(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
C02F3/12 F
C02F3/12 M
C02F3/12 B
(21)【出願番号】P 2020087765
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2022-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利宏
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-211879(JP,A)
【文献】特開2004-188356(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045094(WO,A1)
【文献】実開昭57-115695(JP,U)
【文献】特開平01-130790(JP,A)
【文献】特開2005-279551(JP,A)
【文献】特開2005-349252(JP,A)
【文献】特開2006-051415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00- 3/34
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む原水を、総アルカリ度が100~500mg/Lとなるように調整し
、BOD容積負荷を5~20kg/m
3
/dになるように調整した第1好気性処理槽内で好気的に処理して第1好気性処理液を得る処理と、
前記第1好気性処理液を、担体を保持した第2好気性処理槽内で好気的に処理して第2好気性処理液を得る処理と
を有することを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【請求項2】
前記第1好気性処理槽および前記第2好気性処理槽で構成される好気性処理において全槽のBOD容積負荷が1~5kg/m
3/dとなるようにBOD容積負荷を調整することを特徴とする請求項1に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項3】
有機物を含む原水を、総アルカリ度が100~500mg/Lとなるように調整した第1好気性処理槽内で好気的に処理して第1好気性処理液を得る処理と、
前記第1好気性処理液を、担体を保持した第2好気性処理槽内で好気的に処理して第2好気性処理液を得る処理と、
前記第2好気性処理槽の浮遊汚泥を原水流入水量の10~300流量%となるように前記第1好気性処理槽へ返送する返送汚泥処理
と
を有することを特徴とす
る有機性廃水の処理方法。
【請求項4】
前記第1好気性処理槽の溶存酸素濃度が2~7mg/Lとなるように曝気量を調整することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項5】
前記第2好気性処理槽内の担体充填率が5~30容積%となるように担体を投入することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項6】
有機物を含む原水を、
BOD容積負荷を5~20kg/m
3
/dで好気的に処理して第1好気性処理液を得る第1好気性処理槽と、
前記第1好気性処理槽内の前記原水の総アルカリ度が100~500mg/Lとなるように調整するアルカリ度調整手段と、
前記第1好気性処理液を、担体を用いて好気的に処理して第2好気性処理液を得る第2好気性処理槽と
を備えることを特徴とする有機性廃水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物化学的酸素要求量(BOD)の高い有機性廃水処理としては一般的に活性汚泥処理が用いられる場合が多い。活性汚泥処理は維持管理が容易でありランニングコストが低い。活性汚泥処理は流入原水中のBODの安定除去が可能であり、常時良好な処理水質が得られる等の利点もある。そのため、活性汚泥処理は生活廃水、工場廃水等の種々の有機性廃水処理に多く用いられている。
【0003】
しかしながら、活性汚泥処理ではBOD除去に伴う余剰汚泥が発生することが知られている。特にBOD濃度の高い排水は余剰汚泥の発生量も多くなるため、余剰汚泥の処分に伴うコストの処理全体に占める比率が高くなってきており、余剰汚泥の削減が大きな課題となってきている。
【0004】
余剰汚泥の削減方法としては、高負荷及び低負荷を組み合わせた多段処理を行う方法がある。例えば、特開2010-069482号公報及び特開2005-211879号公報には、前段の高負荷槽となる第1生物処理槽で分散菌を発生させ、後段の低負荷槽となる第2生物処理槽で原生動物や後生動物の分散菌の捕食を利用して汚泥減容を行う食物連鎖による汚泥減容化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-069482号公報
【文献】特開2005-211879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載される生物処理方法には、処理効率向上と余剰汚泥の発生量の低減を図るために第一生物処理槽と第二生物処理槽のBOD負荷及びpHを所定の範囲内に制御する必要があることが記載されている。この点、原水の性状が比較的安定している場合には、各生物処理槽のBOD負荷及びpHを制御することは比較的容易である。
【0007】
しかしながら、何らかの原因により原水に大きな濃度変動が生じると、生物処理槽のBOD負荷及びpHを制御することが難しくなり、第一生物処理槽での分散菌の発生が不安定となる場合がある。その結果、分散菌捕食による食物連鎖の汚泥減容化の効果が十分に得られなくなる。また、原水の性状変動により第一生物処理槽で分散菌が発生しすぎて、第二生物処理槽に分散菌が残留すると、処理水質の悪化を招くリスクがある。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、常時安定した処理水質を維持することができ、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、原水の性状変動が生じても常時安定した処理水質を得るためには、好気性処理を多段で行うとともに、第1好気性処理槽の総アルカリ度に着目することが有効であるとの知見を得た。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は一側面において、有機物を含む原水を、総アルカリ度が100~500mg/Lとなるように調整した第1好気性処理槽内で好気的に処理して第1好気性処理液を得る処理と、第1好気性処理液を、担体を保持した第2好気性処理槽内で好気的に処理して第2好気性処理液を得る処理とを有する有機性廃水の処理方法である。
【0011】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は一実施態様において、第1好気性処理槽のBOD容積負荷を5~20kg/m3/dになるよう調整し、且つ、第1好気性処理槽および第2好気性処理槽で構成される好気性処理において、全槽のBOD容積負荷が1~5kg/m3/dとなるようにBOD容積負荷を調整する。
【0012】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は別の一実施態様において、第2好気性処理槽の浮遊汚泥を原水流入水量の10~300流量%となるように第1好気性処理槽へ返送する返送汚泥処理を更に有する。
【0013】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は更に別の一実施態様において、第1好気性処理槽の溶存酸素濃度が2~7mg/Lとなるように曝気量を調整する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は更に別の一実施態様において、第2好気性処理槽内の担体充填率が5~30容積%となるように担体を投入する。
【0015】
本発明の実施の形態は別の一側面において、有機物を含む原水を、好気的に処理して第1好気性処理液を得る第1好気性処理槽と、第1好気性処理槽内の原水の総アルカリ度が100~500mg/Lとなるように調整するアルカリ度調整手段と、第1好気性処理液を、担体を用いて好気的に処理して第2好気性処理液を得る第2好気性処理槽とを備える有機性廃水の処理装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、常時安定した処理水質を維持することができ、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置の例を表す概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置の例を表す概略図である。
【
図3】従来の廃水処理装置の処理フローの例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0019】
本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は、
図1に示すように、有機物を含む原水を、好気的に処理して第1好気性処理液を得る第1好気性処理槽1aと、第1好気性処理液を、担体を用いて好気的に処理して第2好気性処理液を得る第2好気性処理槽1bと、第1好気性処理槽1a内の原水の総アルカリ度が100~500mg/Lとなるように調整するアルカリ度調整手段2とを備える。
【0020】
原水としては、有機物を含有する廃水であれば特に限定されず、例えば、生活廃水、下水、食品工場、化学工場、パルプ工場などの有機物を含有する種々の有機性廃水が用いられる。以下に限定されないが、無機性浮遊性物質(SS)が少なく(例えば、SSが0~100mg/L程度)易分解性有機物濃度が高い(例えば、BOD値が1000~2000mg/L程度)食品・飲料系廃水や生活系廃水等のような原水が特に好適に処理される。
【0021】
第1好気性処理槽1aおよび第2好気性処理槽1bとしては、好気性処理槽1内に流入する原水中の有機物(BOD)を分解可能な細菌、細菌を捕食する微生物等を含む活性汚泥が内部に収容され、曝気により原水を好適に処理して好気性処理液を得る装置であれば特に限定されないが、例えば、曝気槽や流動担体槽が利用できる。
【0022】
第1好気性処理槽1aで処理された第1好気性処理液は、第2好気性処理槽1bへ導入され、更に処理されて処理水を得る。第1好気性処理槽1aでは、微生物を増殖させるために重要なBOD容積負荷、DO、pHの諸条件を適切に維持することが極めて重要である。特に、原水の濃度、流量等の変動を考慮した有機性廃水の処理を行うためには、第1好気性処理槽1aとの処理条件との関係において一定の条件を満たすように、原水流入水量および第1好気性処理槽1aの総アルカリ度を調整することが重要である。
【0023】
第1好気性処理槽1aの役割としては、第1好気性処理槽1aで分散性細菌等を増殖させ、BODを除去したのちに、第2好気性処理槽1bにおいて生息する微生物によって汚泥を捕食させて汚泥減容化を図ることにある。その際、第1好気性処理槽1a内の総アルカリ度を一定の条件で維持させることで、緩衝作用によるpHの安定化が行われるため、常時安定した処理水質を維持でき、かつ余剰汚泥の発生量の低減可能とできる。
【0024】
第1の実施形態では、第1好気性処理槽1aの総アルカリ度が100~500mg/Lとなるように、アルカリ剤を適宜添加することにより、第1好気性処理槽1a内に流入した原水の総アルカリ度を調整する。第1好気性処理槽1a内の原水の総アルカリ度は、100~400mg/Lに調整することが好ましく、200~300mg/Lに調整することが更に好ましい。
【0025】
第1好気性処理槽1aのpHに変動が生じた場合、好気性処理槽内微生物の菌叢が変化し、処理水質の不安定化および汚泥減容効果の低下を招く要因となる。例えばアルカリ添加が過少な場合、第1好気性処理槽1aにおいて真菌が発生し酸生成を行うことでpHが低下し、分散性細菌の優先的増殖が進行しないことが懸念される。一方でアルカリ添加が過剰な場合は、第1好気性処理槽1aのpHが高くなり、汚泥が分散しやすい状態となる。これにより担体への汚泥付着が進行しづらい状況となることから、処理水質の悪化や汚泥減容効果が失われる。加えて、アルカリ度が過少または過剰な場合、処理水のpHが放流基準値の範囲外となるため、放流前にpH調整を行う必要が生じる。これにより酸やアルカリなどの薬品コストがかかることになる。すなわち、汚泥削減効果および安定水質の維持の観点から、第1好気性処理槽1aにおけるpH変動が生じないように、総アルカリ度を調整してpH緩衝作用を維持することが重要であるといえる。
【0026】
第1好気性処理槽1aのBOD容積負荷は、5~20kg/m3/dとなるように水槽の容積を決定し、流量を調整することが好ましい。更に、第1好気性処理槽1aおよび第2好気性処理槽1bを含む好気性処理槽1全体(全槽)でのBOD容積負荷が、1~5kg/m3/dとなるように、第2好気性処理槽1bのBOD容積負荷を調節することが好ましく、その際、例えば、第2好気性処理槽1bの溶解性BOD容積負荷を0.2~1.0kg/m3/dとなるように、第1好気性処理槽1aのBOD除去に関する処理条件を制御することが効果的である。
【0027】
第1好気性処理槽1aの溶存酸素濃度(DO)は、2~7mg/Lとなるように曝気風量を調整することが望ましく、更に望ましくは4~6mg/Lとなるように調整することがより効果的である。第2好気性処理槽1bのDOは2~7mg/Lとなるように調整することが好ましく、更に好ましくは3~5mg/L程度に調整すると良い。DOは好気性処理槽内の菌叢に影響を与えており、DO制御により余剰汚泥削減に効果的な菌叢の維持および安定した処理水質の維持が可能となる。なお、第1好気性処理槽1aのpHは6.0~8.5であることが好ましく、より好ましくは7.0~8.0である。第1好気性処理槽1aのMLSSは1000~4000mg/Lとすることができ、より典型的には1000~2000mg/Lとすることができる。
【0028】
第2好気性処理槽1b内の担体充填率を5~30容積%となるように担体を投入することが好ましく、更に好ましくは15~30容積%とすることが好ましい。微生物担体として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリプロピレン等からなる流動担体が挙げられる。担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は第2好気性処理槽1bの出口に設けられるスクリーンより安定して分離できる径が好ましい。また、第2好気性処理槽1bの処理液に対し、必要に応じてさらに固液分離を行うことも可能である。固液分離手段として沈殿池や膜分離、凝集沈殿のいずれも有効である。
【0029】
担体を投入する際には、事前に担体を市水や好気性処理水に浸漬したものを使用することで、担体表面を親水化することができ、投入後に速やかに流動させ、短期間で担体に活性汚泥等の微生物を付着させることが可能となる。
【0030】
第2好気性処理槽1bのHRTは8~30時間、より好ましくは12~24時間とすることができ、必要に応じてMLSSが1000~4000mg/L、更には2000~4000mg/Lとするように処理することが好ましい。
【0031】
アルカリ度調整手段2としては、具体的構成は特に限定されないが、例えば、アルカリ剤を収容した貯槽(不図示)と、第1好気性処理槽1a内の原水の総アルカリ度を100~500mg/Lに調整するために、第1好気性処理槽1a内へアルカリ剤を添加するための配管及びポンプ等を備えたアルカリ添加手段(不図示)と、アルカリ添加手段によるアルカリ剤の供給制御を行う制御装置(不図示)等を備えることができる。例えば、第1好気性処理槽1a内には、第1好気性処理槽1a内に収容された原水の総アルカリ度を測定する測定手段等が設けられていてもよく、測定手段による測定結果に基づいて、第1好気性処理槽1a内の原水の総アルカリ度が適正な範囲となるように調整されてもよい。
【0032】
アルカリ剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が用いられる。中でも特に、炭酸水素ナトリウムを利用することで、pH変動が少なく、装置をより小型化しながら第1好気性処理槽1a内の処理を安定化できる。
【0033】
(処理方法)
第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は、まず、原水を第1好気性処理槽1a内へ供給し、第1好気性処理槽1aにおいて原水を好気的に処理する。第1好気性処理槽1aでは、以下に限定されないが、例えば、HRTが5時間、DOが2~7mg/L、総アルカリ度が200mg/L、MLSSが2000mg/L、BOD容積負荷を5~20kg/m3/dとして原水を好気的に処理して第1好気性処理液を得る。
【0034】
続いて第1好気性処理槽1aで得られた第1好気性処理液を第2好気性処理槽1b内へ供給し、第2好気性処理槽1bにおいて第1好気性処理液を更に好気的に処理する。第2好気性処理槽1bでは、以下に限定されないが、例えば、HRTが22時間、DOが1~7mg/L、担体充填率が15容積%、MLSSが1000mg/Lとして第1好気性処理液を好気的に処理して第2好気性処理液を得る。
【0035】
本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法によれば、第1好気性処理槽1aのBOD容積負荷を高くし、また好気性処理槽1全体のBOD容積負荷を適切な条件で維持することにより、BODを除去する活性汚泥と活性汚泥を捕食する微生物を一定量、かつ、それぞれが活性の高い状態で第1好気性処理槽1a内に維持することができる。また、BODを除去する活性汚泥が常に一定量、高活性で第1好気性処理槽1a内に維持されるため、原水の水量・濃度変動によってBOD容積負荷が変動しても安定した好気性処理が可能である。
【0036】
BODの除去量によって処理水中の余剰汚泥の発生量も変動するが、本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置によれば、活性汚泥を捕食する微生物も一定量、高活性で維持されているため、原水の水量・濃度変動によって余剰汚泥の発生量が変動しても安定した汚泥減容が可能となる。その結果、原水の性状変動が生じても第1好気性処理槽1a内における処理を安定化することができ、常時安定した処理水質を維持しながら余剰汚泥の発生量の低減が可能となる。
【0037】
第1好気性処理槽1aの容積は、BOD-SS負荷で設定されるが、第1の実施の形態によれば、第1好気性処理槽1aの容積が、第2好気性処理槽1bの容積の約1/3~1/10で程度済むため、小型の第1好気性処理槽1aを配置するだけで、装置全体の大型化を抑制しながら廃水処理を安定して効率良く処理することができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は、
図2に示すように、第2好気性処理槽1bの浮遊汚泥を引き抜いて第1好気性処理槽1aへ返送する浮遊汚泥返送手段3を更に有する点が、第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置と異なる。
【0039】
第2好気性処理槽1bの浮遊汚泥は、DOが高く、高活性であることが特徴として挙げられる。そのため、第2好気性処理槽1bの浮遊汚泥を第1好気性処理槽1aへ返送することにより、第1好気性処理槽1a内の微生物活性をさらに高い活性状態に維持することが可能となり、これにより安定した処理水質の維持および余剰汚泥削減に効果的な菌叢の維持が行われることが期待される。第1好気性処理槽1aへの原水流入水量に対する浮遊汚泥返送流量の流量比(浮遊汚泥返送流量/原水流入水量)は、10~300流量%、より好ましくは10~30流量%、更には10~20流量%となるように調整することが好ましい。
【0040】
第1好気性処理槽1aのBOD容積負荷を5~20kg/m3/dになるよう調整し、且つ、第1好気性処理槽1aおよび第2好気性処理槽1bとで構成される好気性処理槽1において、全槽のBOD容積負荷が1~5kg/m3/dとなるように、各処理槽1a、1bのBOD容積負荷を調整することが好ましい。これにより、第1好気性処理槽1aで分散性細菌等を優先的に増殖させ、BODを除去したのちに、第2好気性処理槽1bにおいて主に担体表面に生息する微生物によって汚泥を捕食させて余剰汚泥の発生量を低減させる効果を有する。他は、第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置と実質的に同様であるので説明を省略する。
【0041】
第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法及び処理装置によれば、第2好気性処理槽1bの浮遊汚泥を第1好気性処理槽1aへ返送することにより、第1好気性処理槽1a内の微生物活性を更に適性な状態に維持することができる。これにより、原水の性状変動によらず、常時安定した処理水質を維持することができ、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置が提供できる。
【0042】
本発明は第1及び第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が導出でき、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲において変形し具体化し得る。
【実施例】
【0043】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0044】
(実施例1)
有機物(BOD)濃度が2000mg/Lの有機性廃水を原水とし、
図1に示す有機性廃水の処理装置を使用して、表1に示す基本処理条件で廃水処理を行った。実施例1では、第1好気性処理槽の容積を0.5L、第2好気性処理槽の容積を2L、原水の供給流量を2.5~5L/dとし、第1好気性処理槽における総アルカリ度が200mg/Lとなるようにアルカリ剤として炭酸水素ナトリウムを添加した。また、第1好気性処理槽においてはBOD容積負荷を5~20kg/m
3/d、MLSS濃度1000mg/L、DO2~7mg/Lとなる条件で好気的に処理を行った。第2好気性処理槽においてはPE担体を15容積%となるように添加し、MLSS濃度4000mg/L、DO2~7mg/Lとなる条件で好気的に処理を行った後、スクリーンを通過させて担体を槽内に保持し、処理水を得た。この時、好気性処理槽全槽におけるBOD容積負荷は1~5kg/m
3/dであった。
【0045】
実施例1では、表1に示す様に、第1好気性処理槽の総アルカリ度を200mg/L、原水流入水量を2.5~5L/dとなるように調整し、BOD容積負荷を5~20kg/m3/dとした。
【0046】
比較例1は第1好気性処理槽を設置しない
図3の従来の有機性廃水の処理フローに基づいて、容積が2.5Lの好気性処理槽を使用し、PE担体を12容積%となるように添加し、表1及び表2に示す条件で廃水処理を行ったものである。比較例2は第1好気性処理槽の総アルカリ度を50mg/L、比較例3では第1好気性処理槽の総アルカリ度を600mg/Lとして表1および表2に示す条件で廃水処理を行ったものである。各項目の分析は、下水試験方法(日本下水道協会2012年度版)に準拠して行った。
【0047】
【0048】
【0049】
実施例1は第1好気性処理槽の総アルカリ度が200mg/L、第1好気性処理槽のBOD容積負荷が20kg/m3/d、全槽BOD容積負荷が3kg/m3/d、第1好気性処理槽のDOが2~7mg/Lの好適な範囲に調整された場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの分析の結果を示している。
【0050】
比較例1は好気性処理槽が1槽のみの従来の活性汚泥処理方式で有機性廃水の処理を行った場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの分析結果を示している。
【0051】
比較例2は第1好気性処理槽の総アルカリ度が50mg/L、比較例3は第1好気性処
理槽の総アルカリ度が600mg/Lとし、第1好気性処理槽のBOD容積負荷が20kg/m3/d、全槽BOD容積負荷が3kg/m3/d、第1好気性処理槽のDOが2~7mg/Lの好適な範囲に調整された場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの分析の結果を示している。
【0052】
実施例1では、第1好気性処理槽での分散性細菌の優先的増殖および後続する第2好気性処理槽での微生物による食物連鎖が進行し、比較例1より良好な処理水質が得られ、さらに比較例1での汚泥発生量と比較して汚泥発生量は24%削減され、良好な汚泥減容効果が得られた。
【0053】
比較例2では総アルカリ度が過少であることで第1好気性処理槽において真菌等の発生により酸生成を行うことでpHが低下し、分散性細菌の優先的増殖が進行しないため、処理水質は実施例1よりも悪化し、汚泥減容率は19%削減となり、実施例1よりも悪化する。また、放流基準を満たしていないため、放流時にはpHの中和処理が必要となる。
【0054】
比較例3では、総アルカリ度が過剰であることでpHが高くなり、汚泥が分散しやすい状態になる。これにより担体への汚泥付着が進行しづらく、処理水質の悪化や汚泥減容効果が失われる。その結果、処理水質は実施例1よりも悪化し、汚泥減容率は15%削減となり、実施例1よりも悪化する。また、放流基準を満たしていないため、放流時にはpHの中和処理が必要となる。
【0055】
このように、本開示によれば、有機性廃水を好気的に処理する第1好気性処理槽において、総アルカリ度100~500mg/Lの条件で曝気処理を行うと、第1好気性処理槽において分散性細菌等を優勢的に増殖させ、第2好気性処理槽において微生物によってこれらを捕食させることで余剰汚泥の発生が削減される。
【0056】
(実施例2)
実施例2では、原水流入水量に対する第1好気性処理槽への返送汚泥流量比として300流量%となるように、第1好気性処理槽へ返送汚泥を導入し、表3に示す条件になるよう調整した。
【0057】
比較例4は、第1好気性処理槽を設置しない
図3の従来の標準活性汚泥処理フローに基づいて、表1及び表3に示す条件で廃水処理を行ったものである。
【0058】
【0059】
実施例2は、原水流入水量に対する第1好気性処理槽への返送汚泥流量比が300流量%、第1好気性処理槽のBOD容積負荷が20kg/m3/d、第1好気性処理槽の総アルカリ度が200mg/L、第1好気性処理槽のDOが2~7mg/Lの好適な範囲に調整された場合の汚泥発生量および処理水中の溶解性BODの分析の結果を示している。実施例2では、比較例4と比較してより安定した処理水質が得られる。
【0060】
このように、本開示によれば、有機性廃水を好気的に処理する第1好気性処理槽において、BOD容積負荷5~20kg/m3/d、DO2~7mg/L、総アルカリ度100~500mg/Lの条件で曝気処理を行うと、第1好気性処理槽において分散性細菌等を優勢的に増殖させ、第2好気性処理槽において微生物によってこれらを捕食させることで余剰汚泥の発生が削減される。更に第2好気性処理槽中の浮遊汚泥を原水流入水量の10~300流量%となる流量で第1好気性処理槽に導入することで、第1好気性処理槽内の活性汚泥保持量がバランスよく維持されることから、第1好気性処理槽において更なるBOD除去および活性汚泥の捕食が進行し、余剰汚泥の発生をより抑制することが可能となる。このときの返送汚泥は第2好気性処理槽の浮遊汚泥であるため、DOが高いことが特徴として挙げられる。そのため、返送汚泥を第1好気性処理槽へ返送した際に第1好気性処理槽内のDOをより適性な状態に維持することが可能となり、安定した処理水質の維持および余剰汚泥削減に効果的な菌叢の維持が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1…好気性処理槽
1a…第1好気性処理槽
1b…第2好気性処理槽
2…アルカリ度調整手段
3…浮遊汚泥返送手段