(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】オルガノポリスルフィドによって安定化されたポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221122BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20221122BHJP
C08L 27/16 20060101ALI20221122BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20221122BHJP
H01B 9/02 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/372
C08L27/16
C08L33/00
H01B9/02 Z
(21)【出願番号】P 2019572574
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 US2018039901
(87)【国際公開番号】W WO2019006060
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-14
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・チャールズ・フォートマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ピアース・ステーマン
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・クリスティーナ・ブラカス
(72)【発明者】
【氏名】クルト・ウッド
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037691(WO,A1)
【文献】特表平06-504628(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136792(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/099138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,H01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマーと、構造R
3-SS-R
4を有する
少なくとも1種のオルガノジスルフィド、構造R
5-SSS-R
6を有する
少なくとも1種のオルガノトリスルフィド及び構造R
7-SSSS-R
8を有する
少なくとも1種のオルガノテトラスルフィ
ドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分とから成り、ここで、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は独立してC
8~C
16アルキル基から選択される、安定化ポリマー組成物。
【請求項2】
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれt-ドデシルである、請求項1に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分が少なくとも1種のオルガノトリスルフィドから成る、請求項1又は2に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項4】
前記の少なくとも1種のオルガノジスルフィド、少なくとも1種のオルガノトリスルフィド及び少なくとも1種のオルガノテトラスルフィドが一緒になって前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分の少なくとも90重量%を占める、請求項
1に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項5】
前記の少なくとも1種のオルガノジスルフィド、少なくとも1種のオルガノトリスルフィド及び少なくとも1種のオルガノテトラスルフィドが70:30~90:10のオルガノトリスルフィド:(オルガノジスルフィド+オルガノテトラスルフィド)の重量比で存在する、請求項
4に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項6】
前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分が、オルガノジスルフィド及びオルガノトリスルフィド以外のオルガノポリスルフィドを15重量%未満含む、請求項1~
5のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項7】
前記オルガノポリスルフィド系安定剤が、式(I):
【化1】
(ここで、
各R
4は独立してt-ブチル又はt-アミルであり、
R
5はヒドロキシル(-OH)であり、
o及びpはそれぞれ独立して0又は1であり、o又はpの少なくとも一方は1であり、
rは0又は1以上の整数であり、
芳香環は随意に1つ以上の位置で水素以外の置換基で置換されていてよい)
の少なくとも1種の芳香族ポリスルフィドを含む、請求項1に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項8】
いずれの芳香環もR
5(ヒドロキシル)基に対してオルト位において水素以外の置換基で置換されていない、請求項
7に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項9】
rが1~20であり、各R
4がt-アミル又はt-ブチルであり、oが1であり且つpが1である、請求項
7又は
8に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項10】
rが1~6であり、各R
4がt-アミル又はt-ブチルであり、oが1であり且つpが1である、請求項
7~
9のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項11】
前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分が少なくとも1種のチウラムポリスルフィドから成る、請求項1に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のチウラムポリスルフィドがテトラアルキルチウラムジスルフィドである、請求項
11に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のポリマーが少なくとも1種の熱可塑性物質を含む、請求項1~
12のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種のポリマーが少なくとも1種のエラストマーを含む、請求項1~
12のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種のポリマーがスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂及びポリオキシメチレン樹脂より成る群から選択される、請求項1~
12のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種のポリマーがポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン及びポリエチレンより成る群から選択される、請求項1~
12のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項17】
オルガノポリスルフィド系安定剤成分を0.001~1重量%含む、請求項1~
16のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項18】
オルガノポリスルフィド系安定剤以外の少なくとも1種の安定剤を追加的に含む、請求項1~
17のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項19】
前記のオルガノポリスルフィド系安定剤以外の少なくとも1種の安定剤が酸化防止剤、オゾン分解防止剤及びUV安定剤より成る群から選択される、請求項
18に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項20】
前記のオルガノポリスルフィド以外の少なくとも1種の安定剤がヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト安定剤、ヒンダードアミン光安定剤及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項
18又は19に記載の安定化ポリマー組成物。
【請求項21】
ポリマーを安定化するための方法であって、前記ポリマーと、構造R
3-SS-R
4を有する
少なくとも1種のオルガノジスルフィド、構造R
5-SSS-R
6を有する
少なくとも1種のオルガノトリスルフィド及び構造R
7-SSSS-R
8を有する
少なくとも1種のオルガノテトラスルフィ
ドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分とを一緒にすることを含み、ここで、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は独立してC
8~C
16アルキル基から選択される、前記方法。
【請求項22】
請求項1~
20のいずれかに記載の安定化ポリマー組成物で覆われ、被覆され又はコーティングされた、物品。
【請求項23】
送電ケーブルである、請求項
22に記載の物品。
【請求項24】
前記安定化ポリマー組成物がアクリルポリマー、PVDFポリマー又はアクリルポリマーとPVDFポリマーとのブレンドを含む、請求項
22又は
23に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年6月29日付け米国仮出願第62/526,536号に優先権を主張するものであり、その全体の開示をすべての目的のために言及することによって本明細書に取り入れる。
【0002】
本発明は、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及び/又はオルガノテトラスルフィド(随意にヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト及び/又はヒンダードアミン光安定剤等の1種以上のさらなる添加剤と組み合わされたもの)によって安定化されたポリマー組成物(安定化ポリマー組成物とも言う)に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーは様々な異なるタイプの最終製品の製造にとって有用な材料であるが、高温、例えばポリマーの加工の際に採用される温度や、比較的過酷な条件に曝されることが予定されるポリマー物品の通常の用途の際に遭遇する温度において、一般的に分解しやすい。さらに、多くの最終用途において、たとえポリマー製品が極端な環境ストレスにさらされていなくても、ポリマーが長い耐用寿命にわたって機能的且つ外観上魅力的なままであることが重要である。ポリマーの分解は、ポリマー物品の外観並びに物理的及び機械的特性の望ましくない変化をもたらすことがある。これらの理由で、ポリマーの分解耐性を高めるためにポリマー中に様々なタイプの安定剤を加えるのが一般的である。しかしながら、ポリマーの安定化は依然として経験主義的技術であり、ある添加剤が安定剤として有効かどうかを合理的確実性をもって予測することは一般的に可能ではない。さらに、1つのタイプのポリマーを適切に安定化する化合物が、別のタイプのポリマーに加えられた時に同様の効果を示さないこともある。
【0004】
従って、代替的ポリマー安定化技術を開発することが非常に望ましい。
【発明の概要】
【0005】
オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分を加えることによって、少なくとも1種のポリマーから成るポリマー組成物が安定化される。酸化防止剤(例えばヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト系安定剤)及び/又は光安定剤(例えばヒンダードアミン光安定剤)等の1種以上のさらなる添加剤を加えることによって、安定化のさらなる改善を達成することができる。得られる安定化されたポリマー組成物は、安定剤を何ら含有しないポリマー組成物と比較して、改善された耐分解性を(特に高温において)示す。ポリマー中にオルガノポリスルフィド系安定剤成分を存在させることによって、加工や天候からの熱や光のような一般的な分解応力に対するポリマーの安定性の向上がもたらされる。かかる安定化効果は、加工、高温(その際、ポリマーの分解の結果として所定レベルの重量損失が観察される)後にポリマーマトリックス中に維持される残留モノマー含有率の低下や、熱、光又は他の環境条件(ポリマー鎖の完全性に圧を加えるもの)に曝露された後の分子量のより一層高い維持によって、定量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図2】
図2は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図3】
図3は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図4】
図4は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図5】
図5は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図6】
図6は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図7】
図7は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図8】
図8は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【
図9】
図9は、実施例で説明するある種の実験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
オルガノポリスルフィド
【0008】
本発明の安定化されたポリマー組成物は、少なくとも1種のポリマーと、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分とから成る。かかるオルガノポリスルフィドは、ポリマーの安定性、特に熱安定性(即ち加熱された時の耐分解性)を改善するのに特に有効であることがわかった。一般的に言えば、オルガノモノスルフィド(即ち一般式R-S-R(ここで、各Rは有機部分である)に相当する化合物)は、類似体のオルガノジスルフィド(R-SS-R)、オルガノトリスルフィド(R-SSS-R)種又はオルガノテトラスルフィド(R-SSSS-R)種と同じレベルのポリマー安定化を提供しない。もっと高級のオルガノポリスルフィド(例えばオルガノペンタスルフィドR-SSSSS-R及びオルガノヘキサスルフィドR-SSSSSS-R) をポリマー組成物中の安定剤として使用するのは一般的に好適ではないことがわかった。というのも、このような高級オルガノポリスルフィドが存在するとポリマー組成物が加熱された時に元素状イオウが生成することによってひどい悪臭の問題を引き起こすことがあるからである。
【0009】
これらの理由で、本発明の様々な有利な実施形態において、安定化ポリマー組成物中に存在させるオルガノポリスルフィド系安定剤成分は、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィド以外のオルガノポリスルフィドの総含有量が、安定化ポリマー組成物中に存在するオルガノポリスルフィドの総重量を基準として、30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、又は5重量%未満であることを特徴とする。さらに別の実施形態において、安定化ポリマー組成物中に存在させるオルガノポリスルフィド系安定剤成分は、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィド以外のオルガノスルフィド化合物の含有量が、安定化ポリマー組成物中に存在するオルガノスルフィド化合物(即ちオルガノモノスルフィド+オルガノポリスルフィド)の総重量を基準として、30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、又は5重量%未満であることを特徴とする。
【0010】
本発明において、オルガノジスルフィドとは、互いに同一であっても異なっていてもよい2個の有機部分の間に挟まれたジスルフィド結合(-SS-)を少なくとも1個含有する化合物とする。同様に、オルガノトリスルフィドとは、互いに同一であっても異なっていてもよい2個の有機部分の間に挟まれたトリスルフィド結合(-SSS-)を少なくとも1個含有する化合物とし、互いに同一であっても異なっていてもよい2個の有機部分の間に挟まれたテトラスルフィド結合(-SSSS-)を少なくとも1個含有する化合物とする。本発明において有用なオルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドは、1分子当たり2個以上の-SS-、-SSS-及び/又は-SSSS-結合を含有していてもよい。例えばオルガノポリスルフィド系安定剤成分は、一般構造R-SS-Q-SS-R又はR-SSS-Q-SSS-R(ここで、各R及びQは有機部分である)に相当する化合物を含むことができる。
【0011】
前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、オルガノジスルフィドを少なくとも1個含みしかしオルガノトリスルフィドを含まないものであってもよい。別の実施形態において、前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、オルガノトリスルフィドを少なくとも1個含みしかしオルガノジスルフィドを含まないものであってもよい。特に有利な実施形態において、前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、少なくとも1個のオルガノジスルフィド、少なくとも1個のオルガノトリスルフィド及び少なくとも1個のオルガノテトラスルフィドを含む。例えば、前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、約70:30~約90:10のオルガノトリスルフィド : (オルガノジスルフィド+オルガノテトラスルフィド)の重量比の、1個以上のオルガノジスルフィド、1個以上のオルガノトリスルフィド及び1個以上のオルガノテトラスルフィドを含むことができ、それらから本質的に成ることもでき、又はそれらから成ることもできる。本発明のある実施形態において、オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、オルガノペンタスルフィド及びもっと高級のオルガノポリスルフィドを合計で10重量%以上含有しない又は5重量%以上含有しない(即ち、前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、ポリスルフィド配列-S-(S)n-(ここで、nは4以上である)を含有する種を合計で0~10重量%又は0~5重量%含む)。
【0012】
オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィド中に存在する有機部分の構造及び種類は、特に臨界的なものではなく、オルガノポリスルフィド系安定剤成分とこのオルガノポリスルフィド系安定剤成分が加えられるポリマーマトリックスとの相溶性(相性)を改善又は変更するのに必要であればそれに応じて変更/選択することができる。理論に縛られるのは望まないが、有機部分はオルガノポリスルフィド系安定剤成分をポリマー組成物中に分散/溶解させるのを補助することができるものと思われる。従って、有機部分は安定化させるべきポリマーに応じて選択することができる。
【0013】
好適な有機部分には、例えばアルキル基、アリール基及び/又はアラルキル基が含まれる(以下により一層詳細に説明するようなそれらの置換変形体及びヘテロ原子含有変形体も含む)。
【0014】
本発明の1つの局面において、前記オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド又はオルガノテトラスルフィドは、次の一般式(I)に相当する。
R1-S-Sx-R2 (I)
ここで、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよい有機部分であり、xは1(オルガノジスルフィドとなる)、2(オルガノトリスルフィドとなる)又は3(オルガノテトラスルフィドとなる)である。各R基は飽和又は不飽和であることができる。各Rは、随意に1個以上の環構造(脂環式、芳香族及びヘテロ芳香族の環構造を含む)を含有していてもよい。異なるオルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドの混合物を用いることもできる。
【0015】
各R基は、1~30個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上の水素原子及び/又は1個以上のヘテロ原子をも含有する有機部分であることができる。R基の一方又は両方に随意に存在するヘテロ原子は、例えばN、O、S、Se、P、ハライド等又はそれらの組合せであることができる。式(I)中の基Rを、以下にさらに詳細に説明する:基Rは、1個のイオウ原子が結合した一価基の名称によって示される。式(I)において、R1及びR2はそれぞれ、例えば、随意に少なくとも1個の置換基を有する脂肪族炭化水素基、随意に少なくとも1個の置換基を有する脂環式炭化水素基、随意に少なくとも1個の置換基を有する芳香族炭化水素基、随意に少なくとも1個の置換基を有するヘテロ環式基又はオキシアルキレン含有基を表すことができる。用語「脂肪族炭化水素基」には、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が含まれる。
【0016】
「アルキル基」の例には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基及びステアリル基が含まれる。例えば、C6~C25又はC8~C16アルキル基を用いることができる。「アルケニル基」の例には、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ペンタデセニル基、エイコセニル基及びトリコセニル基が含まれる。例えば、C6~C25アルケニル基を用いることができる。
【0017】
「アルキニル基」の例には、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-2-プロピニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、2-メチル-2-ブチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、1-へプチニル基、1-オクチニル基、1-デシニル基、1-ペンタデシニル基、1-エイコシニル基及び1-トリコシニル基が含まれる。例えば、C6~C25アルキニル基を用いることができる。用語「脂環式炭化水素基」は、単環式又は多環式のアルキル基、アルケニル基等を指し、その例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ビシクロオクチル基、ビシクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、2-シクロプロペニル基、2-シクロペンテニル基及び4-シクロヘキセニル基が含まれる。例えば、C3~C8シクロアルキル基を用いることができる。
【0018】
用語「芳香族炭化水素基」は、単環式又は多環式アリール基を意味する。ここで、多環式アリール基の場合、用語芳香族炭化水素基はまた、完全に不飽和の基に加えて、部分的に飽和の基をも含む。それらの例には、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基及びテトラリニル基が含まれる。例えば、C6~C10アリール基を用いることができる。
【0019】
用語「ヘテロ環式基」は、ヘテロ原子として1~4個の窒素原子、酸素原子若しくはイオウ原子を有する5~7員の芳香族ヘテロ環、飽和ヘテロ環若しくは不飽和ヘテロ環、又はこれらの任意のヘテロ環が別の炭素環式環(例えばベンゼン)若しくはヘテロ環式環と縮合した縮合ヘテロ環を意味する。それらの例には、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基、ピロール-1-イル基、ピロール-2-イル基、ピリジン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピラジン-2-イル基、ピラジン-3-イル基、ピリミジン-2-イル基、ピリミジン-4-イル基、ピリダジン-3-イル基、ピリダジン-4-イル基、l,3-ベンゾジオキソール-4-イル基、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル基、1,4-ベンゾジオキサン-5-イル基、l,4-ベンゾジオキサン-6-イル基、3,4-ジヒドロ-2H-l,5-ベンゾジオキセピン-6-イル基、3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-7-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-6-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル基、ベンゾフラン-2-イル基、ベンゾフラン-3-イル基、ベンゾチオフェン-2-イル基、ベンゾチオフェン-3-イル基、キノキサリン-2-イル基、キノキサリン-5-イル基、インドール-1-イル基、インドール-2-イル基、イソインドール-1-イル基、イソインドール-2-イル基、イソベンゾフラン-1-イル基、イソベンゾフラン-4-イル基、クロメン-2-イル基、クロメン-3-イル基、イミダゾール-1-イル基、イミダゾール-2-イル基、イミダゾール-4-イル基、ピラゾール-1-イル基、ピラゾール-3-イル基、チアゾール-2-イル基、チアゾール-4-イル基、オキサゾール-2-イル基、オキサゾール-4-イル基、イソオキサゾール-3-イル基、イソオキサゾール-4-イル基、ピロリジン-2-イル基、ピロリジン-3-イル基、ベンゾイミダゾール-1-イル基、ベンゾイミダゾール-2-イル基、ベンゾチアゾール-2-イル基、ベンゾチアゾール-4-イル基、ベンゾオキサゾール-2-イル基、ベンゾオキサゾール-4-イル基、キノリン-2-イル基、キノリン-3-イル基、イソキノリン-1-イル基、イソキノリン-3-イル基、l,3,4-チアジアゾール-2-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基、l,2,3-トリアゾール-4-イル基、テトラゾール-1-イル基、テトラゾール-2-イル基、インドリン-4-イル基、インドリン-5-イル基、モルホリン-4-イル基、ピペラジン-2-イル基、ピペリジン-2-イル基、l,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル基、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル基及びl,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル基が含まれる。1つの実施形態において、Rは1,3,4-チアジアゾール基である。
【0020】
用語「エーテル含有基」は、エーテル結合を1個以上含有する有機部分、例えばオキシアルキレン含有基を意味する。オキシアルキレン含有基は、一般構造-O-(CH2)o-(ここで、oは少なくとも1の整数、例えば1、2、3、4等であり、CH2部分中の1個以上の水素原子はアルキル基(例えばメチル若しくはエチル)、アリール基又はヘテロ環式部分等の置換基で置換されていてもよい)を有する部分を少なくとも1つ含有する基であることができる。
【0021】
本発明において用いることができるオルガノポリスルフィドの特に有利な例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:
【0022】
ジアルキルジスルフィド、ジアルキルトリスルフィド及びジアルキルテトラスルフィド、特に構造R1-S(S)x-R2を有するオルガノポリスルフィド(ここで、xは1、2又は3であり、R1及びR2は独立してC1~C30アルキル基、特にC8~C16アルキル基又はC10~C14アルキル基から選択される(例えばt-ドデシル))、並びにそれらの組合せ(例えば、前記の構造に相当するジアルキルジスルフィドとジアルキルトリスルフィドとの混合物又はジアルキルジスルフィドとジアルキルトリスルフィドとジアルキルテトラスルフィドとの混合物)。
【0023】
次式:
【化1】
(ここで、
各R
4は独立してt-ブチル又はt-アミルであり、
R
5はヒドロキシル(-OH)であり、
o及びpはそれぞれ独立して0又は1であり、o又はpの少なくとも一方は1であり、
rは0又は1以上の整数であり(例えばr=0~6)、
芳香族環は随意に1つ以上の位置で水素以外の置換基(例えばハロゲン、アルキル、アルコキシ)で置換されていてよい)
の芳香族ポリスルフィド(かかる芳香族ポリスルフィドの組合せを含む)。本発明の1つの実施形態において、芳香環はいずれもR
5(ヒドロキシル)基に対してオルト位において水素以外の置換基で置換されていないものとする。かかる芳香族ポリスルフィドの好適なものの例には、Arkemaグループによって販売されている製品のVultac(登録商標)2及びVultac(登録商標)3がある(Vultac(登録商標)2:r=1、各R
5=t-アミル、o=1、p=1;Vultac(登録商標)3:r=3~5、各R
5=t-アミル、o=1、p=1)。
【0024】
チウラムポリスルフィド、特に次式:
【化2】
(ここで、
R
1、R
2、R
3及びR
4は互いに同一であっても異なっていてもよいアルキル基、特にC
1~C
24アルキル基(例えばメチル、エチル)である)
に相当するテトラアルキルチウラムジスルフィド。
【0025】
本発明において有用なオルガノポリスルフィドは、当技術分野においてよく知られており、任意の好適な方法によって調製できる。好適なオルガノポリスルフィドはまた、Arkemaグループのような商業ソースからも入手可能である。
【0026】
ポリマー
【0027】
本発明において用いられるポリマーは、当技術分野において周知の任意のタイプのポリマーであってよく、例えば熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマー、熱可塑性エラストマー、非架橋ポリマー、又は架橋ポリマーであることができる。また、2種以上の異なるタイプのポリマーの混合物、ブレンド又はアロイを用いることもできる。
【0028】
本発明は特に、ポリオレフィン(ポリオレフィン樹脂とも言い、例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン)、アクリル樹脂(ポリアクリレートとも言い、例えばポリメチルメタクリレート)及びポリアセタール(例えばポリオキシメチレン樹脂)等の熱可塑性樹脂を安定化するのに有用である。
【0029】
一般的に、本発明に従って安定化できるポリマーには、以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:
【0030】
A.モノオレフィン及びジオレフィンのポリマー、例えばポリエチレン(随意に架橋されていてもよい)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン-1、ポリメチル-ペンテン-1、ポリイソプレン又はポリブタジエン、並びにシクロオレフィンのポリマー、例えばシクロペンテン又はノルボルネンのポリマー。
【0031】
B.Aで挙げたポリマーの混合物、例えばポリプロピレンとポリイソブチレンとの混合物。
【0032】
C.モノオレフィン及び/又はジオレフィンの互いとのコポリマー又は他のビニルモノマーとのコポリマー、例えばエチレン/プロピレン、プロピレン/ブテン-1、プロピレン/イソブチレン、エチレン/ブテン-1、プロピレン/ブタジエン、イソブチレン/イソプレン、エチレン/アクリル酸アルキル、エチレン/メタクリル酸アルキル、エチレン/酢酸ビニル又はエチレン/アクリル酸コポリマー及びそれらの塩(イオノマー)並びにエチレンとプロピレン及びジエン(ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン若しくはエチリデンノルボルネン等)とのターポリマー。
【0033】
D.ポリスチレン、ポリ-(p-メチルスチレン)。
【0034】
E.スチレン又はメチルスチレンとジエン又はアクリル誘導体とのコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸エチル、スチレン/ブタジエン/アクリル酸エチル、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸メチル等;スチレンコポリマーと別のポリマーとの高衝撃強度の混合物、例えば、ポリアクリレート、ジエンポリマー又はエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー等;並びにスチレンのブロックポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン又はスチレン/エチレン/プロピレン/スチレン等。
【0035】
F.スチレンのグラフトコポリマー、例えばポリブタジエン上のスチレン、ポリブタジエン上のスチレン及びアクリロニトリル、ポリブタジエン上のスチレン及びアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー上のスチレン及びアクリロニトリル、ポリアクリレート又はポリメタクリレート上のスチレン及びアクリロニトリル、アクリレート/ブタジエンコポリマー上のスチレン及びアクリロニトリル、並びにそれらとEで挙げたコポリマーとの混合物、例えばABS、MBS、ASA又はAESポリマーと称されるコポリマー混合物等。
【0036】
G.ハロゲン含有ポリマー、例えばクロロポリマー及びフルオロポリマー、例えばポリクロロプレン、塩素化ゴム、塩素化又はスルホ塩素化ポリエチレン、エピクロロヒドリンホモポリマー及びコポリマー、ハロゲン含有ビニル化合物からのポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、並びにそれらのコポリマー、例えば塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニリデン/酢酸ビニルコポリマー、又はフッ化ビニル/ビニルエーテルコポリマー等。
【0037】
H.α,β-不飽和酸及びその誘導体(例えばα,β-不飽和酸のエステル)から誘導されるポリマー、例えばポリアクリレート及びポリメタクリレート、ポリアクリルアミド及びポリアクリロニトリル。
【0038】
I.Hで挙げたモノマー同士のコポリマー又はHで挙げたモノマーと他の不飽和モノマーとのコポリマー、例えばアクリロニトリル/ブタジエン、アクリロニトリル/アクリル酸アルキル、アクリロニトリル/アクリル酸アルコキシアルキル又はアクリロニトリル/ハロゲン化ビニルコポリマー又はアクリロニトリル/メタクリル酸アルキル/ブタジエンターポリマー等。
【0039】
J.不飽和アルコール及びアミンから又はそれらのアシル誘導体若しくはそれらのアセタールから誘導されるポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニル-ブチラール、ポリフタル酸アリル又はポリアリル-メラミン等。
【0040】
K.環状エーテルのホモポリマー及びコポリマー、例えばポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はそれらとビスグリシジルエーテルとのコポリマー等。
【0041】
L.ポリアセタール、例えばポリオキシメチレン及びコモノマーとしてエチレンオキシドを含有するポリオキシメチレン等。
【0042】
M.ポリフェニレンオキシド及びスルフィド、並びにポリフェニレンオキシドとポリスチレンとの混合物。
【0043】
N.一方の端部に末端ヒドロキシル基を有し且つもう一方の端部に脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートを有するポリエーテル、ポリエステル若しくはポリブタジエン又はそれらの前駆体(ポリイソシアネート、ポリオール若しくはプレポリマー)から誘導されるポリウレタン。
【0044】
O.ジアミン及びジカルボン酸から並びに/又はアミノカルボン酸若しくは対応するラクタムから誘導されるポリアミド及びコポリアミド、例えばポリアミド4、ポリアミド6,ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリ-2,4,4-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド又はポリ-m-フェニレンイソフタルアミド、並びにそれらとポリエーテルとのコポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールとのコポリマー等。
【0045】
P.ポリ尿素 、ポリイミド及びポリアミド-イミド。
【0046】
Q.ジカルボン酸及びジオールから並びに/又はヒドロキシカルボン酸若しくは対応するラクトンから誘導されるポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-ジメチロール-シクロヘキサンテレフタレート、ポリ-[2,2-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン]テレフタレート及びポリヒドロキシベンゾエート並びにヒドロキシル末端基を有するポリエーテルから誘導されるブロックコポリエーテル-エステル。
【0047】
R.ポリカーボネート。
【0048】
S.ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン。
【0049】
T.一方でアルデヒドから、他方でフェノール、尿素及びメラミンから誘導される架橋ポリマー、例えばフェノール/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂等。
【0050】
U.乾燥用及び非乾燥用アルキド樹脂。
【0051】
V.飽和及び不飽和ジカルボン酸と多価アルコール及び架橋剤としてのビニル化合物とのコポリエステルから誘導される不飽和ポリエステル樹脂、及びそのハロゲン含有低可燃性変成体。
【0052】
W.置換アクリル酸エステルから誘導される熱硬化性アクリル樹脂、例えばエポキシ-アクリレート、ウレタン-アクリレート又はシリコーン-アクリレート等。
【0053】
X.アルキド樹脂、ポリエステル樹脂又はアクリレート樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート又は架橋剤としてのエポキシド樹脂との混合物。
【0054】
Y.ポリエポキシドから誘導される架橋エポキシド樹脂、例えばビスグリシジルエーテルから又は環状脂肪族ジエポキシドから誘導される架橋エポキシド樹脂。
【0055】
Z.天然ポリマー、例えばセルロース、ゴム、ゼラチン及びそれらの誘導体であってポリマー同族態様で化学的に変性されたもの、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート及びセルロースブチレート、又はセルロースエーテル、例えばメチルセルロース等。
【0056】
AA.上で挙げたポリマーの混合物、例えばPP/EPDM、ポリアミド6/EPDM又はABS、PVC/EVA、PVC/ABS、PVC/MBS、PC/ABS、PBTP/ABS。
【0057】
BB.ポリシロキサン。
【0058】
CC.エチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーを含有する放射線硬化性組成物から調製されたポリマー。
【0059】
一般的に、本発明のオルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及び/又はオルガノテトラスルフィドは、安定化組成物の約0.001~約5重量%の合計量で用いることができるが、これはポリマーや配合物、安定剤及び用途に応じて変化し得る。有利な範囲は、オルガノジスルフィド+オルガノトリスルフィド+オルガノテトラスルフィドの合計の0.001~約2%、特に約0.001~約1重量%である。
【0060】
本発明のオルガノポリスルフィド系安定剤成分は、造形物品を製造する前の任意の手頃な段階において、慣用の技術によってポリマー中に容易に加えることができる。例えば、オルガノポリスルフィド系安定剤成分を(随意に1種以上のさらなる添加剤、例えば1種以上のヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト安定剤及び/又はヒンダードアミン光安定剤と一緒に)、乾燥粉末の形のポリマーと(例えば押出法やコンパウンディング法を用いて)混合することもでき、また、オルガノポリスルフィド系安定剤成分の懸濁液又はエマルションをポリマーの溶液、懸濁液又はエマルションと混合することもできる。
【0061】
一般的に、オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、ポリマー材料の重合又は架橋の前、間又は後に、該材料に加えることができる。オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、安定化させるべきポリマー中に、純粋な形で又はワックス、オイル若しくはポリマー中に封入して、加えることができる。オルガノポリスルフィド系安定剤成分は、未使用樹脂中、加工後に回収された屑中、又は再利用物品から再生若しくはリサイクルされたポリマー中に、配合することができる。オルガノポリスルフィド系安定剤成分が1種より多くの化合物から成る場合、これらの化合物は別々に又は予備混合ブレンドとしてポリマーと一緒にすることができる。
【0062】
他の成分及び添加剤
【0063】
本発明の安定化ポリマー組成物はまた、下記のような1種以上の各種の慣用のポリマー添加剤を随意に含んでいてもよい。
【0064】
1.酸化防止剤、例えばアルキル化モノフェノール(ヒンダードアルキル化モノフェノールを含む);アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデンビスフェノール、ベンジル化合物;アシルアミノフェノール;β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル; β-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル;及びβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド。
【0065】
2.UV吸収剤及び光安定剤、例えば2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール;2-ヒドロキシベンゾフェノン;随意に置換された安息香酸のエステル;アクリレート;ニッケル化合物;立体障害アミン;シュウ酸ジアミド;及びヒドロキシフェニル-s-トリアジン。
【0066】
3.金属奪活剤。
【0067】
4.ホスファイト及びホスホナイト(まとめてホスファ(ホスホナ)イトと称されることもある)。
【0068】
5.過酸化物を破壊する化合物。
【0069】
7.塩基性共安定剤、例えば、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、トリアリルシアヌレート、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えばステアリン酸Ca、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Mg、リシノール酸Na及びパルミチン酸K、アンチモンピロカテコラート又は亜鉛ピロカテコラート。
【0070】
8.成核剤、例えば、4-t-ブチル安息香酸、アジピン酸又はジフェニル酢酸。
【0071】
9.フィラー及び補強剤、例えば、炭酸カルシウム、シリケート、ガラス繊維、アスベスト、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック及びグラファイト。
【0072】
10.その他の添加剤、例えば、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、蛍光増白剤、防炎加工剤、難燃剤、帯電防止剤及び発泡剤。
【0073】
少なくともある場合においては、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分を、上記のタイプの1種以上の添加剤と組み合わせて用いることによって、安定化における相乗的改善が得られる。特に、本発明者らは、ポリオレフィンのようなポリマー中にオルガノポリスルフィド系安定剤成分とヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト安定剤及びヒンダードアミン光安定剤より成る群から選択される少なくとも1種のさらなる安定化用添加剤との両方を加えることによって、前記ポリマーにおいて高められたレベルの安定化が達成できることを見出した。
【0074】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、当技術分野においてよく知られている。特に好適なヒンダードフェノール酸化防止剤には、アルキル化ヒドロキノン及びアルキル化フェノール、特にヒドロキシル基が結合した芳香環炭素の隣の芳香環炭素に少なくとも1個の第三級ブチル又はアミル基が結合した芳香族化合物が含まれる。好ましくは、これらの化合物は、次式の少なくとも1つの基を含有する。
【化3】
ここで、R
1は水素、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはアラルキル又は置換チオエーテル(18個までの炭素原子を有するもの)であり、R
2は置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはアラルキル又は置換チオエーテル(18個までの炭素原子を有するもの)である。上記フェノール系化合物はまた、追加の置換基でさらに置換されていてもよい。ある実施形態に従えば、R
1及びR
2は独立してメチル又はt-ブチルである。
【0075】
好適なヒンダードフェノール酸化防止剤には、例えば以下のものが含まれる:
2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-イソブチルフェノール、2,6-ジシクロペンチル-4-メチルフェノール、2-(α-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジオクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリシクロヘキシルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシメチルフェノール、2,6-ジノニル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェノール、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-オクチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4,-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、2,2’-メチレンビス[4-メチル-6-(α-メチルシクロヘキシル)フェノール]、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-ノニル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(6-t-ブチル-4-イソブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス[6-(α-メチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-(α-α-ジメチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、1,1-ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、2,6-ビス(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-n-ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3-ビス(3’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)ブチラート]、ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル)-6-t-ブチル-4-メチルフェニル]テレフタレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート、ビス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ジオクタデシル3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート並びにモノエチル3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートのカルシウム塩、2-プロペン酸2-(1,1-ジメチルエチル)-6-[[3-(1,1-ジメチルエチル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]メチル]-4-メチルフェニルエステル、ベンゼンプロパン酸3,5,-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-1,6、ヘキサンジイルエステル、ベンゼンプロパン酸3-(1,-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ)-5-メチル-1,2-エタンジイルビス(オキシ-2,1-エタンジイル)エステル、2,2,-エチリデン-ビス-(4,6-ジt-ブチルフェノール、4,4’,4”-(2,4,6-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-(メチレン)トリス[2,6,-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノール、1,3,5-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、オクタデシル-3-5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2-6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-n,d-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,2’-オキサミドビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エチル]、4-メチル-2,6-ビス(1-フェニルエチル)-フェノール、トリエチレングリコール-ビス-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)、2,2’-メチレン-ビス-6-(1-メチル-シクロヘキシル)-p-クレゾール、ベンゼンプロパン酸-3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C13-15-分岐鎖状及び直鎖状アルキルエステル、2,2’-チオジエチルビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トコフェロール等並びにそれらの組合せ。
【0076】
ホスファイト/ホスホナイト安定剤もまた、当技術分野においてよく知られている。特に好適なホスファイト/ホスホナイト安定剤には、亜リン酸(P(OH)3)及び亜ホスホン酸(P(OH)2R)のエステル、例えば亜リン酸アルキル及び亜リン酸アリール(特にヒンダードアリールホスファイト)が含まれる。本発明において有用なホスファイト/ホスホナイト安定剤には、式(I)又は式(II)を有するホスファイト及びホスホナイトが含まれるが、これらに限定されるわけではない:
P(OR1)(OR2)(OR3) (I)
P(R1)(OR2)(OR3) (II)
ここで、R基の少なくとも1つはH又は20個までの炭素原子を有するアルキル若しくはアリール置換基であり、その他のR基は同じ定義を有する同一の又は異なる基である。R基の1つ以上は、1個以上のt-ブチル基で置換されたアリール(例えばフェニル)基であってよい。ホスファイト/ホスホナイト安定剤は、1分子当たり1個より多くのリン原子を含有していてもよい(例えばジホスファイト/ジホスホナイト、トリホスファイト/トリホスホナイト)。好適なホスファイト/ホスホナイト安定剤の特定的な例には、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスホナイト、ビス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス-(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリ-(1-ヘキサデシル)ソルビトール-トリホスファイト、トリ-(1-ドデカンチオール)ソルビトール-トリホスファイト、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及びビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル)ホスファイトが含まれる。
【0077】
当技術分野において周知の任意のヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)を本発明において用いることができる。2,2,6,6-テトラメチルピペリジンは、1つのタイプの有用なヒンダードアミン光安定剤である。好適なヒンダードアミン光安定剤の例には、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート;ビス-5(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)セバケート;n-ブチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)エステル;1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物;N,N’-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-t-オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-s-トリアジンとの縮合生成物;トリス-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)ニトリロトリアセテート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル);及び1,1’-(1,2-エタンジイル)-ビス-(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)が含まれる。本発明において用いることができる追加のヒンダードアミン光安定剤は、米国特許出願公開第2017/0107336号明細書に記載されている。その全体の開示を言及することによってすべての目的のために本明細書に取り入れるものとする。
【0078】
オルガノポリスルフィド系安定剤成分とさらなる安定化添加剤との相対量は、安定化させるべきポリマー、オルガノポリスルフィド系安定剤成分及びさらなる添加剤のタイプ、並びに特定用途のために望まれ又は必要とされる安定化の程度及びタイプやその他のファクターに応じて、適宜変更及び調節することができる。例えば、オルガノポリスルフィド系安定剤成分対さらなる安定化添加剤の重量比は、10:90~90:10又は25:75~75:25とすることができる。配合樹脂中の全添加剤パッケージ装填量(即ちオルガノポリスルフィド系安定剤成分+さらなる安定化添加剤の合計重量濃度)は、50ppm~3重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%とすることができる。
【0079】
ある実施形態に従えば、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分と、1種以上の追加の添加剤、特にヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト安定剤及びヒンダードアミン光安定剤より成る群から選択される1種以上の追加の添加剤とを含むか、それらから本質的に成るか、又はそれらから成る、安定剤組成物が提供される。かかる安定剤組成物は、本発明に従う安定化ポリマー組成物を得るために、ポリマーと混合し又は一緒にすることができる。
【0080】
少なくとも1種のポリマーと、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分とを含み、且つ随意にヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト安定剤及び/又はヒンダードアミン光安定剤等の1種以上の追加の添加剤をさらに含むマスターバッチ組成物であって、特に前記ポリマーについての最終用途において望まれる濃度より高い濃度でオルガノポリスルフィド系安定剤成分を存在させたものも、本発明の範囲内とみなされ、前記マスターバッチは、かかる最終用途にとって好適な配合ポリマー製品を得るためにさらなる量のポリマーと一緒にされる。
【0081】
本発明の安定化ポリマー組成物は、ポリマー組成物が慣用的に用いられる任意の用途、例えば成形、注型、押出、焼結等の技術を使用したコンテナ、車両部品、電子部品、建築部品、電化製品部品、複合材、コーティング、パイプ、フィルム、シート等の物品の製造等の用途について、有用である。
【0082】
本発明の安定化ポリマー組成物は、発電及び送電に用いられるケーブル及びその他の部品の外側表面に適用される覆い、被覆又はコーティングに、並びに高温に遭遇するその他の産業用途に、特に有用である。かかる覆い、被覆又はコーティングは、コーティングされたケーブル及びその他の部品に、改善された耐久性及び/又は高められた熱放射率を提供し、本発明の安定化ポリマー組成物は、物体の覆い、被覆又はコーティングの老化特性を改善するのに有用である。 ケーブル又はその他の物体上のこのような覆い、被覆又はコーティングに用いられるポリマーには、アクリルコポリマー、アクリルコポリマーとフルオロポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマー及びコポリマー、並びにフッ素化エチレンビニルエーテル(FEVE)及びポリ(フッ化ビニル)ポリマー等の別の種類のフルオロポリマーを含む)とのブレンド、ポリエステル、エポキシド、ポリウレタン、ポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、様々な種類のゴム組成物、並びに様々な種類のシロキサン変性ポリマーが含まれ得る。
【0083】
本発明の様々な例示的局面を以下にまとめる:
局面1:少なくとも1種のポリマーと、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分とから成る、安定化ポリマー組成物。
局面2:前記少なくとも1種のオルガノポリスルフィドが構造R
1-S(S)
x-R
2(ここで、xは1~3であり、R
1及びR
2は独立してC
1~C
30有機基から選択される)を有する、局面1の安定化ポリマー組成物。
局面3:前記C
1~C
30有機基がアルキル基、芳香族基及びヘテロ環式基より成る群から選択される、局面2の安定化ポリマー組成物。
局面4:R
1及びR
2が独立してC
8~C
16アルキル基から選択される、局面2の安定化ポリマー組成物。
局面5:R
1及びR
2がそれぞれt-ドデシルである、局面2の安定化ポリマー組成物。
局面6:前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分が少なくとも1種のオルガノトリスルフィドから成る、局面1~5のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面7:前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分が少なくとも1種のオルガノジスルフィド、少なくとも1種のオルガノトリスルフィド及び少なくとも1種のオルガノテトラスルフィドから成る、局面1~6のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面8:前記少なくとも1種のオルガノジスルフィドが構造R
3-SS-R
4を有し、前記少なくとも1種のオルガノトリスルフィドが構造R
5-SSS-R
6を有し且つ前記少なくとも1種のオルガノテトラスルフィドが構造R
7-SSSS-R
8を有し、ここで、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は独立してC
8~C
16アルキル基から選択される、局面7の安定化ポリマー組成物。
局面9:前記の少なくとも1種のオルガノジスルフィド、少なくとも1種のオルガノトリスルフィド及び少なくとも1種のオルガノテトラスルフィドが一緒になって前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分の少なくとも90重量%を占める、局面7又は8の安定化ポリマー組成物。
局面10:前記の少なくとも1種のオルガノジスルフィド、少なくとも1種のオルガノトリスルフィド及び少なくとも1種のオルガノテトラスルフィドが70:30~90:10のオルガノトリスルフィド:(オルガノジスルフィド+オルガノテトラスルフィド)の重量比で存在する、局面7~9のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面11:前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分が、オルガノジスルフィド及びオルガノトリスルフィド以外のオルガノポリスルフィドを15重量%未満含む、局面1~10のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面12:前記オルガノポリスルフィド系安定剤が、式(I):
【化4】
(ここで、
各R
4は独立してt-ブチル又はt-アミルであり、
R
5はヒドロキシル(-OH)であり、
o及びpはそれぞれ独立して0又は1であり、o又はpの少なくとも一方は1であり、
rは0又は1以上の整数であり、
芳香環は随意に1つ以上の位置で水素以外の置換基で置換されていてよい)
の少なくとも1種の芳香族ポリスルフィドを含む、請求項1に記載の安定化ポリマー組成物。
局面13:いずれの芳香環もR
5(ヒドロキシル)基に対してオルト位において水素以外の置換基で置換されていない、局面12の安定化ポリマー組成物。
局面14:rが1~20であり、各R
5がt-アミル又はt-ブチルであり、oが1であり且つpが1である、局面12又は13の安定化ポリマー組成物。
局面15:rが1~6であり、各R
5がt-アミル又はt-ブチルであり、oが1であり且つpが1である、局面12~14のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面16:前記オルガノポリスルフィド系安定剤成分が少なくとも1種のチウラムポリスルフィドから成る、局面1の安定化ポリマー組成物。
局面17:前記少なくとも1種のチウラムポリスルフィドがテトラアルキルチウラムジスルフィドである、局面16の安定化ポリマー組成物。
局面18:前記少なくとも1種のポリマーが少なくとも1種の熱可塑性物質を含む、局面1~17のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面19:前記少なくとも1種のポリマーが少なくとも1種のエラストマーを含む、局面1~17のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面20:前記少なくとも1種のポリマーがスチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂及びポリオキシメチレン樹脂より成る群から選択される、局面1~17のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面21:前記少なくとも1種のポリマーがポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン及びポリエチレンより成る群から選択される、局面1~17のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面22:オルガノポリスルフィド系安定剤成分を0.001~1重量%含む、局面1~21のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面23:オルガノポリスルフィド系安定剤以外の少なくとも1種の安定剤を追加的に含む、局面1~22のいずれかの安定化ポリマー組成物。
局面24:前記のオルガノポリスルフィド系安定剤以外の少なくとも1種の安定剤が酸化防止剤、オゾン分解防止剤及びUV安定剤より成る群から選択される、局面23の安定化ポリマー組成物。
局面25:前記のオルガノポリスルフィド以外の少なくとも1種の安定剤がヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト安定剤、ヒンダードアミン光安定剤及びそれらの組合せより成る群から選択される、局面23又は24の安定化ポリマー組成物。
局面26:ポリマーを安定化させるための方法であって、前記ポリマーと、オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分とを一緒にすることを含む、前記方法。
局面27:i)オルガノジスルフィド、オルガノトリスルフィド及びオルガノテトラスルフィドより成る群から選択される少なくとも1種のオルガノポリスルフィドを含むオルガノポリスルフィド系安定剤成分と、ii)ヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト/ホスホナイト安定剤及びヒンダードアミン光安定剤より成る群から選択される1種以上の追加の添加剤とを含む安定剤組成物。
局面28:局面1~25のいずれかの安定化ポリマー組成物で覆われ、被覆され又はコーティングされた、物品。
局面29:送電ケーブルである、局面28の物品。
局面30:前記安定化ポリマー組成物がアクリルポリマー、PVDFポリマー又はアクリルポリマーとPVDFポリマーとのブレンドを含む、局面28又は29の物品。
【0084】
本明細書においては、明瞭かつ簡潔な明細書が書かれるようにするために実施形態を明瞭且つ簡潔に記載してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分けたりすることができるということが意図されており、理解されるだろう。例えば、本明細書に記載されたすべての好ましい特徴は、本明細書に記載された本発明のすべての局面に適用可能である。
【0085】
ある実施形態において、本発明は、前記組成物又は方法の基本的特徴及び新規の特徴に著しく影響を及ぼすことのない要素やプロセスステップを排除するものと解釈することができる。さらに、ある実施形態において、本発明は、ここに特定していない要素やプロセスステップを排除するものと解釈することができる。
【0086】
ここまで、特定実施形態を参照して本発明を例示して説明してきたが、本発明は示された詳細に限定されることを意図したものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等範囲及び領域内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な変更を為すことができる。
【実施例】
【0087】
方法
【0088】
例1
【0089】
二軸スクリューマイクロDSMを用いて熱安定性試験用の実験サンプルを調製した。ポリマーと800ppmの割合の所定のスルフィド添加剤とを混合した。ポリマー及び添加剤の両方を220℃において系中に導入し、窒素雰囲気下で25rpmにおいて3分間混合した。
【0090】
得られたポリマー組成物の安定性を、等温重量分析によって測定した。サンプルをアルミニウム計量ボートに量り取り(通常1.5gの量)、所定の温度(180~260℃)の強制空気循環オーブン中に一定時間(1~6時間)入れた。ポリマー組成物を冷ました後に、ポリマー組成物の最終温度を測定し、ポリマー組成物の残量を測定した。加熱後の重量損失量の関数として、安定性を測定した。
【0091】
用いた添加剤は次の通りだった:
【0092】
添加剤A:ジ-t-ドデシルジスルフィド(CAS番号27458-90-8)、構造R-SS-R’に相当(ここで、R及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、C10~C13分岐鎖状脂肪族基である)(図中の呼称:「ポリスルフィド1a」又は「polysul 1a」)。
【0093】
添加剤B:ジ-t-ドデシルポリスルフィドブレンド(CAS番号68425-15-0)、構造R-SSx-R’に相当(ここでR及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、C10~C14分岐鎖状脂肪族基であり、xは1~3である(即ち、ジスルフィド、トリスルフィド及びテトラスルフィド種が存在し、トリスルフィドが最多量の種である)(図中の呼称:「ポリスルフィド1b」又は「polysol 1b」)。
【0094】
添加剤C:ジ-t-ドデシルポリスルフィドブレンド(CAS番号68425-15-0)、構造R-SSx-R’に相当(ここで、R及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、C10~C14分岐鎖状脂肪族基であり、xは2~5である(即ち、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド及びヘキサスルフィド種が存在し、テトラスルフィド及びペンタスルフィドが最多量の種である)(図中の呼称:「ポリスルフィド1c」又は「polysol 1c」)。
【0095】
Vultac(登録商標)2、ポリ(p-t-アミルフェノールジスルフィド)(CAS番号68555-98-6)、The Arkema Groupの製品(図中の呼称:「ポリスルフィド2a」又は「polysul 2a」)であり、次の構造を有する。
【化5】
【0096】
Vultac(登録商標)3、ポリ(p-t-アミルフェノールジスルフィド)(CAS番号68555-98-6)、The Arkema Groupの製品(図中の呼称:「ポリスルフィド2b」又は「polysul 2b」)であり、次の構造を有する:
【化6】
【0097】
Vultac(登録商標)7、ポリ(p-t-ブチルフェノールジスルフィド)(CAS番号60303-68-6)、The Arkema Groupの製品(図中の呼称:「ポリスルフィド2c」又は「polysul 2c」)であり、次の構造を有する:
【化7】
【0098】
Irgafos(登録商標)168、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、BASF社より販売(図中の呼称:「AO 168」)。
【0099】
Irganox(登録商標)1010、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、BASF社より販売(図中の呼称:「AO 1010」)。
【0100】
Tinuvin(登録商標)770、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、BASF社より販売(図中の呼称:「HALS 770」)。
【0101】
テトラメチルチウラムジスルフィド(図中の呼称:「Thiuram」)。
【0102】
添加剤を含有しないポリスチレン(対照例)又は800ppmの添加剤A、添加剤B若しくはVultac(登録商標)3を含有させたポリスチレンについて、260℃において1時間後及び2時間後に観察した重量損失%を、
図1に示す。
【0103】
添加剤を含有しないポリプロピレン(対照例)又は800ppmの各種添加剤若しくは添加剤の組合せ物(各安定剤400ppm)を含有させたポリプロピレンについて、240℃又は260℃において1時間後に観察した重量損失%を、
図2に示す。
【0104】
添加剤を含有しない高密度ポリエチレン(HDPE)(対照例)又は800ppmの各種添加剤若しくは添加剤の組合せ物(各添加剤400ppm)を含有させた高密度ポリエチレン(HDPE)について、260℃において2時間後及び6時間後に観察した重量損失%を、
図3に示す。
【0105】
図4に、上記の試験において測定された対照例(安定剤なし)との比較としての重量損失の減少を示す。
【0106】
例2
【0107】
この例は、HDPE(高密度ポリエチレン)の安定性に対する各種の添加剤及び添加剤の組合せの効果を示す。
【0108】
サンプル調製及び試験:それぞれの場合において、サンプルの成分(群)をDSMマイクロコンパウンダー中で窒素下で25rpmにおいて3分間混合した。得られた材料を次いで押出し、室温まで冷ました。各押出物をアルミニウム皿に集め、空気オーブン中で260℃において6時間焼成した。2時間後及び6時間後に重量損失を測定した。
図5に報告する。サンプルの組成を表1に記載する。「ポリスルフィド1b」成分の組成は、例1に記載する。
【0109】
【0110】
添加剤を含有しない対照例(サンプル2-A)と比較して、ポリスルフィド1b(サンプル2-B)及びIrganox((登録商標)1010(サンプル2-C)は共に、空気中で260℃に加熱した時に観察される重量損失の減少に効果があった。しかしながら、Zip 2とIrganox(登録商標)1010との組合せ(サンプル2-D)を使用することによって、 HDPEの相乗的安定化がもたらされた。従って、ポリスルフィド1bとIrganox(登録商標)1010との組合せを用いた場合には、個々の添加剤のいずれか一方を用いた場合と比較して、明らかな利点が存在すると結論づけられた。Irganox(登録商標)1010単独と比較して、熱分解が30%減少し、ポリスルフィド1b単独と比較して、熱分解が25%減少する。全体として、添加剤の組合せ物は、対照用サンプルと比較して、熱分解の量を65%減少させた。
【0111】
例3
【0112】
この例は、LDPE(低密度ポリエチレン)の安定性に対する各種添加剤及び添加剤の組合せ物の影響を示す。
【0113】
サンプル調製及び試験:それぞれの場合において、サンプルの成分(群)をDSMマイクロコンパウンダー中で窒素下で25rpmにおいて3分間混合した。得られた材料を次いで押出し、室温まで冷ました。各押出物をアルミニウム皿に集め、空気オーブン中で260℃において6時間焼成した。2時間後及び6時間後に重量損失を測定した。
図6に報告する。サンプルの組成を表2に記載する。
【0114】
【0115】
添加剤を含有しない対照例(サンプル2-A)と比較して、ポリスルフィド1b単独(サンプル3-B)は、空気中で260℃に加熱した時に観察される重量損失の減少に効果があった。しかしながら、ポリスルフィド1bとIrganox(登録商標)168との組合せ(サンプル3-E)又はポリスルフィド1bとTinuvin(登録商標)770との組合せ(サンプル3-F)を用いた場合には、LDPEの相乗的安定化がもたらされた。従って、ポリスルフィド1bとIrganox(登録商標)168との組合せ又はポリスルフィド1bとTinuvin(登録商標)770との組合せを用いた場合には、個々の添加剤のいずれか一方を用いた場合と比較して、明らかな利点が存在すると結論づけられた。
【0116】
表3に記載した組成を有するサンプルを用い、上に記載したものと同じサンプル調製及び試験手順に従って、さらなる研究を実施した。得られた結果を
図7に示す。
【0117】
【0118】
これらの結果は、樹脂配合物中にポリスルフィド1b添加剤を含有させることの利点を示している。熱応力に起因する重量損失は、本発明に従ってポリスルフィド1bを存在させた場合には、添加剤としてIrgafos(登録商標)160及びTinuvin(登録商標)770だけを用いた場合と比較して、50%以上減少した。さらに、ポリスルフィド1bを他の2つの添加剤と組み合わせて用いた場合に、利点が観察された。
【0119】
例4
【0120】
この例は、ポリプロピレンの安定性に対する各種の添加剤及び添加剤の組合せの効果を示す。
【0121】
サンプル調製及び試験:それぞれの場合において、サンプルの成分(群)をDSMマイクロコンパウンダー中で窒素下で25rpmにおいて3分間混合した。得られた材料を次いで押出し、室温まで冷ました。各押出物をアルミニウム皿に集め、空気オーブン中で160℃において800時間焼成した。800時間後に重量損失を測定した。
図8に報告する。サンプルの組成を表4に記載する。
【0122】
【0123】
ポリスルフィド1bとIrganox(登録商標)1010との組合せ物(サンプル4-D)は、対照例(サンプル4-A)と比較して、有意の重量損失が観察されるまでの時間を200時間以上延ばした。
【0124】
例5
【0125】
この例は、PVDFとアクリルコポリマーとのブレンドをベースとするコーティング配合物の安定性に対する各種の添加剤の効果を示す。
【0126】
Arkema社製のKynar Aquatec(登録商標)FMA-12ハイブリッドエマルションポリマーを用いて、固形分46重量%のベース水性塗料配合物を調製した。このFMA-12製品は、全ポリマー固形分に対して50重量%のPVDFコポリマー及び50重量%のアクリルコポリマーを含有する。このベース塗料配合物はまた、ルチル型二酸化チタン顔料(Chemours社製のTiPure(登録商標)R-960)、黒色混合金属酸化物顔料(Shepherd Color Company社製の30C965)及び399メッシュのタルクフィラーを、37:2:15:23:23のTiO2:黒色顔料:タルク:PVDFコポリマー:アクリルコポリマーの乾燥塗料重量組成を与えるように、含有する。ポリスルフィド添加剤をベース塗料配合物中に加えるために、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DPnB)の共溶剤中の添加剤の10重量%溶液を調製した。この添加剤溶液1.3g(又は対照用の生のDPnB1.3g)をベース水性配合物100gに加えて全ポリマー重量に対して0.6%の添加剤を含有する一連の塗料を得た。この塗料を、Bird Applicatorを用いてクロムめっきアルミニウムパネル上に流延し、週末の間60℃において乾燥させて残りの水及び共溶剤を除去して、厚さ約50μmの乾燥コーティングを得た。この乾燥コーティングの組成を表5に記載する。
【0127】
【0128】
コーティングされたパネルを約60mm×80mmのサンプルサイズにカットし、空気オーブン中で200℃において7週間焼成した。サンプルの質量損失を毎週測定し、
図9に報告する。(質量損失は、他のコーティング成分がはるかに高い熱安定性を有するので、アクリル質量の百分率として報告する。)ポリスルフィド添加剤2c(サンプル5-D)は、7週間の研究の間を通じて、対照例(サンプル5-A)及び他のポリスルフィド添加剤と比較して、質量損失速度を大幅に低下させた。
【0129】
サンプル5-Dの水性塗料配合物を周囲温度においてスプレー塗布法を用いて直径30mmのスチール強化アルミニウム電気導体ケーブルに塗布した。周囲温度において乾燥させた後に、乾燥フィルム厚さ20~30μmの本発明の連続ポリマー塗料フィルムが得られた。