(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】レドックス指示薬
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20221122BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20221122BHJP
C07D 401/06 20060101ALI20221122BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20221122BHJP
C07D 403/06 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N31/00 V
C07D401/06 CSP
C07D471/04 102
C07D403/06
(21)【出願番号】P 2020018891
(22)【出願日】2020-02-06
(62)【分割の表示】P 2017510301の分割
【原出願日】2015-08-21
【審査請求日】2020-03-06
(32)【優先日】2014-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ゲバウアー
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ハインドル
(72)【発明者】
【氏名】カリーナ ホルン
(72)【発明者】
【氏名】マクシム フォミン
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-530678(JP,A)
【文献】特開平08-100284(JP,A)
【文献】特表2011-515686(JP,A)
【文献】特開平10-031018(JP,A)
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2011年,Vol.46,p.4448-4456
【文献】Journal of Organic Chemistry,1982年,Vol.47,p.2303-2307
【文献】Journal of Electroanalytical Chemistry,1994年,Vol.364,p.277-279
【文献】Chemistry A European Journal,2013年,Vol.19,p.6538-6545
【文献】Res Chem Intermed,2013年,Vol.39,p.3525-3530
【文献】Chemistry A European Journal,2012年,Vol.18,p.10399-10407
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2011年,Vol.46,p.4448-4456
【文献】Chemistry of Heterocyclic Compounds,1991年,Vol.27 No.2,p.166-172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚的検査及び/又は光度測定により細胞の生存性又は代謝を分析するための、化学化合物又はその塩又はその溶媒和物の使用であって、
前記化学化合物は
、(XVIII)、(XX)、(XXI)、(XXV)、(XXVI)、(XXVII)、(XXX)~(XXXII)、及び(LII):
【化4】
【化5】
のいずれか1つの構造
で示される、
前記の使用。
【請求項2】
前記化学化合物は、構造(XXV)で
示される、請求項
1に記載の使用。
【請求項3】
前記化学化合物は、還元時に深色シフトを起こす化合物である、請求項
1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記化学化合物において、π-アクセプター基は還元された補酵素であるNADH、FADH、又はPQQHによって還元されない、請求項1~
3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
π-アクセプター基(Acc)に共有結合されるヘテロ環基(Het)を含む化学化合物又はその塩又はその溶媒和物であって、ここで当該化学化合は、
構造(XXV)~(XXVII):
【化10】
のいずれか1つ
で示される、
前記の化学化合物又はその塩又はその溶媒和物。
【請求項6】
式(XXV):
【化15】
の構造で
示される、請求項
5に記載の化学化合物又はその塩又はその溶媒和物。
【請求項7】
請求項
5又は6に記載の化学化合物又はその塩又はその溶媒和物の、細胞の生存性及び/又は微生物汚染の診断用組成物の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役したπ系及びπ-アクセプター基を含む、フェナジン-、フェナントリジン-、フェナントロリン-、キノリン-、キノキサリン-、アクリジン-イソキノリン-、ピラジン-又はピリジン-誘導体である化学化合物 (chemical compound)、又はその塩又はその溶媒和物、及びその使用に関する。本発明はさらに、本発明の化学化合物を含む化学マトリクス又は試験エレメントに関する。本発明はまた、試験試料中の分析物の量の測定方法であって、前記試験試料を、本発明の化学化合物、化学マトリクス、又は試験エレメントと接触させ、前記化学化合物によって、前記化学マトリクス中に含まれる化学化合物によって、又は前記試験エレメントに含まれる化学化合物によって、前記試験試料の存在下で遊離された、又は消費されたレドックス等価物 (redox equivalent)の量を推定し、それにより、前記試験試料中の分析物の量を測定することを含む、方法に関する。さらに本発明は、本発明の試験エレメントと、遊離され又は消費されたレドックス等価物の量を測定するためのセンサーを含む装置と含む、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断の分野では多くの場合、1又は2以上の分析物が体液、例えば血液、間質液、尿、唾液又は他のタイプの体液の試料において検出される必要がある。検出される分析物の例は、グルコース、トリグリセリド、ラクテート、コレステロール、又はそれらの体液に典型的には存在する他のタイプの分析物である。分析物の濃度及び/又は存在に従って、必要なら、適切な処理が選択され得る。
【0003】
近年の分析物検出及び測定方法はしばしば、この方法に特異性を付与するために分析物特異的酵素に依存する。しばしば、レドックス等価物をそれらの基質に移行し(基質の還元)、又はより典型的には、基質からレドックス等価物を引き出す(基質の酸化)、レドックス酵素が使用される。ほとんどのレドックス酵素は、レドックス等価物が最初に、酵素により移行される、例えばPQQ、NAD又はFAD、又はその還元型のPQQH2、HADH又はFADHのようなレドックス補因子の存在を必要とする。次に、分析物から引き出されるレドックス等価物は、レドックス指示薬(redoxindicator)又は電極に、直接的に又は間接的に移行され得る。
【0004】
一般的に、当業者に知られている装置及び方法は、検出されるべき分析物の存在下で、1又は2以上の検出可能検出反応、例えば光学的に又は電気化学的に検出できる検出反応を実施することができる1又は2以上の試験化学物質を含む試験エレメントを利用する。それらの試験化学物質及びそれに関連する方法に関して、J. Hoenes et al. (The Technology Behind Glucose Meters: Test Strips, Diabetes Technology & Therapeutics, Volume 10, Supplement 1, 2008, S-10 to S-26、米国特許第2009/0246808 Al号、及びHabermuller et al. (2000), Fresenius J Anal Chem 366 :560)を参照することができる。グルコースの電気化学的検出については、レビューが、例えばHeller & Feldman (2008), Chem. Rev. 108: 2482に提供される。
【0005】
レドックス指示薬は、レドックス反応を受けて、それらの吸光度を変更する化合物である(例えば、Naumann et al., "Indicator Dyes" in Ullmanns Encykl. Tech. Chem., 4. Aufl.; 1977, 13, 183-96;及びHulanicki & Glab, " Redox Indicators: Characteristics and Applications " Pure & Appl. Chem.,Vol. 50, 463-498; Pergamon Press Ltd., 1978に再考される)。当業界において知られている大部分のレドックス指示薬は、深色シフト (bathochromic shift)、すなわち、酸化時に、吸光度、反射率、透過率又は発光スペクトルにおけるスペクトルバンド位置のより長い波長への変化を示し、そして還元時に深色シフトを示すレドックス指示薬の例は、ほんのわずかである。還元時に深色シフトを示すレドックス指示薬は、分析物の比色決定のために特に有用である。
【0006】
非常に良く知られているレドックス指示薬は、リンモリブデン酸(PMO)である。しかしながら、この化合物は、レドックス状態があまりよく定義されていない欠点を有する(Burstein, S.; Anal. Chem.; 1953; 25 (3); 422-424; Rodrigues da Rocha, D.; Research Journal of Chemistry and Environment; 2007; 11; 102-1 03)。さらに、PMOの還元型はまた、単に低い消衰係数を有し、そしてPMOは還元された補酵素により直接的に還元されず、そして従って、メディエーターが使用される必要がある。
【0007】
代替的な発色性のレドックス指示薬が欧州特許第0831327号に記載されている。そこに記載される化合物の欠点は、還元型のそれらの化合物の非常に低い消衰係数である。さらに、テトラゾリウム塩がレドックス指示薬として使用されるが(例えば、欧州特許第0574769号を参照のこと)、しかしそれらの化合物は非常に不安定であり、そしてまた、デヒドロゲナーゼとの関連で働くため、フェナジンメトスルフェートのようなメディエーターの使用を必要とする(Pacaud-Mercier, K. et al.; Bioorganic Chemistry; 35 (1); 2007; 59-67)。しかしながら、フェナジンメトスルフェートは、アスコルベートにより容易に還元され、干渉を引き起こし得る。
【0008】
さらに、レドックス指示薬として次のものが提案された:レサズリン (resazurin)、ここで酸化型と還元型との間の色差は多くの用途のために小さ過ぎる;(PMOのような)ヘテロポリ酸(例えば、欧州特許第0431456号を参照のこと)、これは、多くの用途に適さない波長で低いモル吸光度及び最大吸光度を有する。
【0009】
国際公開第00/31543A1号においては、アクリダン誘導体を形成するためにNADHにより還元され得るアクリジン-エステルが開示され;アクリジンとは対照的に、アクリダンは開示される過酸化水素によって誘発される化学発光反応を受けるよう誘導され得ないので、化学発光シグナルは、NADH濃度に反比例することが見出された。さらに、生成されるシグナルは化学発光であり、これは特定の検出装置を必要とし、そして減少する化学発光シグナルは測定するには難しい。さらに、米国特許第5,498,542A号は、グルコースの電気化学的決定においてメディエーターとしてフェノキサジン及びフェノチアジンを開示している。開示される化合物はキノイド系を含み、ここでπ電子系は還元時に短くされることが知られており;従って、米国特許第5,498,542A号の化合物は、還元時に浅色シフト (hypsochromic shift)を受け、測定することが困難である。
【0010】
従って、レッドクス指示薬、特に上記課題を回避するレドックス指示薬を提供することが当技術分野では必要である。
【発明の概要】
【0011】
解決すべき課題
従って、本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも一部を回避して、前述の必要性に適合する化合物、手段及び方法を提供することである。
【0012】
本発明の概要
この課題は、本明細書に開示されるような構造体を含む化合物又はその塩又は溶媒和物により、前記化合物又はその塩又は溶媒和物を含む化学マトリクスにより、前記化合物又はその塩又は溶媒和物を含む試験エレメントにより、及び本明細書に開示されるような分析物の量を決定するための方法により、解決される。単離された態様で、又は任意の組み合わせで実現され得る、さらなる実施形態が、従属請求項に列挙され、そして本明細書に記載されている。
【0013】
従って、本発明は、三環式化合物又はその塩又は溶媒和物に関し、前記三環式化合物は、π-アクセプター基に共有結合される三環式ヘテロ環基を含み、式(I):
【化1】
[式中、
Xは-CH-又は-N-であり,
R
1、R
2、R
3、R
4は独立して、水素;アルキル、一実施形態において低級アルキル;置換又は無置換のアリール、一実施形態においてArR
9又はフェニル;ハライド;ニトロ;スルホネート;-CN;-COOH;-OR
9;-SR
9;-SSR
9;-C(O)OR
9;-C(O)NHR
9;NHC(O)R
9;-C(O)NH
2から選択され、
ここでR
9は;アルキル、一実施形態において低級アルキル;又は置換又は無置換のアリール、一実施形態においてフェニルから選択され;
及び/又は
R
a及びR
a+1(ここで、a=1、2、又は3である)は、一緒になってブリッジを形成して、5~6員のシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環、一実施形態において、‐CH=CH-CH=CH-ブリッジを形成し;一実施形態によれば、前記ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環又はO、N又はSから選択された、少なくとも1つのヘテロ原子を含み;さらなる実施形態においては、前記ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環はO、N又はSから選択された、わずか1つのヘテロ原子を含み;
R
5及びR
6は独立して、有機側鎖から選択され、一実施形態においてメチルであり、更なる実施形態においてエチルであり、更なる実施形態においてフェニルであり、
nは0~5の整数であり、一実施形態において0、1、又は2であり、
mは0及び1から選択される整数であり、
R
7はH又は有機側鎖であり、
R
8は有機側鎖であり、
又はR
8及びR
7は一緒になってブリッジを形成し、任意に置換された、5~6員のヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成する]
の一般構造を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、50mMのリン酸緩衝液(pH7)中、NADH(20μM)による、指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの処理に基づいての代表的時間依存性UV/Visスペクトルを示し、すなわちNADHの添加の後、535 nmでのλmaxの吸光度での変化を示す。矢印は、NADHの添加後の上昇する時間を示す;-NADH:NADHは添加されていない。x軸:波長(λ(nm))、y軸:吸光度。
【
図2】
図2は、指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートによるNADHの決定を示す。10分後の516 nmでの吸光度変化-対-HADH濃度。x軸:516 nmでの吸光度変化、y軸:NADH濃度(mM)。
【
図3】
図3は、それぞれ、リン酸緩衝液中、NADH(二ナトリウム塩、20 μM)又はアスコルビン酸(asc、20 μM)による指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの2種の溶液の処理に基づく動態の代表的UV/Visスペクトルを示す。x軸:時間(分)、y軸:吸光度。
【
図4】
図4は、100mMのリン酸緩衝液(pH7)中、グルコース(385 μM)による、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート(0.5 mM)及びNAD/GlucDH2の混合物の処理に基づく代表的時間依存性UV/Visスペクトルを示し、これは、グルコースの添加の後、516 nmでのλmaxの吸光度での変化を示す。矢印は、グルコース添加後、上昇する時間を示し;-glc:グルコースは添加されていない。x軸;波長(λ)(nm)、y軸:吸光度。
【
図5】
図5は、100 mMのリン酸緩衝液(pH7)中、グルコース(0-385 μM)による、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート(0.5 mM)及びNAD/GlucDH2の混合物の処理に基づく動態の代表的UV/Visスペクトルを示す。矢印は、上昇するグルコース濃度(それぞれ、119 μM、244 μM及び385 μM)を示し;-glc:グルコースは添加されていない。x軸:時間(分)、y軸:吸光度。
【
図6】
図6は、20分後、517 nmで記録された、100 mMのリン酸緩衝液(pH7)中、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート(0.5 mM)及びNAD/GlucDH2の混合物よるグルコースの決定のΔAbsに対応する較正プロットを示す。図中の各点は、三重反復の平均であり、エラーバーは標準偏差を示す。x軸:グルコース濃度(glc(μM))、y軸:ΔAbs。
【
図7】
図7は、100 mMのリン酸緩衝液(pH7)中、グルコース(0-385 μM)による、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート(0.5 mM)及びcarbaNAD/GlucDH2の混合物の処理に基づく動態の代表的UV/Visスペクトルを示す。矢印は、上昇するグルコース濃度(それぞれ、119 μM、244 μM及び385 μM)を示し;-glc:グルコースは添加されていない。x軸:時間(分)、y軸:吸光度。
【
図8】
図8は、20分後、517 nmで記録された、100 mMのリン酸緩衝液(pH7)中、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート(0.5 mM)及びcarbaNAD/GlucDH2の混合物よるグルコースの決定のΔAbsに対応する較正プロットを示す。図中の各点は、三重反復の平均であり、エラーバーは標準偏差を示す。x軸:グルコース濃度(glc(μM))、y軸:ΔAbs。
【
図9】
図9は、535 nmで記録された、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの還元型の吸光度の変化に対するNADHの初期濃度の効果を示す。図中の各点は、三重反復の平均であり、エラーバーは標準偏差を示す。x軸:初期NADH濃度([NADH]
0 (μM))、y軸:535 nmでの吸光度変化(ΔAbs)。
【
図10】
図10は、10 mMのPIPES(pH7)中、NADH(4μM)による、指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの処理の基づく代表的蛍光発光スペクトルを示し、これは、535 nmでの励起を用いて、NADHの添加後、560 nmでのλmaxの蛍光強度の変化を示し;-NADH:NADHは添加されていない。x軸:発光(λ(nm))、y軸:蛍光強度。
【
図11】
図11は、NADH濃度(0-4μM)と、指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの蛍光変化とを相関させる較正プロットを示す。測定は、560 nmでの10 mMのPIPES(pH7)において実施され、そして535 nmでの励起を用いて、30分のインキュベーションの後、記録された。x軸:初期NADH濃度([NADH]。(μM))、y軸:蛍光強度。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に使用される場合、用語「有する(have)」又は「含む(include)」、又は任意の文法上のその変形が、非排他的に使用される。従って、それらの用語は、それらの用語により導入される特徴の他に、さらなる特徴がこれに関連して記載される実体に存在しない状況、及び1又は2以上のさらなる特徴が存在する状況に関する。例として、表現、「AはBを有する(A has B)」、「AはBを含む(A comprises B)」、及び「AはBを包含する(A includes B)」は、Bの他に、他のエレメントがAに存在しない状況(すなわち、単独で且つ独占的にBから成る状況)、及びBの他に、1又は2以上のさらなるエレメント、例えばエレメントC、エレメントC及びD、又はさらなるエレメントが実体Aに存在する状況に関する。
【0016】
一実施形態によれば、本明細書に特定されるような構造を含む化合物は、多くても3つの化学修飾反応、さらなる実施形態によれば、多くても2つの修飾反応、さらなる実施形態によれば、多くとも1つの修飾反応により、前記式から成る化合物から誘導できる。用語「化学修飾反応(chemical modification reaction)」とは、当業者に知られており、そして一実施形態によれば、その特徴的な構造特性を変えないで、本発明の化合物の化学構造を修飾する化学反応に関する。従って、一実施形態によれば、用語、化学修飾反応とは、本発明の化合物の側鎖の修飾に関する。一実施形態によれば、側鎖の修飾は、アルキル化、例えばメチル化又はエチル化、アシル化、さらなる実施形態によれば、アセチル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヒドロキシアルキル化、又はそれらの任意の組み合わせである。一実施形態によれば、修飾された化合物は、本明細書に記載されるような親化合物と、本明細書に言及される用途に関して、同じか又は類似する活性を有する。一実施形態によれば、本発明の化合物は、それが水性緩衝溶液、一実施形態によれば、50 mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)中に、25℃の温度で溶解できるような態様で修飾される。一実施形態によれば、前記溶解性は、>15 mmol/L、さらなる実施形態によれば、>30 mmol/L、さらなる実施形態によれば、>50 mmol/Lである。親水性及び/又は溶解性を高める置換基は、当業界において良く知られている。さらなる例は、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン酸、ホスフェート及びホスホネート置換基を含む。
【0017】
さらに、以下に使用される場合、用語「好ましくは(preferably)」、「より好ましくは(more preferably)」、「特に(particularly)」、「より特定には(more particularly)」、「具体的には(specifically)」、「より具体的には(more specifically)」、又は類似する用語は、任意の特徴と併せて使用され、他の可能性を制限するものではない。従って、それらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、そして請求の範囲を決して限定することを意図しない。本発明は、当業者が認識するように、他の特徴を用いることにより実施され得る。同様に、「本発明の実施形態によれば」又は類似する表現により導入される特徴は、任意の特徴であることを意図し、本発明の他の実施形態に関していかなる制限もなく、本発明の範囲に関していかなる制限もなく、そしてそのようにして導入された特徴と、本発明の他の任意の又は非任意の特徴とを組合す可能性に関していかなる制限もない。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「化合物(chemical compound)」、「塩(salt)」及び「溶媒和物(solvate)」とは、当業者に知られているそれらの通常の意味で使用される。本発明の化合物の正味電荷が正である場合、典型的な対イオンは、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)、サルフェート、アルキルスルホネート、トシレート、ホスフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェートトリフルオロアセテート、過塩素酸塩、塩化物イオン又は硝酸イオンである。本発明の化合物の正味電荷が負である場合、典型的な対イオンは、リチウム、ナトリウム及び/又はカリウムイオン、又はテトラメチルアンモニウムイオンである。一実施形態によれば、本発明の化合物の正味電荷は、25℃、108Pa及びpH=7の標準条件下で水溶液中の化合物の正味電荷である。本明細書に提供される構造的定義から理解されるように、用語「三環式化合物(tricyclic chemical compound)」とは、本明細書に特定されるような三環式構造を含む化合物に関し、これは、一実施形態によれば、三環式化合物がさらなる環状構造を含むことを排除するものではない。
【0019】
用語「側鎖(side chain)」とは、当業者に理解されており、そして本明細書に記載されるような化合物のコアーパートに共有結合される原子又は化学基を言及し、前記コアーパートはまた、「主鎖(main chain)」又は「骨格(backbone)」としても言及される。一実施形態によれば、側鎖は、下記に記載されるような有機側鎖である。用語「置換された(substituted)」側鎖とは、1又は2以上の位置で、一実施形態では、1、2又は3個の位置で置換される側鎖に関し、ここで置換基は安定化合物を生成するために、任意の利用可能な原子に結合され得る。用語「任意に置換された(optionally substituted)」側鎖は、置換されていないか、又は置換された側鎖に関することが当業者により理解される。
【0020】
用語「有機側鎖(organic side chain)」とは、本明細書において使用される場合、少なくとも1つの炭素原子を含む、何れか任意に置換された側鎖に関する。一実施形態によれば、有機側鎖は、任意に置換された、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロアリール側鎖である。一実施形態によれば、置換された有機側鎖は、-COO - 、=O、-OH、-CN、ハロゲン、-NH2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)2、-N(アルキル)3
+、-NH(アリール)、N(アリール)2、-NO2、-O(アルキル)、-O-(CH2)n-OH、-O-(CH2)n-O(アルキル)、-O(アラルキル)、-O(アリール)、-OPO3
2-、-PO3
2-、-OSO3
- 及び -SO3
-から独立して選択された、少なくとも1つの置換基により置換された有機側鎖である。一実施形態によれば、置換基中のアルキル、アリール及びアラルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール基を含む基により、さらに置換されない。さらなる実施形態によれば、置換基中のアルキル、アリール及びアラルキル基はさらに、置換されない。
【0021】
用語「アルキル(alkyl)」とは、本明細書において使用される場合、その少なくとも1つの炭素原子の少なくとも1つの共有結合により、主鎖に結合される、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基に関する。さらに、アルキル基は、直鎖アルキル、例えば、一実施形態によれば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、又は分岐鎖アルキル基、例えば-CH(CH3)2、-CH(CH2CH3)2、-C(CH3)3、-C(CH2CH3)3、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH2CH3)2、-CH2C(CH3)3、-CH2C(CH2CH3)3、-CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)、 -CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH2CH3)2、-CH2CH2C(CH3)3、-CH2CH2C(CH2CH3)3、-CH(CH3)CH2CH(CH3)2又は-CH(CH3)CH(CH3)CH(CH3)2である。従って、アルキル基は、第一級アルキル基、第二級アルキル基及び第三級アルキル基を包含する。さらなる想定されるアルキル基は、低級アルキル基、例えば、一実施形態によれば、多くとも12個の炭素原子、さらなる実施形態によれば、多くとも9個の炭素原子、さらなる実施形態によれば、多くとも5個の炭素原子を有するアルキル基である。用語「シクロアルキル(cycloalkyl)」とは、一実施形態によれば、3~12個の炭素原子を有する、環状に閉じた、飽和又は不飽和炭化水素基に関する。さらに想定されるシクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルである。
【0022】
用語「アルケニル(alkenyl)」側鎖とは、少なくとも1つのC=C二重結合を含み、そしてその少なくとも2つの炭素原子に共有結合により主鎖に結合される側鎖に関する。従って、用語「アルキニル(alkinyl)」側鎖は、少なくとも1つのC≡C三重結合を含み、そしてその少なくとも2つの炭素原子の少なくとも1つに、共有結合により主鎖に結合される側鎖に関する。
【0023】
用語「シクロアルケニル(cycloalkenyl)」とは、一実施形態によれば、5~12個の炭素原子を有し、少なくとも1つのC=C二重結合を含み、そしてその少なくとも2つの炭素原子の少なくとも1つに共有結合により主鎖に結合される、環状に閉じられた炭化水素基に関する。用語「シクロアルキル(cycloalkinyl)」とは、一実施形態によれば、8~12個の炭素原子を有し、少なくとも1つのC≡C三重結合を含み、そしてその少なくとも2つの炭素原子の少なくとも1つに共有結合により主鎖に結合される、環状に閉じられた炭化水素基に関する。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ(alkoxy)」側鎖とは、一実施形態によれば、示される数の炭素原子を有する-O-アルキル側鎖に関する。一実施形態によれば、アルコキシ側鎖は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-イソプロピル、-O-ブチル、-O-sec-ブチル、-O-tert-ブチル、-O-ペンチル、-O-イソペンチル、-O-ネオペンチル、-O-ヘキシル、-O-イソヘキシル、又は-O-ネオヘキシルである。一実施形態によれば、アルコキシ側鎖は、-O-メチル又は-O-エチルである。
【0025】
用語「アリール(aryl)」とは、本明細書において使用される場合、一実施形態によれば、1、2又は3個の芳香族環を含む、6~14個の炭素原子を有する芳香族環又は環系に関する。さらに想定されるアリール側鎖は、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントレニルである。用語「環(ring)」とは、本発明の化合物に関して、当業者により理解されており;従って、用語「環系(ring system)」とは、少なくとも1つの共有結合を共有する少なくとも2つの環を含む化学構造に関する。従って、一実施形態によれば、「アリール(aryl)」はまた、シクロアルキルにより融合される芳香族環系、及び/又はヘテロシクロアルキル環を包含する。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「アラルキル(aralkyl)」とは、アルキル側鎖に関し、ここで少なくとも1つの水素がアリール側鎖により置換される。一実施形態によれば、アラルキルは、ベンジル又はフェネチルである。
【0027】
用語「ヘテロシクロアルキル(heterocycloalkyl)」とは、本明細書において使用される場合、5~14個の環原子、一実施形態によれば、5~7個の環原子を有する、飽和又は部分的不飽和の環又は環系に関し、ここで少なくとも1つの環原子は、N,O及びSから成る群から選択されたヘテロ原子であり、前記環又は環系は、前記環又は環系のC又はN原子に共有結合により主鎖に結合される。一実施形態によれば、ヘテロシクロアルキルは、アゼピニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チアジアゾリジニル、チアゾリジニル、又はチオモルホリニルである。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「ヘテロアリール(heteroaryl)」とは、5~14個の環原子、一実施形態によれば、5~7個の環原子を有する芳香族環又は環系に関し、ここで少なくとも1つの環原子は、N、O及びSから成る群から選択されたヘテロ原子であり、前記環系は前記環又は環系のC又はN原子に共有結合により主鎖に結合される。一実施形態によれば、環当たり4個までの、さらなる実施形態によれば、3個までの、さらなる実施形態によれば、2個までの環原子は、N、O及びSから成るヘテロ原子群から独立して選択されたヘテロ原子である。一実施形態によれば、ヘテロアリールは、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、キナノキサリル、インドリジニル、ベンゾ[b]チエニル、キナゾリニル、プリニル、インドリル、キノリニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサチアジアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、フラニル、ベンゾフリル、又はインドリルである。
【0029】
本明細書の構造式に関して、「X」は基-CH-又は窒素原子(N)に関し;さらに、nは0~5、一実施形態によれば、0、1、又は2の整数であり、そしてmは0及び1から選択された整数である。一実施形態によれば、mは0である。また、一実施形態によれば、n及びmの合計は、一実施形態によれば、3又はそれ以下であり、さらなる実施形態によれば、n及びmの合計は2又はそれ以下であり;さらなる実施形態によれば、n及びmの合計は1である。
【0030】
さらに、本明細書の構造式に関しては、側鎖R1、R2、R3、R4は、水素;アルキル、一実施形態によれば、低級アルキル;非置換又は置換のアリール、一実施形態によれば、ArR9又はフェニル;ハロゲン化物;ニトロ;スルホネート;-CN; -COOH; -OR9; -SR9; -SSR9; -C(O)OR9; -CO)NHR9; NHC(O)R9; ‐C(O)NH2から独立して、選択され;そしてR9は、アルキル、一実施形態によれば、低級アルキル;又は非置換又は置換のアリール、一実施形態によれば、フェニルから選択される。一実施形態によれば、R9及びRa+1(a=1、2又は3)は、一緒に、ブリッジを形成し、5~6員のシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。従って、一実施形態によれば、R1及びR2は一緒に、ブリッジを形成し、5~6員のシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成し、R2及びR3は一緒に、ブリッジを形成し、5~6員のシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成し、そして/又はR3及びR4は一緒に、ブリッジを形成し、5~6員のシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。さらなる実施形態によれば、Ra及びRa+1(a=1、2又は3)は、一緒に、-CH=CH-CH=CH-ブリッジを形成する。従って、一実施形態によれば、R1及びR2は一緒に、-CH=CH-CH=CH-ブリッジを形成し、又はR2及びR3は一緒に、-CH=CH-CH=CH-ブリッジを形成し、又はR3及びR4は一緒に、-CH=CH-CH=CH-ブリッジを形成し、又はそれぞれ、R1 / R2 及び R3 / R4の両者は一緒に、-CH=CH-CH=CH-ブリッジを形成する。一実施形態によれば、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つは水素である。さらなる実施形態によれば、R1、R2、R3及びR4の少なくとも2つの又は少なくとも3つは水素である。さらなる実施形態によれば、R1、R2、R3及びR4は水素である。
【0031】
さらに、側鎖R5及びR6は、独立して選択された有機側鎖、一実施形態によれば、任意に置換されたアリール、アルキル又はシクロアルキル、さらなる実施形態によれば、メチル、プロピル、ブチル、シクロベンチル、又はシクロへキシル、さらなる実施形態によれば、エチル、さらなる実施形態によれば、フェニル又は(C3-C6)アルキルスルホネート又は(C3-C6)アルキル-N+Me3であり;側鎖R7はH又は有機側鎖であり、R8は有機側鎖である。しかしながら、R8及びR7は一緒に、ブリッジを形成し、5~6員のヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成することがまた想定される。
【0032】
π-アクセプター基を含む側鎖は、式(I)に示される炭素原子C1~C4のいずれかを介して式(I)の環系に共有結合され得ることは当業者により理解されている。一実施形態によれば、側鎖π-アクセプター基は、直接的に、又は1又は2以上の炭素-炭素二重結合(又はビニレン基)を介して、複素環基に共有結合され、ここで側鎖π-アクセプター基が2つ以上の炭素-炭素二重結合を介して複素環基に共有結合される場合、前記2つ以上の炭素-炭素二重結合は共役される(単離されないか又は累積されない)。π-アクセプター基の結合のさらなる実施形態は、本明細書の他の部分に特定される。
【0033】
一実施形態によれば、三環系化合物においては、Xは-N-であり、そしてπ系は、式(I)に示されるように、ヘテロ芳香族系のC1、C2、C3又はC4に共有結合され;又はXは-CH-であり、そしてπ系は、式(I)に示されるように、ヘテロ芳香族系のC2又はC4に共有結合される。さらなる実施形態によれば、三環式化合物においては、Xは-N-であり、そしてπ系は、式(I)に示されるように、ヘテロ芳香族系のC1に共有結合され;又はXは-CH-であり、そしてπ系は、式(I)に示されるように、ヘテロ芳香族系のC2に共有結合される。
【0034】
本発明の化合物のπ-アクセプター基は、二価の第四級窒素含有カチオン基、すなわちイミニウム基(=N+R2)である。一実施形態によれば、n-アクセプター基は、還元された補酵素NADH、FADH又はPQQHにより還元されない。一実施形態によれば、R7及びR8は一緒に、次のモノを形成する:任意に置換された、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、又はヘテロシクロアルキル環式基、一実施形態によれば、例えば3H-インドリル、3,3-ジメチル-3H-インドリル、1-メチル-1H-ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾセレナゾリル、ベンズ[cd]インドリル、又はピリジル。さらに、π-アクセプター基は、当業界において良く知られており、そして例えばA. I. Tolmachev, A. Y. Il’chenko, in Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, John Wiley & Sons, Inc., 2000、及び下記本明細書に引用される追加の参考文献からのポリメチン色素化学に使用される。
【0035】
一実施形態によれば、π-アクセプター基は、下記から成る群から選択される:
(i)下記式(II):
【化2】
[式中、Yは-N(Me)-、-S-、 -Se-、-O-、又は -C(Me)
2-である]で表される構造を含み側鎖、
(ii)下記式(III ):
【化3】
で表される構造を含む側鎖、
(iii)下記式(IV):
【化4】
で表される構造を含む側鎖、
(iv)下記式(v):
【化5】
で表される構造を含む側鎖、
ここで式(II)~(V)のそれぞれにおいて、R10はアルキル又はシクロアルキル、一実施形態によれば、メチルである。
【0036】
さらなる実施形態によれば、三環式化合物は、10-メチル-1-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)ビニル]フェナジニウム(式XX)であるか、又は三環式化合物は、9-エトキシ-10-メチル-1-[(E)‐2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)ビニル]フェナジニウム(式XXI)である。それらの式に示される対イオンは単なる典型的な対イオンであり、そして上記で述べられたように、何れか他の適切な対イオンに交換され得る。
【化6】
【0037】
一実施形態によれば、本発明の化合物は、標準条件下で、及び標準水素電極に対して、少なくとも-0.4Vの中点電位を有する化合物である。さらなる実施形態によれば、本発明の化合物は、標準条件下で、及び標準水素電極に対して、少なくとも-0.1V、さらなる実施形態によれば、少なくとも0.2Vの中点電位を有する化合物である。一実施形態によれば、本発明の化合物に関して使用されるような還元は、次のスキームによれば、環系による2つの電子の獲得に関する:
【化7】
【0038】
上記図において、Accは上記のように、π-アクセプター基を表す。
【0039】
従って、本発明の化合物においては、ポリメチン型のドナー-アクセプター色素が、還元時に形成される。従って、一実施形態によれば、本発明の化合物は、還元時に深色シフトを起こす化合物である。さらなる実施形態によれば、前記化合物の還元型は、400~800 nmの波長で最大吸光度を有する。
【0040】
好都合には、本明細書に記載される化合物は、還元時に深色シフトを起こす化合物であり、そして前記化合物のレドックス電位が特に、還元ニコチンアデニンジヌクレオチド(NADH)からレドックス等価物を受けとるのに適したものにすることが、本発明の基礎となる研究に見出された。さらに、前記化合物が可視光の範囲で少なくとも1つの最大吸光度を有し、これが、例えば血液試料に含まれる他の化合物からの干渉が最少又は少なくとも許容できる波長で、それらのレドックス状態の視覚的検査及び/又は光度測定を可能にすることが見出された。それらの化合物のいくつかはまた、還元時に蛍光発生し、そして従って、蛍光分光法又は蛍光イメージングにより還元剤を測定するか、又は検出するために使用され得る(例えば、R. Freeman, R. Gill, I. Shweky, M. Kotler, U. Banin, I. Willner, Angewandte Chemie 2009, 121, 315-319を参照のこと)。
【0041】
上記の定義は、以下に準用する。以下でさらに定義される追加の定義及び説明は、本明細書に記載されるすべての実施形態についても、必要な変更を加えて適用される。
【0042】
さらに、本発明は、レドックス補因子(cofactor)と、化合物又はその塩又はその溶媒和物とを含む化学マトリクスに関し、ここで前記化学化合物は、π-アクセプター基(Acc)に共有結合されるヘテロ環基(Het)を含み、そして式(VI):
【化8】
[式中、
Hetは、式VII~XV:
【化9】
及び一実施形態によれば、
【化10】
(式中、
R
11は有機側鎖であり、一実施形態においてメチルであり、更なる実施形態においてエチルであり、更なる実施形態においてフェニルである)
から選択される構造を含む]
の一般構造を有し、
ここで、前記-(ビニレン)
lAcc基は、C
*で示される炭素原子の一つに連結され、
lは、0~5の整数であり、一実施形態において0、1、又は2であり、
Accは、-(C=O)アリール、-(C=C(CN)
2)、及び、一般式(XVI):
【化11】
[式中、
R
12は有機側鎖であり、一実施形態においてメチルであり、更なる実施形態においてエチルであり、更なる実施形態においてフェニルであり,
kは0及び1から選択される整数であり、
R
13はH又は有機側鎖であり,
R
14は有機側鎖であり,
又はR
13及びR
14は一緒になってブリッジを形成し、5~6員のヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成する]
のアクセプター基から選択される。
【0043】
用語「化学マトリクス(chemistry matrix)」は、当業者に知られており、そして前述の化合物、及び下記に記載されるようなレドックス補因子を含む、化合物の混合物に関する。一実施形態によれば、本発明の化学マトリクスは、上記に示された化合物の他に、さらに、下記に記載されるようなオキシドレダクターゼを含む。前記組成物は、追加の成分、例えば、一実施形態によれば、緩衝液成分(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸グリセリン緩衝液、又はグッド緩衝液)、又は他の塩、界面活性剤、又は同様のもの、例えば下記に特定されるような成分を含むことができることは、当業者により理解されている。
【0044】
用語「レドックス補因子(redox cofactor)」又は「補因子(cofactor)」とは、本明細書において使用される場合、レドックス活性フラビン、ニコチンアミド又はピロロキノリンキノン(PQQ)補酵素に関する。当業者は、選択されたオキシドレダクターゼに依存して、上記の補酵素の1つを、いかにして適切に選択するかを知っている。一実施形態によれば、フラビン、ニコチンアミド又はPQQ補酵素は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビシモノヌクレオチド(FMN)又はPQQ、又は前述の化合物の1つの誘導体である。さらなる実施形態によれば、レドックス補因子は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP +)、又はその誘導体である。さらに、NAD+又はNADP+誘導体は、安定化されたNAD+又はNADP+誘導体、すなわち、一実施形態によれば、Slama (Biochemistry 27: 183 (1988))、Hutchinson et al. (Chem. Comm. 24: 2765 (1996))、 米国特許第 5,801,006号、国際公開第98/33936号、国際公開第01/49247号 及び国際公開第2007/012494号に開示されるような、カルバ環式(carbacyclic)誘導体、例えば、さらなる実施形態によれば、carbaNAD+又はcarbaNADP+である。さらなる実施形態によれば、レドックス補因子は、還元されたNAD+、NADP+、carbaNAD+、又はcarbaNADP+、すなわち、一実施形態によれば、NADH、NADPH、carbaNADH、又はcarbaNADPHである。当業者により理解されるように、用語「レドックス補因子を含む(comprising a redox cofactor)」とは、一実施形態によれば、少なくとも1つのレドックス補因子が化合物の混合物にそのまま添加される場合、及び少なくとも1つのレドックス補因子が前記化合物の混合物に添加される異なった化合物の構成成分として、例えば一実施形態によれば、前記化合物に添加される1又は2以上の細胞の構成成分として、化学マトリクスに依存する場合を包含する。
【0045】
本明細書において使用される場合、「複素環基(heterocyclic group)」とは、上記に示されるように、式(VII )~(XV)の1つ、一実施形態によれば、式(VII )~(XVa)の1つによる化学側鎖に関する。一実施形態によれば、複素環基は、レドックス活性複素環基である。レドックス活性複素環基は、先行技術から公知である(J. W. Bunting, V. S. F. Chew, G. Chu, The Journal of Organic Chemistry 1982, 47, 2303-2307; D. Ostovic, I. S. H. Lee, R. M. G. Roberts, M. M. Kreevoy, The Journal of Organic Chemistry 1985, 50, 4206-4211; R. Hisada, T. Yagi, The Journal of Biochemistry 1977, 82, 1469-1473; J. W. Bunting, A. W. C. Ng, Bioorg Chem 1993, 21, 156-169)。
【0046】
本発明の式に関して使用されるような、及び上記に特定されるような側鎖Accは、例えば、一実施形態によれば、ポリメチン色素化学から、当業者に知られているπ-アクセプター基である(例えば、A. I. Tolmachev, A. Y. Il’chenko, in Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, John Wiley & Sons, Inc., 2000を参照のこと)。側鎖Accは、一実施形態によれば、直接的に、又は1つの1又は2以上のエテニル(ビニル)又はエチレン(ビニレン)基を介して、複素環基に共有結合される。一実施形態によれば、成分XVIは、イミニクム窒素原子及びベニレン炭素原子を含む、共役π系の隣接原子が、3又は4個の炭素原子により、又は-CH2-O-CH2-鎖により結合されるよう置換される。そのような環閉鎖は、ポリメチレン色素化学において良く知られている(例えば、A. V. Kulinich, N. A. Derevyanko, A. A. Ishchenko, Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry 2008, 198, 119-125; I. L. Mushkalko, Y. A. Sogulyaev, Ukr. Khim. Zh. (Russ. Ed.) 1986, 52, 509-513; A. Samanta, M. Vendrell, R. Das, Y.-T. Chang, Chem Commun (Camb) 2010, 46, 7406-7408; X. Chen, X. Peng, A. Cui, B. Wang, L. Wang, R. Zhang, Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry 2006, 181, 79-85を参照のこと)。一実施形態によれば、Accは、(C=O)アリール、-(C=C(CN)
2)、又は下記一般式(XVI):
【化12】
で表されるπ-アクセプター基である。
【0047】
本明細書の構造式に関して使用される場合、kは0及び1から選択された整数に関する。一実施形態によれば、kは0である。また、一実施形態によれば、l及びkの合計は、3又はそれ以下であり、さらなる実施形態によれば、l及びkの合計は2又はそれ以下であり;さらなる実施形態によれば、l及びkの合計は1である。
【0048】
本明細書において使用される場合、R12は、有機側鎖、一実施形態によれば、任意に置換されたアリール、アルキル又はシクロアルキル、さらなる実施形態によれば、メチル、プロピル、ブチル、シクロペンチル又はシクロへキシル、さらなる実施形態によれば、エチル、さらなる実施形態によれば、フェニル又は(C3-C6)アルキルスルホネート又は(C3-C6)アルキル-N+Me3に関する。一実施形態によれば、R12及びR13は一緒にブリッジを形成し、任意に置換された、5~6-員のヘテロシクロアルキル又はヘテロアリール環を形成する。
【0049】
本発明によれば、π-アクセプター基を含む側鎖は、示される炭素原子C*のいずれかを介してレドックス活性成分の環系に共有結合される。π-アクセプター基の結合のさらなる実施形態は、本明細書の他の部分に特定されている。
【0050】
一実施形態によれば、化合物は、下記式(XVII)~(XXXVII)、(XXX)~(XXXII)、及び一実施形態によれば、(LII):
【化13】
【化14】
及び一実施形態によれば、
【化15】
から選択された構造を含むか、又は前記構造から成る化合物である。
【0051】
本発明の化学マトリクスは、一実施形態によれば、まず、本発明の組成物中の成分を、溶媒又は溶媒の混合物に溶解することにより、提供され得る。さらなる実施形態によれば、前記溶媒又は溶媒の混合物は、続いて適切な処理により除かれ、結果的に、残留する組成物は実質的に前記溶媒又は溶媒の混合物を含まない。一実施形態によれば、本発明により想定される適切な処理は、熱処理、蒸発技法、凍結乾燥、等を包含する。一実施形態によれば、想定される処理は、熱処理及び特に、次の条件下での熱処理である:約60℃又はそれ以上で約20~45分間、又は約90℃で約1~2分間、熱循環を伴っての熱処理;20~200 μm又はそれ以下の化学マトリクスを保持するために、一実施形態によれば、貯蔵が、乾燥剤の存在下で行われることは理解されるであろう。適切な乾燥剤は、一実施形態によれば、シリカゲル、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウムを包含する。本発明の化合物はまた、レドックス活性フィルムを形成するために、ポリマーに重合されるか、又は共重合され、又はポリマー中に組み込まれ得る。
【0052】
用語「オキシドレダクターゼ(oxidoreductase)」及び「オキシドレダクターゼ酵素(oxidoreductase enzyme)」とは、本明細書において使用される場合、本明細書の他の部分で使用されるように、レドックス補因子に、又はそれらからレドックス等価物として水素化物(H-)を移行することにより、基質の特定の酸化又は還元を触媒することができるポリペプチドに関する。一実施形態によれば、オキシドレダクターゼは、デヒドロゲナーゼ、すなわち、本明細書の他の部分で言及されるようにオキシドレダクターゼは、デヒドロゲナーゼ、すなわち、本明細書の他の部分で言及されるように、アクセプター分子に、一実施形態によれば、レドックス補因子に、レドックス等価物として水素化物(H-)を移行することにより、基質の酸化を触媒することができるポリペプチドである。本発明により想定されるデヒドロゲナーゼは、一実施形態によれば、レドックス補因子(または時々、補酵素と呼ばれる)、例えばピロロキノリンキノン(PQQ)又はその誘導体、ニコチンアミド-アデニン-ジヌクレオチド(NAD)又はその誘導体、又はフラビン補因子、例えばフラビン-アデニン-ジヌクレオチド(FAD)又はフラビンモノヌクレオチド(FMN)、又はその誘導体に依存するものである。さらに、デヒドロゲナーゼは、特に乳酸デヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.27又は1.1.1.28)、グルコースデヒドロゲナーゼ(下記参照)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.1又は1.1.1.2)、L-アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC番号1.4.1.5)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.6)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.37)、3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.30)、又はソルビトールデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.14)である。
【0053】
さらなる実施形態によれば、前記オキシドレダクターゼは、グルコースデヒドロゲナーゼである。さらなる実施形態によれば、前記グルコースデヒドロゲナーゼは、次のものから成る群から選択される:グルコースデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.47)、キノプロテイングルコースデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.5.2)、特にピロロキノリンキノン(PQQ)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.5.2)、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.49)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.119)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.99.10)又はそれらの酵素的に活性な変異体。
【0054】
前述の酵素の酵素的活性変異体は、前に引用されたような従来技術における前述の野生型酵素について報告されるアミノ酸配列から、1又は2以上のアミノ酸を置換し、付加し、又は欠失することにより得られる。米国特許第7,132,270号又は米国特許第7,547,535号に開示されるように、野生型対応物に比較して、改善された基質特異性を有するPQQ-依存性グルコースデヒドロゲナーゼの変異体が、さらに変異体として想定される。文献は、変異体に関して、本明細書に参照により組込まれる。さらに、変異体は、Baik et al (Baik, Appl Environ Microbiol (2005) 71: 3285)、Vasquez-Figuera et al. (Vasquez-Figuera, Chem BioChem (2007) 8: 2295)、 及び国際公開第 2005/045016号に開示されるものである。
【0055】
少なくともアミノ酸位置96、170及び/又は252で突然変異を有する、国際公開第2009/103540A1号(p21)又は欧州特許第1660648号(引用により本明細書に組み込まれる)に開示されるグルコースデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.47)変異体が、さらに本発明に従って想定される。それらのアミノ酸位置で想定されるさらなる突然変異は、Glu96Gly、Glu170Arg又はLys 及び/又は Lys252Leu、例えば組み合わせGlu170Lys / Lys252Leuの置換である。さらなる実施形態によれば、前記突然変異は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)からのグルコースデヒドロゲナーゼにおける突然変異Glu170Arg及び Gln252Leuである。
【0056】
当業者により理解されるように、本発明の化合物は、オキシレダクターゼが、一実施形態によれば、例えばイムノアッセイ、又は分析物の酵素決定において、レポーター酵素として使用される場合、レポーター色素として使用され得る。さらに、化合物は、より高い消衰係数の利点を伴って、細胞生存性試験のためのテトラゾリウム塩の代替物として使用され得る。さらに、化合物が修飾される場合、それらは標識試薬として使用され得る。
【0057】
用語「レドックス等価物(redox equivalents)」とは、本明細書において使用される場合、当業者に良く知られているレドックス化学に通常使用される概念に関する。一実施形態によれば、その用語は、オキシドレダクターゼの基質からレドックス補因子に、及び/又は前記レドックス補因子からレドックスメディエーターに、及び/又は前記レドックスメディエーターから指示薬化合物及び/又は電極に移行される電子に関する。
【0058】
本発明の化学マトリクスのさらなる実施形態によれば、前記組成物はさらに、少なくとも1つの洗浄剤、膨潤剤、フィルム形成剤、及び/又は固体粒子を含む。本発明の組成物に使用される適切な安定剤、洗浄剤、膨潤剤、フィルム形成剤、酸化剤、及び/又は固体粒子は、当業者に公知である。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの洗浄剤は、次のものから成る群から選択される:ナトリウム-N-メチル-N-オレオイルタウリン、N-オクタノイル-N-メチル-グルカミド、Mega8(N-メチル-N-オクタノイルグルカミド)、ジオクチルナトリウムスルホサクシネート(DONS)、Rhodapex(登録商標)(一実施形態ではCO-433又はCO-436)。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの膨潤剤は、次のものから成る群から選択される:メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、キサンタンガム及びメチルビニルエーテルマレイン酸コポリマー。一実施形態によれば、前記少なくとも1つのフィルム形成剤は、次のものから成る群から選択され:ポリビニルプロピオネート分散液、ポリビニルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリビニルアミド、ポリアミド、ポリスチレンそして混合された重合体、例えばブタジエン、スチレン又はマレイン酸エステルもまた適している。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの固体粒子は、次のものから成る群から選択される:シリカ粒子、特に二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸アルミニウム、珪藻土、金属酸化物、特に酸化チタン及び/又は酸化アルミニウム、合成酸化物材料、特に酸化物材料のナノ粒子、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は酸化チタンのナノ粒子、カオリン、粉末ガラス、無定形シリカ、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウム。
【0059】
また、本発明は、本発明の化合物及び/又は化学マトリクスを含む試験エレメントにも関する。
【0060】
用語「試験エレメント(test element)」とは、本明細書において使用される場合、固体支持体上の試験化学、一実施形態によれば、乾燥試験化学を含むユニットに関する。一実施形態によれば、試験化学は、下記に記載されるような試験フィールドに含まれる。また、一実施形態によれば、試験エレメントはさらに、毛細菅作用により液体を取り、そして/又は一実施形態によれば、試験フィールドに輸送するよう適合された毛細管エレメントを含む。一実施形態によれば、試験エレメントは、光学試験エレメント及び電気化学試験エレメントから選択される。さらに、試験エレメントは、一実施形態によれば、穿刺動作、サンプリング動作又はランシング(lancing)動作を実行し、それにより皮膚表面に切開部を生成するために、試験フィールドに関して、移動可能に取り付けられ得る、少なくとも1つの穿刺エレメント(puncture element)、例えばランシングエレメントを、任意には含むことができる。一実施形態によれば、試験フィールドは、穿刺、サンプリング又はランシング動作の間、固定された位置に存続し、ここで体液の試料が、例えば毛管作用により、及び/又は穿刺、サンプリング又はランシング動作の後、試験フィールド上に穿刺エレメント又はその一部を圧縮することにより、試験フィールド上に移行される。一実施形態によれば、試験エレメントは、試験ストリップ、試験テープ又は試験ディスクである。
【0061】
用語「試験フィールド(test field)」とは、一実施形態によれば、少なくとも1つのキャリヤー、例えば少なくとも1つのキャリヤーフィルムにより支持される、連続的又は不連続量の試験化学に関する。従って試験化学は、試験フィールドの1又は2以上のフィルム又は層において、形成することができるか、又は含まれ得、そして/又は、試験フィールドは1又は2以上の層を有する層セットアップを含むことができ、ここで前記層の少なくとも1つは試験化学を含む。従って、試験フィールドは、キャリヤー上に配置された層セットアップを含むことができ、ここで体液の試料が、少なくとも1つの適用側から、例えば試験フィールドの端から、及び/又は試験フィールドの適用表面から、層セットアップに適用され得る。一実施形態によれば、試験フィールドは、多層セットアップを有し、前記多層セットアップは、少なくとも1つの試験材料を有する少なくとも1つの検出層を含み、そしてさらに、体液に含まれる少なくとも1つの粒状成分を分離するよう適合された少なくとも1つの分離層を含み、ここで前記分離層は、検出層と毛細菅エレメントとの間に位置する。体液と試験フィールドとの間に、任意には存在するすべての層は、少なくとも分析物の通過を可能にするよう選択されることは、当業者に理解されている。
【0062】
一実施形態によれば、試験エレメントは、光学試験エレメント、すなわち分析物の存在下で少なくとも1つの光学特性を変えるよう適合された試験エレメントである。さらなる実施形態によれば、試験エレメントに含まれる少なくとも1つの化学マトリクスは、分析物の存在下で少なくとも1つの光学的検出できる検出反応を実行する。また、一実施形態によれば、検出反応は、レドックス反応である。さらなる実施形態によれば、検出反応は、中間体及び/又は生成物としてレドックス等価物及び/又は電子を生成する。一実施形態によれば、検出反応により生成される光学的に検出できるシグナルは、試料中の分析物の量及び/又は濃度に比例する。
【0063】
一実施形態によれば、分析物の存在下で少なくとも1つの光学特性を変えるよう適合された試験エレメントにおいては、一実施形態によれば、本発明の化合物は、分析物の存在下で少なくとも1つの光学特性を変える。しかしながら、試験エレメントはさらに、指示薬を含むことがまた想定される。用語「指示薬(indicator reagent)」とは、本明細書において使用される場合、一実施形態によれば、試験エレメントに含まれる本発明の化合物のレドックス状態に依存して、一実施形態によれば、その状態に比例して、少なくとも1つの光学特性を変える化合物に関する。一実施形態によれば、指示薬は、化学マトリクスに含まれる本発明の分析物の存在下でそのレドックス状態を変える場合、少なくとも1つの光学的に検出できる特性変更を実行する、光学的指示物質である。従って、前記少なくとも1つの指示薬は、一実施形態によれば、少なくとも1つの酵素及び分析物の酵素反応を示す光学特性の変更を行う1又は2以上の色素を含む。
【0064】
用語「光学特性(optical property)」とは、本明細書において使用される場合、光学機器により検出される特性を意味する。特に、光学特性は、以下から成る群から選択された少なくとも1つの特性であり得るか、又はそれらの特性を含むことができる:反射特性、透過特性、発光特性、散乱特性、蛍光特性、燐光特性、回折特性、及び偏光特性。一実施形態によれば、本明細書において言及されるような光学特性は、光学的に検出され得る化合物の特性、例えば光吸収、光放出、光緩和、又はそれらに関連する特性に関する。本明細書において使用されるような少なくとも1つの光学特性のそのような変化は、これまで検出できなかった特性の存在の検出、これまで検出されている特性の不在の検出、及び特性の定量的変化の検出、すなわち少なくとも1つの光学特性の変化度に相関するシグナル強度の変化の検出を包含することは理解されるであろう。さらに、本発明により想定される光学特性は、色、蛍光、ルミネセンス又は屈折率測定である。上記で定義されたような光学特性を、測定値として読み取られ得る物理的シグナルに転換する方法は、当業界において良く知られており、そして例えば、欧州特許0821234号、欧州特許第0974303号及び米国特許公開第2005/0023152号に記載されている。
【0065】
化合物及び/又は指示薬の光学特性は、本発明によれば、本発明の酵素の活性に依存して変化する。従って、一実施形態によれば、光学特性の変化は単に、酵素が検出反応を触媒する場合に生じる。さらなる実施形態によれば、光学特性の変化は、化学マトリクスに存在する酵素により受ける触媒サイクルの数に比例する。従って、さらなる実施形態によれば、光学特性の変化は、酵素により転換される分析物分子の数に比例する。
【0066】
また、一実施形態によれば、試験エレメントは、電気化学試験エレメントであり、そして本発明の化合物は、レドックスメディエーターである、一実施形態によれば、レドックス補因子と試験エレメントの電極との間のレドックス等価物の移動を媒介する機能を有する。従って、試験エレメントは、一実施形態によれば、本明細書の他の部分に特定されるように、化学マトリクスと、直接的に又は間接的に接触する少なくとも2つの電極を含む。適切な電極、電極セットアップ及び操作モードは、当業者に公知であり、そして例えば国際公開第2007/071562 A1号、国際公開第2014/001382 A1号、米国特許第2005/0023152号、及びそこに引用される文献に記載されている。化学マトリクスが、試料流体中の分析物の存在を表す電気化学的シグナルを生成するために、分析物と反応するための1又は2以上の化学試薬を含む。一実施形態によれば、試料流体における分析物の存在を表す電気化学的シグナルを生成するために、分析物と反応するための前記1又は2以上の化学試薬は、本明細書において上記に記載されるように、レドックス補因子及び/又はオキシドレダクターゼを含む。一実施形態によれば、電気化学特性は、分析物の濃度を示す電流滴定又は電量応答を包含する。例えば、米国特許第5,108,564号、米国特許第4,919,770 号及び米国特許第6,054,039号を参照のこと。
【0067】
一実施形態によれば、電気化学試験エレメントは、前記試験エレメントに含まれる化学マトリクスと接触するか、又は前記試験化学に導電的に連結された手段と接触する少なくとも2つの電極を含む。一実施形態によれば、化学マトリクスに導電的に連結される前記手段は、前記層を通してレドックス補因子及び/又はレドックスメディエーターの拡散を可能にするために、化学マトリクスに連結される試験ストリップの層である。さらなる実施形態によれば、化学マトリクスに導電的に連結される前記手段は、前記層を通してレドックス補因子及び/又はレドックスメディエーターの拡散を可能にするために、前記化学マトリクスと少なくとも部分的に重なり合い、そして/又はその基礎をなす試験ストリップの層である。
【0068】
本発明によれば、電気化学特性は、本発明のオキシドレダクターゼの活性に依存して、変化する。従って、一実施形態によれば、電気化学特性の変化は、単に、オキシドレダクターゼが検出反応を触媒する場合、生じる。さらなる実施形態によれば、電気化学特性の変化は、化学マトリクスに存在するオキシドレダクターゼにより受ける触媒サイクルの数に比例する。従って、さらなる実施形態によれば、電気化学特性の変化はオキシドレダクターゼにより転換される分析物分子の数に比例する。
【0069】
さらなる実施形態によれば、本発明の試験エレメントは、組合された光学及び電気化学試験エレメントである。従って、試験エレメントは、一実施形態によれば、光学試験エレメントの構造特性、及び電気化学試験エレメント、すなわち、さらなる実施形態によれば、少なくとも2つの電極の構造特性を有する種々の形式が、組合された試験エレメントについて記載されて来た:例えば、米国特許公開第2003/006866A1は、2つの反応領域を有する二重センサーを記載しており、それは同時の電気化学及び比色測定を可能にする。また、欧州特許第1318397A1号は、複数の反応領域を有する試験ストリップを教示し、そして米国特許第8,460,539B2号は、比色分析及び電気化学検出のための別々の反応領域を有するハイブリッド試験ストリップを開示する。
【0070】
さらに、本発明は、本発明の三環式化合物、又は本明細書に構造的に定義されるような化合物、分析又は診断試験への本発明の化学マトリクス又は試験エレメントの使用に関する。
【0071】
用語「試験(test)」とは、当業者により理解されており、そして化合物の混合物中の目的の化合物の存在又は不在を、定性的に、又は一実施形態によれば、定量的に評価するための任意の工程又は方法に関する。
【0072】
一実施形態によれば、分析試験は、本明細書の他の部分に特定されるようなレドックス補因子、さらなる実施形態によれば、還元されたレドックス補因子の存在又は不在を、定性的に又は一実施形態によれば、定量的に評価するためお試験である。従って、分析試験は、一実施形態によれば、細胞生存性試験、さらなる実施形態によれば、インビトロ細胞生存性試験である。しかしながら、また、還元されたレドックス補因子の存在の評価を包含する他の実施形態が、例えば微生物の汚染についての試験において想定される。さらなる実施形態によれば、分析試験は、免疫学的アッセイにおいて、抗体、一実施形態によれば、抗-抗体免疫グロブリンに対して特異的に結合する分子にカップリングされるオキシドレダクターゼにより生成される、還元された補因子の検出を包含する。
【0073】
従って、本発明はまた、本発明の三環式化合物又はその塩又は溶媒和物、又は本発明のπ-アクセプター基(Acc)に共有結合される複素環式基(Het)を含む化合物の、細胞の生存性又は代謝を分析するためへの使用にも関する。
【0074】
さらなる実施形態によれば、分析又は診断試験は、光学的又は/及び電気化学的手段により検出できる任意の生物学的又は化学的分析物の定性的及び/又は定量的決定を含む。一実施形態によれば、分析物は、対象の試験試料、さらなる実施形態によれば、体液の試験試料中に含まれる。さらなる実施形態によれば、分析又は診断試験は、試験試料におけるグルコース濃度の決定を包含する。さらなる実施形態によれば、分析又は診断試験は、糖尿病に罹患しているか、又は糖尿病に罹患している疑いがある対象からの試験試料におけるグルコース濃度の決定を包含する。また、一実施形態によれば、分析又は診断試験は、糖尿病に罹患しているか、又は糖尿病に罹患している疑いがある対象における血液グルコース濃度をモニターリングするための試験である。分析又は診断試験は、一実施形態によれば、インビトロ試験である。
【0075】
用語「分析物(analyte)」とは、本明細書において使用される場合、対象、一実施形態によれば、体液の試験試料に存在する化合物に関する。一実施形態によれば、分析物は、小分子であり、すなわち、一実施形態によれば、分析物は生物学的高分子ではない。さらなる実施形態によれば、分析物は有機分子、さらなる実施形態によれば、本発明の試験化学の存在下でレドックス反応を受けることができる有機分子である。一実施形態によれば、分析物は、対象の代謝の分子である。また、一実施形態によれば、分析物は、低分子量化合物、さらなる実施形態によれば、1000u(1000Da;1.66×10-24kg)未満の分子質量を有する化合物である。さらなる実施形態によれば、分析物は、リンゴ酸、エタノール、アスコルビン酸、コレステロール、グリセロール、尿素、3-ヒドロキシ酪酸、乳酸塩、ピルビン酸塩、トリグリセリド、ケトン、肝臓パラメータ、クレアチニン、HDL、等から成るリストから選択され;さらなる実施形態によれば、分析物は血液グルコースである。
【0076】
本明細書において使用される場合、用語「対象(subject)」とは、脊椎動物に関する。一実施形態によれば、対象は、哺乳類、さらなる実施形態によれば、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ハムスター、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ又はウマである。さらに、さらなる実施形態によれば、対象は霊長類である。さらなる実施形態によれば、対象はヒトである。一実施形態によれば、対象は、少なくとも1つの分析物の正常値からの測定可能な偏差に関連する疾患又は状態に罹患しているか、又は罹患している疑いがある。さらなる実施形態によれば、対象は糖尿病に罹患している。
【0077】
本明細書において使用される場合、用語「体液(body fluid)」とは、血液及び血液製剤、血漿、血清、涙液、尿、リンパ液、脳脊髄液、胆汁、便、汗、間質液及び唾液を包含する、本発明の分析物を含むか又は含むと疑われている対象のすべての体液に関する。一実施形態によれば、体液は、血漿又は血清である。さらなる実施形態によれば、体液は血液である。
【0078】
用語「試験試料(test sample)」は、当業者により理解されており、そして対象の組織、又は一実施形態によれば、体液の任意の適切なサイズの小部分に関する。体液試験試料は、良く知られている技法、例えば静脈又は動脈穿刺、表皮穿刺、等により入手され得る。
【0079】
用語「糖尿病(diabetes)」又は「真性糖尿病(diabetes mellitus)」とは、本明細書において使用される場合、グルコース代謝が損なわれている疾患状態に関する。前記障害は、高血糖をもたらす。世界保健機関(WHO)によれば、糖尿病は4つのクラスに細分され得る。1型糖尿病は、インスリン不足により引き起こされる。インスリンは、いわゆる膵島細胞により生成される。前記細胞は、1型糖尿病(1a型)においては自己免疫反応により破壊され得る。さらに、1型糖尿病はまた、特発生変異体を含む(1b型)。2型糖尿病はインスリン抵抗性により引き起こされる。3型糖尿病は、現在の分類によれば、すべての他の特定型の真性糖尿病を含む。例えば、β細胞はインスリン生成に影響を及ぼす遺伝子欠陥を有する可能性があり、インスリン抵抗性は遺伝的に引き起こされるか、又は膵臓自体が破壊されるか又は損なわれる可能性がある。さらに、ホルモン規制緩和(deregulation)又は薬物がまた、3型糖尿病を引起すことができる。4型糖尿病は妊娠中に発生する。一実施形態によれば、糖尿病とは、本明細書において使用される場合、1型糖尿病、又はさらなる実施形態によれば、2型糖尿病に関する。ドイツ糖尿病学会によれば、糖尿病は、空腹時に110mg/dlよりも高い血漿グルコースレベル、又は食後に220 mg/dlより高い血漿グルコースレベルのいずれかにより診断される。本発明の分析又は診断試験と併せて、又はそれに加えて、糖尿病を診断するためのさらなる診断技法は、当該技術分野において周知であり、そして標準の医学書、例えばStedman又はPschyremblに記載されている。
【0080】
糖尿病において、高血糖症を回避し、そして/又は対処するために、例えば食事の後、又は低血糖症を回避し、そして/又は対処するために、インスリン投与後、血糖値を定期的に調べなくてはならないことは、当業者に理解されている。従って、本発明はまた、血糖値を測定するための、さらなる実施形態によれば、高血糖、低血糖又は正常なグルコースレベルの診断への使用のための本発明の化合物にも関する。
【0081】
さらに、本発明は、本発明の三環式化合物又はその塩又は溶媒和物、又は本明細書に構造的に定義されるような化合物の、化学マトリクスの生成又は試験エレメントの生成のためへの使用に関する。
【0082】
さらに、本発明は、試験試料中の分析物の量を測定するための方法に関し、ここで前記方法は、
a)前記試験試料を、本発明の三環式化学化合物、又は本明細書において構造的に定義された化学化合物、又は本発明の化学マトリクス、又は本発明の試験エレメントと接触させ、
b)前記三環式化学化合物によって、前記化学マトリクス中に含まれる化合物によって、又は前記試験エレメントに含まれる化合物によって、前記試験試料の存在下で遊離された、又は消費されたレドックス等価物の量を推定し、
c)それにより、前記試験試料中の分析物の量を測定することを含む。
【0083】
本発明の方法は、一実施形態によれば、インビトロの方法である。さらに、それは、上記に明確に記載されるそれらの工程の他に、複数の工程を含むことができる。例えば、さらなる工程は、例えば工程a)のための試験試料の入手、又は工程b)における前記試験試料の存在下で、化合物、化学マトリクス、又は試験エレメントの少なくとも1つの光学特性の測定に関する。さらに、1又は2以上の前記工程が、自動装置により実施され得る。前記方法の1又は2以上の工程、例えば遊離されるか又は消費されるレドックス等価物の量を評価する工程が反復され得ることは、当業者により理解されている。
【0084】
用語「決定する(determining)」とは、一実施形態によれば、半定量的に、又はさらなる実施形態によれば、定量的に、試料中の分析物の量の測定に関する。
【0085】
遊離されるか、又は消費される、レドックス等価物、一実施形態によれば、電子の量の測定方法は、従来技術から既知である。一実施形態によれば、遊離されるか又は消費されるレドックス等価物の量は、光学又は電気化学センサーにより測定される。さらなる実施形態によれば、遊離されるか又は消費されるレドックス等価物の量の測定は、上記本明細書に特定されるような本発明の化合物の光学特性を検出することを包含する。
【0086】
一実施形態によれば、試験試料における分析物の量を決定するための方法は、対象中の血糖度を決定するための方法であって、前記方法は、
a)前記試験試料を、本発明の三環式化学化合物、又は本明細書において構造的に定義された化学化合物、又は本発明の化学マトリクス、又は本発明の試験エレメントと接触させ、
b)前記三環式化学化合物によって、前記化学マトリクス中に含まれる化合物によって、又は前記試験エレメントに含まれる化合物によって、前記試験試料の存在下で遊離された、又は消費されたレドックス等価物の量を推定し、そして
c)工程b)における評価の結果に基づいて、対象における血糖値を決定することを含んで成る。
【0087】
1つの試料において、一実施形態によれば、同じ対象からの2つ以上の試料において、血糖値の上昇が決定される場合、血糖値を決定する方法は、糖尿病の診断を助ける方法であることは、当業者により理解されている。
【0088】
また、本発明は、上記のような対象における血糖値を決定するための方法の工程、及び血糖値の上昇が決定された場合、前記対象へのインスリンの投与、又は低レベルの血糖値が決定された場合、グルコース又はグルコース放出化合物(例えば、澱粉含有食品成分)の投与の追加の工程を包含する、血糖値を、対象において適切なレベルで維持する方法に関する。本明細書において使用される場合、用語「高レベルの血糖値(elevated level of blood glucose)」は、180 ng/dLよりも高い、一実施形態によれば、200 mg/dLよりも高い血糖濃度を言及し;そして用語「低レベルの血糖値(low levels of blood glucose)」は、70 mg/dL未満、一実施形態によれば、60 mg/dL未満の血糖濃度に関する。
【0089】
さらに、本発明は、試料中の分析物の量を測定するためのシステムに関し、ここで前記システムは、
a)本発明の試験エレメントと、
b)遊離された、又は消費されたレドックス等価物の量を測定するためのセンサーを含む装置とを含む。
【0090】
用語「装置(device)」とは、当業者に知られており、そして本発明の化合物により遊離されるか又は消費されるレドックス等価物の量を測定するための少なくとも1つのセンサーを含む技術装置に関する。一実施形態によれば、前記センサーは、光学及び/又は電気化学センサーであり;前記センサーは当業者に知られている。
【0091】
本明細書に引用される全ての参考文献は、本明細書中に具体的に言及された開示内容及び開示内容全体に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
本発明のさらなる任意の特徴及び実施形態は、続く実施例の説明において、より詳細に開示されるであろう。本明細書に開示されたそれぞれの任意の特徴及び定義は、当業者が理解するように、任意の実現可能な組み合わせだけでなく、孤立した態様で実現されてもよい。本発明の範囲は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0093】
実施例1:
1-メチル-6-((E)-3-オキソ-3-フェニル-プロペニル)-キノリニウムメトスルフェート(MOPPQ)
1.1合成
1.1.1.合成、工程1:(E)-1-フェニル-3-キノリン-6-イル-プロペノン(XIV)の合成
【化16】
【0094】
50.0 mlのEtOH及び6.40 mlのNaOH(水中、10%)中、6-キノリンカルバルデヒド(XXXIII)(500 mg、3.18 mmol)の溶液に、アセトフェノン(XXXIV)(0.371 ml、3.18 mmol)を添加した。その混合物を室温で16時間、攪拌し、そして続いて、減圧下で濃縮した。残留する粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/アセトン;75:25)により精製し、117.4 mg(14%)の標記化合物を得た。
【0095】
1.1.2.1-メチル-6-((E)-3-オキソ-3-フェニル-プロペニル)-キノリニウムメトスルフェート(MOPPQ、(XXII))合成
【化17】
【0096】
3.00mlのアセトン中、(E)-1-フェニル-3-キノリン-6-イル-プロペノン(XXXV)(80.0 mg、0.309 mmol)の溶液に、ジメチルスルフェート(0.587 ml、6.17 mmol)を添加した。この混合物を室温で16時間、攪拌した。得られる懸濁液を濾過し、そして残る沈殿物を、アセトンにより3度、洗浄した。粗生成物を、分取HPLC(H2O/CH3CN)により精製し、22.0 mg(18%)の標記化合物(XXII)を得た。
【0097】
1.2測定
1.2.1 MOPPQ(XXII)、NADH及びアスコルビン酸塩との反応速度の近似評価
1.00 mlの水中、レドックス指示薬1-メチル-6-((E)-3-カキソ-3-フェニル-プロペニル)-キノリウムメトスルフェート(5.00 mg、0.013 mmol)の2つの溶液を、それぞれ、過剰のNADH(二ナトリウム塩)又はアスコルビン酸ナトリウムにより処理した。HADHにより処理された溶液は、ほぼ無色からオレンジ色に、急速に変化した。数分後、多量のオレンジ色の沈殿物、たぶん不溶性のジヒドロキノリンを得た。対照的に、アスコルビン酸塩により処理された溶液は、単に淡いオレンジ色を示した。16時間後でさえ、沈殿物は見出されなかった。従って、NADHを用いたMOPPQのターンオーバー速度は、アスコルビン酸塩を用いた場合よりもはるかに高い。
【0098】
実施例2
9-エトキシフェナジン-1-カルバルデヒド
2.1合成、工程1:(9-エトキシフェナジン-1-イル)メタノールの合成
【化18】
【0099】
DMF(15 ml)中、9-エトキシフェナジン-1-カルボン酸(XXXVI)(1.50 g、5.59 mmol)(Rewcastle, G. W.; Denny, W. A. Synth. Commun. 1987, 17, 1171における方法により、N-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-ニトロアントラニル酸から合成された)の懸濁液を、1,1′-カルボニルジイミダゾール(CDI)(1.85 g、11.40 mmol)により処理し、そしてその混合物を50℃で1時間、攪拌した。冷却の後、混合物を、DCM/石油エーテル(1:1)により希釈し、イミダゾリドの沈殿を完結し、それを集め、石油エーテルにより洗浄し、乾燥し、THF(200 ml)に溶解し、次にH2O(50 ml)中、NaBH4の溶液にゆっくり添加した。1時間の攪拌の後、混合物を、濃HClの滴下により中和し、そして次に、EtOAにより抽出した。有機層を、水性Na2CO3、水により洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして蒸発し、(9-エトキシフェナジン-1-イル)メタノール(XXXVII)(1.20 g)を得た。
【0100】
1H NMR (CHLOROFORM-d, 400MHz): δ[ppm] = 8.16 (dd, J=8.8, 1.3 Hz, 1 H), 7.81 (dd, J=8.8, 1.3 Hz, 1 H), 7.79 (dd, J=8.8, 6.8 Hz, 1 H), 7.76 (dd, J=8.8, 7.3 Hz, 1 H), 7.68 (dd, J=6.8, 1.0 Hz, 1 H), 7.06 (dd, J=7.3, 1.3 Hz, 1 H), 5.36 (s, 2 H), 5.26 (br. s., 1 H), 4.34 (q, J=7.0 Hz, 2 H), 1.66 (t, J=6.9 Hz, 3 H)
13C NMR (CHLOROFORM-d, 101MHz): δppm] = 154.4, 144.2, 143.7, 141.1, 139.1, 135.1, 131.0, 130.6, 128.8, 127.7, 120.9, 107.6, 64.8, 64.6, 14.7
LC-MS m/z 255.2 ([M+H]+)
【0101】
2.2 合成、工程2:9-エトキシフェナジン-1-カルバルデヒドの合成
【化19】
【0102】
(9-エトキシフェナジン-1-イル)メタノール(XXXVII)(750 mg、2.95 mmol)、活性化された酸化マンガン(IV)(5.65 g、58.5 mmol)及びDCM(50 ml)の混合物を、アルゴン雰囲気下で室温で3時間、攪拌した。この後、反応物を、シリカゲルのパッドを通して濾過し、そして濃縮した。残渣をEtOAcに溶解し、そして得られる溶液を、水性Na2CO3、水により洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、蒸発し、そして真空下で24時間、乾燥し、9-エトキシフェナジン-1-カルバルデヒド(XXXVIII)(530 mg)を、黄色固形物として得た。
【0103】
1H NMR (CHLOROFORM-d, 400MHz):δ[ppm] = 11.63 (s, 1 H), 8.52 (dd, J=8.7, 1.4 Hz, 1 H), 8.48 (dd, J=7.1, 1.5 Hz, 1 H), 7.99 (dd, J=8.3, 7.3 Hz, 1 H), 7.78 - 7.87 (m, 2 H), 7.14 (dd, J=6.8, 1.8 Hz, 1 H), 4.39 (q, J=7.0 Hz, 2 H), 1.70 (t, J=7.1 Hz, 3 H)
13C NMR (CHLOROFORM-d, 101MHz): δ[ppm] = 191.3, 154.7, 144.4, 142.6, 141.1, 137.1, 135.7, 132.1, 131.6, 130.2, 130.0, 121.2, 108.4, 65.1, 14.7
LC-MS m/z 253.1 ([M+H]+)
【0104】
実施例3
2-[(E)-2-(9-エトキシフェナジン-1-イル)ビニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムヨージド(XL)の合成
【化20】
【0105】
エタノール(10 ml)中、9-エトキシフェナジン-1-カルバルデヒド(XXXVIII)(120 mg、0.40 mmol)及び1,2,3,3-テトラメチル-3H-インドリウムヨージド(XXXIX)(99 mg、0.33 mmol)の混合物を、ピペリジン(10 μL、0.10 mmol)の存在下で、アルゴン雰囲気下で3時間、加熱還流した。その反応混合物を室温にゆっくり冷却し、そして赤色の沈殿物を濾過し、冷エタノール、次にジエチルエーテルにより洗浄し、そして乾燥した。120 mgの赤色粉末を得た。
【0106】
1H NMR (DMSO-d6, 500MHz):δ[ppm] = 9.58 (d, J=16.7 Hz, 1 H), 8.94 (d, J=6.9 Hz, 1 H), 8.49 (d, J=8.5 Hz, 1 H), 8.48 (d, J=16.7 Hz, 1 H), 8.19 (dd, J=8.4, 7.4 Hz, 1 H), 7.93 - 8.02 (m, 3 H), 7.85 (d, J=8.5 Hz, 1 H), 7.64 - 7.76 (m, 2 H), 7.40 (d, J=7.6 Hz, 1 H), 4.41 (q, J=6.8 Hz, 2 H), 4.28 (s, 3 H), 1.96 (s, 6 H), 1.62 (t, J=6.9 Hz, 3 H)
13C NMR (DMSO-d6, 101MHz):δ[ppm] = 182.0, 154.1, 147.3, 144.0, 143.7, 142.6, 141.9, 139.5, 135.5, 134.0, 132.5 (2C), 132.4, 131.1, 129.8, 129.2, 123.1, 120.4, 116.1, 115.6, 109.0, 64.5, 52.4, 34.9, 25.9 (2C), 14.8
LC-MS m/z 408.0 (M+)
【0107】
実施例4
(9E)-10,10-ジメチル-9-(キノリン-3-イルメチレン)-7,8,9,10-テトラヒドロ-6H-ピリド[1,2-a]インドリウムヘキサフルオロホスフェート(XLII)の合成
【化21】
【0108】
エタノール(25 ml)中、キノリン-3-カルバルデヒド(XXXIII)(500 mg、3.18 mmol)及び10,10-ジメチル-7,8,9,10-テトラヒドロ-6H-ピリド[1,2-a]インドリウムヘキサフルオロホスフェート(XLI)(922 mg、2.67 mモル)(Mushkalo, I. L.; Turova, L. S.; Murovanaya, N. V. Dopov. Akad. Nauk Ukr. RSR, Ser. B: Geol., Khim. Biol. Nauki 1979, 1022における方法により、2,3,3-トリメチル-3H-インドールから合成された)の混合物を、ピリジン(105 μL、1.06 mmol)の存在下で、アルゴン雰囲気下で16時間、加熱還流した。その反応混合物を、室温にゆっくり冷却し、そして沈殿物を濾過し、冷エタノール、次にジエチルエーテルにより洗浄し、そして乾燥した。1.0 gの黄色の粉末を得た。
【0109】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz): δ[ppm] = 9.26 (d, J=2.0 Hz, 1 H), 8.83 (s, 1 H), 8.30 (s, 1 H), 8.17 (d, J=7.8 Hz, 1 H), 8.11 (d, J=8.3 Hz, 1 H), 7.90 - 7.98 (m, 3 H), 7.74 (t, J=7.5 Hz, 1 H), 7.64 - 7.70 (m, 2 H), 4.46 (t, J=5.6 Hz, 2 H), 3.12 (t, J=5.2 Hz, 2 H), 2.21 (t, J=5.6 Hz, 2 H), 1.89 (s, 6 H)
13C NMR (DMSO-d6, 101MHz):δ[ppm] = 181.03, 152.74, 147.89, 144.80, 144.54, 141.34, 139.27, 132.27, 130.51, 129.79, 129.47, 129.22, 128.33, 128.12, 127.99, 127.29, 123.39, 115.58, 53.16, 46.16, 26.15 (2 C), 24.18, 19.73
LC-MS m/z 339.1 (M+)
【0110】
実施例5
インドリウム塩の合成
表1に列挙されるインドリウム塩は、実施例3-4と同様にして得られる。
【0111】
【0112】
実施例6
1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム-2-イル)エテニル]キノリウムヨージドトリフルオロメタスルホネート(XXIV)の合成
【化22】
【0113】
8mlの無水DCM中、1,3,3-トリメチル-2-[(E)-2-(キノリン-3-イル)エテニル]-3H-インドリウムヨージド(XlV)(100 mg、0.23 mmol)の溶液に、無水DCM(2ml)中、TfoMe(103 μL、0.91 mmol)を、アルゴン雰囲気下で滴下した。その混合物を室温で16時間、攪拌した後、沈殿物を濾過し、DCM(5×10 ml)、及び次に、ジエチルエーテルにより洗浄し、そして乾燥した。127 mgの黄色の粉末を得た。
【0114】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):δ[ppm] = 10.16 (s, 1 H), 9.93 (s, 1 H), 8.61 (d, J=8.6 Hz, 1 H), 8.59 (d, J=16.7 Hz, 1 H), 8.50 (d, J=7.8 Hz, 1 H), 8.37 - 8.44 (m, 1 H), 8.17 (t, J=7.6 Hz, 1 H), 8.05 (d, J=16.7 Hz, 1 H), 8.00 - 8.03 (m, 1 H), 7.92 - 7.97 (m, 1 H), 7.68 - 7.76 (m, 2 H), 4.70 (s, 3 H), 4.26 (s, 3 H), 1.85 (s, 6 H)
13C NMR (DMSO-d6, 101MHz):δ[ppm] = 181.3, 150.9, 146.4, 144.8, 144.1, 141.9, 138.5, 137.2, 131.4, 131.1, 130.4, 129.3, 128.7, 128.3, 123.1, 122.3 (TfO-), 119.7, 119.1 (TfO-), 117.4, 116.0, 52.7, 46.1, 35.3, 24.7 (2C)
LC-MS m/z 327.2 ([M - H]+), 345.1 ([M + HO-]+)
UV-Vis (50 mM のリン酸緩衝液 pH=7): λmax 512 (弱い), 384, 311 nm; NADHを用いた還元後: 535, 528sh nm;
水溶性: > 10 mM
【0115】
実施例7
ジ四級塩の合成
表2に列挙されるジ四級塩を、実施例6に類似して、種々のトリフレートアルキル化剤とインドリウム塩(実施例3-5からの)との反応により得た。反応の温度及び時間は通常、広い範囲にわたって変化されることができる。生成物を、適切な溶媒から結晶化し、そして必要なら、従来の方法、例えばイオン交換樹脂の使用により、アニオンを変化されることができる。
【0116】
【0117】
実施例8
指示薬とNADHとの反応
次のものを、キュベットにおいて混合した:蒸留水中、指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの10 mM溶液50 μL、50 mMのリン酸緩衝液(pH7)950 μL、蒸留水中、10mMのNADH溶液2μL。UV/Visスペクトル(400~1000 nm)を、NADHの添加の後、1分間、7.5秒ごとに記録した(分解能2nm)(
図1)。さらなる色の変化は、52.5秒後に測定され得なかった。本発明のさらなる指示薬UV/Visスペクトル特性が、表3に列挙される。
【0118】
【0119】
実施例9
NADHの決定
次のものをキュベットにおいて混合した:蒸留水中、指示薬1-メチル-6-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)ビニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの10 mM溶液100 μL、50 mMのリン酸緩衝液(pH7)1000 μL、蒸留水中、10 mMのNADH溶液20~80 μL。516 nmでの吸光度の変化を、10分後に記録した(
図2)。
【0120】
実施例10
1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート、NADHとアスコルビン酸塩との反応速度の評価
50 nMのリン酸緩衝液(pH7)1.00 ml中、レドックス指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート(0.005 mmol)の2つの溶液をそれぞれ、蒸留水中、10 mMのNADH(二ナトリウム塩)又はアスコルビン酸ナトリウム溶液2μLにより処理した。535 nmでの吸光度を、時間に対して測定した(
図3)。NADHにより処理された溶液は、ほぼ無色からピンク色に急速に変化した。対照的に、アスコルビン酸塩により処理された溶液は、色が変化しなかった。従ってNADHによる1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートのターンオーバー速度は、アスコルビン酸塩によるよりもはるかに高い。
【0121】
実施例11
GlucDH2/指示薬によるグルコースの決定
11.1 測定1:グルコース及びGlucDH2/NADとの反応に基づく吸光度の変化
次のものをキュベット中で混合した:100 mMのリン酸緩衝液(pH7)中、指示薬(1-メチル-6-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)ビニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート)の1.0 mMの溶液500 μL、491 U/mlの濃度でのグルコースデヒドロゲナーゼ2(GlucDH2)溶液(4.0 mMのNAD
+を含む、100 mMのリン酸緩衝液pH7)500 μL、蒸留水中、グルコースの10 mMの溶液40 μL。UV/Visスペクトル(300~1000 nm)を、グルコースの添加の後、10分間、1分ごとに記録した(分解を1nm)(
図4)。
【0122】
11.2 測定2:グルコース及びGlucDH2/NADとの反応の動力学
反応混合物は、測定1と同じであるが、但し蒸留水中、グルコースの10 mMの溶液の試料10~40 μLを使用した。517 nmでの吸光度を、グルコ-スの添加後20分間、10秒ごとに記録した(
図5,6)。
【0123】
11.3 測定3:グルコース及びGlucDH2/carbaNADとの反応の動力学
条件は、測定2におけるのと同じであるが、NADをcarbaNADにより置換した。517 nmでの吸光度を、グルコースの添加後、20分間、10秒ごとに記録した(
図7、8)。
【0124】
実施例12
1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート、擬一次反応条件下での消衰係数(ε)の評価
【0125】
次のものを、キュベットにおいて混合した:蒸留水中、指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの10mM溶液100μL、50mMのリン酸緩衝液(pH7)900 μL、蒸留水中、10 mMのNADH溶液1-3μL。さらなる色の変化が測定されない場合、535 nmでの吸光度の変化を、5分後、記録した(
図3,9)
【0126】
図9は、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの還元型の濃度が、初期NADH濃度に比例することを示す。下記式:
【数1】
を用いて、69.3 mM
-1cm
-1の1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの還元型についてのε値を、傾向線の傾きから計算した。ε値は、MTTの還元型のε値よりも9倍、高い(Czerlinski, G. H.; et al; Journal of Biochemical and Biophysical Methods 1988, 15, 241)。
【0127】
実施例13
レドックス指示薬のサイクリックボルタンメトリー(Cyclic voltammetry)(CV)試験
実施例6-7において合成された化合物のCVを、リン酸緩衝液(pH7)において、Ag/AgCl対照電極に対して記録した(表4)。
【0128】
【0129】
実施例14
NADHの蛍光定量
13.1 測定1:NADHとの反応に基づく蛍光強度の変化
次のものをキュベットにおいて混合した:蒸留水中、指示薬1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの10 mM溶液2μL、10mMのリン酸緩衝液(pH7)1000μL、蒸留水中、1mMのNADH溶液0.5~4μL。混合物を室温で30分間インキュベートした。蛍光(550~800 nm)を、535 nmでの励起を用いて記録した(
図10、11)。
【0130】
実施例15
1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート、細胞生存性試験についての適用の評価
生存HEK-293細胞及び4%パラホルムアルデヒドにより殺害されたHEK-293細胞を、37℃で10 mMのPBS(pH7)中、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネート(20 μM)と共にインキュベートした。共焦点蛍光顕微鏡画像を、561 nmでの励起を用いて、611 nmで記録した。生存HEK-293細胞の画像は、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートの細胞取得を示し;同時に、蛍光強度が増強され、これは、NADHが細胞代謝により生成された事実と一致する。得られる細胞は、少なくとも24時間、生存性を保持した。対照的に、パラホルムアルデヒドにより処理されたHEK-293細胞は、蛍光強度の増強を示さなかった。従って、1-メチル-3-[(E)-2-(1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム‐2-イル)エテニル]キノリニウムヨージドトリフルオロメタンスルホネートによるHEK-293細胞の処理に基づく蛍光強度は、死亡細胞においてよりも生存細胞において、いっそう高い。
【0131】
本発明をもたらす研究は、欧州連合(EU)の第七フレームワークプログラム(FP7 / 2007-2013)/ ERC助成金合意第264772号(CHEBANA)の下、欧州研究評議会からの資金提供を受けている。