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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221122BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61B6/00 331Z
A61B6/00 390Z
G09B23/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019557014
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2018031572
(87)【国際公開番号】W WO2019106897
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017230712
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】難波 真美
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-055152(JP,A)
【文献】特開昭49-121394(JP,A)
【文献】特許第3236048(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/075732(WO,A1)
【文献】特開2015-64487(JP,A)
【文献】特表2012-519902(JP,A)
【文献】谷口 直人,X線CT用標準血管モデルの試作 ,日本放射線技術学会 東北支部雑誌,2017年,第26号,https://jsrt-tohoku.jp/cms/wp-content/uploads/2017/05/de94fbebe6830fb6712057ac2b4b8a68.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内の診断または治療に用いられる医療用デバイスのベンチマークテストおよび技術習得の少なくともいずれかが血管造影装置利用して行われるときに水中に設置される模擬血管として用いられる模擬血管用チューブであって、
X線造影剤が、母材として用いられたシリコーンに混合されてなり、
前記X線造影剤は、アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオキサグル酸、イオトロクス酸メグルミン、イオパミドール、イオメプロール、イオトロラン、およびイオジキサノールのいずれかであり、
前記X線造影剤の重量パーセント濃度は、5%以上、15%以下であることを特徴とする模擬血管用チューブ。
【請求項2】
前記母材は、希釈剤により希釈されており、
前記希釈剤の重量パーセント濃度は、15%以上、25%以下であることを特徴とする請求項1に記載の模擬血管用チューブ。
【請求項3】
前記X線造影剤の重量パーセント濃度は、7.5%以上、12%以下であることを特徴とする請求項1に記載の模擬血管用チューブ。
【請求項4】
前記母材は、希釈剤により希釈されており、
前記希釈剤の重量パーセント濃度は、18%以上、22.5%以下であることを特徴とする請求項3に記載の模擬血管用チューブ。
【請求項5】
前記シリコーンの重量パーセント濃度は、70%であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の模擬血管用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔内の診断または治療に用いられる医療用デバイスのベンチマークテストおよび技術習得の少なくともいずれかのために模擬血管として用いられるチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血管狭窄部の治療では、カテーテルにより経皮的に患部の治療を行う手術手法が用いられている。このような手術手法には、先端にバルーンを有するバルーンカテーテルで狭窄部を押し広げる方法や、ステントと呼ばれる金属の管を留置する方法などが存在する。血管狭窄部の治療の際には、このような手術方法のうちで、狭窄部の性状や患者の状態にあわせて好ましい方法が選択されたり組み合わされたりする。
【0003】
診断用のカテーテルは、このような血管狭窄部の経皮的な治療の際に、狭窄部の性状、形状、形態および構成などを観察し、治療手段を選択するための判断の一助として用いられ、また、治療後の状態の観察にも用いられている。診断用のカテーテルとしては、患部や血管壁に向かって超音波を送信し、患部や血管壁において反射した超音波を受信する超音波診断用カテーテルや、光の干渉を利用して画像を取得する光干渉断層診断用カテーテルなどがある。
【0004】
このような診断または治療のために用いられる医療用デバイス(カテーテル等)のベンチマークテストや技術習得が行われるときには、例えばカテーテル室に設置された血管造影装置(アンギオ装置)が利用されるとともに、例えばシリコーンなどにより形成された模擬血管としてのチューブが用いられる場合がある。この場合には、ベンチマークテストや技術習得の実施者は、例えば水中に設置された模擬血管としてのチューブの中に医療用デバイスを挿入したりチューブから医療用デバイスを抜去したりするとともに、血管造影装置を利用してチューブや医療用デバイスにX線を照射し、X線の透過画像を確認する。
【0005】
このとき、チューブが水中に設置された状態のままでは、チューブはX線の透過画像には写らない。そのため、ベンチマークテストや技術習得の実施者は、任意のタイミングでX線造影剤をチューブの中に注入し、チューブや医療用デバイスにX線を照射して、X線の透過画像を確認する必要がある。ところで、体内に挿入されるチューブとして、先行技術文献に記載の造影剤入りチューブがある(特許文献1)。しかしながら、この医療用のチューブは、体内に用いる医療デバイスであり、ましてや血管を模擬した物性ではないので、本発明の目的を達成できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3236048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、X線造影剤がチューブの中に注入されると、X線造影剤がチューブの中を流れているときには、チューブと、チューブの中に挿入された医療用デバイスの部分と、を区別することが困難となり、X線の透過画像において医療用デバイスの状態を確認することができないおそれがある。
【0008】
また、チューブの中に注入されたX線造影剤がチューブの中に残ったり溜まったりすると、チューブと、チューブの中に挿入された医療用デバイスの部分と、を区別することが困難となり、X線の透過画像において医療用デバイスの状態を確認することができないおそれがある。さらに、チューブが設置された水槽の中の水にX線造影剤が残ったり溜まったりすると、水槽の中の水と、チューブと、医療用デバイスと、を区別することが困難となり、X線の透過画像において医療用デバイスの状態を確認することができないおそれがある。
【0009】
そのため、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得が行われる場合において、血管造影装置が利用されるとともに模擬血管としてのチューブが用いられるときには、一般的に、チューブが設置される水槽の中の水を循環させ、チューブの中に注入されたX線造影剤や、水槽の中のX線造影剤を水槽の外に排出する必要がある。
【0010】
しかし、模擬血管としてのチューブが設置される水槽の中の水を循環させるためには、水を循環させるためのポンプや配管などの装置を設置する必要がある。そのため、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を行う装置が大掛かりになるという問題がある。また、水を循環させるためのポンプや配管などの装置を血管造影装置の周りに設置することが煩雑であるという問題がある。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を血管造影装置を利用して簡易的に行うことができる模擬血管としてのチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、本発明によれば、血管造影装置が利用されるときに模擬血管として用いられるチューブであって、X線造影剤が、母材として用いられたシリコーンに混合されてなるチューブにより解決される。
【0013】
前記構成によれば、X線造影剤が、母材として用いられたシリコーンに混合されている。そのため、母材に混合されたX線造影剤とは異なる別のX線造影剤がチューブの中に外部から注入されなくとも、血管造影装置を利用して、X線の透過画像にチューブを写し出すことができ、X線の透過画像においてチューブを確認することができる。そのため、母材に混合されたX線造影剤とは異なる別のX線造影剤を使用する必要がない。また、母材に混合されたX線造影剤とは異なる別のX線造影剤が不要であるため、チューブが設置される水槽の中の水を循環させる必要がない。そのため、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を行う装置が大掛かりになったり、その装置の設置作業が煩雑になったりすることを抑えることができる。これにより、本発明による模擬血管としてのチューブを用いることで、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を血管造影装置を利用して簡易的に行うことができる。
【0014】
好ましくは、前記X線造影剤の重量パーセント濃度は、5%以上、15%以下であることを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、母材に混合されたX線造影剤とは異なる別のX線造影剤が、水中に設置されたチューブの中に外部から注入されなくとも、血管造影装置を利用して、X線の透過画像にチューブをより確実に写し出すことができる。また、チューブの中に挿入された医療用デバイスの部分をチューブを通してX線の透過画像に写し出すことができる。これにより、ベンチマークテストや技術習得の実施者は、X線の透過画像において、チューブの中に挿入された医療用デバイスの部分をチューブを通して視認することができる。X線造影剤の重量パーセント濃度が約5%程度である場合には、血管造影装置により撮影されたX線写真にチューブをより確実に写し出すことができる。一方で、X線造影剤の重量パーセント濃度が約15%程度である場合には、血管造影装置に接続されたディスプレイ等にX線の線量を抑えつつチューブの生映像を映し出すことができる。
【0016】
好ましくは、前記X線造影剤の重量パーセント濃度は、7.5%以上、12%以下であることを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、母材に混合されたX線造影剤とは異なる別のX線造影剤が、水中に設置されたチューブの中に外部から注入されなくとも、血管造影装置を利用して、X線の透過画像にチューブをより確実に写し出すことができる。また、チューブの中に挿入された医療用デバイスの部分をチューブを通してX線の透過画像に写し出すことができる。これにより、ベンチマークテストや技術習得の実施者は、X線の透過画像において、チューブの中に挿入された医療用デバイスの部分をチューブを通して視認することができる。X線造影剤の重量パーセント濃度が約7.5%程度である場合には、血管造影装置により撮影されたX線写真にチューブをさらに確実に写し出すことができる。一方で、X線造影剤の重量パーセント濃度が約12%程度である場合には、血管造影装置に接続されたディスプレイ等にX線の線量をさらに抑えつつチューブの生映像を映し出すことができる。
【0018】
好ましくは、前記シリコーンの重量パーセント濃度は、70%であることを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、チューブの硬さや剛性を人体の血管の硬さや剛性に近づけることができる。具体的には、模擬血管として用いられるチューブにおいて、血管の周方向の強さ(スティフネスパラメータ)を再現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を血管造影装置を利用して簡易的に行うことができる模擬血管としてのチューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るチューブを表す平面図である。
図2】本実施形態の変形例に係るチューブを表す平面図である。
図3図1に表した切断面A1-A1における断面図である。
図4】血管造影装置により撮影されたチューブのX線写真の一例である。
図5】本発明者が実施した検討結果の一例を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るチューブを表す平面図である。
図2は、本実施形態の変形例に係るチューブを表す平面図である。
図3は、図1に表した切断面A1-A1における断面図である。
【0024】
本実施形態に係るチューブは、生体管腔内の診断または治療に用いられる医療用デバイスのベンチマークテストおよび技術習得の少なくともいずれかが血管造影装置(アンギオ装置)を利用して行われるときに、模擬血管として用いられる。本実施形態の医療用デバイスとしては、例えば診断用のカテーテルや、治療用のカテーテルや、生体管腔内にカテーテルを導入する際に用いられるガイドワイヤなどが挙げられる。
【0025】
本実施形態に係るチューブの形状(外形)は、特には限定されず、図1に表したチューブ2のように一直線状であってもよく、図2に表したチューブ2Aのように主管部21が分岐した形状であってもよい。すなわち、図2に表した変形例に係るチューブ2Aは、主管部21と、第1分岐部22と、第2分岐部23と、を有する。主管部21は、内部に管腔211を有し、任意の位置において第1分岐部22と第2分岐部23とに分岐している。第1分岐部22は、主管部21の管腔211に接続された管腔221を内部に有する。また、第2分岐部23は、主管部21の管腔211に接続された管腔231を内部に有する。チューブがいずれの形状(外形)を有していても同様の効果が得られるため、以下の説明では、図1に表したチューブ2を例に挙げる。
【0026】
図1および図3に表したように、本実施形態に係るチューブ2は、X線造影剤4が母材3に混合されてなり、内部に管腔211を有する。なお、図3に表したチューブ2においては、説明の便宜上、理解を容易にするため、母材3に混合されたX線造影剤4を誇張して模式的に図示している。ただし、母材3に混合されたX線造影剤4は、図3に表したようには必ずしも見えなくともよく、実際とは異なる。
【0027】
チューブ2の母材3としては、シリコーンが用いられている。母材3(シリコーン)の重量パーセント濃度は、約70%程度である。これによれば、チューブ2の硬さや剛性を人体の血管の硬さや剛性に近づけることができる。具体的には、模擬血管として用いられるチューブにおいて、血管の周方向の強さ(スティフネスパラメータ)を再現することができる。
【0028】
X線造影剤4は、チューブ2を形成する工程において母材3に混合され、母材3とともにチューブ2として成形される。すなわち、X線造影剤4は、チューブ2を形成する工程において母材3に練り込まれている。この際、母材3(シリコーン)は、シンナーなどの希釈剤により希釈されている。すなわち、母材3(シリコーン)は、X線造影剤4が母材3に混合される前、あるいはX線造影剤4が母材3に混合され後、シンナーなどの希釈剤により希釈される。
【0029】
X線造影剤4は、X線不透過材料を含みX線造影性を有する限りにおいて特には限定されない。X線造影剤4としては、例えばヨード系造影剤などが挙げられる。具体的には、X線造影剤4としては、例えば、アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオキサグル酸、イオトロクス酸メグルミン、イオパミドール、イオメプロール、イオトロラン、およびイオジキサノールなどが挙げられる。
【0030】
医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得の実施者は、ベンチマークテストや技術習得を行う際に、例えば水中に設置された模擬血管としてのチューブ2の管腔211に医療用デバイスを挿入したりチューブから医療用デバイスを抜去したりするとともに、血管造影装置を利用してチューブ2や医療用デバイスにX線を照射し、X線の透過画像を確認する。
【0031】
このとき、X線造影剤がチューブの母材に混合されていない場合には、チューブが水中に設置された状態のままでは、チューブはX線の透過画像には写らない。そのため、ベンチマークテストや技術習得の実施者は、任意のタイミングでX線造影剤をチューブの管腔内に注入し、チューブや医療用デバイスにX線を照射して、X線の透過画像を確認する必要がある。
【0032】
しかし、X線造影剤がチューブの管腔内に注入されると、X線造影剤がチューブの管腔内を流れているときには、チューブと、チューブの管腔内に挿入された医療用デバイスの部分と、を区別することが困難となり、X線の透過画像において医療用デバイスの状態を確認することができないおそれがある。
【0033】
また、チューブの管腔内に注入されたX線造影剤がチューブの管腔内に残ったり溜まったりすると、チューブと、チューブの管腔内に挿入された医療用デバイスの部分と、を区別することが困難となり、X線の透過画像において医療用デバイスの状態を確認することができないおそれがある。さらに、チューブが設置された水槽の中の水にX線造影剤が残ったり溜まったりすると、水槽の中の水と、チューブと、医療用デバイスと、を区別することが困難となり、X線の透過画像において医療用デバイスの状態を確認することができないおそれがある。
【0034】
そのため、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得が行われる場合において、血管造影装置が利用されるとともに模擬血管としてのチューブが用いられるときには、一般的に、チューブが設置される水槽の中の水を循環させ、チューブの管腔内に注入されたX線造影剤や、水槽の中のX線造影剤を水槽の外に排出する必要がある。
【0035】
しかし、模擬血管としてのチューブが設置される水槽の中の水を循環させるためには、水を循環させるためのポンプや配管などの装置を設置する必要があり、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を行う装置が大掛かりになることがある。また、水を循環させるためのポンプや配管などの装置を血管造影装置の周りに設置することが煩雑になることがある。
【0036】
これに対して、本実施形態に係るチューブ2においては、X線造影剤4が、母材3として用いられたシリコーンに混合されている。そのため、母材3に混合されたX線造影剤4とは異なる別のX線造影剤がチューブ2の管腔211に外部から注入されなくとも、血管造影装置を利用して、X線の透過画像にチューブ2を写し出すことができ、X線の透過画像においてチューブ2を確認することができる。そのため、母材3に混合されたX線造影剤4とは異なる別のX線造影剤を使用する必要がない。また、母材3に混合されたX線造影剤4とは異なる別のX線造影剤が不要であるため、チューブ2が設置される水槽の中の水を循環させる必要がない。そのため、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を行う装置が大掛かりになったり、その装置の設置作業が煩雑になったりすることを抑えることができる。これにより、本実施形態に係る模擬血管としてのチューブ2を用いることで、医療用デバイスのベンチマークテストや技術習得を血管造影装置を利用して簡易的に行うことができる。
【0037】
X線造影剤4の重量パーセント濃度は、5%以上、15%以下であることが好ましい。これによれば、母材3に混合されたX線造影剤4とは異なる別のX線造影剤が、水中に設置されたチューブ2の管腔211に外部から注入されなくとも、血管造影装置を利用して、X線の透過画像にチューブ2をより確実に写し出すことができる。また、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分をチューブ2を通してX線の透過画像に写し出すことができる。これにより、ベンチマークテストや技術習得の実施者は、X線の透過画像において、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分をチューブ2を通して視認することができる。X線造影剤4の重量パーセント濃度が約5%程度である場合には、血管造影装置により撮影されたX線写真にチューブ2をより確実に写し出すことができる。一方で、X線造影剤4の重量パーセント濃度が約15%程度である場合には、血管造影装置に接続されたディスプレイ等にX線の線量を抑えつつチューブ2の生映像を映し出すことができる。
【0038】
すなわち、一般的に、血管造影装置がX線写真を撮影するときに照射されるX線の線量は、血管造影装置がディスプレイ等に生映像を映し出すときに照射されるX線の線量よりも多い。言い換えれば、血管造影装置がディスプレイ等に生映像を映し出すときに照射されるX線の線量は、血管造影装置がX線写真を撮影するときに照射されるX線の線量よりも少ない。そこで、本実施形態に係るチューブ2によれば、X線造影剤4の重量パーセント濃度が約5%程度であっても、チューブ2がX線写真により確実に写し出される。一方で、X線造影剤4の重量パーセント濃度が約15%程度である場合には、X線の線量が抑えられた状態で、チューブ2の生映像が血管造影装置に接続されたディスプレイ等に映し出される。
【0039】
X線造影剤4の重量パーセント濃度は、7.5%以上、12%以下であることがより好ましい。これによれば、X線造影剤4の重量パーセント濃度が約7.5%程度である場合には、血管造影装置により撮影されたX線写真にチューブをさらに確実に写し出すことができる。一方で、X線造影剤4の重量パーセント濃度が約12%程度である場合には、血管造影装置に接続されたディスプレイ等にX線の線量をさらに抑えつつチューブ2の生映像を映し出すことができる。
【0040】
次に、本発明者が実施した検討結果の例を、図面を参照して説明する。
図4は、血管造影装置により撮影されたチューブのX線写真の一例である。
まず、本発明者は、母材3としてのシリコーンと、希釈剤としてのシンナーと、X線造影剤4と、を用いて2種類のチューブ2B、2Cを作成した。
【0041】
チューブ2Bおよびチューブ2Cの両方において、母材3(シリコーン)としては、信越化学工業株式会社の信越シリコーン(登録商標)KE-1603を用いた。X線造影剤4としては、イオパミドールを用い、具体的にはBracco社のイオパミロン(登録商標)を用いた。
【0042】
チューブ2Bおよびチューブ2Cの両方において、母材3(シリコーン)の重量パーセント濃度は、70%である。一方で、X線造影剤4の重量パーセント濃度および希釈剤(シンナー)の重量パーセント濃度については、チューブ2Bとチューブ2Cとにおいて互いに相違させた。すなわち、チューブ2Bにおいて、X線造影剤4の重量パーセント濃度は7.5%であり、希釈剤(シンナー)の重量パーセント濃度は22.5%である。チューブ2Cにおいて、X線造影剤4の重量パーセント濃度は15%であり、希釈剤(シンナー)の重量パーセント濃度は15%である。
【0043】
血管造影装置により撮影されたチューブ2B、2CのX線写真の一例は、図4に表した通りである。すなわち、図4に表した写真では、チューブ2B、2Cが、シャーレ5に貯められた水の中に配置されている。そして、水中に配置されたチューブ2B、2CのX線写真が、血管造影装置により撮影された。図4に表した写真の中で、右側のチューブが、重量パーセント濃度:7.5%のX線造影剤4が母材3(シリコーン)に混合されたチューブ2Bである。図4に表した写真の中で、左側のチューブが、重量パーセント濃度:15%のX線造影剤4が母材3(シリコーン)に混合されたチューブ2Cである。なお、チューブ2Bの管腔211には、ワイヤ6が挿入されている。
【0044】
図4に表した写真によれば、母材3に混合されたX線造影剤4とは異なる別のX線造影剤がチューブ2B、2Cの管腔211に外部から注入されなくとも、チューブ2B、2Cが、血管造影装置により撮影されたX線写真に写し出されている。また、チューブ2Bの管腔211に挿入されたワイヤ6の部分が、チューブ2Bを通してX線写真に写し出されている。これにより、ベンチマークテストや技術習得の実施者は、図4に表したX線写真において、チューブ2Bの管腔211に挿入されたワイヤ6の部分をチューブ2Bを通して視認することができる。
【0045】
図5は、本発明者が実施した検討結果の一例を表す表である。
本発明者は、図4に関して前述した材料を用いて、本実施形態に係るチューブ2を作成した。母材3(シリコーン)の重量パーセント濃度は、70%である。X線造影剤4の重量パーセント濃度は、図5に表したように、5%未満、5%、7.5%、12%、15%、および15%よりも高い濃度の6種類である。これに伴い、希釈剤(シンナー)の重量パーセント濃度は、25%よりも高い濃度、25%、22.5%、18%、15%、15%未満の6種類である。そして、本発明者は、前述した重量パーセント濃度により作成されたチューブ2であって水中に配置されたチューブ2のX線写真を血管造影装置により撮影した。
【0046】
本検討についての結果の一例は、図5に表した通りである。すなわち、図5に表したように、X線造影剤4の重量パーセント濃度が5%、7.5%、12%、15%、および15%よりも高い濃度である場合には、母材3に混合されたX線造影剤4とは異なる別のX線造影剤がチューブ2の管腔211に外部から注入されなくとも、チューブ2がX線写真に写し出された。図5に表した「X線透過画像でのチューブの視認性」の欄における「○」の記号は、チューブ2がX線写真に写し出されたことを意味している。一方で、X線造影剤4の重量パーセント濃度が5%未満である場合には、チューブ2がX線写真には写し出されなかった。図5に表した「X線透過画像でのチューブの視認性」の欄における「×」の記号は、チューブ2がX線写真に写し出されなかったことを意味している。
【0047】
また、X線造影剤4の重量パーセント濃度が5%、7.5%、12%、および15%である場合には、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分が、チューブ2を通してX線写真に写し出された。図5に表した「X線透過画像でのチューブの視認性」の欄における「○」の記号は、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分がチューブ2を通してX線写真に写し出されたことを意味している。一方で、X線造影剤4の重量パーセント濃度が5%未満である場合には、チューブ2がX線写真には写し出されなかったため、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分と、チューブ2の管腔211に挿入されていない医療用デバイスの部分(チューブ2の外部に存在する医療用デバイスの部分)と、を区別できなかった。図5に表した「X線透過画像でのチューブの視認性」の欄における「-」の記号は、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分を判別できなかったことを意味している。また、X線造影剤4の重量パーセント濃度が15%よりも高い濃度の場合には、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分は、チューブ2を通してX線写真には写し出されなかった。すなわち、チューブ2のX線不透過の度合が高く、チューブ2と、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分と、を区別することができなかった。図5に表した「X線透過画像でのチューブの視認性」の欄における「×」の記号は、チューブ2の管腔211に挿入された医療用デバイスの部分がチューブ2を通してX線写真に写し出されなかったことを意味している。
【0048】
また、X線造影剤4の重量パーセント濃度が5%未満、5%、7.5%、12%、および15%である場合には、チューブ2が良好に成形された。図5に表した「チューブの成形性」の欄における「○」の記号は、チューブ2が良好に成形されたことを意味している。一方で、X線造影剤4の重量パーセント濃度が15%よりも高い濃度である場合には、チューブ2が良好には成形されなかった。すなわち、X線造影剤4の重量パーセント濃度が15%よりも高い濃度である場合には、希釈剤(シンナー)の重量パーセント濃度は、15%未満である。そうすると、X線造影剤4が母材3(シリコーン)と均一には混合されず、チューブ2が良好には成形されなかった。また、X線造影剤4の重量パーセント濃度が30%であり、希釈剤(シンナー)の重量パーセント濃度が0%である場合には、X線造影剤4が母材3(シリコーン)とは混合されず、シリコーンが硬化しなかった。すなわち、チューブ2を成形することはできなかった。図5に表した「チューブの成形性」の欄における「×」の記号は、チューブ2が良好に成形されなかったこと、あるいはチューブ2を成形することができなかったことを意味している。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0050】
2、2A、2B、2C・・・チューブ、 3・・・母材、 4・・・X線造影剤、 5・・・シャーレ、 6・・・ワイヤ、 21・・・主管部、 22・・・第1分岐部、 23・・・第2分岐部、 211、221、231・・・管腔

図1
図2
図3
図4
図5