(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】混合熱可塑性構造材料を使用した付加製造法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20221122BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20221122BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B29C64/153
B33Y70/10
C08L75/04
(21)【出願番号】P 2019557455
(86)(22)【出願日】2018-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018060299
(87)【国際公開番号】W WO2018197392
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アクテン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ビュスゲン,トマス
(72)【発明者】
【氏名】メットマン,ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェルト,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ローランド
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造材料から付加製造法を用いて物品を製造する工程を含む物品の製造方法であって、
前記構造材料が、少なくとも1つの機械特性がそれぞれ互いに異なる多数の粉末熱可塑性材料の混合物を含み、
ここで、前記構造材料は、ショア硬さ(DIN ISO 7619-1)が互いに異なる多数の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含むものであり、
前記構造材料が、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料および第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含み、前記第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が、40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、前記第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、前記第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差が2A以上40A以下および/または2D以上60D以下であることを特徴とする方法。
【請求項2】
構造材料から付加製造法を用いて物品を製造する工程を含む物品の製造方法であって、
前記構造材料が、少なくとも1つの機械特性がそれぞれ互いに異なる多数の粉末熱可塑性材料の混合物を含み、ここで、前記構造材料は、ショア硬さ(DIN ISO 7619-1)が互いに異なる多数の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含むものであり、
前記構造材料が、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料および第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含み、前記第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が、40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、前記第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、前記第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、前記第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差が2A以上40A以下および/または2D以上60D以下であり、前記第2と第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差が5A以上30A以下および/または5D以上30D以下であることを特徴とす
る方法。
【請求項3】
前記構造材料が、破断伸び(DIN 53504、200mm/分)が互いに異なる多数の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含むことを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
構造材料から付加製造法を用いて物品を製造する工程を含む物品の製造方法であって、
前記構造材料が、少なくとも1つの機械特性がそれぞれ互いに異なる多数の粉末熱可塑性材料の混合物を含み、ここで、前記構造材料は、破断伸び(DIN 53504、200mm/分)が互いに異なる多数の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含むものであり、
前記構造材料が、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料および第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含み、前記第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が200%以上800%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、前記第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が100%以上400%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、前記第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差が50パーセントポイント以上700パーセントポイント以下であることを特徴とす
る方法。
【請求項5】
構造材料から付加製造法を用いて物品を製造する工程を含む物品の製造方法であって、
前記構造材料が、少なくとも1つの機械特性がそれぞれ互いに異なる多数の粉末熱可塑性材料の混合物を含み、ここで、前記構造材料は、破断伸び(DIN 53504、200mm/分)が互いに異なる多数の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含むものであり、
前記構造材料が、第1の熱可塑性ポリウレタン材料、第2の熱可塑性ポリウレタン材料および第3の熱可塑性ポリウレタン材料を含み、前記第1の熱可塑性ポリウレタン材料が200%以上600%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、前記第2の熱可塑性ポリウレタン材料が200%以上600%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、前記第3の熱可塑性ポリウレタン材料が200%以上600%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、前記第1と第2の熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差が50パーセントポイント以上100パーセントポイント以下であり、前記第2と第3の熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差が50パーセントポイント以上100パーセントポイント以下であることを特徴とす
る方法。
【請求項6】
前記構造材料が、その可融性成分に関して、30℃以上90℃以下の温度範囲内の溶融範囲(DSC、示差走査熱量測定、加熱速度20K/分での2回目の加熱)を有することを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記構造材料が、その可融性成分に関して、100℃以上240℃以下の温度範囲内の溶融範囲(DSC、示差走査熱量測定、加熱速度20K/分での2回目の加熱)を有することを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記付加製造法を用いた物品の製造が以下の工程:
-構造材料を含む粒子の層を標的表面に適用する工程;
-前記物品の断面に対応する層の選択部分に、前記選択部分の粒子が結合されるようにエネルギーを導入する工程;
-前記物品を形成するために、多数の層を適用する工程、および隣接する層の結合部分が結合するようにエネルギーを導入する工程を繰り返す工程;
を含むことを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記構造材料中の熱可塑性材料の少なくとも1種が、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応から得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーであり、前記ポリオール成分が、25℃以上のノーフロー点(ASTM D5985)を有するポリエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記構造材料中の熱可塑性材料の少なくとも1種が、以下の成分:
a)少なくとも1種の有機ジイソシアネート
b)イソシアネート反応性基を有し、500g/mol以上6000g/mol以下の数平均分子量(M
n)を有し、および成分b)の合計の数平均官能価が1.8以上2.5以下である少なくとも1種の化合物
c)分子量(Mn)60~450g/molを有し、鎖延長剤c)の合計の数平均官能価が1.8~2.5である少なくとも1種の鎖延長剤
の反応から得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーであることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の製造方法であって、構造材料から付加製造法(additive manufacturing method)を用いて物品を製造する工程を含み、前記構造材料が、少なくとも1つの機械特性がそれぞれ互いに異なる多数の粉末熱可塑性材料の混合物を含み、少なくとも1種の熱可塑性材料が熱可塑性ポリウレタン材料である方法に関する。本発明は同様に、この方法により得られる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術で知られている、マルチマテリアル3Dプリンティングとも呼ばれる付加製造法における複数材料の使用の一態様は、後で除去される支持構造に関連している。例えば、製造される物品自体は水不溶性材料から構築して、支持構造体は水溶性材料から構築することができる。その後、支持構造を浸出させることにより、実際の物品が得られる。
【0003】
欧州特許出願公開第1460108号明細書は、選択的レーザー焼結用の焼結粉末を開示しており、この粉末は少なくとも1種のポリアミドと、少なくとも1種のポリ(N-メチルメタクリルイミド)(PMMI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)および/またはPMMI-PMMAコポリマーとを含む。
【0004】
マルチマテリアル3Dプリンティング法において異なる熱可塑性材料を使用する場合、プリンティング操作中の処理パラメータは、使用するすべての材料に関する範囲を含む必要がある。例えば、処理温度は、すべての材料が溶融するように選択する必要がある。しかしポリアミドの場合、材料の融点がかなり離れている場合がある:PA6.6(260℃)、PA6.10(240℃)、PA6(220℃)、PA6.12(218℃)、PA11(198℃)およびPA12(178℃)。したがって、様々なポリアミドの混合には構造材料の微調整に一定の制限が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の少なくとも1つの欠点を少なくとも部分的に克服することである。本発明のさらなる目的は、製造される物品の機械的および/または化学的特性を変化させ、同時に物品内の個々の構成スライスの最大密着結合を可能にする付加製造法を明示することである。本発明のさらなる目的は、最大のコスト効率および/または個別化および/または資源節約を備えた物品を製造できるようにすることであった。
【0007】
この目的は、本発明に従って、請求項1に記載の特徴を有する方法および請求項14に記載の特徴を有する物品により達成される。有利な展開は従属請求項に明記されている。文脈から明確に反対のことが明らかでない限り、それらは必要に応じて組み合わせることができる。
【0008】
構造材料から付加製造法を用いて物品を製造する工程を含む物品の製造方法において、前記構造材料は、少なくとも1つの機械特性がそれぞれ互いに異なる多数の粉末熱可塑性材料の混合物を含み、少なくとも1種の熱可塑性材料は熱可塑性ポリウレタン材料である。
【0009】
際立った機械的特性は、例えば、ショア硬さ(DIN ISO7619-1)、破断強度(DIN53504、200mm/分)、破断伸び(DIN53504、200mm/分)、100%伸び時の引張応力(DIN53504、200mm/分)、300%伸び時の引張応力(DIN53504、200mm/分)、弾性(ISO4662)、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせから成る群から選択することができる。
【0010】
構造材料は、例えば、少なくとも1つの機械的特性が異なる2、3、4、5、6、7、8、9または10種の粉末熱可塑性材料を含んでいてもよい。それぞれ構造材料の総重量に基づき、重量比率の合計が100重量%以下になるような適切な重量比率の例は下記のとおりである(TPM=熱可塑性材料):
【表1】
【0011】
熱可塑性材料と同様に、構造材料は、充填剤、安定剤などのさらなる添加剤を含んでもよい。構造材料中の添加剤の総含有量は、例えば、0.1重量%以上50重量%以下、好ましくは0.5重量%以上30重量%以下であり得る。
【0012】
付加製造法を用いて物品の製造を開始する前に、構造材料は異なる熱可塑性材料の混合物の形で提供されてもよい。有用な混合物としては、例えば、レーザー焼結法用の粉末混合物が挙げられる。または、付加製造法を用いた物品の製造中に、構造材料を様々な熱可塑性材料からその場で混合することも可能である。好ましくは、この実施形態では、異なる熱可塑性材料の混合比は、個々のスライスに関連して、またはスライスの個々の体積要素(ボクセル)に関連して、時間または空間で変更可能である。その場合、三次元的に変化する機械的特性を有する物品を製造することが可能である。
【0013】
使用される粉末材料の粒子の少なくとも90重量%が0.25mm以下、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.15mm以下の粒径を有することが好ましい。
【0014】
本発明の方法で使用可能な熱可塑性ポリウレタンの調製に適したポリイソシアネートは、対称ポリイソシアネート、非対称ポリイソシアネートまたはそれらの混合物であり得る。対称ポリイソシアネートの例は、4,4’-MDI、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)、ペンタンジイソシアネート(PDI)およびブタンジイソシアネート(BDI)である。
【0015】
非対称ポリイソシアネートの場合、分子内の1つのNCO基の立体環境が、別のNCO基の立体環境とは異なる。その場合、1つのイソシアネート基は、イソシアネートに対して反応性の基、例えばOH基と比較的速く反応するが、残りのイソシアネート基は反応性が低い。非対称構造のポリイソシアネートによる1つの結果は、これらのポリイソシアネートを用いて形成されたポリウレタンもまた線状構造が少ないことである。
【0016】
適切な非対称ポリイソシアネートの例は、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの非対称異性体(H12-MDI)、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサンの非対称異性体、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサンの非対称異性体、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサンの非対称異性体、1,3-ジイソシアナトシクロペンタンの非対称異性体、1,2-ジイソシアナトシクロペンタンの非対称異性体、1,2-ジイソシアナトシクロブタンの非対称異性体、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1-メチル-2,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン、5-イソシアナト-1-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、5-イソシアナト-1-(4-イソシアナトブタ-1-イル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(3-イソシアナトプロパ-1-イル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-2-(2-イソシアナトエタ-1-イル)シクロヘキサン、2-ヘプチル-3,4-ビス(9-イソシアナトノニル)-1-ペンチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアナトメチル、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート(MDI)、トリレン2,4-および2,6-ジイソシアネート(TDI)、および列挙されたジイソシアネートの誘導体、特に二量化または三量化されたタイプである。
【0017】
ポリイソシアネート成分として、4,4’-MDI、H12-MDI、HDI、PDI、またはIPDIおよび/またはH12-MDIとHDIおよび/またはPDIとを含む混合物が好ましい。
【0018】
ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるポリオールを含んでもよい。
【0019】
ポリウレタンを得る反応において、分子量範囲が62g/mol以上600g/mol以下のジオールが鎖延長剤として使用されていてもよい。
【0020】
好ましい実施形態では、構造材料は、第1の粉末熱可塑性材料および第2の粉末熱可塑性材料を含み、第1の粉末熱可塑性材料は第1のポリウレタン材料であり、第2の粉末熱可塑性材料は第2のポリウレタン材料、ポリカーボネート材料、ポリエステル材料またはポリアミド材料である。この実施形態では、第1の粉末熱可塑性材料は、構造材料の総重量に基づいて40重量%以上の量で存在することが好ましい。
【0021】
第1および第2のポリウレタン材料を使用する場合、熱可塑性ポリウレタンは、比較的狭い範囲の処理条件、特に処理温度で、広範囲の機械的および/または化学的性質の材料を利用できるという利点を有する。例えば、40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する異なる熱可塑性ポリウレタンを180℃以上260℃以下の温度範囲内で併せて処理することができ、溶融および冷却後に得られる材料は、好ましくは、使用されるポリウレタンの最大硬さと最小硬さの間のショア硬さを有し、かつ/または使用されるポリウレタンの最大破断伸びと最小破断伸びの間の破断伸びを有する。これにより、ポリウレタンの特性の微調整が可能であり、当然、製造される物品それ自体の中でも変化させることができる。ポリウレタン同士の化学的相溶性の結果として、本発明の方法では、少なくとも粒子界面で再び溶融および冷却された構造材料は従来とは異なるポリマーブレンドとして特徴付けることが可能であり、その境界領域におけるポリマーブレンドは、混合物として物理的に異なるだけでなく、使用される粒子内の材料とは化学的にも異なる粒子間に生じる。付加ポリマーの代表としてのポリウレタンでは、使用される処理温度でウレタン基が可逆的に開き、トランスウレタン化が起こり得る可逆的な開口がある。例えば、2つの粒子が互いに並んで溶融し、1つの粒子が第1のイソシアネートと第1のポリオールとに基づく第1のポリウレタンから構成され、他の粒子が第2のイソシアネートと第2のポリオールとに基づく第2のポリウレタンから構成される場合、トランスウレタン化の結果として、第1のイソシアネートと第2のポリオールとに基づくポリウレタン、および接触部に第2のイソシアネートと第1のポリオールとに基づくポリウレタンも存在し得る。
【0022】
通常の溶融ポリマーブレンドとは対照的に、物理的および化学的混合ポリマー相の比率は、粒径と焼結温度によって非常に正確に制御できるため、従来の溶融ブレンドでは得られない新規な高度に制御された特性を有するポリマーブレンドが得られる。
【0023】
好ましくは相溶性の界面反応性(トランスウレタン化反応を意味する)成分の混合によって得られるこれらの特性は、強度、耐摩耗性、および好ましくは破断伸びの線形比の改善から推測することができる。これらの効果は、制御されたコンディショニングまたは関連する混合相の溶融温度に近いSLS構造空間のプロセス関連の熱応力によって調整できる。好ましくは、混合相は、少なくとも1分間、好ましくは少なくとも3分間、より好ましくは少なくとも20分間、最も好ましくは少なくとも30分間、溶融温度より50℃超、より好ましくは40℃超、最も好ましくは30℃超低い熱応力を受ける。
【0024】
第2の熱可塑性材料としてのポリカーボネート(PC)ポリマーは、ホモポリカーボネートまたはコポリカーボネートのいずれであってもよく、ポリカーボネートは、公知の様式の直鎖状または分枝状であってもよい。本発明によれば、ポリカーボネートの混合物を使用することも可能である。ポリカーボネートは、芳香族、脂肪族、または芳香族/脂肪族混合ポリカーボネートポリマーであってもよい。ポリカーボネートは、ジオール、炭酸誘導体、および任意選択で連鎖停止剤および分枝剤から公知の様式で調製される。
【0025】
第2の熱可塑性材料に適したポリアミドは、特にPA6、PA6.6、PA6.9、PA6.12、PA11、PA12、PA4.6、PA12.12、PA6.12およびPA10.10である。
【0026】
第2の熱可塑性材料に適したポリエステルは、特にポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリグリコール酸(PGA)およびポリエチレンアジペート(PEA)である。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、ショア硬さ(DIN ISO 7619-1)が互いに異なる多数の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含む。構造材料は、例えば、ショア硬さが異なる2、3、4、5、6、7、8、9または10種の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含んでもよい。それぞれ構造材料の総重量に基づき、重量比率の合計が100重量%以下になるような適切な重量比率の例は下記のとおりである(TPU=熱可塑性ポリウレタン):
【表2】
【0028】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料および第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含み、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は、40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は2A以上40A以下および/または2D以上60D以下である。
【0029】
本発明に適したそのような構造材料の一例としては、70A以上80A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、および85A以上95A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は、5A以上25A以下である。
【0030】
本発明に適したそのような構造材料のさらなる例としては、60A以上70A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、および80A以上90A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は、10A以上20A以下である。
【0031】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料および第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含み、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は、40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は40A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は40A以上90以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有し、第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は2A以上40A以下および/または2D以上60D以下であり、第2と第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は2A以上40A以下および/または2D以上60D以下である。
【0032】
本発明に適したそのような構造材料の一例としては、60A以上70A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、75A以上85A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、および90A以上90D以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は2A以上40A以下であり、第2と第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は2A以上60D以下である。
【0033】
本発明に適したそのような構造材料のさらなる例としては、60A以上65A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、70A以上75A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、および80A以上90A以下のショア硬さ(DIN ISO 7619-1)を有する第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は5A以上15A以下であり、第2と第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料のショア硬さの差は5A以上15A以下である。
【0034】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、破断伸び(DIN 53504、200mm/分)が互いに異なる多数の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含む。構造材料は、例えば、破断伸びが異なる2、3、4、5、6、7、8、9または10種の熱可塑性ポリウレタン材料を含んでもよい。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料および第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含み、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は、200%以上800%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は100%以上400%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は50パーセントポイント以上700パーセントポイント以下である。
【0036】
本発明に適したそのような構造材料の一例としては、300%以上500%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、および100%以上400%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は、50パーセントポイント以上400パーセントポイント以下である。
【0037】
本発明に適したそのような構造材料のさらなる例としては、150%以上250%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、および200%以上450%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は、50パーセントポイント以上300パーセントポイント以下である。
【0038】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料および第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料を含み、第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は、200%以上600%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は200%以上600%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料は200%以上600%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有し、第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は50パーセントポイント以上100パーセントポイント以下であり、第2と第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は50パーセントポイント以上100パーセントポイント以下である。
【0039】
本発明に適したそのような構造材料の一例としては、400%以上500%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第1の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、300%以上400%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料、および200%以上300%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は50パーセントポイント以上100パーセントポイント以下であり、第2と第3の粉末熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は50パーセントポイント以上100パーセントポイント以下である。
【0040】
本発明に適したそのような構造材料のさらなる例としては、430%以上470%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第1の熱可塑性ポリウレタン材料、330%以上370%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第2の熱可塑性ポリウレタン材料、および230%以上270%以下の破断伸び(DIN 53504、200mm/分)を有する第3の熱可塑性ポリウレタン材料が挙げられる。第1と第2の熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は70パーセントポイント以上85パーセントポイント以下であり、第2と第3の熱可塑性ポリウレタン材料の破断伸びの差は70パーセントポイント以上85パーセントポイント以下である。
【0041】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、その可融性成分に関して、30℃以上90℃以下の温度範囲内の溶融範囲(DSC、示差走査熱量測定、加熱速度20K/分での2回目の加熱)を有する。溶融範囲は、好ましくは35℃以上80℃以下、より好ましくは45℃以上70℃以下の温度範囲内である。溶融範囲を決定するためのDSC分析では、材料を下記の温度サイクルに供する:-60℃で1分、次いで20ケルビン/分で240℃まで加熱、その後50ケルビン/分で-60℃まで冷却、その後-60℃で1分、次いで20ケルビン/分で150℃まで加熱。
【0042】
上記のDSCプロトコルにより決定可能な溶融操作の開始と溶融操作の終了との間の温度間隔は、80℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下が可能である。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、構造材料は、その可融性成分に関して、100℃以上240℃以下の温度範囲内の溶融範囲(DSC、示差走査熱量測定、加熱速度20K/分での2回目の加熱)を有する。溶融範囲は、好ましくは110℃以上230℃以下、より好ましくは120℃以上220℃以下の温度範囲内である。溶融範囲を決定するためのDSC分析では、材料を下記の温度サイクルに供する:-60℃で1分、次いで20ケルビン/分で260℃まで加熱、その後50ケルビン/分で-60℃まで冷却、その後-60℃で1分、次いで20ケルビン/分で260℃まで加熱。
【0044】
上記のDSCプロトコルにより決定可能な溶融操作の開始と溶融操作の終了との間の温度間隔は、80℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下が可能である。
【0045】
さらに好ましい実施形態では、付加製造法を用いた物品の製造は以下の工程:
-構造材料を含む粒子の層を標的表面に適用する工程;
-前記物品の断面に対応する層の選択部分に、前記選択部分の粒子が結合されるようにエネルギーを導入する工程;
-前記物品を形成するために、多数の層を適用する工程、および隣接する層の結合部分が結合するようにエネルギーを導入する工程を繰り返す工程;
を含む。
【0046】
この実施形態は、粉末焼結または粉末溶融過程に関する。繰り返しの回数が十分に少ない場合、構築される物品は二次元物品と呼ぶこともできる。そのような二次元物品は、コーティングとして特徴付けることもできる。例えば、その構築のために、適用およびエネルギー導入の工程が2回以上20回以下繰り返し行われ得る。粒子の結合のためのエネルギー源は、電磁エネルギー、例えば紫外線光から赤外線光であり得る。電子線も考えられる。粒子層の照射部分での粒子の結合は、通常、(半)結晶材料の(部分的な)溶融と、冷却過程での材料の結合によってもたらされる。または、ガラス転移などの粒子の他の変換、すなわちガラス転移温度を超える温度への材料の加熱により、粒子の粒子が互いに結合可能である。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、構造材料中の熱可塑性材料の少なくとも1種は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応から得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーであり、前記ポリオール成分は、25℃以上のノーフロー点(no-flow point)(ASTM D5985)を有するポリエステルポリオールを含む。より具体的には、ポリオール成分は、25℃以上90℃以下、好ましくは35℃以上~80℃以下、より好ましくは35℃以上~55℃以下のノーフロー点(ASTM D5985)を有するポリエステルポリオールを含む。ノーフロー点を決定するために、サンプルを含む試験容器をゆっくりと回転させる(0.1rpm)。柔軟に取り付けられた測定ヘッドがサンプルに沈められ、ノーフロー点に到達すると、粘度の急激な増加の結果としてその位置から離れるように動かされ、結果として生じるゆらゆらした動きにセンサーが反応する。
【0048】
そのようなノーフロー点を有し得るポリエステルポリオールの例は、フタル酸、無水フタル酸または対称α、ω-C4-C10-ジカルボン酸と、1または複数のC2-C10-ジオールとの反応生成物である。それらは、好ましくは400g/mol以上6000g/mol以下の数平均分子量Mnを有する。適切なジオールは、特にモノエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールおよびネオペンチルグリコールである。
【0049】
好ましいポリエステルポリオールをこれ以下に明記し、それらの酸およびジオール成分を示す:アジピン酸+モノエチレングリコール;アジピン酸+モノエチレングリコール+ブタン-1,4-ジオール;アジピン酸+ブタン-1,4-ジオール;アジピン酸+ヘキサン-1,6-ジオール+ネオペンチルグリコール;アジピン酸+ヘキサン-1,6-ジオール;アジピン酸+ブタン-1,4-ジオール+ヘキサン-1,6-ジオール;フタル酸/フタル酸無水物+モノエチレングリコール+トリメチロールプロパン;フタル酸/フタル酸無水物+モノエチレングリコール。好ましいポリウレタンは、ポリイソシアネート成分としてIPDIおよびHDIまたは4,4’-MDIの混合物と、上記の好ましいポリエステルポリオールを含むポリオール成分とから得られる。ポリウレタンを形成するための、ポリイソシアネート成分としてIPDIおよびHDIを含む混合物と、アジピン酸+ブタン-1,4-ジオール+ヘキサン-1,6-ジオールから形成されるポリエステルポリオールとの組み合わせが特に好ましい。
【0050】
好ましいポリエステルポリオールは開環ラクトン重合により、さらに好ましくはイプシロンカプロラクトンに基づいて得ることができる。
【0051】
これらのポリエステルポリオールが、25mg KOH/g以上170mg KOH/g以下のOH価(DIN 53240)、および/または50mPas以上5000mPas以下の粘度(75℃、DIN 51550)を有することがさらに好ましい。
【0052】
一例は、ポリイソシアネート成分がHDIおよびIPDIを含み、ポリオール成分が、アジピン酸と、さらにヘキサン-1,6-ジオールおよびブタン-1,4-ジオールとをこれらのジオールのモル比1:4以上4:1以下で含む反応混合物の反応から得られる、4000g/mol以上6000g/mol以下の数平均分子量Mn(GPC、標準ポリスチレンに対して)を有するポリエステルポリオールを含む、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応から得られるポリウレタンである。このようなポリウレタンは、4,000Pas以上160000Pas以下の複素粘度|η*|(ISO 6721-10に準拠したプレート/プレート振動粘度計を用いた溶融物の粘度測定により、100℃、およびせん断速度1/sで測定)を有する。
【0053】
適切なポリウレタンのさらなる例は:
1.欧州特許出願公開第0192946号明細書に記載の末端ヒドロキシル基を有する実質的に線形のポリエステルポリウレタンであって、
a)分子量600超のポリエステルジオール、および任意選択で
b)鎖伸長剤として分子量範囲62~600g/molのジオール、および
c)脂肪族ジイソシアネート、
の反応により調製され、成分a)およびb)のヒドロキシル基と、成分c)のイソシアネート基の当量比が1:0.9から1:0.999であり、成分a)の少なくとも80重量%が、(i)アジピン酸、および(ii)ジオールのモル比が4:1~1:4である1,4-ジヒドロキシブタンと1,6-ジヒドロキシヘキサンとの混合物に基づく、分子量範囲4000~6000のポリエステルジオールからなるものである。
【0054】
1.で述べたポリエステルポリウレタンでは、成分a)は、分子量範囲4000~6000のポリエステルジオールを100%まで含み、その調製は、ジオール混合物として1,4-ジヒドロキシブタンと1,6-ジヒドロキシヘキサンとのモル比7:3~1:2の混合物を使用することを含む。
【0055】
1.で述べたポリエステルポリウレタンでは、成分c)がIPDIおよびHDIおよび/またはPDIを含むことがさらに好ましい。
【0056】
1.で述べたポリエステルポリウレタンでは、それらの製造は、1,2-ジヒドロキシエタン、1,3-ジヒドロキシプロパン、1,4-ジヒドロキシブタン、1,5-ジヒドロキシペンタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、および成分a)に基づいて最大200ヒドロキシル当量パーセントのこれらのジオールの任意の所望の混合物からなる群から選択されるアルカンジオールの成分b)としての使用を含むことがさらに好ましい。
【0057】
さらに、100℃に加熱し、25℃から40℃の温度間隔にわたって4℃/分の冷却速度で20℃に1分以上(好ましくは1分以上30分以下、より好ましくは10分以上15分以下)冷却した後、熱可塑性エラストマーは、100kPa以上1MPa以下の貯蔵弾性率G’(ISO 6721-10に準拠してプレート/プレート振動粘度計を用い、せん断速度1/sでそれぞれ一般的な温度において測定)を有し、20℃に冷却し、20分間貯蔵した後、10MPa以上の貯蔵弾性率G’(ISO 6721-10に準拠してプレート/プレート振動粘度計を用い、せん断速度1/sで20℃において測定)を有することが可能である。
【0058】
さらに好ましい実施形態では、構造材料中の熱可塑性材料の少なくとも1種は、以下の成分:
aa)少なくとも1種の有機ジイソシアネート
bb)イソシアネート反応性基を有し、500g/mol以上6000g/mol以下の数平均分子量(Mn)を有し、および成分b)の合計の数平均官能価が1.8以上2.5以下である少なくとも1種の化合物
cc)分子量(Mn)60~450g/molを有し、鎖延長剤c)の合計の数平均官能価が1.8~2.5である少なくとも1種の鎖延長剤;
の反応から得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。
【0059】
好ましいジイソシアネートaa)は、4,4’-MDIおよび1,6-HDIおよび/またはPDIである。NCO反応性成分b)としては、2~12個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子を有するジカルボン酸と多価アルコールとから形成されたポリエステルポリオールである。使用される好ましいポリエステルジオールbb)は、エタンジオールポリアジペート、ブタン-1,4-ジオールポリアジペート、エタンジオールブタン-1,4-ジオールポリアジペート、ヘキサン-1,6-ジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、ヘキサン-1,6-ジオールブタン-1,4-ジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンである。
【0060】
使用される好ましい鎖延長剤cc)は、2~14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えばエタンジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールである。
【0061】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法により得られる物品であって、焼結粉末構造材料から構成され、前記構造材料が、少なくとも1つの機械的特性がそれぞれ互いに異なる多数の熱可塑性材料の混合物を含み、前記熱可塑性材料の少なくとも1種が熱可塑性ポリウレタン材料であり、さらに、前記物品の製造に使用される付加製造法の構築方向において、構造材料中に存在する最低の引張強度を有する熱可塑性材料で作られた射出成形試験片の引張強度(ISO 527)の、得られた試験片の密度を除数として計算に含めて30%以上の引張強度(ISO 527)(好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上)を有する物品である。
【0062】
好ましい実施形態では、焼結粉末構造材料において、異なる構造材料の粉末粒子は、個々の異なる構造材料の混合物を含む融合部によって互いに結合され、結合粒子の断面では、前記融合部は、結合粒子の1つの直径の20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)を構成する。これらの融合部は、材料AとBの物理的な混合相と構造材料の化学的な混合相ABからなる混合勾配を有するポリマーブレンドとして特徴付けることができる。
【0063】
[実施例]
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。略語の意味:
TPU1:ガラス転移温度(ISO 6721-1)-14℃から-13℃、焼結試験片のショアA硬さ(ISO 868)87から89、ビカット軟化温度(VST A、ISO 306)89℃~91℃、および溶融温度(ISO 11357)159℃~161℃を有する粉末エステル系熱可塑性ポリウレタン。
【0064】
TPU2:ガラス転移温度(ISO 6721-1)3℃から5℃、焼結試験片のショアA硬さ(ISO 868)96から98、および溶融温度(ISO 11357)179℃~181℃を有する粉末エステル系熱可塑性ポリウレタン。
【0065】
例1
TPU1とTPU2との混合物は、以下の表に明示されている重量比で構成されていた。
【表3】
【0066】
粉末混合物と未混合TPU1およびTPU2を使用して、3Dプリンティング法でレーザー焼結(スキャン速度300インチ/秒)によりS2引張試験片を作製した。それぞれの粉末/粉末混合物のそれぞれの5つの引張試験片を、DIN 53504に準拠した引張試験で試験した。得られた結果の平均を下記の表に記載する:
【表4】
【0067】
破断伸びとTPU粉末の混合比の間の良好な近似から、線形関係が明らかである。