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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】原因分析システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20221122BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020118886
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015795
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久留島 一馬
(72)【発明者】
【氏名】石井 俊成
(72)【発明者】
【氏名】勝部 直行
(72)【発明者】
【氏名】池澤 克就
(72)【発明者】
【氏名】吉元 広行
(72)【発明者】
【氏名】松井 遼平
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-057144(JP,A)
【文献】特開2017-161991(JP,A)
【文献】特開2020-091556(JP,A)
【文献】特開2019-061598(JP,A)
【文献】特開2006-339445(JP,A)
【文献】特開2020-077033(JP,A)
【文献】特開2009-258890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造フローでの対象物の製造実行の不良原因を分析する処理装置を備え、
前記処理装置は、
前記製造フローの複数の製造工程の各製造工程における製造作業情報を取得し、前記製造作業情報として、各製造工程における、作業者による作業動作を検出した人作業情報と、設備による設備作業情報との少なくとも一方を取得し、前記人作業情報として、前記作業者の手に装着されたセンサを用いて作業動作を検出したセンサデータと、前記作業者に装着された、または作業現場に設置されたカメラを用いて、前記作業動作を撮影した画像によるセンサデータとの少なくとも一方を取得し、
前記製造フローの検査工程の検査結果情報を取得し、前記検査結果情報として、前記製造工程毎の検査工程の検査結果情報と、最終検査工程の最終検査結果情報とを取得し、前記最終検査結果情報の結果値が否である場合に、前記不良原因を分析し、
取得した前記製造作業情報および前記検査結果情報を含むデータに基づいて、前記複数の製造工程のうちの2つ以上の製造工程の情報を組み合わせて指標を計算し、
前記指標による条件を用いて、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程を特定して分析結果情報を作成し、
前記分析結果情報を出力
前記処理装置は、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程を特定するためのモデルを機械学習によって生成し、その際に、過去の製造実行のデータとして、前記製造作業情報の変数値、前記検査結果情報の測定値および結果値を入力し、前記複数の製造工程のうちの2つ以上の製造工程の情報を数式として組み合わせて前記指標を計算し、計算された前記指標を説明変数とし、最終検査結果の値を目的変数とした多変量解析についての前記機械学習を行って、前記モデルを生成し、
前記処理装置は、対象物の製造実行の際に取得されたデータを、前記モデルに基づいた前記条件として前記指標に関する値範囲を用いた条件に照らして判断することで、前記条件の前記指標に対応付けられる2つ以上の製造工程を、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程として特定する、
原因分析システム。
【請求項2】
請求項1記載の原因分析システムにおいて、
前記処理装置は、前記分析結果情報に基づいて、ユーザに対し、画面で、複合工程原因を表すメッセージと、前記不良原因として推定される前記2つ以上の製造工程と、前記2つ以上の製造工程の製造工程毎の値とを表示する、
原因分析システム。
【請求項3】
請求項1記載の原因分析システムにおいて、
前記処理装置は、前記対象物の製造実行の途中の工程まで通過した時点でのデータの参照に基づいて計算した前記指標を、前記モデルに基づいた前記条件に照らして判断し、複合工程原因であると判断した場合には、前記最終検査結果を待たずに、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程の情報を含んだ前記分析結果情報を出力する、
原因分析システム。
【請求項4】
製造フローでの対象物の製造実行の不良原因を分析する処理装置を備える原因分析システムにおける原因分析方法であって、
前記処理装置が実行するステップとして、
前記製造フローの複数の製造工程の各製造工程における製造作業情報を取得し、前記製造作業情報として、各製造工程における、作業者による作業動作を検出した人作業情報と、設備による設備作業情報との少なくとも一方を取得し、前記人作業情報として、前記作業者の手に装着されたセンサを用いて作業動作を検出したセンサデータと、前記作業者に装着された、または作業現場に設置されたカメラを用いて、前記作業動作を撮影した画像によるセンサデータとの少なくとも一方を取得するステップと、
前記製造フローの検査工程の検査結果情報を取得し、前記検査結果情報として、前記製造工程毎の検査工程の検査結果情報と、最終検査工程の最終検査結果情報とを取得し、前記最終検査結果情報の結果値が否である場合に、前記不良原因を分析するステップと、
取得した前記製造作業情報および前記検査結果情報を含むデータに基づいて、前記複数の製造工程のうちの2つ以上の製造工程の情報を組み合わせて指標を計算するステップと、
前記指標による条件を用いて、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程を特定して分析結果情報を作成するステップと、
前記分析結果情報を出力するステップと、
を有
前記処理装置が、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程を特定するためのモデルを機械学習によって生成し、その際に、過去の製造実行のデータとして、前記製造作業情報の変数値、前記検査結果情報の測定値および結果値を入力し、前記複数の製造工程のうちの2つ以上の製造工程の情報を数式として組み合わせて前記指標を計算し、計算された前記指標を説明変数とし、最終検査結果の値を目的変数とした多変量解析についての前記機械学習を行って、前記モデルを生成し、
前記処理装置が、対象物の製造実行の際に取得されたデータを、前記モデルに基づいた前記条件として前記指標に関する値範囲を用いた条件に照らして判断することで、前記条件の前記指標に対応付けられる2つ以上の製造工程を、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程として特定する、
原因分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム等の技術に関し、製造物の不良原因分析や品質管理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業等における工場等の現場では、生産ラインに対応する製造フローにおいて、製造物についての検査を行い、検査結果で不良を発見した場合には、不良発生原因を特定する必要がある。従来の製造フローは、複数の製造工程と、1つ以上の検査工程とを有する。検査工程は、製造工程毎に行われる製造検査(工程検査と記載する場合がある)と、最終工程として行われる完成品検査(最終検査と記載する場合がある)とに大別される。製造検査では、その製造工程で生成された中間物の品質等が検査される。完成品検査では、複数の製造工程を経て生成された最終物である完成品の品質等が検査される。
【0003】
また、近年では、製造工程での作業者による作業について、センサ等を用いてデータとして検出し、作業の品質等を評価・判定しようとする仕組みも検討されている。
【0004】
上記品質管理等に係わる先行技術例としては、特開2011-159204号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、作業判定システム等として、部品同士を嵌合させる部品組付作業において、絶対座標で手の動きを数値化し測定しても正確な作業判定を行うことができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-159204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような先行技術例によれば、製造工程の検査として、作業者の手のモーションキャプチャと、部品同士を嵌合させる時の圧力を測定する圧力センサとを用いて、製造時の不良を検知することができる。
【0007】
従来、製造フローは、製造実行システム(Manufacturing Execution System:MES)等のシステムを用いて管理されている場合が多い。MESは、製造フローを管理し、製造工程毎の作業者への指示等を行う。また、MESは、製造フローで製造される製品等の品質を検査し、検査結果を把握する。
【0008】
従来のシステムは、例えば最終検査の結果で不良を検出した場合に、その不良の原因と考えられる製造工程を特定することについては、難しい場合や、長い時間や手間がかかる場合があった。従来、製造フローを通じて製造される物(対象物と記載する場合がある)について、不良、言い換えると検査結果が否(NG)となること、が発生する場合としては、様々な場合がある。例えば、ある1つの製造工程での検出値のみが閾値を超える異常を示している場合には、不良原因としての特定が容易である。しかし、複数の製造工程の各検査結果では可(OK)となるが、最終検査結果では否(NG)となる場合がある。この場合、不良原因がどこにあるのかについての特定は容易ではない。また、特に、この場合の不良原因は、可能性として、複数の製造工程の各作業の不十分さの積み重なりによるもの(複合工程原因と記載する場合がある)も考えられる。従来のシステムは、このような複合工程原因を分析する機能を備えていない。特許文献1のような従来技術例では、複数の製造工程の影響を加味して不良原因を分析する方法等については開示されていない。
【0009】
本発明の目的は、製造フローでの製造物の品質を管理する技術に関して、検査結果が否(NG)となった場合の不良の原因の特定をより容易に行うことができる技術を提供することである。また、本発明の目的は、複数の工程の影響による不良原因の特定を支援できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のうち代表的な実施の形態の原因分析システムは、製造フローでの対象物の製造実行の不良原因を分析する処理装置を備え、前記処理装置は、前記製造フローの複数の製造工程の各製造工程における製造作業情報を取得し、前記製造フローの検査工程の検査結果情報を取得し、取得した前記製造作業情報および前記検査結果情報を含むデータに基づいて、前記複数の製造工程のうちの2つ以上の製造工程の情報を組み合わせて指標を計算し、前記指標による条件を用いて、前記不良原因として推定される2つ以上の製造工程を特定して分析結果情報を作成し、前記分析結果情報を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、製造フローでの製造物の品質を管理する技術に関して、検査結果が否(NG)となった場合の不良の原因の特定をより容易に行うことができる。また、本発明のうち代表的な実施の形態によれば、複数の工程の影響による不良原因の特定を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1の原因分析システムの構成を示す。
図2】実施の形態1で、処理装置の構成を示す。
図3】実施の形態1で、製造フローの構成例を示す。
図4】実施の形態1で、製造工程の設備の構成例を示す。
図5】実施の形態1で、製造工程での作業や検査の例を示す。
図6】実施の形態1で、分析部の構成例、および製造フローから得られるデータ例を示す。
図7】実施の形態1で、検査結果情報の管理表の例を示す。
図8】実施の形態1で、製造作業情報の管理表の例を示す。
図9】実施の形態1で、製造作業情報のデータ例を示す。
図10】実施の形態1で、製造検査情報のデータ例を示す。
図11】実施の形態1で、最終検査情報のデータ例を示す。
図12】実施の形態1で、人作業情報であるセンサデータの例を示す。
図13】実施の形態1で、モデル作成部の処理フローを示す。
図14】実施の形態1で、原因分析部の処理フローを示す。
図15】実施の形態1で、原因分析結果情報の第1例を示す。
図16】実施の形態1で、原因分析結果情報の第2例を示す。
図17】実施の形態1で、第1の画面例を示す。
図18】実施の形態1で、第2の画面例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
図1図18を用いて、本発明の実施の形態1の原因分析システムおよび方法について説明する。実施の形態1の原因分析方法は、実施の形態1の原因分析システムにおいて実行されるステップを有する方法である。
【0014】
実施の形態1の原因分析システムは、製造フローでの製造物の不良原因分析等を行う情報処理システムである。このシステムは、製造フローの複数の工程の影響を考慮したモデルの機械学習に基づいて、複合作業判定条件での不良原因(特に複合工程原因)の分析を行う機能を有する。複合作業判定条件は、複数の工程の作業や加工に関する複合的な判定のための条件である。
【0015】
このシステムは、製造フローの検査工程の検査結果情報に基づいて、検査結果がNGとなった場合、すなわち不良が発生した場合に、そのNGとなった原因を分析し、分析結果情報を出力する。その際、このシステムは、製造フローの各工程で検出した各種の情報を用いて、特に複合工程原因について分析する。このシステムは、その分析の際、複数の工程の情報を貫通して分析することで、特に複合工程原因を特定する。各工程の情報とは、工程の作業者による作業動作を検出した情報(人作業情報と記載する場合がある)や、工程の設備による加工情報を検出した情報(設備作業情報と記載する場合がある)を含む。また、各工程の情報は、工程毎の検査結果情報を含んでもよい。
【0016】
このシステムは、原因分析のための新しいモデルを、機械学習によって生成する。このシステムは、複数の工程の情報を組み合わせることで、所定の指標(言い換えると分析用の特徴量)を作成し、その指標を用いて機械学習用のモデルを生成する。そして、このシステムは、そのモデルに基づいた複合工程原因の分析のための条件(複合作業判定条件と記載する場合がある)を、分析に適用する。このシステムは、対象物の製造実行の際に得られたデータを、そのモデルに基づいた最新の複合作業判定条件に照らして判断することで、NG原因として推定される複数の工程やその工程に係わる作業等を特定し、分析結果として出力する。
【0017】
実施の形態1の原因分析システムは、上記モデルを用いた分析によって、複合工程原因に対応する複数の工程の組み合わせを特定する。なお、実施の形態1で示す原因分析は、上記機械学習のモデルを用いた分析には限定されない。原因分析の詳細な内容や方式については、他のものを適用してもよい。
【0018】
実施の形態1で、製造工程で得られる情報としては、作業者の作業動作を検出した人作業情報(センサ値に基づいた特徴量)と、設備での加工に係わる変数値を含む設備作業情報と、工程毎の検査結果情報(変数の測定値を含む)とが候補としてある。それらは製造フローに応じて規定される。分析のモデルおよび複合作業判定条件のために用いる情報としては、それらの情報のうちいずれを用いてもよく、複数の種類の情報を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
[原因分析システム]
図1は、実施の形態1の原因分析システム1の全体の構成を示す。原因分析システム1は、製造フロー200に対し設けられている。原因分析システム1は、処理装置10と、検出装置2と、製造実行システム(MES)20と、ユーザ端末30とを有する。処理装置10、検出装置2、管理装置5、およびユーザ端末30等の各装置は、通信網9に対し接続される。MES20は、製造工程P毎に設けられる工程検査装置3と、最終検査工程202に設けられる最終検査装置4と、管理装置5と、データベース(DB)6とを含む。通信網9は、例えばLANである。
【0020】
処理装置10は、例えばサーバ装置で実装されるが、これに限定されない。処理装置10は、製造現場に対し、遠隔に配置されてもよい。処理装置10は、原因分析システム1の主要なコントローラを構成するコンピュータである。処理装置10は、製造フロー200でのNG・不良の原因分析に係わる機能を実現する。処理装置10は、ソフトウェアプログラム処理等によって実現される機能ブロックとして、人作業情報取得部13、設備作業情報取得部14、製造履歴記憶部12、最終検査結果取得部11、分析部15、および出力部16を有する。機能の一部は専用の回路で実装されてもよい。システムとしては、処理装置10がMES20に併合された形態も可能である。
【0021】
検出装置2は、センサ8を備え、通信網9を介して、処理装置10と接続される。検出装置2は、製造フロー200の製造工程フロー201の各々の製造工程P毎に設けられる。検出装置2は、製造工程P(対応する作業工程)での作業者Wによる作業動作を、センサ8を用いて、センサデータD2として検出する。検出装置2は、センサ8からのセンサデータD2を出力する。サーバ10は、検出装置2からセンサデータD2を受信・取得する。検出装置2は、センサ8以外にも、例えばアナログ・デジタル変換回路や通信インタフェース回路等を備えてもよい。
【0022】
MES20は、製造フロー200における製造を管理し実行するシステムである。MES5は、製造フロー200の各製造工程Pの状態の管理や把握を行い、各製造工程Pの作業者Wへ指示等を行う。管理装置5は、MES20の製造実行制御を行うコンピュータ、例えばMESサーバである。DB6には、製造実行制御に係わる各種のデータや情報が格納される。
【0023】
工程検査装置3は、対応付けられる製造工程Pの結果得られた対象物OB(例えば中間品)に関する工程検査を行う。工程検査装置3は、製造工程Pの検査結果を含む検査データD3を出力する。製造工程Pに応じて、工程検査が有る場合と無い場合とがあってもよい。
【0024】
最終検査装置4は、対応付けられる最終検査工程202の結果得られた最終物OBL(例えば完成品)に関する最終検査を行う。最終検査装置4は、最終検査工程202の検査結果を含む検査データD4を出力する。検査データD3や検査データD4は、一旦、DB6に格納されてもよい。
【0025】
原因分析システム1は、工場等に設けられている既存のMES20に連携してもよい。なお、MES20は必須ではない。処理装置10は、他の方式で検査データD3,D4等を取得してもよい。また、実施の形態1では、最終検査工程202の検査結果を必須として用いる。製造工程P毎の工程検査、工程検査装置3、および検査データD3は、必須ではない。
【0026】
DB6は、詳しくは、例えば、製造DBと検査DBとを有する。製造DBは、製造工程フロー201から得られる各種のデータを格納する。検査DBは、最終検査工程202から得られるデータを格納する。DB6は、センサデータD2や、設備Fの設備作業情報等を格納してもよい。
【0027】
人作業情報取得部13は、検出装置2からのセンサデータD2を人作業情報としてリアルタイムで収集・取得する。センサデータD2は、製造工程Pでの作業者Wによる作業動作を表す情報である。なお、検査工程にも検出装置2を適用してもよい。その場合のセンサデータD2は、検査工程での検査者による検査作業を検出した情報である。人作業情報取得部13は、取得したセンサデータD2を処理し、センサ値から所定の特徴量を計算する。センサ値自体が特徴量である場合にはその処理は省略できる。人作業情報取得部13は、取得した人作業情報を、製造履歴記憶部12に製造作業情報D21の一部として格納する。センサデータD2は、検出装置2から一旦MES20のDB6に収集・格納されてもよい。この場合、人作業情報取得部13は、MES20のDB6からセンサデータD2を参照・取得すればよい。これに限らず、検出装置2内の処理部がセンサデータD2を処理してもよい。MES20内の処理部、例えば工程検査装置3が、検出装置2の機能を備えてもよい。
【0028】
設備作業情報取得部14は、製造工程P毎の設備Fから、加工情報等を設備作業情報として収集・取得する。MES20に設備作業情報が保持されている場合、設備作業情報取得部14は、MES20から設備作業情報を取得してもよい。設備作業情報取得部14は、検出装置2等を介して設備作業情報を取得してもよい。加工情報は、設備Fでの加工に係わる変数値等を含む。設備作業情報取得部14は、取得した設備作業情報を、製造履歴記憶部12に製造作業情報D21の一部として格納する。
【0029】
最終検査結果取得部11は、最終検査工程202で発生した情報として、最終検査装置4からの検査データD4に基づいた最終検査情報D11を取得し保持する。
【0030】
製造履歴記憶部12は、製造工程フロー201の各製造工程Pで発生した情報として、製造作業情報D21および製造検査情報D22を蓄積する。製造検査情報D22は、工程検査装置3からの検査データD3に基づいた、製造工程P毎の検査結果情報である。処理装置10は、MES20のDB6から検査データD3や検査データD4を取得してもよい。また、製造履歴記憶部12は、製造作業情報D21や製造検査情報D22に基づいた製造履歴情報を、後述の管理表として作成し保持してもよい。製造作業情報D21の基本的な考え方としては、対象物OBについて工程毎に発生した各種の情報を関連付けて保持するものである。
【0031】
分析部15は、製造作業情報D21、製造検査情報D22、および最終検査情報D11を用いて、最終検査結果がNGとなった原因に関する原因分析を行う。分析部15は、特に、機械学習によるモデルを用いて、複合工程原因に関する分析を行う。分析部15は、分析結果情報を作成する。
【0032】
出力部16は、分析部15の分析結果情報を、ユーザ端末30のユーザU1に対し出力する。出力の態様は画面表示を含み、これに限らず、音声出力やメール通知等を用いてもよい。ユーザU1は、製造フロー200の管理者でもよいし、製造工程Pの作業者Wや、検査工程の検査者でもよい。処理装置10は、自動的に原因分析を行い、分析結果情報をユーザ端末30に対し出力する。ユーザU1は、その分析結果情報を任意に利用できる。分析結果情報を提供することで、ユーザU1による原因特定等の業務を支援できる。
【0033】
実施の形態1では、検査装置として、各製造工程Pの製造検査を行う工程検査装置3と、最終検査工程202での最終検査を行う最終検査装置4とがある。検査装置は、それぞれ、機械的な検査を行う検査装置であり、測定や検査処理を行って検査データを出力する機能を有する。検査装置は、検査者による操作に基づいて検査を行う装置でもよいし、設定に基づいて自動で検査を行う装置でもよい。
【0034】
ユーザ端末30は、ユーザU1が使用し、サーバである処理装置10にアクセスして機能を利用するクライアント端末である。ユーザ端末30は例えば一般的なPC等を適用できる。ユーザU1は、ユーザ端末30の操作に基づいて、出力部16が提供する画面で、各種の情報の登録や分析結果情報の確認等が可能である。検査者は、ユーザ端末30からMES20または処理装置10に検査結果情報を登録してもよい。
【0035】
図1の構成に限らず可能である。例えば、処理装置10とは別に、製造履歴情報を取得・保持する装置、設備作業情報を取得・保持する装置、人作業情報を取得・保持する装置、検査結果情報を取得・保持する装置、等を設けてもよい。
【0036】
[処理装置]
図2は、図1の処理装置10のハードウェアおよびソフトウェアの構成例を示す。処理装置10は、例えばサーバコンピュータとそれに接続される入力装置105や表示装置106等とを含むコンピュータシステムとして実装されている。処理装置10は、プロセッサ101、メモリ102、通信インタフェース装置103、入出力インタフェース装置104、およびそれらを相互に接続するバス等で構成されている。入出力インタフェース装置104には、例えばキーボードやマウス等の入力装置105や、液晶ディスプレイ等の表示装置106が接続されてもよい。通信インタフェース装置103は、図1のユーザ端末30、検出装置2、MES20等とも通信で接続され、それぞれとの間で所定の通信インタフェースで通信を行う。通信インタフェース装置103は、外部の他の装置との通信を行ってもよい。図1ではユーザU1がユーザ端末30から処理装置10を利用しているが、図2のようにユーザU1が直接的に処理装置10を利用してもよい。
【0037】
プロセッサ101は、例えばCPU、ROM、RAM等で構成され、コントローラを構成する。プロセッサ101は、OSや制御プログラム102A等に基づいたソフトウェアプログラム処理に基づいて、所定の機能を実現する。この機能は、製造フロー200での不良原因を分析する機能を含む。
【0038】
メモリ102は、不揮発性記憶装置等で構成され、プロセッサ101等が使用する各種のデータや情報を格納する。メモリ102には、制御プログラム102A、設定情報102B、管理表データD10、機械学習データD15、分析データD16等が格納される。制御プログラム102Aは、機能を実現するためのプログラムである。設定情報102Bは、制御プログラム102Aの設定情報やユーザU1による設定情報である。管理表データD10には、製造実行に応じて発生した、製造作業情報D21、製造検査情報D22、および最終検査情報D11等を整理した管理表が格納される。機械学習データD15には、モデルを含む機械学習用のデータが格納される。分析データD16には、分析処理情報や分析結果情報等が格納される。
【0039】
[製造フロー(1)]
図3は、図1の製造フロー200の構成例を示す。現場である工場において、製品の生産ラインに対応する製造フロー200を有する。製造フロー200は、製造工程フロー201と、その後の最終検査工程202とから構成される。製造工程フロー201は、順序等の関係を持つ複数の製造工程Pから構成される。例えば、複数(本例では4個)の製造工程Pとして、製造工程P1(A),P2(B),P3(C),P4(D)を有する。本例では、簡単に、最初の第1製造工程P1が製造工程Aであり、その次の第2製造工程P2が製造工程Bであり、その次の第3製造工程P3が製造工程Cであり、その次の第4製造工程P4が製造工程Dである。なお、製造工程フロー201は、同時並列に分岐する複数の製造工程Pを有する場合もある。各製造工程Pには、作業者Wが担当として配置される。例えば、製造工程Aには作業者WA、製造工程Bには作業者WBが割り当てられる。
【0040】
製造工程フロー201には、対象物OBが順次に投入される。各対象物OBは、識別情報(ID)を付与して管理される。複数の対象物OBをOB1,OB2,……,OBmとして示す。例えば部材等の対象物OBが製造工程P1に投入される。対象物OBは、製造工程Aでの作業・加工がされた結果、中間物等の対象物OBとなり、次の製造工程P2に投入される。最後の製造工程P4の結果、完成品である最終物OBLが生成され、最終検査工程202で最終検査が行われる。
【0041】
最終検査工程202は、1つ以上の検査工程205で構成され、最終物OBLの品質を検査する工程である。本例では、最終検査工程202は、1つの検査工程Eを有する。検査者Kは、最終検査工程202での検査作業を行う。
【0042】
各製造工程Pは、より詳しくは、作業工程203と、その後の検査工程204とを有する。作業工程203では、作業者Wが、設備Fを用いて、対象物OBに対し、規定された所定の作業を行う。設備Fが無い場合や、作業工程203が無い場合もある。各作業工程203には、検出装置2が関係付けられている。作業工程203では、検出装置2のセンサ8によって、作業動作がセンサデータD2として検出される。1つの製造工程Pには複数の作業工程203があってもよい。
【0043】
検査工程204は、作業工程203の結果である対象物OBについての品質の検査を、検査者または工程検査装置3によって行う工程である。検査工程204には、工程検査装置3が関係付けられている。検査者または工程検査装置3は、作業工程203の結果得られた対象物OBの品質を検査し、検査結果を検査データD3として出力する。検査結果は、例えば品質の可否の値を含む。検査は、工程検査装置3によって無人で自動的に行われてもよいし、検査者が工程検査装置3を用いて行ってもよい。
【0044】
例えば、製造工程Aは、作業工程Aと検査工程Aとを有する。作業工程Aからは、センサデータAが出力される。検査工程Aからは、検査データAが出力される。同様に、製造工程Bでは、センサデータB、検査データBが出力される。製造工程Cでは、センサデータC、検査データCが出力される。製造工程Dでは、作業工程D、作業工程E、検査工程Dを有し、センサデータD,センサデータE,検査データEが出力される。
【0045】
最終検査工程202の検査工程Eには、最終検査装置4が関係付けられている。最終検査装置4は、検査者Kによる操作に基づいて、あるいは設定に基づいて自動的に、最終物OBLについての最終検査を行い、検査結果として検査データD4を出力する。上記センサデータD2、検査データD3および検査データD4は、例えばMES20のDB6に収集・格納される。最終検査の例としては、検査者による外観評価や、製品特性についての特性ばらつき測定が挙げられる。
【0046】
なお、図3では、設備Fからの設備作業情報の取得については図示を省略している。また、図3の例では、各工程に各装置が一対一で関係付けて設けられているが、これに限られない。例えば、複数の製造工程Pに1つの検出装置2や1つの工程検査装置3が関係付けられてもよい。1つの製造工程Pに複数の検出装置2や複数の工程検査装置3が関係付けられてもよい。検出装置2と工程検査装置3とが一体でもよい。これらの対応関係は、予め製造フロー200の構成情報としてMES20または処理装置10に設定される。
【0047】
[製造フロー(2)]
図4は、製造工程Pの作業工程203における設備Fを用いた作業の構成例を示す。製造工程Pには設備F(言い換えると産業機械や加工機)が設けられている場合がある。図4は、製造工程Pがプレス工程である例を示す。プレス工程では、設備Fとして、プレス加工設備401が設けられている。他の例で、製造工程Pが塗装工程である場合には、設備Fとして塗装機械がある。
【0048】
対象物OBは、搬送機構400を通じて、プレス工程の設備Fであるプレス加工設備401に供給される。作業者Wは、設備Fおよび対象物OBに対し作業動作を行う。検出装置2は、その作業動作を検出する。プレス加工設備401は、制御装置402、電動機403、動力伝達機構404、加工機構405等を備える。プレス加工設備401は、制御装置402によって電動機403等を制御し、電動機403によって生成する動力を、動力伝達機構404によって加工機構405に伝達し、加工機構405でのプレス加工を行わせる。加工機構405は、例えば往復運動によって、金型内に供給された部材等の対象物OBに対しプレス加工を行う。加工機構405でのプレス加工後の中間品である対象物OBは、搬送機構400を通じて次の工程へ搬送される。
【0049】
制御装置402は、例えばインバータや電子回路基板等で構成される。制御装置402は、例えば作業者Wの操作またはMES20からの制御に基づいて、プレス加工を制御する。プレス加工設備401は、プレス加工に係わる制御情報を有する。吹き出しで示すように、この制御情報は、例えば、変数p1としてプレス圧力、変数p2としてプレスオイル量等を有する。制御装置402は、それらの変数値を含む加工条件を把握・制御する。製造実行時、それらの加工条件は、MES20または作業者Wによって制御される。
【0050】
また、電動機403や加工機構405にセンサが設置されてもよい。そのセンサは、加工の際の状態を変数値として検出してもよい。また、図1のMES20は、プレス加工設備401にその制御情報を設定してもよいし、プレス加工設備401からその制御情報を取得していてもよい。前述の処理装置10の設備作業情報取得部14は、プレス加工設備401またはMES20から、その制御情報を設備作業情報410として取得し、製造作業情報D21の一部として格納する。
【0051】
[製造フロー(3)]
図5は、製造フロー200の製造工程Pでの作業の検出や検査工程での検査の構成例を示す。図5では設備Fの図示を省略している。(A)は、ある製造工程Pの作業工程203の作業場所における、作業者Wによる作業、および検出装置2のセンサ8を用いた検出の一例を示す。センサ8の例として、グローブ8Aやカメラ8Bを有する。作業者W1は、手にグローブ8Aを装着し、頭部(例えば帽子やヘルメット)にはカメラ8Bを装着している。グローブ8Aには、例えば指先に圧力センサが内蔵されている。グローブ8Aには、加速度センサ、ジャイロセンサ、位置センサ(例えばGPS受信器やビーコン)等を備えてもよい。作業者Wは、グローブ8Aまたはカメラ8Bの一方または両方を装着してもよい。
【0052】
カメラ8Bは、作業者W1の頭部や目が向いている方向を撮影して画像を得る視点カメラである。この画像は、概略的に作業者Wの視点から対象物OB等を撮影した画像である。このカメラ8Bは、スマートグラスやヘッドマウントディスプレイ等としてもよい。本例に限らず、作業者W1には各種のセンサデバイスが装着されてもよい。作業場所において、搬送機構あるいは作業台500等の上に対象物OBがある。作業者Wは、その対象物OBに対し、所定の作業を行う。検出装置2におけるグローブ8Aやカメラ8Bは、この際の作業動作を検出する。グローブ8Aの圧力センサは、作業者Wが対象物OB等を掴んだ時の指先圧力を測定する。グローブ8AからのセンサデータD2は、後述の手情報に相当する。カメラ8Bは、手の動き等を含む画像を撮影する。カメラ8BからのセンサデータD2は、後述の目視情報に相当する。
【0053】
(B)は、他のセンサ8の例として、作業場所に固定カメラ8Cが設置されている。このように、検出装置2のセンサ8は、作業者W1等の付近に固定的に設置されてもよい。固定カメラ8Cは、所定の方向、例えば作業台500上の対象物OBがある方向を撮影した画像を得る。この例では、固定された画像フレーム内において、対象物OBや作業者Wの手等の動きがある場合に、それを検出できる。また、他のセンサ8の例として、作業場所にマイク8Dが設置されてもよい。あるいは、作業者Wがマイク8Dを装着して使用してもよい。マイク8Dによって、作業や加工の際に発生する音声を録音できる。マイク8DからのセンサデータD2は、後述の音情報に相当する。
【0054】
(C)は、検査者による検査作業の例を示す。ある検査工程(例えば最終検査工程202)では、検査者は、対象物OBについて、電流計504を接続して漏れ電流を測定し、漏れ電流量を確認する。また、外観検査の場合、検査者は、対象物OBの外観を見て、色ムラやキズ等が無いかを確認する。また、他のセンサ8の例として、検査作業を検出するためのカメラ8Fやマイク8G等が設けられてもよい。この場合、そのセンサのセンサデータを、検査作業の品質の保証に利用できる。
【0055】
[分析部]
図6は、処理装置10の分析部15の詳細構成例を示す。図6では、製造フロー200から得られるデータとして、作業工程203の変数値および検査工程204の測定値の例も示している。分析部15は、機能ブロックとして、モデル生成部17と、原因分析部18とを含む。
【0056】
モデル生成部17は、処理として、指標(Iとする)の抽出151および機械学習152を行うことで、モデル153を生成する。モデル153は、複合工程原因を含む原因の分析用のモデルであり、機械学習用のモデルであり、原因分析部18で用いるための複合作業判定条件を作成するためのモデルである。モデル153の生成とは、既存のモデル153の更新を含む。モデル生成部17では、学習用のデータ群601、例えば過去の製造実行の一定期間分のデータを入力して処理を行う。データ群601は、製造履歴記憶部12に格納されている管理表のデータ(図2の管理表データD10)と対応する。このデータは、製造工程Pの作業工程203の変数値(図示のp1等)や検査工程204の測定値(図示のq1等)を含む。このデータは、センサデータD2に基づいた人作業情報の特徴量を用いてもよい。指標の抽出151は、データ群601のうちの所定の変数値や測定値や特徴量を組み合わせて、所定の指標Iを抽出・計算する処理である。この指標Iは、機械学習152で使用される。機械学習152は、指標Iを説明変数とし、最終検査結果の値(OK,NG)を目的変数とした多変量解析についての機械学習である。適用する機械学習の方式については限定しない。機械学習152の結果、モデル153が生成される。指標Iやモデル153は、図2の機械学習データD15に含まれる。
【0057】
原因分析部18は、対象として所定のデータ群602、例えば現在の製造実行のデータを入力して処理を行う。原因分析部18は、処理として、最新のモデル153に基づいた最新の複合作業判定条件を用いた複合作業判定154を行う。これにより、原因分析部18は、原因分析結果情報155(図2の分析データD16に含まれる)を作成する。複合作業判定154は、対象のデータ群602について、複合作業判定条件を逸脱する場合に、複合工程原因に該当すると判断し、最終検査結果がNGとなった原因と推定される複数の工程を特定する。原因分析部18は、その特定した複数の工程に関する各種の情報を参照し、原因分析結果情報155を作成する。
【0058】
[管理表]
図7は、製造履歴記憶部12に格納される管理表の例として、検査結果情報(図1の製造検査情報D22および最終検査情報D11)に基づいて構成される管理表Aを示す。また、図8は、製造履歴記憶部12に格納される管理表の例として、図1の製造作業情報D21に基づいて構成される管理表Bを示す。管理表A,Bでは、製造フロー200(図3および図6)に従った製造実行に応じて、複数の対象物OBにおける各々の対象物OBの対象物IDについて、各工程から得られる情報が整理して格納されている。なお、説明の都合上、2つの管理表を用いているが、このようなデータ構成には限られない。
【0059】
図7の管理表Aは、項目として、「対象物ID」と、「製造フロー」とを有する。「対象物ID」は、製品IDに相当し、例えばシリアル番号である。「製造フロー」項目は、段階的に複数の項目に分けられ、まず「製造工程フロー」と「最終検査工程」を有する。「製造工程フロー」項目は、複数の「製造工程」項目を有する。本例では、「製造工程P1(A)」、「製造工程P2(B)」、「製造工程P3(C)」、「製造工程P4(D)」を有する。「最終検査工程」項目は、1つ以上の「検査工程」項目を有し、本例では1つの「最終検査」として「検査工程E」を有する。各「製造工程」項目は、「作業工程」と「検査工程」を有するが、管理表Aでは「検査工程」を示し、管理表Bでは「作業工程」を示している。また、各「製造工程」項目には、中項目として、製造工程Pの名前や内容や種類等を表す情報、例えば「プレス工程」、「溶接工程」等を設けてもよいし、検査工程の場合には検査の名前や内容や種類等を表す情報、例えば「外観検査」等を設けてもよい。
【0060】
管理表Bでは、各「作業工程」項目において、さらに、変数値項目を有する。変数値項目は、例えば、図4のような設備作業情報410として得られる、「変数p1 プレス圧力[kN]」、「変数p2 プレスオイル量[ml]」等の項目である。例えば、図4のプレス工程からは、設備作業情報410として、プレス圧力等の変数値が得られる。対象物ID毎の各行のセルには、変数値が格納されている。例えば作業工程Aでの変数p1であるプレス圧力の値が500[kN]である。
【0061】
管理表Aでは、各「検査工程」項目において、さらに、測定値項目、条件項目、および結果項目を有する。測定値項目は、例えば「測定値q1 長さ[mm]」等の項目である。例えば、検査工程Aからは、図1の工程検査装置3の検査データD3に基づいて、対象物OBの所定箇所の長さの測定値が得られる。対象物ID毎の各行のセルには、測定値が格納されている。例えば、検査工程Aでの測定値q1として長さが300[mm]である。条件項目は、検査での測定値に関する判定の際の、閾値等の条件が格納されている。例えば、測定値q1「長さ」に関する条件は、許容する値範囲として「300±3」[mm]である。条件は、製品の規格として定められる値等を用いてもよい。結果項目は、工程検査結果の値として、可(OK)または否(NG)が格納されている。測定値が条件を満たす場合にはOK、満たさない場合にはNGである。
【0062】
最終検査項目(「検査工程E」)は、本例では、「結果」項目と「NG内容」項目とを有する。「検査工程E」は例えば外観検査である。最終検査情報D11には、測定値、条件および結果を含むので(後述の図11)、最終検査項目では、測定値、条件および結果の項目を有してもよい。「結果」項目には、最終検査結果の値として、可(OK)または否(NG)が格納されている。「NG内容」項目には、結果値がNGであった場合におけるNG内容を表す情報が格納されている。例えば、対象物ID=1の行においては、最終検査結果の値がNGであり、「NG内容」項目には「色ムラ」と記載されている。すなわち、検査者による検査工程Eでの外観検査では、最終物OBLの外観に色ムラがあったため、NGと判定され、そのNG内容を表す情報が記載されている。検査工程Eでの条件は、外観での色ムラやキズ等が無いことである。検査工程Eでの測定値は、検査者の主観による外観の品質を判断した情報である。最終検査工程の他の例は、最終物OBLの所定の変数の測定値が規定の値範囲内であるかどうかの検査である。
【0063】
図8の管理表Bの例では、製造工程P1~P3については、設備作業情報の変数値(p1等)を有し、製造工程P4(作業工程D,E)については、変数値として、人作業情報(後述の図12)に基づいた特徴量(例えば取付圧力等)を有する。
【0064】
[製造作業情報]
図9は、図1の製造履歴記録部12に記憶される製造作業情報D21のデータテーブル構成例を示す。製造作業情報D21は、製造フロー200を流れる対象物OB毎に、各製造工程Pでの作業者Wによる作業や設備Fでの加工について検出した変数値等の情報が記載されている。この製造作業情報D21は、項目として、対象物ID、日時、作業工程、および各種の変数値(p1等)を有する。日時項目は、製造実行または検出の日時として例えば年月日時分秒が記載される。作業工程項目は、作業工程203の識別情報が記載される。各変数値項目は、図6等のように作業工程203から設備作業情報として得られる変数値が記載される。本例では設備作業情報の変数値の場合を示すが、センサデータD2に基づいた人作業情報の特徴量が得られる場合には、同様に、各特徴量項目に記載される。
【0065】
図8および図9での変数値の例は以下である。作業工程Aでは、変数p1:プレス圧力[kN]、変数p2:プレスオイル量[ml]を有する。作業工程Bでは、変数p3:溶接電流Ave(平均値)[A]、変数p4:溶接電流Max(最大値)[A]、変数p5:溶接温度[℃]を有する。作業工程Cでは、変数p6:塗料粘度[s]、変数p7:乾燥炉温度Ave(平均値)[℃]、変数p8:乾燥炉温度Max(最大値)[℃]を有する。作業工程Dでは、変数p9:取付圧力[Pa]、変数p10:取付音[Hz]、変数p11:取付動画を有する。作業工程Eでは、変数p12:取付圧力[Pa]、変数p13:取付音[Hz]、変数p14:取付動画を有する。
【0066】
[製造検査情報]
図10は、図1の製造履歴記録部12に記憶される製造検査情報D22のデータテーブル構成例を示す。製造検査情報D22は、製造フロー200を流れる対象物OB毎に、各検査工程204での検査結果情報が記載されている。この製造検査情報D22は、項目として、対象物ID、日時、検査工程、各種の測定値(q1等)、条件、および検査結果を有する。検査工程項目は、検査工程204の識別情報が記載される。各測定値項目は、工程検査装置3または検査者による所定の変数の測定値が記載される。条件項目は、検査でのOK判定基準として測定値の閾値等の条件が記載される。検査結果項目には、可(OK)または否(NG)の値が記載される。
【0067】
[最終検査情報]
図11は、図1の最終検査結果取得部11に記憶される最終検査情報D11のデータテーブル構成例を示す。最終検査情報D11は、対象物OB毎に、最終検査工程202での検査結果情報が記載されている。この最終検査情報D11は、項目として、対象物ID、検査工程、日時、第1検査結果、NG内容、測定値(q5)、条件、第2検査結果、および最終検査結果を有する。本例では、この最終検査情報D11は、図3図6の検査工程Eの情報である。第1検査結果項目は、外観検査の結果値が記載されている。NG内容項目は、第1検査結果がNGである場合のNG内容として例えば「色ムラ」や「キズ」等が記載されている。測定値(p5)項目は、最終物OBLの所定箇所の長さの測定値が記載されている。条件項目は、その測定値(p5)に関するOK判定条件として例えば許容する値範囲「0±5mm」が記載されている。第2検査結果項目は、その測定値(p5)に関する検査結果値としてOKまたはNGが記載されている。最終検査結果項目は、総合的な判定を行う場合の例であり、第1検査結果と第2検査結果との両方がOKである場合に、OK値が記載され、一方でもNGの場合にはNG値が記載されている。
【0068】
処理装置10は、例えば最終検査結果項目の値がNGである場合、図6の原因分析部18による複合作業判定154を行う。
【0069】
[センサデータ-人作業情報]
図12は、図1の人作業情報取得部13がセンサデータD2に基づいて収集・取得する人作業情報のデータテーブル構成例を示す。人作業情報の例として、(A)は目視情報D31、(B)は手情報D32、(C)は音情報D33を示す。
【0070】
前述の図5のように、各センサ8のセンサデータD2として、カメラによる動画や、グローブによる指先圧力や、マイクによる録音等が得られる。例えば、カメラ8Bやカメラ8Cによる動画を目視情報D31(「取付動画」)とし、グローブ8Aによる指先圧力を手情報D32(「取付圧力」)とし、マイク8Dによる録音を音情報D33(「取付音」)として用いることができる。
【0071】
(A)の目視情報D31は、項目として、対象物ID、製造工程、作業工程、日時、および「センサ値:取付動画」を有する。「センサ値:取付動画」項目は、センサデータD2のセンサ値として、カメラによる動画(対応するファイルまたは識別子)が格納されている。これらの動画は、図8での変数値p11や変数値p14と対応している。これらの動画は、作業者Wによる対象物OBに対する部品の取り付け等の作業動作が映っている。
【0072】
(B)の手情報D32は、項目として、対象物ID、製造工程、作業工程、日時、「センサ値:取付圧力」、および「センサ値:加速度」を有する。「センサ値:取付圧力」項目は、グローブ8Aの圧力センサによって検出した特徴量である指先圧力が格納されている。この項目は図8での変数値p9や変数値p12として採用されている。「センサ値:加速度」項目は、グローブ8Aの加速度センサによって検出した加速度が格納されている。指先圧力等の特徴量(対応する変数値)は、ある1時点の値に限らず、時系列データに基づいた連続値や統計値を用いてもよい。
【0073】
(C)の音情報D33は、項目として、対象物ID、製造工程、作業工程、日時、「センサ値:取付音」、および「センサ値:生音」を有する。「センサ値:生音」項目は、マイクによる録音データ(対応するファイルまたは識別子)が格納されている。「センサ値:取付音」項目は、録音データに基づいた音の大きさまたは周波数が格納されており、作業者Wによる対象物OBに対する部品の取り付け等の作業動作の際に発生した音の特徴を表す情報である。この項目は、図8での変数値p10や変数値p13と対応している。
【0074】
[処理フロー]
図13は、実施の形態1の原因分析システム1の処理装置10による主な処理のフローとして第1処理フローを示す。図14は第2処理フローを示す。図13の第1処理フローは、主に図6の分析部15のモデル生成部17により行われる。図14の第2処理フローは、主に原因分析部18により行われる。図13の第1処理フローは、製造フロー200の複数の工程の情報(製造作業情報D21および検査結果情報(D22,D11))を入力として組み合わせて指標Iの抽出151を行い、その指標Iを用いて機械学習152を行うことで、モデル153を生成する処理フローである。図14の第2処理フローは、入力のデータ群602について、モデル153に基づいた最新の複合作業判定条件を用いた複合作業判定154を行い、NGの原因と推定される工程を特定する処理フローである。
【0075】
図13で、ステップS1において、処理装置10は、検査結果情報(D22,D11)および製造作業情報D21を取得する。処理装置10は、例えばMES20の検査装置3,4またはDB6から、検査データD3,D4を取得し、製造検査情報D22や最終検査情報D11としてメモリに記憶する。処理装置10は、ユーザ端末30から入力・登録される検査結果情報を取得してもよい。
【0076】
ステップS2において、分析部15のモデル生成部17は、製造履歴記憶部12の製造作業情報D21、製造検査情報D22、および最終検査結果取得部11の最終検査情報D11を参照する。具体例としては、モデル生成部17は、図7の管理表Aおよび図8の管理表Bを参照する。
【0077】
モデル生成部17は、参照するデータ群601に基づいて、製造フロー200の複数の工程の情報を組み合わせて構成される所定の指標Iを抽出する。この指標Iは、言い換えると、原因分析および複合作業判定のための特徴量(前述のセンサ値の特徴量とは意味が異なる)である。
【0078】
指標Iの抽出151の処理方法について、図6等の例を用いて説明する。製造工程フロー201の各製造工程Pの作業工程203(作業工程A,B,C,D,E)では、対象物OB毎に、作業や加工の結果として、所定の変数の値(変数および変数値をpとする)が、前述の人作業情報または設備作業情報として検出される。これらの変数値を、p1,p2,……,pmとする。図6等の例では、例えば作業工程Aからは変数値p1,p2が得られる。また、各検査工程(検査工程A,B,C,Dおよび最終検査工程202である検査工程E)では、対象物OB毎に、所定の変数の測定値(qとする)が検査結果情報として得られる。これらの変数の測定値を、q1,q2,……,qnとする。図6等の例では、例えば検査工程Aからは測定値q1が得られ、最終の検査工程Eからは測定値q5が得られる。なお、図6等の例に限らず、工程毎に、1つまたは複数の情報があってもよいし、工程によっては変数値pや測定値qやセンサ値が無くてもよい。
【0079】
図13のステップS2で、モデル生成部17は、指標Iの抽出151において、複数の工程の情報(変数値pや測定値q)を組み合わせて構成される指標Iを計算する。指標Iとして、例えば、I1=q1+q2、I2=p1×p2、I3=q3-q4、等を構成することができる。指標Iの計算のための情報の組み合わせの数式は、四則演算、累乗、対数等を用いて定義される。組み合わせる情報は、2種類でも3種類以上でもよい。指標Iは、このシステムにおいて新しく抽出・生成する情報である。
【0080】
図13のステップS3で、モデル生成部17は、上記抽出した指標Iを説明変数とし、最終検査工程202の検査結果値であるOKとNGを目的変数として、機械学習152を行うことによって、モデル153を生成する。モデル153は、複合工程原因の分析を可能とする、複合作業判定条件モデルである。
【0081】
上記指標Iは、複数の情報の組み合わせと数式の作り方とによって、無数の種類が考えられる。しかしながら、一般に、多変量解析において、目的変数と関連の低い情報を説明変数に導入する場合、モデル精度を低下させることに繋がる。そのため、モデルで判定したい現象に即した変数から組み合わせによる指標Iを生成することが望ましい。例えば、図3の製造フロー200および図7の検査結果情報の管理表Aの例では、対象物ID=1の最終検査項目において、結果がNGであり、NG内容として「色ムラ」と判定されている。この「色ムラ」による「NG」を含む最終検査結果(対応する目的変数)と関連が深いと推定される工程は、部材表面粗さに関連するプレス工程(製造工程P1)や、表面への塗装を行う塗装工程(製造工程P3)が挙げられる。このことから、プレス工程(製造工程P1)や塗装工程(製造工程P3)から得られる情報(変数値pや測定値q)の組み合わせによって指標Iを生成すると望ましい。例えば、図8等のように、プレス工程からは変数値p2「プレスオイル量」、塗装工程からは変数値p6「塗料粘度」や変数値p7「乾燥炉温度Ave」や変数値p8「乾燥炉温度Max」が得られる。この場合に、指標Iの一例として、I=[プレスオイル量(p2)]×[塗料粘度(p6)]×[乾燥炉温度Ave(p7)]、を生成することが挙げられる。
【0082】
モデル153に基づいた複合作業判定条件は、例えば、指標I(p2×p6×p7)の値に関する値範囲(例えば閾値Ia,Ibを用いて、Ia≦I≦Ib)を用いた条件とすることができる。判定対象の入力データから計算される指標値が、その値範囲外に逸脱する場合には、複合工程原因であると判断できる。また、複合作業判定条件は、1つに限らず、複数の条件のセットとして作成できる。
【0083】
上記モデル153が生成された後では、図14に従って、実際の製造実行の際に、図6の分析部15の原因分析部18による原因分析が可能である。図14で、ステップS11において、原因分析部18は、対象物OB毎に、製造フロー200の各工程で発生した情報(製造作業情報D21および検査結果情報(D22,D11))をリアルタイムに収集・取得する。
【0084】
ステップS12において、原因分析部18は、それらの情報を含むデータ群602を参照して、モデル153に基づいた最新の複合作業判定条件を用いた複合作業判定154を行う。原因分析部18は、対象物OBについて、最終検査結果がNGである場合に、複合作業判定154を行う。この複合作業判定154では、入力データの変数値pや測定値qを用いて計算される指標値が、最新の複合作業判定条件(例えば上記値範囲)を逸脱する場合に、複合工程原因であると判断できる。そして、その複合作業判定条件(対応する指標Iの構成)に対応する複数の工程を、NG原因と推定される複数の工程および対応する作業等として特定することができる。
【0085】
ステップS13は、ステップS12の複合作業判定154の結果に応じた分岐であり、判定結果がOKである場合(条件を逸脱していない場合)にはステップS14へ進み、NGである場合(条件を逸脱している場合)にはステップS16へ進む。
【0086】
ステップS14では、出力部16は、図1のユーザ端末30に対し、後述の図17のような画面で、製造実行の進捗に関する最新情報を更新して表示する。そして、ステップS15において、分析部15は、処理対象データ群における対象物OB毎の現在の工程を確認し、最終検査工程でない場合にはステップS11に戻って同様の処理を繰り返し、最終検査工程202まで処理が済んだ場合には、ループを抜けて、フローが終了する。
【0087】
一方、ステップS16では、原因分析部18は、ステップS12の複合作業判定154の結果でNGとなった条件に基づいて、原因分析結果情報155を生成する。原因分析結果情報155の例を、図15等に示す。
【0088】
ステップS17では、出力部16は、原因分析結果情報155に基づいて、図1のユーザ端末30に対し、後述の図18のような分析結果確認画面を表示する。この画面によって、ユーザU1に対し、最新の条件に基づいた判定結果として、複合工程原因によるNG(不良)を知らせる。
【0089】
なお、処理装置10は、図13の第1処理フローに基づいて、適宜に新たなデータ群601を入力としてモデル153の再学習、更新を行う。処理装置10は、モデル153の再学習については、一定数のデータが集まったタイミングを契機として、第1処理フローを繰り返せばよい。上記タイミングは、例えばある製品について、1000台分のデータが集まった場合や、1週間分のデータが集まった場合等が挙げられる。
【0090】
原因分析システム1は、上記処理フローによって、最終検査結果がNGとなった原因と推定される複数の工程を複合工程原因として特定し、画面に分析結果を表示する。これにより、原因分析システム1は、ユーザU1による原因特定作業や対処作業を支援することができる。
【0091】
[原因分析結果情報]
図15および図16は、上記原因分析部18による原因分析の結果得られる原因分析結果情報155のデータテーブル構成例を示す。図15は第1例、図16は第2例を示す。この原因分析結果情報155は、製造フロー200の複数の製造工程Pの作業や検査の結果の情報について貫通で分析した結果を示し、特に、最終検査結果がNGとなった原因として、複数の工程の影響による複合工程原因を分析した結果を示す。この原因分析結果情報155は、その複合工程原因と推定される複数の工程の情報が格納されている。
【0092】
図15の原因分析結果情報155は、対象物OB、日時、最終検査結果、およびNG内容等を含む最終検査結果情報1601と、複合工程原因メッセージ1602と、複数工程情報1603とを有する。最終検査結果情報1601は、例えば、図7および図11の最終検査情報D11の対象物ID=1の行の場合に対応し、検査工程Eの結果がNGで、NG内容が「色ムラ」となっている。検査工程A~Dの結果は図7のようにOKとなっている。複合工程原因メッセージ1602は、例えば「NG原因は、下記の複数の工程(塗りつぶし箇所)の積み重なりによるものと推定されます」といった、複合工程原因を説明する情報である。
【0093】
複数工程情報1603の表では、製造フロー200の複数の工程(例えば作業工程203)について、複合工程原因と推定される複数の工程の項目を例えば塗りつぶし等で強調表示している。
【0094】
本例では、NG原因は、製造工程P1(A),P2(B),P3(C)の積み重なりであると分析されている。前述の指標Iおよび複合作業判定条件の例に基づいて、作業工程Aの変数値p2、作業工程Bの変数値p3、作業工程Cの変数値p6および変数値p8が、特に影響が大きい要因と推定されて強調表示されている。この原因は、詳しくは例えば以下と推定される。プレス工程(製造工程P1)時のオイルが、塗装工程(製造工程P3)まで残り、乾燥時の最大温度が一定値を超えた段階で、オイル残り箇所が周りの箇所と違う色になったと推定される。本例は、設備作業情報の変数値を用いた分析例である。
【0095】
図16の原因分析結果情報155の例は、図7および図11の最終検査情報D11の対象物ID=3の行の場合に対応し、検査工程Eの結果がNGで、NG内容が「キズ」となっている。複数工程情報1703の表では、本例では、NG原因は、製造工程P1の検査工程Aと、製造工程P4の作業工程D,Eとの積み重なりであると分析されている。この表では、それら以外の工程の情報の表示を省略している。この表では、検査工程Aの測定値q1、作業工程Dの変数値p9、および作業工程Eの変数値p12が、特に影響が大きい要因と推定されて強調表示されている。この原因は、詳しくは例えば、測定値q1に対し、作業工程D,Eでの変数値(p9,p12)が高かったため、対象物OBに部品を取り付けた際の累積負荷が発生した影響で、検査工程Eの結果がNGとなったと推定される。本例は、作業工程D,Eについての人作業情報の変数値を用いた分析例である。
【0096】
処理装置10の出力部16は、上記のような原因分析結果情報155を画面で表示してもよい。また、出力部16は、前述の各種のデータ(図7図12)を、画面で表示してもよい。
【0097】
[画面例(1)]
図17は、出力部16が出力する第1画面例を示す。ユーザU1の操作に基づいて、ユーザ端末30から処理装置10にアクセスし、処理装置10は、画面に対応するWebページを提供する。ユーザ端末30の液晶ディスプレイ等の表示デバイスには、このような画面が表示される。処理装置10は、対象物OBについて、製造フロー200の工程を通過中、言い換えると工程での作業や加工中に、複合作業判定条件等の条件に該当しない場合には、製造実行の状態を正常状態(言い換えると不良無し状態)と判断する。そして、出力部16は、図17の画面で現在の最新情報を表示する。
【0098】
図17の画面は、製造フロー200の工程毎の状態に関する最新情報を表示する画面であり、正常状態時の画面例を示す。この画面は、最新情報欄1801、工程履歴マップ欄1802、モニタリング情報欄1803を有する。
【0099】
最新情報欄1801では、例えば表形式で、対象物ID、工程、状態、および日時等の情報が表示される。状態項目では、例えば「通過中(加工中)」等の対象物OBの状態を表す値が表示される。また、アラート欄1804では、製造実行の状態が、色等の表現で表示される。例えば、正常状態時にはアラート欄1804が緑色で表示される。
【0100】
工程履歴マップ欄1802では、製造フロー200の複数の工程と現在の対象工程とを、例えばノードと矢印のリンクで接続したマップ等の態様で可視化表示する。例えば、対象物ID=10の対象物OBについて、現在通過中の対象工程が塗装工程(製造工程P3)である時には、その塗装工程のノード1805が目立つように他のノードとは違う色等で表示される。
【0101】
モニタリング情報欄1803では、現在の工程(対応するノード1804)についてのモニタリング情報として、前述の製造作業情報や製造検査情報が、例えば表形式で表示される。また、グラフ1806では、製造作業情報等の変数値に関するグラフが表示される。この画面では、ユーザU1による対象物OBを選択する操作に応じて、同様に、その対象物OBについての最新情報を表示できる。
【0102】
[画面例(2)]
図18は、出力部16が出力する第2画面例を示す。図18の画面は、最終検査結果に基づいた不良発生時の画面例を示す。処理装置10は、対象物OBについて、製造フロー200での製造実行の結果、最終検査結果がNGとなり、最新の複合作業判定条件を逸脱した場合に、製造実行の状態を不良有り状態と判断し、この画面で不良発生原因としての複合工程原因の分析結果等を表示する。
【0103】
図18の画面は、最新情報欄1901、工程履歴マップ欄1902、不良発生条件欄1903を有する。最新情報欄1901では、例えば、対象物IDの対象物OBの最終検査が終了した状態が表示されている。アラート欄1904は、不良有り状態時には例えば赤色で表示される。
【0104】
工程履歴マップ欄1902では、製造フロー200の複数の検査工程について、各々の検査結果(OK/NG)が分かるように可視化表示される。例えば、製造工程P1,P2,P3の検査工程の検査結果と最終検査結果とがNGであった場合に、NGに対応するノードは、OKに対応するノードとは色や種類等が異なる態様で表示される。
【0105】
不良発生条件欄1903では、対象物OBについて、最終検査結果情報1905や、不良発生原因と推定される工程の情報1906とを例えば表形式で表示する。情報1906では、原因と推定される工程の変数値が表示される。本例では、最終検査結果がNGとなった複合工程原因として、プレス工程(製造工程P1)の作業と、溶接工程(製造工程P2)の作業と、塗装工程(製造工程P3)の作業との積み重なりと推定されている。そして、それらの工程で製造作業情報D21として得られている変数値(前述のプレスオイル量、溶接電流、塗料粘度および乾燥炉温度)が、原因に関連する情報、言い換えると不良発生条件として、抽出され表示されている。言い換えると、これらの工程の変数値による指標値が、複合作業判定条件を逸脱したために、NG原因がこれらの工程であると推定されている。
【0106】
[効果等]
上記のように、実施の形態1の原因分析システム1および方法によれば、製造フロー200での製造物の品質管理に関して、検査結果が否(NG)となった場合の不良の原因の特定をより容易に行うことができる。このシステムによれば、検査結果で不良となった場合の不良発生原因の特定をより容易に行うことができる。このシステムによれば、複数の工程の影響による複合工程原因の特定を支援できる。このシステムによれば、各工程検査結果がOKでも最終検査結果がNGとなるような不良が発生した場合にも、複合工程原因の特定を支援できる。このシステムによれば、効率的な不具合対策・品質管理を実現できる。
【0107】
製造現場では、これまで想定していなかった複合的な原因による不良が発生することがある。製造フローの各製造工程を1か所ずつ調べても作業等の不備(対応する工程検査結果のNG)が無かったが、複数の製造工程の不備が積み重なったことで、最終検査結果がNGとなる場合がある。実施の形態1によれば、このような不良の場合でも、複合的な原因としての複数の工程を発見することができる。実施の形態1によれば、このような不良の場合でも、複合工程原因と推定される複数の工程の情報を出力することができ、アラートとして伝えることができる。これにより、従来技術よりも、ユーザによる原因特定作業や対処作業等を容易にすることができ、例えば短時間で手間を少なくでき、効率化や品質管理の高度化が実現できる。
【0108】
<変形例>
実施の形態1の変形例として以下も可能である。図18の画面例のように、実施の形態1では、最終検査結果が出た後に原因分析によって結果を画面表示する例を示したが、これに限らずに可能である。処理装置10の原因分析部18は、ある対象物OBについて、製造フロー200の途中の工程まで通過した時点でのデータをリアルタイムに参照する。原因分析部18は、そのデータの変数値等を、モデル153に基づいた最新の複合作業判定条件に照らして逸脱していないか、複合作業判定154を行う。原因分析部18は、その判定の結果、複合工程原因であると判断した場合には、その時点で、最終検査結果を待たずに、出力部16によって図18のような画面を表示させる。この場合の画面は、最新情報欄1901では、途中の現在の工程(例えば塗装工程)が表示される。工程履歴マップ欄1902では、最終検査のノードは、まだ至っていないので、通常表示とされる。最終検査情報欄1905は空欄表示となる。この変形例によれば、最終検査結果を確認していない代わりに、最終検査結果を待たずにすぐに複合工程原因を出力することができる。
【0109】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0110】
1…原因分析システム、2…検出装置、3…工程検査装置、4…最終検査装置、5…管理装置、6…DB、8…センサ、9…通信網、10…処理装置、11…最終検査結果取得部、12…製造履歴記憶部、13…人作業情報取得部、14…設備作業情報取得部、15…分析部、16…出力部、20…MES、30…ユーザ端末、200…製造フロー、201…製造工程フロー、P…製造工程、OB…対象物、OBL…最終物、F…設備、W…作業者、U1…ユーザ、D2…センサデータ、D3…検査データ、D4…検査データ、D11…最終検査情報、D21…製造作業情報、D22…製造検査情報。
図1
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