプロケット、18…チェーン、19…支持体、200…クーラント液処理システム、L1,L2,L4~L6…流路、L3…供給流路、L7…回避流路、P1~P3…ポンプ、V1…切換え弁、S…磁性スラッジ